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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】スカーフ面加工装置
(51)【国際特許分類】
   B27D 1/10 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
B27D1/10 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022575088
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(86)【国際出願番号】 JP2021041070
(87)【国際公開番号】W WO2022153651
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2021003220
(32)【優先日】2021-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155182
【氏名又は名称】株式会社名南製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100131406
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 正寿
(72)【発明者】
【氏名】井上 慎也
(72)【発明者】
【氏名】二宮 通人
(72)【発明者】
【氏名】小池 恭弘
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特許第4934064(JP,B2)
【文献】特許第5683969(JP,B2)
【文献】特許第6556669(JP,B2)
【文献】特開平6-122101(JP,A)
【文献】特許第4275773(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2019/0240860(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27D 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質の板材の繊維方向と交差する方向に延在する前記板材の端部に、スカーフ面を加工するスカーフ面加工装置であって、
少なくとも前記板材の端部を突出させた状態で該板材を保持可能な保持部と、
回転軸を有するモータと、複数の刃を有すると共に前記回転軸に接続された円板状の切削刃物と、を有し、前記板材の端部の延在方向の一方側から見たときの仮想投影面上における前記板材の端部の投影と前記切削刃物の投影とが交差する位置関係で配置された加工部と、
前記スカーフ面が所望のスカーフ比を有するよう前記切削刃物を前記板材に対して第1傾斜角度傾斜させた状態、かつ、前記スカーフ面の加工進行方向に向かって下り傾斜を有するよう前記切削刃物を前記板材に対して第2傾斜角度傾斜させた状態で前記加工部を支持する支持部と、
前記板材の端部の延在方向に沿って前記保持部または前記支持部を該支持部または該保持部に対して相対移動可能に、前記保持部または前記支持部に機械的に接続された駆動部と、
を備え、
前記加工部は、前記切削刃物の回転軸中心線が、前記スカーフ面の弧長の中央を通るよう配置されており、
前記第2傾斜角度は、該第2傾斜角度をθ 2 、円弧凹面となる前記スカーフ面の所望の矢高をh、所望の前記スカーフ比をi、前記切削刃物の所望の直径をR、前記板材の所望の板厚をt、としたときに次式(1)を満たす値を有している
スカーフ面加工装置。
(数1)
【請求項2】
木質の板材の繊維方向と交差する方向に延在する前記板材の端部に、スカーフ面を加工するスカーフ面加工装置であって、
少なくとも前記板材の端部を突出させた状態で該板材を保持可能な保持部と、
回転軸を有するモータと、複数の刃を有すると共に前記回転軸に接続された円板状の切削刃物と、を有し、前記板材の端部の延在方向の一方側から見たときの仮想投影面上における前記板材の端部の投影と前記切削刃物の投影とが交差する位置関係で配置された加工部と、
前記スカーフ面が所望のスカーフ比を有するよう前記切削刃物を前記板材に対して第1傾斜角度傾斜させた状態、かつ、前記スカーフ面の加工進行方向に向かって下り傾斜を有するよう前記切削刃物を前記板材に対して第2傾斜角度傾斜させた状態で前記加工部を支持する支持部と、
前記板材の端部の延在方向に沿って前記保持部または前記支持部を該支持部または該保持部に対して相対移動可能に、前記保持部または前記支持部に機械的に接続された駆動部と、
を備え、
前記加工部は、前記切削刃物の回転軸中心線が、前記スカーフ面の先端を通るよう配置されており、
前記第2傾斜角度は、該第2傾斜角度をθ 2 、円弧凹面となる前記スカーフ面の所望の矢高をh 1 、所望の前記スカーフ比をi、前記切削刃物の所望の直径をR、前記板材の所望の板厚をt、としたときに次式(2)ないし(6)を満たす値を有している
スカーフ面加工装置。
(数2)
【請求項3】
前記複数の刃は、全て平刃である
請求項1または2に記載のスカーフ面加工装置。
【請求項4】
前記切削刃物は、前記板材が配置される側を向く第1面と、該第1面とは反対方向を向く第2面と、を有しており、
前記第1面に当接するよう配置された第1補強円板をさらに備える
請求項1ないしのいずれか1項に記載のスカーフ面加工装置。
【請求項5】
前記第2面に当接するよう第2補強円板をさらに備える
請求項に記載のスカーフ面加工装置。
【請求項6】
前記板材を押圧可能に、前記切削刃物に関して前記スカーフ面の加工進行方向の上流側であって、該切削刃物の近傍に配置された押圧部をさらに備える
請求項1ないしのいずれか1項に記載のスカーフ面加工装置。
【請求項7】
木質の板材の繊維方向と交差する方向に延在する前記板材の端部に、スカーフ面を加工するスカーフ面加工方法であって、
(a)少なくとも前記板材の端部を突出させた状態で該板材を保持し、
(b)前記板材の端部の延在方向の一方側から見たときの仮想投影面上における前記板材の端部の投影と、複数の刃を有する円板状の切削刃物の前記仮想投影面上における投影と、が交差する位置関係となるよう前記切削刃物を配置すると共に、前記切削刃物の回転軸中心線が、前記スカーフ面の弧長の中央を通るよう前記切削刃物を配置し、
(c)前記切削刃物の前記板材に対する第2傾斜角度をθ 2 、円弧凹面となる前記スカーフ面の所望の矢高をh、前記スカーフ面の所望のスカーフ比をi、前記切削刃物の所望の直径をR、前記板材の所望の板厚をt、としたときに次式(7)を満たすよう前記第2傾斜角度を算出し、
(d)前記スカーフ面が所望の前記スカーフ比を有するよう前記切削刃物を前記板材に対して第1傾斜角度傾斜させると共に、前記スカーフ面の加工進行方向に向かって下り傾斜を有するよう前記切削刃物を前記板材に対して前記第2傾斜角度傾斜させ、
(e)前記板材の端部の延在方向に沿って、前記板材と前記切削刃物とを相対移動させることによって、前記板材の端部に前記スカーフ面を加工する
スカーフ面加工方法。
(数3)
【請求項8】
木質の板材の繊維方向と交差する方向に延在する前記板材の端部に、スカーフ面を加工するスカーフ面加工方法であって、
(a)少なくとも前記板材の端部を突出させた状態で該板材を保持し、
(b)前記板材の端部の延在方向の一方側から見たときの仮想投影面上における前記板材の端部の投影と、複数の刃を有する円板状の切削刃物の前記仮想投影面上における投影と、が交差する位置関係となるよう前記切削刃物を配置すると共に、前記切削刃物の回転軸中心線が、前記スカーフ面の先端を通るよう前記切削刃物を配置し、
(c)前記切削刃物の前記板材に対する第2傾斜角度をθ 2 、円弧凹面となる前記スカーフ面の所望の矢高をh、前記スカーフ面の所望のスカーフ比をi、前記切削刃物の所望の直径をR、前記板材の所望の板厚をt、としたときに次式(8)ないし(12)を満たすよう前記第2傾斜角度を算出し、
(d)前記スカーフ面が所望の前記スカーフ比を有するよう前記切削刃物を前記板材に対して第1傾斜角度傾斜させると共に、前記スカーフ面の加工進行方向に向かって下り傾斜を有するよう前記切削刃物を前記板材に対して前記第2傾斜角度傾斜させ、
(e)前記板材の端部の延在方向に沿って、前記板材と前記切削刃物とを相対移動させることによって、前記板材の端部に前記スカーフ面を加工する
スカーフ面加工方法。
(数4)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質の板材の繊維方向と交差する方向に延在する当該板材の端部にスカーフ面を加工するスカーフ面加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2000-804号公報(特許文献1)には、木質の板材の繊維方向と交差する方向に延在する当該板材の端部に、丸鋸によってスカーフ面を加工するスカーフ面加工装置が記載されている。当該スカーフ面加工装置では、丸鋸が、スカーフ面の加工進行方向に向かって下り傾斜を有している(以下、「ヒーリング」という。)。
【0003】
上述した公報では、ヒーリングを行うことにより、スカーフ面を加工した丸鋸の切刃が、加工後のスカーフ面に再度接触することを防止することができるため、スカーフ面に荒れが生じることを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、丸鋸の下り傾斜角度(以下、「ヒーリング角度」という。)が大きいほど、スカーフ面を加工した丸鋸の切刃が、加工後のスカーフ面に再接触すること(以下、「二度削り」という。)を確実に防止することができる。しかしながら、スカーフ面を加工する際にヒーリングを行うと、スカーフ面が円弧凹面となる。そして、ヒーリング角度が大きいほど、当該円弧凹面の曲率が大きくなる。当該円弧凹面の曲率が大き過ぎると、後工程においてスカーフ面同士を接合する際に、スカーフ面同士が部分的な接触となって、良好な接合を得ることができない場合が生じる。一方、適切な曲率を有する円弧凹面は、接着剤を保持することができるため(ポケット効果)、スカーフ面が適切な円弧凹面を有することは、スカーフ面同士の良好な接合という点において好ましい場合がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、二度削りの防止と適切な円弧面を有するスカーフ面の確保との両立に資する技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスカーフ面加工装置は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明に係る第1のスカーフ面加工装置の好ましい形態によれば、木質の板材の繊維方向と交差する方向に延在する前記板材の端部に、スカーフ面を加工するスカーフ面加工装置が構成される。当該スカーフ面加工装置は、保持部と、加工部と、支持部と、駆動部と、を備えている。保持部は、少なくとも板材の端部を突出させた状態で、当該板材を保持可能である。加工部は、回転軸を有するモータと、複数の刃を有すると共に回転軸に接続された円板状の切削刃物と、を有している。また、加工部は、板材の端部の延在方向の一方側から見たときの仮想投影面上における板材の端部の投影と切削刃物の投影とが交差する位置関係で配置されている。さらに、加工部は、切削刃物の回転軸中心線が、スカーフ面の弧長の中央を通るよう配置されている。支持部は、スカーフ面が所望のスカーフ比を有するように切削刃物を板材に対して第1傾斜角度傾斜させた状態、かつ、スカーフ面の加工進行方向に向かって下り傾斜を有するように切削刃物を板材に対して第2傾斜角度傾斜させた状態で加工部を支持する。駆動部は、板材の端部の延在方向に沿って保持部または支持部を、当該支持部または保持部に対して相対移動可能に、当該保持部または支持部に機械的に接続されている。そして、第2傾斜角度は、当該第2傾斜角度をθ 2 、円弧凹面となるスカーフ面の所望の矢高をh、所望のスカーフ比をi、切削刃物の所望の直径をR、板材の所望の板厚をt、としたときに次式(1)を満たす値を有している。
(数1)
ここで、本発明における「スカーフ比」とは、板材を板厚方向の一方側から見たときの仮想投影面上におけるスカーフ面の投影のうち繊維方向に沿う方向の長さと、板材の板厚と、の比として規定される。また、本発明における「回転軸に接続された」とは、切削刃物が回転軸に直接接続される態様の他、間接的に接続される態様を好適に包含する。なお、切削刃物が回転軸に間接的に接続される態様としては、例えば、切削刃物が減速歯車を介して回転軸に接続される態様が考えられる。さらに、本発明における「加工進行方向」とは、板材の繊維方向と交差する方向、即ち、板材の端部の延在方向であって、スカーフ面の加工が進行していく方向がこれに該当する。また、本発明における「弧長の中央」とは、典型的には、文字通り、スカーフ面の弧長の中央がこれに該当するが、スカーフ面の投影の弧長の概ね中央を好適に包含する。
【0009】
本発明によれば、切削刃物は、スカーフ面の加工進行方向に向かって第2傾斜角度の下り傾斜を有するため、スカーフ面を加工した切刃が当該加工されたスカーフ面に再度接触することを良好に防止することができる。また、スカーフ面を加工する際に、切削刃物の切削力が、板材を板厚方向に押圧する方向にも作用するため、板材の反りや波うち等による暴れを良好に抑制することができる。しかも、第2傾斜角度が、切削刃物の回転軸中心線とスカーフ面との相対位置関係と、円弧凹面となるスカーフ面の矢高と、スカーフ比と、切削刃物の直径と、板材の板厚と、に基づいて算出された値を有するため、スカーフ面を所望の円弧凹面に加工することができる。これにより、円弧凹面となるスカーフ面の矢高が増大することを抑制し得て、適切な円弧凹面に加工することができる。即ち、後工程においてスカーフ面同士を接合する際に、スカーフ面同士が部分的な接触となることを良好に抑制しつつ、接着剤を保持可能(ポケット効果)な適切な曲率を有する円弧凹面を確保することができる。この結果、スカーフ面同士の良好な接合を実現することができる。なお、切削刃物の回転軸中心線が、スカーフ面の弧長の略中央を通るように加工部が配置されているため、切削刃物の切削力の分力である板材を板厚方向に押圧する力を、スカーフ面の弧長の略中央に作用させることができる。また、スカーフ面の斜面長さ方向の中央において、切削刃物の切削力の作用方向(刃の通過方向)と板材の繊維方向とをほぼ同じにすることができる。これにより、スカーフ面を加工する際に、切削力が繊維方向と交差する方向に作用することを抑制できるため、スカーフ面が繊維方向と交差する方向に破損することを良好に抑制できる。
【0010】
本発明に係る第2のスカーフ面加工装置の好ましい形態によれば、木質の板材の繊維方向と交差する方向に延在する前記板材の端部に、スカーフ面を加工するスカーフ面加工装置が構成される。当該スカーフ面加工装置は、保持部と、加工部と、支持部と、駆動部と、を備えている。保持部は、少なくとも板材の端部を突出させた状態で、当該板材を保持可能である。加工部は、回転軸を有するモータと、複数の刃を有すると共に回転軸に接続された円板状の切削刃物と、を有している。また、加工部は、板材の端部の延在方向の一方側から見たときの仮想投影面上における板材の端部の投影と切削刃物の投影とが交差する位置関係で配置されている。さらに、加工部は、切削刃物の回転軸中心線が、スカーフ面の先端を通るよう配置されている。支持部は、スカーフ面が所望のスカーフ比を有するように切削刃物を板材に対して第1傾斜角度傾斜させた状態、かつ、スカーフ面の加工進行方向に向かって下り傾斜を有するように切削刃物を板材に対して第2傾斜角度傾斜させた状態で加工部を支持する。駆動部は、板材の端部の延在方向に沿って保持部または支持部を、当該支持部または保持部に対して相対移動可能に、当該保持部または支持部に機械的に接続されている。そして、第2傾斜角度は、当該第2傾斜角度をθ 2 、円弧凹面となるスカーフ面の所望の矢高をh、所望のスカーフ比をi、切削刃物の所望の直径をR、板材の所望の板厚をt、としたときに次式(2)ないし(6)を満たす値を有している。ここで、本発明における「スカーフ比」とは、板材を板厚方向の一方側から見たときの仮想投影面上におけるスカーフ面の投影のうち繊維方向に沿う方向の長さと、板材の板厚と、の比として規定される。また、本発明における「加工進行方向」とは、板材の繊維方向と交差する方向、即ち、板材の端部の延在方向であって、スカーフ面の加工が進行していく方向がこれに該当する。さらに、本発明における「スカーフ面の先端」とは、典型的には、板材の板厚方向の一方側から見たときの仮想投影面上におけるスカーフ面の投影のうち繊維方向に沿う方向の端部がこれに該当する。
(数2)
【0011】
本発明によれば、切削刃物は、スカーフ面の加工進行方向に向かって第2傾斜角度の下り傾斜を有するため、スカーフ面を加工した切刃が当該加工されたスカーフ面に再度接触することを良好に防止することができる。また、スカーフ面を加工する際に、切削刃物の切削力が、板材を板厚方向に押圧する方向にも作用するため、板材の反りや波うち等による暴れを良好に抑制することができる。しかも、第2傾斜角度が、切削刃物の回転軸中心線とスカーフ面との相対位置関係と、円弧凹面となるスカーフ面の矢高と、スカーフ比と、切削刃物の直径と、板材の板厚と、に基づいて算出された値を有するため、スカーフ面を所望の円弧凹面に加工することができる。これにより、円弧凹面となるスカーフ面の矢高が増大することを抑制し得て、適切な円弧凹面に加工することができる。即ち、後工程においてスカーフ面同士を接合する際に、スカーフ面同士が部分的な接触となることを良好に抑制しつつ、接着剤を保持可能(ポケット効果)な適切な曲率を有する円弧凹面を確保することができる。この結果、スカーフ面同士の良好な接合を実現することができる。なお、切削刃物の回転軸中心線の投影が、スカーフ面の先端を通るように加工部が配置されているため、切削刃物の切削力の分力である板材を板厚方向に押圧する力を、最も薄く欠け易いスカーフ面の先端部に作用させることができる。また、当該スカーフ面の先端部において、板材の繊維方向と切削刃物の切削力の作用方向(刃の通過方向)とをほぼ一致させることができる。これにより、最も薄くなるスカーフ面の先端部において、切削力が繊維方向と交差する方向に作用することを良好に抑制できるため、スカーフ面の先端部が繊維方向と交差する方向に破損することを良好に抑制できる。
【0012】
本発明に係るスカーフ面加工装置の更なる形態によれば、複数の刃は、全て平刃である。
【0013】
本形態によれば、全ての刃からの切削力の分力を、板材を押圧する方向に作用させることができる。これにより、板材の反りや波うち等による暴れをより良好に抑制することができる。この結果、一層良好なスカーフ面を得ることができる。
【0014】
本発明に係るスカーフ面加工装置の更なる形態によれば、切削刃物は、板材が配置される側を向く第1面と、当該第1面とは反対方向を向く第2面と、を有している。そして、スカーフ面加工装置は、第1面に当接するように配置された第1補強円板をさらに備えている。ここで、本発明における「板材が配置される側」とは、切削刃物によってスカーフ面を加工する際に、板材が配置される側として規定される。
【0015】
本形態によれば、切削刃物を、スカーフ面の加工進行方向に向かって下り傾斜を有するように配置したために当該切削刃物に作用する曲げ力に対して、剛性の向上を図ることができる。ここで、切削刃物がスカーフ面の加工進行方向に向かって下り傾斜を有するため、第1補強円板が板材(スカーフ面)に接触することを防止することができる。
【0016】
本発明に係るスカーフ面加工装置の更なる形態によれば、第2面に当接するように第2補強円板をさらに備えている。
【0017】
本形態によれば、切削刃物に作用する曲げ力に対する剛性をより一層向上することができる。
【0018】
本発明に係るスカーフ面加工装置の更なる形態によれば、板材を押圧可能に、切削刃物に関してスカーフ面の加工進行方向の上流側であって、当該切削刃物の近傍に配置された押圧部をさらに備えている。
【0019】
本形態によれば、板材の端部にスカーフ面を加工する直前において、当該板材の反りや波うち等による暴れを抑制することができる。この結果、一層良好なスカーフ面を得ることができる。
【0020】
本発明に係るスカーフ面加工装置の更なる形態によれば、押圧部は、板材と線接触可能な形状を有している。また、押圧部は、板材との接触方向が加工方向に直交するように配置されている。
【0021】
本形態によれば、スカーフ面を加工するにあたり、支持部と保持部とを相対移動させる際に、押圧部材と板材との間の抵抗を抑制しながらも、スカーフ面を加工する直前において、板材の反りや波うち等による暴れを良好に抑制することができる。この結果、一層良好なスカーフ面を得ることができる。
【0022】
本発明に係る第1のスカーフ面加工方法の好ましい形態によれば、木質の板材の繊維方向と交差する方向に延在する前記板材の端部に、スカーフ面を加工するスカーフ面加工方法が構成される。当該スカーフ面加工方法は、(a)少なくとも板材の端部を突出させた状態で当該板材を保持し、(b)板材の端部の延在方向の一方側から見たときの仮想投影面上における板材の端部の投影と、複数の刃を有する円板状の切削刃物の当該仮想投影面上における投影と、が交差する位置関係となるように切削刃物を配置すると共に、切削刃物の回転軸中心線が、スカーフ面の弧長の中央を通るように切削刃物を配置し、(c)切削刃物の板材に対する第2傾斜角度をθ 2 、円弧凹面となるスカーフ面の所望の矢高をh、スカーフ面の所望のスカーフ比をi、切削刃物の所望の直径をR、板材の所望の板厚をt、としたときに次式(7)を満たすように第2傾斜角度を算出し、(d)スカーフ面が所望のスカーフ比を有するように切削刃物を板材に対して第1傾斜角度傾斜させると共に、スカーフ面の加工進行方向に向かって下り傾斜を有するように切削刃物を板材に対して第2傾斜角度傾斜させ、
(e)板材の端部の延在方向に沿って、板材と切削刃物とを相対移動させることによって、板材の端部に前記スカーフ面を加工する。
(数3)
ここで、本発明における「スカーフ比」とは、板材を板厚方向の一方側から見たときの仮想投影面上におけるスカーフ面の投影のうち繊維方向に沿う方向の長さと、板材の板厚と、の比として規定される。また、本発明における「加工進行方向」とは、板材の繊維方向と交差する方向、即ち、板材の端部の延在方向であって、スカーフ面の加工が進行していく方向がこれに該当する。さらに、本発明における「弧長の中央」とは、典型的には、文字通り、スカーフ面の弧長の中央がこれに該当するが、スカーフ面の弧長の概ね中央を好適に包含する。
【0023】
本発明によれば、切削刃物は、スカーフ面の加工進行方向に向かって第2傾斜角度の下り傾斜を有するため、スカーフ面を加工した切刃が当該加工されたスカーフ面に再度接触することを良好に防止することができる。また、スカーフ面を加工する際に、切削刃物の切削力が、板材を板厚方向に押圧する方向にも作用するため、板材の反りや波うち等による暴れを良好に抑制することができる。しかも、第2傾斜角度が、切削刃物の回転軸中心線とスカーフ面との相対位置関係と、円弧凹面となるスカーフ面の矢高と、スカーフ比と、切削刃物の直径と、板材の板厚と、に基づいて算出された値を有するため、スカーフ面を所望の円弧凹面に加工することができる。これにより、円弧凹面となるスカーフ面の曲率が増大することを抑制して、適切な円弧凹面に加工することができる。即ち、後工程においてスカーフ面同士を接合する際に、スカーフ面同士が部分的な接触となることを良好に抑制しつつ、当該円弧凹面に接着剤を保持可能(ポケット効果)な適切な曲率を有する円弧凹面を確保することができる。この結果、スカーフ面同士の良好な接合を実現することができる。なお、切削刃物の回転軸中心線が、スカーフ面の弧長の中央を通るように加工部が配置されているため、切削刃物の切削力の分力である板材を板厚方向に押圧する力を、スカーフ面の弧長の略中央に作用させることができる。また、スカーフ面の斜面長さ方向の略中央において、切削刃物の切削力の作用方向(刃の通過方向)と板材の繊維方向とをほぼ同じにすることができる。これにより、スカーフ面を加工する際に、切削力が繊維方向と交差する方向に作用することを抑制できるため、スカーフ面が繊維方向と交差する方向に破損することを良好に抑制できる。
【0024】
本発明に係る第2のスカーフ面加工方法の好ましい形態によれば、木質の板材の繊維方向と交差する方向に延在する前記板材の端部に、スカーフ面を加工するスカーフ面加工方法が構成される。当該スカーフ面加工方法は、(a)少なくとも板材の端部を突出させた状態で当該板材を保持し、(b)板材の端部の延在方向の一方側から見たときの仮想投影面上における板材の端部の投影と、複数の刃を有する円板状の切削刃物の当該仮想投影面上における投影と、が交差する位置関係となるように切削刃物を配置すると共に、切削刃物の回転軸中心線が、スカーフ面の先端を通るように切削刃物を配置し、(c)切削刃物の板材に対する第2傾斜角度をθ 2 、円弧凹面となるスカーフ面の所望の矢高をh、スカーフ面の所望のスカーフ比をi、切削刃物の所望の直径をR、板材の所望の板厚をt、としたときに次式(8)ないし(12)を満たすように第2傾斜角度を算出し、(d)スカーフ面が所望のスカーフ比を有するように切削刃物を板材に対して第1傾斜角度傾斜させると共に、スカーフ面の加工進行方向に向かって下り傾斜を有するように切削刃物を板材に対して第2傾斜角度傾斜させ、(e)板材の端部の延在方向に沿って、板材と切削刃物とを相対移動させることによって、板材の端部に前記スカーフ面を加工する。ここで、本発明における「スカーフ比」とは、板材を板厚方向の一方側から見たときの仮想投影面上におけるスカーフ面の投影のうち繊維方向に沿う方向の長さと、板材の板厚と、の比として規定される。また、本発明における「加工進行方向」とは、板材の繊維方向と交差する方向、即ち、板材の端部の延在方向であって、スカーフ面の加工が進行していく方向がこれに該当する。さらに、本発明における「スカーフ面の先端」とは、典型的には、板材の板厚方向の一方側から見たときの仮想投影面上におけるスカーフ面の投影のうち繊維方向に沿う方向の端部がこれに該当する。
(数4)
【0025】
本発明によれば、切削刃物は、スカーフ面の加工進行方向に向かって第2傾斜角度の下り傾斜を有するため、スカーフ面を加工した切刃が当該加工されたスカーフ面に再度接触することを良好に防止することができる。また、スカーフ面を加工する際に、切削刃物の切削力が、板材を板厚方向に押圧する方向にも作用するため、板材の反りや波うち等による暴れを良好に抑制することができる。しかも、第2傾斜角度が、切削刃物の回転軸中心線とスカーフ面との相対位置関係と、円弧凹面となるスカーフ面の矢高と、スカーフ比と、切削刃物の直径と、板材の板厚と、に基づいて算出された値を有するため、スカーフ面を所望の円弧凹面に加工することができる。これにより、円弧凹面となるスカーフ面の矢高が増大することを抑制し得て、適切な円弧凹面に加工することができる。即ち、後工程においてスカーフ面同士を接合する際に、スカーフ面同士が部分的な接触となることを良好に抑制しつつ、接着剤を保持可能(ポケット効果)な適切な曲率を有する円弧凹面を確保することができる。この結果、スカーフ面同士の良好な接合を実現することができる。なお、切削刃物の回転軸中心線の投影が、スカーフ面の先端を通るように加工部が配置されているため、切削刃物の切削力の分力である板材を板厚方向に押圧する力を、最も薄く欠け易いスカーフ面の先端部に作用させることができる。また、当該スカーフ面の先端部において、板材の繊維方向と切削刃物の切削力の作用方向(刃の通過方向)とをほぼ一致させることができる。これにより、最も薄くなるスカーフ面の先端部において、切削力が繊維方向と交差する方向に作用することを良好に抑制できるため、スカーフ面の先端部が繊維方向と交差する方向に破損することを良好に抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、二度削りの防止と適切な円弧面を有するスカーフ面の確保との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施の形態に係るスカーフ面加工装置1の構成の概略を示す斜視構成図である。
図2】一対の保持部6,6の構成の概略を示す要部拡大斜視図である。
図3図2を矢印W1方向から見た矢視図である。
図4】駆動部8の構成の概略を示す斜視図である。
図5】駆動部8の要部を拡大して示す要部拡大斜視図である。
図6】一対の保持部6,6と駆動部8との接続関係を示す説明図である。
図7】一対の加工部10,10の構成の概略を示す概略構成図である。
図8図7を矢印W2方向から見た矢視図である。
図9図7を矢印W3方向から見た矢視図である。
図10】丸鋸20の外観を示す外観図である。
図11図11(a)は、本実施の形態に係るスカーフ面加工装置1により加工されたスカーフ面92a,92bの接合の様子を示す説明図であり、図11(b)は、従来のスカーフ面加工装置により加工されたスカーフ面92a,92bの接合の様子を示す説明図である。
図12】スカーフ面92a,92bの外観を拡大して示す拡大図である。
図13】単板90の搬送方向TDの一方側からみたときの仮想投影面上における丸鋸20の投影と、当該仮想投影面上における単板90の投影との相対的な位置関係を示す説明図である。
図14図13のZ1部を拡大して示す要部拡大図である。
図15】単板90の搬送方向TDの一方側からみたときの仮想投影面上における丸鋸20の投影が楕円となることを示す説明図である。
図16】丸鋸20がスカーフ角度θ1、ヒーリング角度θ2をもって単板90の端部90a,90bにスカーフ面92a,92bを加工する様子を示す説明図である。
図17】搬入ローラ70aによってスカーフ面加工装置1に搬入された単板90が、一対の挟持バー60,60によって保持された様子を示す説明図である。
図18】スカーフ面92a,92bに作用する切削力Fcの様子を示す説明図である。
図19】丸鋸20と単板90の相対的な位置関係を、丸鋸20および単板90を鉛直方向上方から見た説明図である。
図20】単板90が搬出ローラ72aによってスカーフ面加工装置1から搬出される様子を示す説明図である。
図21】丸鋸20の回転軸中心線CLrが、スカーフ面92a,92bの先端を通るように、丸鋸20と単板90との相対的な位置関係が設定された変形例を示す説明図である。
図22】変形例において、単板90の搬送方向TDの一方側からみたときの仮想投影面上における丸鋸20の投影と、当該仮想投影面上における単板90の投影との相対的な位置関係を示す説明図である。
図23図22のZ2部を拡大して示す拡大図である。
図24】角度αを求めるための説明図である。
図25】矢高h1を求めるための説明図である。
図26】変形例の駆動部8Aの構成の概略を示す拡大斜視構成図である。
図27図26を矢印W4方向から見た矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例
【0029】
本発明の実施の形態に係るスカーフ面加工装置1は、単板90の繊維方向FDの両端部90a,90bにスカーフ面92a,92bを加工する装置として構成されている。スカーフ面加工装置1は、図1に示すように、基台2と、当該基台2の上部に配置されたフレーム4と、当該フレーム4に摺動可能に配置された一対の保持部6,6と、当該一対の保持部6,6をフレーム4に対して相対移動可能にフレーム4に配置された駆動部8,8,8,8と、フレーム4の長手方向に向かって当該フレーム4の両側に配置された(フレーム4を挟むように配置された)一対の加工部10,10と、当該加工部10,10を所定の姿勢で支持するように基台2に配置された支持部12,14と、フレーム4のうち当該支持部12,14の近傍に配置された押圧部16,18と、スカーフ面加工装置1全体を制御する図示しない制御装置と、を備えている。
【0030】
フレーム4は、図1に示すように、単板90を搬送する搬送方向TDに長い形状を有している。フレーム4の長手方向の一端側(単板90の搬送方向TDの上流側)には、搬入コンベヤ70が配置されると共に、当該搬入コンベヤ70からの単板90をスカーフ面加工装置1に搬入可能な搬入ローラ70aが配置されている。また、フレーム4の長手方向の他端側(単板90の搬送方向TDの下流側)には、搬出コンベヤ72が配置されると共に、スカーフ面加工装置1から搬出コンベヤ72へ単板90を排出可能な搬出ローラ72aが配置されている。搬入ローラ70aおよび搬出ローラ72aは、単板90の搬入方向および搬出方向が、フレーム4の長手方向(単板90の搬送方向TD)にほぼ直交するように配置されている。搬入コンベヤ70、搬入ローラ70a、搬出コンベヤ72および搬出ローラ72aは、制御装置によって駆動制御される。
【0031】
保持部6は、図2に示すように、互いに平行な上下一対の挟持バー60,60と、一対のエアシリンダ62a,62aを介して上下一対の挟持バー60,60のそれぞれに接続された一対の本体プレート62,62と、を有している。保持部6は、エアシリンダ62a,62aの図示しないロッドを伸長させることによって、上下一対の挟持バー60,60の間に単板90を挟持することができる(図3参照)。一方、保持部6は、エアシリンダ62a,62aの図示しないロッドを短縮させることによって、上下一対の挟持バー60,60の間に挟持された単板90の挟持を解除することができる。なお、エアシリンダ62a,62aは、制御装置により駆動制御される。
【0032】
挟持バー60,60は、図3に示すように、単板90の両端部90a,90bを突出させた状態で当該単板90を挟持する。本体プレート62は、図2および図3に示すように、ガイドレールGRに係合可能な一対のガイド部62b,62bと、駆動部8の後述する無端状ベルトBELTに固定可能な固定部62cと、を有している。本体プレート62は、一対のガイド部62b,62bがガイドレールGRに係合されることで、フレーム4に摺動可能に支持される。固定部62cは、図示しないボルトなどの締結部材によって、無端状ベルトBELTに固定される。ガイドレールGRは、フレーム4の長手方向に延在するように当該フレーム4に配置されている。
【0033】
駆動部8は、図4および図5に示すように、プーリーP,Pを介してフレーム4に回転可能に支持された無端状ベルトBELTと、一方のプーリーの図示しない回転軸に接続された歯車機構(例えば、減速機)RGと、当該歯車機構RGの図示しない回転軸に接続されたモータMと、を備えている。モータM,M,M,Mが駆動して、一方のプーリーP,P,P,Pを、図6の矢印Arの方向から見たときに、時計回りに回転することで、無端状ベルトBELTを時計回りに回転する。これにより、固定部62c,62c,62c,62cを介して当該無端状ベルトBELT,BELT,BELT,BELTに固定された一対の保持部6,6が、単板90の搬送方向TD(図1参照)の下流側に移動する。また、モータM,M,M,Mが駆動して、一方のプーリーP,P,P,Pを、図6の矢印Arの方向から見たときに、反時計回りに回転することで、無端状ベルトBELTを反時計回りに回転する。これにより、固定部62c,62c,62c,62cを介して当該無端状ベルトBELT,BELT,BELT,BELTに固定された一対の保持部6,6が、単板90の搬送方向TD(図1参照)の上流側に移動する。なお、各モータM,M,M,Mは、制御装置によって同期制御される。また、一対の保持部6,6の搬送方向TDの上流側および下流側への移動は、ガイドレールGR,GR,GR,GRに係合されたガイド部62b,62b,62b,62bによってガイドされる。これにより、一対の保持部6,6は、搬送方向TDの上流側および下流側へ円滑に移動することができる。
【0034】
加工部10は、図7ないし図9に示すように、丸鋸20と、当該丸鋸20に接続される回転軸22aを有するモータ22と、を備えている。加工部10は、図3に示すように、フレーム4の長手方向の一方側(単板90の搬送方向TDの一方側)から見たとき、即ち、単板90の両端部90a,90bの延在方向(図3の紙面に垂直な方向)の一方側から見たときの仮想投影面上における丸鋸20の投影と、単板90の両端部90a,90bの投影と、が交差する(両端部90a,90bの投影が丸鋸20の投影の内側に含まれる)位置関係で配置されている。なお、単板90の両端部90a,90bは、図3に示すように、自由端となっている。
【0035】
丸鋸20は、図10に示すように、中心にモータ22の回転軸22aを挿通可能な貫通孔20aを有すると共に、外周に複数の切刃20bを有している。当該切刃20bは、全て平刃として構成されている。また、丸鋸20は、図7ないし図9に示すように、背面21b、即ち、モータ22が配置される側に、補強円板24を有している。モータ22は、制御装置によって駆動制御される。丸鋸20は、本発明における「切削刃物」に対応し、切刃20bは、本発明における「刃」に対応する実施構成の一例である。また、背面21bは、本発明における「第1面」に対応し、補強円板24は、本発明における「第1補強円板」に対応する実施構成の一例である。
【0036】
支持部12,14は、図7ないし図9に示すように、傾斜台12a,14aと、当該傾斜台12a,14aを基台2に取り付けるための支持台12b,14bと、を有している。傾斜台12a,14aは、鉛直線VLに対して角度θ1傾斜する傾斜面13,15を有している。ここで、支持部12,14は、傾斜面13,15が互いに向かい合う方向で基台2に取り付けられる。このとき、傾斜面13,15は、図7に示すように、互いに平行となる。
【0037】
また、傾斜面13,15は、図8に示すように、ボルトBLTを挿通可能な円弧状の長孔13a,13a,13a,13a,15a,15a,15a,15aを有している。当該傾斜面13,15に、ブラケットBRKTを介してボルトBLTによって加工部10が固定される。
【0038】
これにより、加工部10は、図7に示すように、単板90の搬送方向TD(フレーム4の長手方向、図7の紙面に直交する方向)の一方側から見たときの仮想投影面上における丸鋸20の回転軸中心線CLrの投影が、当該仮想投影面上における鉛直線VLの投影に対して、搬送方向TDの下流側(図7の紙面奥側)向かって右側(図7の右側)に角度θ1傾斜した状態で、支持部12,14に支持される。当該構成によって、単板90の両端部90a,90bに傾斜角θ1(以下、「スカーフ角度θ1」ということもある。)のスカーフ面92a,92b(図1参照)が加工される。なお、本実施の形態では、様々なスカーフ角度θ1の傾斜台12a,14a、例えば、1度おきの異なるスカーフ角度θ1の傾斜面13,15を有する複数の傾斜台12a,14aを準備しておき、所望のスカーフ角度θ1となるように、傾斜台12a,14aを選定可能な構成とした。スカーフ角度θ1は、本発明における「第1傾斜角度」に対応する実施構成の一例である。
【0039】
また、加工部10は、図8および図9に示すように、単板90の搬送方向TD(フレーム4の長手方向、図8および図9の左右方向)および鉛直方向(図8および図9の上下方向)の両方向に直交する方向(図8および図9の紙面に直交する方向)の一方側から見たときの仮想投影面上における丸鋸20の回転軸中心線CLrの投影が、当該仮想投影面上における鉛直線VLの投影に対して、搬送方向TDの上流側(図8の右側、図9の左側)に角度θ2傾斜した状態で、支持部12,14に支持される。換言すれば、丸鋸20が、単板90に対して当該単板90の搬送方向TDの上流側に向かって角度θ2(以下、「ヒーリング角度θ2」ということもある。)で下り傾斜を有するように、支持部12,14に支持されているということができる。なお、角度θ2は、長孔13a,13a,13a,13a,15a,15a,15a,15aの延在方向(円周方向)の範囲で調整可能である。当該構成によって、単板90の両端部90a,90bに加工されるスカーフ面92a,92bは、図11図12および図14に示すように、円弧凹面91を有することになる。ヒーリング角度θ2は、本発明における「第2傾斜角度」に対応する実施構成の一例である。
【0040】
このように、丸鋸20の回転軸中心線CLrがヒーリング角度θ2を有することで、丸鋸20による単板90の二度削り(スカーフ面92a,92bを加工した切刃20bが当該加工されたスカーフ面92a,92bに再度接触すること)を良好に防止することができる(図16参照)。なお、丸鋸20には、ヒーリング角度θ2をもって単板90に当接することに起因する曲げ力が作用するが、補強円板24を有しているため、剛性の低下が抑制される。
【0041】
さらに、丸鋸20は、図13図14図15図16、および、図19に示すように、回転軸中心線CLrが、円弧凹面91の弧長の中央を通るように、支持部12,14(図7ないし図9参照)に支持されている。丸鋸20の回転軸中心線CLrが、円弧凹面91の弧長の中央を通るようにするための調整は、例えば、傾斜台12a,14aの支持台12b,14bに対する鉛直方向の相対的な位置を変更することにより実施することができる。
【0042】
こうして設置された丸鋸20によって単板90の端部90a,90bにスカーフ面92a,92bが加工されると、当該スカーフ面92a,92bは、図11図12および図14に示すように、円弧凹面91,91となる。ここで、円弧凹面91が適正である場合、具体的には、円弧凹面91の矢高h(図12参照)が適正である場合には、円弧凹面91,91間に接着剤Adを良好に保持することが可能な空間を確保できるため(ポケット効果)、後工程において単板90同士をスカーフ面92a,92bで接合する際に、図11(a)に示すように、接着剤Adが単板90の表面に染み出すことを良好に抑制し得る。また、スカーフ面92a,92b同士も適切に接合されるため、後工程の表面加工の安定化を図ることができる。さらに、熱板プレスを用いて単板90同士を接着する場合にあっては、適度な蒸気抜き孔Shを確保することができるため、接着剤Adの硬化の促進を図ることができる。
【0043】
一方、円弧凹面91が適切でない場合、具体的には、円弧凹面91の矢高h(図12参照)が適正でない場合(必要以上に矢高hが大きい場合)には、後工程において単板90同士をスカーフ面92a,92bで接合する際に、図11(b)に示すように、スカーフ面92a,92b同士が部分的な接合となってしまって、良好な単板90同士の接合を実現することができない場合が生じる。
【0044】
本実施の形態では、図13および図14に示すように、単板90の搬送方向TDの一方側からみたときの仮想投影面上における丸鋸20の投影と、当該仮想投影面上における単板90の投影との相対的な位置関係に基づいて、円弧凹面91の矢高hを算出する構成とした。具体的には、次式(13)を用いて円弧凹面91の矢高hを算出する。以下、式(13)の導出方法について説明する。
【0045】
(数
Rは丸鋸20の直径、tは単板90の板厚、iはスカーフ比である。
【0046】
単板90の搬送方向TD(図13の紙面方向)の一方側からみたときの仮想投影面上における丸鋸20の投影は、図13および図15に示すように、長径Rおよび短径R・sinθ2を有する楕円となる。なお、仮想投影面上における丸鋸20の回転軸中心線CLrは、Y軸(楕円の長径)と重なっている。
【0047】
ここで、図14に示すように、当該楕円の短径を含む直線をY軸、当該楕円の長径を含む直線をX軸、当該楕円の中心Crを原点(0,0)とするXY座標系を考えた場合、円弧凹面91の矢高hは、楕円とY軸との交点ScのY座標の絶対値|-R/2・sinθ2|から、XY座標系における円弧凹面91の投影の両端(点P1および点P2)を結ぶ線分Lcv1とY軸の交点SvcのY座標の絶対値|y1|を減じた値となる。
【0048】
交点ScのY座標は、図14に示すように、楕円の短径の1/2に等しいため、-R/2・sinθ2となる。一方、交点SvcのY座標y1は、次式(14)ないし(1)を用いて求めることができ、次式(1)のようになる。ここで、式(14)は、楕円を表す方程式である。また、式(1)は、上記仮想投影面上における円弧凹面91の投影の一方の端部P2を通り、Y軸に平行な線分Lcv2を表す方程式であり、次式(1)および(1)により求めることができる。
【0049】
(数
ここで、Lは、図12に示すように、スカーフ面92a,92bのスカーフ長さ、より具体的には、線分Lcv1(図14参照)の長さである。また、iは、スカーフ面92a,92bのスカーフ比であり、単板90を板厚t方向の一方側から見たときの仮想投影面上におけるスカーフ面92a,92bの投影のうち繊維方向FDに沿う方向の投影長さLsと、板厚tと、の比(i=Ls/t)である。なお、投影長さLsは、スカーフ長さLの二乗から板厚tの二乗を減じた値の平方根(Ls=√(L2-t2))である。
【0050】
こうして求めた交点ScのY座標の絶対値|-R/2・sinθ2|から交点SvcのY座標の絶対値|y1|を減じることで、円弧凹面91の矢高hを求める式(13)が導出される。ここで、丸鋸20の直径Rは設備要求から決まる値であり、単板90の板厚t、スカーフ比i、スカーフ長さLは製品要求から決まる値である。したがって、円弧凹面91の矢高hを所望の値にするためには、ヒーリング角度θ2を調整すれば良いということが分かる。このように、本実施の形態では、所望の矢高hとするために、ヒーリング角度θ2を調整する構成である。
【0051】
押圧部16,18は、図16に示すように、丸鋸20に関して、単板90の搬送方向TDの上流側(図16の左側)であって、丸鋸20の外周近傍に配置されている。押圧部16,18は、単板90の端部90a,90bのうち、スカーフ面92a,92bの加工に伴って切除(排除)される切削屑93となる部分を少なくとも押圧可能な大きさを有している。また、押圧部16,18は、底面の一部に傾斜面16a,18aを有していると共に、丸鋸20の外周に対向する面が当該丸鋸20の曲率とほぼ同じ曲率の曲面16b,18bを有している。傾斜面16a,18aは、曲面16b,18bから遠ざかる方向に向かって上り傾斜を有している。換言すれば、傾斜面16a,18aは、単板90の搬送方向TDの上流側(図16の左側)に向かって上り傾斜を有しているということができる。
【0052】
本実施の形態では、押圧部16,18が、図16に示すように、単板90のうち丸鋸20によってスカーフ面92a,92bが加工される直前部分を押圧するため、加工寸前の単板90の反りや波うち等による暴れを抑制することができる。これにより、スカーフ面92a,92bを良好なものとすることができる。なお、押圧部16,18が傾斜面16a,18aを有するため、搬送されてくる単板90を押圧部16,18の下方に円滑に受け入れることができる。また、押圧部16,18が曲面16b,18bを有しているため、丸鋸20の直前まで単板90を押えることができるため、加工寸前の単板90の反りや波うち等による暴れをより良好に抑制することができる。
【0053】
次に、こうして構成されたスカーフ面加工装置1の動作、特に、単板90の両端部90a,90bにスカーフ面92a,92bを加工する際の動作について説明する。なお、スカーフ面加工装置1が始動されたときには、一対の保持部6,6は、図1に示すように、単板90の搬送方向TDにおける上流端(フレーム4の長手方向の一端側)に配置されている。
【0054】
スカーフ面加工装置1が始動されると、まず、制御装置によって搬入コンベヤ70および搬入ローラ70aが駆動制御され、搬入コンベヤ70上に積層された複数の単板90から一枚の単板90が、搬入ローラ70aを介してスカーフ面加工装置1に搬入される。ここで、単板90は、繊維方向FDが搬入方向に沿う方向(搬入方向にほぼ平行)となるように、搬入コンベヤ70上に配置されているため、単板90は、繊維方向FDがフレーム4の長手方向(単板90の搬送方向TD)にほぼ直交する姿勢でスカーフ面加工装置1に搬入される。
【0055】
搬入ローラ70aを介して単板90がスカーフ面加工装置1に搬入されると、制御装置によって、一対の保持部6,6の各一対のエアシリンダ62a,62a(図2参照)が駆動される。これにより、単板90が各一対の挟持バー60,60(図2図17参照)によって挟持される。当該状態において、制御装置によって、駆動部8のモータM,M,M,M(図5図6参照)が駆動制御されることで、駆動部8の各無端状ベルトBELT,BELT,BELT,BELT(図5図6参照)が、図6の矢印Arの方向から見たときに、時計回りに回転される。これにより、一対の保持部6,6が単板90を挟持した状態で、搬送方向TDの下流側に向けて移動する。
【0056】
このとき、一対の加工部10,10の各モータ22,22(図7参照)が、制御装置によって駆動されているため、単板90が一対の加工部10,10が配置された位置を通過する際に、一対の丸鋸20,20によって単板90の両端部90a,90bにスカーフ面92a,92bが加工される。なお、スカーフ面92a,92bは、互いにほぼ平行となるように加工される。
【0057】
ここで、本実施の形態では、丸鋸20,20は、ヒーリング角度θ2をもって支持部12,14に支持されている、即ち、丸鋸20が、単板90に対して搬送方向TDの上流側に向かって角度θ2の下り傾斜を有しているため、丸鋸20による単板90の二度削り(スカーフ面92a,92bを加工した切刃20bが当該加工されたスカーフ面92a,92bに再度接触すること)を良好に防止することができる(図16参照)。
【0058】
また、丸鋸20の切削力Fcの分力Fcpが、図18に示すように、単板90を板厚方向に押圧する方向に作用するため、単板90の反りや波うち等による単板90の暴れを良好に抑制することができる。なお、丸鋸20の回転軸中心線CLrが、スカーフ面92a,92bの弧長(点P1および点P2を結ぶ弧の長さ)のほぼ中央(点Sc)を通るため(図14参照)、分力Fcpはスカーフ面92a,92bの弧長(点P1および点P2を結ぶ弧の長さ)のほぼ中央(点Sc)に作用する。また、丸鋸20の複数の切刃20bの全てが平刃であるため、全ての切刃20bからの切削力Fcの分力Fcpを、単板90の板厚を押圧する方向に作用させることができる。これにより、単板90の反りや波うち等による暴れをより一層良好に抑制することができる。この結果、一層良好なスカーフ面92a,92bを得ることができる。
【0059】
また、図19に示すように、スカーフ面92a,92bの斜面長さ方向(点P1および点P2を結ぶ弧の長さ方向に沿う方向)のほぼ中央(点Sc)において、切削力Fcの作用方向(切刃20bの通過方向)と、単板90の繊維方向FDと、を同じにすることができるため、スカーフ面92a,92bを加工する際に、切削力Fcが繊維方向FDと交差する方向に作用することを抑制できる。これにより、スカーフ面92a,92bが繊維方向FDと交差する方向に破損することを良好に抑制することができる。
【0060】
なお、丸鋸20,20がヒーリング角度θ2を有しているため、本実施の形態では、スカーフ面92a,92bが円弧凹面91,91となる。当該円弧凹面91,91の形状、具体的には、当該円弧凹面91,91の矢高h,hの大きさは、単板90同士のスカーフ面92a,92bでの接合の良否に大きく影響する。本実施の形態では、式(13)を用いて、所望の矢高h,hとなるように、ヒーリング角度θ2を調整するため、スカーフ面92a,92b同士が部分的な接合となることを抑制しつつ、円弧凹面91,91間に接着剤Adを良好に保持することが可能な空間を確保できる(ポケット効果)。これにより、単板90同士をスカーフ面92a,92bで接合する際に、接着剤Adが単板90の表面に染み出すことを良好に抑制し得る(図11(a))と共に、スカーフ面92a,92b同士を適切に接合することができる。なお、接合面間に適度な蒸気抜き孔Shを確保することができるため、熱板プレスを用いて単板90同士を接着する場合にあっては、接着剤Adの硬化の促進を図ることができる。
【0061】
こうして、一対の加工部10,10によってスカーフ面92a,92bが加工された単板90は、フレーム4の長手方向の他端側(搬送方向TDの下流側)に配置された搬出コンベヤ72まで搬送される。そして、制御装置によって駆動制御された搬出ローラ72aおよび搬出コンベヤ72によってスカーフ面加工装置1から搬出されて、後工程に搬送される(図20参照)。
【0062】
以上説明した本発明の実施の形態に係るスカーフ面加工装置1によれば、所望の矢高h,hとなるようにヒーリング角度θ2を調整し、当該ヒーリング角度θ2をもって単板90にスカーフ面92a,92bを加工するため、丸鋸20による単板90の二度削り(スカーフ面92a,92bを加工した切刃20bが当該加工されたスカーフ面92a,92bに再度接触すること)を良好に防止することができる。なお、円弧凹面91,91の矢高h,hを所望の値とすることができるため、スカーフ面92a,92b同士が部分的な接合となることを抑制しつつ、円弧凹面91,91間に接着剤Adを良好に保持することが可能な空間を確保できる(ポケット効果)。これにより、単板90同士をスカーフ面92a,92bで接合する際に、接着剤Adが単板90の表面に染み出すことを良好に抑制し得ると共に、スカーフ面92a,92b同士を適切に接合することができる。さらに、接合面間に適度な蒸気抜き孔Shを確保することができるため、熱板プレスを用いて単板90同士を接着する場合にあっては、接着剤Adの硬化の促進を図ることができる。
【0063】
また、本発明の実施の形態に係るスカーフ面加工装置1によれば、スカーフ面92a,92bの弧長(弧P1P2の長さ)のほぼ中央(点Sc)において、丸鋸20の切削力Fcの分力Fcpを、単板90を板厚方向に押圧する方向に作用させることができるため、単板90の反りや波うち等による単板90の暴れを良好に抑制することができる。
【0064】
なお、丸鋸20の複数の切刃20bの全てが平刃であるため、全ての切刃20bからの切削力Fcの分力Fcpを、単板90を板厚方向に押圧する方向に作用させることができる。さらに、スカーフ面92a,92bの斜面長さ方向(弧P1P2に沿う方向)のほぼ中央(点Sc)において、切削力Fcの作用方向(切刃20bの通過方向)と、単板90の繊維方向FDと、を同じにすることができるため、スカーフ面92a,92bが繊維方向FDと交差する方向に破損することを良好に抑制できる。
【0065】
本実施の形態では、丸鋸20の回転軸中心線CLrが、スカーフ面92a,92bの弧長(弧P1P2の長さ)のほぼ中央(点Sc)を通る構成としたが、これに限らない。例えば、図21および図22に示すように、丸鋸20の回転軸中心線CLrが、スカーフ面92a,92bの先端(単板90を板厚方向に見たときの仮想投影面上におけるスカーフ面92a,92bのうち繊維方向FDに沿う方向の一方の端部(図22における点P3))を通る構成としても良い。
【0066】
この場合、上述した本実施の形態と同様、楕円の短径を含む直線をY軸、当該楕円の長径を含む直線をX軸、当該楕円の中心Crを原点(0,0)とするXY座標系を用いて、矢高h1を求めることができる。ここで、丸鋸20の回転軸中心線CLrが、スカーフ面92a,92bの先端(図22における点P1)を通る場合、所望のスカーフ長さL(線分Lcv1の長さ)を得るためには、図23に示すように、丸鋸20の回転軸中心線CLrの傾斜角度を、スカーフ角度θ1よりも角度αだけ小さい角度で傾斜させる必要がある。換言すれば、所望のスカーフ長さL(線分Lcv1の長さ)を得るためには、丸鋸20は、単板90の搬送方向TD(図23の紙面に直交する方向)の一方側から見たときの仮想投影面上における丸鋸20の回転軸中心線CLrの投影が、当該仮想投影面上における鉛直線VLの投影に対して、搬送方向TDの下流側(図23の紙面奥側)に向かって左側(図23の左側)に角度(θ1―α)傾斜した状態に設定すれば良い。
【0067】
矢高h1は、次式(19)ないし(28)により算出することができる。具体的には、円弧凹面91の矢高h1は、次式(20)ないし(23)および上述した式(17)を用いて、角度αを求めると共に、次式(24)ないし(28)を用いて、線分Lcv1(XY座標系における円弧凹面91の投影の両端(点P3および点P4)を結ぶ直線)に平行、かつ、楕円(丸鋸20)に接する直線LtのY切片P5と、楕円とY軸の交点P3と、の距離h3、換言すれば、三角形P7P8P9の斜辺P7P9の長さh3を求め(図24および図25参照)、求めた角度αおよび距離h3を式(19)に代入することで三角形P7P8P9の辺P7P8の長さである矢高h1を算出することができる(図24および図25参照)。
【0068】
(数
【0069】
ここで、式(20)は、直角三角形P3P4P6(図25参照)において逆正弦を用いて角度αを求める式であり、h2およびLが求まれば算出することができる。h2は、直角三角形P3P4P6の辺P4P6の長さであり、式(21)を用いて、点P6のY座標(点P3のY座標に等しい)の絶対値|-R/2・sinθ2|から点P4のY座標の絶対値|y4|を減じることで求めることできる。y4は、半径Lの仮想円Cv(図24および図25参照)と楕円との交点P4のY座標であり、仮想円Cvの方程式である式(22)と楕円の方程式である上述した式(14)とを用いて式(23)のように求めることができる。ここで、楕円の短径がR/2・sinθ2であるため、点P3のY座標は、-R/2・sinθ2であり、Lは、スカーフ面92a,92bのスカーフ長さ、換言すれば、線分Lcv1の長さであり、上述した式(1)により求めることができる。なお、iは、スカーフ面92a,92bのスカーフ比であり、単板90を板厚t方向の一方側から見たときの仮想投影面上におけるスカーフ面92a,92bの投影のうち繊維方向FDに沿う方向の投影長さLsと、板厚tと、の比(i=Ls/t)である。投影長さLsは、スカーフ長さLの二乗から板厚tの二乗を減じた値の平方根(Ls=√(L2-t2))である。
【0070】
また、式(24)は、直線Ltを表す方程式である。また、式(25)は、直線Ltと楕円との交点P7のX座標x7を求める式であり、式(24)と楕円の方程式である上述した式(14)とを用いて求めることができる。さらに、式(2)は、式(24)のy切片、即ち、点P5のY座標を求める式であり、式(2)と、直線Ltが楕円の接線となる条件式(判別式)である式(2)と、を用いて求めることができる。式(2)は、直線LtのY切片P5と、楕円とY軸の交点P3と、の距離h3(三角形P7P8P9の斜辺P7P9の長さ)を求める式である。
【0071】
こうして式(20),(2)で求めた角度αおよび距離h3を式(1)に代入することにより、円弧凹面91の矢高h1を求めることができる。
【0072】
以上説明した変形例のスカーフ面加工装置1においても、所望の矢高h1となるようにヒーリング角度θ2を調整し、当該ヒーリング角度θ2をもって単板90にスカーフ面92a,92bを加工することができる。これにより、本実施の形態に係るスカーフ面加工装置1と同様の効果、即ち、丸鋸20による単板90の二度削り(スカーフ面92a,92bを加工した切刃20bが当該加工されたスカーフ面92a,92bに再度接触すること)を良好に防止することができる効果や、円弧凹面91,91間に接着剤Adを良好に保持することが可能な空間を確保でき(ポケット効果)、単板90同士をスカーフ面92a,92bで接合する際に、接着剤Adが単板90の表面に染み出すことを良好に抑制し得る効果、スカーフ面92a,92b同士を適切に接合することができる効果、接合面間に適度な蒸気抜き孔Shを確保することができるため、熱板プレスを用いて単板90同士を接着する場合にあっては、接着剤Adの硬化の促進を図ることができる効果を奏することができる。
【0073】
また、変形例のスカーフ面加工装置1によれば、最も薄く欠け易いスカーフ面92a,92bの先端部において、単板90の繊維方向FDと切削力Fcの作用方向とをほぼ一致させることができるため(図21参照)、切削時の抵抗を小さくすることができる。これにより、最も薄くなるスカーフ面92a,92bの先端部に欠けが生じ難い。
【0074】
本実施の形態では、支持部12,14によって支持された一対の加工部10,10を基台2に固定し、一対の保持部6,6を単板90の搬送方向TD(フレーム4の長手方向)に移動させたが、これに限らない。例えば、一対の保持部6,6を基台2やフレーム4に固定し、一対の加工部10,10を支持した支持部12,14を単板90の搬送方向TD(フレーム4の長手方向)に移動させる構成としても良い。
【0075】
本実施の形態では、駆動部8が、プーリーP,Pを介してフレーム4に回転可能に支持された無端状ベルトBELTと、一方のプーリーの図示しない回転軸に接続された歯車機構(例えば、減速機)RGと、当該歯車機構RGの図示しない回転軸に接続されたモータMと、を備え、無端状ベルトBELT,BELT,BELT,BELTを回転させることで、当該無端状ベルトBELT,BELT,BELT,BELTに固定された一対の保持部6,6を、単板90の搬送方向TD(フレーム4の長手方向)に移動させる構成としたが、これに限らない。例えば、図26および図27の変形例の駆動部8Aに示すように、駆動部8Aが、フレーム4に支持されたモータMと、当該モータMの図示しない回転軸に接続された歯車機構(例えば、減速機)RGと、当該歯車機構RGの図示しない出力軸に接続された雄ネジロッドBmと、当該雄ネジロッドBmにネジ係合する雌ネジ体Nfと、を備える構成としても良い。ここで、雄ネジロッドBmは、フレーム4に回転可能に支持されており、雌ネジ体Nfは、一対の保持部6,6の各本体プレート62,62,62,62に固定される。当該変形例の駆動部8Aによれば、モータMが駆動して、雄ネジロッドBmを正逆回転させることにより、雌ネジ体Nfを介して一対の保持部6,6を単板90の搬送方向TD(フレーム4の長手方向)に往復移動させることができる。
【0076】
本実施の形態では、上下一対の挟持バー60,60による単板90の挟持および挟持の解除を、エアシリンダ62a,62a,62a,62aにより行う構成としたが、これに限らない。例えば、エアシリンダ62a,62a,62a,62aに代えて油圧シリンダを用いる構成としても良い。
【0077】
本実施の形態では、丸鋸20の背面21b、即ち、モータ22が配置される側のみに、補強円板24を配置したが、丸鋸20の表面21a(図8および図9参照)、即ち、モータ22が配置される側とは反対側にも補強円板24を配置する構成としても良い。当該構成によれば、丸鋸20に作用する曲げ力に対する剛性をより一層向上することができる。丸鋸20の表面21aに配置される補強円板24は、本発明における「第2補強円板」に対応し、表面21aは、本発明における「第2面」に対応する実施構成の一例である。
【0078】
本実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものである。したがって、本発明は、本実施形態の構成に限定されるものではない。なお、本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。
【符号の説明】
【0079】
1 スカーフ面加工装置(スカーフ面加工装置)
2 基台
4 フレーム
6 保持部(保持部)
8 駆動部(駆動部)
8A 駆動部(駆動部)
10 加工部(加工部)
12 支持部(支持部)
12a 傾斜台
12b 支持台
13 傾斜面
13a 長孔
14 支持部(支持部)
14a 傾斜台
14b 支持台
15 傾斜面
15a 長孔
16 押圧部(押圧部)
16a 傾斜面
16b 曲面
18 押圧部(押圧部)
18a 傾斜面
18b 曲面
20 丸鋸(切削刃物)
20a 貫通孔
20b 切刃(刃)
21a 表面(第2面)
21b 背面(第1面)
22 モータ(モータ)
22a 回転軸(回転軸)
24 補強円板(第1補強円板)
60 挟持バー
62 本体プレート
62a エアシリンダ
62b ガイド部
62c 固定部
70 搬入コンベヤ
70a 搬入ローラ
72 搬出コンベヤ
72a 搬出ローラ
90 単板(板材)
90a 端部(板材の端部)
90b 端部(板材の端部)
91 円弧凹面(円弧凹面)
92a スカーフ面(スカーフ面)
92b スカーフ面(スカーフ面)
GR ガイドレール
BELT 無端状ベルト
P プーリー
RG 歯車機構
M モータ
BRKT ブラケット
BLT ボルト
Bm 雄ネジロッド
Nf 雌ネジ体
h 矢高(矢高)
h1 矢高(矢高)
h2 辺P4P6の長さ
h3 直線LtのY切片P5と交点P3との距離
Ad 接着剤
Sh 蒸気抜き孔
L スカーフ長さ、線分Lcv1の長さ
t 単板の板厚(板材の板厚)
R 丸鋸の直径(切削刃物の直径)
i スカーフ比(スカーフ比)
FD 単板の繊維方向(板材の繊維方向)
TD 単板の搬送方向
VL 鉛直線
θ1 スカーフ角度(第1傾斜角度)
θ2 ヒーリング角度(第2傾斜角度)
CLr 丸鋸の回転軸中心線(切削刃物の回転軸中心線)
Cr 楕円(丸鋸)の中心
P1 円弧凹面の投影の端部
P2 円弧凹面の投影の端部
P3 円弧凹面の投影の端部、楕円とY軸の交点
P4 円弧凹面の投影の端部
P4’ 円弧凹面の投影の端部
P5 直線LtのY切片
P6 直角三角形P3P4P6の直角を構成する点
P7 直線Ltと楕円との交点
P8 点P7を通り線分Lcv1に垂直な直線と線分Lcv1との交点
P9 点P7を通りY軸に平行な直線と線分Lcv1との交点
Lcv1 点P1および点P2を結ぶ線分
Lcv2 点P2を通りY軸に平行な線分
Svc 線分Lcv1とY軸との交点
Ls スカーフ面の投影長さ
Fc 切削力
Fcp 切削力の分力
Lvh 線分Lcv1の垂直二等分線
α 角度
Cv 半径Lの仮想円

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27