(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】製鋼副資材の製造方法及び製鋼副資材
(51)【国際特許分類】
C21C 7/04 20060101AFI20241002BHJP
C21B 3/02 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
C21C7/04 L
C21B3/02
(21)【出願番号】P 2023096538
(22)【出願日】2023-06-12
【審査請求日】2023-09-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523224349
【氏名又は名称】小川アルミ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173679
【氏名又は名称】備後 元晴
(72)【発明者】
【氏名】泉 雄介
(72)【発明者】
【氏名】小川 貴之
【審査官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-179926(JP,A)
【文献】特開昭51-054023(JP,A)
【文献】特開平06-322429(JP,A)
【文献】特開昭64-042513(JP,A)
【文献】特開平09-041016(JP,A)
【文献】特開2002-018412(JP,A)
【文献】特開平05-171241(JP,A)
【文献】特開昭50-49112(JP,A)
【文献】特開平5-279724(JP,A)
【文献】特開平4-350112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 7/04
C21B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダーを加えることなく金属灰及び/又は金属粒状体のみを、前記金属灰及び/又は前記金属粒状体を構成する金属と化学式が同じである金属及び/又はその合金を含む金属製収容体に収容し、前記金属製収容体を封止する工程と、
前記金属灰及び/又は前記金属粒状体を収容した金属製収容体の外部から圧力を加え、前記金属灰及び/又は前記金属粒状体を加圧成形する工程と、
を含
み、
前記金属粒状体は、電気炉ダストである、製鋼副資材の製造方法。
【請求項2】
金属灰及び/又は金属粒状体のみが金属製収容体に収容されており、
前記金属粒状体は、電気炉ダストであり、
前記金属製収容体は、前記金属灰及び/又は前記金属粒状体を構成する金属と化学式が同じである金属及び/又はその合金を含み、
前記金属製収容体にはバインダーが収容されておらず、
前記金属製収容体は封止されており、
前記金属灰及び/又は前記金属粒状体が加圧成形されてなる、製鋼副資材。
【請求項3】
前記金属製収容体の表面にラベルの貼付及び塗装がいずれもされていない、請求項2に記載の製鋼副資材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鋼副資材の製造方法及び製鋼副資材に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミ灰は、金属アルミニウムの加熱溶解工程等で発生する、主に粉体状の物質である。アルミ灰は、酸化アルミニウム、金属アルミニム、窒化アルミニウム等で構成されている。また、アルミ灰は、アルミニウム合金を構成する元素由来の金属酸化物、塩化物、フッ化物等を含む。アルミ灰は、アルミニウムドロス、アルミドロス、アルミニウムドロス残灰、アルミ残灰等、複数の呼び名で呼ばれる。アルミ灰は、金属アルミニウムを含有している。そのため、必要に応じてアルミ灰から金属アルミニウムを回収することが行われており、その回収プロセスで二次的・三次的なアルミ灰が発生している。
【0003】
国内で発生したアルミ灰は、最終的にそのほとんどが、鉄鋼メーカーで利用されている。これは、アルミ灰が一定量の金属アルミニウムを含有しているためである。アルミ灰が含有する金属アルミニウムは、製鋼プロセスにおいて、金属アルミニウムと酸素との発熱反応を利用した熱源や、溶鋼中の酸素除去(脱酸)に有効な、安価な副資材となる。また、金属アルミニウムと酸素との反応により生成する酸化アルミニウム(アルミナ)及びアルミ灰に元々含まれているアルミナは、製鋼プロセスにおいてスラグの原料となる。
【0004】
アルミ灰を製鋼プロセスで利用する方法として、アルミ灰を粉体のまま利用する方法、適当なバインダーを用いてアルミ灰を造粒成形した製品を利用する方法がある。
【0005】
粉体のまま利用する方法は、造粒や圧縮を必要としないため副資材製造工程が容易である。しかし、粉体のまま利用する方法は、製鋼プロセスで使用する際、アルミ灰が粉塵として飛散しやすい。したがって、粉体のまま利用する方法は、結果として使用歩留まりの低下、作業環境の悪化、製鋼ダストの増加を招く欠点がある。
【0006】
バインダーを用いて粉体状のアルミ灰を固化する方法は、使用時においてアルミ灰が粉塵として飛散することを抑制できる。バインダーには、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ピッチ、タール、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、消石灰、生石灰、水等が、単数あるいは複数の組み合わせで用いられ、一般的には混錬して圧縮、必要に応じて加熱が施されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-190069号公報
【文献】特開2002-18412号公報
【文献】特開2002-194416号公報
【文献】特開平6-299217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、有機化合物系のバインダーでは、製鋼プロセスでバインダーが燃焼して煙が発生する。無機化合物を含むバインダーでは、溶媒である水が副資材製造工程でアルミ灰中の窒化アルミと反応し、強烈な悪臭であるアンモニアを発生させる。また、バインダーは、アルミ灰の粒子間に均一に分散されることが望ましいため、液体あるいは微粉末であることが望ましい。このため、バインダーを使う方法では、バインダーの流動性を上げるため等の理由で有機溶剤及び/又は飛散しやすい微粉末を扱う必要がある。これらはいずれも、製鋼プロセスや副資材製造工程での作業環境を悪化させる。
【0009】
また、バインダーは、原料価格が高価なものを含む。バインダーのうち加熱を必要とするバインダーは、副資材製造工程において、高い摩擦熱を必要とする。これらのバインダーは、高コスト化を招く。
【0010】
さらには、アルミ灰の粉化を完全に抑制することはできないため、副資材製造時、輸送時、使用時において、衝突等によりアルミ灰が粉体に戻ってしまうリスクがある。これにより、製品歩留まりの低下や粉化したアルミ灰の清掃除去工程の追加を招く。
【0011】
バインダーの種類によっては、硫黄等の鉄鋼不純物を含んでいるものもある。これにより、作業環境の悪化のみならず、鉄鋼製品の品質を低下させる可能性もある。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、次の通りである。
(1)アルミ灰を原料とした副資材製造工程、及び、副資材使用時の製鋼プロセスにおける作業環境の悪化
(2)副資材使用時の製鋼プロセスにおける、飛散等による使用歩留まりの低下
(3)副資材製造工程、輸送工程、使用工程における、粉化等による製品歩留まりの低下
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、バインダーを加えることなくアルミ灰を金属製収容体に収容し、アルミ灰を収容した金属製収容体を封止することで、上記の目的を達成できることを見出した。そして、このことを、アルミ灰に限らず、電気炉ダスト(FeO、ZnO等を含む粉末)、金属切粉(アルミ切粉、鉄等の切削屑等)等といった種々の金属灰及び/又は金属粒状体にも応用できることを見出し、本発明を完成させるに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0014】
第1の特徴に係る発明は、バインダーを加えることなく金属灰及び/又は金属粒状体を金属製収容体に収容し、前記金属製収容体を封止する工程を含む、製鋼副資材の製造方法を提供する。
【0015】
第1の特徴に係る発明によれば、金属灰及び/又は金属粒状体が金属製収容体に収容され、金属灰及び/又は金属粒状体を収容した金属製収容体が封止されている。そのため、金属灰及び/又は金属粒状体の飛散が防止されるとともに、製鋼副資材の製造工程、輸送工程、及び/又は使用工程における粉化等による製品歩留まりの低下を防ぐことができる。
【0016】
第1の特徴に係る発明によれば、金属製収容体に収容された金属灰及び/又は金属粒状体にバインダーが加えられていないため、製鋼副資材に含まれる金属灰及び/又は金属粒状体以外の成分によって副資材使用時の製鋼プロセスにおける飛散等による使用歩留まりの低下が生じることを防ぐことができる。
【0017】
例えば、金属灰及び/又は金属粒状体を樹脂、木材、天然繊維等によって例示される非金属を用いて構成した非金属製収容体に収容し、当該収容体を封止することによって、金属灰及び/又は金属粒状体の飛散が防がれ得る。しかしながら、非金属製収容体に金属灰及び/又は金属粒状体を収容し、当該収容体を封止する方法では、製鋼において非金属製収容体を構成する非金属が燃焼して煙を発生させ、作業環境を悪化させるとともに鉄鋼製品の品質低下を招き得る。
【0018】
第1の特徴に係る発明によれば、金属灰及び/又は金属粒状体の収容に金属製収容体を用いるため、収容体から煙が発生することを防ぎ、金属灰及び/又は金属粒状体を原料とした副資材製造工程、及び、副資材使用時の製鋼プロセスにおける作業環境の悪化を防ぐことができる。
【0019】
したがって、第1の特徴に係る発明によれば、(1)金属灰及び/又は金属粒状体を原料とした副資材製造工程、及び、副資材使用時の製鋼プロセスにおける作業環境の悪化、(2)副資材使用時の製鋼プロセスにおける、飛散等による使用歩留まりの低下、及び、(3)副資材製造工程、輸送工程、使用工程における、粉化等による製品歩留まりの低下、の課題を解決できる。
【0020】
第2の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明のカテゴリ違いである。
【0021】
第3の特徴に係る発明は、第2の特徴に係る発明であって、前記金属製収容体には前記金属灰及び/又は前記金属粒状体のみが収容されている、製鋼副資材を提供する。
【0022】
第3の特徴に係る発明によれば、金属製収容体には金属灰及び/又は前記金属粒状体のみが収容されているため、製鋼副資材が含む金属灰及び/又は前記金属粒状体以外の成分によって副資材使用時の製鋼プロセスにおける作業環境が悪化することをよりいっそう防ぐことができる。
【0023】
したがって、第3の特徴に係る発明によれば、(1)金属灰及び/又は前記金属粒状体を原料とした副資材製造工程、及び、副資材使用時の製鋼プロセスにおける作業環境の悪化、(2)副資材使用時の製鋼プロセスにおける、飛散等による使用歩留まりの低下、及び、(3)副資材製造工程、輸送工程、使用工程における、粉化等による製品歩留まりの低下、の課題を解決できる。
【0024】
第4の特徴に係る発明は、第2又は第3の特徴に係る発明であって前記金属製収容体の表面にラベルの貼付及び塗装がいずれもされていない、製鋼副資材を提供する。
【0025】
第4の特徴に係る発明によれば、金属製収容体の表面にラベルの貼付及び塗装がいずれもされていないため、塗装、ラベル、及び/又はラベルの貼付に用いた粘着剤・接着剤等が燃焼して煙を発生させ、副資材使用時の製鋼プロセスにおける作業環境の悪化を招くことを防ぐことができる。
【0026】
したがって、第4の特徴に係る発明によれば、(1)金属灰及び/又は前記金属粒状体を原料とした副資材製造工程、及び、副資材使用時の製鋼プロセスにおける作業環境の悪化、(2)副資材使用時の製鋼プロセスにおける、飛散等による使用歩留まりの低下、及び、(3)副資材製造工程、輸送工程、使用工程における、粉化等による製品歩留まりの低下、の課題を解決できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、下記(1)~(3)の課題を解決できる。
(1)金属灰及び/又は前記金属粒状体を原料とした副資材製造工程、及び、副資材使用時の製鋼プロセスにおける作業環境の悪化
(2)副資材使用時の製鋼プロセスにおける、飛散等による使用歩留まりの低下
(3)副資材製造工程、輸送工程、使用工程における、粉化等による製品歩留まりの低下
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る製鋼副資材1の一例を示す概略側面図である。
【
図2】
図2は、上記製鋼副資材1の概略平面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る製鋼副資材1の他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための好適な形態の一例について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0030】
<製鋼副資材1の製造方法>
本実施形態における製鋼副資材1の製造方法は、金属灰及び/又は金属粒状体2を金属製収容体に収容する収容工程と、金属灰及び/又は金属粒状体2を収容した金属製収容体を封止する封止工程と、を少なくとも含む。
【0031】
また、本実施形態における製鋼副資材1の製造方法は、金属製収容体に収容された金属灰及び/又は金属粒状体2を加圧成形する加圧成形工程をさらに含むことが好ましい。本実施形態における製鋼副資材1の製造方法が加圧成形工程をさらに含むことにより、製鋼副資材1の比重を増やし、製鋼副資材1に収容される金属灰及び/又は金属粒状体2の体積あたり重量を増し得る。また、加圧成形によって金属灰及び/又は金属粒状体2を構成する粉体がよりいっそう密着し、金属灰及び/又は金属粒状体2の飛散が防がれる効果も期待し得る。
【0032】
本実施形態において、金属灰とは、金属を燃やした後に残る物質をいう。また、金属粒状体とは、金属粉体だけでなく、円柱状、楕円状等の金属ペレット、金属チップを含む物質をいう。
【0033】
以下では、代表例として金属灰及び/又は金属粒状体2がアルミ灰2であるものとして説明するが、金属灰及び/又は金属粒状体がアルミ灰であることに限定する趣旨ではない。金属灰及び/又は金属粒状体は、アルミ灰のほか、例えば以下のようなものを含む。
・電気炉ダスト(FeO、ZnO等を含む 粉末)
・金属切粉(アルミ切粉だけではなく、鉄等の切削屑等も含む)
・酸化カルシウム(CaO:製鋼スラグ原料、主に粉末)
・その他製鋼副資材(フェロシリコン、フェロニッケル等の主にチップやフレーク、カーボン粉、粒状カーボン等も含む)
・その他スラグ原料(SiO2、Al2O3等の主に粉末)
・その他フラックス(製鋼用電気炉ではなく、アルミニウム溶解炉をターゲットとして、塩化物やフッ化物の粉末をパッキングして投入すること)
【0034】
〔収容工程〕
収容工程は、アルミ灰2を金属製収容体に収容する工程である。製鋼副資材1においてアルミ灰2が金属製収容体に収容されているため、収容体が燃焼して煙が発生することを防ぎ、副資材使用時の製鋼プロセスにおける作業環境の悪化及び/又は副資材使用時の製鋼プロセスにおける、飛散等による使用歩留まりの低下を防ぐことができる。
【0035】
本実施形態における製鋼副資材1の製造方法が収容工程を含むことにより、粉体状のアルミ灰2を固化するバインダーをアルミ灰2に加えることなく、アルミ灰2の飛散及び/又は粉化を防ぎ得る。
【0036】
[アルミ灰2]
アルミ灰2は、金属アルミニウム及び/又はその合金を加熱溶解する際に発生する、粉体状のアルミ灰であれば、特に限定されない。アルミ灰2は、アルミニウムドロス、アルミドロス、アルミニウムドロス残灰、アルミ残灰等とも称され、酸化アルミニウム、金属アルミニム、及び/又は窒化アルミニウム等を含む。また、アルミ灰2は、アルミニウム合金を構成する各種元素について、酸化物、塩化物、及び/又はフッ化物等を含み得る。
【0037】
製鋼副資材1においてアルミ灰2が金属製収容体に収容されるため、アルミ灰2を含む製鋼副資材1を製鋼の副資材として添加し、脱酸素剤及び/又は昇温剤等として利用できる。副資材として添加されたアルミ灰2を含む製鋼副資材1は、脱酸素剤として作用し、溶けた銑鉄、溶けた鋼等に含まれる余分な酸素を除去する。また、副資材として添加されたアルミ灰2を含む製鋼副資材1は、昇温剤として作用し、製鋼プロセスの温度を高め得る。
【0038】
金属アルミニウム及び/又はアルミニウム合金の加熱溶解工程等において発生したアルミ灰2を製鋼副資材1に収容して用いることにより、製鋼の費用対効果が高まる。また、アルミ灰2を製鋼副資材1に収容して製鋼の副資材として有効利用することにより、アルミ灰2の廃棄量が減ってアルミ灰2による環境負荷が軽減され得る。
【0039】
[金属製収容体]
金属製収容体は、アルミ灰2を収容可能であれば、特に限定されない。
【0040】
金属製収容体の材質は、金属灰及び/又は金属粒状体を構成する金属と化学式が同じである金属及び/又はその合金を含むことが好ましい。例えば、金属灰及び/又は金属粒状体がアルミニウム灰である場合、金属製収容体の材質は、金属アルミニウム及び/又はアルミニウム合金を含むことが好ましい。金属アルミニウム及び/又はアルミニウム合金は、製鋼プロセスに寄与するアルミニウムをアルミ灰2と同様に有する。したがって、金属アルミニウム及び/又はアルミニウム合金を含む金属製収容体であることにより、実施形態の製造方法は、製鋼プロセスに寄与するアルミニウムをよりいっそう増し得る。
【0041】
製鋼プロセスで用いられる製鋼副資材1において、金属製収容体の材質は、鉄系材料を含んでもよい。これにより、金属製収容体が含む鉄系材料をも用いた製鋼プロセスを行い得る。これにより、実施形態の製造方法は、製鋼プロセスにおいて得られる鉄鋼等を増し得る。
【0042】
金属製収容体の材質は、製鋼プロセスにおいて不純物となる材質を含まないことが好ましい。製鋼プロセスにおいて不純物となる材質として、例えば、銅、錫、亜鉛、鉛等が挙げられる。金属製収容体の材質が製鋼プロセスにおいて不純物となる材質を含まないことにより、製鋼プロセスにおいて得られる鉄鋼等の品質が不純物となる材質によって低下するリスクを低減できる。
【0043】
金属製収容体は、表面にラベルの貼付及び塗装がいずれもされていないことが好ましい。表面にラベルの貼付及び塗装がいずれもされていない金属製収容体であることにより、塗装、ラベル、及び/又はラベルの貼付に用いた粘着剤・接着剤等が燃焼して煙を発生させ、副資材使用時の製鋼プロセスにおいて作業環境を悪化させるとともに副資材使用時の製鋼プロセスにおいて飛散等による使用歩留まりの低下を招くことを防ぐことができる。
【0044】
金属製収容体は、廃金属材を用いたものであってもよい。金属製収容体が廃金属材を用いた金属製収容体であることにより、廃棄及び/又は再生処理の対象となる廃金属材を、製鋼副資材1の金属製収容体として有効利用し得る。これにより、廃金属材の廃棄量及び/又は再生処理対象量が減って廃金属材による環境負荷及び/又は再生処理コストが軽減され得る。
【0045】
金属製収容体が廃金属材を用いた金属製収容体である場合、廃金属材は、ラベル及び/又は塗装が除去された廃金属材であることが好ましい。ラベル及び/又は塗装が除去された廃金属材を用いた金属製収容体であることにより、廃金属材を有効利用することと、塗装、ラベル、及び/又はラベルの貼付に用いた粘着剤・接着剤等が燃焼して煙を発生させ、作業環境を悪化させるとともに副資材使用時の製鋼プロセスにおいて飛散等による使用歩留まりの低下を招くことを防ぐことと、を両立できる。
【0046】
以下、筒状の形状を有する金属製筒状収容体3と袋状の形状を有する金属製袋状収容体4とを例示するが、金属製収容体の形状は、アルミ灰2を収容可能であれば、特に限定されず、例えば、中空の直方体等によって例示される中空の各種柱体、中空の多面体、中空の球体、中空の錐体等、従来技術の収容体がとり得る各種形状でよい。
【0047】
(金属製筒状収容体3)
図1は、本実施形態に係る製鋼副資材1の一例を示す概略側面図である。
図2は、上記製鋼副資材1の概略平面図である。金属製収容体は、開口部を有する収容体本体31と当該開口部を封止可能な収容体蓋32とを備える金属製筒状収容体3であることが好ましい。
【0048】
金属製収容体が金属製筒状収容体3であることにより、金属製収容体の輸送、保管、及び使用において、金属製筒状収容体3の形状が変化することを防ぎ得る。これにより、金属製収容体の輸送、保管、及び使用が容易となり得る。
【0049】
金属製収容体が開口部を有する収容体本体31と当該開口部を封止可能な収容体蓋32とを備える金属製筒状収容体3であることにより、開口部を介して収容体本体31にアルミ灰2を収容したのちに、収容体蓋32を用いて金属製筒状収容体3を封止できる。
【0050】
金属製筒状収容体3、収容体本体31、及び収容体蓋32の材質は、上述の金属製収容体の材質と同様でよい。
【0051】
収容体本体31の側面部の厚みの下限は、0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましく、0.5mm以上であることがさらに好ましい。収容体本体31の側面部の厚みの下限を上述のとおり定めることにより、製鋼副資材1の輸送、保管、及び使用において、収容体本体31が破損及び/又は変形するリスクを軽減し得る。これにより、製副資材製造工程、輸送工程、使用工程における、粉化等による製品歩留まりの低下がよりいっそう防がれ得る。
【0052】
収容体本体31の側面部の厚みの上限は、2.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以下であることがより好ましく、0.7mm以下であることがさらに好ましい。収容体本体31の側面部の厚みの上限を上述のとおり定めることにより、製鋼副資材1におけるアルミ灰2の割合が高く保たれ得る。また、製鋼副資材1を用いた製鋼プロセスにおいて金属製筒状収容体3が溶解するまでの時間を短くして、収容されたアルミ灰2が製鋼プロセスに寄与するまでの時間を短くし得る。
【0053】
収容体蓋32は、例えば、アルミニウム板及び鉄板等によって例示される略平らな金属板を含んで構成されることが好ましい。これにより、金属製筒状収容体3を積み上げるときの安定性が増され得る。
【0054】
収容体本体31の開口部の開口面積は、当該開口部を上にして金属製筒状収容体3を載置した場合における金属製筒状収容体3の平面投影面積より小さいことが好ましい。開口部の開口面積が上記平面投影面積より小さいことにより、収容したアルミ灰2が開口部を介して飛散することを低減できる。
【0055】
開口部を上にして金属製筒状収容体3を載置した場合における金属製筒状収容体3の平面投影面積に対する開口部の開口面積の割合の上限は、90%以下であることが好ましく、81%以下であることがより好ましく、73%以下であることがさらに好ましい。平面投影面積に対する開口部の開口面積の割合の上限を上述のように定めることにより、収容工程において収容したアルミ灰2が開口部を介して飛散することをよりいっそう低減できる。
【0056】
開口部を上にして金属製筒状収容体3を載置した場合における金属製筒状収容体3の平面投影面積に対する開口部の開口面積の割合の下限は、9%以上であることが好ましく、16%以上であることがより好ましく、25%以上であることがさらに好ましい。平面投影面積に対する開口部の開口面積の割合の下限を上述のように定めることにより、開口部を介してアルミ灰2を収容体本体31に収容することがよりいっそう容易となり得る。
【0057】
金属製筒状収容体3は、収容体本体31及び収容体蓋32それぞれの表面にラベルの貼付及び塗装がいずれもされていないことが好ましい。表面にラベルの貼付及び塗装がいずれもされていない金属製筒状収容体3であることにより、塗装、ラベル、及び/又はラベルの貼付に用いた粘着剤・接着剤等が燃焼して煙を発生させ、副資材使用時の製鋼プロセスにおいて作業環境を悪化させるとともに副資材使用時の製鋼プロセスにおいて飛散等による使用歩留まりの低下を招くことを防ぐことができる。
【0058】
金属製筒状収容体3は、アルミニウム等の板材を用いて製造されたものであってもよい。アルミニウム等の板材を用いて金属製筒状収容体3を製造することにより、実施形態の製造方法は、鋳造等より容易に金属製筒状収容体3を製造できる。
【0059】
金属製筒状収容体3は、使用済みのアルミ缶及びスチール缶等によって例示される廃金属缶を用いたものであってもよい。金属製筒状収容体3が廃金属缶を用いた金属製筒状収容体3であることにより、廃棄及び/又は再生処理の対象となる廃金属缶を、製鋼副資材1の金属製筒状収容体3として有効利用し得る。これにより、廃金属缶の廃棄量及び/又は再生処理対象量が減って廃金属缶による環境負荷及び/又は再生処理コストが軽減され得る。
【0060】
また、金属製筒状収容体3が廃金属缶を用いた金属製筒状収容体3であることにより、金属の板材等を筒状に加工することなく金属製収容体を得うる。これにより、金属の板材等を金属製筒状収容体3に加工する際に生じる各種コスト及び/又は環境負荷が低減され得る。
【0061】
金属製筒状収容体3が廃金属缶を用いた金属製筒状収容体3である場合、廃金属缶は、ラベル及び/又は塗装が除去された廃金属缶であることが好ましい。ラベル及び/又は塗装が除去された廃金属缶を用いた金属製筒状収容体3であることにより、廃金属缶を有効利用することと、塗装、ラベル、及び/又はラベルの貼付に用いた粘着剤・接着剤等が燃焼して煙を発生させ、副資材使用時の製鋼プロセスにおいて作業環境を悪化させるとともに副資材使用時の製鋼プロセスにおいて飛散等による使用歩留まりの低下を招くことを防ぐことと、を両立できる。
【0062】
図1に示す例において、金属製筒状収容体3の収容体本体31は、表面にラベルの貼付及び塗装がいずれもされていない。これにより、塗装、ラベル、及び/又はラベルの貼付に用いた粘着剤・接着剤等が燃焼して煙を発生させ、副資材使用時の製鋼プロセスにおいて飛散等による使用歩留まりの低下を招くことを防ぐことができる。
【0063】
また、
図2に示す例において、金属製筒状収容体3の収容体本体31の上部及び収容体蓋32は、表面にラベルの貼付及び塗装がいずれもされていない。これにより、塗装、ラベル、及び/又はラベルの貼付に用いた粘着剤・接着剤等が燃焼して煙を発生させ、副資材使用時の製鋼プロセスにおいて作業環境を悪化させるとともに副資材使用時の製鋼プロセスにおいて飛散等による使用歩留まりの低下を招くことを防ぐことができる。
【0064】
(金属製袋状収容体4)
図3は、本実施形態に係る製鋼副資材1の他の一例を示す概略図である。金属製収容体は、開口部を有する金属製袋状収容体4であることが好ましい。
【0065】
金属製収容体が金属製袋状収容体4であることにより、金属製収容体の輸送、保管、及び使用において、金属製袋状収容体4の形状を変化させ得る。これにより、金属製収容体の輸送、保管、及び使用が容易となり得る。
【0066】
金属製袋状収容体4の製造方法は、特に限定されず、例えば、アルミニウム等の箔(フィルム)を用いて製造されたものでよい。
【0067】
金属製袋状収容体4は、金属製袋状収容体4を封止可能な収容体封止部41を備えていてもよい。これにより、後述する封止工程において、収容体封止部41を用いて金属製袋状収容体4が封止され得る。
【0068】
金属製袋状収容体4及び収容体封止部41の材質は、上述の金属製収容体の材質と同様でよい。
【0069】
金属製袋状収容体4の厚みの下限は、0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましく、0.5mm以上であることがさらに好ましい。金属製袋状収容体4の厚みの下限を上述のとおり定めることにより、製鋼副資材1の輸送、保管、及び使用において、金属製袋状収容体4が破損するリスクを軽減し得る。これにより、製鋼副資材1の副資材製造工程、輸送工程、使用工程における、粉化等による製品歩留まりの低下がよりいっそう防がれ得る。
【0070】
金属製袋状収容体4の厚みの上限は、2.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以下であることがより好ましく、0.7mm以下であることがさらに好ましい。金属製袋状収容体4の厚みの上限を上述のとおり定めることにより、製鋼副資材1におけるアルミ灰2の割合が高く保たれ得る。また、製鋼副資材1を用いた製鋼プロセスにおいて金属製袋状収容体4が溶解するまでの時間を短くして、収容されたアルミ灰2が製鋼プロセスに寄与するまでの時間を短くし得る。
【0071】
図3に示す例において、金属製袋状収容体4は、金属製袋状収容体4を封止可能な収容体封止部41を備えている。これにより、後述する封止工程において、収容体封止部41を用いて金属製袋状収容体4が封止され得る。
【0072】
[その他の収容物]
金属製収容体には、バインダーが加えられていないアルミ灰2が収容されることが好ましい。これにより、製鋼副資材1が含むバインダーによる作業環境悪化及び/又は鉄鋼製品の品質低下をよりいっそう防ぐことができる。
【0073】
金属製収容体には、バインダー以外の製鋼プロセスにおいて不純物となる材質が収容されないことが好ましい。製鋼プロセスにおいて不純物となる材質として、例えば、銅、錫、亜鉛、鉛等が挙げられる。金属製収容体が製鋼プロセスにおいて不純物となる材質を収容しないことにより、製鋼プロセスにおいて得られる鉄鋼等の品質が不純物となる材質によって低下するリスクを低減できる。
【0074】
金属製収容体には、アルミ灰2のみが収容されることが好ましい。これにより、製鋼副資材1が含むアルミ灰2以外の成分による作業環境悪化及び/又は鉄鋼製品の品質低下をよりいっそう防ぐことができる。
【0075】
〔封止工程〕
封止工程は、アルミ灰2を収容した金属製収容体を封止する工程であれば、特に限定されない。
【0076】
金属製収容体が収容体本体31と収容体蓋32とを備える金属製筒状収容体3である場合、封止工程は、収容体本体31に設けられた開口部を収容体蓋32で封止する工程を含むことが好ましい。これにより、開口部を介して収容体本体31にアルミ灰2が収容されたのちに、収容体蓋32を用いて金属製筒状収容体3が封止され得る。
【0077】
封止工程が収容体本体31に設けられた開口部を収容体蓋32で封止する工程を含む場合、封止工程は、収容体蓋32を収容体本体31に固定する工程を含んでもよい。これにより、金属製筒状収容体3がよりいっそう確実に封止され、アルミ灰2の飛散をよりいっそう防ぎ得る。収容体蓋32を収容体本体31に固定する手段は、特に限定されない。
【0078】
図4は、
図2のA-A断面図である。
図4において、アルミ灰2は、収容体本体31内部に収容されている。また、
図4において、収容体本体31の上部にある開口部は、収容体蓋32によって封止されている。これにより、アルミ灰2の飛散が防止される。また、アルミ灰2が収容体本体31内部に収容され、アルミ灰2を収容した金属製筒状収容体3が封止されているため、製鋼副資材1の製造工程、輸送工程、及び/又は使用工程における、粉化等による製品歩留まりの低下を防ぐことができる。
【0079】
金属製収容体が金属製袋状収容体4を封止可能な収容体封止部41を備える金属製袋状収容体4である場合、封止工程は、金属製袋状収容体4の開口部を収容体封止部41で封止する工程を含むことが好ましい。これにより、開口部を介して金属製袋状収容体4にアルミ灰2が収容されたのちに、収容体封止部41を用いて金属製袋状収容体4が封止され得る。
【0080】
〔加圧成形工程〕
加圧成形工程は、金属製収容体に収容されたアルミ灰2を加圧成形する工程であれば、特に限定されない。
【0081】
加圧成形工程として、例えば、アルミ灰2を収容して封止した金属製筒状収容体3及び/又は金属製袋状収容体4の外部から圧力を加え、アルミ灰2を加圧成形する工程が挙げられる。
【0082】
加圧成形でアルミ灰2等に加える圧力の下限は、20MPa以上であることが好ましく、25MPa以上であることがより好ましく、30MPa以上であることがさらに好ましい。
【0083】
加圧成形でアルミ灰2等に加える圧力の下限を上述のとおり定めることにより、実施形態に係る製造工程は、製鋼副資材1の比重をよりいっそう増やし、収製鋼副資材1に収容されるアルミ灰2の体積あたり重量をよりいっそう増し得る。
【0084】
また、加圧成形でアルミ灰2等に加える圧力の下限を上述のとおり定めることにより、アルミ灰2を構成する粉体がよりいっそう密着し、アルミ灰2の飛散が防がれる効果をよりいっそう期待し得る。
【0085】
なお、本実施形態において、加圧成形でアルミ灰2等に加える圧力は、理研機器株式会社製の圧力ゲージで測定した値をいうものとする。
【0086】
加圧成形工程後の製鋼副資材1の比重の下限は、1.0以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましい。加圧成形工程後の製鋼副資材1の比重の下限を上述のとおり定めることにより、製鋼プロセスにおいて製鋼副資材1が飛散することなく溶融鉄及び/又は溶融スラグと接触しやすくなり、より多くのアルミ灰2が飛散することなく副資材として利用される。これにより、金属アルミニウムと酸素との反応がよりいっそう効率よく行われ得る。また、これにより、酸化アルミニウムがスラグによりいっそう効率よく供給され得る。
【0087】
なお、本実施形態において、比重は、株式会社エー・アンド・デイ製の電子天秤を用いて測定した質量と、体積測定機能を有するメジャーを用いて測定した体積とから求められる値をいうものとする。
【0088】
加圧成形工程後の製鋼副資材1の重量の下限は、100g以上であることが好ましく、200g以上であることがより好ましく、500g以上であることがさらに好ましい。加圧成形工程後の製鋼副資材1の重量の下限を上述のとおり定めることにより、製鋼プロセスにおいて製鋼副資材1が飛散することなく溶融鉄及び/又は溶融スラグと接触しやすくなる。これにより、より多くのアルミ灰2が飛散することなく副資材として利用される。これにより、金属アルミニウムと酸素との反応がよりいっそう効率よく行われ得る。また、これにより、酸化アルミニウムがスラグによりいっそう効率よく供給され得る。
【0089】
〔製鋼副資材1〕
実施形態に係る製造工程により、アルミ灰2を含み、バインダーを含まない製鋼副資材1が得られる。
【0090】
製鋼副資材1の外観は、金属製収容体の態様によって様々であり、例えば、金属製収容体が金属製筒状収容体3である製鋼副資材1ではアルミ灰2が金属の板及び蓋で囲まれた円柱状であり、金属製収容体が金属製袋状収容体4である製鋼副資材1ではアルミ灰2が金属の箔で囲まれた袋状である。
【0091】
製鋼副資材1の重量の下限は、100g以上であることが好ましく、200g以上であることがより好ましく、500g以上であることがさらに好ましい。製鋼副資材1の重量の下限を上述のとおり定めることにより、製鋼プロセスにおいて製鋼副資材1が溶融鉄及び/又は溶融スラグと接触しやすくなる。これにより、より多くのアルミ灰2が飛散することなく副資材として利用される。これにより、金属アルミニウムと酸素との反応がよりいっそう効率よく行われ得る。また、これにより、酸化アルミニウムがスラグによりいっそう効率よく供給され得る。
【0092】
製鋼副資材1の比重の下限は、1.0以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましい。製鋼副資材1の比重の下限を上述のとおり定めることにより、製鋼プロセスにおいて製鋼副資材1が溶融鉄及び/又は溶融スラグと接触しやすくなり、より多くのアルミ灰2が飛散することなく副資材として利用される。これにより、金属アルミニウムと酸素との反応がよりいっそう効率よく行われ得る。また、これにより、酸化アルミニウムがスラグによりいっそう効率よく供給され得る。
【0093】
金属アルミニウム及び/又はアルミニウム合金の加熱溶解工程等において発生したアルミ灰2を製鋼の副資材として用いることにより、製鋼の費用対効果が高まる。また、アルミ灰2を製鋼の副資材として有効利用することにより、アルミ灰2の廃棄量が減ってアルミ灰2による環境負荷が軽減され得る。
【0094】
また、アルミ灰2に含まれる金属アルミニウムと酸素との反応により生成する酸化アルミニウム(「アルミナ」とも称する。)及びアルミ灰2に元々含まれているアルミナは、製鋼プロセスにおいてスラグの原料となる。スラグは、コンクリートの骨材等として利用され得る。
【0095】
しかしながら、アルミ灰2を粉体のまま製鋼の副資材として用いると、アルミ灰2が粉塵として飛散し得る。これにより、アルミ灰2が副資材として有効利用される割合が減少し得る。また、飛散した粉塵が作業環境を悪化させるリスク及び/又は製鋼ダストを増加させるリスクも懸念される。
【0096】
実施形態に係る製造工程によって製造された製鋼副資材1では、アルミ灰2が金属製収容体に収容され、アルミ灰2を収容した金属製収容体が封止されているため、収容されたアルミ灰2が収容体からこぼれ落ちず、アルミ灰2の飛散が防止される。また、アルミ灰2が金属製収容体に収容され、アルミ灰2を収容した金属製収容体が封止されているため、製鋼副資材1の製造工程、輸送工程、及び/又は使用工程における、粉化等による製品歩留まりの低下を防ぐことができる。
【0097】
アルミ灰2が粉塵として飛散することを防ぐために、各種のバインダーをアルミ灰2に混錬し、圧縮し、必要に応じて加熱することでアルミ灰2を造粒成形する方法がある。バインダーとして、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ピッチ、タール、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、消石灰、生石灰、水及び/又はこれらのうち複数の混合物が挙げられる。バインダーをアルミ灰2に混錬等してアルミ灰2を造粒成形する方法では、製鋼副資材1の使用における粉化を防ぎ得る。
【0098】
しかしながら、有機樹脂を含むバインダーをアルミ灰2に混錬等してアルミ灰2を造粒成形する方法では、造粒成形された副資材が有機樹脂を含有するため、製鋼プロセスで有機樹脂が燃焼して煙が発生し、作業環境を悪化させ得る。
【0099】
また、無機化合物と水との混合物を含むバインダーをアルミ灰2に混錬等してアルミ灰2を造粒成形する方法では、副資材製造工程でアルミ灰2に含まれる窒化アルミニウムと水とが反応して強烈な悪臭であるアンモニアを発生させ、作業環境を悪化させ得る。また、無機化合物が硫黄等の鉄鋼不純物を含む場合、作業環境を悪化させるのみならず、鉄鋼製品の品質を低下させるリスクもあり得る。
【0100】
また、バインダーをアルミ灰2に混錬等してアルミ灰2を造粒成形する方法では、造成形の過程においてバインダー及び/又はアルミ灰2が飛散して環境を汚染するリスクが生じ得る。また、バインダーをアルミ灰2に加えて成形する方法では、バインダーの調達コスト及び/又は成形における加工コスト等によって、副資材の製造に係る各種のコストが高く成り得る。
【0101】
さらに、バインダーをアルミ灰2に混錬等してアルミ灰2を造粒成形する方法では、造副資材の製造、輸送、及び/又は使用において、衝突等によって副資材に含まれるアルミ灰2が粉体に戻り、製品歩留まりの低下及び粉化したアルミ灰2の清掃除去を要する状況等が生じることも懸念される。
【0102】
実施形態に係る製造工程によって製造された製鋼副資材1では、金属製収容体にアルミ灰2を収容し、封止して製鋼副資材1を製造するため、アルミ灰2にバインダーを加えることなく、アルミ灰2の飛散及び粉化を防ぎ得る。
【0103】
実施形態に係る製造工程によって製造された製鋼副資材1では、金属製収容体に収容されたアルミ灰2にバインダーが加えられていないため、製鋼副資材1が含むアルミ灰2以外の成分による作業環境悪化及び/又は鉄鋼製品の品質低下を防ぐことができる。
【0104】
実施形態に係る製造工程によって製造された製鋼副資材1では、アルミ灰2の収容に金属製収容体を用いるため、収容体から煙が発生することを防ぎ、製鋼副資材1が含むアルミ灰2以外の成分による作業環境悪化及び/又は鉄鋼製品の品質低下を防ぐことができる。
【0105】
したがって、実施形態に係る製造工程によって製造された製鋼副資材1では、(1)アルミ灰を原料とした副資材製造工程、及び、副資材使用時の製鋼プロセスにおける作業環境の悪化、(2)副資材使用時の製鋼プロセスにおける、飛散等による使用歩留まりの低下、及び、(3)副資材製造工程、輸送工程、使用工程における、粉化等による製品歩留まりの低下、の課題を解決できる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるもので
はない。
【0107】
<サンプル準備>
〔実施例1〕アルミニウム製の金属製筒状収容体3を用いた製鋼副資材1
厚さ0.2mmのアルミニウム板材を曲げて直径66mm、高さ70mmの円筒形に加工し、同じアルミニウム板材を円盤状に加工したもので円筒の一方の底面を塞ぐことにより、実施形態に係る金属製筒状収容体3の収容体本体31が得られた。
【0108】
また、同じアルミニウム板材を円盤状の蓋に加工することにより、収容体本体31の塞がれていない方の底面である開口部を封止可能な収容体蓋32が得られた。これにより、実施形態に係る金属製筒状収容体3が得られた。この金属製筒状収容体3は、直径70mm、高さ60mm、重さ20g、板厚2mm、比重1.4の略円筒形であった。
【0109】
得られた金属製筒状収容体3に、酸化アルミニウム、金属アルミニム、窒化アルミニウムを含む粉体状のアルミ灰2を300g収容し、収容体蓋32で封止したのちに25MPaの圧力で加圧成形することにより、円柱状の製鋼副資材1(実施例1)が得られた。実施例1の重量は、320gだった。
【0110】
〔比較例1〕粉体状のアルミ灰2
製鋼の副資材として、酸化アルミニウム、金属アルミニム、窒化アルミニウムを含む粉体状で280gのアルミ灰2(比較例1)を用意した。
【0111】
〔比較例2〕加圧成形したアルミ灰2
酸化アルミニウム、金属アルミニム、窒化アルミニウムを含む粉体状で280gのアルミ灰2を実施例1と同様に加圧成形することにより、円柱状の製鋼の副資材(比較例2)が得られた。比較例2の重量は、300gだった。
【0112】
なお、本実施形態において、加圧成形でアルミ灰2等に加える圧力は、理研機器株式会社製の圧力ゲージで測定した値をいうものとする。また重量は、株式会社エー・アンド・デイ製の電子天秤を用いて測定したものとする。
【0113】
<評価>
〔比重計測〕
実施例及び比較例のそれぞれについて、電子天秤及びメジャーで比重を計測した。実施例1の比重は、1.4であった。比較例1の比重は、1.0であった。比較例2の比重は、1.4であった。
【0114】
〔製造時飛散評価〕
実施例及び比較例のそれぞれについて、製造時にアルミ灰2が飛散するかの製造時飛散評価が行われた。
【0115】
実施例は、製造時にアルミ灰2が飛散しなかった。比較例1は、製造に相当する工程がないため、製造時飛散評価が行われていない。比較例2は、製造時にアルミ灰2の一部が飛散した。
【0116】
〔輸送評価〕
実施例及び比較例のそれぞれについて、輸送中の衝突でアルミ灰2が粉化等して飛散するかの輸送評価が行われた。
【0117】
実施例は、輸送中の衝突でアルミ灰2が粉化しなかった。比較例1は、輸送中にアルミ灰2が飛散した。比較例2は、輸送中の衝突で角が欠けてアルミ灰2の一部が粉化し、飛散した。
【0118】
〔保管評価〕
実施例及び比較例のそれぞれについて、保管場所に積み上げ、積み上げたものを取り出す保管を行い、保管中の衝突でアルミ灰2が粉化し、飛散するかの保管評価が行われた。
【0119】
実施例は、保管中の衝突で粉化しなかった。比較例1は、積み上げ時及び取り出し時に、アルミ灰2が飛散した。比較例2は、積み上げ時及び取り出し時の衝突で角が欠けてアルミ灰2の一部が粉化し、飛散した。
【0120】
〔使用評価〕
実施例及び比較例のそれぞれについて、鉄鋼を製造する溶鉱炉に製鋼の副資材として添加し、溶融鉄との接触効果とアルミ灰2の飛散の有無と煙の有無とを評価する使用評価が行われた。
【0121】
実施例は、金属製収容体が溶融鉄と十分に接触し、アルミ灰2が飛散しなかった。また実施例は、煙が出なかった。比較例1は、溶融鉄表面上に堆積してしまい接触効率が悪く、アルミ灰2の一部が飛散した。
【0122】
〔考察〕
実施例は、アルミ灰2を金属製収容体に収容し、アルミ灰2を収容した金属製収容体を封止する手順で製造されているため、比較例と異なり、製造、輸送、保管、及び使用において、アルミ灰2の飛散及び粉化が防止されたものと考えられる。これにより、実施例では、比較例に対してアルミ灰2の飛散及び粉化による作業環境の悪化を防いだものと考えられる。また、実施例では、アルミ灰2の飛散及び粉化によるアルミ灰2の減少を低減し、比較例に対して副資材としての製品歩留まりが改善されたものと考えられる。
【0123】
実施例は、比較例1より比重が大きいため、金属製収容体が溶融鉄表面上に堆積せず、溶融鉄との接触が十分に行われ、アルミ灰2が飛散しなかったものと考えられる。これにより、実施例では、アルミ灰2が副資材として利用される割合が高くなり、比較例に対して副資材としての使用歩留まりが改善されたものと考えられる。
【0124】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限るものではない。また、上述の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したものに過ぎず、本発明による効果は、上述の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。また、上述の実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0125】
1 製鋼副資材
2 アルミ灰
3 金属製筒状収容体
31 収容体本体
32 収容体蓋
4 金属製袋状収容体
41 収容体封止部
【要約】
【課題】金属灰及び/又は金属粒状体を含む製鋼副資材において、製鋼副資材が含む金属灰等以外の成分による作業環境悪化や鉄鋼製品の品質低下を防ぐことと、金属灰等の飛散を防止することと、製鋼副資材の製造、輸送、使用における粉化を防ぐこととを両立すること。
【解決手段】本発明の製鋼副資材1の製造方法は、バインダーを加えることなく金属灰等2を金属製筒状収容体3及び金属製袋状収容体4等の金属製収容体に収容し、この金属製収容体を封止する工程を含む。本発明の製造方法によって製造された製鋼副資材1は、金属灰等2が金属製収容体に収容されており、金属製収容体にはバインダーが収容されておらず、金属製収容体は封止されていることが好ましい。また、金属製収容体には金属灰等2のみが収容されていることが好ましく、金属製収容体の表面にラベルの貼付及び塗装がいずれもされていないことが好ましい。
【選択図】
図1