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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】簡易型電動車椅子
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/08 20060101AFI20241002BHJP
   A61G 5/12 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
A61G5/08 703
A61G5/12 705
A61G5/12 702
A61G5/08 705
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020142252
(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公開番号】P2022037994
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】598163064
【氏名又は名称】学校法人千葉工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100167900
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 仁
(72)【発明者】
【氏名】古田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】大和 秀彰
(72)【発明者】
【氏名】小太刀 崇
(72)【発明者】
【氏名】戸田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】荻原 一輝
(72)【発明者】
【氏名】松澤 孝明
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0060156(US,A1)
【文献】特開2006-141646(JP,A)
【文献】特開2004-081559(JP,A)
【文献】特開2002-035047(JP,A)
【文献】特開2002-177340(JP,A)
【文献】特開2001-104386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/08
A61G 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体を着座させるためのシートと、前記シートを支持するとともに、前記シートを走行させるベースとを備え、手動および自動を切り替えて走行させることができる簡易型電動車椅子であって、
前記ベースは、
一対のホイールと、
前記ホイールを駆動することによって、前記シートを走行させるモータと、
前記ベースに対して回動自在に取り付けられる可動体とを備え、
前記可動体は、
前記シートのフットレストおよび背もたれを備え、
前記フットレストおよび前記背もたれは、前記ベースに向かって同一の回動方向に回動することによって、前記一対のホイールに対して前記ベースを変位させることなく前記一対のホイールの間に前記フットレストおよび前記背もたれの双方の少なくとも一部を収納するように折り畳み可能であることを特徴とする電動車椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易型電動車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体を着座させるためのシートと、シートを支持するとともに、シートを走行させるベースとを備える電動車椅子が知られている。例えば、特許文献1に記載された電動車椅子は、複数の車輪、および車輪駆動用の電動モータを有する走行部と、バッテリを含む電装品等を有する電装部と、シートを有する搭乗部とを備え、これらの各部を互いに結合した組立状態とすることによって、シートを走行させている。
また、引用文献1に記載された電動車椅子は、これらの各部を分離した分離状態とすることができ、分離後の各部の取り扱いを容易にすることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-097601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された電動車椅子は、3つの部位に分離されることになるので、分離状態とした場合であっても持ち運ぶには不便であるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、容易に運搬することができる簡易型電動車椅子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の簡易型電動車椅子は、人体を着座させるためのシートと、シートを支持するとともに、シートを走行させるベースとを備え、手動および自動を切り替えて走行させることができる簡易型電動車椅子であって、ベースは、一対のホイールと、ホイールを駆動することによって、シートを走行させるモータと、ベースに対して回動自在に取り付けられる可動体とを備え、可動体は、シートのフットレストおよび背もたれを備え、フットレストおよび背もたれは、ベースに向かって同一の回動方向に回動することによって、一対のホイールに対してベースを変位させることなく一対のホイールの間にフットレストおよび背もたれの双方の少なくとも一部を収納するように折り畳み可能であることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、可動体は、ベースに対して回動自在に取り付けられているので、ベースの配線を避けてベースに向かって可動体を折り畳むことができ、電動車椅子を容易に運搬することができる。
【0009】
また、可動体は、シートのフットレストであるので、大きなスペースを占めるフットレストをベースに向かって折り畳むことができ、さらに容易に簡易型電動車椅子を運搬することができる。
【0011】
さらに、可動体は、シートの背もたれであるので、大きなスペースを占める背もたれをベースに向かって折り畳むことができ、さらに容易に簡易型電動車椅子を運搬することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る簡易型電動車椅子の斜視図
図2】簡易型電動車椅子の正面図
図3】簡易型電動車椅子の背面図
図4】簡易型電動車椅子の左側面図
図5】簡易型電動車椅子の右側面図
図6】簡易型電動車椅子の平面図
図7】簡易型電動車椅子の底面図
図8】簡易型電動車椅子の要部を分解した分解斜視図
図9】折り畳み状態における簡易型電動車椅子の斜視図
図10】折り畳み状態における簡易型電動車椅子の正面図
図11】折り畳み状態における簡易型電動車椅子の背面図
図12】折り畳み状態における簡易型電動車椅子の左側面図
図13】折り畳み状態における簡易型電動車椅子の右側面図
図14】折り畳み状態における簡易型電動車椅子の平面図
図15】折り畳み状態における簡易型電動車椅子の底面図
図16】折り畳み状態における簡易型電動車椅子の要部を分解した分解斜視図
図17】モータユニットの詳細構成を示す斜視図
図18】ホイール側から見たモータユニットの詳細構成を示す分解斜視図
図19】モータユニット側から見たモータユニットの詳細構成を示す分解斜視図
図20】モータユニットの正面図
図21】モータユニットのAA断面図
図22】ボタン部を押下した状態におけるモータユニットのAA断面図
図23】固定部材の作動状態を示す図
図24】運搬時態様における簡易型電動車椅子の斜視図
図25】簡易型電動車椅子の機能構成を示すブロック図
図26】モータの駆動制御、およびホイールの手動操作の流れを示す制御ブロック図
図27】簡易型電動車椅子の動作状態とLEDの点灯状態との対応表を示す図
図28】本発明の変形例に係るモータユニットの詳細構成を示す斜視図
図29】ホイール側から見たモータユニットの詳細構成を示す分解斜視図
図30】モータユニット側から見たモータユニットの詳細構成を示す分解斜視図
図31】モータユニットの正面図
図32】モータユニットのBB断面図
図33】ボタン部を押下した状態におけるモータユニットのBB断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
〔簡易型電動車椅子の外観構成〕
図1は、本発明の一実施形態に係る簡易型電動車椅子の斜視図である。図2は、簡易型電動車椅子の正面図である。図3は、簡易型電動車椅子の背面図である。図4は、簡易型電動車椅子の左側面図である。図5は、簡易型電動車椅子の右側面図である。図6は、簡易型電動車椅子の平面図である。図7は、簡易型電動車椅子の底面図である。図8は、簡易型電動車椅子の要部を分解した分解斜視図である。なお、図1図8では、鉛直上方向を+Z軸方向とし、このZ軸と直交する2軸をX,Y軸として説明する。以下の図面においても同様である。
【0014】
簡易型電動車椅子1は、図1図8に示すように、人体を着座させるためのシート2と、このシート2を支持するとともに、シート2を走行させるベース3とを備えている。
【0015】
シート2は、人体の腰を支持する座面部21と、この座面部21の-X軸方向側に取り付けられ、人体の背中を支持する背もたれ部22とを備えている。
また、シート2は、図8に示すように、背もたれ部22をY軸まわりに回動自在に座面部21に対して取り付ける一対の軸体23を備えている。各軸体23は、座面部21に形成された貫通穴21Aを介して背もたれ部22に形成された穴22Aに挿入されることによって、背もたれ部22をY軸まわりに回動自在に座面部21に対して取り付けている。
【0016】
座面部21は、-Y軸方向側に固定された右側泥除け部24と、+Y軸方向側に固定された左側泥除け部25とを備えている。
右側泥除け部24は、+X軸方向側に取り付けられた操作レバー241と、この操作レバー241の+X軸方向側に取り付けられ、スマートフォンなどの携帯端末を載置するための端末載置部242とを備えている。
左側泥除け部25は、+X軸方向側に取り付けられた握り部251を備えている。簡易型電動車椅子1の搭乗者は、シート2に着座した際に、この握り部251を握ることができる。
【0017】
ベース3は、図1図8に示すように、Y軸方向の両側にそれぞれ取り付けられた一対のホイール31と、各ホイール31を駆動することによって、シート2を走行させる一対のモータユニット32と、各ホイール31のハブ31Aを貫通するようにして各モータユニット32に取り付けられることによって、各ホイール31を各モータユニット32に固定する固定部材33とを備えている。
各ホイール31は、簡易型電動車椅子1の搭乗者の手動にて各ホイール31を回転させるためのハンドリム31Bを備えている。
【0018】
また、ベース3は、ベース3の-X軸方向側に形成された断面矩形状のバッテリケース34Aの開口部に挿入されることによって、ベース3に取り付けられ、モータユニット32を含む簡易型電動車椅子1の全体に電力を供給するバッテリ34と、ベース3の+X軸方向側に取り付けられ、人体の足を支持するフットレスト35と、各モータユニット32に固定されるとともに、簡易型電動車椅子1の後方に向かって延出する一対の後部補助輪36とを備えている。このバッテリケース34Aは、-Z軸方向側に設けられた三角形状のLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)34Bを備えている(図3参照)。
さらに、ベース3は、図8に示すように、ベース3の+Z軸方向側に固定され、ベース3に対してシート2を取り付けるための金具37を備えている。
【0019】
フットレスト35は、人体の足を支持する足板351と、この足板351の中央から延出する支柱352と、この足板351のY軸方向の両側に取り付けられた一対のキャスタ353とを備えている。この足板351は、+X軸方向側に設けられた左右一対のLED351R,351Lを備えている。
また、ベース3は、図8に示すように、フットレスト35の支柱352をY軸まわりに回動自在にベース3に対して取り付ける一対の軸体38を備えている。各軸体38は、支柱352に形成された貫通穴352Aに挿入されることによって、フットレスト35をY軸まわりに回動自在にベース3に対して取り付けている。
【0020】
〔折り畳み状態における簡易型電動車椅子の外観構成〕
図9は、折り畳み状態における簡易型電動車椅子の斜視図である。図10は、折り畳み状態における簡易型電動車椅子の正面図である。図11は、折り畳み状態における簡易型電動車椅子の背面図である。図12は、折り畳み状態における簡易型電動車椅子の左側面図である。図13は、折り畳み状態における簡易型電動車椅子の右側面図である。図14は、折り畳み状態における簡易型電動車椅子の平面図である。図15は、折り畳み状態における簡易型電動車椅子の底面図である。図16は、折り畳み状態における簡易型電動車椅子の要部を分解した分解斜視図である。
【0021】
前述したように、背もたれ部22は、Y軸まわりに回動自在に座面部21に対して取り付けられている。ここで、シート2は、金具37を介してベース3に対して取り付けられているので、背もたれ部22は、Y軸まわりに回動自在にベース3に対して取り付けられているともいえる。また、フットレスト35は、Y軸まわりに回動自在にベース3に対して取り付けられている。
【0022】
背もたれ部22をベース3に向かって折り畳み、フットレスト35をベース3に向かって折り畳むことによって、折り畳み状態とすると、簡易型電動車椅子1は、図9図16に示すように、簡易型電動車椅子1の占めるスペースを小さくし、容易に運搬することができるようになる。
【0023】
このように、本実施形態では、背もたれ部22およびフットレスト35は、ベース3に対して回動自在に取り付けられる可動体として機能している。
なお、本実施形態では、可動体として背もたれ部22およびフットレスト35を採用しているが、ベースに対して回動自在に取り付けられていれば、どのような部品であってもよく、例えば、補助輪などの部品をベースに対して回動自在に取り付けるようにしてもよい。
【0024】
〔モータユニットの詳細構成〕
図17は、モータユニットの詳細構成を示す斜視図である。図18は、ホイール側から見たモータユニットの詳細構成を示す分解斜視図である。図19は、モータユニット側から見たモータユニットの詳細構成を示す分解斜視図である。なお、図17図19では、モータユニット32は、左側泥除け部25側に配置されたモータユニット32のカバーを外した状態を図示し、ホイール31は、ハブ31Aの中心部位のみを図示している。以下の図面においても同様である。
【0025】
モータユニット32は、図17図19に示すように、ホイール31を駆動することによって、シート2を走行させるモータ321と、モータ321の出力軸の回転に伴って回転するモータ側ギア322と、モータ側ギア322と噛み合うとともに、モータ側ギア322の回転に伴って回転するホイール側ギア323と、ホイール側ギア323に固定されるとともに、ホイール側ギア323の回転に伴って回転する中空軸体324とを備えている。
なお、図17図19では、モータ側ギア322およびホイール側ギア323の歯は、図示を省略している。以下の図面においても同様である。
【0026】
中空軸体324は、図18に示すように、略円筒状に形成されるとともに、+Y軸方向側の端部における内面に沿って取り付けられた軸体側セレーション324Aを備えている。
また、ホイール31のハブ31Aは、図19に示すように、その軸穴と同心状となるように-Y軸方向側に取り付けられたハブ側セレーション31Cを備えている。
ハブ側セレーション31Cは、軸体側セレーション324Aに挿入されて篏合し、モータ321の出力軸の回転は、モータ側ギア322、ホイール側ギア323、および中空軸体324を介してホイール31に伝達されることになる。
【0027】
図20は、モータユニットの正面図である。図21は、モータユニットのAA断面図である。
ホイール31およびモータユニット32は、前述したように、固定部材33を介して互いに固定されている。
固定部材33は、図18図21に示すように、円筒状の軸部331と、軸部331の内部に挿入された押ボタン332と、軸部331の-Y軸方向側に突没自在に取り付けられた2つの球状の突起部333とを備えている。
【0028】
押ボタン332は、図21に示すように、円盤状のボタン部332Aと、ボタン部332Aから-Y軸方向に向かって延出する棒状部332Bとを有し、この棒状部332Bは、軸部331の内部に同心状に挿入されている。この棒状部332Bは、-Y軸方向側の表面の2箇所に形成された半球状の凹部332Cを有し、突起部333は、この凹部332Cに嵌り込むことができるようになっている。
また、固定部材33は、軸部331および押しボタン332のボタン部332Aの間に配置されたバネ334を備え、このバネ334は、+Y軸方向側に向かってボタン部332Aを付勢している。
【0029】
図22は、ボタン部を押下した状態におけるモータユニットのAA断面図である。図23は、固定部材の作動状態を示す図である。具体的には、図23の上図は、ボタン部332Aを解放した場合における固定部材33の作動状態を示す図であり、図23の下図は、ボタン部332Aを押下した場合における固定部材33の作動状態を示す図である。
ボタン部332Aを押下すると、棒状部332Bは、図22および図23の下図に示すように、バネ334の付勢力に抗して-Y軸方向側に向かって移動し、この棒状部332Bの移動に伴って、凹部332Cは、突起部333と対応する位置に移動することになる。
突起部333と対応する位置に凹部332Cを移動させると、突起部333は、軸部331の内部に没入することができるようになる。
このように、ボタン部332Aを押下した状態において、固定部材33をY軸方向に沿って移動させると、固定部材33は、図22の太矢印に示すように、ハブ31Aの軸穴および中空軸体324に対して挿抜することができる。
【0030】
また、ボタン部332Aを解放すると、棒状部332Bは、図21および図23の上図に示すように、バネ334の付勢力によって+Y軸方向側に移動し、この棒状部332Bの移動に伴って、凹部332Cは、突起部333と対応しない位置に移動することになる。
突起部333と対応しない位置に凹部332Cを移動させると、突起部333は、軸部331の内部に没入することができなくなるので、軸部331の外部に突出することになる。
このように、ボタン部332Aを解放した状態において、固定部材33は、ハブ31Aの軸穴および中空軸体324に対して挿抜することができなくなるので、ホイール31およびモータユニット32を互いに固定することができる。
【0031】
したがって、ホイール31およびモータユニット32を互いに固定する場合には、簡易型電動車椅子1の搭乗者は、モータユニット32の軸体側セレーション324Aにホイール31のハブ側セレーション31Cを挿入した後、ボタン部332Aを押下して固定部材33をハブ31Aの軸穴および中空軸体324に対して挿入し、ボタン部332Aを解放することによって、ホイール31およびモータユニット32を互いに固定することができる。
【0032】
このように、本実施形態では、ホイール31は、ベース3に対して着脱自在に取り付けられている。
また、本実施形態では、ベース3は、モータ321の回転に伴って回転し、ホイール31と篏合することによって、モータ321の回転をホイール31に伝達する中空軸体324と、ホイール31の中心および中空軸体324を貫通してベース3に取り付けられることによって、ホイール31および中空軸体324を固定する固定部材33とを備えている。
なお、本実施形態では、ベース3は、中空軸体324と、固定部材33とを備え、ホイール31は、ベース3に対して着脱自在に取り付けられているが、これ以外の構造を採用してもよい。要するに、ホイールは、ベースに対して着脱自在に取り付けられていればよい。
【0033】
図24は、運搬時態様における簡易型電動車椅子の斜視図である。
背もたれ部22をベース3に向かって折り畳み、フットレスト35をベース3に向かって折り畳むことによって、折り畳み状態とするとともに、ホイール31をベース3から取り外して運搬時態様とすることによって、簡易型電動車椅子1は、図24に示すように、簡易型電動車椅子1の占めるスペースを小さくし、容易に運搬することができるようになる。
【0034】
〔簡易型電動車椅子の機能構成〕
図25は、簡易型電動車椅子の機能構成を示すブロック図である。
簡易型電動車椅子1は、前述したシート2、ホイール31、モータユニット32、およびLED34B,351R,351Lを備えている他、図25に示すように、各モータユニット32に取り付けられるとともに、各ホイール31のそれぞれの回転を独立して検出する検出手段4と、簡易型電動車椅子1の全体を制御する制御手段5とを備えている。
検出手段4は、ホイール31の回転を検出することができればよく、ホイール31の回転角度や、回転速度や、回転加速度を検出するセンサを採用すればよい。
【0035】
制御手段5は、CPU(Central Processing Unit)や、メモリなどによって構成され、このメモリに記憶された所定のプログラムに従って情報処理を実行する。この制御手段5は、回転情報取得部51と、モータ駆動制御部52と、報知制御部53とを備えている。
【0036】
回転情報取得部51は、検出手段4にて検出された各ホイール31の回転に基づいて、各ホイール31のそれぞれの回転速度および回転加速度の情報を取得し、簡易型電動車椅子1の車体の速度および車体の加速度の情報を取得する。
なお、本実施形態では、回転情報取得部51は、簡易型電動車椅子1の車体の速度および車体の加速度の情報を取得しているが、検出手段4にて検出されたホイール31の回転に基づいて、簡易型電動車椅子1の速度、および加速度の少なくともいずれかの情報を取得すればよい。
また、本実施形態では、回転情報取得部51は、各ホイール31のそれぞれの回転速度および回転加速度の情報を取得しているが、各ホイール31の回転角度の時系列情報を記憶しておき、この情報に基づいて、各ホイール31のそれぞれの回転速度および回転加速度の情報を算出して取得してもよい。
【0037】
モータ駆動制御部52は、モータユニット32におけるモータ321のトルクに基づいて、モータ321を制御する。
【0038】
報知制御部53は、回転情報取得部51にて取得された情報に基づいて、LED34B,351R,351Lを制御することによって、簡易型電動車椅子1の動作状態を報知する。換言すれば、報知制御部53は、検出手段4にて検出されたホイール31の回転に基づいて、報知手段としてのLED34B,351R,351Lを制御することによって、簡易型電動車椅子1の動作状態を報知する。
なお、本実施形態では、報知手段は、発光ダイオードを採用しているが、これ以外の手段を採用することによって、車椅子の動作状態を報知してもよい。例えば、報知手段は、音声を出力するスピーカや、映像を出力するモニタなどを採用してもよい。要するに、報知手段は、車椅子の動作状態を報知することができればよい。
【0039】
〔簡易型電動車椅子の走行について〕
図26は、モータの駆動制御、およびホイールの手動操作の流れを示す制御ブロック図である。
搭乗者にて操作レバー241が操作されると、モータ駆動制御部52は、図26に示すように、この操作レバー241の操作入力に応じたモータ321のトルクの目標値に基づいて、モータ321の電流を制御し、この目標値に近づくようにモータ321のトルクを制御する。そして、モータ321の出力軸の回転は、モータ側ギア322、ホイール側ギア323、および中空軸体324を介してホイール31に伝達されることになる。
【0040】
また、搭乗者Hにてハンドリム31Bが操作されると、簡易型電動車椅子1は、搭乗者Hの手動にて各ホイール31を回転させることができる。なお、簡易型電動車椅子1は、搭乗者Hの手動にて各ホイール31を回転させることによって、バッテリ34に蓄電することができる。そして、バッテリ34は、簡易型電動車椅子1の全体に電力を供給することができ、モータの駆動制御や、端末載置部242に載置されたスマートフォンなどの携帯端末への充電を行うことができる。
このように、本実施形態では、簡易型電動車椅子1は、ホイール31に対して直接的に接続されるギア(モータ側ギア322、およびホイール側ギア323)と、このギアに対して直接的に接続されるとともに、ホイール31を駆動することによって、シート2を走行させるモータ321とを備えている。
【0041】
なお、本実施形態では、簡易型電動車椅子1は、ホイール31に対して直接的に接続されるギアと、このギアに対して直接的に接続されるとともに、ホイール31を駆動することによって、シート2を走行させるモータ321とを備えていたが、ギアを省略した構成を採用してもよい。換言すれば、簡易型電動車椅子は、ホイールに対して直接的に接続されるとともに、ホイールを駆動することによって、シートを走行させるモータを備えていてもよい。
【0042】
〔簡易型電動車椅子の動作状態の報知について〕
図27は、簡易型電動車椅子の動作状態とLEDの点灯状態との対応表を示す図である。
報知制御部53は、前述したように、回転情報取得部51にて取得された情報に基づいて、LED34B,351R,351Lを制御することによって、簡易型電動車椅子1の動作状態を報知する。
【0043】
具体的には、報知制御部53は、図27に示すように、回転情報取得部51にて取得された情報のうち、右側のホイール31の速度をVRとし、左側のホイール31の速度をVLとし、簡易型電動車椅子1の車体の速度をVとし、車体の加速度をAとし、所定の判定式に基づいて、LED34B,351R,351Lを制御することによって、前進加速、前進減速、後進、停止、右旋回、その場右旋回、左旋回、その場左旋回の8項目の動作状態を報知する。
【0044】
V>0かつA>0の場合には、報知制御部53は、前進加速の動作状態であると判定し、LED34B,351R,351Lの全てを緑色に点灯させる。
V>0かつA<0の場合には、報知制御部53は、前進減速の動作状態であると判定し、LED34B,351R,351Lの全てを赤色に点滅させる。
この際、報知制御部53は、加速および減速の速度に応じてLEDの点灯状態を変動させるようにしてもよく、例えば、複数のLEDを所定の方向に沿って順に点滅させて所定の方向に沿ってLEDの光が流れていくように構成し、この流れる速度を変動させることによって、加速および減速の速度を報知するようにしてもよい。
【0045】
V<0の場合には、報知制御部53は、後進の動作状態であると判定し、LED34B,351R,351Lの全てを黄色に点滅させる。
V≒0の場合には、報知制御部53は、停止の動作状態であると判定し、LED34B,351R,351Lの全てを白色に点滅させる。
【0046】
VL>VRの場合には、報知制御部53は、右旋回の動作状態であると判定し、LED351Rのみを緑色に点灯させる。
VL>VRかつ(VL+VR)≒0の場合には、報知制御部53は、その場右旋回の動作状態であると判定し、LED351Rのみを緑色に点滅させる。
【0047】
VL<VRの場合には、報知制御部53は、左旋回の動作状態であると判定し、LED351Lのみを緑色に点灯させる。
VL<VRかつ(VL+VR)≒0の場合には、報知制御部53は、その場左旋回の動作状態であると判定し、LED351Lのみを緑色に点滅させる。
【0048】
このような本実施形態によれば、以下の作用・効果を奏することができる。
(1)ホイール31は、ベース3に対して着脱自在に取り付けられているので、ベース3からホイール31を取り外すことによって、簡易型電動車椅子1を容易に運搬することができる。
(2)ホイール31および中空軸体324は、固定部材33にてベース3に固定されているので、固定部材33を取り外すことによって、ベース3からホイール31を容易に取り外すことができる。
【0049】
(3)中空軸体324は、モータ321の回転をホイール31に伝達するホイール側ギア323に固定されるとともに、ホイール側ギア323の回転に伴って回転している。換言すれば、中空軸体324は、モータ321の回転をホイール31に伝達するギアであるので、ベース3に対して新たな部材を取り付けることなく、ベース3に対してホイール31を着脱自在に取り付けることができる。
【0050】
(4)可動体は、ベース3に対して回動自在に取り付けられているので、ベース3の配線を避けてベース3に向かって可動体を折り畳むことができ、簡易型電動車椅子1を容易に運搬することができる。
(5)可動体は、シート2のフットレスト35であるので、大きなスペースを占めるフットレスト35をベース3に向かって折り畳むことができ、さらに容易に簡易型電動車椅子1を運搬することができる。
(6)可動体は、シート2の背もたれ22であるので、大きなスペースを占める背もたれ22をベース3に向かって折り畳むことができ、さらに容易に簡易型電動車椅子1を運搬することができる。
【0051】
(7)報知制御部53は、検出手段4にて検出されたホイール31の回転に基づいて、LED34B,351R,351Lを制御することによって、簡易型電動車椅子1の動作状態を報知するので、簡易型電動車椅子1の周囲に簡易型電動車椅子1の速度や加速度などの動作状態を報知することができる。
(8)回転情報取得部51は、検出手段4にて検出された各ホイール31の回転に基づいて、各ホイール31のそれぞれの回転速度および回転加速度の情報を取得し、報知制御部53は、回転情報取得部51にて取得された情報に基づいて、LED34B,351R,351Lを制御することによって、簡易型電動車椅子1の動作状態を報知するので、ホイール31の回転角度の時系列情報を記憶しておくことなく、簡易型電動車椅子1の周囲に簡易型電動車椅子1の速度や加速度などの動作状態を報知することができる。
【0052】
(9)検出手段4は、複数のホイール31のそれぞれの回転を独立して検出し、報知制御部53は、回転情報取得部51にて取得された情報に基づいて、LED34B,351R,351Lを制御することによって、簡易型電動車椅子1の動作状態を報知するので、右左折や旋回などの簡易型電動車椅子1の動作状態を報知することができる。
(10)報知手段は、LED34B,351R,351L(発光ダイオード)であるので、簡易型電動車椅子1の周囲に視覚を通して簡易型電動車椅子1の動作状態を報知することができる。
(11)報知制御部53は、検出手段4にて検出されたホイール31の回転に基づいて、LED34B,351R,351Lを制御することによって、簡易型電動車椅子1の動作状態を報知するので、ホイール31を駆動するモータ321を備える簡易型電動車椅子1であっても簡易型電動車椅子1の周囲に簡易型電動車椅子1の動作状態を報知することができる。
【0053】
(12)モータ321、ギア(モータ側ギア322、およびホイール側ギア323)、およびホイール31は互いに直接的に接続され、制御手段5は、モータ321のトルクに基づいて、モータ321を制御するので、搭乗者は、切り替え操作を要することなく、手動および自動にて簡易型電動車椅子1を走行させることができる。
【0054】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、中空軸体324は、モータ321の回転をホイール31に伝達するホイール側ギア323に固定されるとともに、ホイール側ギア323の回転に伴って回転していた。
これに対して、中空軸体は、モータの出力軸を採用してもよい。
【0055】
図28は、本発明の変形例に係るモータユニットの詳細構成を示す斜視図である。図29は、ホイール側から見たモータユニットの詳細構成を示す分解斜視図である。図30は、モータユニット側から見たモータユニットの詳細構成を示す分解斜視図である。なお、図28図30では、モータユニット32Aは、左側泥除け部25側に配置されたモータユニット32Aのカバーを外した状態を図示し、ホイール31は、ハブ31Aの中心部位のみを図示している。以下の図面においても同様である。
【0056】
モータユニット32Aは、図28図30に示すように、ホイール31を駆動することによって、シート2を走行させるモータ325と、モータ325の出力軸としての中空軸体326とを備えている(図29参照)。
【0057】
中空軸体326は、図29に示すように、略円筒状に形成されるとともに、+Y軸方向側の端部における内面に沿って取り付けられた軸体側セレーション326Aを備えている。
また、ホイール31のハブ31Aは、図30に示すように、その軸穴と同心状となるように-Y軸方向側に取り付けられたハブ側セレーション31Cを備えている。
ハブ側セレーション31Cは、軸体側セレーション326Aに挿入されて篏合し、モータ325の中空軸体326の回転は、そのままホイール31に伝達されることになる。
【0058】
図31は、モータユニットの正面図である。図32は、モータユニットのBB断面図である。
ホイール31およびモータユニット32Aは、前述したように、固定部材33を介して互いに固定されている。
固定部材33は、図29図32に示すように、円筒状の軸部331と、軸部331の内部に挿入された押ボタン332と、軸部331の-Y軸方向側に突没自在に取り付けられた2つの球状の突起部333とを備えている。
【0059】
図33は、ボタン部を押下した状態におけるモータユニットのBB断面図である。
ボタン部332Aを押下した状態において、固定部材33をY軸方向に沿って移動させると、固定部材33は、図33の太矢印に示すように、ハブ31Aの軸穴および中空軸体326に対して挿抜することができる。
また、ボタン部332Aを解放した状態において、固定部材33は、図32に示すように、ハブ31Aの軸穴および中空軸体326に対して挿抜することができなくなるので、ホイール31およびモータユニット32Aを互いに固定することができる。
【0060】
したがって、ホイール31およびモータユニット32Aを互いに固定する場合には、簡易型電動車椅子1の搭乗者は、モータユニット32Aの軸体側セレーション326Aにホイール31のハブ側セレーション31Cを挿入した後、ボタン部332Aを押下して固定部材33をハブ31Aの軸穴および中空軸体326に対して挿入し、ボタン部332Aを解放することによって、ホイール31およびモータユニット32Aを互いに固定することができる。
【0061】
このような構成によれば、中空軸体326は、モータ325の出力軸であるので、ベース3に対して新たな部材を取り付けることなく、ベース3に対してホイール31を着脱自在に取り付けることができる。
また、このような構成によれば、モータ325は、ホイール31に対して直接的に接続され、制御手段5は、モータ325のトルクに基づいて、モータ325を制御するので、搭乗者は、切り替え操作を要することなく、手動および自動にて簡易型電動車椅子1を走行させることができる。
【0062】
また、前記実施形態では、車椅子は、ホイール31を駆動するモータ321を備え、手動および自動にて走行可能な簡易型電動車椅子1であったが、手動にて走行不能な電動車椅子であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明は、簡易型電動車椅子に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 簡易型電動車椅子(電動車椅子,車椅子)
2 シート
3 ベース
4 検出手段
5 制御手段
21 座面部
22 背もたれ部
31 ホイール
32 モータユニット
33 固定部材
34 バッテリ
34B LED(報知手段)
35 フットレスト
51 回転情報取得部
52 モータ駆動制御部
53 報知制御部
321 モータ
322 モータ側ギア
323 ホイール側ギア
324 中空軸体
351R LED(報知手段)
351L LED(報知手段)
図1
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