(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】パネル用型枠
(51)【国際特許分類】
B28B 7/34 20060101AFI20241002BHJP
E04G 9/02 20060101ALN20241002BHJP
【FI】
B28B7/34 G
B28B7/34 F
E04G9/02
(21)【出願番号】P 2022171538
(22)【出願日】2022-10-26
【審査請求日】2022-10-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591281459
【氏名又は名称】マックストン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148792
【氏名又は名称】三田 大智
(72)【発明者】
【氏名】渡井 忍
(72)【発明者】
【氏名】佐野 任
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-027305(JP,U)
【文献】特開平07-096505(JP,A)
【文献】特開2018-065294(JP,A)
【文献】特開平10-058418(JP,A)
【文献】特開2001-220889(JP,A)
【文献】特開2001-047422(JP,A)
【文献】特開昭55-014241(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0166848(US,A1)
【文献】米国特許第2101019(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 7/00- 7/46
E04G 9/00-19/00
E04G 25/00-25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モルタル製又はコンクリート製のパネル用の型枠であって、パネル表面成形用の底壁部及びパネル側面成形用の
四つの側壁部を有する
トレー状の第一型枠部と、該第一型枠部の側壁部をバックアップする第二型枠部とから成り、上記第一型枠部は紙
製のシート部材から成り
、上記側壁部を変形可能且つ内外側に傾斜可能に設け
、隣接する上記側壁部の端部間に摘み片を設けると共に、上記第二型枠部は木製又は金属製のフレーム部材から成り
、ロの字形状を呈することを特徴とするパネル用型枠。
【請求項2】
上記第一型枠部は上記第二型枠部を構成するフレーム部材の上に折り返される係合片を有することを特徴とする請求項1記載のパネル用型枠。
【請求項3】
上記第二型枠部を構成するフレーム部材は、上記第一型枠部の係合片と係合する係合面と、上記第一型枠部の側壁部をバックアップするバックアップ面をそれぞれ有することを特徴とする請求項2記載のパネル用型枠。
【請求項4】
上記第二型枠部を構成するフレーム部材は、磁性体を有する金属製であることを特徴とする請求項3記載のパネル用型枠。
【請求項5】
上記第一型枠部の底壁部に凹凸を設けることを特徴とする請求項1記載のパネル用型枠。
【請求項6】
上記第一型枠部を構成する紙製のシート部材の表裏面の少なくとも一方に合成樹脂製フィルムにより防水加工を施すことを特徴とする請求項1記載のパネル用型枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベランダ等に敷き詰めるモルタル製パネル又はコンクリート製パネルを製造するための型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のパネル製造用型枠は、ポリプロピレン(polypropylene)やポリエチレン(polyethylene)を真空成型や圧空成形により予めトレー状に成形した型枠を用い、該型枠の底壁部でパネル表面を成形すると共に、該型枠の側壁部でパネル側面を成形することができる。
【0003】
このように予めトレー状に成形された型枠では、型抜きのために、側壁部が抜き方向(上方)に向かって広がるように傾斜して成形されている。よって最終的に製造されたパネルにおいては底面部の面積が表面部の面積よりも大きくなる。したがって、多数枚のパネルを敷き詰めるときには隣接するパネル間の目地はパネル表面側で大きくなってしまい、目立つことになる。
【0004】
そこで、下記特許文献1の型枠のように、防水加工を施した厚紙製の型枠が開発されている。下記特許文献1の型枠は紙製であるので、型抜きの際に容易に変形しやすいため、予めトレー状に成形された型枠のように側壁部を傾斜させる必要がない。
【0005】
そのため、下記特許文献1の型枠によって垂直の側面を有するパネルを製造することができ、多数枚のパネルを敷き詰めるときには目地を狭くする、つまり目地を目立たなくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の型枠は、型抜きの際だけではなく、モルタルやコンクリートの養生の際にも変形し易いため、所望の寸法や形状を正確に反映したパネルを製造するのは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は型抜きが容易であると共に、所望寸法及び所望形状のパネルを製造することができるパネル用型枠を提供する。
【0009】
要述すると、本発明に係るパネル用型枠は、モルタル製又はコンクリート製のパネル用の型枠であって、パネル表面成形用の底壁部及びパネル側面成形用の四つの側壁部を有するトレー状の第一型枠部と、該第一型枠部の側壁部をバックアップする第二型枠部とから成り、上記第一型枠部は紙製のシート部材から成り、上記側壁部を変形可能且つ内外側に傾斜可能に設け、隣接する上記側壁部の端部間に摘み片を設けると共に、上記第二型枠部は木製又は金属製のフレーム部材から成り、ロの字形状を呈することにより、モルタル等に直接触れる上記第一型枠部を変形容易且つ傾斜可能にすると共に、該第一型枠部を上記第二型枠部で適切にバックアップすることができ、型抜きを容易にしつつ所望の寸法及び形状のパネルを成形することができる。また、上記摘み片を隣接する一対の側壁部の一方の外面に沿わせることにより、上記第一型枠部と上記第二型枠部を組み合わせた際に上記第一型枠部に形成される入隅角部の隙間を可及的に小さくしてモルタル等の漏出を防止することができる。
【0010】
好ましくは、上記第一型枠部は上記第二型枠部を構成するフレーム部材の上に折り返される係合片を有する構造とし、該係合片によって上記第一型枠部を簡単に固定することができる。
【0011】
さらに好ましくは、上記第二型枠部を構成するフレーム部材は、上記第一型枠部の係合片と係合する係合面と、上記第一型枠部の側壁部をバックアップするバックアップ面をそれぞれ有する構造とし、上記係合面を用いて上記第一型枠部を適切に固定することができると共に、上記バックアップ面を用いて上記第一型枠部の側壁部を確実に且つ適切にバックアップすることができる。
【0012】
また、上記第二型枠部を構成するフレーム部材を磁性体を有する金属製とすることにより、上記第一型枠部の係合片を上記第二型枠部のフレーム部材と磁石体で挾持して素早く簡単に上記第一型枠部を固定することができる。
【0013】
また、上記第一型枠部の底壁部に凹凸を設けることにより、成形するパネルの表面に模様を施すことができる。
【0014】
好ましくは、上記第一型枠部を構成するシート部材が紙製の場合には、当該シート部材の表裏面の少なくとも一方に合成樹脂製フィルムにより防水加工を施すことにより、打設したモルタル又はコンクリートの水分による変形などを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るパネル用型枠によれば、容易に変形可能で且つ展開可能な第一型枠部と、該第一型枠部をバックアップする第二型枠部により、所望寸法及び所望形状のパネルを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第一型枠部と第二型枠部を別々に示す斜視図である。
【
図2】第一型枠部と第二型枠部を組み合わせた状態を示す斜視図である。
【
図3】第一型枠部の側壁部を第二型枠部のフレーム部材でバックアップした状態を示す断面図であり、(A)は該フレーム部材が角柱状である場合の断面図、(B)は該フレーム部材が断面L字形状である場合の断面図である。
【
図4】第一型枠部の側壁部を第二型枠部のフレーム部材でバックアップした状態を示す断面図であり、(A)は上記側壁部が内側に傾斜するようにバックアップする例を示す断面図、(B)は上記側壁部が外側に膨出するようにバックアップする例を示す断面図、(C)は上記側壁部が外側に傾斜するようにバックアップする例を示す断面図である。
【
図5】第一型枠部の係合片を第二型枠部のフレーム部材と磁石体とにより挾持して固定する例を示す断面図である。
【
図6】本発明に係る型枠によって製造したパネルの外形と、隣接するパネル同士間の目地の形状を示す側面図であり、(A)は隣接する一対のパネルの双方の側壁が外側に向かって下り傾斜している場合の側面図、(B)は隣接する一対のパネルの双方の側壁が垂直壁である場合の側面図、(C)は隣接する一対のパネルの双方の側壁が外側に向かってのぼり傾斜している場合の側面図、(D)は隣接する一対のパネルの一方の側壁が外側に向かって下り傾斜しており、他方の側壁が外側に向かって上り傾斜している場合の側面図、(E)は隣接する一対のパネルの双方の側壁が膨出部を有している場合の側面図である。
【
図7】第一型枠部の他例を示す斜視図であり、複数枚のシート部材を用いて第一型枠部を構成すると共に、パネル表面成形用の底壁部に凹凸を設ける第一型枠部を示す斜視図である。
【
図8】複数枚のパネルを同時に製造する場合の第一型枠部と第二型枠部の組み合わせを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るパネル用型枠(以下、単に「型枠」という。)の最適な実施例について、
図1乃至
図8に基づき、説明する。
【0018】
<本発明に係る型枠の基本構成>
既述の如く、本発明に係る型枠は、モルタル製又はコンクリート製のパネルを製造するための型枠であり、
図1,
図2に示すように、シート部材1′から成る第一型枠部1と、フレーム部材2′から成る第二型枠部2を備え、第二型枠部2が第一型枠部1を包囲してバックアップする基本構成を有している。
【0019】
≪第一型枠部の構成≫
第一型枠部1は、
図1,
図2に示すように、シート部材1′をトレー状に折り曲げ加工して構成し、パネル表面成形用の底壁部1a及びパネル側面成形用の四つの側壁部1bを備える。折り曲げ方としては、トレー状となり、上記底壁部1a及び側壁部1bを備えることができれば、特に限定はないが、
図1に示すように、隣接する側壁部1bの端部間に、摘み片1dを設けることが望ましい。該摘み片1dは隣接する一対の側壁部1bの一方の外面に沿わせることにより、
図2に示すように、第一型枠部1と第二型枠部2を組み合わせた際に第一型枠部1に形成される入隅角部1eの隙間を可及的に小さくしてモルタル等の漏出を防止する。
【0020】
第一型枠部1を構成するシート部材1′は、紙製又は合成樹脂製であることが好ましい。変形が容易で、折り曲げ加工がし易く、使用後は展開し易いためである。合成樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、PET(ポリエチレンテレフタレート:polyethylene terephthalate)樹脂等を用いる。また、紙製とする場合には、少なくともモルタル等と接する面には、ポリプロピレン、ポリエチレン、PET樹脂等から成る合成樹脂製シートで防水加工を施すことが望ましい。
【0021】
また、第一型枠部1の各側壁部1bの上端に連続して係合片1cを設け、該係合片1cを第二型枠部2のフレーム部材2′上に折り返せるようにする。第一型枠部1の固定のためである。固定方法については後述する。
【0022】
なお、第一型枠部1は、既述のように、単数枚のシート部材1′で構成する他、
図7に示すように、複数枚のシート部材1′(1′A及び1′B)で構成することも実施に応じ任意である。すなわち、第一シート部材1′Aによって、底壁部1a及び対向する一対の側壁部1bを形成すると共に、該第一シート部材1′Aにて形成された一対の側壁部1bの対向方向とは直交する方向で対向する一対の側壁部1bを一対の第二シート部材1′Bにて形成する。
図7中の1hは差し込み片であり、第一シート部材1′Aで形成した底壁部1aの下に差し込むことができる。このように、複数枚のシート部材1′で第一型枠部1を構成する場合、底壁部1aに凸部1fや凹部1gを形成して、製造するパネルの表面に模様やテクスチャーを施すことができる。
【0023】
≪第二型枠部の構成≫
第二型枠部2は、
図1,
図2に示すように、フレーム部材2′をロの字形状に組み合わせて構成し、第一型枠部1を囲繞して該第一型枠部1の側壁部1bを外側からバックアップする。なお、第一型枠部1の底壁部1aは、該第一型枠部1を載置する面、例えば床面や地面等によってバックアップされる。
【0024】
フレーム部材2′としては、木製又は金属製の円柱材や多角柱材等の柱材や、円筒体や多角筒体のような筒材や、断面L字形や断面C字形の材を用いることができるが、好ましくは、
図3(A)や
図3(B)に示すように、第一型枠部1の側壁部1bに倣い密着してバックアップするバックアップ面2aと、第一型枠部1の係合片1cと均密に係合して該第一型枠部1を固定するための係合面2bを備えることが望ましい。
【0025】
また、第一型枠部1の側壁部1bの形状に合わせて第二型枠部2のフレーム部材2′におけるバックアップ面2aの形状も適宜変更することができ、製造するパネルの側面形状を変更することができる。たとえば、
図3(A)(B)に示すように、第一型枠部1の側壁部1bが垂直面である場合の他、
図4(A)に示すように、側壁部1bが内側(底壁部1a側)に傾斜している場合、
図4(B)に示すように、側壁部1bが外側に膨らんでいる場合、
図4(C)に示すように、側壁部1bが外側に傾斜している場合でも、第二型枠部2のフレーム部材2′にバックアップ面2aの形状を適宜変更して、適切に側壁部1bをバックアップして、所望形状のパネルを製造することができる。
【0026】
<本発明に係る型枠を用いたパネル製造方法>
本発明に係る型枠を用いてパネルを製造するには、
図2に示すように、既述した構成の第一型枠部1と第二型枠部2を組み合わせることとなるが、この際には、
図3,
図4に基づき説明したように、第一型枠部1の側壁部1bを適切に第二型枠部2のバックアップ面2aによって外側からバックアップする状態を得る。なお、複数枚のパネルを同時に製造する際には、たとえば、
図8に示すように、第二型枠部2のフレーム部材2′を梯子状に組み合わせて、複数の第一型枠部1と組み合わせるようにすることもできる。
【0027】
さらに、第一型枠部1の係合片1cを第二型枠部2の係合面2bに係合させて固定することにより、第一型枠部1が第二型枠部2に包囲された状態で固定される。固定の方法としては、
図2に示すように、粘着テープTによって係合片1cを係合面2bに係合させた状態で固定することができると共に、
図3,
図8に示すように、第二型枠部2のフレーム部材2′が鉄等の磁性体を有する金属から成る場合には、係合面2bに係合させた係合片1cをフレーム部材2′と磁石体(永久磁石体又は電磁石体)M間に磁力により強固に挾持して固定することができる。
【0028】
あとは、第一型枠部1内にモルタル又はコンクリートを打設し、硬化するまで養生し、型抜きすればパネルを製造することができる。本発明に係る型枠にあっては、第一型枠部1と第二型枠部2の組み合わせ状態を解除すれば、第二型枠部2による第一型枠部1のバックアップ状態を解除することができ、該第一型枠部1を展開する等して容易に変形させることができるため、第一型枠部1の側壁部1bの形態にかかわらず、容易に型抜きできる。
【0029】
また、第一型枠部1の側壁部1bの形態にかかわらず、容易に型抜きできるからこそ、
図3,
図4に示すように、側壁部1bを様々な形態にして、製造するパネルの側面形状をアレンジすることができる。
【0030】
よって、製造したパネルを敷設する場合に、隣接する一対のパネル間の目地形状をアレンジすることもできる。
【0031】
たとえば、
図6(A)に示す如く、従来のように、隣接する一対のパネルP1,P2の双方の側面Paを外側に向かって下り傾斜するようにして、パネル表面側の目地を広くすることも勿論できるし、
図6(B)に示す如く、隣接する一対のパネルP1,P2の双方の側面Paを垂直面にして、目地を可及的に目立たなくすることや、
図6(C)に示す如く、隣接する一対のパネルP1,P2の双方の側面Paを外側に向かって上り傾斜するようにして、目地を可及的に目立たなくすると共に下方に通水空間を形成することができる。
【0032】
また、
図6(D)に示す如く、隣接する一対のパネルP1,P2の一方のパネルP1の側面Paを外側に向かって上り傾斜するようにし、他方のパネルP2の側面Paを外側に向かって下り傾斜するようにして、両パネルP1,P2を摩擦係合させることや、
図6(E)に示す如く、隣接する一対のパネルP1,P2の双方の側面Paを外側に向かって膨出する形状として、側面Pa同士を突き合わせることができる。
【0033】
以上説明したように、本発明に係る型枠によれば、モルタルやコンクリートに直接触れる第一型枠部1をシート部材1′で構成して変形容易且つ展開可能にすると共に、該第一型枠部1を、フレーム部材2′で構成した第二型枠部2で適切にバックアップすることができ、型抜きを容易にしつつ所望の寸法及び形状のパネルを成形することができる。
【符号の説明】
【0034】
1…第一型枠部、1a…底壁部、1b…側壁部、1c…係合片、1d…摘み片、1e…入隅角部、1f…凸部、1g…凹部、1h…差し入れ片、1′…シート部材、1′A…第一シート部材、1′B…第二シート部材、2…第二型枠部、2a…バックアップ面、2b…係合面、2′…フレーム部材、T…粘着テープ、M…磁石体、P1…パネル、P2…パネル。