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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ロータリーバルブおよび輸送システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 65/48 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
B65G65/48 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020187188
(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公開番号】P2022076682
(43)【公開日】2022-05-20
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】309042967
【氏名又は名称】株式会社片桐鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片桐 敏郎
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-090224(JP,U)
【文献】特開昭59-149229(JP,A)
【文献】特開2001-225955(JP,A)
【文献】特開平01-197226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 65/30-65/48
B65G 53/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローターとケーシングとを有するロータリーバルブであって、
前記ローターが、前記ケーシングに支持される軸部と、前記軸部から放射状に延びる複数のベーンと、を有し、
前記ケーシングが、ローター室を有する胴部と、前記ローター室に接続された入口部と、前記ローター室に接続され、前記入口部と対向するように配置された出口部と、を有し、
前記胴部が、前記ローター室ならびに前記ローター室に通じる第1開口および第2開口が設けられたフレームと、前記第1開口内に配置された第1可動板と、前記第2開口内に配置された第2可動板と、前記フレームと前記第1可動板との隙間を覆うように前記フレームの外面および前記第1可動板の外面に密着した第1ダイヤフラムと、前記フレームと前記第2可動板との隙間を覆うように前記フレームの外面および前記第2可動板の外面に密着した第2ダイヤフラムと、を有し、
前記第1可動板の内面および前記第2可動板の内面が、前記複数のベーンの先端を結ぶ円に沿う円弧凹面であり、
前記第1可動板および前記第2可動板が、前記ローター室に向けて押されるように構成され、
前記ケーシングが、前記胴部を囲むように配置された外筒部を有し、
前記外筒部と前記胴部の間に、流体室が設けられている、ロータリーバルブ。
【請求項2】
ローターとケーシングとを有するロータリーバルブであって、
前記ローターが、前記ケーシングに支持される軸部と、前記軸部から放射状に延びる複数のベーンと、を有し、
前記ケーシングが、ローター室を有する胴部と、前記ローター室に接続された入口部と、前記ローター室に接続され、前記入口部と対向するように配置された出口部と、を有し、
前記胴部が、前記ローター室ならびに前記ローター室に通じる第1開口および第2開口が設けられたフレームと、前記第1開口内に配置された第1可動板と、前記第2開口内に配置された第2可動板と、前記フレームと前記第1可動板との隙間を覆うように前記フレームの外面および前記第1可動板の外面に密着した第1ダイヤフラムと、前記フレームと前記第2可動板との隙間を覆うように前記フレームの外面および前記第2可動板の外面に密着した第2ダイヤフラムと、を有し、
前記第1可動板の内面および前記第2可動板の内面が、前記複数のベーンの先端を結ぶ円に沿う円弧凹面であり、
前記第1可動板および前記第2可動板が、前記ローター室に向けて押されるように構成され、
前記ローターが、前記複数のベーンを軸方向に挟む2つの円板形状の側板を有し、
前記側板の外面の周縁部には、径方向外方に向かうにしたがって前記側板の内面側に徐々に近づくように形成された環状のテーパー面が設けられ、
前記ロータリーバルブが、前記テーパー面に接する円環形状のローター用グランドパッキンと、前記第1可動板の両側端面に接する一の可動板用グランドパッキンと、前記第2可動板の両側端面に接する他の可動板用グランドパッキンと、を有し、
前記ローター用グランドパッキンと前記一の可動板用グランドパッキンおよび前記他の可動板用グランドパッキンとが、互いに接するように配置されている、ロータリーバルブ。
【請求項3】
前記ケーシングが、前記胴部を囲むように配置された外筒部を有し、
前記外筒部と前記ローターの前記側板との間に、流体室が設けられ、
前記流体室には、前記側板との間に前記ローター用グランドパッキンを挟む円環形状の保持部材が配置されている、請求項に記載のロータリーバルブ。
【請求項4】
前記第1可動板および前記第2可動板が、前記複数のベーンより摺動摩耗しやすい材料で構成されている、請求項1~請求項のいずれか一項に記載のロータリーバルブ。
【請求項5】
前記第1可動板の内面および前記第2可動板の内面には、2枚以上の前記ベーンが常に接している、請求項1~請求項のいずれか一項に記載のロータリーバルブ。
【請求項6】
ロータリーバルブと、前記ロータリーバルブに接続された輸送管と、前記輸送管に流体を供給する圧送装置と、を有する輸送システムであって、
前記ロータリーバルブが、請求項1~請求項のいずれか一項に記載のロータリーバルブであることを特徴とする輸送システム。
【請求項7】
前記ケーシングが、前記胴部を囲むように配置された外筒部を有し、
前記外筒部と前記胴部の間に、流体室が設けられており、
前記圧送装置が、前記流体室に流体を供給するように構成されている、請求項に記載の輸送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体の輸送に用いられるロータリーバルブおよびロータリーバルブを有する輸送システムに関する。特に、入口部と出口部との差圧が比較的大きいシステムに適したロータリーバルブおよびそれを有する輸送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のロータリーバルブの一例が特許文献1に開示されている。特許文献1のロータリーバルブは、ペレットやパウダーなどの粉粒体の定量供給装置(フィーダー)として用いられる。このロータリーバルブは、ローターと、ケーシングと、を有している。ローターは、放射状に配置された複数のベーンを有している。ケーシングは、ローター室を有する胴部と、ローター室に接続された入口部および出口部と、を有している。ロータリーバルブにおいて、粉粒体は、入口部を通ってローター室に進入し、ローターのベーン間に形成された凹部に収容される。ローターが回転すると、粉粒体は、凹部から出口部を通って輸送管に排出される。そして、輸送管に排出された粉粒体は、圧搾空気などの流体によって受け入れ設備まで輸送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-58871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロータリーバルブは、浚渫で掘り出された土砂などのスラッジの輸送にも用いられる。図6に、スラッジの輸送に用いられるロータリーバルブの一例を示す。図6のロータリーバルブ905は、上述した特許文献1のロータリーバルブと同様の構成を有している。ロータリーバルブ905は、ローター910と、ケーシング920と、を有している。ケーシング920は、ローター室927が設けられた胴部921を有している。ロータリーバルブ905において、スラッジは、入口部931を通ってローター室927に進入し、ローター910のベーン912間に形成された凹部912aに収容される。ローター910が回転すると、スラッジは、凹部912aから出口部932を通って図示しない輸送管に排出される。そして、輸送管に排出されたスラッジは、圧搾空気と水によって受け入れ設備まで輸送される。
【0005】
比較的重量のある土砂などのスラッジを輸送するため、輸送管には高圧の空気と水が導入される。そのため、ロータリーバルブ905の入口部931と出口部932との差圧が大きくなる。そこで、ロータリーバルブ905では、放射方向に移動可能なチップ部材919を各ベーン912の先端に設け、チップ部材919を胴部921の内面921aに押し付けている。これにより、入口部931と出口部932との気密性を高めて、スラッジの逆流を抑制している。
【0006】
しかしながら、図7に示すように、チップ部材919はベーン912の先端に設けられたスリット912b内に移動可能に配置されており、ベーン912とチップ部材919との間には小さな隙間がある。そのため、上記差圧によってこの隙間をスラッジが通り抜け、スラッジに含まれる粉粒体によってベーン912が摩耗して隙間が拡大し、より多くのスラッジが通り抜けるようになってさらにベーン912の摩耗が進む。これにより、ローター910の寿命が短くなってしまうという問題があった。図7において、スラッジの流れを矢印で模式的に示している。
【0007】
そこで、本発明は、粉粒体による摩耗を効果的に抑制できるロータリーバルブおよびロータリーバルブを有する輸送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るロータリーバルブは、ローターとケーシングとを有するロータリーバルブであって、前記ローターが、前記ケーシングに支持される軸部と、前記軸部から放射状に延びる複数のベーンと、を有し、前記ケーシングが、ローター室を有する胴部と、前記ローター室に接続された入口部と、前記ローター室に接続され、前記入口部と対向するように配置された出口部と、を有し、前記胴部が、前記ローター室ならびに前記ローター室に通じる第1開口および第2開口が設けられたフレームと、前記第1開口内に配置された第1可動板と、前記第2開口内に配置された第2可動板と、前記フレームと前記第1可動板との隙間を覆うように前記フレームの外面および前記第1可動板の外面に密着した第1ダイヤフラムと、前記フレームと前記第2可動板との隙間を覆うように前記フレームの外面および前記第2可動板の外面に密着した第2ダイヤフラムと、を有し、前記第1可動板の内面および前記第2可動板の内面が、前記複数のベーンの先端を結ぶ円に沿う円弧凹面であり、前記第1可動板および前記第2可動板が、前記ローター室に向けて押されるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、フレームに設けられた第1開口内に第1可動板が配置され、第2開口内に第2可動板が配置されている。フレームと第1可動板との隙間が第1ダイヤフラムによって覆われ、フレームと第2可動板との隙間が第2ダイヤフラムによって覆われている。第1可動板の内面および第2可動板の内面が、ローターの複数のベーンの先端を結ぶ円に沿う円弧凹面である。そして、第1可動板および第2可動板が、フレームに設けられたローター室に向けて押されるように構成されている。このようにしたことから、第1可動板の内面および第2可動板の内面が、ローター室に配置されたローターのベーンの先端に押し付けられる。そのため、複数のベーンに移動可能な部材を設けることなく、ローター室に接続された入口部と出口部との気密性を高めることができる。これにより、複数のベーンにおいてスラッジが通り抜け可能な隙間が生じることを回避して、粉粒体による摩耗を効果的に抑制できる。
【0010】
本発明において、前記ケーシングが、前記胴部を囲むように配置された外筒部を有し、前記外筒部と前記胴部の間に、流体室が設けられていることが好ましい。このようにすることで、流体室に供給された流体の圧力が第1可動板の外面全体および第2可動板の外面全体に均一に加わり、当該流体の圧力によって第1可動板および第2可動板がローター室に向けて押される。そのため、第1可動板および第2可動板を押す力が偏在してしまうことを抑制できる。
【0011】
本発明において、前記ローターが、前記複数のベーンを軸方向に挟む2つの円板形状の側板を有し、前記側板の外面の周縁部には、径方向外方に向かうにしたがって前記側板の内面側に徐々に近づくように形成された環状のテーパー面が設けられ、前記ロータリーバルブが、前記テーパー面に接する円環形状のローター用グランドパッキンと、前記可動板の両側端面に接する可動板用グランドパッキンと、を有し、前記ローター用グランドパッキンと前記可動板用グランドパッキンとが、互いに接するように配置されていることが好ましい。このようにすることで、ローター用グランドパッキンと可動板用グランドパッキンとが一体となって、ローターと胴部との間を封止することができる。そのため、ローターと胴部との間を封止するための他のパッキンを省略できる。
【0012】
本発明において、前記ケーシングが、前記胴部を囲むように配置された外筒部を有し、前記外筒部と前記ローターの前記側板との間に、流体室が設けられ、前記流体室には、前記側板との間に前記ローター用グランドパッキンを挟む円環形状の保持部材が配置されていることが好ましい。このようにすることで、流体室に供給された流体の圧力が保持部材に加わり、当該流体の圧力によって保持部材がローターの側板に向けて押される。そのため、ローター用グランドパッキンをより確実に側板に押し付けることができる。
【0013】
本発明において、前記可動板が、前記複数のベーンより摺動摩耗しやすい材料で構成されていることが好ましい。複数のベーンは可動板の内面に摺動しながら回転する。そして、可動板が複数のベーンより摺動摩耗しやすい材料で構成されていることで、複数のベーンより可動板の摩耗が大きくなる。これにより、複数のベーンの摩耗を抑制して、ベーン間に形成された凹部の容積が小さくなることを抑制できる。また、可動板の摩耗が進んでも、当該可動板の内面が、前記複数のベーンの先端を結ぶ円に沿う円弧凹面となるように再生される。
【0014】
本発明において、前記可動板の内面には、2枚以上の前記ベーンが常に接していることが好ましい。このようにすることで、入口部と出口部との気密性をより高めることができる。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る輸送システムは、ロータリーバルブと、前記ロータリーバルブに接続された輸送管と、前記輸送管に流体を供給する圧送装置と、を有する輸送システムであって、前記ロータリーバルブが、上記ロータリーバルブであることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、輸送システムのロータリーバルブが、上記ロータリーバルブであるので、複数のベーンに移動可能な部材を設けることなく、ローター室に接続された入口部と出口部との気密性を高めることができる。これにより、複数のベーンにおいてスラッジが通り抜け可能な隙間が生じることを回避して、粉粒体による摩耗を効果的に抑制できる。
【0017】
本発明において、前記ケーシングが、前記胴部を囲むように配置された外筒部を有し、前記外筒部と前記胴部の間に、流体室が設けられており、前記圧送装置が、前記流体室に流体を供給するように構成されていることが好ましい。このようにすることで、流体室の圧力がローター室の圧力以上になり、ローター室から流体室にスラッジが漏れることを抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、粉粒体による摩耗を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施例に係る輸送システムの概略構成を示す図である。
図2図1の輸送システムが有するロータリーバルブの斜視図である。
図3図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4図3のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図2のロータリーバルブにおいて外筒部の一部を取り外した状態を示す正面図である。
図6】従来のロータリーバルブを示す断面図である。
図7図6のロータリーバルブが有するローターのベーンおよびその近傍の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施例に係る輸送システムについて、図1図5を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施例に係る輸送システムの概略構成を示す図である。図2は、図1の輸送システムが有するロータリーバルブの斜視図である。図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。図4は、図3のIV-IV線に沿う断面図である。図5は、図2のロータリーバルブにおいて外筒部の周壁部を取り外した状態を示す正面図である。図2図5において、X方向を左右方向といい、Y方向を前後方向といい、Z方向を上下方向という。
【0022】
図1に示す輸送システム1は、例えば、浚渫で掘り出された土砂などのスラッジSを輸送するために用いられる。輸送システム1は、ロータリーバルブ5を有している。ロータリーバルブ5には、ホッパー81と、輸送管82と、が接続されている。ホッパー81には、コンベア83によって搬送されたスラッジSが投入される。輸送管82には、ロータリーバルブ5からスラッジSが排出される。輸送管82内のスラッジSは、圧送装置84から供給された高圧の空気と水によって受け入れ設備85に輸送される。
【0023】
図2図5に示すように、ロータリーバルブ5は、ローター10と、ケーシング20と、を有している。
【0024】
ローター10は、円柱形状の軸部11を有している。軸部11は、左右方向に沿うように配置されている。軸部11には、図示しない回転駆動機構が接続されている。ローター10は、複数の平板形状のベーン12を有している。各ベーン12は、軸部11から放射方向に延びるように配置されている。ローター10は、2つの円板形状の側板13を有している。2つの側板13は、複数のベーン12を軸方向(X方向)に挟むように配置されている。軸部11と複数のベーン12と2つの側板13とは、溶接によって一体的に接合されている。ベーン12間には、スラッジSを収容する凹部12aが形成されている。
【0025】
側板13の外面13aの周縁部には、側板13の径方向外方に向かうにしたがって側板13の内面13b側に徐々に近づくように形成された環状のテーパー面13cが設けられている。テーパー面13cに接するように、円環形状のローター用グランドパッキン16が配置されている。
【0026】
ローター10は、2つのカラー14を有している。カラー14は、円環形状を有している。カラー14の内側には、軸部11が挿通されている。カラー14は、ボルトによって側板13の外面13aに固定されている。また、カラー14と同軸になるように、円環形状の保持部材15が配置されている。保持部材15の外径は、側板13の径と同じである。保持部材15の内径は、カラー14の外径より大きい。保持部材15と側板13のテーパー面13cとの間にローター用グランドパッキン16が挟まれている。また、保持部材15とカラー14との間に、Vパッキン17が挟まれている。本実施例において、軸部11、ベーン12、側板13、カラー14および保持部材15は、ステンレス製である。
【0027】
ケーシング20は、胴部21と、入口部31と、出口部32と、外筒部40と、を有している。
【0028】
胴部21は、フレーム22と、第1可動板23と、第2可動板24と、第1ダイヤフラム25と、第2ダイヤフラム26と、を有している。
【0029】
フレーム22は、円筒形状を有している。フレーム22の内側にはローター室27が設けられている。ローター室27には、ローター10が配置される。ローター室27の径(フレーム22の内径)は、側板13の径と同一である。ローター室27の径は、複数のベーン12の先端を結ぶ円の径(すなわちローター10の回転時にベーン12の先端が描く円形の軌跡の径)とも同一である。フレーム22は、矩形状の第1開口22aと、矩形状の第2開口22bと、を有している。第1開口22aと第2開口22bとは、互いに前後方向(水平方向)に対向するように配置されている。
【0030】
第1可動板23は、断面が円弧形状となる板形状を有している。第1可動板23の幅(左右方向の大きさ)は、複数のベーン12の幅と同じである。第1可動板23は、第1開口22a内に配置されている。第1可動板23の内面23aは、ローター10の複数のベーン12の先端を結ぶ円に沿う円弧凹面である。第1可動板23の外面は、フレーム22の外面に沿う円弧凸面である。第1可動板23の上端面とフレーム22との間には隙間があいており、第1可動板23の下端面とフレーム22との間にも隙間があいている。第1可動板23の両側端面(左右方向に対向する2つの端面)とフレーム22との間には隙間があいており、当該隙間に可動板用グランドパッキン28が配置されている。可動板用グランドパッキン28は、フレーム22と第1可動板23とに挟まれている。
【0031】
第2可動板24は、断面が円弧形状となる板形状を有している。第2可動板24の幅は、複数のベーン12の幅と同じである。第2可動板24は、第2開口22b内に配置されている。第2可動板24の内面24aは、ローター10の複数のベーン12の先端を結ぶ円に沿う円弧凹面である。第2可動板24の外面は、フレーム22の外面に沿う円弧凸面である。第2可動板24の上端面とフレーム22との間には隙間があいており、第2可動板24の下端面とフレーム22との間にも隙間があいている。第2可動板24の両側端面とフレーム22との間には隙間があいており、当該隙間に可動板用グランドパッキン29が配置されている。可動板用グランドパッキン29は、フレーム22と第2可動板24とに挟まれている。
【0032】
第1可動板23および第2可動板24は、無展性材料(例えば、鋳物、砲金、結晶金属、樹脂セメント)で構成されている。第1可動板23および第2可動板24は、ベーン12より摺動摩耗しやすい材料で構成されている。
【0033】
第1可動板23の内面23aおよび第2可動板24の内面24aには、2枚以上のベーン12が常に接している。
【0034】
第1ダイヤフラム25は、四角枠形状を有するシートである。第1ダイヤフラム25は、フレーム22と第1可動板23との隙間を覆うように配置されている。第1ダイヤフラム25は、フレーム22の外面および第1可動板23の外面に密着するように押さえ部材(図示なし)によって押し付けられている。第1ダイヤフラム25は、第1可動板23を前後方向に移動可能に保持している。
【0035】
第2ダイヤフラム26は、四角枠形状を有するシートである。第2ダイヤフラム26は、フレーム22と第2可動板24との隙間を覆うように配置されている。第2ダイヤフラム26は、フレーム22の外面および第2可動板24の外面に密着するように押さえ部材(図示なし)によって押し付けられている。第2ダイヤフラム26は、第2可動板24を前後方向に移動可能に保持している。
【0036】
第1ダイヤフラム25および第2ダイヤフラム26は、可とう性を有する材料(例えば、硬質ゴム、金属ワイヤー入りゴム、麻入りゴム)で構成されている。
【0037】
入口部31は、円管形状を有している。入口部31は、胴部21から上方に延びるように当該胴部21に一体的に接合されている。入口部31は、ローター室27に接続されている。入口部31には、ホッパー81が接続されている。入口部31は、大気開放されている。
【0038】
出口部32は、円管形状を有している。出口部32は、胴部21から下方に延びるように当該胴部21に一体的に接合されている。出口部32は、ローター室27に接続されている。入口部31と出口部32とは上下方向に対向するように配置されている。出口部32には、輸送管82が接続されている。輸送管82には、圧送装置84から高圧の空気と水が供給される。
【0039】
外筒部40は、両端部が塞がれた円筒形状を有している。外筒部40は、胴部21を囲うように配置されている。外筒部40は、周壁部41と、2つの側壁部42と、を有している。周壁部41は、前後方向に分割可能に形成されている。2つの側壁部42は、周壁部41を軸方向(X方向)に挟むように配置されている。側壁部42には、スタッフィングボックス43が設けられている。スタッフィングボックス43には、軸受44およびパッキン45が配置されている。軸受44は、ローター10の軸部11を支持している。パッキン45は、軸部11とスタッフィングボックス43との間を封止している。また、各側壁部42には、複数の調整ねじ46が取り付けられている。複数の調整ねじ46は、保持部材15をローター用グランドパッキン16に押し付ける力を調整する。
【0040】
周壁部41と胴部21との間には、第1流体室47が形成されている。側壁部42とローター10の側板13との間には、第2流体室48が形成されている。第1流体室47と第2流体室48とは互いに接続されている。第1流体室47および第2流体室48には、圧送装置84から配管86を介して高圧の水が供給される。配管86には、図示しない脱気弁が設けられている。脱気弁は、配管86を流れる水から空気を抜き、第1流体室47および第2流体室48に供給される水の非圧縮性機能を確保する。なお、ロータリーバルブ5において取り扱う粉粒体が水分の混入が好ましくないものである場合、第1流体室47および第2流体室48にゲル化水(例えば、吸水ポリマー、ゼラチン、寒天)を供給するようにしてもよい。
【0041】
第1流体室47に供給された水は、第1可動板23および第2可動板24をローター室27に向けて押している。第2流体室48に供給された水は、保持部材15をローター用グランドパッキン16に向けて押している。
【0042】
次に、ロータリーバルブ5の動作について説明する。ロータリーバルブ5において、ホッパー81に投入されたスラッジSは、入口部31を通り、ローター10の凹部12aに収容される。ローター10が回転されると、スラッジSは、凹部12aから出口部32を通り、輸送管82に排出される。輸送管82に排出されたスラッジSは高圧の空気と水によって受け入れ設備85に輸送される。
【0043】
ロータリーバルブ5の第1流体室47には、圧送装置84から高圧の水が供給されている。第1流体室47の高圧の水は、第1可動板23および第2可動板24をローター室27に向けて押している。これにより、第1可動板23の内面23aおよび第2可動板24の内面24aが、複数のベーン12の先端に押し付けられ、入口部31と出口部32との気密性が確保される。そのため、入口部31と出口部32との圧力差が大きい場合でも、スラッジSの逆流を抑制できる。
【0044】
以上説明したように、本実施例のロータリーバルブ5は、ローター10とケーシング20とを有している。ローター10が、ケーシング20に支持される軸部11と、軸部11から放射状に延びる複数のベーン12と、を有している。ケーシング20が、ローター室27を有する胴部21と、ローター室27に接続された入口部31と、ローター室27に接続され、入口部31と上下方向に対向するように配置された出口部32と、を有している。胴部21が、フレーム22と、第1可動板23と、第2可動板24と、第1ダイヤフラム25と、第2ダイヤフラム26と、を有している。フレーム22は、ローター室27ならびにローター室27に通じる第1開口22aおよび第2開口22bが設けられている。第1可動板23は、第1開口22a内に配置されている。第2可動板24は、第2開口22b内に配置されている。第1ダイヤフラム25は、フレーム22と第1可動板23との隙間を覆うようにフレーム22の外面および第1可動板23の外面に密着している。第2ダイヤフラム26は、フレーム22と第2可動板24との隙間を覆うようにフレーム22の外面および第2可動板24の外面に密着している。第1開口22aおよび第2開口22bは、前後方向に対向するように配置されている。第1可動板23の内面23aおよび第2可動板24の内面24aが、複数のベーン12の先端を結ぶ円に沿う円弧凹面である。そして、第1可動板23および第2可動板24が、ローター室27に向けて押されるように構成されている。
【0045】
このようにしたことから、第1可動板23の内面23aおよび第2可動板24の内面24aが、ローター室27に配置されたローター10のベーン12の先端に押し付けられる。そのため、複数のベーン12に移動可能な部材を設けることなく、ローター室27に接続された入口部31と出口部32との気密性を高めることができる。これにより、複数のベーン12においてスラッジSが通り抜け可能な隙間が生じることを回避して、粉粒体による摩耗を効果的に抑制できる。
【0046】
また、ケーシング20が、胴部21を囲むように配置された外筒部40を有している。外筒部40と胴部21の間に、第1流体室47が設けられている。このようにすることで、第1流体室47に供給された水の圧力が第1可動板23の外面全体および第2可動板24の外面全体に均一に加わり、当該圧力によって第1可動板23および第2可動板24がローター室27に向けて押される。そのため、第1可動板23および第2可動板24を押す力が偏在してしまうことを抑制できる。なお、ロータリーバルブ5において、ばね部材などを用いて第1可動板23および第2可動板24をローター室27に向けて押す構成を採用してもよい。
【0047】
また、ローター10が、複数のベーン12を軸方向に挟む2つの円板形状の側板13を有している。側板13の外面13aの周縁部には、径方向外方に向かうにしたがって側板13の内面13b側に徐々に近づくように形成された環状のテーパー面13cが設けられている。ロータリーバルブ5が、各側板13のテーパー面13cに接する円環形状のローター用グランドパッキン16と、第1可動板23の両側端面に接する可動板用グランドパッキン28と、第2可動板24の両側端面に接する可動板用グランドパッキン29と、を有している。そして、ローター用グランドパッキン16と、可動板用グランドパッキン28、29と、が接するように配置されている。このようにすることで、ローター用グランドパッキン16と可動板用グランドパッキン28、29とが一体となって、ローター10と胴部21との間を封止することができる。そのため、ローター10と胴部21との間を封止するための他のパッキンを省略できる。
【0048】
また、ケーシング20が、胴部21を囲むように配置された外筒部40を有している。外筒部40とローター10の側板13との間に、第2流体室48が設けられている。第2流体室48には、側板13との間にローター用グランドパッキン16を挟む円環形状の保持部材15が配置されている。このようにすることで、第2流体室48に供給された水の圧力が保持部材15に加わり、当該圧力によって保持部材15がローター10の側板13に向けて押される。そのため、ローター用グランドパッキン16をより確実に側板13に押し付けることができる。
【0049】
また、第1可動板23および第2可動板24が、複数のベーン12より摺動摩耗しやすい材料で構成されている。複数のベーン12は第1可動板23の内面23aおよび第2可動板24の内面24aに摺動しながら回転する。そして、第1可動板23および第2可動板24が複数のベーン12より摺動摩耗しやすい材料で構成されていることで、複数のベーン12より第1可動板23および第2可動板24の摩耗が大きくなる。これにより、複数のベーン12の摩耗を抑制して、ベーン12間に形成された凹部12aの容積が小さくなることを抑制できる。また、第1可動板23および第2可動板24の摩耗が進んでも、それぞれの内面23aおよび内面24aが、複数のベーン12の先端を結ぶ円に沿う円弧凹面となるように再生される。
【0050】
また、第1可動板23の内面23aおよび第2可動板24の内面24aには、2枚以上のベーン12が常に接している。このようにすることで、入口部31と出口部32との気密性をより高めることができる。なお、本実施例において、ローター10は8枚のベーン12を有するものであったが、ベーン12の枚数は本発明の趣旨に反しない限り任意である。
【0051】
また、輸送システム1は、圧送装置84が第1流体室47および第2流体室48に流体を供給するように構成されている。このようにすることで、第1流体室47の圧力および第2流体室48の圧力がローター室27の圧力以上になる。そのため、ローター室27から第1流体室47および第2流体室48にスラッジSが漏れることを抑制できる。
【0052】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1…輸送システム、5…ロータリーバルブ、10…ローター、11…軸部、12…ベーン、12a…凹部、13…側板、13a…外面、13b…内面、13c…テーパー面、14…カラー、15…保持部材、16…ローター用グランドパッキン、17…Vパッキン、20…ケーシング、21…胴部、22…フレーム、22a…第1開口、22b…第2開口、23…第1可動板、23a…内面、24…第2可動板、24a…内面、25…第1ダイヤフラム、26…第2ダイヤフラム、27…ローター室、28、29…可動板用グランドパッキン、31…入口部、32…出口部、40…外筒部、41…周壁部、42…側壁部、43…スタッフィングボックス、44…軸受、45…パッキン、46…調整ねじ、47…第1流体室、48…第2流体室、81…ホッパー、82…輸送管、83…コンベア、84…圧送装置、85…受け入れ設備、86…配管、S…スラッジ

図1
図2
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図5
図6
図7