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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】液晶シール剤
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1339 20060101AFI20241002BHJP
   C08G 59/24 20060101ALI20241002BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
G02F1/1339 505
C08G59/24
C09K3/10 B
C09K3/10 E
C09K3/10 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021124171
(22)【出願日】2021-07-29
(65)【公開番号】P2023019448
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】臼井 大晃
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0361842(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0299154(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107663369(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
C08G 59/24
C09K 3/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で表されるエポキシ樹脂、並びに/又は、当該エポキシ樹脂のエポキシ基の一部若しくは全部を(メタ)アクリル酸及び/若しくは(メタ)アクリル酸無水物で変性したエポキシ(メタ)アクリレート樹脂と、
(B)光重合開始剤及び/又は熱硬化剤と
を含む、液晶シール剤。
【化5】

〔式中、
は、不飽和結合を0~3個含む、炭素原子数4~12の脂肪族炭化水素基であり、
は、不飽和結合を0~3個含む、炭素原子数4~12の脂肪族炭化水素基である。〕
【請求項2】
前記式(1)で表されるエポキシ樹脂が、下記式(2)で表されるエポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の液晶シール剤。
【化6】
【請求項3】
更に、(C-1)2官能以上のエポキシ樹脂(但し、式(1)で表されるエポキシ樹脂を除く。)、(C-2)前記(C-1)成分のエポキシ基の一部又は全部を(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸無水物で変性したエポキシ(メタ)アクリレート樹脂、並びに、(C-3)その他の硬化性樹脂(但し、(A)成分、(C-1)成分、及び(C-2)成分を除く。)からなる群より選択される1種以上の更なる硬化性樹脂を含む、請求項1又は2に記載の液晶シール剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子の製造方法において、滴下工法は硬化性樹脂組成物の閉ループ内に液晶を直接滴下、真空貼り合わせ、真空開放を行うことでパネルを作成することができる工法である。この滴下工法では、液晶の使用量の低減、液晶のパネルへの注入時間の短縮等のメリットが数多くあり、現在の大型基板を使った液晶パネルの製造方法として主流となっている。滴下工法を含む方法では、シール・液晶を塗布して、貼り合わせた後、ギャップだし、位置あわせを行い、シールの硬化を主に紫外線硬化により行っている。
【0003】
特許文献1には、アルキレンオキサイド骨格を導入した化合物を用いることにより、液晶表示素子用シール剤の接着性及び硬化物の柔軟性を向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/116928号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたアルキレンオキサイド骨格を有する(メタ)アクリレート樹脂は、低弾性率化(即ち、柔軟性を向上させる)に伴い、透湿度が悪化する(即ち、透湿度の値が高くなる)という問題があった。よって、本発明は、透湿度の悪化を抑制しつつ、低弾性率化の効果が高い、硬化性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の[1]~[4]に関する。
[1](A)下記式(1)で表されるエポキシ樹脂、並びに/又は、当該エポキシ樹脂のエポキシ基の一部若しくは全部を(メタ)アクリル酸及び/若しくは(メタ)アクリル酸無水物で変性したエポキシ(メタ)アクリレート樹脂と、
(B)光重合開始剤及び/又は熱硬化剤と、
を含む、硬化性樹脂組成物。
【化1】

〔式中、
は、不飽和結合を0~3個含む、炭素原子数4~12の脂肪族炭化水素基であり、
は、不飽和結合を0~3個含む、炭素原子数4~12の脂肪族炭化水素基である。〕
[2]前記式(1)で表されるエポキシ樹脂が、下記式(2)で表されるエポキシ樹脂を含む、[1]の硬化性樹脂組成物。
【化2】

[3]更に、(C-1)2官能以上のエポキシ樹脂(但し、式(1)で表されるエポキシ樹脂を除く。)、(C-2)前記(C-1)成分のエポキシ基の一部又は全部を(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸無水物で変性したエポキシ(メタ)アクリレート樹脂、並びに、(C-3)その他の硬化性樹脂(但し、(A)成分、(C-1)成分、及び(C-2)成分を除く。)からなる群より選択される1種以上の硬化性樹脂を含む、[1]又は[2]の硬化性樹脂組成物。
[4]液晶シール剤である、[1]~[3]のいずれかの硬化性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、透湿度の悪化を抑制しつつ、低弾性率化の効果が高い、硬化性樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基(CH=CH-C(=O)-)及び/又はメタクリロイル基(CH=CH(CH)-C(=O)-)を意味する。
【0009】
「(A)下記式(1)で表されるエポキシ樹脂、並びに/又は、当該エポキシ樹脂のエポキシ基の一部若しくは全部を(メタ)アクリル酸及び/若しくは(メタ)アクリル酸無水物で変性したエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」を「(A)成分」ともいう。「(B)光重合開始剤及び/又は熱硬化剤」等についても同様である。
【0010】
[硬化性樹脂組成物]
硬化性樹脂組成物は、(A)下記式(1)で表されるエポキシ樹脂、並びに/又は、当該エポキシ樹脂のエポキシ基の一部若しくは全部を(メタ)アクリル酸及び/若しくは(メタ)アクリル酸無水物で変性したエポキシ(メタ)アクリレート樹脂と、(B)光重合開始剤及び/又は熱硬化剤と、を含む。
【0011】
【化3】
【0012】
〔式中、
は、不飽和結合を0~3個含む、炭素原子数4~12の脂肪族炭化水素基であり、
は、不飽和結合を0~3個含む、炭素原子数4~12の脂肪族炭化水素基である。〕
【0013】
硬化性樹脂組成物は、透湿度の悪化が抑制されている。即ち、硬化性樹脂組成物は、透湿度の値が小さい。また、硬化性樹脂組成物は、低弾性率化の効果が高い。即ち、硬化性樹脂組成物は、弾性率の値がより小さい。
【0014】
<(A)式(1)で表されるエポキシ樹脂、並びに/又は、当該エポキシ樹脂のエポキシ基の一部若しくは全部を(メタ)アクリル酸及び/若しくは(メタ)アクリル酸無水物で変性したエポキシ(メタ)アクリレート樹脂>
(A)成分としては、「(A-1)式(1)で表されるエポキシ樹脂」、「(A-2)(A-1)成分のエポキシ基の一部又は全部を(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸無水物で変性したエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」、並びに、「(A-1)成分と(A-2)成分との組み合わせ」が挙げられる。
【0015】
≪(A-1)式(1)で表されるエポキシ樹脂≫
(A-1)成分は、硬化性樹脂組成物の硬化性成分であり、後述する(A-2)成分の原料でもある。
【0016】
式(1)において、Rは、不飽和結合を0~3個含む、炭素原子数4~12の2価の脂肪族炭化水素基であり、Rは、不飽和結合を0~3個含む、炭素原子数4~12の1価の脂肪族炭化水素基である。本明細書において、「不飽和結合」とは、エチレン性不飽和結合(C=C)及び/又はアセチレン性不飽和結合(C≡C)を意味し、エチレン性不飽和結合であることが好ましい。また、脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよいが、直鎖状であることが好ましい。
【0017】
に含まれる不飽和結合の数は、0又は1個であることが好ましい。Rは、炭素原子数4~12のアルキレン基、又は、炭素原子数4~12のアルケニレン基であることが好ましい。
【0018】
に含まれる不飽和結合の数は、0~2個であることが好ましい。Rは、炭素原子数4~12のアルキル基、炭素原子数4~12のアルケニル基、又は、炭素原子数4~12のアルカジエニル基であることが特に好ましい。
【0019】
また、(A-1)成分の好ましい具体例としては、下記式(2)で表されるエポキシ樹脂~下記式(11)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。
【0020】
【化4-1】

【化4-2】
【0021】
(A-1)成分は、式(2)で表されるエポキシ樹脂~式(11)で表されるエポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上のエポキシ樹脂を含むことが好ましく、式(2)で表されるエポキシ樹脂を含むことが特に好ましい。
【0022】
≪(A-2)式(1)で表されるエポキシ樹脂のエポキシ基の一部又は全部を(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸無水物で変性したエポキシ(メタ)アクリレート樹脂≫
(A-2)成分は、硬化性樹脂組成物の硬化性成分である。ここで、(A-2)成分の原料である式(1)で表されるエポキシ樹脂は、前記の通りである。エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、式(1)で表されるエポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部が(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸無水物で変性されていれば、その割合は特に限定されない。また、(A-2)成分の原料である式(1)で表されるエポキシ樹脂は、好ましい態様を含め、(A-1)成分で前記したとおりである。
【0023】
≪(A)成分の好ましい態様≫
透湿度の悪化をより抑制する観点から、(A)成分は(A-1)成分を含むことが好ましい。また、低弾性率化の効果をより高める観点から、(A)成分は(A-2)成分を含むことが好ましい。
また、透湿度の悪化の抑制と低弾性率化とを効率的に両立させる観点から、(A)成分は、式(2)で表されるエポキシ樹脂、並びに/又は、式(2)で表されるエポキシ樹脂のエポキシ基の一部若しくは全部を(メタ)アクリル酸及び/若しくは(メタ)アクリル酸無水物で変性したエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含むことが好ましい。
ここで、(A)成分が、式(2)で表されるエポキシ樹脂を含む場合は、更に式(3)で表されるエポキシ樹脂~式(11)で表されるエポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上のエポキシ樹脂を含んでいてもよい。
また、(A)成分が、式(2)で表されるエポキシ樹脂のエポキシ基の一部若しくは全部を(メタ)アクリル酸及び/若しくは(メタ)アクリル酸無水物で変性したエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含む場合は、更に式(3)で表されるエポキシ樹脂~式(11)で表されるエポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上のエポキシ樹脂のエポキシ基の一部若しくは全部を(メタ)アクリル酸及び/若しくは(メタ)アクリル酸無水物で変性したエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含んでいてもよい。
【0024】
(A)成分は、市販されているか、又は、公知の方法に従い調製することができる。例えば、式(1)で表されるエポキシ樹脂の市販品として、カードライト社製のNC-514、NC-514S等が挙げられる。ここでカードライト社製のNC-514、NC-514Sは、式(2)で表されるエポキシ樹脂を主成分とし、式(3)で表されるエポキシ樹脂~式(11)で表されるエポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上のエポキシ樹脂を含む、式(1)で表されるエポキシ樹脂の混合物である。
(A)成分は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0025】
<(B)光重合開始剤及び/又は熱硬化剤>
光重合開始剤は、硬化性樹脂組成物を光重合硬化性の組成物とすることができる成分である。熱硬化剤は、硬化性樹脂組成物を熱硬化性の組成物とすることができる成分である。光重合開始剤及び/又は熱硬化剤は、硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂の種類及び所望の硬化条件(エネルギー線硬化及び/又は熱硬化)に応じて適宜選択できる。よって、(B)成分としては、光重合開始剤、熱硬化剤、及び、光重合開始剤と熱硬化剤との組み合わせが挙げられる。
【0026】
≪光重合開始剤≫
光重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤及び/又はカチオン重合開始剤が挙げられる。
【0027】
ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイン類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、α-アシロキシムエステル類、フェニルグリオキシレート類、ベンジル類、アゾ系化合物、ジフェニルスルフィド系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、ベンゾインエーテル類、アントラキノン類、有機過酸化物等が挙げられる。ラジカル重合開始剤は、液晶への溶解性が低く、また、それ自身で光照射時に分解物がガス化しないような反応性基を有するものが好ましい。また、ラジカル重合開始剤として、特開2020-076794に記載されている、ジアルキルアミノベンゾイル基を有するポリエーテル化合物、及び、チオキサントンから1つの水素原子を除いた基を有するポリエーテル化合物との混合物である重合開始剤が好ましく、少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物と、ジメチルアミノ安息香酸とを反応させて得られる化合物、及び、少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物と、ヒドロキシチオキサントンとを反応させて得られる化合物との混合物である重合開始剤が特に好ましい。
【0028】
アニオン重合開始剤としては、イミダゾール類、アミン類、ホスフィン類、有機金属塩、金属塩化物、有機過酸化物等が挙げられる。
【0029】
カチオン重合開始剤としては、オニウム塩、鉄アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノールアルミニウム錯体、ルイス酸化合物、ブレンステッド酸化合物、ベンジルスルホニウム塩、チオフェニウム塩、チオラニウム塩、ベンジルアンモニウム、ピリジニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミド、スルホン化合物類、スルホン酸エステル類、スルホンイミド類、ジスルホニルジアゾメタン類、及びアミン類等が挙げられる。
【0030】
光重合開始剤は、市販されているか、又は、公知の方法に従い調製することができる。
光重合開始剤は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0031】
≪熱硬化剤≫
熱硬化剤は、特に限定されないが、アミン系熱硬化剤、例えば有機酸ジヒドラジド化合物、アミンアダクト、イミダゾール及びその誘導体、ジシアンジアミド、芳香族アミン、エポキシ変性ポリアミン、及びポリアミノウレア等が挙げられ、VDH(1,3-ビス(ヒドラジノカルボエチル)-5-イソプロピルヒダントイン)、ADH(アジピン酸ジヒドラジド)、UDH(7,11-オクタデカジエン-1,18-ジカルボヒドラジド)及びLDH(オクタデカン-1,18-ジカルボン酸ジヒドラジド)等の有機酸ジヒドラジド;株式会社ADEKAから、アデカハードナーEH-5030S等として販売されているポリアミン系化合物;味の素ファインテクノ株式会社から、アミキュアPN-23、アミキュアPN-30、アミキュアMY-24、アミキュアMY-H等として市販されているアミンアダクトが好ましい。
熱硬化剤は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0032】
<その他の成分>
硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、その目的に応じて、(A)成分以外の硬化性樹脂((C)成分)、及び/又は、(C)成分以外のその他の成分((D)成分)を含むことができる。(D)成分としては、シランカップリング剤、重合禁止剤、有機フィラー、無機フィラー等が挙げられる。なお、(C)成分及び(D)成分は、上記した(A)成分及び(B)成分ではない。
【0033】
≪(A)成分以外の硬化性樹脂((C)成分)≫
(C)成分としては、(C-1)2官能以上のエポキシ樹脂(但し、式(1)で表されるエポキシ樹脂を除く。)、(C-2)前記(C-1)成分のエポキシ基の一部又は全部を(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸無水物で変性したエポキシ(メタ)アクリレート樹脂、並びに、(C-3)その他の硬化性樹脂(但し、(A)成分、(C-1)成分、及び(C-2)成分を除く。)が挙げられる。
【0034】
≪(C-1)2官能以上のエポキシ樹脂(但し、式(1)で表されるエポキシ樹脂を除く。)≫
(C-1)成分としては、式(1)で表されるエポキシ樹脂以外であれば、特に限定されず、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。その他、2官能以上のフェノール類のグリシジルエーテル化物、2官能以上のアルコール類のグリシジルエーテル化物及びそれらのハロゲン化物、水素添加物等も使用することができる。また、3官能及び4官能のエポキシ樹脂として、特開2012-077202号公報記載のエポキシ樹脂が挙げられる。(C-1)成分のエポキシ官能数は、特に限定されないが、2~4であることが好ましい。
(C-1)成分は、ビスフェノール構造を有するエポキシ樹脂であることが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上であることが特に好ましい。
(C-1)成分は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0035】
≪(C-2)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂≫
(C-2)成分は、(C-1)成分のエポキシ基の一部又は全部を(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸無水物で変性したエポキシ(メタ)アクリレート樹脂である。すなわち、(C-2)成分は、樹脂中にエポキシ基と(メタ)アクリロイル基の両方を有するか、又は、樹脂中にエポキシ基を有さず、かつ、(メタ)アクリロイル基を有する。ここで、(C-1)成分は、好ましいものを含め、前記した通りである。
(C-2)成分は、2官能のエポキシ樹脂のエポキシ基の一部を(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸無水物で変性したエポキシ(メタ)アクリレート樹脂であることが特に好ましい。
(C-2)成分は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0036】
≪(C-3)その他の硬化性樹脂≫
(C-3)成分は、(A)成分、(C-1)成分及び(C-2)成分以外の硬化性樹脂であれば特に限定されず、硬化性樹脂組成物の主剤として用いられる従来の不飽和基及び/又はエポキシ基を有する樹脂、エポキシ基を1つ有する樹脂、並びに、不飽和基及びエポキシ基のいずれも有さない樹脂が挙げられる。ここで、「不飽和基」とは、エチレン性不飽和基及び/又はアセチレン性不飽和基を意味する。(C-3)成分は、カチオン重合性樹脂、ラジカル重合性樹脂及び/又はアニオン重合性樹脂から、硬化性樹脂組成物に含まれる重合開始剤及び/又は熱硬化剤の種類に応じて適宜選択される。
【0037】
不飽和基を有する樹脂としては、(メタ)アクリレート化合物、脂肪族アクリルアミド化合物、脂環式アクリルアミド化合物、芳香族を含むアクリルアミド化合物、N-置換アクリルアミド系化合物、ジエン系ポリマー(例えば、ポリブタジエンポリマー、ポリイソプレンポリマー等)が挙げられる。(メタ)アクリレート化合物の官能性は、1官能性、2官能性又は3官能性以上の多官能性であることができ、2官能性又は3官能性以上であることが好ましい。
【0038】
2官能性の(メタ)アクリレート化合物としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート(例えば、ARONIX M-6100、東亜合成株式会社製)、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、4G、新中村化学工業株式会社製)、及びシリコンジ(メタ)アクリレート(例えば、EBECRYL 350、ダイセル・オルネクス株式会社製)からなる群より選択される1以上の化合物が好ましい。ここで、「EO」はエチレンオキシドを意味し、「PO」はプロピレンオキシドを意味する。
【0039】
3官能性以上の多官能性(メタ)アクリレート化合物としては、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート(3官能性)、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート(3官能性)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(3官能性)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(6官能性)及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(4官能性)より選択される1以上の化合物が好ましい。
【0040】
更に、不飽和基を有する樹脂として、エポキシ樹脂のエポキシ基の全部が不飽和基を有する変性化合物(但し、(メタ)アクリル酸、アクリル酸無水物を除く。)で変性されたエポキシ樹脂が挙げられる。
エポキシ基を1つ有する樹脂としては、芳香族エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。
不飽和基及びエポキシ基のいずれも有さない樹脂としては、エポキシ樹脂のエポキシ基の全部が不飽和基を有さない変性化合物で変性された変性エポキシ樹脂、水酸基含有化合物とイソシアネート基含有化合物から形成されるウレタン樹脂等が挙げられる。
(C-3)成分は、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0041】
(C)成分は、それぞれ、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。例えば、(C)成分は、1種以上の(C-1)成分と、1種以上の(C-2)成分との組み合わせであってもよい。
【0042】
≪(C)成分以外のその他の成分((D)成分)≫
(D)成分としては、シランカップリング剤、重合禁止剤、有機フィラー、無機フィラー等が挙げられる。
【0043】
≪シランカップリング剤≫
シランカップリング剤としては、エポキシ基、アルケニル基(例えば、ビニル基)、(メタ)アクリロイル基、第1級又は第2級アミノ基、メルカプト基、イソシアナト基、ウレイド基及びハロゲン原子からなる群より選択される1種以上の反応性官能基又は前記基で置換されたアルキル基と、1以上のアルコキシ基とを有し、非置換のアルキル基を有していてもよいシラン化合物が挙げられる。なお、前記反応性官能基は、前記反応性官能基で置換されたアルキル基として、シラン化合物のケイ素原子に結合していてもよい。
【0044】
シランカップリング剤の具体例としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基とアルコキシ基とを有し、アルキル基を有していてもよいシラン化合物;ビニルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン等のアルケニル基とアルコキシ基とを有し、アルキル基を有していてもよいシラン化合物;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリル基とアルコキシ基とを有し、アルキル基を有していてもよいシラン化合物;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等の第1級又は第2級アミノ基とアルコキシ基とを有し、アルキル基を有していてもよいシラン化合物;3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基、イソシアナト基、ウレイド基及びハロゲン原子からなる群より選択される1種以上の基と、1以上のアルコキシ基とを有し、アルキル基を有していてもよいシラン化合物等が挙げられる。
シランカップリング剤は、1種又は2種以上の組み合わせでもよい。
【0045】
無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、二酸化ケイ素(沈降性シリカ、フュームドシリカ(煙霧質シリカ)等)、カオリン、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、水酸化アルミニウム、石綿粉、酸化銅、水酸化銅、酸化鉄、酸化鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、カーボン、マイカ、スメクタイト、カーボンブラック、ベントナイト、窒化アルミニウム、及び窒化ケイ素が挙げられる。無機フィラーは、1種又は2種以上の組み合わせでもよい。
【0046】
有機フィラーとしては、アクリル粒子、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン(ポリスチレンビーズ)、これらを構成するモノマー(即ち、メタクリル酸メチル又はスチレン)と他のモノマーとを共重合させて得られる共重合体、ポリエチレン粒子、ポリシロキサン樹脂粒子、ポリアミド粒子、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、及びゴム微粒子(アクリルゴム粒子、イソプレンゴム粒子)が挙げられる。有機フィラーは、コアシェル構造を有していてもよい。有機フィラーは、1種又は2種以上の組み合わせでもよい。
【0047】
無機フィラー、有機フィラーの平均粒子径は、特に限定されないが、0.01μm~10μmであることが好ましく、1μm~5μmであることが特に好ましい。無機フィラー、有機フィラーの平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定することができる。
【0048】
重合禁止剤としては、ヒドロキノン、パラメトキシフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-クレゾール等が挙げられる。
上記した成分以外は、硬化性樹脂組成物に用いられる公知の成分から適宜選択できる。
【0049】
(D)成分は、それぞれ、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。例えば、(D)成分は、1種以上のシランカップリング剤と、1種以上の重合禁止剤との組み合わせであってもよい。
【0050】
<各成分の含有量>
硬化性樹脂組成物において、各成分の含有量は、以下であることが好ましい。なお、「(A)成分及び(C)成分の合計100質量部」とあるのは、硬化性樹脂組成物が(C)成分を含まない場合は、「(A)成分の100質量部」である。
(A)成分の含有量は、(A)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して、10~100質量部であることが好ましく、30~90質量部であることが特に好ましい。また、(A)成分が(A-1)成分を含む場合、(A-1)成分の100質量部に対する、式(2)で表されるエポキシ樹脂の含有量は、5~80質量部であることが好ましく、10~60質量部であることが特に好ましい。また、前記の場合(A-1)成分の100質量部に対する、式(2)で表されるエポキシ樹脂~式(11)で表されるエポキシ樹脂の合計の含有量は、5~100質量部であることが好ましく、10~80質量部であることが特に好ましく、15~60質量部であることが更に好ましい。(A)成分が(A-2)成分を含む場合、(A-2)成分の100質量部に対する、式(2)で表されるエポキシ樹脂のエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の含有量は、5~80質量部であることが好ましく、10~60質量部であることが特に好ましい。また、前記の場合(A-2)成分の100質量部に対する、式(2)で表されるエポキシ樹脂のエポキシ(メタ)アクリレート樹脂~式(11)で表されるエポキシ樹脂のエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の合計の含有量は、5~100質量部であることが好ましく、10~80質量部であることが特に好ましく、15~60質量部であることが更に好ましい。
光重合開始剤の含有量は、(A)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、0.5~5質量部であることが特に好ましい。
熱硬化剤の含有量は、(A)成分及び(C)成分の合計100質量部に対して、5~50質量部であることが好ましく、10~40質量部であることが特に好ましい。
(C)成分の含有量は、前記した(A)成分の含有量となる量であることが好ましい。
【0051】
硬化性樹脂組成物の合計100質量部に対する、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計は、50~100質量部であることが好ましく、60~100質量部であることが特に好ましい。ここで、硬化性樹脂組成物が(C)成分を含まない場合は、「(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計」とあるのは、「(A)成分及び(B)成分の合計」である。
【0052】
<硬化性樹脂組成物の調製方法>
硬化性樹脂組成物は、各成分を混合することで製造することができる。
【0053】
<硬化方法>
硬化性樹脂組成物は、紫外線等のエネルギー線の照射により、熱を加えることにより、又は紫外線等のエネルギー線の照射の、前、後又は同時に熱を加えることにより硬化させることができる。よって、硬化性樹脂組成物は、光(エネルギー線)硬化性、熱硬化性、又は、エネルギー線及び熱硬化性の組成物である。
【0054】
<用途>
硬化性樹脂組成物は、液晶への溶解性が抑えられ、液晶の汚染を防止することができる。よって、硬化性樹脂組成物は、液晶シール剤(表示素子用の液晶シール剤、及び、調光用の液晶シール剤等)、有機EL等の各種フレキシブルディスプレイ用シール剤として用いることができる。
【0055】
硬化性樹脂組成物の硬化物は、液晶表示体をシールするために用いられる。よって、本発明は、硬化性樹脂組成物でシールされた、液晶表示体も対象とする。液晶表示体を製造する方法としては、ディスペンサーを用いて、二枚の電極付き透明基板の一方に、硬化性樹脂組成物を塗布して、硬化性樹脂組成物のパターンを形成する工程、液晶を透明基板の枠内全面に滴下し、すぐにもう一方の透明基板を貼り合わせる工程、及び、シールパターン部分に紫外線等の光を照射するか、硬化性樹脂組成物を加熱するか、シールパターン部分に紫外線等のエネルギー線の照射の、前、後又は同時に熱を加えることにより硬化させる工程を含む方法が挙げられる。
【実施例
【0056】
次に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0057】
1.製造例
(1)部分メタクリレート化ビスフェノールA型エポキシ樹脂
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EXA-850CRP、DIC株式会社製)340.0g、メタクリル酸(東京化成工業株式会社製)86.1g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)524mgを混合し100~110℃で撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(0.01N)で反応液を酸価滴定し、メタクリル酸残存量を計算し、始めに加えたメタクリル酸量とメタクリル酸残量から反応率を算出し、反応率が99.9%以上になるまで加熱攪拌して反応させた。淡黄色透明粘稠物の部分メタクリレート化ビスフェノールA型エポキシ樹脂を418.0g得た。得られた樹脂のエポキシ当量は、470g/eqであった。
【0058】
(2)部分メタクリレート化樹脂1
エポキシ樹脂(NC-514S、カードライト社製)108.0g、メタクリル酸(東京化成工業株式会社製)10.8g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)65.6mgを混合し100~110℃で撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(0.01N)で反応液を酸価滴定し、メタクリル酸残存量を計算し、始めに加えたメタクリル酸量とメタクリル酸残量から反応率を算出し、反応率が99.9%以上になるまで加熱攪拌して反応させた。部分メタクリレート化樹脂1を114.0g得た。得られた樹脂のエポキシ当量は、968g/eqであった。
【0059】
(3)部分メタクリレート化樹脂2
ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(EX-212、ナガセケムテックス社製)60.4g、メタクリル酸(東京化成工業株式会社製)17.2g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)104.9mgを混合し100~110℃で撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(0.01N)で反応液を酸価滴定し、メタクリル酸残存量を計算し、始めに加えたメタクリル酸量とメタクリル酸残量から反応率を算出し、反応率が99.9%以上になるまで加熱攪拌して反応させた。部分メタクリレート化樹脂2を72.2g得た。得られた樹脂のエポキシ当量は、403g/eqであった。
【0060】
(4)部分メタクリレート化樹脂3
ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(EX-830、ナガセケムテックス社製)80.4g、メタクリル酸(東京化成工業株式会社製)12.9g、及びトリフェニルホスフィン(東京化成工業株式会社製)78.7mgを混合し100~110℃で撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液(0.01N)で反応液を酸価滴定し、メタクリル酸残存量を計算し、始めに加えたメタクリル酸量とメタクリル酸残量から反応率を算出し、反応率が99.9%以上になるまで加熱攪拌して反応させた。部分メタクリレート化樹脂3を89.5g得た。得られた樹脂のエポキシ当量は、663g/eqであった。
【0061】
(5)光重合開始剤1
ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(EX-830、ナガセケムテックス社製)26.8g(0.1エポキシ当量)、4-ジメチルアミノ安息香酸16.5g(0.1当量)、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド3.71g(0.02当量)、MIBK(メチルイソブチルケトン)25gをフラスコに入れ、オイルバスを用いて110℃で24時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、クロロホルム50gに溶解させ、水100mlで6回洗浄した。有機相の溶媒を減圧留去し、光重合開始剤1を35.3g得た。
【0062】
(6)光重合開始剤2
ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(EX-830、ナガセケムテックス社製)26.8g(0.1エポキシ当量)、2-ヒドロキシ-9H-チオキサンテン-9-オン22.83g(0.1当量)、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド3.71g(0.02当量)、MIBK40gをフラスコに入れ、オイルバスを用いて110℃で72時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、クロロホルム50gに溶解させ、水100mlで6回洗浄した。有機相の溶媒を減圧留去し、光重合開始剤2を36.2g得た
【0063】
2.硬化性樹脂組成物の作製
表に示す各成分を、以下の表に示す配合量(質量部)にて混合後、3本ロールミル(C-4 3/4×10、株式会社井上製作所製)により充分に混練して、実施例及び比較例の硬化性樹脂組成物を作製した。
【0064】
3.評価
実施例及び比較例の硬化性樹脂組成物について、以下の試験による評価を行った。
【0065】
(1)透湿度
樹脂組成物を直径3.6mm~3.8mm厚さ0.28mm~0.32mmになるように100mm×100mm厚さ0.1mmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムにより挟み、100mW/cmの紫外線照射照度で両面を1500mJ/cmずつの光エネルギーで照射を行い、120℃の熱風オーブンで1時間熱硬化を行い透湿度測定用のサンプルとした。透湿度測定はJISK0208:1976に準じ、65℃/95%の恒温恒湿槽を用い、透湿カップ法での重量変化より算出した。透湿度の悪化を抑制する観点から、透湿度の値は小さいほど好ましい。
【0066】
(2)貯蔵弾性率
長さ5cm、幅5mm、厚さ0.5mmの型に注型し、紫外線(UV照射装置:UVX-01224S1、ウシオ電機社製、100mW/cm/365nmで30秒)を積算光量3000mJ/cmで照射して硬化させ、その後、120℃の熱風オーブンで1時間熱硬化を行い、硬化物試験片を作成した。
【0067】
得られた硬化物試験片を動的粘弾性測定装置(DMA、セイコーインスツル社製、DMS6100)にて、変形モードを引張りとして、周波数1.0Hzで、25℃~200℃の範囲で2℃/分で昇温させながら測定を行った。得られた結果において各温度での貯蔵弾性率の値を抽出した。
【0068】
(3)NI点変化
実施例及び比較例の各シール剤について、直径5mm、厚さ0.5mmtの型に注型し、紫外線を積算光量3,000mJ/cmで照射して硬化させ、各シール剤の光硬化物を得た。得られた光硬化物をアンプル瓶に約0.1g入れ、さらに、液晶(MLC-6609、メルク社製)を光硬化物の10倍量加えた。この瓶を120℃オーブンに1時間投入し、その後室温で静置して室温(25℃)に戻ってから液晶部分を取り出し、0.2μmフィルターによりろ過して評価用液晶サンプルとした。
【0069】
NI点の測定は、示差走査型熱量計(DSC、パーキンエルマー社製、PYRIS6)を使用し、評価用液晶サンプル10mgをアルミサンプルパンに封入し、昇温速度5℃/分の条件で行った。なお、上記液晶10mgをアルミサンプルパンに封入し、昇温速度5℃/分の条件で測定を行った結果をブランクとした。
【0070】
ブランクの吸熱ピークトップ(相転移温度)TBと、評価用液晶の吸熱ピークトップ(相転移温度)TEの差;TE-TBをNI点変化とした。
【0071】
液晶の相転移温度であるNI点(Nematic-Isotropic point)は液晶の各成分の混合組成により決定され、各配合で固有の値となる。一般的に、これら液晶に何らかの不純物(他成分)が混入することによりNI点は変化することが知られている。シール剤の含有成分の液晶への溶出を抑制し、液晶の配向を安定に確保して、表示特性を向上する観点から、NI点変化の絶対値は小さいほど好ましい。
【0072】
【表1】
【0073】
表1における各成分は以下である。
1.硬化性樹脂((A)成分及び(C)成分)
(1)(A)成分
部分メタクリレート化樹脂1(製造例の(2)参照)
NC-514S(カードライト社製)
(2)(C)成分
部分メタクリレート化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(製造例の(1)参照)
部分メタクリレート化樹脂2(製造例の(3)参照)
部分メタクリレート化樹脂3(製造例の(4)参照)
EX-212(ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ナガセケムテックス社製)
EX-830(ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ナガセケムテックス社製)
2.光重合開始剤((B)成分)
光重合開始剤1(製造例の(5)参照)
光重合開始剤2(製造例の(6)参照)
3.熱硬化剤((B)成分)
EH-5030S(ポリアミン系化合物、株式会社ADEKA製、活性水素当量105g/eq.)