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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】壁用構造体
(51)【国際特許分類】
   E01F 8/00 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
E01F8/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024055067
(22)【出願日】2024-03-28
【審査請求日】2024-03-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511080638
【氏名又は名称】株式会社日本コンポジット工業
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176658
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】赤水 清
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】和田 承
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ ミョウ ナイン ウイン
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-071071(JP,A)
【文献】特開2013-068018(JP,A)
【文献】実開平06-053615(JP,U)
【文献】実開昭56-121706(JP,U)
【文献】実開昭59-144022(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に直交する第2方向において対向する第1辺及び第2辺を有するとともに、前記第1辺及び前記第2辺を繋いでおり前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向において対向する第3辺及び第4辺を有する第1板部と、
前記第1辺に繋がっている天板部と、
前記第2辺に繋がっている底板部と、
前記第3辺に繋がっている第1側板部と、
前記第4辺に繋がっている第2側板部と、
前記第1方向において前記第1板部と対向しており、前記天板部、前記底板部、前記第1側板部及び前記第2側板部に繋がっている第2板部と、
前記第1板部及び前記第2板部間において所定方向に並列に配置される複数のインナーリブと、
を備え、
前記所定方向は前記第2方向又は第3方向であり、
前記複数のインナーリブそれぞれは、前記第1板部及び前記第2板部のうちの一方に一体的に接合されている一方、他方には接合されていない、
壁用構造体。
【請求項2】
前記複数のインナーリブの前記第1方向の長さは、前記第1板部と前記第2板部の間の長さより短い、
請求項1に記載の壁用構造体。
【請求項3】
前記複数のインナーリブは、前記第1板部に一体的に接合されている一方、前記第2板部には接合されておらず、
前記複数のインナーリブは、前記第2板部を前記第1板部と反対向けて湾曲させるように前記第2板部に接している、
請求項1に記載の壁用構造体。
【請求項4】
前記複数のインナーリブは、
前記第1板部に一体的に接合されている一方、前記第2板部には接合されていない複数の第1インナーリブと、
前記第2板部に一体的に接合されている一方、前記第1板部には接合されていない複数の第2インナーリブと、
を有し、
前記複数の第1インナーリブと前記複数の第2インナーリブは互いに接していない、
請求項1に記載の壁用構造体。
【請求項5】
第1方向に直交する第2方向において対向する第1辺及び第2辺を有するとともに、前記第1辺及び前記第2辺を繋いでおり前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向において対向する第3辺及び第4辺を有する第1板部と、
前記第1辺に繋がっている天板部と、
前記第2辺に繋がっている底板部と、
前記第3辺に繋がっている第1側板部と、
前記第4辺に繋がっている第2側板部と、
前記第1方向において前記第1板部と対向しており、前記天板部、前記底板部、前記第1側板部及び前記第2側板部に繋がっている第2板部を備え、
前記第2板部は、前記第1板部と反対に向けて湾曲している、壁用構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁用構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両走行時の騒音が外部に伝播することを抑制するために、鉄道、道路等に沿って防音壁が設けられている。このような防音壁の一例として、特許文献1,2に開示されたFRP製の壁用構造体が知られている。上記壁用構造体は、対向配置された第1板及び第2板を有する中空ボックス構造を有する。壁用構造体を防音壁として設置する場合、第1板が車両などの走行側(例えば、道路側又は線路側)に配置される。この場合、壁用構造体が有する第2板は、上記走行側と反対側に配置される。特許文献1,2に記載の壁用構造体では、第1板と第2板との間には、複数のインナーリブが配置されている。各インナーリブの一端は第1板に一体的に接合され、他端は第2板に一体的に接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-71071号公報
【文献】特開2013―68018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に記載されたFRP製の壁用構造体が防音壁として設置される場合、直射日光、周囲環境温度などによって、第1板及び第2板に熱膨張が生じる。第1板及び第2板は複数のインナーリブで連結されているため、インナーリブと第1板及び第2板それぞれとの接合部では上記熱膨張による伸びが生じにくい一方、第1板及び第2板のうち隣接するインナーリブ間の領域は熱膨張で伸びやすい。その結果、第1板及び第2板に波打ちが生じる。道路、線路などと反対側に位置する第2板に上記波打ちが生じると、夕日などが第2板にあたった時に、第2板が波打っていることが強調されやすく、壁用構造体の外観が低下する。
【0005】
本発明は、外観の低下を防止可能な壁用構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に一側面に係る壁用構造体(以下、「第1壁用構造体」と称す)は、第1方向に直交する第2方向において対向する第1辺及び第2辺を有するとともに、上記第1辺及び上記第2辺を繋いでおり上記第1方向及び上記第2方向に直交する第3方向において対向する第3辺及び第4辺を有する第1板部と、上記第1辺に繋がっている板部と、上記第2辺に繋がっている底板部と、上記第3辺に繋がっている第1側板部と、上記第4辺に繋がっている第2側板部と、上記第1方向において上記第1板部と対向しており、上記天板部、上記底板部、上記第1側板部及び上記第2側板部に繋がっている第2板部と、上記第1板部及び上記第2板部の間において所定方向に並列に配置される複数のインナーリブを備え、上記所定方向は上記第2方向又は第3方向であり、上記複数のインナーリブそれぞれは、上記第1板部及び上記第2板部のうちの一方に一体的に接合されている一方、他方には接合されていない。
【0007】
上記第1壁用構造体が有する複数のインナーリブそれぞれは、第1板部及び第2板部のうちの一方に一体的に接合されている一方、他方には接合されていない。したがって、第1板部及び第2板部は、各インナーリブによって連結(又は固定)されていない。そのため、直射日光、周囲環境温度などの影響で第1板部及び第2板部に熱膨張が生じても、第1板部及び第2板部それぞれは一様に熱膨張し易い。この場合、第1板部及び第2板部に波打ちが生じにくい。すなわち、上記構成の壁用構造体では、外観の低下が防止されている。
【0008】
一実施形態に係る第1壁用構造体において、複数のインナーリブの第1方向の長さは、第1板部と第2板部の間の長さより短くてもよい。
【0009】
一実施形態に係る第1壁用構造体において、複数のインナーリブは、第1板部に一体的に接合されている一方、第2板部には接合されておらず、複数のインナーリブは、第2板部を第1板部と反対向けて湾曲させるように第2板部に接していてもよい。この場合、第2板部は、第1板部と反対に向けて湾曲していることから、第2板部が熱膨張する場合も第1板部と反対向きに膨張し易い。そのため、上記のように、複数のインナーリブが第2板部に接していても第2板部に波打ちは生じにくく、結果として、外観の低下を防止できる。
【0010】
一実施形態に係る第1壁用構造体において、複数のインナーリブは、第1板部に一体的に接合されている一方、上記第2板部には接合されていない複数の第1インナーリブと、第2板部に一体的に接合されている一方、上記第1板部には接合されていない複数の第2インナーリブと、を有し、複数の第1インナーリブと上記複数の第2インナーリブは互いに接していなくてよい。
【0011】
本発明に係る壁用構造体の他の例(以下、「第2壁用構造体」と称す)は、第1方向に直交する第2方向において対向する第1辺及び第2辺を有するとともに、上記第1辺及び上記第2辺を繋いでおり上記第1方向及び上記第2方向に直交する第3方向において対向する第3辺及び第4辺を有する第1板部と、上記第1辺に繋がっている天板部と、上記第2辺に繋がっている底板部と、上記第3辺に繋がっている第1側板部と、上記第4辺に繋がっている第2側板部と、上記第1方向において上記第1板部と対向しており、上記天板部、上記底板部、上記第1側板部及び上記第2側板部に繋がっている第2板部と、を備え、上記第2板部は、上記第1板部と反対に向けて湾曲している。
【0012】
第2壁用構造体が有する第1板部及び第2板部は、例えば、それらの間に配置された複数のインナーリブで連結(又は固定)されていない。そのため、直射日光、周囲環境温度などの影響で第1板部及び第2板部に熱膨張が生じても、第1板部及び第2板部に波打ちは生じにくい。更に、第2板部は、第1板部に対して反対側に湾曲しているため熱膨張が生じても第2板部は第1板部と反対に向けて熱膨張し易いので、第2板部に波打ちは更に発生しにくい。よって、第2壁用構造体においても外観の低下が防止されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、外観の低下を防止可能な壁用構造体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第1実施形態に係る壁用構造体の斜視図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図3は、図1のIII―III線に沿った断面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る壁用構造体の施工例を示す斜視図である。
図5図5は、変形例1に係る壁用構造体の断面図である。
図6図6は、変形例2に係る壁用構造体の断面図である。
図7図7は、変形例3に係る壁用構造体の断面図である。
図8図8は、第2実施形態に係る壁用構造体の斜視図である。
図9図9は、図8に示したXI―XI線に沿った断面図である。
図10図10は、第3実施形態に係る壁用構造体の斜視図である。
図11図11は、図10に示した壁用構造体を天板部側からみた図面である。
図12図12は、図10のXII-XIIに沿った断面図である。
図13図13は、壁用構造体の他の例を示す斜視図である。
図14図14は、壁用構造体の更に他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態として、壁用構造体について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る壁用構造体の斜視図である。図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。図3は、図1のIII―III線に沿った断面図である。壁用構造体1の説明において、図1図3に示した互いに直交するX方向(第3方向)、Y方向(第1方向)及びZ方向(第2方向)を使用する場合もある。Y方向は、壁用構造体1における奥行き方向に対応し、X方向は、壁用構造体1における幅方向に対応し、Z方向は、壁用構造体1における高さ方向に対応する。
【0017】
壁用構造体1は、例えば、車両が走行する道路、線路などに対して設置される防音壁に使用される。壁用構造体1の外形は略直方体状を呈する。壁用構造体1の大きさは用途に応じて設定される。例えば、壁用構造体1が上記防音壁に使用される場合、X方向(幅方向)の長さの例は、500mm以上且つ2000mm以下であり、Y方向(奥行き方向)の長さの例は、30mm以上且つ750mm以下であり、Z方向(高さ方向)の長さの例は、500mm以上且つ5000mm以下である。
【0018】
壁用構造体1は、第1板部11、第2板部12、天板部13、底板部14、第1側板部15及び第2側板部16を備えている。以下の説明において方向を示す「上」は、底板部14に対して天板部13側を意味し、「下」は、天板部13に対して底板部14側を意味する。
【0019】
第1板部11の外面は、壁用構造体1の正面側の面を構成している。Y方向からみた第1板部11の形状は長方形である。第1板部11は、第1辺11a、第2辺11b、第3辺11c及び第4辺11dを有する。壁用構造体1が上記防音壁として設置される場合、第1板部11側が道路、線路などに面するように壁用構造体1が設置される。この場合、第1板部11の外面は、壁用構造体1において軌道面を構成する。第1板部11の厚さの例は、0.25mm以上且つ5mm以下である。
【0020】
第1辺11aは、第1板部11の上辺である。第1辺11aには天板部13が一体的に設けられている。天板部13は、天板部13の板厚方向がZ方向に一致するように配置されている。天板部13の厚さの例は0.25mm以上且つ5mm以下である。
【0021】
第2辺11bは、第1板部11の下辺である。第2辺11bは、Z方向において第1辺11aと反対に位置する。第2辺11bには、底板部14が一体的に設けられている。底板部14は、底板部14の板厚方向がZ方向に一致するように配置されている。底板部14は、天板部13と対向する。底板部14の厚さの例は、0.25mm以上且つ5mm以下である。
【0022】
第3辺11c及び第4辺11dは、第1辺11a及び第2辺11bを繋ぐ側辺である。第3辺11cには、第1側板部15が一体的に設けられている。第1側板部15は、天板部13及び底板部14を繋いでいる。第4辺11dは、X方向において第3辺11cと反対に位置する。第4辺11dには、第2側板部16が一体的に設けられている。第2側板部16は、X方向において第1側板部15と対向している。第2側板部16は、天板部13及び底板部14を繋いでいる。第1側板部15及び第2側板部16の厚さの例は、0.25mm以上且つ5mm以下である。
【0023】
天板部13、底板部14、第1側板部15及び第2側板部16における第1板部11と反対側には、第2板部12が固定されている。Y方向からみた第2板部12の形状は長方形である。第2板部12の外面(第1板部11と反対の面)は、背面側の面を構成する。前述したように、壁用構造体1が上記防音壁として設置され且つ第1板部11の外面が軌道面を構成する場合、第2板部12の外面は民地面を構成する。
【0024】
第1実施形態において、第1板部11は、第1辺11aを含む第1領域111と、第2辺11bを含む第2領域112を有する。第1領域111は、第1領域111の板厚方向がY方向(奥行き方向)に一致するように配置されている。第2領域112は、第1領域111の下端部から下方に向かうにつれて第2板部12との間の距離が広くなるように傾斜している。よって、第2領域112は、第1板部11において傾斜部を構成している。
【0025】
上記第1板部11が第2領域112を有することから、図2に示されているように、Y方向に沿った底板部14の長さはY方向に沿った天板部13の長さより長い。Y方向に沿った第1側板部15及び第2側板部16の長さは、第2領域112の傾斜に伴って底板部14に向けて広くなっている。
【0026】
壁用構造体1には、X方向に沿って離散的に複数の取付部20が形成されている。図1には、3つの取付部20を備えた壁用構造体1を例示しているが、取付部20の数は3っつに限定されず、1つ又は2つでもよいし、4つ以上でもよい。
【0027】
取付部20の位置では、底板部14の一部が露出するように、第2領域112に開口部21が形成されている。開口部21は、第1板部11の第2辺11bから第1領域111の下端部に向けて形成されている。開口部21は、切り欠き部と称すこともできる。第2領域112の板厚方向からみて、開口部21は長方形である。開口部21は、第2辺11bと反対の上辺21aと、X方向に沿って対向する一対の側辺21b、21bを有する。
【0028】
図2に示したように、上辺21aから第2板部12に向けて傾斜板22が形成されている。傾斜板22の傾斜角度の一例は、水平面に対して30°以上且つ60°以下である。傾斜板22の厚さの例は、0.25mm以上且つ5mm以下である。
【0029】
X方向における取付部20の両端には、一対の側板23,23が設けられている。一対の側板23は、側板23の板厚方向がX方向に一致するように、開口部21と底板部14と傾斜板22との間に形成されている。すなわち、取付部20は、傾斜板22、一対の側板23及び開口部21によって構成されている。側板23の厚さの例は、0.25mm以上且つ5mm以下である。
【0030】
底板部14における取付部20の位置には、底板部14をZ方向に貫通する取付孔14aが形成されている。図2に示したように、Y方向に離間した2つの取付孔14aが各取付部20に形成されている。取付孔14aの数は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。取付孔14aは、壁用構造体1を躯体などの固定部に取り付けるために用いられる。
【0031】
図1及び図3に示したように、壁用構造体1の第2板部12側におけるX方向の両端部のうち第1側板部15側には、第2側板部16と反対に向けて張り出すフランジ31が形成されている。フランジ31は、第1側板部15に形成されたフランジ151と、第2板部12のうちフランジ151を覆うフランジ領域121とによって形成されている。フランジ31は、第2板部12のみによって形成されていてもよい。
【0032】
壁用構造体1の第2板部12側におけるX方向の両端部のうち第2側板部16側には、第2板部側から第1板部11側に凹む受止凹部32が形成されている。受止凹部32は、Z方向において、底板部14に対応する位置から、天板部13に対応する位置まで延在している。受止凹部32を形成するため、天板部13及び底板部14のうち受止凹部32に対応する部分は第1板部11に向けて凹んだ段差が形成されており、第2板部12のうち受止凹部32に対応する部分は、第1板部11に向けて突出した段差が形成されており、更に、第2側板部16のY方向の長さは、第1側板部15のY方向の長さより短い。
【0033】
図1図3に示したように、壁用構造体1は、壁用構造体1内に複数のインナーリブ17を備える。複数のインナーリブ17は、第1板部11と第2板部12の間に配置されている。複数のインナーリブ17は、所定方向に沿って並列に配置されている。第1実施形態において、所定方向はX方向である。第1実施形態では、断らない限り、第1板部11の第1領域111と第2板部12のうち第1領域111に対向する領域との間に複数のインナーリブ17が配置されている形態を説明する。
【0034】
インナーリブ17の一例を説明する。図2に示したように、インナーリブ17は、X方向からみた形状が長方形である板状部材であり、Z方向に延在している。インナーリブ17の厚さ(図3におけるX方向の長さ)の例は、0.25mm以上且つ5mm以下である。
【0035】
インナーリブ17は、第1板部11に一体的に接合されている一方、第2板部12には接合されていない。図3に示したように、インナーリブ17のY方向の長さL1(mm)は、第1板部11と第2板部12の間の長さL2(mm)より短くてよい。この場合、第2板部12とインナーリブ17の間に隙間を確保できる。長さL2は、第2板部12においてフランジ31及び受止凹部32の以外の部分と、第1板部11の第1領域111との間の距離である。長さL2の例は、25mm以上且つ755mm以下である。複数のインナーリブ17の長さは同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0036】
図1では、4つのインナーリブ17を例示しているが、インナーリブ17の数は4つに限定されない。インナーリブ17は、第2板部12に接合(又は固定)されていなければ、第2板部12に接していてもよい。インナーリブ17は第1板部11側の端部にフランジを有してよい。第2板部12に接合されていなければ、インナーリブ17は第2板部12側の端部にフランジを有してよい。
【0037】
壁用構造体1において、インナーリブ17及び傾斜板22等に通気孔が形成されていてもよい。
【0038】
壁用構造体1は、連続繊維基材から形成されたFRP(Fiber Reinforced Plastics)製の部材によって構成される。具体的には、壁用構造体1が有する第1板部11、第2板部12、天板部13、底板部14、第1側板部15、第2側板部16、複数のインナーリブ17、傾斜板22及び一対の側板23は、連続繊維基材から形成されたFRP製の部材によって形成される。
【0039】
上記FRPの強化繊維として、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維などを単独で又は組み合わせて用いることができる。炭素繊維が含まれることによって、比強度・比剛性が向上し、これによって成形体の軽量化を一層図ることができる。
【0040】
強化繊維の形態としては、例えば、繊維長が1~3mmである短繊維やマット、連続繊維からなるクロス、ストランドなどを適宜組み合わせた基材が例示される。FRPとするためのマトリックス樹脂は特に限定しないが、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ABS(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン)、PEEK(ポリ・エーテル・エーテル・ケトン)、ポリイミドなどの熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0041】
上記FRPを成形する成形方法では、マトリックス樹脂を用いることができ、あるいは強化繊維の形態によっては、FRPは、真空、ブロー、スタンピング、BMC(バルク・モールディング・コンパウンド)、SMC(シート・モールディング・コンパウンド)、トランスファー成形、RTM(レジン・トランスファー・モールディング)、ハンドレイアップ成形などの様々な成形方法を用いて容易に成形することができる。
【0042】
さらに、充填材に、粘性を増すための粉体(例えば、炭酸カルシウムや砂等)の他、層状化合物(例えば、マイカ、二硫化モリブデン、窒化硼素など)、針状化合物(例えば、ゾノトライト、チタン酸カリ、炭素繊維など)、粒状、又はシート状化合物(例えば、フェライト、タルク、クレーなど)を添加することによって、無機物結晶同士又は無機物とマトリックスとの相互運動による摩擦熱への変換がなされ、充填材(フィラー)を充填することによって弾性率と密度が増大し、振動に対する抵抗が増し、制振特性が向上する。これにより、第1実施形態の壁用構造体1は、列車運行時の高架橋、道路橋桁上等として用いれば振動を低減することができる。充填材に、例えば、水酸化アルミニウム、臭素、無機質粉などを添加すると難燃性を向上させることができるので、このような壁用構造体1は、その鉄道難燃性により鉄道高欄用などを構築するのに好適である。
【0043】
図4は、第1実施形態に係る壁用構造体1の施工例を示す斜視図である。壁用構造体1を施工する場合、複数の壁用構造体1を躯体40に対してX方向に配置する。この際、隣接する壁用構造体1の一方のフランジ31を他方の受止凹部32に対して対向配置する。隣接する壁用構造体1の一方のフランジ31は、他方の壁用構造体1の受止凹部32と嵌め合い可能な構成となっている。具体的には、フランジ31及び受止凹部32は、フランジ31及び受止凹部32を対向配置した状態で、それらの対向面が当接可能な構成とされている。
【0044】
防音壁としての壁用構造体1では、フランジ31と受止凹部32との当接部において、音の回析が起こり、騒音低減効果が発揮されている。図示しないが、一般的には、隣接する壁用構造体1の重ね合わせ部において、Y方向(奥行き方向)の隙間には、Z方向(高さ方向)に延在するクッションパッキンが装着され、軌道内で発生する音の漏れを防いでいる。
【0045】
図4に示すように、壁用構造体1は取付手段によって躯体40に取り付けられる。この取付手段は、取付先の躯体40から立ち上がるボルト41、このボルト41に嵌められるナット51、及びこのナット51を締め付けたときの支圧圧力を分散させるために使用される金属製の座板52を備える構成とされている。座板52は、板厚方向からみて、例えば、長方形に形成されている。座板52には、板厚方向に貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔にボルト41が挿通される。壁用構造体1を躯体40に取り付ける場合、ボルト41を、取付部20の取付孔14a及び上記座板52の貫通孔に通した後、ナット51でボルト41を締める。これにより、壁用構造体1が上記取付手段によって躯体40に取り付けられる。
【0046】
上記壁用構造体1は、例えば、次のようにして製造される。
【0047】
壁用構造体1において、FRPを用いて第1板部11、天板部13、底板部14、第1側板部15及び第2側板部16並びに複数の取付部20それぞれを構成する傾斜板22及び一対の側板23を有する中間体を一体成形する。上記中間体は、壁用構造体1において、複数のインナーリブ17及び第2板部12を有しない部分である。中間体の段階では、複数の取付孔14aは形成されていない。FRPを用いて複数のインナーリブ17を成形する。FRPを用いて第2板部12を成形する。
【0048】
中間体が有する第1板部11に複数のインナーリブ17を所定位置に配置した後、オーバーレイによって複数のインナーリブ17と中間体(具体的には第1板部11)を一体化する。上記所定位置は、図1及び図3に示したインナーリブ17の配置位置でよい。
【0049】
複数のインナーリブ17が一体化された上記中間体において、第1板部11と反対側に第2板部12を配置して、上記中間体に第2板部12を接合する。接合は、FRPを用いた成形技術において公知の方法によって実施され得る。その後、取付孔14aを穿孔することによって壁用構造体1が得られる。
【0050】
壁用構造体1では、第1板部11と第2板部12との間に複数のインナーリブ17が配置されている。インナーリブ17は、第1板部11に一体的に接合されている一方、第2板部12には接合されていない。これにより、壁用構造体1の外観の低下を防止できる。この点を、複数のインナーリブそれぞれが第1板部11及び第2板部12の両方に一体的に接合されている参考例と比較して説明する。
【0051】
参考例では、第1板部11と第2板部12の間に配置される複数のインナーリブそれぞれが第1板部11及び第2板部12の両方に一体的に接合されている。このような参考例に係る壁用構造体を防音壁として屋外に設置する。この際、第1板部11の外面及び第2板部12の外面が前述したように軌道面及び民地面であるように壁用構造体を設置する。壁用構造体が屋外に設置されている場合、直射日光、周囲環境温度の影響などで第1板部11及び第2板部12に熱膨張が生じる。インナーリブによって第1板部11及び第2板部12が連結(又は固定)されているので、上記熱膨張が生じてもインナーリブの位置で第1板部11及び第2板部12の熱膨張は阻害される一方、隣接するインナーリブ間では第1板部11及び第2板部12の熱膨張は阻害されない。そのため、第1板部11及び第2板部12に波打ちが生じる。具体的には、各インナーリブとの接合位置で窪んでいる一方、隣接するインナーリブ間で膨らみが生じることによって、第1板部11及び第2板部12の外面に凹凸構造が形成される。その結果、参考例の壁用構造体の外観が低下する。特に、車両が走行する道路、線路などに対して反対に位置する第2板部12は、壁用構造体の設置箇所の周囲を生活圏とする人々に視認されるため外観の低下が目立ち易い。例えば、夕日が第2板部12に当たると、第2板部12の波打ち状態が目立つので、壁用構造体の外観が低下し、壁用構造体の機能には影響がないにもかかわらず、あたかも壁用構造体が劣化していうように認識されるおそれがある。
【0052】
これに対して、第1実施形態に係る壁用構造体1では、インナーリブ17は、第1板部11に一体的に接合されている一方、第2板部12には接合されていない。そのため、第1板部11及び第2板部12に熱膨張が生じても、参考例の場合のように、膨張が阻害される部分が生じにくい。その結果、第1板部11及び第2板部12において変形が可能な領域(天板部13,底板部14等に固定されていない領域)は一様に膨張するので、参考例で説明したような波打ちが生じにくい。その結果、壁用構造体1では外観の低下を防止できている。特に、第1板部11の外面及び第2板部12の外面が前述したように軌道面及び民地面であるように壁用構造体1を設置した場合において、第2板部12側からみた場合の外観の低下を防止できる。
【0053】
図3に示したように、インナーリブ17の長さL1が、第1板部11及び第2板部12の間の長さL2より短い場合、インナーリブ17と第2板部12との間に隙間が生じる。これにより、第2板部12が仮に熱膨張したとしても膨張が更に阻害されにくい。その結果、第2板部12側からみた外観の低下がより防止される。
【0054】
インナーリブ17が第2板部12と接していても、それらが接合されていなければ、第2板部12の熱膨張は阻害されない。そのため、第2板部12側からみた外観の低下がより防止される。
【0055】
インナーリブ17は、第1板部11に一体的に接合されているため、壁用構造体1の強度(特に、第1板部11又は第1板部11側の部分)を補強できている。
【0056】
壁用構造体1がFRPによって構成されている場合、壁用構造体1の軽量化が図れている。FRPは、直射日光、周囲環境温度等によって上記熱膨張の影響が生じやすいので、壁用構造体1の構成は有効である。
【0057】
次に、第1実施形態の壁用構造体1に対する変形例を説明する。
【0058】
(変形例1)
図5は、変形例1に係る壁用構造体の断面図である。変形例1に係る壁用構造体を壁用構造体1Aと称す。図5は、第1実施形態における図3に示した断面図に対応する位置での壁用構造体1Aの断面図である。
【0059】
壁用構造体1Aにおいて、複数のインナーリブ17は、第2板部12に一体的に接合されている一方、第1板部11には接合されていない。変形例1におけるインナーリブ17の構成は、第1実施形態のインナーリブ17と同じである。壁用構造体1Aの構成は、上記複数のインナーリブ17の配置形態が異なる点以外は、壁用構造体1の構成と同じである。
【0060】
壁用構造体1Aは、例えば、次のようにして製造される。第1実施形態で説明した壁用構造体1を製造する場合と同様にして、第1実施形態で説明した中間体、複数のインナーリブ17及び第2板部12を成形する。複数のインナーリブ17を第2板部12の所定位置に配置したのち、オーバーレイによって第2板部12に一体化する。上記所定位置は、図5に示したインナーリブ17の配置位置である。その後、複数のインナーリブ17が一体化された第2板部12を、上記中間体に接合する。次いで、取付孔14aを穿孔することによって、壁用構造体1Aが得られる。
【0061】
壁用構造体1Aでは、複数のインナーリブ17は、第2板部12に一体的に接合されている一方、第1板部11には接合されていない。そのため、壁用構造体1の場合と同様に、各インナーリブ17の位置で、第1板部11及び第2板部12の熱膨張が阻害されない。また、壁用構造体1Aの構成は、上記複数のインナーリブ17の配置形態が異なる点以外は、壁用構造体1の構成と同じである。その結果、壁用構造体1Aは、壁用構造体1の場合と同様の作用効果を有する。
【0062】
壁用構造体1Aでは、インナーリブ17は、第2板部12には一体的に接合されているため、壁用構造体1Aの強度(特に、第2板部12の部分)を補強できている。
【0063】
(変形例2)
図6は、変形例2に係る壁用構造体の断面図である。変形例2に係る壁用構造体を壁用構造体1Bと称す。図6も、第1実施形態における図3に示した断面図に対応する位置での壁用構造体1Bの断面図である。
【0064】
図6に示したように、複数のインナーリブ17は、第1板部11に一体的に接合されている一方、第2板部12には接合されていない複数の第1インナーリブ17Aと、第2板部12に一体的に接合されている一方、第1板部11には接合されていない複数の第2インナーリブ17Bを有する。複数の第1インナーリブ17A及び複数の第2インナーリブ17Bは、互いに接しないように配置されている。
【0065】
第1インナーリブ17A及び第2インナーリブ17Bの構成は、第1実施形態におけるインナーリブ17の構成と同じである。壁用構造体1Bの構成は、上記複数のインナーリブ17が上記複数の第1インナーリブ17A及び複数の第2インナーリブ17Bを有する点以外は、壁用構造体1の構成と同じである。
【0066】
壁用構造体1Bは、例えば、次のようにして製造される。第1実施形態で説明した壁用構造体1を製造する場合と同様にして、第1実施形態で説明した中間体及び第2板部12を成形する。変形例2では、複数の第1インナーリブ17A及び複数の第2インナーリブ17Bを成形する。その後、複数の第1インナーリブ17Aを、上記中間体が有する第1板部11に配置した後にオーバーレイによって第1板部11に一体化するとともに、複数の第2インナーリブ17Bを第2板部12に配置した後にオーバーレイによって第2板部12に一体化する。続いて、複数の第1インナーリブ17Aが一体化された第1板部11を含む上記中間体と、複数の第2インナーリブ17Bが一体化された第2板部12を接合する。その後、取付孔14aを形成することによって、壁用構造体1Bが得られる。
【0067】
壁用構造体1Bは、第1板部11に一体的に接合されている一方、第2板部12には接合されていない複数の第1インナーリブ17Aと、第2板部12に一体的に接合されている一方、第1板部11には接合されていない複数の第2インナーリブ17Bを有する。第1インナーリブ17A及び第2インナーリブ17Bは互いに接していない。この構成の壁用構造体1Bは、第1実施形態の構成と変形例1の構成を組み合わせた形態に対応する。よって、壁用構造体1Bは、壁用構造体1,1Aと同様の作用効果を有する。
【0068】
(変形例3)
図7は、変形例3に係る壁用構造体の断面図である。変形例3に係る壁用構造体を壁用構造体1Cと称す。図7も、第1実施形態における図3に示した断面図に対応する位置での壁用構造体1Cの断面図である。
【0069】
変形例3において、複数のインナーリブ17は、第1実施形態の場合と同様に、第1板部11に一体的に固定されている一方、第2板部12には固定されていない。
【0070】
変形例3における複数のインナーリブ17のY方向の長さは、第2板部12を緩やかに外側(第1板部11と反対側)に向けて湾曲させる長さである。複数のインナーリブ17によって第2板部12が湾曲するため、インナーリブ17のY方向の長さは、インナーリブ17を設けない場合の第1板部11と第2板部12との間の距離より長い。上記インナーリブ17を設けない場合の第1板部11と第2板部12との間の距離は、図3に示した長さL2である。
【0071】
一例において、複数のインナーリブ17のY方向の長さは、第2板部12が所定の曲率半径で湾曲する長さである。所定の曲率半径の例は、約12500mm以上且つ約50000mm以下である。変形例3では、複数のインナーリブ17によって第2板部12が湾曲するため、複数のインナーリブ17は、第2板部12に接する。しかしながら、前述したように、複数のインナーリブ17は、第2板部12に一体的に接合されてない。
【0072】
変形例3に係る壁用構造体1Cの構成は、上記複数のインナーリブ17の長さが壁用構造体1の場合と異なる点及びそれによって第2板部12が湾曲している点以外は、壁用構造体1の構成と同じである。壁用構造体1Cは、複数のインナーリブ17を上記のように第2板部12を湾曲させる長さを有するように成形する点以外は、第1実施形態に係る壁用構造体1の場合と同様にして製造される。
【0073】
壁用構造体1Cでは、上記のように、複数のインナーリブ17は、第2板部12に接するが、第2板部12に一体的に接合されてない。そのため、第1実施形態の参考例において説明したような、第1板部11及び第2板部12の熱膨張を阻害する箇所が生じにくい。よって、壁用構造体1Cは、壁用構造体1の場合と同様の作用効果を有する。
【0074】
第2板部12は、第1板部11及びインナーリブ17と反対に向けて湾曲している。この場合、第2板部12は第1板部11及びインナーリブ17と反対に向けた力が作用しやすいので、熱膨張する場合も第1板部11及びインナーリブ17と反対に膨張し易い。そのため、第2板部12の熱膨張がインナーリブ17の位置で阻害されることは実質的にない。よって、第2板部12側からみた壁用構造体1Cの外観の低下をより確実に防止できる。
【0075】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係る壁用構造体の斜視図である。図9は、図8に示したXI―XI線に沿った断面図である。
【0076】
第2実施形態に係る壁用構造体1Dは、複数のインナーリブ17がインナーリブ17の板厚方向がZ方向に一致するように配置されている点で、第1実施形態に係る壁用構造体1と相違する。この相違点以外の壁用構造体1Dの構成は、壁用構造体1の場合と同じである。
【0077】
図8及び図9に示した形態では、複数のインナーリブ17は、第1板部11に一体的に接合されている一方、第2板部12に一体的に接合されていない複数の第1インナーリブ17Cと、第2板部12に一体的に接合されている一方、第1板部11に一体的に接合されていない複数の第2インナーリブ17Dを有する。複数の第1インナーリブ17Cは所定方向に並列に配置されており、複数の第2インナーリブ17Dも所定方向に並列に配置されている。第2実施形態において所定方向はZ方向である。第1インナーリブ17C及び第2インナーリブ17DのY方向の長さは、第1板部11と第2板部12の間の長さより短い。第1インナーリブ17C及び第2インナーリブ17DのY方向の長さは、第1板部11と第2板部12の間の長さと同じでもよい。
【0078】
壁用構造体1Dは、例えば、次のようにして製造される。第1実施形態で説明した壁用構造体1を製造する場合と同様にして、第1実施形態で説明した中間体及び第2板部12を成形する。第2実施形態では、複数の第1インナーリブ17C及び複数の第2インナーリブ17Dを成形する。その後、複数の第1インナーリブ17Cを、上記中間体が有する第1板部11に配置した後にオーバーレイによって第1板部11に一体化するとともに、複数の第2インナーリブ17Dを第2板部12に配置した後にオーバーレイによって第2板部12に一体化する。続いて、複数の第1インナーリブ17Cが一体化された第1板部11を含む上記中間体と、複数の第2インナーリブ17Dが一体化された第2板部12を接合する。その後、取付孔14aを形成することによって、壁用構造体1Dが得られる。
【0079】
壁用構造体1Dにおいても、複数の第1インナーリブ17Cは第1板部11に一体的に接合されている一方、第2板部12に一体的に接合されておらず、複数の第2インナーリブ17Dは、第2板部12に一体的に接合されている一方、第1板部11に一体的に接合されていない。更に、第1インナーリブ17Cと第2インナーリブ17Dは接していない。そのため、第1実施形態の参考例において説明したような、第1板部11及び第2板部12の熱膨張を阻害する箇所が生じにくい。よって、壁用構造体1Dは、壁用構造体1の場合と同様の作用効果を有する。
【0080】
第2実施形態において、複数のインナーリブ17のすべてが第1インナーリブ17Cであってもよい。すなわち、壁用構造体1Dが有する複数のインナーリブ17のすべてが、第1板部11に一体的に接合されている一方、第2板部12に接合されていないように、第1板部11及び第2板部12の間に配置されていてもよい。このように、複数のインナーリブ17のすべてが第1インナーリブ17Cである場合、複数のインナーリブ17は、第1実施形態に対する変形例3で説明したように、第2板部12を第1板部11と反対に向けて湾曲させる長さを有してよい。この場合、第2板部12は、X方向からみて第1板部11と反対に向けて湾曲している。
【0081】
第2実施形態において、複数のインナーリブ17のすべてが第2インナーリブ17Dであってもよい。すなわち、壁用構造体1Dが有する複数のインナーリブ17のすべてが、第2板部12に一体的に接合されている一方、第1板部11に接合されていないように、第1板部11及び第2板部12の間に配置されていてもよい。
【0082】
(第3実施形態)
図10は、第3実施形態に係る壁用構造体の斜視図である。図11は、図10に示した壁用構造体1Eを天板部13側からみた図面である。図12は、図10のXII-XII線に沿った断面図である。
【0083】
壁用構造体1Eは、複数のインナーリブ17を有しない点及び第2板部12が第1板部11と反対に向けて湾曲している点で、第1実施形態に係る壁用構造体1と相違する。上記相違点以外の壁用構造体1Eの構成は、壁用構造体1の構成と同じである。
【0084】
壁用構造体1Eは、例えば、次のようにして製造される。第1実施形態で説明した壁用構造体1を製造する場合と同様にして、第1実施形態で説明した中間体を成形する。第3実施形態では、図10及び図11に示したように湾曲した第2板部12を成形する。その後、第2板部12が第1板部11と反対に湾曲しているように第2板部12を上記中間体に配置した後、それらを接合する。その後、取付孔14aを穿孔することによって、壁用構造体1Eが得られる。
【0085】
壁用構造体1Eは、第1実施形態において参考例として説明したように第1板部11及び第2板部12に固定されたインナーリブを、第1板部11と第2板部12との間に有しない。そのため、直射日光などで第1板部11及び第2板部12が熱膨張する場合でも、第1板部11及び第2板部12において熱膨張を阻害する箇所が生じない。この場合、第1板部11及び第2板部12に波打ちが生じにくいので、壁用構造体1Eの外観の低下を防止できている。更に、第2板部12は、第1板部11と反対に向けて外側に湾曲しているため、第2板部12に熱膨張が生じる場合、外側に向けて膨張し易い。その結果、第2板部12に波打ちが生じることが更に抑制されている。その結果、壁用構造体1Eでは、第2板部12側からみた場合の外観の低下が一層防止できている。
【0086】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態の具体例を説明した。上記実施形態は、本発明の一例であり、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される範囲が含まれることが意図されるとともに、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0087】
例えば、上記種々の実施形態及び変形例では、壁用構造体が有する第1板部は、第1領域と第1領域に対して傾斜した第2領域を有していた。しかしながら、図13に示した壁用構造体1Fのように、第1板部11は、第2領域を有しなくてもよい。換言すれば、第1板部11は、壁用構造体1Fの下部において第2板部12と反対に向けて傾斜した領域を有しなくてもよい。
【0088】
図14は、壁用構造体の他の変形例の斜視図である。図14に示した壁用構造体1Gは、図1に示した第2領域112、フランジ31及び受止凹部32を有しない壁用構造体1Gである。よって、壁用構造体1Gにおいて、第1板部11及び第2板部12のX方向の長さは同じである。壁用構造体1Gは、第1板部11と第2板部12の間に、例えば壁用構造体1,1A,1B,1C,1Dの場合と同様にインナーリブ17が設けられていてもよい。壁用構造体1Gが、壁用構造体1Cの場合と同様にインナーリブ17を有する場合、壁用構造体1Gの第2板部12は、壁用構造体1Cの場合において説明したように、湾曲してよい。壁用構造体1Eの場合と同様にインナーリブ17を有さずに、第2板部12が湾曲していてもよい。
【0089】
壁用構造体1Gは、図14に示したように、例えば、Z方向において、2つの壁用構造体1Gが組み合わされるに構成されていてよい。2つの壁用構造体1Gのうちの一方を第1壁用構造体1G1と称し、他方を第2壁用構造体1G2と称する。この場合、第1壁用構造体1G1の底板部14及び第2壁用構造体1G2の天板部13は嵌め合わされるように構成されていてよい。図14に例示した形態では、X方向からみた場合に、第1壁用構造体1G1の底板部14は凸部141と凹部142を有し、第2壁用構造体1G2の天板部13は凸部131と凹部132を有する。凸部131は、凹部142に嵌まり、凸部141は、凹部132に嵌まるように形成されている。凸部141と凹部142を含む底板部14を有する第1壁用構造体1G1において、第2板部12のZ方向の長さは、第1板部11のZ方向の長さより長く、第1壁用構造体1G1は下部に段差を有する。凸部131と凹部132を含む天板部13を有する第2壁用構造体1G2において、第1板部11のZ方向の長さは、第2板部12のZ方向の長さより長く、第2壁用構造体1G2は上部に段差を有する。
【0090】
図14に例示した壁用構造体1Gの構成例は、2つの壁用構造体1G(第1壁用構造体1G1及び第2壁用構造体1G2)が組み合わされる場合の構成例であるが、壁用構造体1Gは、例えば、3つ以上の壁用構造体1Gが組み合わされるように構成されていてもよい。この場合、例えば、Z方向の両端以外の壁用構造体1Gの天板部13及び底板部14は、隣接する壁用構造体1Gの底板部14及び天板部13と嵌まるように構成されており、最上部に位置する壁用構造体1Gの底板部14は隣接する壁用構造体1Gの天板部13と嵌まりあうように構成されており、最下部に位置する壁用構造体1Gの天板部13は隣接する壁用構造体1Gの底板部14と嵌まりあうように構成されていればよい。
【0091】
第3実施形態では、インナーリブを有しない形態を説明したが、第3実施形態で説明した壁用構造体においても、第1実施形態、第2実施形態などと同様にインナーリブを有していてもよい。
【0092】
壁用構造体の材料は、FRPに限定されない。熱膨張が生じやすい材料で壁用構造体が形成されている場合、本発明は有効である。
【0093】
壁用構造体は、図1に示したフランジ31及び受止凹部32を有しなくてもよい。壁用構造体は鉄道用の高欄や道路等に設けられる防音壁(又は遮音壁)の他、建築現場の騒音に対する遮音壁などに適用できる。更に、壁用構造体は、防音壁又は遮音壁の他、防風柵、浸水防止壁、落雪防止柵等にも適用できる。
【0094】
上記種々の実施形態及び変形例は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1G1,1G2…壁用構造体
11…第1板部
11a…第1辺
11b…第2辺
11c…第3辺
11d…第4辺
111…第1領域
112…第2領域
12…第2板部
121…フランジ領域
13…天板部
131…凸部
132…凹部
14…底板部
14a…取付孔
141…凸部
142…凹部
15…第1側板部
151…フランジ
16…第2側板部
17…インナーリブ
17A,17C…第1インナーリブ
17B,17D…第2インナーリブ
20…取付部
21…開口部
21a…上辺
21b…側辺
22…傾斜板
23…側板
31…フランジ
32…受止凹部
40…躯体
41…ボルト
51…ナット
52…座板


【要約】
【課題】外観の低下を防止可能な壁用構造体を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る壁用構造体は、第1板部と、天板部と、底板部と、第1側板部と、第2側板部と、第1板部と対向しており天板部、底板部、第1側板部及び第2側板部に接合される第2板部と、第1板部及び第2板部の間において所定方向に並列に配置される複数のインナーリブと、を備え、複数のインナーリブそれぞれは、第1板部及び第2板部のうちの一方に一体的に接合されている一方、他方には接合されていない。
【選択図】図3

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14