(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ダストカバー
(51)【国際特許分類】
B62D 1/16 20060101AFI20241002BHJP
F16J 3/04 20060101ALI20241002BHJP
F16J 15/52 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B62D1/16
F16J3/04 B
F16J15/52
(21)【出願番号】P 2021020996
(22)【出願日】2021-02-12
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】523207386
【氏名又は名称】NSKステアリング&コントロール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 誠一
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-006268(JP,A)
【文献】特許第6683130(JP,B2)
【文献】特開2008-080991(JP,A)
【文献】特開2019-018730(JP,A)
【文献】特開2010-249149(JP,A)
【文献】特開平02-254056(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0081481(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0115143(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/16
F16J 3/04,15/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダッシュパネルの筒状部材を貫通して軸方向に延びるステアリングシャフトの外周側に設けられるブッシュと、
前記筒状部材と前記ブッシュとの間の隙間を塞ぐ環状のベローズと、
前記ベローズの大径側端部の内周側に、少なくとも一部が位置する筒状の取付部材と、
を備え、
前記ブッシュは、
前記ステアリングシャフトの中心軸の軸回りの周方向に延びる筒状の本体部と、
前記本体部の外周面から径方向外側に向けて突出し、且つ、前記周方向に延びる凸部と、を備え、前記本体部および前記凸部は、一体成形品であり、
前記凸部の軸方向の両端と、前記本体部の軸方向端とが離隔し、
前記中心軸および前記凸部を含む断面において、前記凸部に対して軸方向に隣接する部位の外周面の径方向の高さは、
前記凸部から前記本体部の軸方向端まで略同一の高さであり、
前記ベローズは、
前記凸部に嵌る凹部が設けられる筒状のブッシュ嵌合部と、
前記取付部材に取り付けられる取付部と、
前記ブッシュ嵌合部及び前記取付部を連結する可撓部と、を有する、
ダストカバー。
【請求項2】
前記中心軸および前記凸部を含む断面において、前記凸部に対して軸方向に隣接する部位の外周面の径方向の高さは、
前記本体部の外周面以上前記凸部の外周面未満の高さである、
請求項1に記載のダストカバー。
【請求項3】
前記ブッシュの前記凸部は、前記周方向に連続して延びる1つの環状凸部であり、
前記ブッシュ嵌合部の前記凹部は、前記環状凸部に嵌る環状凹部である、
請求項1または2に記載のダストカバー。
【請求項4】
前記凸部は、前記本体部における前記軸方向の中央に位置する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のダストカバー。
【請求項5】
前記環状凸部には、径方向外側端部から前記軸方向に突出する突起部が設けられ、
前記環状凹部には、内壁面から軸方向に凹み、且つ、前記突起部が嵌る溝が設けられる、
請求項3に記載のダストカバー。
【請求項6】
前記ブッシュ嵌合部は、前記ブッシュの前記本体部の前記外周面に接する第1部位を有し、
前記ベローズは、軸方向の一方側に凸となる湾曲形状を有し、
前記第1部位における径方向の第1厚さは、
前記可撓部における軸方向の一方側の頂部の第2厚さの2倍以上である、
請求項1から5のいずれか1項に記載のダストカバー。
【請求項7】
前記ブッシュの外周面は、
前記ブッシュ嵌合部に接する、前記本体部の前記外周面と、
前記環状凸部の外周面と、を有し、
前記本体部の前記外周面の軸方向長さは、前記環状凸部の外周面の軸方向長さよりも長い、
請求項3または5に記載のダストカバー。
【請求項8】
前記環状凸部の外周面には、当該外周面から径方向外側に突出する突出部が設けられ、前記環状凹部には、前記突出部に嵌る凹みが設けられる、
請求項7に記載のダストカバー。
【請求項9】
前記環状凸部に軸方向で隣接し、前記本体部の前記外周面から径方向外側に向けて突出し、且つ、前記本体部の外周面からの径方向高さが前記環状凸部の径方向高さ以下である突起部を有し、
前記環状凸部、前記突起部および前記本体部は、一体成形品である、
請求項3、5、7または8に記載のダストカバー。
【請求項10】
前記筒状部材の外周にバンドを備え、前記バンドを締め付けることにより前記筒状部材を変形させる、請求項1から9のいずれか1項に記載のダストカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステアリングシャフトとダッシュパネルとの間の隙間に配置されるダストカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリングホイールの位置の調整又は走行中の振動等に伴ってステアリングシャフトが移動するため、ステアリングシャフトとダッシュパネルとの間には所定の隙間が設けられる。その一方、粉塵等の異物を含む外気及びエンジンルームで生じる音等の車室内への侵入は防がれる必要がある。このため、ステアリングシャフトとダッシュパネルとの間の隙間にダストカバーが設けられる。例えば特許文献1および2には、ダストカバーの一例が記載されている。なお、ダストカバーは、ブッシュを有する。ブッシュは、ダッシュパネルの筒状部材を貫通して軸方向に延びるステアリングシャフトの外周側に設けられる。ブッシュは、例えば樹脂の射出成形によって製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-6268号公報
【文献】特許第6683130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
より少ない数の金型でブッシュを製造することが望まれている。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、より少ない数の金型で製造するブッシュを備えるダストカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様のダストカバーは、ダッシュパネルの筒状部材を貫通して軸方向に延びるステアリングシャフトの外周側に設けられるブッシュと、前記筒状部材と前記ブッシュとの間の隙間を塞ぐ環状のベローズと、前記ベローズの大径側端部の内周側に、少なくとも一部が位置する筒状の取付部材と、を備え、前記ブッシュは、前記ステアリングシャフトの中心軸の軸回りの周方向に延びる筒状の本体部と、前記本体部の外周面から径方向外側に向けて突出し、且つ、前記周方向に延びる凸部と、を備え、前記本体部および前記凸部は、一体成形品であり、前記凸部の軸方向の両端と、前記本体部の軸方向端とが離隔し、前記中心軸および前記凸部を含む断面において、前記凸部に対して軸方向に隣接する部位の外周面の径方向の高さは、前記凸部から前記本体部の軸方向端まで略同一の高さであり、前記ベローズは、前記凸部に嵌る凹部が設けられる筒状のブッシュ嵌合部と、前記取付部材に取り付けられる取付部と、前記ブッシュ嵌合部及び前記取付部を連結する可撓部と、を有する。
【0007】
このように、本開示に係るブッシュは、筒状の本体部と、凸部とを有し、本体部および凸部は、一体成形品である。また、凸部に対して軸方向に隣接する部位の外周面の径方向の高さは、凸部から本体部の軸方向端まで略同一の高さである。
【0008】
ブッシュを射出成形で製造する場合、例えば、複数のスライド式金型を用いる。その際、複数の金型の分割線であるパーティングラインを設定して、金型の個数および形状を決める。ここで、ブッシュが、複数の凸部を有する場合は、金型の数が3つ以上必要となる。即ち、ブッシュが、本体部と2つの凸部とを備える場合は、2つの金型で成形しようとすると、パーティングラインを、ブッシュの径方向に延び且つ2つの凸部の間を通るように設定した場合に、前述の2つの凸部がアンダーカットとなって成形できない。また、そのほかのパーティングラインを設定しても、2つの金型では成形できない。
【0009】
これに対して、本開示のブッシュは、凸部が1つであり、且つ、凸部に対して軸方向に隣接する部位の外周面の径方向の高さは、凸部から本体部の軸方向端まで略同一の高さである。このため、ブッシュの径方向に延びるパーティングラインが凸部を通るように設定すれば、2つの金型で成形する場合に凸部がアンダーカットとならない。なお、「略同一の高さ」とは、外周面の部位のうち、凸部に隣接する部位の高さと本体部の軸方向端の高さとが完全に同一でなくてもよいことを示す。例えば、ブッシュ成形後に金型からブッシュを取り出しやすくするために、ブッシュの外周面に予め設ける抜き勾配が、例えば1度程度でもよい。ただし、抜き勾配をなくしてもよい。即ち、抜き勾配が0度であってもよい。
【0010】
凸部を上記のような構成にすることにより、ブッシュを成形する金型を2つにすることができる。このように、金型の数を極力少なくすることにより、金型の管理工数および金型の製造コストをより低く抑えることができる。
【0011】
ダストカバーの望ましい態様として、前記中心軸および前記凸部を含む断面において、前記凸部に対して軸方向に隣接する部位の外周面の径方向の高さは、前記本体部の外周面以上前記凸部の外周面未満の高さである。前記凸部に対して軸方向に隣接する部位に突起部を設けない場合は、凸部に隣接する部位の径方向の高さは、前記本体部の外周面の高さと同一である。また、前記凸部に対して軸方向に隣接する部位に突起部を設ける場合は、当該突起部の高さが前記凸部の外周面未満の高さであれば、ブッシュ成形後に金型からブッシュを取り出す際に前記突起部が金型に干渉しない。以上より、凸部に隣接する部位の径方向の高さを、本体部の外周面以上凸部の外周面未満の高さに設定することにより、金型を用いてブッシュが成形しやすくなる。
【0012】
ダストカバーの望ましい態様として、前記ブッシュの前記凸部は、前記周方向に連続して延びる1つの環状凸部であり、前記ブッシュ嵌合部の前記凹部は、前記環状凸部に嵌る環状凹部である。従って、凸部の形状が単純になるため、金型を作製する工数が少なくなる。
【0013】
ダストカバーの望ましい態様として、前記凸部は、前記本体部における前記軸方向の中央に位置する。
【0014】
ブッシュの凸部は、ベローズの凹部に嵌ることによって、ベローズの軸方向の位置決めの作用をする。ここで、仮に、凸部が本体部における軸方向の中央よりも軸方向の一方側に片寄って配置されると、凹部もブッシュ嵌合部における軸方向の一方側に片寄って配置される。すると、ブッシュ嵌合部から凸部に対して軸方向に力が印加される場合に、ブッシュ嵌合部の軸方向の一方側から凸部に印加される力よりも、ブッシュ嵌合部の軸方向の他方側から凸部に印加される力の方が大きい。従って、凸部を本体部における軸方向の中央に位置することにより、凸部に印加される軸方向の力が、軸方向の一方側と他方側とで均等になるため、ベローズの軸方向の位置決め精度がより高くなる。
【0015】
ダストカバーの望ましい態様として、前記環状凸部には、径方向外側端部から前記軸方向に突出する突起部が設けられ、前記環状凹部には、内壁面から軸方向に凹み、且つ、前記突起部が嵌る溝が設けられる。これにより、環状凸部が環状凹部に、より強固に嵌められ、環状凸部が環状凹部から外れにくくなる。
【0016】
ダストカバーの望ましい態様として、前記ブッシュ嵌合部は、前記ブッシュの前記本体部の前記外周面に接する第1部位を有し、前記ベローズは、軸方向の一方側に凸となる湾曲形状を有し、前記第1部位における径方向の第1厚さは、前記可撓部における軸方向の一方側の頂部の第2厚さの2倍以上である。
【0017】
ブッシュ嵌合部の厚さを厚くすることにより、ブッシュに対するベローズの取付剛性を高めることができる。ただ、ベローズの全体の厚さを厚くすると、ダストカバー全体の重量が大きくなってしまうため、可撓部を薄くしたい。以上より、ブッシュ嵌合部の第1厚さを可撓部の頂部の第2厚さの2倍以上に設定することにより、ベローズのブッシュに対する取付剛性を高めることができ、且つ、可撓部を薄くしてダストカバー全体の重量を低減することが可能となる。
【0018】
ダストカバーの望ましい態様として、前記ブッシュの外周面は、前記ブッシュ嵌合部に接する、前記本体部の前記外周面と、前記環状凸部の外周面と、を有し、前記本体部の前記外周面の軸方向長さは、前記環状凸部の外周面の軸方向長さよりも長い。
【0019】
本体部の外周面は、ブッシュ嵌合部から押圧力が印加されことにより、ベローズのブッシュ嵌合部が本体部に取り付けられる。よって、本体部の外周面の軸方向長さをより長くすることにより、ブッシュに対するベローズの取付剛性をより高くすることが可能となる。
【0020】
ダストカバーの望ましい態様として、前記環状凸部の外周面には、当該外周面から径方向外側に突出する突出部が設けられ、前記環状凹部には、前記突出部に嵌る凹みが設けられる。この突出部が環状凹部の凹みに嵌ることによって、環状凸部の周方向の移動が制限されるため、突出部がブッシュの回り止めの機能を有する。
【0021】
ダストカバーの望ましい態様として、前記環状凸部に軸方向で隣接し、前記本体部の前記外周面から径方向外側に向けて突出し、且つ、前記本体部の外周面からの径方向高さが前記環状凸部の径方向高さ未満である突起部を有し、前記環状凸部、前記突起部および前記本体部は、一体成形品である。
【0022】
従って、例えば環状凸部の軸方向の中央にパーティングラインを設定すれば、2つのスライド型の金型で成形することが可能となる。また、突起部がブッシュの回り止めの機能を有する。
【0023】
ダストカバーの望ましい態様として、前記筒状部材の外周にバンドを備え、前記バンドを締め付けることにより前記筒状部材を変形させる。これにより、筒状部材と取付部材とでベローズを挟み込んで固定することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、より少ない数の金型で製造するブッシュを備えるダストカバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、第1実施形態のステアリング装置の模式図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態のステアリング装置の斜視図である。
【
図3】
図3は、車両に取り付けられたダストカバーの断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態のバンドの斜視図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態のダストカバーの正面図である。
【
図7】
図7は、
図6におけるブッシュおよびシールリップの断面図である。
【
図8】
図8は、
図7におけるVIII-VIII断面図である。
【
図9】
図9は、ベローズおよび取付部材の断面図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態のブッシュと当該ブッシュを成形する金型とを示す模式図である。
【
図12】
図12は、比較例のブッシュと当該ブッシュを成形する金型とを示す模式図である。
【
図13】
図13は、第1変形例のブッシュおよびシールリップの断面図である。
【
図15】
図15は、第2変形例のブッシュおよびシールリップの一部の断面図である。
【
図17】
図17は、第2変形例のベローズの一部の断面図である。
【
図18】
図18は、第2実施形態のダストカバーの断面図である。
【
図23】
図23は、第3変形例のブッシュおよびシールリップの断面図である。
【
図25】
図25は、第4変形例のブッシュおよびシールリップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0027】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のステアリング装置の模式図である。
図2は、第1実施形態のステアリング装置の斜視図である。
図1に示すように、ステアリング装置80は、ステアリングホイール81と、第1ステアリングシャフト82と、操舵力アシスト機構83と、第1ユニバーサルジョイント84と、第2ステアリングシャフト(ステアリングシャフト)85と、第2ユニバーサルジョイント86と、を備え、第3ステアリングシャフト87に接合されている。以下の説明においては、ステアリング装置80が搭載された車両における前方は単に前方と記載され、車両における後方は単に後方と記載される。
【0028】
図1に示すように、第1ステアリングシャフト82は、入力軸82aと、出力軸82bとを備える。入力軸82aの一方の端部がステアリングホイール81に連結され、入力軸82aの他方の端部が出力軸82bに連結される。また、出力軸82bの一方の端部が入力軸82aに連結され、出力軸82bの他方の端部が第1ユニバーサルジョイント84に連結される。
【0029】
図1に示すように、第2ステアリングシャフト85は、第1ユニバーサルジョイント84と第2ユニバーサルジョイント86とを連結している。第2ステアリングシャフト85の一方の端部が第1ユニバーサルジョイント84に連結され、他方の端部が第2ユニバーサルジョイント86に連結される。第3ステアリングシャフト87の一方の端部が第2ユニバーサルジョイント86に連結され、第3ステアリングシャフト87の他方の端部がステアリングギヤ88に連結される。
図2に示すように、第2ステアリングシャフト85は、ダッシュパネル10に設けられた開口部において、ダッシュパネル10を貫通している。ダッシュパネル10は、車室とエンジンルームとを隔てる仕切り板である。ダッシュパネル10は、開口部の周囲に筒状部材101を備えている。換言すれば、筒状部材101の内周面は、第2ステアリングシャフト85の外周面と対向する。
【0030】
図1に示すように、ステアリングギヤ88は、ピニオン88aと、ラック88bとを備える。ピニオン88aは、第3ステアリングシャフト87に連結される。ラック88bは、ピニオン88aに噛み合う。ステアリングギヤ88は、ピニオン88aに伝達された回転運動をラック88bで直進運動に変換する。ラック88bは、タイロッド89に連結される。ラック88bが移動することで車輪の角度が変化する。
【0031】
図1に示すように、操舵力アシスト機構83は、減速装置92と、電動モータ93とを備える。減速装置92は、例えばウォーム減速装置である。電動モータ93で生じたトルクは、減速装置92の内部のウォームを介してウォームホイールに伝達され、ウォームホイールを回転させる。減速装置92は、ウォーム及びウォームホイールによって、電動モータ93で生じたトルクを増加させる。そして、減速装置92は、出力軸82bに補助操舵トルクを与える。すなわち、ステアリング装置80はコラムアシスト方式である。
【0032】
図1に示すように、ステアリング装置80は、ECU(Electronic Control Unit)90と、トルクセンサ94と、車速センサ95と、を備える。電動モータ93、トルクセンサ94及び車速センサ95は、ECU90と電気的に接続される。トルクセンサ94は、入力軸82aに伝達された操舵トルクをCAN(Controller Area Network)通信によりECU90に出力する。車速センサ95は、ステアリング装置80が搭載される車体の走行速度(車速)を検出する。車速センサ95は、車体に備えられ、車速をCAN通信によりECU90に出力する。
【0033】
ECU90は、電動モータ93の動作を制御する。ECU90は、トルクセンサ94及び車速センサ95のそれぞれから信号を取得する。ECU90には、イグニッションスイッチ98がオンの状態で、電源装置99(例えば車載のバッテリ)から電力が供給される。ECU90は、操舵トルク及び車速に基づいて補助操舵指令値を算出する。ECU90は、補助操舵指令値に基づいて電動モータ93へ供給する電力値を調節する。ECU90は、電動モータ93から誘起電圧の情報又は電動モータ93に設けられたレゾルバ等から出力される情報を取得する。ECU90が電動モータ93を制御することで、ステアリングホイール81の操作に要する力が小さくなる。
【0034】
図3は、車両に取り付けられたダストカバーの断面図である。
図4は、第1実施形態のバンドの斜視図である。
【0035】
以下の説明において、第2ステアリングシャフト(ステアリングシャフト)85の中心軸Zに沿う方向は軸方向と記載され、軸方向に対する直交方向は径方向と記載され、中心軸Zを中心とした円に沿う方向は周方向と記載される。また、
図3において右側が車内側(後側)INであり、左側が車外側(前側、エンジンルーム側)OUTである。
【0036】
図3に示すように、ダッシュパネル10は、筒状部材101を備える。筒状部材101の内周面は、第2ステアリングシャフト85の外周面と対向する。第2ステアリングシャフト85は、ステアリングホイール81の位置の調整又は走行中の振動等に伴って移動することがある。このため、筒状部材101の内周面と第2ステアリングシャフト85の外周面との間には環状の隙間が設けられている。この隙間を塞ぐために、ステアリング装置80は、ダストカバー1を備える。
【0037】
ダストカバー1は、筒状部材101の内周面に嵌められている。筒状部材101の外周面に取り付けられたバンド7によって、ダストカバー1が筒状部材101に固定されている。筒状部材101は、バンド7で締め付けられることで変形する。例えば、筒状部材101は金属で形成されている。
【0038】
図4に示すように、バンド7は、内側部材71と、外側部材72と、を備える。内側部材71及び外側部材72は、例えば金属で形成されている。外側部材72が内側部材71の外周面に重なっている。内側部材71は、外周面から突出する爪715と、把持部711と、を備える。外側部材72は、長穴720と、把持部721と、を備える。爪715は、長穴720の内側に位置する。把持部711及び把持部721に互いに近付く方向の力が加えられると、内側部材71の内径が小さくなっていく。内側部材71の内径が所定の大きさになると、爪715が長穴720の端部に接する。これにより、内側部材71の内径が所定の大きさ以下にならない。内側部材71の内径が所定の大きさになると、例えば長穴720の内壁からストッパーが突出することで爪715が位置決めされる。これにより、内側部材71及び外側部材72が相対的に移動しなくなるので、バンド7が筒状部材101を締め付けた状態が保たれる。
【0039】
図5は、第1実施形態のダストカバーの正面図である。
図6は、
図5におけるVI-VI断面図である。
図7は、
図6におけるブッシュおよびシールリップの断面図である。
図8は、
図7におけるVIII-VIII断面図である。
図9は、ベローズおよび取付部材の断面図である。
図10は、
図9の一部を拡大した断面図である。
【0040】
図5に示すように、ダストカバー1は、軸方向から見て円形である。
図6に示すように、ダストカバー1は、ベローズ2と、ブッシュ5と、シールリップ11と、シールリップ12と、取付部材6と、を備える。ベローズ2、ブッシュ5、シールリップ11、シールリップ12及び取付部材6は、それぞれ環状に形成されている。このように、取付部材6の少なくとも一部は、ベローズ2の径方向外側端部の内周側に位置する。なお、径方向外側端部を大径側端部と表現する場合がある。
【0041】
まず、取付部材6について説明する。取付部材6は、ベローズ2を
図3に示す筒状部材101に押し付ける部材である。取付部材6は、例えばアルミニウム合金または樹脂で形成される。
図6に示すように、取付部材6は、本体部61と、フランジ部62と、を備える。本体部61は、円筒状であって、外周面に環状の第1溝611を備える。
【0042】
次に、ベローズ2について説明する。ベローズ2は、例えばゴムで形成されている。
図6に示すように、ベローズ2は、ブッシュ嵌合部20と、第1嵌合部(取付部)22と、第1可撓部(可撓部)21と、第2嵌合部(取付部)26と、第2可撓部(可撓部)25と、を備える。
【0043】
ベローズ2において、ブッシュ嵌合部20は径方向内側の端部に位置し、第1可撓部(可撓部)21は、ブッシュ嵌合部20の車内側の端部から径方向外側に向けて第1嵌合部(取付部)22まで延びる。また、第2可撓部(可撓部)25は、ブッシュ嵌合部20の車外側の端部から径方向外側に向けて第2嵌合部(取付部)26まで延びる。
図6に示すように、第1溝611には、ベローズ2の第1嵌合部22が嵌まる。フランジ部62と第1嵌合部22との間の隙間には、第2嵌合部26が嵌まる。
【0044】
図6および
図9に示すように、ブッシュ嵌合部20は、ベローズ2のうちの径方向内側の端部に位置している。ブッシュ嵌合部20は、中心軸Zの軸回りの周方向に延びる円筒形状を有する。ブッシュ嵌合部20は、ブッシュ5に嵌まる部位である。
【0045】
図10に示すように、ブッシュ嵌合部20は、第1部位201、203と、第2部位202と、を有する。第1部位201は、ブッシュ嵌合部20の部位のうち車外側(軸方向の一方側)に位置し、第1部位203は、ブッシュ嵌合部20の部位のうち車内側(軸方向の他方側)に位置する。ここで、第1部位201の径方向の厚さを第1厚さT1とする。また、第2部位202は、ブッシュ嵌合部20の部位のうち車両前後方向(軸方向)の中央に位置する。第1部位201の内周面201cは、最も車外側の端201aから端201bまで延びる。第1部位203の内周面203bは、端202bから端203aまで延びる。内周面201c、203bは、ブッシュ5の外周面に接する。また、第2部位202には、径方向内側に凹む環状凹部202aが設けられる。環状凹部202aは、中心軸Zの軸回りの周方向に延びる。環状凹部202aは、中心軸Zを含む断面において、矩形状である。
【0046】
また、第1可撓部21は、ブッシュ嵌合部20及び第1嵌合部(取付部)22を連結する。第1可撓部21は、中心軸Zを含む断面において、車外側(軸方向の一方側)に凸の略U字状である。第2可撓部25は、ブッシュ嵌合部20及び第2嵌合部(取付部)26を連結する。第2可撓部25は、中心軸Zを含む断面において、車外側(軸方向の一方側)に凸の略U字状である。
【0047】
ここで、第2可撓部25における車外側(軸方向の一方側)の端を頂部25aとすると、頂部25aの厚さを第2厚さT2とすると、第1厚さT1は第2厚さT2よりも厚い。具体的には、第1厚さT1は、第2厚さT2の2倍以上が好ましい。なお、ベローズ2の第2可撓部25において、頂部25aよりも中心軸Z側(内径側)を小径側と表現し、頂部25aよりも中心軸Zの反対側(外径側)を大径側と表現する。従って、第2可撓部25の大径側端部(径方向外側端部)は、第2嵌合部(取付部)26である。なお、第2可撓部25は、ブッシュ嵌合部20から第2嵌合部(取付部)26まで延在するため、第2可撓部25の大径側端部(径方向外側端部)は、第2可撓部25の延在方向の端部とも表現される。また、同様に、第1可撓部21における前側(軸方向の一方側)の頂部よりも中心軸Z側(内径側)を小径側と表現し、頂部よりも中心軸Zの反対側(外径側)を大径側と表現する。従って、第1可撓部21の大径側端部(径方向外側端部)は、第1嵌合部(取付部)22である。なお、第1可撓部21は、ブッシュ嵌合部20から第1嵌合部(取付部)22まで延在するため、第1可撓部21の大径側端部(径方向外側端部)は、第1可撓部21の延在方向の端部とも表現される。
【0048】
次に、ブッシュ5について説明する。
図7および
図8に示すように、ブッシュ5は、本体部50と、1つの環状凸部51と、を備える。ブッシュ5は、例えば樹脂製であり、射出成形によって成形可能である。本体部50は、中心軸Zの軸回りの周方向に延びる円筒形状を有する。従って、本体部50の外周面50aも円筒形状を有する。環状凸部51は、本体部50の外周面50aから径方向外側に向けて突出する。環状凸部51は、周方向に連続して延びる。環状凸部51は、1つのみ設けられる。環状凸部51は、本体部50の外周面50aにおける軸方向の中央から径方向外側に突出する。なお、本発明は、環状凸部51の本体部50における軸方向の位置は限定されず、軸方向の中央以外に設けてもよい。本体部50および環状凸部51は、一体成形品である。中心軸Zを含む断面において、環状凸部51は矩形状である。環状凸部51の外周面51aは、中心軸Zの軸回りの周方向に延びる円筒形状を有する。
【0049】
また、
図7に示すように、中心軸Zを含む断面において、本体部50の外周面50aの軸方向長さは、第1長さL1と第2長さL2とを合計した長さである。第1長さL1は、外周面50aの前側(車外側)の端50bから環状凸部51までの長さである。第2長さL2は、外周面50aの後側(車内側)の端50cから環状凸部51までの長さである。そして、環状凸部51の外周面51aの軸方向長さは、第3長さL3である。外周面50aの軸方向長さ(第1長さL1と第2長さL2との合計長さ)は、第3長さL3よりも長い。
【0050】
また、
図7に示すように、ブッシュ5において、環状凸部51に対して軸方向に隣接する部位の外周面50aの径方向の高さは、環状凸部51から本体部50の軸方向端まで略同一の高さである。なお、「略同一の高さ」とは、外周面の部位のうち、環状凸部51に隣接する部位の高さと本体部50の軸方向端の高さとが完全に同一でなくてもよいことを示す。例えば、ブッシュ5の成形後に金型300(
図11参照)からブッシュ5を取り出しやすくするために、ブッシュ5の外周面50aに予め設ける抜き勾配が、例えば1度程度でもよい。ただし、抜き勾配をなくしてもよい。即ち、抜き勾配が0度であってもよい。
【0051】
なお、
図6および
図7に示すシールリップ11は、第2ステアリングシャフト85及びブッシュ5の間の隙間とエンジンルームとを隔てる密封部材である。シールリップ11は、例えばニトリルゴム(NBR)であり、加硫接着によりブッシュ5と一体となっている。シールリップ11は、ブッシュ5の端面から車外側に突出している。シールリップ12は、第2ステアリングシャフト85及びブッシュ5の間の隙間と車室とを隔てる密封部材である。シールリップ12は、例えばニトリルゴム(NBR)であり、加硫接着によりブッシュ5と一体となっている。シールリップ12は、ブッシュ5の端面から車内側に突出している。
【0052】
図11は、第1実施形態のブッシュと当該ブッシュを成形する金型とを示す模式図である。
図12は、比較例のブッシュと当該ブッシュを成形する金型とを示す模式図である。なお、金型の分割線をパーティングラインPLとして示している。
【0053】
図11に示すように、第1実施形態のブッシュ5を成形する金型300は、第1金型301と、第2金型302と、を備えるスライド型である。第1金型301は、型を開く場合は、
図11において左側の第1方向D1に向けて移動する。第2金型302は、型を開く場合は、
図11において右側の第2方向D2に向けて移動する。ここで、ブッシュ5のパーティングラインを環状凸部51の軸方向中央に設定しているため、環状凸部51の部分がアンダーカットにならない。従って、第1実施形態では、2つの金型でブッシュ5を成形することができる。
【0054】
これに対して、
図12に示すように、比較例において、ブッシュ5Aは、本体部50の外周面における軸方向の一方側と他方側の端部から径方向外側に向けて環状凸部51A、52Aが突出している。このブッシュ5Aを成形する金型310は、第1金型311と、第2金型312と、第3金型313と、を備えるスライド型である。第1金型311は、型を開く場合、
図12において左側の第3方向D3に向けて移動する。第2金型312は、型を開く場合、
図12において右側の第4方向D4に向けて移動する。第3金型313は、型を開く場合、
図12において上側の第5方向D5に向けて移動する。ここで、ブッシュ5Aを軸方向の中央にパーティングラインを設定して、2つの金型(例えば、第1金型311および第2金型312)で成形しようとすると、環状凸部51A、52Aがアンダーカットになってしまうため、成形することができない。従って、ブッシュ5Aのように、環状凸部が2つあるブッシュ5Aでは、スライド型の金型の数が3つになってしまう。
【0055】
以上説明したように、第1実施形態では、軸方向に延びる第2ステアリングシャフト(ステアリングシャフト)85の外周側に設けられるブッシュ5と、筒状部材101とブッシュ5との間の隙間を塞ぐ環状のベローズ2と、ベローズ2を筒状部材101に押し付ける筒状の取付部材6と、を備え、ブッシュ5は、第2ステアリングシャフト(ステアリングシャフト)85の中心軸Zの軸回りの周方向に延びる筒状の本体部50と、本体部50の外周面50aから径方向外側に向けて突出し、且つ、周方向に連続して延びる1つの環状凸部51と、を有し、本体部50および環状凸部51は、一体成形品であり、ベローズ2は、環状凸部51に嵌る環状凹部202aが設けられる筒状のブッシュ嵌合部20と、取付部材6に取り付けられる第1嵌合部(取付部)22および第2嵌合部(取付部)26と、ブッシュ嵌合部20と第1嵌合部(取付部)22および第2嵌合部(取付部)26を連結する第1可撓部(可撓部)21および第2可撓部(可撓部)25と、を有する。
【0056】
このように、ブッシュ5は、筒状の本体部50と、1つの環状凸部51とを有し、本体部50および環状凸部51は、一体成形品である。ブッシュ5を射出成形で製造する場合、例えば、複数のスライド式金型を用いる。その際、複数の金型の分割線であるパーティングラインを設定して、金型の個数および形状を決める。
【0057】
ここで、ブッシュが、複数の環状凸部を有する場合は、金型の数が3つ以上となる。即ち、
図12で説明したように、ブッシュ5Aが、本体部50と環状凸部51A、52Aとを備えるとすると、左右2つの金型で、且つ、パーティングラインをブッシュ5Aの軸方向中央に設定して成形する場合、環状凸部51A、52Aがアンダーカットとなって成形できない。そのほかのパーティングラインを設定しても、2つの金型では成形できない。
【0058】
これに対して、
図11で説明したように、本実施形態のブッシュ5は、環状凸部51が1つであるため、パーティングラインPLを軸方向で環状凸部51を通るように設定すれば、2つの金型でも環状凸部51がアンダーカットとならない。
【0059】
以上のように、本体部50から径方向外側に突出する環状凸部51を1つにすることにより、ブッシュ5を成形する金型を2つにすることができる。このように、金型の数を極力少なくすることにより、金型の管理工数および金型の製造コストをより低く抑えることができる。
【0060】
ブッシュ嵌合部20は、ブッシュ5の本体部50の外周面50aに接する第1部位201を有し、第1部位201における径方向の第1厚さT1は、第2可撓部(可撓部)25における前側(軸方向の一方側)の頂部25aの第2厚さT2の2倍以上である。
【0061】
ベローズ2の径方向内側の端部は、ブッシュ嵌合部20を介してブッシュ5に取り付けられている。従って、ブッシュ嵌合部20の厚さを大きくすることにより、ベローズ2の径方向内側の端部の取付剛性を高めることができる。ただ、ベローズ2の全体の厚さを厚くすると、ダストカバー1全体の重量が大きくなってしまう。ここで、可撓部は、変形しやすい方が好ましいため、厚さを薄く設定することができる。以上より、ブッシュ嵌合部20の第1厚さT1を第2可撓部(可撓部)25の頂部25aの第2厚さT2の2倍以上に設定することにより、ベローズ2の径方向内側の端部の取付剛性を高めることができ、且つ、可撓部を薄くしてダストカバー1全体の重量を低減することが可能となる。
【0062】
環状凸部51の外周面51aの軸方向長さは、第3長さL3である。外周面50aの軸方向長さ(第1長さL1と第2長さL2との合計長さ)は、第3長さL3よりも長い。
【0063】
本体部50の外周面50aは、ブッシュ嵌合部20に接してブッシュ嵌合部20から押圧力が印加されことにより、ベローズ2の径方向内側の端部が本体部50の外周面50aに取り付けられる。これに対して、環状凸部51によって、ブッシュ嵌合部20の軸方向の位置決めがされる。即ち、外周面50aの軸方向長さ(第1長さL1と第2長さL2との合計長さ)をより長くした方が、ブッシュ5に対するベローズ2の取付剛性が高くなる。
【0064】
以上より、外周面50aの軸方向長さ(第1長さL1と第2長さL2との合計長さ)を、第3長さL3よりも長くすることにより、ベローズ2の径方向内側の端部の支持剛性をより高くすることができる。
【0065】
環状凸部51は、本体部50における軸方向の中央に位置する。ベローズ2は、ブッシュ5に取り付けられるブッシュ嵌合部20を有し、ブッシュ嵌合部20には、環状凸部51に嵌る環状凹部202aが設けられる。ここで、仮に、環状凸部51が本体部50における軸方向の一方側に片寄って配置されると、環状凹部202aもブッシュ嵌合部20の軸方向の一方側に片寄って配置される。すると、環状凸部51に印加される軸方向の力は、ブッシュ嵌合部20の軸方向の一方側から印加される力よりも、ブッシュ嵌合部20の軸方向の他方側から印加される力の方が大きい。従って、環状凸部51を本体部50における軸方向の中央に位置することにより、環状凸部51に印加される軸方向の力が、軸方向の一方側と他方側とで均等になるため、ベローズ2の軸方向の位置決め精度がより高くなる。
【0066】
また、筒状部材101の外周にバンド7を備え、バンド7を締め付けることにより筒状部材101を変形させる。これにより、筒状部材101と取付部材6とでベローズ2を挟み込んで固定することが可能となる。
【0067】
[第1変形例]
次に、第1変形例に係るブッシュ5Bについて説明する。
図13は、第1変形例のブッシュおよびシールリップの断面図である。
図14は、
図13のXIV-XIV断面図である。
【0068】
図13および
図14に示すように、第1変形例に係るブッシュ5Bは、第1実施形態に係るブッシュ5に対して、環状凸部51Bの形状が相違する。環状凸部51Bの外周面51Bbには、外周面51Bbから径方向外側に突出する突出部51Baが設けられ、環状凹部には、突出部51Baに嵌る凹み(図示せず)が設けられる。以下に、環状凸部51Bについて詳細に説明する。
【0069】
図13および
図14に示すように、環状凸部51Bの外周面51Bbには、突出部51Baが設けられる。
図14に示すように、突出部51Baの外周面は、中心軸Zの軸回りの周方向に延びる円筒面である。本体部50の外周面50aから外周面51Bbまでの径方向高さを第1高さH1とし、本体部50の外周面50aから突出部51Baの外周面までの径方向高さを第2高さH2とすると、第2高さH2は、第1高さH1よりも高い。なお、外周面51Bbの周方向の端と、突出部51Baの外周面の周方向の端とは、径方向に延びる縦面51Bcを介して連結される。
【0070】
また、環状凸部51Bに嵌る環状凹部においても、環状凸部51Bに嵌る凹み(図示せず)が設けられる。
【0071】
以上説明したように、第1変形例において、環状凸部51Bの外周面51Bbには、径方向外側に突出する突出部51Baが設けられ、環状凹部には、突出部51Baに嵌る凹みが設けられる。突出部51Baが環状凹部の凹みに嵌ることによって、環状凸部51Bの周方向の移動が制限されるため、突出部51Baがブッシュ5Bの回り止めの機能を有する。
【0072】
[第2変形例]
次に、第2変形例に係るブッシュ5Cについて説明する。
図15は、第2変形例のブッシュおよびシールリップの一部の断面図である。
図16は、
図15のXVI-XVI断面図である。
図17は、第2変形例のベローズの一部の断面図である。
【0073】
図13および
図14に示すように、第2変形例は、第1実施形態に対して、環状凸部51Cおよび環状凹部202Caの形状が相違する。以下に、環状凸部51Cおよび環状凹部202Caについて詳細に説明する。
【0074】
図15に示すように、環状凸部51Cは、径方向外側端部に突起部51Ca、51Cbを有する。即ち、環状凸部51Cにおける前方側の側面の径方向外側端部には、前方に向けて突出する突起部51Caが設けられる。中心軸Zを含む断面において、突起部51Caは円弧状である。環状凸部51Cにおける後方側の側面の径方向外側端部には、後方に向けて突出する突起部51Cbが設けられる。中心軸Zを含む断面において、突起部51Cbは円弧状である。なお、
図16に示すように、環状凸部51Cの外周面51Ccは、中心軸Zの軸回りの周方向に延びる円筒面である。
【0075】
図17に示すように、ブッシュ嵌合部20Cは、環状凹部202Caを有する。環状凹部202Caには、溝202Cb、202Ccが設けられる。溝202Cb、202Ccには、環状凸部51Cの突起部51Ca、51Cbが嵌る。以下、詳細に説明する。環状凹部202Caは、径方向内側が開口する。環状凹部202Caの内壁面のうち、前方側の内壁面には、軸方向において、径方向内側端部202Cdよりも前方側に凹む溝202Cbが設けられる。また、環状凹部202Caの内壁面のうち、後方側の内壁面には、径方向内側端部202Ceよりも後方側に凹む溝202Ccが設けられる。つまり、環状凹部202Caは、開口側の径方向内側が軸方向で狭くなっており、径方向外側が溝202Cb、202Ccによって軸方向で広くなっている。
【0076】
以上説明したように、第2変形例では、環状凸部51Cには、径方向外側端部から軸方向に突出する突起部51Ca、51Cbが設けられ、環状凹部202Caには、突起部51Ca、51Cbに嵌る溝202Cb、202Ccが設けられる。従って、環状凸部51Cが環状凹部202Caにより強固に嵌められ、環状凸部51Cが環状凹部202Caから外れにくくなる。
【0077】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係るブッシュ5Dについて説明する。
図18は、第2実施形態のダストカバーの断面図である。
図19は、第2実施形態のブッシュの斜視図である。
図20は、
図19におけるXX-XX断面図である。
図21は、
図19におけるXXI-XXI断面図である。
図22は、
図19におけるXXII-XXII断面図である。
【0078】
第2実施形態に係るブッシュ5Dは、第1実施形態に係るブッシュ5に対して、突起部53、54を設けた点が相違する。以下に詳細に説明する。
【0079】
図19および
図22に示すように、突起部53は、本体部50の外周面50aから径方向外側に向けて突出する。突起部53は、環状凸部51に軸方向で隣接する。具体的には、突起部53は、環状凸部51の前側(軸方向の一方側)に隣接する。突起部53の径方向高さは、本体部50の外周面50aから突起部53の外周面53aまでの径方向高さである。突起部53の径方向高さは、環状凸部51の径方向高さよりも低い。即ち、突起部53の外周面53aは、環状凸部51の外周面51aよりも径方向内側に位置する。環状凸部51の外周面51aは、
図21に示すように、中心軸Zの軸回りの周方向に延びる円筒面である。また、実施形態では、突起部53は、周方向に沿って等間隔に4つ設けられる。ただし、本発明においては、突起部53の数は限定されず、突起部53の周方向での位置が等間隔でなくてもよい。なお、本体部50における外周面50aの周方向の端と、突起部53における外周面53aの周方向の端とは、径方向に延びる縦面53bを介して連結される。本体部50における外周面50aの周方向の端と、突起部54における外周面54aの周方向の端とは、径方向に延びる縦面54bを介して連結される。
【0080】
図19、
図20および
図22に示すように、突起部54は、本体部50の外周面50aから径方向外側に向けて突出する。突起部54は、環状凸部51に軸方向で隣接する。具体的には、突起部53は、環状凸部51の後側(軸方向の他方側)に隣接する。突起部54の径方向高さは、本体部50の外周面50aから突起部54の外周面54aまでの径方向高さである。突起部54の径方向高さは、環状凸部51の径方向高さよりも低い。即ち、突起部54の外周面54aは、環状凸部51の外周面51aよりも径方向内側に位置する。また、実施形態では、突起部54は、周方向に沿って等間隔に4つ設けられる。ただし、本発明においては、突起部54の数は限定されず、突起部54の周方向での位置が等間隔でなくてもよい。そして、環状凸部51、突起部53、54および本体部50は、一体成形品である。
【0081】
以上説明したように、第2実施形態では、本体部50の外周面50aから径方向外側に向けて突出し、径方向高さが環状凸部51の径方向高さ未満である突起部53、54を有し、環状凸部51、突起部53、54および本体部50は、一体成形品である。
【0082】
このように、中心軸Zおよび環状凸部51を含む断面において、環状凸部51に対して軸方向に隣接する部位(突起部53、54)の外周面53a、54aの径方向の高さは、環状凸部51から本体部50の軸方向端まで同一の高さであり、且つ、本体部50の外周面50a以上であって且つ環状凸部51の外周面51a未満の高さである。従って、第2実施形態においても、ブッシュ5Dを射出成形で製造する際、例えば環状凸部51の軸方向の中央にパーティングラインを設定すれば、2つのスライド型の金型で成形することが可能となる。また、突起部53、54を有するため、径方向に延びる縦面53b、54bによってブッシュ5Dの周方向の移動が制限される。このように、突起部53、54がブッシュ5Dの回り止めの機能を有する。
【0083】
[第3変形例]
次に、第3変形例に係るブッシュ5Eについて説明する。
図23は、第3変形例のブッシュおよびシールリップの断面図である。
図24は、
図23におけるXXIV-XXIV断面図である。
【0084】
図23および
図24に示すように、第3変形例に係るブッシュ5Eでは、第1実施形態に係るブッシュ5に対して、環状凸部51Eの形状が相違する。環状凸部51Eには、周方向の一部に切欠き部51Ebが設けられる。換言すると、この切欠き部51Ebが設けられた部分は、環状凸部51Eがなく、そのほかの部位には連続する環状凸部51Eが形成されている。さらに換言すると、環状凸部51Eは、周方向に連続して延びる1つの環状凸部の周方向の一部に、径方向内側に凹む切欠き部51Ebを設けて形成される。環状凸部51Eにおいて、連続する部分の周方向端は、周方向端51Ecおよび周方向端51Edである。周方向端51Ecと周方向端51Edとは略平行に延びる。具体的には、周方向端51Ecおよび周方向端51Edは、径方向内側に向けて延びる。周方向端51Ecから周方向端51Edまでの範囲が切欠き部51Ebになっている。切欠き部51Ebの数は、周方向に沿って複数設けられてもよい。なお、環状凸部51Eにおいて、連続する部分の外周面51Eaは、中心軸Zの軸回りの周方向に延びる円筒面である。
【0085】
以上説明したように、第3変形例において、環状凸部51Eは、周方向に連続して延びる1つの環状凸部の周方向の一部に、径方向内側に凹む切欠き部51Ebを設けて形成される。この場合であっても、ブッシュ5Eを成形する金型を2つにすることができる。従って、金型の数を極力少なくすることにより、金型の管理工数および金型の製造コストをより低く抑えることができる。また、切欠き部51Ebがブッシュ5Eの回り止めの機能を有する。
【0086】
[第4変形例]
次に、第4変形例に係るブッシュ5Fについて説明する。
図25は、第4変形例のブッシュおよびシールリップの断面図である。
図26は、
図25におけるXXVI-XXVI断面図である。
【0087】
図25および
図26に示すように、第4変形例に係るブッシュ5Fでは、第1実施形態に係るブッシュ5に対して、環状凸部51Fの形状が相違する。環状凸部51Fには、周方向の一部に切欠き部51Fbが設けられる。換言すると、この切欠き部51Fbが設けられた部分は、環状凸部51Fがなく、そのほかの部位には連続する環状凸部51Fが形成されている。さらに換言すると、環状凸部51Fは、周方向に連続して延びる1つの環状凸部の周方向の一部に、径方向内側に凹む切欠き部51Fbを設けて形成される。環状凸部51Fにおいて、連続する部分の周方向端は、周方向端51Fcおよび周方向端51Fdである。周方向端51Fcと周方向端51Fdとは略同一平面に配置される。従って、
図26に示すように、中心軸Zを含む断面において、周方向端51Fcと周方向端51Fdとは一直線に配置される。周方向端51Fcから周方向端51Fdまでの範囲が切欠き部51Fbになっている。切欠き部51Fbの数は、周方向に沿って複数設けられてもよい。なお、環状凸部51Fにおいて、連続する部分の外周面51Faは、中心軸Zの軸回りの周方向に延びる円筒面である。
【0088】
以上説明したように、第4変形例において、環状凸部51Fは、周方向に連続して延びる1つの環状凸部の周方向の一部に、径方向内側に凹む切欠き部51Fbを設けて形成される。この場合であっても、ブッシュ5Fを成形する金型を2つにすることができる。従って、金型の数を極力少なくすることにより、金型の管理工数および金型の製造コストをより低く抑えることができる。
【符号の説明】
【0089】
1 ダストカバー
2 ベローズ
5、5A、5B、5C、5D、5E、5F ブッシュ
6 取付部材
7 バンド
10 ダッシュパネル
11、12 シールリップ
20 ブッシュ嵌合部
21 第1可撓部(可撓部)
22 第1嵌合部(取付部)
25 第2可撓部(可撓部)
25a 頂部
26 第2嵌合部(取付部)
50 本体部
50a 外周面
51、51A、51B、51C、52A、51E、51F 環状凸部
51a、51Ea、51Fa 外周面
51Ba 突出部
51Bb 外周面
51Bc、53b、54b 縦面
51Ca、51Cb 突起部
51Eb、51Fb 切欠き部
51Ec、51Ed、51Fc、51Fd 周方向端
53、54 突起部
53a、54a 外周面
61 本体部
62 フランジ部
71 内側部材
72 外側部材
80 ステアリング装置
81 ステアリングホイール
82 第1ステアリングシャフト
82a 入力軸
82b 出力軸
83 操舵力アシスト機構
84 第1ユニバーサルジョイント
85 第2ステアリングシャフト(ステアリングシャフト)
86 第2ユニバーサルジョイント
87 第3ステアリングシャフト
88 ステアリングギヤ
88a ピニオン
88b ラック
89 タイロッド
90 ECU(Electronic Control Unit)
92 減速装置
93 電動モータ
94 トルクセンサ
95 車速センサ
101 筒状部材
201、203 第1部位
201c 内周面
202 第2部位
202a、202Ca 環状凹部
202Cb、202Cc 溝
310 金型
311 第1金型
312 第2金型
313 第3金型
611 第1溝
715 爪
711 把持部
720 長穴
721 把持部
D1 第1方向
D2 第2方向
D3 第3方向
D4 第4方向
D5 第5方向
H1 第1高さ
H2 第2高さ
L1 第1長さ
L2 第2長さ
L3 第3長さ
PL パーティングライン
T1 第1厚さ
T2 第2厚さ
Z 中心軸