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特許7564594再生材料含有コンテナ、及び再生材料含有コンテナの製造方法
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  • 特許-再生材料含有コンテナ、及び再生材料含有コンテナの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】再生材料含有コンテナ、及び再生材料含有コンテナの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/00 20060101AFI20241002BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B29C45/00
C08J5/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024079596
(22)【出願日】2024-05-15
(62)【分割の表示】P 2023122701の分割
【原出願日】2023-07-27
【審査請求日】2024-05-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】市野 勝久
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-305981(JP,A)
【文献】特開2016-64668(JP,A)
【文献】特開平7-171831(JP,A)
【文献】特開2017-137465(JP,A)
【文献】特開平7-52159(JP,A)
【文献】特開平7-214558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/00-11/14
B29B 13/00-15/06
B29C 31/00-31/10
B29C 37/00-37/04
B29C 45/00-45/24
B29C 45/46-45/63
B29C 45/70-45/72
B29C 45/74-45/84
B29C 71/00-71/02
C08J 5/00-5/02
C08J 5/12-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン樹脂からなるバージン材料に、ポリプロピレン樹脂を含有する再生材料を混合した灰色の混合材料を射出成形する再生材料含有コンテナの製造方法であって、
前記バージン材料に前記再生材料を混合する混合工程を備え、
前記混合工程では、有機過酸化物を添加するとともに、酸化チタンが2質量%以上10質量%以下となるように添加して改質した前記再生材料を混合し、メルトフローレイトが40g/10min以上、アイゾット衝撃値が8.0kJ/m以上である前記混合材料を調製することを特徴とする再生材料含有コンテナの製造方法。
【請求項2】
前記混合工程では、有機過酸化物が0.2質量%以上1.5質量%以下となるように添加して改質した前記再生材料を混合することを特徴とする請求項1に記載の再生材料含有コンテナの製造方法。
【請求項3】
前記混合工程では、酸化チタンが2質量%以上10質量%以下となるように添加して改質した前記再生材料を混合することにより、前記混合材料の比重が0.91g/cm以上1.02g/cm以下となるようにすることを特徴とする請求項2に記載の再生材料含有コンテナの製造方法。
【請求項4】
前記再生材料は明度を表すL値が31以上35以下であり、
前記混合工程では、酸化チタンが2質量%以上6質量%以下となるように添加して改質した前記再生材料を混合することを特徴とする請求項1に記載の再生材料含有コンテナの製造方法。
【請求項5】
ポリプロピレン樹脂からなるバージン材料と、ポリプロピレン樹脂を含有する改質再生材料とが混合されてなる灰色の再生材料含有コンテナであって、酸化チタンを0.2質量%以上5.0質量%以下含有するとともに、比重が0.91g/cm以上1.02g/cm以下であり、明度を表すL値が35以上65未満の灰色であり、曲げ弾性率が1100MPa以上、アイゾット衝撃値が8.0kJ/m以上であることを特徴とする再生材料含有コンテナ。
【請求項6】
メルトフローレイトが40g/10min以上であることを特徴とする請求項5に記載の再生材料含有コンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂のバージン材料に再生材料を混合してなる再生材料含有コンテナ、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場で使用する部品を仕分けして収容したり、店舗で販売する製品を仕分けして収容したりするためのコンテナが知られている。こうしたコンテナを、金型内に溶融樹脂を射出して冷却硬化させる射出成形法で成形する場合がある。
【0003】
特許文献1には、固定金型及び可動金型を使用してコンテナを射出成形する一体成形型容器成形方法に係る発明が記載されている。特許文献1では、コンテナの軽量化、薄肉化の要請に応じて薄肉のコンテナを成形する際、キャビティ内での樹脂の流れに偏りが生じないように、樹脂ゲートを側壁及び底壁に複数配設することが記載されている。これは、樹脂の流動性と、成形品の強度を確保するためである。つまり、薄肉化の要請により狭くなったキャビティ内での樹脂の流動性を確保するためには、樹脂のメルトフローレイトを大きくする必要があるが、メルトフローレイトを大きくすると、成形品の強度が確保し難いといった問題があるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5557485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年の環境問題への高まりから、コンテナを成形する材料として、廃棄された樹脂材料からなる再生材料を使用することが要望されている。しかし、再生材料は一般的にメルトフローレイトが小さくなる。そのため、バージン材料に再生材料を混合して射出成形すると、バージン材料と再生材料との間でメルトフローレイトに差が生じて均一な流動性が得られないことがある。均一な流動性が得られないと、両者の間の相溶性が良好でない。そのため、成形品の強度に影響を及ぼすことが考えられる。
【0006】
また、再生材料を混合した混合材料全体のメルトフローレイトも小さくなるため、金型内での混合材料の流動性が悪くなる。これによっても成形品の強度が低下してしまうことが考えられる。特に、軽量化のために薄肉化したコンテナを成形する場合には、混合材料の流動性の影響は顕著である。このように、メルトフローレイトを大きくしつつ、成形品の強度を確保するといった問題は、再生材料を使用した再生材料含有コンテナにも共通する。
【0007】
また、再生材料には、雑多な樹脂材料が混入することから、その色調が黒くなる。通常のバージン材料で成形した灰色のコンテナと同様の色調が得られないと、種々の色調のコンテナが混在することになって使いづらい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の再生材料含有コンテナの製造方法は、ポリプロピレン樹脂からなるバージン材料に、ポリプロピレン樹脂を含有する再生材料を混合した灰色の混合材料を射出成形する再生材料含有コンテナの製造方法であって、前記バージン材料に前記再生材料を混合する混合工程を備え、前記混合工程では、有機過酸化物を添加するとともに、酸化チタンが2質量%以上10質量%以下となるように添加して改質した前記再生材料を混合し、メルトフローレイトが40g/10min以上、アイゾット衝撃値が8.0kJ/m以上である前記混合材料を調製する。
【0009】
上記構成において、前記混合工程では、有機過酸化物が0.2質量%以上1.5質量%以下となるように添加して改質した前記再生材料を混合することが好ましい。
上記構成において、前記混合工程では、酸化チタンが2質量%以上10質量%以下となるように添加して改質した前記再生材料を混合することにより、前記混合材料の比重が0.91g/cm以上1.02g/cm以下となるようにすることが好ましい。
【0010】
上記構成において、前記再生材料は明度を表すL値が31以上35以下であり、前記混合工程では、酸化チタンが2質量%以上6質量%以下となるように添加して改質した前記再生材料を混合することが好ましい。
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明の再生材料含有コンテナは、ポリプロピレン樹脂からなるバージン材料と、ポリプロピレン樹脂を含有する改質再生材料とが混合されてなる灰色の再生材料含有コンテナであって、酸化チタンを0.2質量%以上5.0質量%以下含有するとともに、比重が0.91g/cm以上1.02g/cm以下であり、明度を表すL値が36以上65未満であり、曲げ弾性率が1100MPa以上、アイゾット衝撃値が8.0kJ/m以上である。
【0012】
上記の構成において、メルトフローレイトが40g/10min以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、強度に優れるとともに、バージン材料で成形した成形品と同程度の明度である灰色の再生材料含有コンテナが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施形態のコンテナの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した一実施形態の再生材料含有コンテナについて説明する。
本実施形態の再生材料含有コンテナ1(以下、コンテナ1という。)は、例えば、組立工場で使用する部品を規格ごとに仕分けして収容するために使用する。
【0016】
<コンテナ1について>
図1に示すように、コンテナ1は、底壁11と4つの側壁12とからなり、25cm×50cm×25cm程度の大きさの直方体形状の箱体である。側壁12の上部は、上方に開口する開口部を形成している。底壁11の底面には、リブ13で補強された凸部14が6箇所に形成されている。6箇所の凸部14はすべて同一形状で同一の大きさである。凸部14の間には、直交するように延びる凹溝15が形成されている。凹溝15の幅は同一である。
【0017】
本実施形態のコンテナ1は、モジュール化して使用可能なコンテナ1である。複数のコンテナ1を段積みすることが可能であり、また、サイズの異なる大小のコンテナ1を段積みすることも可能であるように構成されている。サイズの異なるコンテナ1の場合、例えば、立方体形状の箱体であって、底壁11の底面には、同一形状で同一の大きさの凸部14が4箇所形成されている。なお、コンテナ1の底壁11の縦横の長さ比は6.0倍程度までであることが好ましい。コンテナ1をモジュール化して使用するために、凸部14には四角形状のリブ13群が形成されている。また、モジュール化して使用するために、色調が統一されている必要がある。
【0018】
複数のコンテナ1を段積みする際には、上側となるコンテナ1の底壁11の外周に沿って延びる凹溝15に、下側となるコンテナ1の側壁12の上端部が嵌合する。また、凹溝15が直交するように延びていることから、複数のコンテナ1を水平方向にずらして段積みすることも可能である。
【0019】
コンテナ1は、側壁12の壁厚が比較的薄い、いわゆる薄型コンテナである。側壁12の壁厚は、1.7~2.9mm程度であることが好ましく、1.9~2.5mm程度であることがより好ましい。側壁12を補強するために、側壁12には、上下方向に延びる縦フランジ16と水平方向に延びる横フランジ17が複数形成されている。縦フランジ15、横フランジ17は、側壁12より肉厚に形成されている。これにより、コンテナ1の強度が向上している。
【0020】
コンテナ1は、ポリプロピレン樹脂からなるバージン材料に、ポリプロピレン樹脂を含有するとともに改質した再生材料(以下では、改質再生材料という場合がある。)を混合することにより得られた混合材料を、射出成形することにより製造されている。
【0021】
また、一般的に再生材料は、ポリプロピレン以外にポリエチレンや塩化ビニルが混入している場合がある。こうした樹脂が混入していると、コンテナ1の成形時に混合材料が一様に流れない場合がある。さらに、コンテナ1の底面には、凸部14や凹溝15が交互に形成されているため、ゲートから射出された樹脂の流れが一定となりにくい。そのため、凹溝15の部分で混合材料の流れを安定させてリブ13に流れやすくするために、凹溝15の幅がリブ13の長さの2倍以上に設定されている。また、底壁11の厚みよりリブ13の根元の厚みが厚くなっている。これは、再生材料が混合させることで、バージン材料のみの場合より変形しやすいためである。また、収縮が異なることでも変形しやすくなるためである。
【0022】
再生材料は、使用済みの廃棄された合成樹脂製品に、粉砕等の処理を施したものとして使用される。再生材料には、主成分としてのポリプロピレン樹脂に、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂等の他の材料や、ポリプロピレン樹脂であってもブロックポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ホモポリプロピレン樹脂が不均一に混ざっているものがある。そのため、再生材料を混合したコンテナ1は、バージン材料のみからなるコンテナと比較して、色調が異なるとともに、流動性、曲げ強度、耐衝撃性等の機械的物性が劣るものである。
【0023】
一般的に、再生材料は異なる色調の合成樹脂材料が混在していることから、明度が低く黒に近い。一方、部品を規格ごとに仕分けして収容するためにバージン材料で射出成形された従来の灰色のコンテナは、明度を表すL値が45~60程度である。バージン材料のみで射出成形された従来のコンテナとともに使用しても使いやすく、従来のコンテナの代替品として有用である観点から、本実施形態のコンテナ1は、酸化チタンを添加して改質した再生材料(改質再生材料)をバージン材料に混合した混合材料を使用して成形されている。再生材料に酸化チタンを添加することにより、改質再生材料の明度をバージン材料に近づけるとともに、コンテナ1の明度を従来のバージン材料で成形されたコンテナに近づけることができる。
【0024】
再生材料への酸化チタンの添加量は、再生材料100質量部に対して、酸化チタンが2質量%以上10質量%以下であることが好ましく、2質量%以上6質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上4質量%以下であることがさらに好ましい。酸化チタンの添加量がこの範囲であると、改質再生材料を混合した混合材料の明度が、バージン材料の明度に近づく。つまり、バージン材料に比べて白っぽくなり過ぎたり、黒っぽくなり過ぎたりするということがない。改質再生材料の明度を表すL値は、36以上70未満であることが好ましく、36以上65未満であることがより好ましく、45以上60未満であることがさらに好ましい。
【0025】
また、混合材料の明度、つまり、バージン材料に改質再生材料を混合した混合材料を射出成形して得られたコンテナ1の明度は、明度を表すL値が36以上70未満であることが好ましく、36以上65未満であることがより好ましく、45以上60未満であることがさらに好ましい。L値がこの範囲であると、従来のバージン材料のみからなるコンテナと同程度の明度となって使いやすい。
【0026】
再生材料に酸化チタンを添加して改質することにより、混合材料は、酸化チタンを0.2質量%以上5.0質量%以下含有することが好ましい。
再生材料に酸化チタンを添加して改質することにより、混合材料の比重が上がる。ポリプロピレンのバージン材料の比重が、0.9g/cmであるのに対し、混合材料の比重、つまり、コンテナ1の比重は、0.91g/cm以上1.02g/cm以下であることが好ましい。
【0027】
図1に示すコンテナ1を射出成形する場合、例えば、射出成形用金型において、底壁11の中央部分に対応する位置に形成された樹脂ゲートから溶融した樹脂材料(混合材料)をキャビティ内に注入していく。そのため、混合材料の流動性が低いと、キャビティ内に溶融樹脂が十分に行き渡らず、成形品の品質の低下を引き起こすことになる。特に、コンテナ1が大型であったり、壁厚が薄かったりする場合に顕著である。本実施形態のコンテナ1は、補強のために、縦フランジ15や横フランジ17が側壁12より肉厚に形成されている。そのため、樹脂量を多く流す必要がある点からも、流動性が良好であることが要求される。
【0028】
バージン材料に改質再生材料を混合した混合材料がキャビティ内で十分に行き渡って、成形された成形品の強度を確保する観点から、本実施形態のコンテナ1は、有機過酸化物を添加して改質した再生材料(有機過酸化物改質再生材料)をバージン材料に混合した混合材料を使用して成形されている。これにより、改質再生材料の流動性を示すメルトフローレイト(MFR)をバージン材料のMFRに近づけるとともに、混合材料のMFRを所定の値以上にしている。改質再生材料のMFRをバージン材料のMFRに近づけることで、改質再生材料とバージン材料との相溶性が良くなり、成形されたコンテナ1の物性の低下を抑制することができる。
【0029】
改質再生材料のMFRは、20g/10min以上であることが好ましく、40g/10min以上であることがより好ましい。改質再生材料のMFRがこの範囲であると、バージン材料との相溶性が良好である。バージン材料に改質再生材料を混合した際の混合ムラを抑制することができる。
【0030】
また、混合材料のMFRは、40g/10min以上であることが好ましい。つまり、成形されたコンテナ1を構成する樹脂のMFRは40g/10min以上であることが好ましい。
【0031】
一方、再生材料に有機過酸化物を添加して改質すると、成形されたコンテナ1の曲げに対する強度、衝撃に対する強度といった機械的物性が劣ることがある。そのため、有機過酸化物の添加量は、MFRの数値と、成形品の機械的物性との兼ね合いで調整する必要がある。
【0032】
再生材料への有機過酸化物の添加量は、再生材料100質量部に対して、有機過酸化物が0.2質量%以上1.5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上0.8質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以上0.6質量%以下であることがさらに好ましい。有機過酸化物の添加量がこの範囲内であると、コンテナ1のMFRを40以上、曲げ弾性率を1100MPa以上、アイゾット衝撃値を8kJ/m以上とすることができる。有機過酸化物が1.5質量%以下であると、コンテナ1の衝撃強度低下を抑制することができる。
【0033】
なお、再生材料への有機過酸化物の添加量は、以下の2式を満たすときは、少なくすることができる。
(式1)A>B×0.25
(式2)(A×a/100)+(B×b/100)>B×0.8
ここで、Aは、再生材料のMFR、aは、再生材料の配合量、Bは、バージン材料のMFR、bは、バージン材料の配合量を表す。
【0034】
<コンテナ1の製造方法について>
次に、コンテナ1の製造方法について、作用とともに説明する。
コンテナ1の製造方法は、再生材料を改質する改質工程と、バージン材料に改質再生材料を混合する混合工程と、混合材料を金型内に注入して射出成形する成形工程とを備えている。
【0035】
改質工程では、再生材料に酸化チタン及び有機過酸化物を添加して改質再生材料(酸化チタン改質再生材料であり、かつ、有機過酸化物改質再生材料であるもの)を得る。酸化チタン及び有機過酸化物は、別々に添加しても同時に添加してもよい。別々に添加する場合、酸化チタンは、再生材料と酸化チタンとを混錬した樹脂材料(マスターパッチ)を使用することもできる。
【0036】
酸化チタンの添加量は、上述のとおり、再生材料100質量部に対して、酸化チタンが2質量%以上10質量%以下であることが好ましく、2質量%以上6質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上4質量%以下であることがさらに好ましい。また、有機過酸化物の添加量は、上述のとおり、再生材料100質量部に対して、有機過酸化物が0.2質量%以上1.5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上0.8質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以上0.6質量%以下であることがさらに好ましい。
【0037】
混合工程では、改質再生材料をバージン材料に添加して混錬する。混錬する際の温度は、200~250℃程度であることが好ましい。改質再生材料は、有機過酸化物の添加によってMFRが大きくなってバージン材料とのMFRの差が少なくなっているため、バージン材料との相溶性が良好であり、混合ムラが抑制される。
【0038】
成形工程では、例えば、コンテナ1の底壁11の中央部分に対応する位置に樹脂ゲートが形成された固定金型及び可動金型からなる成形型をセットする。型締めした後、形成されたキャビティ内に樹脂ゲートを介して、熱溶融状態の混合材料を注入する。
【0039】
本実施形態の成形工程で使用する成形型は、樹脂ゲートからコンテナ1における最も遠い位置となる末端までの流動長をL、キャビティの厚さをTとしたとき、L/Tが250以上となるものを使用している。つまり、コンテナ1の大きさに比較して、底壁11及び側壁12の壁厚が相対的に薄いものである。この点、混合材料のMFRが40g/10min以上に調製されているため、底壁11の中央部分に対応する位置の樹脂ゲートから、キャビティにおいて底壁11に対応する領域、側壁12に対応する領域に向かって混合材料が広がっていく。混合ムラが抑制された状態で、凸部14のリブ13や側壁12の縦フランジ16及び横フランジ17に対応する領域にも広がっていく。このようにして、キャビティの末端まで満遍なく混合材料が行き渡る。その後、金型を冷却して脱型することによりコンテナ1が得られる。
【0040】
本実施形態のコンテナ1及びその製造方法によれば以下の効果が得られる。
(1)コンテナ1は、ポリプロピレン樹脂からなるバージン材料と、ポリプロピレン樹脂を含有する改質再生材料とが混合された灰色の混合材料の射出成形により成形されている。コンテナ1を構成する混合材料には、酸化チタンが0.2質量%以上5.0質量%以下含有されていることで、比重が0.91g/cm以上1.02g/cm以下であり、明度を表すL値が36以上65未満である。また、アイゾット衝撃値が8.0kJ/m以上である。そのため、再生材料を含有するコンテナ1でありながら、バージン材料のみで成形されたコンテナと同程度の色相(明度)と、強度を有している。
【0041】
(2)コンテナ1のメルトフローレイトは40g/10min以上である。このようなメルトフローレイトの混合材料で射出成形されているため、金型内での樹脂の広がりが良好であり、成形性に優れたコンテナ1が得られる。
【0042】
(3)コンテナ1の製造方法において、バージン材料に再生材料を混合する混合工程では、有機過酸化物を添加するとともに、酸化チタンが4質量%以上15質量%以下となるように添加した改質再生材料を混合している。これにより、混合材料のメルトフローレイトが40g/10min以上であり、コンテナ1のアイゾット衝撃値が8.0kJ/m以上となるようにしている。そのため、強度に優れた灰色のコンテナ1を製造することができる。
【0043】
(4)混合工程では、有機過酸化物が0.2質量%以上1.5質量%以下となるように添加して改質した改質再生材料を混合している。そのため、MFRが40g/10min以上で流動性に優れた混合材料とすることができる。
【0044】
(5)混合工程では、酸化チタンが2質量%以上10質量%以下となるように添加して改質した改質再生材料を混合することにより、混合材料の比重が0.91g/cm以上1.02g/cm以下となるようにしている。そのため、コンテナ1の明度を表すL値が35以上65未満の灰色とすることができる。
【0045】
(6)再生材料の明度を表すL値が31以上35以下のときには、混合工程では、酸化チタンが2質量%以上6質量%以下となるように添加して改質した改質再生材料を混合する。これにより、混合材料の明度を表すL値を45以上65以下としている。そのため、従来のバージン材料のみからなるコンテナと同程度の灰色とすることができ、両者が混在していても使いやすい。
【0046】
上記実施形態は、次のように変更できる。なお、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて適用することができる。
・コンテナ1の形状は図1の形状のものに限定されない。縦フランジ16や横フランジ17が省略されていてもよい。また、凸部14や凹溝15が省略されていてもよい。
【0047】
・コンテナ1の大きさ、壁厚は上記のものに限定されない。
・成形型としては、底壁11の中央部分に樹脂ゲートが形成されたものを使用しなくてもよい。また、樹脂ゲートが複数形成されたものを使用してもよく、底壁11のみに複数形成されたものを使用してもよい。
【0048】
上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)ポリプロピレン樹脂からなるバージン材料に、ポリプロピレン樹脂を含有する再生材料を混合した灰色の混合材料を射出成形する再生材料含有コンテナの製造方法であって、前記バージン材料に前記再生材料を混合する混合工程を備え、前記混合工程では、有機過酸化物を0.2質量%以上1.5質量%以下となるように添加するとともに、酸化チタンが2質量%以上6質量%以下となるように添加して改質した前記再生材料を混合することにより、前記混合材料のメルトフローレイトが40g/10min以上、明度を表すL値が45以上65以下となるようにするとともに、再生材料含有コンテナの曲げ弾性率が1100MPa以上、アイゾット衝撃値が8.0kJ/m以上となるようにすることを特徴とする再生材料含有コンテナの製造方法。
【0049】
(ロ)前記再生材料は明度を表すL値が31以上35以下であり、前記混合工程では、酸化チタンが2質量%以上6質量%以下となるように添加して改質した前記再生材料を混合することにより、明度を表すL値を36以上65未満である前記混合材料を調製することを特徴とする前記再生材料含有コンテナの製造方法。
【0050】
(ハ)ポリプロピレン樹脂からなるバージン材料に、ポリプロピレン樹脂を含有する再生材料を混合した灰色の混合材料を射出成形することにより、側壁に補強フランジが形成された再生材料含有コンテナを製造する再生材料含有コンテナの製造方法であって、前記バージン材料に前記再生材料を混合して混合材料を得る混合工程と、混合材料を金型内に注入して射出成形する成形工程とを備え、前記成形工程では、樹脂ゲートからの最大流動長をL、キャビティの厚さをTとしたとき、L/Tが250以上となる成形型を使用し、前記混合工程では、有機過酸化物を0.2質量%以上1.5質量%以下となるように添加するとともに、酸化チタンが2質量%以上6質量%以下となるように添加して改質した前記再生材料を混合することにより、前記混合材料のメルトフローレイトが40g/10min以上、明度を表すL値が45以上65以下となるようにするとともに、再生材料含有コンテナの曲げ弾性率が1100MPa以上、アイゾット衝撃値が8.0kJ/m以上となるようにすることを特徴とする再生材料含有コンテナの製造方法。
【0051】
(ニ)ポリプロピレン樹脂からなるバージン材料と、ポリプロピレン樹脂を含有する改質再生材料とが混合されてなる灰色の再生材料含有コンテナであって、側壁の厚さに対する樹脂ゲート痕からの最大長の比が250以上であり、メルトフローレイトが40g/10min以上であり、酸化チタンを0.2質量%以上5.0質量%以下含有するとともに、比重が0.91g/cm以上1.02g/cm以下であり、明度を表すL値が36以上65未満であり、曲げ弾性率が1100MPa以上、アイゾット衝撃値が8.0kJ/m以上であることを特徴とする再生材料含有コンテナ。
【符号の説明】
【0052】
1…コンテナ
11…底壁
12…側壁
16…縦フランジ
17…横フランジ
【実施例
【0053】
<有機過酸化物による再生材料の改質>
再生材料に有機過酸化物を添加したときの、改質再生材料(過酸化物改質再生材料)の性状及び機械的特性について評価した。また、改質再生材料をバージン材料に混合したときの混合材料の性状及び機械的特性について評価した。改質前の再生材料のMFRは7,7g/10min、曲げ弾性率は1150MPa、アイゾット衝撃値は5.7kJ/mであった。
【0054】
有機過酸化物としてパーブチル(登録商標)P-40(日油株式会社製)を使用した。再生材料に対して、それぞれ、0,1、0,3、0,5、0,7質量%となるように有機過酸化物を添加して改質した。有機過酸化物を添加後の有機過酸化物改質再生材について、それぞれ、MFR、曲げ弾性率、アイゾット衝撃値を測定した。
【0055】
また、改質再生材料をポリプロピレンのバージン材料に対して30質量%となるように混合して混合材料を調製した。バージン材料のMFRは、52.7g/10minであった。混合材料について、それぞれ、MFR、曲げ弾性率、アイゾット衝撃値を測定した。
【0056】
<MFRの測定>
JIS K7210に準拠し、メルトインデクサー試験機を使用して、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
【0057】
改質再生材料についてのMFRの評価基準は以下のとおりである。
〇;MFRが40g/10min以上であり、バージン材料との相溶性が良好である。
△;MFRが20g/10min以上40g/10min未満であり、バージン材料との相溶性が概ね良好である。
×;MFRが20g/10min未満であり、バージン材料との相溶性が良好ではない。
【0058】
混合材料についてのMFRの評価基準は以下のとおりである。
〇;MFRが40g/10min以上であり、射出成形時の流動性が良好である。
×;MFRが40g/10min未満であり、射出成形時の流動性が良好ではない。
【0059】
<曲げ弾性率の測定>
JIS K7171に準拠し、オートグラフ試験機を使用して、試験速度10mm/min、支点間距離60mm、支持台半径5mm、圧子半径5mmの条件で測定した。
【0060】
混合材料についての曲げ弾性率の評価基準は以下のとおりである。

〇;曲げ弾性率が1100MPa以上であり、成形品の曲げ強度が良好である。
×;曲げ弾性率が1100MPa未満であり、成形品の曲げ強度が良好ではない。
【0061】
<アイゾット衝撃値の測定>
JIS K7110に準拠し、アイゾット衝撃試験機を使用して、ハンマーのひょう量2.75Jの条件で測定した。
【0062】
混合材料についてのアイゾット衝撃値の評価基準は以下のとおりである。
〇;アイゾット衝撃値が8kJ/m以上であり、成形品の衝撃に対する破壊強度が良好である。
△;アイゾット衝撃値が7kJ/m以上8kJ/m未満であり、成形品の衝撃に対する破壊強度が良好ではない。
×;アイゾット衝撃値が7kJ/m未満であり、成形品の衝撃に対する破壊強度が良好ではない。
【0063】
性状及び機械的特性の結果を表1に示した。
【0064】
【表1】
【0065】
表1の結果より、有機過酸化物を再生材料に0.2質量%以上添加すると、改質された再生材料のMFRが20g/10min以上となって、バージン材料との相溶性が概ね良好であった。また、有機過酸化物を再生材料に0.3質量%以上添加すると、改質再生材料をバージン材料に混合した混合材料のMFRが40g/10min以上となって、流動性が良好であった。
【0066】
一方、有機過酸化物の再生材料への添加量が1.5質量%以下であれば、混合材料の曲げ弾性率が1100MPa以上、アイゾット衝撃値が7kJ/m以上であり、成形品の機械的特性が満足できるものであった。特に有機過酸化物の添加量が0.6質量%以下であると、曲げ弾性率を1100MPa以上、アイゾット衝撃値を8kJ/m以上であり、成形品の機械的強度がより向上した。
【0067】
<酸化チタンによる再生材料の改質>
再生材料に酸化チタンを添加したときの、改質再生材料(酸化チタン改質再生材料)の性状及び機械的特性について評価した。また、改質再生材料をバージン材料に混合したときの混合材料の明度について評価した。改質前の再生材料は、L値が30と35のものを使用した。
【0068】
再生材料に対して、2、4、6、8質量%となるように酸化チタンを添加して改質した。酸化チタンを添加後の改質再生材料について、それぞれ、L値を測定して明度判断をした。また、a値、b値を測定して色相、彩度判断をした。
【0069】
改質再生材料をポリプロピレンのバージン材料に対して、10、30、50質量%となるように混合して混合材料を調製した。バージン材料のL値は57.47、a値は-1.59、b値は1.17であった。混合材料について、それぞれ、L値、a値、b値、及び比重を測定した。
【0070】
なお、a値は、緑色が強くならないようにー2以内であることが好ましく、赤色を認識し難くするために0以下であることが好ましい。また、b値は、青色が強くならないようにするためにー5以内であることが好ましく、黄色を認識し難くするために0以下であることが好ましい。
【0071】
<L値の測定>
JIS Z8722に準拠し、分光測色計を使用して色空間におけるL値を測定した。
【0072】
混合材料のL値の評価基準(明度判断)は以下のとおりである。
◎;L値が45以上60未満であり、バージン材料と同程度の灰色となる。
〇;L値が36以上45未満であり、バージン材料よりやや暗い灰色となるか、L値が60以上65未満であり、バージン材料よりやや明るい灰色となる。
△;L値が65以上70未満であり、バージン材料より少し明るい灰色となる。
×;L値が36未満であり、全体に黒っぽくなるか、L値が70以上であり、全体に白っぽくなる。
【0073】
<比重の測定>
JIS K7112に準拠し、電子比重計を使用して測定した。
酸化チタン改質再生材料の性状の結果を表2に示した。
【0074】
【表2】
【0075】
酸化チタンを再生材料に2質量%以上10質量%以下となるように添加すると、改質された再生材料のL値が35以上70未満となった。また、改質された再生材料をバージン材料に混合した混合材料のL値も35以上70未満となり、バージン材料で成形したコンテナと同程度の明度の灰色となった。
【0076】
表2の結果より、L値が35の再生材料に酸化チタンを2質量%以上4質量%以下となるように添加すると、改質された再生材料のL値が50以上65未満となった。また、改質された再生材料をバージン材料に混合した混合材料のL値も50以上65未満となり、黒過ぎず、白過ぎない程度で、バージン材料で成形したコンテナと同程度の明度の灰色となった。
【0077】
値が30の再生材料に酸化チタンを2質量%以上6質量%以下となるように添加すると、改質された再生材料のL値が45以上60未満となった。また、改質された再生材料をバージン材料に混合した混合材料のL値も45以上60未満となり、黒過ぎず、白過ぎない程度で、バージン材料で成形したコンテナと同程度の明度の灰色となった。
【0078】
表2の結果より、L値が31以上35以下の再生材料に酸化チタンを、2質量%以上6質量%以下となるように添加すると、改質された再生材料のL値が36以上65未満となった。また、改質された再生材料をバージン材料に混合した混合材料のL値も36以上65未満となり、黒過ぎず、白過ぎない程度で、バージン材料で成形したコンテナと同程度の明度の灰色となった。
【要約】
【課題】強度に優れるとともに、バージン材料で成形した灰色の成形品と同程度の明度の灰色の再生材料含有コンテナを提供する。
【解決手段】ポリプロピレン樹脂からなるバージン材料に、ポリプロピレン樹脂を含有する再生材料を混合した灰色の混合材料を射出成形する再生材料含有コンテナの製造方法であって、前記バージン材料に前記再生材料を混合する混合工程を備え、前記混合工程では、有機過酸化物を添加するとともに、酸化チタンが2質量%以上10質量%以下となるように添加して改質した前記再生材料を混合することにより、前記混合材料のメルトフローレイトが40g/10min以上、アイゾット衝撃値が8.0kJ/m以上となるようにする。
【選択図】なし
図1