(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】自動車盗難防止具
(51)【国際特許分類】
B60R 25/01 20130101AFI20241002BHJP
【FI】
B60R25/01
(21)【出願番号】P 2024097403
(22)【出願日】2024-06-17
【審査請求日】2024-07-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524229358
【氏名又は名称】小島 一仁
(74)【代理人】
【識別番号】110002435
【氏名又は名称】弁理士法人井上国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077919
【氏名又は名称】井上 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100172638
【氏名又は名称】伊藤 隆治
(74)【代理人】
【識別番号】100153899
【氏名又は名称】相原 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100159363
【氏名又は名称】井上 淳子
(72)【発明者】
【氏名】小島 一仁
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-101753(JP,A)
【文献】特開2004-189204(JP,A)
【文献】実開平6-8123(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0020252(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載ネットワークへの不正接続による自動車の盗難を防止するための自動車盗難防止具であって、
前記自動車の車輪を載せるためのベースプレートと、
前記ベースプレートから立ち上がるように設けられ、前記自動車のホイールハウスを車幅方向外側から覆い隠すように配置されるカバープレートと、
を備えることを特徴とする自動車盗難防止具。
【請求項2】
前記車輪に対する前記カバープレートの取り付けに用いられる巻き付け部材を通すための挿通穴が、前記カバープレートに設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動車盗難防止具。
【請求項3】
一対の前記挿通穴が前記カバープレートに設けられている、
ことを特徴とする請求項2に記載の自動車盗難防止具。
【請求項4】
前記カバープレートよりも車幅方向外側において前記巻き付け部材の端部を留めるためのフックを備えている、
ことを特徴とする請求項2に記載の自動車盗難防止具。
【請求項5】
前記ベースプレートは、前記カバープレートよりも車幅方向外側に張り出す張り出し部を有し、
前記張り出し部と前記カバープレートとに跨って複数の支持プレートが設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動車盗難防止具。
【請求項6】
前記ベースプレートは、折り畳み可能なように車幅方向に連なる複数のプレート部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動車盗難防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載ネットワークへの不正接続による自動車の盗難を防止するための自動車盗難防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるCANインベーダによる自動車の盗難が増加している。CANインベーダとは、車載ネットワークとして使用されている「CAN(Controller Area Network)」通信に不正に接続して、ドアの解錠やエンジンの始動などを行う盗難手法である。CANインベーダでは、多くの場合、フロントバンパーの左側部分がこじ開けられて、自動車の内部に搭載されたCAN通信用のコネクタに盗難用の電子機器が接続される。
【0003】
これに関連して、特許文献1及び特許文献2には、CAN通信用のコネクタを覆うように自動車の内部に取り付けられる盗難防止用のカバー部材が開示されている。このようなカバー部材によって覆われたCAN通信用のコネクタは、容易に取り外されたり、容易に盗難用の電子機器が接続されたりすることが防止され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第7374537号公報
【文献】意匠登録第1754054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示された盗難防止用のカバー部材は、自動車の内部に搭載される必要があるため、一般の使用者が自身で当該カバー部材を取り付けることは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、CANインベーダなどの車載ネットワークへの不正接続による自動車の盗難を、誰でも簡単に防止できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、CANインベーダによる自動車の盗難の多くで、上述の接続作業のために車体のバンパーの端部がこじ開けられる点、特に、この作業がホイールハウス(特に、左側前輪用のホイールハウス)から行われる点に着目し、以下の発明を着想した。
【0008】
本発明の一態様は、車載ネットワークへの不正接続による自動車の盗難を防止するための自動車盗難防止具であって、前記自動車の車輪を載せるためのベースプレートと、前記ベースプレートから立ち上がるように設けられ、前記自動車のホイールハウスを車幅方向外側から覆い隠すように配置されるカバープレートと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る自動車盗難防止具を用いれば、ホイールハウス全体がカバープレートによって塞がれるため、車載ネットワークへの不正接続のための作業がホイールハウスから行われることを防止することができる。ユーザは、駐車の際に自動車盗難防止具を置いて、カバープレートに沿って車輪が配置されるようにベースプレートを車輪で踏むだけでよい。そのため、車載ネットワークへの不正接続による自動車の盗難を、誰でも簡単に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自動車盗難防止具の使用状態を自動車の側方から見た側面図である。
【
図2】同自動車盗難防止具を車両前後方向から見た
図1のA-A線断面図である。
【
図4】同自動車盗難防止具を別の方向から示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る自動車盗難防止具1が説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、添付図面において、X方向は自動車100の車幅方向を示し、Y方向は車両前後方向を示し、Z方向は車両上下方向を示す。
【0012】
図1の側面図、及び
図2の断面図に示すように、自動車盗難防止具1は、自動車100のホイールハウス130を車幅方向Xの外側から塞ぐように車輪120に踏まれて使用されるプレート状の部材である。
【0013】
CANインベーダの多くは、自動車100の左側の前輪用のホイールハウス130からフロントバンパーがこじ開けられ、内部のCAN通信用のコネクタに盗難用の電子機器が接続されることで行われる。
【0014】
本実施形態に係る自動車盗難防止具1によれば、
図1に示すように左前のホイールハウス130が塞がれることで、CANインベーダのための接続作業ができなくなる。これにより、CANインベーダによる自動車100の盗難防止が図られる。
【0015】
なお、左前以外の箇所のホイールハウスからCANインベーダのための接続作業が行われる可能性がある場合は、当該箇所のホイールハウスに対して自動車盗難防止具1が同様に用いられてもよい。また、車載ネットワークとしてCAN通信以外の種類のネットワークが採用された自動車において、当該車載ネットワークへの不正接続がホイールハウスから行われる可能性がある場合にも、自動車盗難防止具1が同様に用いられ得る。
【0016】
主として
図3及び
図4の斜視図を参照しながら、自動車盗難防止具1の具体的な構成が説明する。
【0017】
自動車盗難防止具1は、自動車100の車輪120(
図1及び
図2参照)を載せるためのベースプレート10と、自動車100のホイールハウス130(
図1参照)を車幅方向X外側から覆い隠すように配置されるカバープレート20とを備える。
【0018】
使用状態におけるベースプレート10は、車幅方向Xにおいて自動車100の車輪120よりも大きな幅(
図2参照)と、車両前後方向Yにおいて自動車100のホイールハウス130よりも大きな長さ(
図1参照)とを有する長方形の平板状の部材である。
【0019】
ベースプレート10は、車幅方向Xに連なる例えば2つのプレート部11,12を有する。プレート部11,12は、例えば鋼板からなる。それぞれのプレート部11,12は、車幅方向Xの寸法(幅)よりも車両前後方向Yの寸法(長さ)が大きな細長い長方形状である。2つのプレート部11,12は、互いに等しい車両前後方向Yの寸法(長さ)及び車両上下方向Zの寸法(厚さ)を有する。2つのプレート部11,12の車幅方向Xの幅は、互いに等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0020】
2つのプレート部11,12は、例えば丁番からなる連結部13を介して、車両前後方向Yに延びる軸心周りに回転可能に連結されている(特に、
図4参照)。これにより、ベースプレート10は、一方のプレート部11の下側に他方のプレート部12が折り重ねられるように折り畳み可能に構成されている。このようにベースプレート10が折り畳まれることで、非使用時(車両走行時)における自動車盗難防止具1は、コンパクト化された状態で自動車100のトランクルームや車庫などに収納可能になる。
【0021】
カバープレート20は、ベースプレート10から例えば垂直に立ち上がるように設けられている。カバープレート20は、車両前後方向Yにおいてホイールハウス130の寸法よりも大きな幅(
図1参照)と、車両上下方向Zにおいてホイールハウス130の上端高さよりも高い高さ(
図1参照)とを有する。また、カバープレート20は、ホイールハウス130の輪郭よりも大きな半円状の上縁部20aを有する。
【0022】
このように構成されたカバープレート20によって、ホイールハウス130全体を車幅方向X外側から塞ぐことが可能になっている。これにより、ホイールハウス130の内部に人の手や工具などを入れて作業を行うことが困難になっている。
【0023】
カバープレート20は、例えば、ベースプレート10と同じ鋼板からなる。カバープレート20の下縁部は、例えば溶接によってベースプレート10の上面に接合されている。具体的に、カバープレート20は、ベースプレート10における車幅方向X外側のプレート部11の上面に接合されている。より具体的には、車幅方向Xにおけるプレート部11の外側縁部と中央部との間の部分にカバープレート20が接合されている。これにより、ベースプレート10のプレート部11には、カバープレート20よりも車幅方向X外側に張り出す張り出し部11aが形成されている。
【0024】
カバープレート20には、車輪120に対するカバープレート20の取り付けに用いられるチェーン等の巻き付け部材50(
図1及び
図2参照)を通すための挿通穴22が設けられている。具体的には、一対の挿通穴22が、例えば車両前後方向Yに間隔を空けて設けられている。挿通穴22は、使用状態において車輪120のホイール122(
図1参照)に対向するように配置されている。
【0025】
図3に示すように、自動車盗難防止具1は、カバープレート20が倒れないように支持するための複数の支持プレート24,25,26を備えている。支持プレート24,25,26は、例えば、ベースプレート10及びカバープレート20と同じ鋼板からなる。
【0026】
支持プレート24,25,26は、車両前後方向Yに対して垂直に配置されるようにベースプレート10の張り出し部11aとカバープレート20とに跨って設けられている。支持プレート24,25,26は、例えば、ベースプレート10に沿って配置される下縁部と、カバープレート20に沿って配置される側縁部とを有する直角三角形状である。支持プレート24,25,26は、ベースプレート10とカバープレート20とに対して例えば溶接によって接合される。
【0027】
本実施形態では、3つの支持プレート24,25,26が車両前後方向Yに間隔を空けて設けられている。これらのうち中央の支持プレート24は、車両前後方向Yにおいて一対の挿通穴22の間に配置されている。中央の支持プレート24の上端は、挿通穴22の中心よりも車両上下方向Zの下側に配置されており、挿通穴22に通される巻き付け部材50(
図1及び
図2参照)との干渉を回避可能となっている。残りの支持プレート25,26は、車両前後方向Yにおいて一対の挿通穴22よりも前側および後側にそれぞれ配置されている。これらの支持プレート25,26は、中央の支持プレート24の上端よりも上方、より具体的には挿通穴22の中心よりも上方へ延在している。
【0028】
また、
図3に示すように、自動車盗難防止具1は、カバープレート20よりも車幅方向X外側において巻き付け部材50の端部50a(
図2参照)を留めるためのフック30を備えている。フック30は、例えば、一対の挿通穴22に対応して、車両前後方向Yに間隔を空けて一対設けられている。それぞれのフック30は、例えば、U字状の金具で構成されている。フック30は、例えば、ベースプレート10の張り出し部11aに例えば溶接によって接合されている。ただし、フック30の形状および接合箇所は適宜変更可能であり、例えば、カバープレート20にフック30が接合されてもよい。
【0029】
図1及び
図2に示すように、以上のように構成された自動車盗難防止具1は、自動車100が停車される際に、ホイールハウス130全体がカバープレート20によって塞がれるようにベースプレート10に車輪120に載せられた状態で使用される。これにより、上述のようなCANインベーダのための接続作業がホイールハウス130から行えなくなる。
【0030】
使用時において、ユーザは、駐車位置に自動車盗難防止具1を置いて、カバープレート20に沿って車輪120が配置されるようにベースプレート10を車輪120で踏むだけでよい。このとき、支持プレート24,25,26は、カバープレート20よりも車幅方向X外側に配置されているため、支持プレート24,25,26に車輪120がぶつかることが防止される。
【0031】
また、チェーン等の巻き付け部材50が、一対の挿通穴22に通されて、車輪120のホイール122の一部とカバープレート20とに跨って巻き付けられることで、車輪120に自動車盗難防止具1が固定され得る。この際、巻き付け部材50の端部50aは、例えば南京錠60(
図2参照)を用いて上述のフック30に施錠され得る。このようにして車輪120に自動車盗難防止具1が固定されることで、ジャッキアップ等によって自動車盗難防止具1が抜き取られることが防止される。
【0032】
以上のように、本実施形態に係る自動車盗難防止具1を用いれば、CANインベーダによる自動車100の盗難を誰でも簡単に防止することができる。
【0033】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0034】
例えば、上述の実施形態では、ベースプレート10が2つのプレート部11,12で構成されるが、ベースプレートを構成するプレート部の個数は、3つ以上であってもよいし、1つであってもよい。
【0035】
なお、自動車盗難防止具1の各部の寸法は、適用対象となる自動車100の車種のうち最も大型の車種に対応した大きさであってもよい。あるいは、ホイールハウス130の大きさ等が異なる様々な車種の自動車100に対応可能なように、大きさが異なる複数種類の自動車盗難防止具1が用意されてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 自動車盗難防止具
10 ベースプレート
11,12 プレート部
11a 張り出し部
20 カバープレート
22 挿通穴
24,25,26 支持プレート
30 フック
50 巻き付け部材(チェーン)
50a 巻き付け部材の端部
100 自動車
110 フロントバンパー
120 車輪
122 ホイール
124 タイヤ
130 ホイールハウス
【要約】
【課題】車載ネットワークへの不正接続による自動車の盗難を誰でも簡単に防止できる自動車盗難防止具を提供する。
【解決手段】本発明は、車載ネットワークへの不正接続による自動車100の盗難を防止するための自動車盗難防止具1であって、自動車100の車輪120を載せるためのベースプレート10と、ベースプレート10から立ち上がるように設けられ、自動車100のホイールハウス130を車幅方向X外側から覆い隠すように配置されるカバープレート20と、を備える。
【選択図】
図1