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特許7564582キャピラリ交換機構及びワイヤボンディング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】キャピラリ交換機構及びワイヤボンディング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
H01L21/60 301G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023194212
(22)【出願日】2023-11-15
【審査請求日】2024-02-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】内田 洋平
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-134163(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0020661(US,A1)
【文献】米国特許第08672210(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/447-H01L 21/449
H01L 21/60 -H01L 21/607
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みキャピラリに代えてホーンに取り付けるための交換用キャピラリを前記交換用キャピラリの長手方向と交差する方向に並べて収容する収容モジュールと、
前記ホーンから引き抜かれた前記使用済みキャピラリを保持して、所定の直線方向に沿って、交換位置から取替位置まで送り機構によって搬送すると共に、前記使用済みキャピラリを前記所定の直線方向に向いた姿勢から前記長手方向に向いた姿勢に回転機構によって変更し、記交換用キャピラリを前記所定の直線方向とは逆方向に前記取替位置から前記交換位置まで前記送り機構によって搬送すると共に、前記交換用キャピラリを前記長手方向に向いた姿勢から前記直線方向に向いた姿勢に前記回転機構によって変更する搬送モジュールと、
前記搬送モジュールの前記取替位置側に設けられ、前記使用済みキャピラリを前記交換用キャピラリに取り替える取替モジュールと、を備える、キャピラリ交換機構。
【請求項2】
前記取替モジュールは、前記搬送モジュールの前記取替位置側に設けられ、前記収容モジュールから前記交換用キャピラリを取り出すと共に、前記搬送モジュールに保持された前記使用済みキャピラリを前記長手方向において取り外す、請求項1に記載のキャピラリ交換機構。
【請求項3】
前記搬送モジュールは、
前記ホーンから引き抜かれた前記使用済みキャピラリ及び前記ホーンに差し込まれる前記交換用キャピラリを、前記ホーンに取り付けられているときの前記使用済みキャピラリの軸線に沿って移動させる搬送動作と、
前記取替位置が前記ホーンから引き抜かれた前記使用済みキャピラリを前記ホーンに差し込まれる前記交換用キャピラリに取り替えるための位置として定義され、前記取替位置に位置する前記使用済みキャピラリ及び前記交換用キャピラリの取替姿勢が、前記ホーンに取り付けられているときの前記使用済みキャピラリの交換姿勢とは異なるように、前記使用済みキャピラリ及び前記交換用キャピラリを回転させる回転動作と、を実行する、請求項1に記載のキャピラリ交換機構。
【請求項4】
前記搬送モジュールは、前記使用済みキャピラリを前記交換位置から前記取替位置に移動させる前記搬送動作が開始された後であって、前記搬送動作が継続している期間中に、前記取替位置に位置する前記使用済みキャピラリが前記取替姿勢となるように前記使用済みキャピラリを回転させる前記回転動作を実行する、請求項に記載のキャピラリ交換機構。
【請求項5】
前記搬送モジュールは、前記交換用キャピラリを前記取替位置から前記交換位置に移動させる前記搬送動作と、前記取替姿勢である前記交換用キャピラリが前記交換姿勢となるように前記交換用キャピラリを回転する前記回転動作と、を同時に開始する、請求項に記載のキャピラリ交換機構。
【請求項6】
前記取替姿勢であるときの前記使用済みキャピラリの軸線と前記交換姿勢であるときの前記使用済みキャピラリの軸線とのなす角度は、90度である、請求項に記載のキャピラリ交換機構。
【請求項7】
ホーンと、
前記ホーンに着脱可能に取り付けられるキャピラリと、
前記キャピラリを交換するキャピラリ交換機構と、
使用済みキャピラリに代えてホーンに取り付けるための交換用キャピラリを前記交換用キャピラリの長手方向と交差する方向に並べて収容する収容モジュールと、を備え、
前記ホーンから引き抜かれた前記使用済みキャピラリを保持して、所定の直線方向に沿って、交換位置から取替位置まで送り機構によって搬送すると共に、前記使用済みキャピラリを前記所定の直線方向に向いた姿勢から前記長手方向に向いた姿勢に回転機構によって変更し、記交換用キャピラリを前記所定の直線方向とは逆方向に前記取替位置から前記交換位置まで前記送り機構によって搬送すると共に、前記交換用キャピラリを前記長手方向に向いた姿勢から前記直線方向に向いた姿勢に前記回転機構によって変更する搬送モジュールと、
前記搬送モジュールの前記取替位置側に設けられ、前記使用済みキャピラリを前記交換用キャピラリに取り替える取替モジュールと、を備える、ワイヤボンディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャピラリ交換機構及びワイヤボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤボンディング装置は、ワイヤを用いて半導体チップの電極とリードフレームを電気的に接続する。ワイヤは、キャピラリと称される部品から、半導体チップの電極等に押圧される共に必要に応じて熱又は超音波などが与えられる。その結果、ワイヤは、半導体チップの電極等に接合される。このような接合動作を、ボンディングと称する。
【0003】
ボンディングが繰り返されると、キャピラリの先端が摩耗するなどの理由から所望のボンディングの結果が得られにくくなる。そこで、キャピラリは、ボンディングの回数などに基づいて設定される交換条件を満たすごとに交換される。
【0004】
特許文献1~3は、ワイヤボンディングに関する技術をそれぞれ開示する。特許文献1は、ボンディングツールであるキャピラリを交換しながら、連続してボンディングを行うことができる装置及び方法を開示する。特許文献2は、キャピラリの位置を正確に検出する装置及び方法を開示する。特許文献3は、ワイヤ抜け及びワイヤ曲がりをより効果的に抑制する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4700595号
【文献】特開2001-249007号公報
【文献】特許第4467631号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体チップを製造する工場には、多数多様な製造装置が配置される。製造装置の数は、工場における生産数に対応するので、生産数に見合った数の製造装置が工場には配置される。この場合に、工場の敷地面積を拡張することは困難であり、ある決まった敷地面積において製造装置の数を増やすためには、製造装置のサイズも大型化を抑制することが望まれる。この製造装置のサイズも大型化を抑制は、特許文献1に記載されているようなキャピラリを交換する機能を付加する場合も同様に望まれる。つまり、当該技術分野では、サイズの大型化を抑制しながらキャピラリの自動交換機能を付与できる機構が望まれていた。
【0007】
本発明は、サイズの大型化を抑制しながらキャピラリの自動交換機能を付与できるキャピラリ交換機構及び当該キャピラリ交換機構を備えたワイヤボンディング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態であるキャピラリ交換機構は、ホーンから引き抜かれた使用済みキャピラリを所定の直線方向に沿って、交換位置から取替位置まで搬送すると共に、使用済みキャピラリに代えてホーンに取り付けるための交換用キャピラリを所定の直線方向とは逆方向に取替位置から交換位置まで送り機構によって搬送する搬送モジュールと、搬送モジュールの取替位置側に設けられ、使用済みキャピラリを交換用キャピラリに取り替える取替モジュールと、を備える。
【0009】
このキャピラリ交換機構によれば、ホーンから使用済みキャピラリを引き抜くと共にホーンに交換用キャピラリを取り付ける交換位置から、使用済みキャピラリを交換用キャピラリに取り替える取替位置までの搬送の態様を、送り機構による一軸の移動とすることができる。従って、サイズの大型化を抑制しながらキャピラリの自動交換機能を付与することができる。
【0010】
上記のキャピラリ交換機構の搬送モジュールは、ホーンから引き抜かれた使用済みキャピラリ及びホーンに差し込まれる交換用キャピラリを、ホーンに取り付けられているときの使用済みキャピラリの軸線に沿って移動させる搬送動作と、取替位置がホーンから引き抜かれた使用済みキャピラリをホーンに差し込まれる交換用キャピラリに取り替えるための位置として定義され、取替位置に位置する使用済みキャピラリ及び交換用キャピラリの取替姿勢が、ホーンに取り付けられているときの使用済みキャピラリの交換姿勢とは異なるように、使用済みキャピラリ及び交換用キャピラリを回転させる回転動作と、を実行してもよい。
この構成によれば、取替位置において使用済みキャピラリを交換用キャピラリに取り替えるための構成を簡易にすることができる。
【0011】
上記のキャピラリ交換機構の搬送モジュールは、使用済みキャピラリを交換位置から取替位置に移動させる搬送動作が開始された後であって、搬送動作が継続している期間中に、取替位置に位置する使用済みキャピラリが取替姿勢となるように使用済みキャピラリを回転させる回転動作を実行してもよい。
この構成によれば、交換位置の近傍において使用済みキャピラリの移動が軸線に沿うので、使用済みキャピラリの移動経路をコンパクトにすることができる。
【0012】
上記のキャピラリ交換機構の搬送モジュールは、交換用キャピラリを取替位置から交換位置に移動させる搬送動作と、取替姿勢である交換用キャピラリが交換姿勢となるように交換用キャピラリを回転する回転動作と、を同時に開始してもよい。
この構成によれば、取替位置の近傍において使用済みキャピラリの姿勢を交換姿勢から取替姿勢に変更することができる。
【0013】
上記のキャピラリ交換機構において、取替姿勢であるときの使用済みキャピラリの軸線と交換姿勢であるときの使用済みキャピラリの軸線とのなす角度は、90度であってもよい。
この構成によっても、取替位置において使用済みキャピラリを交換用キャピラリに取り替えるための構成を簡易にすることができる。
【0014】
本発明の別の形態であるワイヤボンディング装置は、ホーンと、ホーンに着脱可能に取り付けられるキャピラリと、キャピラリを交換するキャピラリ交換機構と、を備え、ホーンから引き抜かれた使用済みキャピラリを所定の直線方向に沿って、交換位置から取替位置まで搬送すると共に、使用済みキャピラリに代えてホーンに取り付けるための交換用キャピラリを所定の直線方向とは逆方向に取替位置から交換位置まで送り機構によって搬送する搬送モジュールと、搬送モジュールの取替位置側に設けられ、使用済みキャピラリを交換用キャピラリに取り替える取替モジュールと、を備える。
【0015】
このワイヤボンディング装置は、上記のキャピラリ交換機構を備えている。従って、ホーンから使用済みキャピラリを引き抜くと共にホーンに交換用キャピラリを取り付ける交換位置から、使用済みキャピラリを交換用キャピラリに取り替える取替位置までの搬送の態様を、送り機構による一軸の移動とすることができる。従って、キャピラリ交換機構の配置に要する領域をコンパクトにすることが可能であるから、キャピラリの自動交換機能の追加に伴うワイヤボンディング装置の大型化を抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、サイズの大型化を抑制しながらキャピラリの自動交換機能を付与できるキャピラリ交換機構及びワイヤボンディング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態のワイヤボンディング装置の構成を示す斜視図である。
図2図2は、超音波ホーンの先端を拡大して示す平面図である。
図3図3(a)、図3(b)、図3(c)及び図3(d)は、キャピラリを取り外す動作を説明するための平面図である。
図4図4(a)、図4(b)、図4(c)、図4(d)及び図4(e)は、ワイヤボンディング装置が行うワイヤの引き込み動作を説明するための図である。
図5図5(a)、図5(b)、図5(c)、図5(d)及び図5(e)は、ワイヤボンディング装置が行うワイヤの引き込み動作を説明するための図である。
図6図6は、ワイヤボンディング装置が行う撮像動作を説明するための図である。
図7図7は、キャピラリ交換ユニットの構成を模式的に示す図である。
図8図8は、搬送モジュールの構成を示す斜視図である。
図9図9(a)、図9(b)、図9(c)及び図9(d)は、キャピラリ交換ユニットが行う第1搬送動作を説明するための図である。
図10図10(a)、図10(b)、図10(c)及び図10(d)は、キャピラリ交換ユニットが行う第2搬送動作を説明するための図である。
図11図11(a)及び図11(b)は、キャピラリ交換ユニットが行う引き抜き動作を説明するための図である。
図12図12(a)、図12(b)、図12(c)及び図12(d)は、キャピラリ交換ユニットが行う取替動作を説明するための図である。
図13図13は、実施形態のワイヤボンディング装置が備えるコントローラの機能ブロック図である。
図14図14は、実施形態のキャピラリを交換する方法の主要な工程を示すフローチャートである。
図15図15は、図14におけるキャピラリ自動交換の準備を実行する工程を詳細に示すフローチャートである。
図16図16(a)は、キャピラリを捨てボンドステージの上に移動させる動作を示す図である。図16(b)は、サブベースをキャピラリ交換ユニットに向かって前進させる動作を示す図である。図16(c)は、サブベースを後退させる動作を示す図である。
図17図17は、図14におけるキャピラリ自動交換を実行する工程を詳細に示すフローチャートである。
図18図18(a)、図18(b)、図18(c)及び図18(d)は、キャピラリ自動交換を実行する工程において、サブベースを前進させる動作から、搬送キャリッジを交換位置に移動させる動作までを示す図である。
図19図19(a)、図19(b)、図19(c)及び図19(d)は、キャピラリ自動交換を実行する工程において、解除ピン部を回転させる動作から、取替テーブルを差し込み方向に移動させる動作までを示す図である。
図20図20(a)、図20(b)、図20(c)及び図20(d)は、キャピラリ自動交換を実行する工程において、搬送キャリッジを所定の位置まで下げる動作から、サブベースを後退させる動作までを示す図である。
図21図21は、図14におけるボンディングの準備を実行する工程を詳細に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態であるワイヤボンディング装置を示す斜視図である。ワイヤボンディング装置1は、ワイヤボンディングユニット2と、ボンディングステージ3と、カメラユニット4と、キャピラリ交換ユニット5(キャピラリ交換機構)と、コントローラ6と、を有する。
【0020】
ワイヤボンディングユニット2は、半導体チップ11に対してボンディングワイヤ12(図4等参照)を接合する。ボンディングステージ3は、ワイヤボンディングの対象である複数の半導体チップ11をワイヤボンディングユニット2の作業領域に順次移動させる。カメラユニット4は、ワイヤボンディングユニット2の動作を制御するための撮像画像を得る。キャピラリ交換ユニット5は、複数回のワイヤボンディングによって交換する必要が生じた使用済みキャピラリを新たな交換用キャピラリに交換する。コントローラ6は、ワイヤボンディング装置1の各部の動作の制御及び各種の処理を行う各種の制御部を備えている。
【0021】
ワイヤボンディングユニット2は、メインベース21と、ツール用XYステージ22と、サブベース23と、を有する。さらに、ワイヤボンディングユニット2は、ボンディングモジュール24と、Z軸駆動部25と、モジュールベース26と、下ワイヤクランパ27と、上ワイヤクランパ28と、を有する。
【0022】
ツール用XYステージ22は、メインベース21に取り付けられている。サブベース23は、ツール用XYステージ22の可動ステージに取り付けられている。ツール用XYステージ22は、サブベース23をX軸方向及びY軸方向に移動させる。サブベース23には、ボンディングモジュール24、下ワイヤクランパ27、上ワイヤクランパ28及びカメラユニット4が取り付けられている。例えば、サブベース23がツール用XYステージ22によってX軸方向に移動すると、ボンディングモジュール24、下ワイヤクランパ27、上ワイヤクランパ28及びカメラユニット4も一体となってX軸方向に移動する。
【0023】
より詳細には、サブベース23は、サブベース主面23aと、サブベース壁面23bと、を含む。サブベース主面23aには、Z軸駆動部25が取り付けられており、Z軸駆動部25にはモジュールベース26が取り付けられている。そして、モジュールベース26には、ボンディングモジュール24及び下ワイヤクランパ27が取り付けられている。一方、サブベース壁面23bには、Z軸駆動部25及びモジュールベース26といった中間部材を介することなく上ワイヤクランパ28及びカメラユニット4が取り付けられている。この構成によると、ボンディングモジュール24及び下ワイヤクランパ27は、Z軸駆動部25によってZ軸方向に往復移動する。より詳細には、ボンディングモジュール24の先端及び下ワイヤクランパ27の先端は、Z軸駆動部25を中心とした往復円弧運動が可能である。この往復円弧運動の際には、ボンディングモジュール24に対する下ワイヤクランパ27の相対的な位置は維持される。一方、上ワイヤクランパ28及びカメラユニット4は、Z軸駆動部25によってZ軸方向に往復移動しない。
【0024】
要するに、ボンディングモジュール24及び下ワイヤクランパ27は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のそれぞれに移動する。これに対して、上ワイヤクランパ28及びカメラユニット4は、X軸方向及びY軸方向に移動する。本実施形態の例示では、上ワイヤクランパ28及びカメラユニット4は、Z軸方向には移動しない。しかし、上ワイヤクランパ28及びカメラユニット4が、Z軸方向に移動可能な構成を採用することも可能である。
【0025】
<ボンディングモジュール24>
ボンディングモジュール24は、ホーンホルダ241と、超音波ホーン242と、キャピラリ243と、を有する。ホーンホルダ241の基端側は、Z軸駆動部25に取り付けられている。ホーンホルダ241の先端側には、超音波ホーン242が取り付けられている。超音波ホーン242の先端側の部分には、キャピラリ243が着脱可能取り付けられている。
【0026】
より詳細には、図2に示されるように、超音波ホーン242の先端部には、キャピラリ取付孔H1と、ピン挿入孔H2と、が形成されている。キャピラリ取付孔H1及びピン挿入孔H2は、Z軸に沿って超音波ホーン242を貫通している。本実施形態においてキャピラリ取付孔H1は、ピン挿入孔H2よりも超音波ホーン242の先端側に設けられている。但し、ピン挿入孔H2が、キャピラリ取付孔H1よりも超音波ホーン242の先端側に設けられていてもよい。
【0027】
キャピラリ取付孔H1とピン挿入孔H2とは、互いに連通している。本実施形態では、キャピラリ取付孔H1とピン挿入孔H2とは、スリットS1を介して互いに連通している。スリットS1は、Z軸方向において超音波ホーン242を貫通している。
【0028】
また、超音波ホーン242には、スリットS2が形成されている。スリットS2は、ピン挿入孔H2と連通している。スリットS2は、ピン挿入孔H2よりも超音波ホーン242の基端側に形成されている。スリットS2は、Z軸方向において超音波ホーン242を貫通している。このように、キャピラリ取付孔H1、スリットS1、ピン挿入孔H2、及びスリットS2は、互いに連通している。
【0029】
キャピラリ取付孔H1には、キャピラリ243が挿入される。ここで、超音波ホーン242は、弾性変形可能な材料によって形成されている。図3(a)に示されるようにキャピラリ取付孔H1は、キャピラリ243が挿入されていない状態では、キャピラリ243の外径よりも小さい大きさとなっている。超音波ホーン242は、キャピラリ取付孔H1を押し広げることによってキャピラリ取付孔H1に挿入されたキャピラリ243を弾性力によって把持することができる。つまり、キャピラリ243は、キャピラリ取付孔H1が押し広げられた状態で、キャピラリ取付孔H1に挿入される。
【0030】
図3(a)に示されるようにピン挿入孔H2は、楕円形状の孔である。ピン挿入孔H2には、解除モジュール51の解除ピン部511が挿入可能となっている。ピン挿入孔H2には、超音波ホーン242によるキャピラリ243の把持を解除するために解除ピン部511が挿入される。図2及び図3(a)に示されるようにピン挿入孔H2の内壁面は、互いに対向する第1面部W1及び第2面部W2を含んでいる。第1面部W1と第2面部W2とは、楕円形状のピン挿入孔H2の短手方向において互いに対向している。なお、スリットS1とスリットS2とは、楕円形状のピン挿入孔H2の長手方向において互いに対向している。ピン挿入孔H2に解除モジュール51の解除ピン部511が挿入されていない状態において、ピン挿入孔H2の短手方向の長さは、解除ピン部511の第1方向(長手方向)の長さL1よりも短い。キャピラリ取付孔H1は、スリットS1を介して、楕円形状のピン挿入孔H2の長手方向の端部に連通している。
【0031】
ボンディングツールであるキャピラリ243は、ボンディングワイヤ12を半導体チップ11に接合する。キャピラリ243は、キャピラリ本体部243aと、キャピラリテーパ部243bと、を有する。キャピラリ本体部243aは、円筒形状であり、超音波ホーン242の先端部分に把持される。キャピラリテーパ部243bは、先端に向かって先細る円錐形状であり、キャピラリテーパ部243bの先端が半導体チップ11のパッド等に押し付けられる。キャピラリ243には、キャピラリ本体部243aの基端面からキャピラリテーパ部243bの先端面に至るキャピラリ貫通孔243hが形成されている。キャピラリ貫通孔243hには、ボンディングワイヤ12が挿通される。
【0032】
<下ワイヤクランパ及び上ワイヤクランパ>
下ワイヤクランパ27及び上ワイヤクランパ28は、ボンディングワイヤ12を把持する状態と、ボンディングワイヤ12を把持しない状態と、を相互に切り替えることができる。上述したように、下ワイヤクランパ27は、Z軸方向に沿って移動可能である。従って、Z軸方向に沿う位置が固定された上ワイヤクランパ28に対して、下ワイヤクランパ27の位置は、上ワイヤクランパ28に近づいた位置(近接位置2N)と、上ワイヤクランパ28から離れた位置(離間位置2F)と、相互に切り替えることができる。この把持状態及び開放状態の切り替えと、近接位置2N及び離間位置2Fの切り替えとによって、下ワイヤクランパ27及び上ワイヤクランパ28は、ボンディングワイヤ12をキャピラリ貫通孔243hから引き込む動作(引き込み動作)と、ボンディングワイヤ12をキャピラリ貫通孔243hに送り出す動作(送り出し動作)と、を行うことができる。
【0033】
[引き込み動作]
図4を参照しながら、引き込み動作について説明する。まず、近接位置2Nにある下ワイヤクランパ27を開き、上ワイヤクランパ28を閉じる(図4(a))。次に、開いた下ワイヤクランパ27及びキャピラリ243を離間位置2Fに向けて下方向に移動させる(図4(b))。このとき、ボンディングワイヤ12は上ワイヤクランパ28に把持されているから、移動しない。移動しないボンディングワイヤ12に対してキャピラリ243が下方向に移動することは、ボンディングワイヤ12から見ると、相対的にキャピラリ243に対してボンディングワイヤ12が上方向に移動することである。つまり、ボンディングワイヤ12がキャピラリ243に引き込まれる。次に、離間位置2Fにある下ワイヤクランパ27を閉じ、上ワイヤクランパ28を開く(図4(c))。次に、閉じた下ワイヤクランパ27及びキャピラリ243を近接位置2Nに向けて上方向に移動させる(図4(d))。このとき、ボンディングワイヤ12は下ワイヤクランパ27によって把持されているから、下ワイヤクランパ27の移動と共に上方向にボンディングワイヤ12も移動する。その結果、図4(a)の状態と、図4(b)の状態とを比較すると、キャピラリ243の位置は同じであるが、ボンディングワイヤ12の先端が上方向に移動している。つまり、ボンディングワイヤ12がキャピラリ243に引き込まれている。この図4(a)から図4(d)の動作を、所定の引き込み長さとなるまで繰り返す。引き込み長さは、図4(e)に示すように、キャピラリ貫通孔243hの内部に位置するボンディングワイヤ12の先端からキャピラリ243の先端までの距離D1である。
【0034】
[送り出し動作]
図5を参照しながら、送り出し動作について説明する。まず、近接位置2Nにある下ワイヤクランパ27を閉じ、上ワイヤクランパ28を開く(図5(a))。次に、閉じた下ワイヤクランパ27及びキャピラリ243を離間位置2Fに向けて下方向に移動させる(図5(b))。このとき、ボンディングワイヤ12は下ワイヤクランパ27に把持されているから、下ワイヤクランパ27の下方向への移動に伴ってボンディングワイヤ12も移動する。次に、離間位置2Fにある下ワイヤクランパ27を開き、上ワイヤクランパ28を閉じる(図5(c))。次に、開いた下ワイヤクランパ27及びキャピラリ243を近接位置2Nに向けて上方向に移動させる(図5(d))。このとき、ボンディングワイヤ12は下ワイヤクランパ27に把持されていない。下ワイヤクランパ27の上方向への移動に伴ってボンディングワイヤ12は移動しない。移動しないボンディングワイヤ12に対してキャピラリ243が上方向へ移動することは、ボンディングワイヤ12から見ると、相対的にキャピラリ243に対してボンディングワイヤ12が下方向に移動することである。つまり、ボンディングワイヤ12がキャピラリ243に送り出される。その結果、図5(a)の状態と、図5(d)の状態とを比較すると、キャピラリ243の位置は同じであるが、ボンディングワイヤ12の先端が下方向に移動している。つまり、ボンディングワイヤ12がキャピラリ243に送り出されている。この図5(a)から図5(d)の動作を、所定の突き出し長さD2となるまで繰り返す。突き出し長さD2は、図5(e)に示すように、キャピラリ243の先端からボンディングワイヤ12の先端までの距離である。
【0035】
<カメラユニット>
カメラユニット4は、半導体チップ11を撮像する。半導体チップ11の撮像画像は、半導体チップ11にワイヤボンディングを行う場合において、キャピラリ243の位置決めのために用いられる。このように、カメラユニット4は、ワイヤボンディングを行うために用いられるワイヤボンディング用カメラユニットとして機能する。
【0036】
また、カメラユニット4は、キャピラリ交換ユニット5によるキャピラリ243の自動交換にも用いられる。例えば、カメラユニット4は、超音波ホーン242のロック状態をリリース状態に切り替える動作の際に、後述する解除ピン部511の位置決め動作に用いられる。カメラユニット4は、キャピラリ243の先端から突出するボンディングワイヤ12の状態がボンディングを再開可能な状態であるか否かを判定する動作に用いられる。
【0037】
カメラユニット4は、撮像素子を有するカメラ41と、カメラ41を支持するカメラアーム42と、ツール用XYステージ22と、カメラ制御部66と、を有する。カメラアーム42の基端部は、ツール用XYステージ22に取り付けられている。カメラアーム42の先端部には、カメラ41が取り付けられている。カメラアーム42は、ボンディングステージ3の上方の位置において、カメラ41を支持する。
【0038】
カメラユニット4は、鏡やプリズムなどの光路変更手段を組み合わせることによって各部の立面画像を取得してもよい。例えば図6に示すように、キャピラリ243の先端周辺を撮像する場合を例示する。キャピラリ243は、超音波ホーン242の下面側から突出する。従って、カメラ41が超音波ホーン242の真上にあっては、キャピラリ243の先端周辺を撮像することができない。そこで、カメラ41は、超音波ホーン242とは重複しない位置に配置される。図6に示すように、カメラ41及びキャピラリ243を正面視した場合に、キャピラリ243の軸線とカメラ41の光軸とをずらした配置を、オフセット配置と称することがある。カメラ41の直下には、プリズム又はミラーといった光の向きを変更する光学部品43が配置される。このような光学系によれば、オフセット配置とされたカメラ41によってキャピラリ243の先端周辺を撮像することができる。なお、必要に応じて、レーザダイオードといった光源部品44を配置してもよい。この場合には、キャピラリ243は、光学部品43と光源部品44との間に配置される。
【0039】
カメラ41及びカメラアーム42は、サブベース23を介してツール用XYステージ22に取り付けられている。つまり、カメラ41及びカメラアーム42は、ツール用XYステージ22によって駆動されることにより、キャピラリ243等と共に、XY平面に沿う平行移動が可能である。このように、ツール用XYステージ22は、ワイヤボンディングユニット2の構成要素の一部として機能すると共に、カメラユニット4の構成要素の一部としても機能する。カメラ制御部66は、カメラユニット4の各種の動作の制御及び各種の処理を実行する。カメラ制御部66が行う制御の詳細については、後述する。
【0040】
<キャピラリ交換ユニット>
キャピラリ交換ユニット5は、超音波ホーン242に取り付けられた使用済みキャピラリ243Eを回収するとともに、超音波ホーン242に対して新規な交換用キャピラリ243Tを装着する。つまり、キャピラリ243の交換作業とは、キャピラリ243を回収する作業と、キャピラリ243を装着する作業と、を含む。このキャピラリ243の交換作業は、予め設定された条件を満たした場合に、自動的に実施される。例えば、当該条件は、ボンディング作業の回数としてもよい。すなわち、所定回数のボンディング作業を実施するごとに、キャピラリ243を交換する作業を行うものとしてよい。
【0041】
図7は、キャピラリ交換ユニット5を構成する部材を示す概念図である。キャピラリ交換ユニット5は、解除モジュール51と、搬送モジュール52と、取替モジュール53と、供給モジュール54と、を有する。解除モジュール51、搬送モジュール52及び取替モジュール53は、一体の装置であるように交換ユニット本体50に収められている。交換ユニット本体50は、供給モジュール54が挿入されるモジュールスロット50aを有する。
【0042】
<解除モジュール>
解除モジュール51は、解除ピン部511と、解除シャフト512と、解除駆動部513と、を有する。
【0043】
解除モジュール51は、キャピラリ243が超音波ホーン242に拘束された状態から、キャピラリ243が超音波ホーン242から解放された状態に、切り替える(リリース動作)。さらに、解除モジュール51は、キャピラリ243が超音波ホーン242から解除された状態から、キャピラリ243が超音波ホーン242に拘束された状態に、切り替える(ロック動作)。
【0044】
キャピラリ243が超音波ホーン242に拘束された状態であるとき、超音波ホーン242からキャピラリ243を取り外すことはできない。キャピラリ243が超音波ホーン242から解放された状態であるとき、超音波ホーン242からキャピラリ243を取り外すことができる。また、キャピラリ243が超音波ホーン242から解放された状態であるとき、超音波ホーン242にキャピラリ243を取り付けることができる。
【0045】
[リリース動作]
次に、超音波ホーン242によるキャピラリ243の把持を解除させる把持解除動作について説明する。この把持解除動作は、解除モジュール51によって行われる。図3(a)に示されるように、超音波ホーン242は、キャピラリ取付孔H1に挿入されたキャピラリ243を弾性力によって把持している。この把持を解除する場合、超音波ホーン242のピン挿入孔H2に解除モジュール51の解除ピン部511を挿入する。ピン挿入孔H2への解除モジュール51の挿入動作は、解除駆動部513によって行われる。
【0046】
図3(b)に示されるように、ピン挿入孔H2に解除ピン部511が挿入された状態で、解除ピン部511をZ軸周りに90度回転させる。これにより、解除ピン部511の第1方向の両端部(楕円形状の長手方向の両端部)によって、第1面部W1及び第2面部W2が押圧される。解除ピン部511によって第1面部W1及び第2面部W2が押圧されることにより、超音波ホーン242が弾性変形する。これにより、ピン挿入孔H2の第1面部W1と第2面部W2との間隔が広くなる。解除モジュール51の回転動作は、解除駆動部513によって行われる。
【0047】
ここで、ピン挿入孔H2とキャピラリ取付孔H1とはスリットS1を介して互いに連通している。このため、解除ピン部511によって第1面部W1と第2面部W2との間隔が押し広げられることにつられて、キャピラリ取付孔H1も押し広げられる。キャピラリ取付孔H1が押し広げられることにより、超音波ホーン242によるキャピラリ243の把持が解除される。つまり、把持解除動作は、ピン挿入孔H2に解除ピン部511が差し込まれた状態で解除モジュール51を回転させる動作である。そして、把持解除動作は、解除ピン部511における第1方向の両端部(楕円形状の長手方向の両端部)によって第1面部W1及び第2面部W2を押圧することにより、第1面部W1と第2面部W2との間隔を押し広げる共にキャピラリ取付孔H1を押し広げる動作である。このように、解除モジュール51は、ピン挿入孔H2を押し広げると共にキャピラリ取付孔H1を押し広げ、超音波ホーン242によるキャピラリ243の把持を解除する。
【0048】
図3(b)に示されるように、解除モジュール51によってキャピラリ取付孔H1が押し広げられた状態で、超音波ホーン242からキャピラリ243が取り外され、新規なキャピラリ243がキャピラリ取付孔H1内に挿入される。このキャピラリ243の交換は、キャピラリ交換ユニット5によって行われる。その後、図3(c)に示されるように、解除ピン部511をZ軸周りに90度回転させ、解除ピン部511による第1面部W1及び第2面部W2の押圧を解除する。つまり、把持解除動作を解除する。これにより、ピン挿入孔H2及びキャピラリ取付孔H1は図3(a)に示される元の形状に戻ろうとする。元の形状に戻ろうとする弾性力により、キャピラリ取付孔H1に挿入されたキャピラリ243がキャピラリ取付孔H1の内壁面によって把持される。
【0049】
その後、図3(d)に示されるように、ピン挿入孔H2から解除ピン部511が抜き取られる。このように、超音波ホーン242では、解除モジュール51を用いて、超音波ホーン242によるキャピラリ243の把持及び把持の解除を行うことができる。
【0050】
<搬送モジュール>
再び図7を参照する。搬送モジュール52は、搬送キャリッジ521と、搬送直動シャフト522と、搬送駆動部523と、を有する。搬送モジュール52は、さらに、搬送回転ラック524と、搬送回転ピニオン525と、を有する。
【0051】
搬送モジュール52は、交換位置52Sにおいて超音波ホーン242から使用済みキャピラリ243Eを引き抜く。さらに、搬送モジュール52は、引き抜いた使用済みキャピラリ243Eを交換位置52Sから取替位置52Eまで搬送する。
【0052】
搬送モジュール52は、取替位置52Eにおいて取替モジュール53から交換用キャピラリ243Tを受け取る。搬送モジュール52は、交換用キャピラリ243Tを取替位置52Eから交換位置52Sまで搬送する。搬送モジュール52は、交換位置52Sにおいて超音波ホーン242に交換用キャピラリ243Tを挿入する。
【0053】
このように、搬送キャリッジ521の移動は、交換位置52Sと取替位置52Eとの間での直線移動と、使用済みキャピラリ243Eの姿勢を変更する回転移動と、を含む。そして、本実施形態では、回転移動のすべての期間は、直線移動の一部の期間に重複する。換言すると、直線移動の期間は、直線移動のみの期間と、直線移動と回転移動とが並行する期間と、含む。
【0054】
続いて、図8を参照しながら、搬送モジュール52のさらに具体的な構成の一例を説明する。搬送モジュール52は、上述した搬送キャリッジ521等に加えて、さらに、搬送ベース526を備える。搬送ベース526は、搬送ベース底面部52Aと、搬送ベース立面部52Bと、を有する。搬送ベース底面部52Aから搬送ベース立面部52Bが起立しており、搬送ベース526をY方向から見ると、L字状を呈する。
【0055】
搬送ベース底面部52Aの裏面には、搬送駆動部523であるモータが取り付けられている。搬送駆動部523の出力軸は、Z方向に向く。搬送ベース底面部52Aの主面には搬送直動シャフト522が起立している。搬送直動シャフト522の下端側は、搬送駆動部523の出力軸に連結されている。搬送直動シャフト522の上端側は、搬送ベース立面部52Bの主面から起立するシャフト支持部528に連結されている。シャフト支持部528は搬送直動シャフト522の上端を回転可能に支持する。円柱状の搬送直動シャフト522の外周面には、らせん状のねじ溝が形成されている。つまり、搬送直動シャフト522は、送りねじ(リードスクリュー)である。搬送直動シャフト522は、搬送駆動部523の出力軸の回転に応じて、回転する。搬送直動シャフト522が回転すると、搬送直動シャフト522の送りねじとかみ合うねじ部を有する搬送キャリッジ521の直線移動が生じる。つまり、搬送直動シャフト522は、搬送駆動部523の回転運動を搬送キャリッジ521の直線運動に変換する部材の一部である。なお、送りねじは、送り機構の一例であり、送り機構として、ボールねじ、又はリニアモータ等を採用してもよい。
【0056】
搬送モジュール52は、さらに、搬送案内シャフト527を備える。搬送案内シャフト527は、搬送直動シャフト522の回転に起因する搬送キャリッジ521の移動を、Z軸に沿う直線移動に規制する。搬送案内シャフト527は、円柱状の部材である。搬送案内シャフト527は、搬送キャリッジ521の移動方向を規制するものであるから、搬送直動シャフト522とは異なり、搬送案内シャフト527の外周面にはねじ溝は形成されていないし、回転可能な構成ともされていない。つまり、搬送案内シャフト527の下端側は、搬送ベース底面部52Aに固定されている。そして、搬送直動シャフト522の上端側は、搬送ベース立面部52Bから起立するシャフト固定部に固定されている。
【0057】
搬送キャリッジ521は、キャリッジベース52Cと、キャリッジシャフト52Dと、キャピラリキャッチャ52Fと、を有する。キャリッジベース52Cは、搬送直動シャフト522から駆動力を受け、Z軸に沿って上下方向に移動する。具体的には、搬送キャリッジ521は、交換位置52Sから取替位置52Eへ移動することができる。その逆に、搬送キャリッジ521は、取替位置52Eから交換位置Sへ移動することができる。なお、搬送キャリッジ521は、交換位置Sと取替位置52Eとの間における任意の位置に留まることもできる。
【0058】
キャリッジベース52Cは、キャリッジ本体52C1と、キャリッジフランジ52C2、52C3とを含む。キャリッジ本体52C1には、キャリッジシャフト52Dが挿通する貫通穴が設けられている。キャリッジ本体52C1の第1側面の下側には、キャリッジフランジ52C2が設けられている。キャリッジフランジ52C2には、搬送直動シャフト522のねじ溝とかみ合うねじ部が設けられている。このねじ部と搬送直動シャフト522によって送りねじ機構が構成される。キャリッジ本体52C1の第2側面の略中央にはキャリッジフランジ52C3が設けられている。キャリッジフランジ52C3には、搬送案内シャフト527が挿通される貫通穴52Hが設けられている。例えば、貫通穴52Hの形状は、長孔である。
【0059】
キャリッジシャフト52Dは、キャリッジ本体52C1の貫通穴に通されている。キャリッジシャフト52Dは、キャリッジ本体52C1に対して回転可能である。キャリッジシャフト52Dの先端には、キャピラリキャッチャ52Fが固定されている。
【0060】
キャピラリキャッチャ52Fは、キャリッジシャフト52Dの回転に応じて、回転する。キャピラリキャッチャ52Fは、キャリッジシャフト52Dの軸線と直交する方向に延びる。キャピラリキャッチャ52Fは、円柱状の部材である。キャピラリキャッチャ52Fの基端は、キャリッジシャフト52Dの先端に固定されている。キャピラリキャッチャ52Fの先端には、キャッチャ開口52Gが形成されている。このキャッチャ開口52Gには、キャピラリテーパ部243bが挿入される。キャピラリキャッチャ52Fは、キャピラリ243を保持可能な構成を有する。ここでいう保持とは、キャピラリ243の軸線が鉛直方向に対して傾いた場合でも、キャピラリキャッチャ52Fからキャピラリ243が抜け落ちることがないことをいう。例えば、キャピラリ243の軸線が鉛直方向に直交となるようにした場合であっても、キャピラリ243はキャピラリキャッチャ52Fから脱落することはない。
【0061】
キャリッジシャフト52Dの基端には、搬送回転ピニオン525が取り付けられている。すでに述べたように、キャピラリキャッチャ52Fは、キャリッジシャフト52Dの回転に応じて、回転する。このキャリッジシャフト52Dの回転は、搬送回転ピニオン525と搬送回転ラック524によってなされる。搬送回転ピニオン525、キャリッジシャフト52D及びキャピラリキャッチャ52Fは、一体となって回転可能である。搬送回転ピニオン525にかみ合う搬送回転ラック524は、搬送ベース立面部52Bに取り付けられている。より詳細には、搬送回転ラック524は、搬送ベース立面部52Bの下方、すなわち取替位置52Eの近傍に取り付けられている。搬送回転ラック524及び搬送回転ピニオン525は、搬送キャリッジ521の直線運動をキャピラリキャッチャ52Fの回転運動に変換するラックアンドピニオン機構を構成する。
【0062】
上述の構成を有する搬送モジュール52は、以下に説明する第1搬送動作と第2搬送動作を実行可能である。
【0063】
[第1搬送動作]
ここで、使用済みキャピラリ243Eを交換位置52Sから取替位置52Eに搬送する場合を第1搬送動作と称する。第1搬送動作では、まず、下方向に向かう直線移動が開始され、搬送キャリッジ521が搬送回転ラック524に至るまで直線移動のみが実行される。
【0064】
直線移動は、搬送直動シャフト522と搬送駆動部523によって実行される。搬送キャリッジ521と搬送直動シャフト522とは、いわゆる送りねじ機構を構成する。搬送駆動部523が搬送直動シャフト522を回転させると、ねじ軸である搬送直動シャフト522に設置された搬送キャリッジ521が直動する。搬送キャリッジ521の移動方向は、搬送直動シャフト522の回転方向によって決まる。
【0065】
そして、搬送キャリッジ521が搬送回転ラック524に至った後は、直線移動と時計方向への回転移動とが並行して実行される。
【0066】
より詳細には、搬送直動シャフト522の下端側には、搬送回転ラック524が設けられている。図9(a)に示すように、交換位置52Sにある搬送キャリッジ521が搬送直動シャフト522の下端側に近づくと図9(b)に示すように搬送キャリッジ521に設けられた搬送回転ピニオン525が搬送回転ラック524にかみ合う。その結果、搬送キャリッジ521の移動に伴って、搬送キャリッジ521が所定の方向に回転する(図9(c)参照)。例えば、図9(d)に示すように、搬送キャリッジ521は、時計方向に90度回転する。その結果、取替位置52Eに移動した使用済みキャピラリ243Eの姿勢(取替姿勢)は、交換位置52Sにおける使用済みキャピラリ243Eの姿勢(交換姿勢)と異なっている。ここで言う使用済みキャピラリ243Eの姿勢とは、Z軸方向を基準とした使用済みキャピラリ243Eの軸線Aの角度と定義してよい。例えば、交換位置52Sにおける使用済みキャピラリ243Eの姿勢は、Z軸方向に対する角度が0度である。例えば、取替位置52Eにおける使用済みキャピラリ243Eの姿勢は、Z軸方向に対する角度が90度である。
【0067】
なお、使用済みキャピラリ243Eの軸線Aに方向の定義を加えると、使用済みキャピラリ243Eの姿勢をさらに詳細に定義できる。例えば、使用済みキャピラリ243Eの基端から先端に向かう方向を正とする。この場合にも、交換位置52Sにおける使用済みキャピラリ243Eの姿勢は、Z軸方向に対する角度が0度である。例えば、搬送キャリッジ521の回転によって、使用済みキャピラリ243Eの先端が上側であり基端が下側となった場合には、交換位置52Sにおける使用済みキャピラリ243Eの姿勢は、Z軸方向に対する角度が180度であると言える。
【0068】
[第2搬送動作]
次に、交換用キャピラリ243Tを取替位置52Eから交換位置52Sに搬送する場合を第2搬送動作と称する。図10(a)及び図10(b)に示すように第2搬送動作では、上方向に向かう直線移動が開始されると同時に半時計方向への回転移動が並行して実行される。搬送キャリッジ521が搬送回転ラック524とかみ合っている期間は、直線移動と回転移動とが並行する。そして、図10(c)及び図10(d)に示すように、搬送キャリッジ521が搬送回転ラック524とかみ合わなくなった後は、上方向に向かう直線移動のみが実行される。
【0069】
<取替モジュール>
取替モジュール53は、取替テーブル531と、取替駆動部532と、取替直動シャフト533と、取替シャフト534と、取替稼働片535と、取替固定片536と、を有する。
【0070】
[引き抜き動作]
取替モジュール53は、取替位置52Eに搬送された使用済みキャピラリ243Eを搬送キャリッジ521から引き抜く。より詳細には、取替駆動部532及び取替直動シャフト533の動作によって、取替テーブル531及び取替稼働片535が一体となって取替固定片536から離れる(図11(b)参照)。取替稼働片535は、キャピラリ243のキャピラリテーパ部243bに引っかかっているので、取替稼働片535が取替固定片536から離れる方向に移動すると、取替稼働片535の移動に伴ってキャピラリ243も取替固定片536から離れる方向に移動する。その結果、キャピラリ243は、搬送キャリッジ521から引き抜かれる。
【0071】
[取替動作]
さらに、取替モジュール53は、使用済みキャピラリ243Eが引き抜かれた搬送キャリッジ521に交換用キャピラリ243Tを差し込む。より詳細には、取替駆動部532及び取替直動シャフト533の動作によって、取替テーブル531及び取替稼働片535が一体となって取替固定片536に近づく。この取替テーブル531及び取替稼働片535が取替固定片536に近づく動作は、以下に説明するいくつかの段階を含む。
【0072】
第1の段階(図12(a)参照)として、取替テーブル531の移動に伴い、取替テーブル531の起立部531aは、キャピラリ供給口54bに位置する交換用キャピラリ243Tの基端面を押圧しながら取替固定片536に近づく。その結果、交換用キャピラリ243Tは、キャピラリ供給口54bから取替テーブル531上に落下する(図12(b)参照)。第2の段階として、取替テーブル531の移動に伴い、取替稼働片535が取替固定片536に接触する(図12(c)参照)。第3の段階として、取替テーブル531の移動に伴い、取替テーブル531が取替固定片536にさらに近づく。この第3の段階では、取替稼働片535は取替固定片536に当接しているから、取替稼働片535は移動しない。従って、第3の段階では、交換用キャピラリ243Tを乗せた取替テーブル531が、取替固定片536に当接する取替稼働片535に近づく。換言すると、第3の段階では、交換用キャピラリ243Tを乗せた取替テーブル531から取替固定片536に当接する取替稼働片535までの距離が次第に短くなる。第4の段階(図12(d)参照)として、取替テーブル531の移動に伴い、取替テーブル531に乗った交換用キャピラリ243Tのキャピラリテーパ部243bが取替稼働片535及び取替固定片536を通過して、搬送キャリッジ521に差し込まれる。
【0073】
<供給モジュール>
供給モジュール54は、キャピラリ収容部54aと、キャピラリ供給口54bと、を有する。
【0074】
供給モジュール54は、上述したように交換ユニット本体50のモジュールスロット50aに差し込まれる。供給モジュール54は、必要に応じて、モジュールスロット50aから取り外すことが可能である。供給モジュール54は、キャピラリ収容部54aに複数の交換用キャピラリ243Tを収容している。供給モジュール54は、取替モジュール53の動作に応じて、キャピラリ供給口54bから取替モジュール53に交換用キャピラリ243Tをひとつずつ供給する。
【0075】
<コントローラ>
コントローラ6は、ワイヤボンディングユニット2及びキャピラリ交換ユニット5の動作を制御する。コントローラ6は、各種プログラムを実行するプロセッサと、プログラム及び所望のデータベースを記憶するメモリと、を有するコンピュータである。コントローラ6は、ワイヤボンディング装置1に設けられた各種センサから提供される情報を受け入れる。そして、コントローラ6は、受け入れた情報を用いて、ワイヤボンディングユニット2及びキャピラリ交換ユニット5の動作を制御するための制御信号を出力する。
【0076】
コントローラ6は、キャピラリ交換プログラムを実行することによって、図13に示すいくつかの機能構成要素の機能を発揮する。具体的には、コントローラ6は、ボンディング制御部61と、クランパ制御部62と、解除制御部63と、搬送制御部64と、取替制御部65と、を有する。ボンディング制御部61は、Z軸駆動部25に制御信号G61aを出力し、ツール用XYステージ22に制御信号G61bを出力する。クランパ制御部62は、下ワイヤクランパ27に制御信号G62aを出力し、上ワイヤクランパ28に制御信号G62bを出力する。解除制御部63は、キャピラリ交換ユニット5の解除駆動部513に制御信号G63を出力する。搬送制御部64は、キャピラリ交換ユニット5の搬送駆動部523に制御信号G64を出力する。取替制御部65は、キャピラリ交換ユニット5の取替駆動部532に制御信号G65を出力する。
【0077】
コントローラ6は、機能的な構成要素として、カメラ制御部66と、検知センサ制御部67と、を有する。カメラ制御部66は、カメラ41によって取得された平面画像、立面画像を画像処理する。その結果、各部のXYZ方向の位置が検出される。
【0078】
検知センサ制御部67は、キャピラリ交換ユニット5に設けられた複数の検知センサ50Sから検知データを受ける。例えば、検知センサ50Sは、キャピラリ交換ユニット5の内部において順次搬送される使用済みキャピラリ243E及び交換用キャピラリ243Tが所定の位置に存在することを確認する。コントローラ6は、使用済みキャピラリ243E及び交換用キャピラリ243Tが所定の位置に存在することが確認された後に、次の動作に移行する。
【0079】
<キャピラリを交換する方法>
図13に示すコントローラ6の機能構成要素によって、以下に説明するキャピラリを交換する方法が実行される。以下の説明では、コントローラ6によってキャピラリを交換する方法が実行される様子を詳細に説明する。図14のフローチャートは、キャピラリを交換する方法の主要な工程を示す。キャピラリを交換する方法を構成する主要な3つの工程については、図15図17図21にそれぞれ詳細に図示する。
【0080】
<キャピラリ交換の準備>
まず、コントローラ6は、キャピラリ交換の条件が満たされたか否かを判定する(S1)。コントローラ6は、キャピラリ交換の条件が満たされていないと判定したとき(S1:NO)、使用中のキャピラリ243を交換することなくボンディングを再開する(S5)。コントローラ6は、キャピラリ交換の条件が満たされていると判定したとき(S1:YES)、使用済みキャピラリ243Eを交換する動作(S2、S3、S4)に移行する。
【0081】
コントローラ6は、キャピラリ交換の準備を実行する(S2)。より詳細には、図15に示すように、まず、コントローラ6は、ボンディングを終了する(S21)。コントローラ6は、ボンディングモジュール24の円弧往復運動を停止させる制御信号D61aをZ軸駆動部25に出力する。
【0082】
次に、コントローラ6は、ストレートテイルを形成する(S22)。ストレートテイルとは、キャピラリ243の先端から突出するボンディングワイヤ12の一部分であって、その先端にボール122(図5(d)参照)が形成されていないものを言う。ボール122が形成されている場合には、ボンディングワイヤ12の先端をキャピラリ貫通孔243hに引き込むことができないが、ストレートテイルによれば、ボンディングワイヤ12の先端をキャピラリ貫通孔243hに引き込むことができる。つまり、ストレートテイルを形成するとは、ボール122を除去することであり、ボール122を除去する動作は、いわゆる捨てボンド動作と称される。
【0083】
まず、コントローラ6は、キャピラリ243を捨てボンドステージ15の上に移動させる(図16(a)、S221)。次に、コントローラ6は、上ワイヤクランパ28を開き、開いた下ワイヤクランパ27と共にキャピラリ243を下降させる。その結果、ボール122が捨てボンドステージ15に接合される。次に、コントローラ6は、上ワイヤクランパ28を閉じ、開いた下ワイヤクランパ27と共にキャピラリ243を上昇させる。次に、コントローラ6は、上ワイヤクランパ28を開き、下ワイヤクランパ27を閉じる。そして、コントローラ6は、閉じた下ワイヤクランパ27と共にキャピラリ243を上昇させる。その結果、ボンディングワイヤ12は、相対的に強度が低下している箇所で切断される。例えば、接合によって、ボール122とボンディングワイヤ12とが繋がっている首部の強度が低下しやすいので、この箇所においてボンディングワイヤ12が切断される。
【0084】
そして、コントローラ6は、使用済みキャピラリ243Eにボンディングワイヤ12の先端を引き込む(S23)。この工程S23は、図4を用いて説明した前述の[引き込み動作]である。
【0085】
<キャピラリの交換:S3>
まず、図17に示すように、コントローラ6は、サブベース23をキャピラリ交換ユニット5に向かって前進させる(S301、図16(b)及び図18(a)参照)。この動作によれば、キャピラリ243が捨てボンドステージ15の上から、キャピラリ交換ユニット5の上に移動する。次に、コントローラ6は、超音波ホーン242を下降させることにより、使用済みキャピラリ243Eをキャピラリ案内部55に挿入する(S302、図18(b)参照)。
【0086】
次に、コントローラ6は、解除ピン部511をピン挿入孔H2に差し込む(S303、図18(c)参照)。この動作では、解除ピン部511をピン挿入孔H2に差し込むだけであり、解除ピン部511を回転させることによるリリース動作は実行しない。従って、この動作では、キャピラリ243は、超音波ホーン242に拘束された状態である。次に、コントローラ6は、搬送キャリッジ521を上方に移動させる(S304、図18(d)参照)。その結果、搬送キャリッジ521にキャピラリ243が差し込まれる。キャピラリ243が差し込まれると、搬送キャリッジ521がキャピラリ243を保持した状態となる。次に、コントローラ6は、解除ピン部511を正回転させる(S305、図19(a)参照)。この工程S305は、図3を用いて説明した前述の[リリース動作]である。その結果、キャピラリ243は、超音波ホーン242に拘束された状態から解放された状態(リリース状態)となる。
【0087】
次に、コントローラ6は、搬送キャリッジ521を交換位置52Sから取替位置52Eまで移動させる(S306、図19(b)参照)。この工程S306は、図9を用いて説明した前述の[第1搬送動作]である。この工程S306の結果、使用済みキャピラリ243Eは、交換位置52Sから取替位置52Eに移動すると共に、使用済みキャピラリ243Eの姿勢は、Z軸を基準として角度が0度である交換姿勢、Z軸を基準として角度が90度である取替姿勢となる。
【0088】
次に、コントローラ6は、取替テーブル531を引き抜き方向に移動させる(S307、図19(c)参照)。この工程S307は、図11を用いて説明した前述の[引き抜き動作]である。次に、コントローラ6は、取替テーブル531を差し込み方向に移動させる(S308、図19(d)参照)。この工程S308は、図12を用いて説明した前述の[取替動作]である。これらの引き抜き動作(S307)及び取替動作(S308)の結果、第2位置において搬送キャリッジ521に保持されていた使用済みキャピラリ243Eが交換用キャピラリ243Tに取り替えられる。
【0089】
次に、コントローラ6は、搬送キャリッジ521を取替位置52Eから交換位置52Sまで移動させる(S309、図20(a)参照)。この工程S309は、図10を用いて説明した前述の[第2搬送動作]である。この工程S309の結果、交換用キャピラリ243Tは、取替位置52Eから交換位置52Sに移動すると共に、交換用キャピラリ243Tの姿勢は、Z軸を基準として角度が90度である取替姿勢からZ軸を基準として角度が0度である交換姿勢となる。上昇する交換用キャピラリ243Tは、キャピラリ案内部55によって超音波ホーン242のキャピラリ貫通孔243hに案内される。使用済みキャピラリ243Eをキャピラリ案内部55に接触させた状態として、使用済みキャピラリ243Eを超音波ホーン242から引き抜いているので、使用済みキャピラリ243Eの位置は、キャピラリ案内部55によって保存されていると言える。従って、使用済みキャピラリ243Eの位置を保存したキャピラリ案内部55によって案内される交換用キャピラリ243Tは、使用済みキャピラリ243Eの位置に対して正確に挿入することができる。同様に、使用済みキャピラリ243Eを引き抜く際には、ボンディングワイヤ12は何らの影響も受けない。従って、使用済みキャピラリ243Eと同じ位置となるように挿入される交換用キャピラリ243Tのキャピラリ貫通孔243hには、ボンディングワイヤ12の先端が導かれる。
【0090】
次に、コントローラ6は、解除ピン部511を逆回転させる(S310、図20(b)参照)。この逆回転によって、超音波ホーン242は、リリース状態からロック状態に切り替わる。その結果、交換用キャピラリ243Tが超音波ホーン242に固定される。次に、コントローラ6は、搬送キャリッジ521を所定の位置まで下降させる(S311、図20(c)参照)。そして、解除ピン部511をピン挿入孔H2から引き抜く(S312、図20(c)参照)。次に、コントローラ6は、超音波ホーン242を上昇させることにより、交換用キャピラリ243Tをキャピラリ案内部55から引き抜く(S313、図20(d)参照)。そして、コントローラ6は、サブベース23を後退させる(S314、図16(c)参照)。
【0091】
<ボンディングの準備:S4>
そして、コントローラ6は、図21に示すボンディングの準備を実行する(S4)。ボンディングを再開するための条件として、第1条件及び第2条件を設定してよい。第1条件は、キャピラリ243の先端から突出するボンディングワイヤ12の突き出し長さD2である。第2条件は、ボンディングワイヤ12の先端に形成されるボール122の形状である。工程S4では、第1条件及び第2条件を満たすボンディングワイヤ12を形成する。コントローラ6は、まず第1条件を満たす状態とし、第1条件が満たされた後に第2条件を満たす状態とする。
【0092】
まず、コントローラ6は、送り出し動作を実行する(S41)。この工程S41は、図5を用いて説明した前述の[送り出し動作]である。次に、コントローラ6は、突き出し長さ計測を実行する(S42)。この突き出し長さ計測は、図5に示すように、カメラ41と光学部品43とを用いて撮像した画像を用いてよい。コントローラ6は、画像を解析することによって、突き出し長さD2を得る。
【0093】
次に、コントローラ6は、ワイヤの突き出し長さD2が下限値より長いか否かを判定する(S43)。コントローラ6は、突き出し長さD2が下限値より長いと判定されない(S43:NO)、つまり突き出し長さD2が下限値より短いとき、送り出し動作(S44)を実行する。そして、コントローラ6は、再び突き出し長さ計測を実行する(S42)。一方、コントローラ6は、突き出し長さD2が下限値より長いと判定されたとき(S43:YES)、ボンディングワイヤ12の突き出し長さD2が上限値より短いか否かを判定する(S45)。
【0094】
コントローラ6は、突き出し長さD2が上限値より短いと判定されない(S45:NO)、つまり突き出し長さD2が上限値より長いとき、引き込み動作(S46)を実行する。そして、コントローラ6は、再び突き出し長さ計測を実行する(S42)。コントローラ6は、突き出し長さD2が上限値より短いと判定されたとき(S45:YES)、ボンディングの準備を完了する。
【0095】
つまり、コントローラ6が工程S42~S46を実行することによって、下限値以上であって上限値以下の範囲にある突き出し長さD2を得ることができる。
【0096】
次に、コントローラ6は、ボンディングワイヤ12の先端にボール122を形成する(S47)。コントローラ6は、ボンディングワイヤ12の先端を放電装置の放電領域に移動させる。そして、コントローラ6は、放電装置を動作させることにより、ボンディングワイヤ12の先端にボール122を形成する。次に、コントローラ6は、ボール122の形状が所定の条件を満たすか否かを判定する(S48)。この判定にも、カメラ41と光学部品43とを用いて撮像した画像を用いてよい。コントローラ6は、画像を解析することによって、ボール122の形状に関する情報を得る。
【0097】
コントローラ6は、ボール122の形状が条件を満たさないと判定したとき(S48:NO)、ボール122を再度形成する。具体的には、コントローラ6は、条件を満たさなかったボール122を捨てボンディング(S49)によって取り除く。そして、コントローラ6は、再び放電装置によってボール122を形成する。一方、コントローラ6は、ボール122の形状が条件を満たすと判定したとき(S48:YES)、ボンディングを再開する準備が整う。そして、コントローラ6は、ボンディングを再開する(S5)。
【0098】
<作用効果>
キャピラリ交換ユニット5は、超音波ホーン242から引き抜かれた使用済みキャピラリ243Eを所定の直線方向に沿って、交換位置52Sから取替位置52Eまで搬送すると共に、使用済みキャピラリ243Eに代えて超音波ホーン242に取り付けるための交換用キャピラリ243Tを所定の直線方向とは逆方向に取替位置52Eから交換位置52Sまで送りねじ機構によって搬送する搬送モジュール52と、搬送モジュール52の取替位置52E側に設けられ、使用済みキャピラリ243Eを交換用キャピラリ243Tに取り替える取替モジュール53と、を備える。
【0099】
このキャピラリ交換ユニット5によれば、超音波ホーン242から使用済みキャピラリ243Eを引き抜くと共に超音波ホーン242に交換用キャピラリ243Tを取り付ける交換位置52Sから、使用済みキャピラリ243Eを交換用キャピラリ243Tに取り替える取替位置52Eまでの搬送の態様を、一軸の移動とすることができる。従って、サイズの大型化を抑制しながらキャピラリ243の自動交換機能を付与することができる。
【0100】
搬送モジュール52は、超音波ホーン242から引き抜かれた使用済みキャピラリ243E及び超音波ホーン242に差し込まれる交換用キャピラリ243Tを、超音波ホーン242に取り付けられているときの使用済みキャピラリ243Eの軸線に沿って移動させる搬送動作と、取替位置52Eが超音波ホーン242から引き抜かれた使用済みキャピラリ243Eを超音波ホーン242に差し込まれる交換用キャピラリ243Tに取り替えるための位置として定義され、取替位置52Eに位置する使用済みキャピラリ243E及び交換用キャピラリ243Tの取替姿勢が、超音波ホーン242に取り付けられているときの使用済みキャピラリ243Eの交換姿勢とは異なるように、使用済みキャピラリ243E及び交換用キャピラリ243Tを回転させる回転動作と、を実行する。
この構成によれば、取替位置52Eにおいて使用済みキャピラリ243Eを交換用キャピラリ243Tに取り替えるための構成を簡易にすることができる。
【0101】
搬送モジュール52は、使用済みキャピラリ243Eを交換位置52Sから取替位置52Eに移動させる搬送動作が開始された後であって、搬送動作が継続している期間中に、取替位置52Eに位置する使用済みキャピラリ243Eが取替姿勢となるように使用済みキャピラリ243Eを回転させる回転動作を実行する。
この構成によれば、交換位置52Sの近傍において使用済みキャピラリ243Eの移動が軸線に沿うので、使用済みキャピラリ243Eの移動経路をコンパクトにすることができる。
【0102】
搬送モジュール52は、交換用キャピラリ243Tを取替位置52Eから交換位置52Sに移動させる搬送動作と、取替姿勢である交換用キャピラリ243Tが交換姿勢となるように交換用キャピラリ243Tを回転する回転動作と、を同時に開始する。
この構成によれば、取替位置52Eの近傍において使用済みキャピラリ243Eの姿勢を交換姿勢から取替姿勢に変更することができる。
【0103】
上記のキャピラリ交換ユニット5において、取替姿勢であるときの使用済みキャピラリ243Eの軸線と交換姿勢であるときの使用済みキャピラリ243Eの軸線とのなす角度は、90度である。
この構成によっても、取替位置52Eにおいて使用済みキャピラリ243Eを交換用キャピラリ243Tに取り替えるための構成を簡易にすることができる。
【0104】
ワイヤボンディング装置1は、超音波ホーン242と、超音波ホーン242に着脱可能に取り付けられるキャピラリ243と、キャピラリ243を交換するキャピラリ交換ユニット5と、を備える。キャピラリ交換ユニット5は、超音波ホーン242から引き抜かれた使用済みキャピラリ243Eを所定の直線方向に沿って、交換位置52Sから取替位置52Eまで搬送すると共に、使用済みキャピラリ243Eに代えて超音波ホーン242に取り付けるための交換用キャピラリ243Tを所定の直線方向とは逆方向に取替位置52Eから交換位置52Sまで搬送する搬送モジュール52と、搬送モジュール52の取替位置52E側に設けられ、使用済みキャピラリ243Eを交換用キャピラリ243Tに取り替える取替モジュール53と、を備える。
【0105】
このワイヤボンディング装置1は、上記のキャピラリ交換ユニット5を備えている。従って、超音波ホーン242から使用済みキャピラリ243Eを引き抜くと共に超音波ホーン242に交換用キャピラリ243Tを取り付ける交換位置52Sから、使用済みキャピラリ243Eを交換用キャピラリ243Tに取り替える取替位置52Eまでの搬送の態様を、送りねじ機構による一軸の移動とすることができる。従って、キャピラリ交換ユニット5の配置に要する領域をコンパクトにすることが可能であるから、キャピラリ243の自動交換機能の追加に伴うワイヤボンディング装置1の大型化を抑制できる。
【0106】
<変形例>
以上、本発明であるキャピラリ交換機構及びワイヤボンディング装置の例示について説明したが、キャピラリ交換機構及びワイヤボンディング装置は、上記実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0107】
1…ワイヤボンディング装置、5…キャピラリ交換ユニット(キャピラリ交換機構)、41…カメラ、52…搬送モジュール、52S…交換位置、52E…取替位置、53…取替モジュール、122…ボール、242…超音波ホーン(ホーン)、243…キャピラリ、243E…使用済みキャピラリ、243h…キャピラリ貫通孔、243T…交換用キャピラリ、A…軸線。
【要約】
【課題】サイズの大型化を抑制しながらキャピラリの自動交換機能を付与する。
【解決手段】キャピラリ交換ユニット5は、超音波ホーン242から引き抜かれた使用済みキャピラリ243Eを所定の直線方向に沿って、交換位置52Sから取替位置52Eまで搬送すると共に、使用済みキャピラリ243Eに代えて超音波ホーン242に取り付けるための交換用キャピラリ243Tを所定の直線方向とは逆方向に取替位置52Eから交換位置52Sまで搬送する搬送モジュール52と、搬送モジュール52の取替位置52E側に設けられ、使用済みキャピラリ243Eを交換用キャピラリ243Tに取り替える取替モジュール53と、を備える。
【選択図】図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21