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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】髪の毛検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/90 20060101AFI20241002BHJP
   G01N 21/89 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
G01N21/90 D
G01N21/89 T
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2024009257
(22)【出願日】2024-01-25
【審査請求日】2024-02-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521082008
【氏名又は名称】株式会社日本選別化工
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾野 令奈
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-151613(JP,A)
【文献】特開2017-111085(JP,A)
【文献】特開2010-008339(JP,A)
【文献】特開2020-112367(JP,A)
【文献】特開2021-177754(JP,A)
【文献】特表2008-541007(JP,A)
【文献】特開2012-189390(JP,A)
【文献】特開2023-044154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼリー状食品が充填され、封止前のシールがない状態でプラスチック容器を搬送するコンベアと、
内面に反射面が形成され、頂部に撮像用の窓が形成され、内部に複数のバンドの近赤外光を出射可能なLEDが配置され、あらかじめ設定されたバンドの近赤外線を前記プラスチック容器に向けて照射するドーム型照明具手段と、
前記プラスチック容器のゼリー状食品からの近赤外光の反射光を受光して撮像する近赤外線カメラと、
前記近赤外線カメラで撮像した画像を解析し、あらかじめ特定しておいた髪の毛のグレースケール値の画素が所定の個数分検出されると、髪の毛であると認識する異物検出手段と、
前記コンベアの搬送方向の端部に設けられ、前記異物検出手段によって髪の毛が検出された前記プラスチック容器を良品テーブルとは別の不良品テーブルに排出する仕分け装置と、が備えられ、
前記ドーム型照明具手段に設定される近赤外線のバンドは、事前に髪の毛を付着させたゼリー状食品で試験を行ない、1450nm~1650nmの中から選定され、
前記仕分け装置は、前記プラスチック容器を受け止める受け止め部を備えた仕分け板と、前記仕分け板を良品テーブル側及び不良品テーブル側に傾くように回動させる回動軸と、前記回動軸を前記コンベアと直交する方向にスライドさせるスライド機構と、を備えていることを特徴とする髪の毛検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、髪の毛検査装置に関し、具体的には、プラスチック容器に充填されたゼリー状食品の表面に付着した髪の毛を検出し、取り除くことができる髪の毛検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼリー状食品である例としてコーヒーゼリーに付着した髪の毛は、両者に明暗差(コントラスト)がなく、目視では区別しにくい。色彩選別機を使用しても茶色の同色系であり区別するのが難しい。
【0003】
特許文献1には、近赤外光を使用した青果物検査装置が示される。みかんに照射した近赤外光による近赤外画像と、紫外線の照射による蛍光画像を得て、みかんの見えにくい痛んだ部分を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-59775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ゼリー状食品の表面に付着した髪の毛を検出できる髪の毛検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による髪の毛検査装置は、ゼリー状食品が充填され、封止前のシールがない状態でプラスチック容器を搬送するコンベアと、内面に反射面が形成され、頂部に撮像用の窓が形成され、内部に複数のバンドの近赤外光を出射可能なLEDが配置され、設定されたバンドの近赤外線を前記プラスチック容器に向けて照射するドーム型照明具手段と、前記プラスチック容器のゼリー状食品ーからの近赤外光の反射光を受光して撮像する近赤外線カメラと、前記近赤外線カメラで撮像した画像を解析して、ゼリー状食品の表面に付着した髪の毛を抽出する異物検出手段と、前記コンベアの搬送方向の端部に設けられ、前記異物検出手段によって髪の毛が検出された前記プラスチック容器を良品テーブルとは別の不良品テーブルに排出する仕分け装置と、が備えられることを特徴とする。
【0007】
前記ドーム型照明具手段に設定される近赤外線のバンドは、事前に髪の毛を付着させたゼリー状食品で試験を行ない、1450nm~1650nmの中から選定されることを特徴とする。
【0008】
前記仕分け装置は、前記プラスチック容器を振り分ける受止め部付きの仕分け板と、前記仕分け板を回動させる回動軸を備え、前記回動軸は前記コンベアと直交する方向にスライドすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明による髪の毛検査装置は、ゼリー状食品が充填され、封止前のシールがない状態でプラスチック容器を搬送するコンベアと、設定されたバンドの近赤外線をプラスチック容器に向けて照射するドーム型照明具手段と、近赤外線カメラで撮像した画像を解析して、ゼリー状食品の表面の髪の毛を抽出する異物検出手段と、を設けたので、近赤外線での撮像は、髪の毛とゼリー状食品は含水量が異なり、画素のコントラスト(濃淡)が異なるので、髪の毛を容易に判別できる。また、ゼリー状食品に髪の毛が付着したプラスチック容器は、仕分け装置により良品テーブルとは別の不良品テーブルに排出するので、髪の毛の検出でコンベアを停止させることがなく、後処理が容易である。
【0010】
ドーム型照明具手段に設定される近赤外線のバンドは、髪の毛とゼリー状食品のコントラストが際立つ1450nm~1650nmとしたので、髪の毛の画素の濃淡であるグレースケール値を事前に把握しておくことで、ゼリー状食品の表面の髪の毛の画素を特定することができる。
【0011】
仕分け装置は、プラスチック容器を振り分ける受止め部付きの仕分け板と、仕分け板を回動させる回動軸を備え、回動軸をコンベアと直交する方向にスライドするように構成したので、髪の毛のないプラスチック容器を通常テーブルに排出し、髪の毛の付着したプラスチック容器を異物テーブルに排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による髪の毛検査装置の構成図である。
図2】ドーム型照明手段の内部構成図である。
図3】ドーム型照明手段に備えられるLED示す図である。
図4】仕分け装置の斜視図である。
図5】仕分け装置の動作を示す図である。
図6】プラスチック容器のコーヒーゼリーを撮像した画像である。
図7】プラスチック容器のコーヒーゼリーを撮像した画像である。
図8】プラスチック容器のコーヒーゼリーを撮像した画像である。
図9】プラスチック容器のコーヒーゼリーを撮像した画像である。
図10】髪の毛が付着したコーヒーゼリーのプラスチック容器を近赤外線の異なるバンドで撮像し、髪の毛のグレースケール値を事前に把握する手順を示すフローチャートである。
図11】プラスチック容器に充填されたコーヒーゼリーを髪の毛検査装置で検査する時の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明による髪の毛検査装置を詳しく説明する。
【0014】
図1は、本発明による髪の毛検査装置100の構成図である。髪の毛検査装置100は、ゼリー状食品であるコーヒーゼリー2が充填され、封止前のシールがない状態でプラスチック容器1を搬送するコンベア3を備える。プラスチック容器1は、例として高さが約8cm、上部の直径が約8cmである。コンベア3には、例として100個/分が投入でき、一定の間隔を空けて搬送される。コーヒーゼリー2が充填されたプラスチック容器1に向けて、ドーム型照明具手段4から近赤外光が照射され、近赤外線カメラ6によって撮像される。
【0015】
ドーム型照明具手段4は、複数のバンド(波長)での近赤外光を発光するため、バンドの異なる複数のLED光源を備える。運転中はあらかじめ設定された近赤外光のバンドのLED光源が使用される。近赤外線カメラ6は、エリアカメラで、画素数は例として640画素×512画素を有する。プラスチック容器1のコーヒーゼリー2からの近赤外光の反射光を受光して撮像する。近赤外線カメラ6の感度波長域は、例として700nm~1700nmである。ドーム型照明具手段4は、電源5から給電される。近赤外線カメラ6で撮像した画像は、異物検出手段7に送られて解析される。異物検出手段7にはPCが使用できる。異物検出手段7は撮像した画像内に、コーヒーゼリー2の表面に付着した髪の毛がないか画像処理により検査する。
【0016】
図1に示すように、コンベア3の搬送方向の端部には、仕分け装置25が設けられる。異物検出手段7によって髪の毛30が検出されたプラスチック容器1は、不良品テーブル9に排出される。髪の毛30が検出されなかったプラスチック容器1は良品テーブル8に排出される。プラスチック容器1は、仕切り板19によって良品テーブル8又は不良品テーブル9の方向に押し出される。
【0017】
図2は、ドーム型照明手段4の内部構成図である。ドーム型照明手段4は、内面に反射面が形成され、頂部に撮像用の窓4aが形成される。内部に複数のバンドの近赤外光を出射可能な近赤外光のLED10が配置される。
【0018】
図3は、ドーム型照明手段4に備えられるLED10を示す図である。複数のバンドでの発光を行なうため、LED10は8種類からなる。850nmのバンドのLED10、9400nmのバンドのLED10、1050nmのバンドのLED10、1200nmのバンドのLED10、1300nmのバンドのLED10、1450nmのバンドのLED10、1550nmのバンドのLED10、1650nmのバンドのLED10からなる。それぞれが電源5から給電され、スイッチSW1~SW8をオンオフすることで点灯と滅灯ができる。
【0019】
図4は、仕分け装置25の斜視図である。仕分け装置25は、プラスチック容器1を振り分ける受止め部19a付きの仕分け板19と、仕分け板19を回動させる回動軸20を備える。回動軸20はコンベア3と直交する方向にスライドする。スライドさせる機構は、例としてラックとピニオンで実現できる。
【0020】
図5は、仕分け装置25の動作を示す図である。図5(A)は、仕分け板19でプラスチック容器1を不良品テーブル9に排出する動作である。(a)の段階では、仕分け板19が右に傾いて初期状態となっている。右に傾けるのは、次のプラスチック容器1を不良品テーブル9に排出することが判明した時点で行なう。プラスチック容器1がコンベア3で搬送されて来ると、プラスチック容器1を受止め部19aで受け止め、スライド機構21で回動軸20が左方向にスライドされる。同時に仕分け板19が反時計回りに回動する。この回動は仕分け板19の延長部(図示せず)が、回動軸20の反対側に伸びており、ストッパに当接することで行える。スライド機構21で回動軸20が左方向にスライドされると、(b)に示すように、プラスチック容器1が不良品テーブル9に向かって移動する。さらに回動軸20がスライドされると、(c)に示すように、プラスチック容器1が不良品テーブル9に押し出される。
【0021】
図5(B)は、仕分け板19でプラスチック容器1を良品テーブル8に排出する動作である。(a)の段階では、仕分け板19が左に傾いて初期状態となっている。左に傾けるのは、次のプラスチック容器1を良品テーブル8に排出することが判明した時点で行なう。プラスチック容器1がコンベア3で搬送されて来ると、プラスチック容器1を受止め部19aで受け止め、スライド機構21で回動軸20が右方向にスライドされる。同時に仕分け板19が時計回りに回動する。この回動は仕分け板19の延長部(図示せず)が、回動軸20の反対側に伸びており、ストッパに当接することで行える。回動軸20が右方向にさらにスライドされると、(b)に示すように、プラスチック容器1が良品テーブル8に向かって移動する。さらに回動軸20がスライドされると、(c)に示すように、プラスチック容器1が良品テーブル8に押し出される。
【0022】
図6図9は、プラスチック容器1のコーヒーゼリー2を撮像した画像である。髪の毛30は、コーヒーゼリー2の表面に置いた。近赤外光のバンド850nm、940nm、1050nmで撮像した画像は、コーヒーゼリー2も髪の毛30も灰色である。画素のグレースケール値は灰色を示す値になる。なお、髪の毛30の含水量は約10重量%で、コーヒーゼリー2の含水量は約80~90重量%である。中央の丸い影は、コーヒーゼリー2の表面に写ったドーム型照明手段4の頂部の窓4aの影である。近赤外光のバンド1200nmで画像した画像は、図7に示すように、コーヒーゼリー2が近赤外光を吸収してやや暗く写る。
【0023】
図8に示すように、近赤外光のバンド1300nmで撮像した画像は、やや白く写るが、近赤外光のバンド1450nmで撮像した画像は、コーヒーゼリー2の水分が近赤外光を吸収して暗く写る。図9に示すように、近赤外光のバンド1550nm、1650nmで撮像した画像は、さらに暗く写る。髪の毛30の画像は、近赤外光のバンド1450nmでも灰色で、近赤外光のバンド1550nm、1650nmで撮像した画像でも暗く写るが、コーヒーゼリー2よりは白い。このように、コーヒーゼリー2はバンド1450nm付近から暗く写り、一方、髪の毛30はあまり暗く写らないので画像に濃淡差が出て、髪の毛30の画素がコーヒーゼリー2の画素と識別可能になる。コーヒーゼリーは含水量が80~90%と多く、近赤外線の1450nm付近で近赤外光の吸収が増えるが、髪の毛は含水量が10%程度で、水分が少ないので、1450nmではまだ灰色である。
【0024】
図10は、髪の毛30が付着したコーヒーゼリー2のプラスチック容器1を近赤外線の異なるバンドで撮像し、髪の毛30のグレースケール値を事前に把握する手順を示すフローチャートである。各バンドの画像から髪の毛30のグレースケール値と、コーヒーゼリー2のグレースケール値の差が大きい、つまり濃淡差が大きいバンドを選択する。例としてバンド1450nmを選択する。本番の時は、ドーム型照明手段4のスイッチSW6をオンとし、バンド1450nmで撮像し、この画像の中に事前に把握した髪の毛30のグレースケール値がないか異物検出手段7で検査する。
【0025】
図11は、プラスチック容器1に充填されたコーヒーゼリー2を髪の毛検査装置100で検査する時の動作フローチャートである。例として近赤外光のバンド1450nmを選択する。S54に示すように、撮像した画像の全画素を解析する。全画素数は、例として、327,680画素(=640画素×512画素)の検査となる。100mm×100mmを撮像した場合、1画素は約0.03mm(=100mm×100mm÷327,680画素)の面積となる。長さが20mmで太さが0.1mmの髪の毛30は、面積にして2mmなので、所定の灰色の画素が全部で66画素が検出されることになる。S58に示すように、髪の毛30の画素が所定数見つかった場合は、プラスチック容器1はS60に示すように、不良品テーブル9に送られる。髪の毛30の画素が見つからなかった場合は、S59に示すように、良品テーブル8に送られる。
【0026】
本実施例では、近赤外光のバンド1450nmを選択し、ドーム型照明手段4にバンド1450nmを設定し、1450nmで撮像した画像の中に、髪の毛の灰色と同じ画素がないかを検査した。ドーム型照明手段4をコンベア3の上に2台設け、一方のドーム型照明手段4にバンド1450nmを設定し、他方のドーム型照明手段4にバンド1650nmを設定し、1650nmで撮像した画像の中に、髪の毛の灰色と同じ画素がないかを検査してもよい。髪の毛の灰色を2つのバンドで確認するので、より確実な判定ができる。なお、実施例をコーヒーゼリーで説明したが、これに限らず、プリン、ゼリー状にヨーグルトがプラスチック容器に充填されたゼリー状食品にも同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、プラスチック容器に充填されたゼリー状食品の表面に付着した髪の毛を検出し取り除くことができる髪の毛検査装置として好適である。
【符号の説明】
【0028】
1 プラスチック容器
1a カップの縁
2 コーヒーゼリー
3 コンベア
4 ドーム型照明手段
4a 窓
5 電源(照明用)
6 近赤外線カメラ
7 異物検出手段(PC)
8 良品テーブル(髪の毛なし)
9 不良品テーブル(髪の毛あり)
10 LED(近赤外光の光源)
19 仕分け板
19a 受止め部
20 回動軸
21 スライド機構
25 仕分け装置
30 髪の毛
31 (ドーム型照明手段の)窓の影
100 髪の毛検査装置
SW1~SW8 バンド(波長)切り替えのスイッチ
【要約】
【課題】ゼリー状食品の表面に付着した髪の毛を検出できる髪の毛検査装置を提供する。
【解決手段】ゼリー状食品が充填され、封止前のシールがない状態でプラスチック容器を搬送するコンベアと、内面に反射面が形成され、頂部に撮像用の窓が形成され、内部に複数のバンドの近赤外光を出射可能なLEDが配置され、あらかじめ設定されたバンドの近赤外線を前記プラスチック容器に向けて照射するドーム型照明具手段と、プラスチック容器のゼリー状食品からの近赤外光の反射光を受光して撮像する近赤外線カメラと、近赤外線カメラで撮像した画像を解析して、ゼリー状食品の表面に付着した髪の毛を抽出する異物検出手段と、コンベアの搬送方向端部に設けられ、異物検出手段によって髪の毛が検出されたプラスチック容器を良品テーブルとは別の不良品テーブルに排出する仕分け装置と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11