(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】撒き餌かご
(51)【国際特許分類】
A01K 97/02 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
A01K97/02 A
(21)【出願番号】P 2024112988
(22)【出願日】2024-07-12
【審査請求日】2024-07-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592218919
【氏名又は名称】有限会社サニー商事
(74)【代理人】
【識別番号】100194342
【氏名又は名称】伊藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】阿部 俊明
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-255343(JP,A)
【文献】特開平11-127749(JP,A)
【文献】特開平9-37695(JP,A)
【文献】特開平9-154462(JP,A)
【文献】特開平8-196177(JP,A)
【文献】特開2023-183638(JP,A)
【文献】特開2014-117215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 97/00-97/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の開口を有する第1分割筒と第2の開口を有する第2分割筒を備えた撒き餌かごであって、
前記第1分割筒と前記第2分割筒のいずれか一方を回動させる枢着手段が設けられ、
前記第1の開口の上方に位置する第1分割筒の周壁部に係合孔が形成され、
前記係合孔に係合される係合片を先端に有する舌片が前記第2分割筒の周壁部に形成され、
前記枢着手段による回動によって前記第1分割筒と前記第2分割筒の軸方向が同じになった後に、前記係合片を前記係合孔に係合することにより前記第1分割筒と前記第2分割筒の結合がロック状態となる、
ことを特徴とする撒き餌かご。
【請求項2】
前記枢着手段は、前記第2分割筒の下方の周壁部の互いに対向する2ヵ所からそれぞれ径方向外側に向かって起立する枢軸と、前記第1分割筒の下方に形成された腕部にそれぞれ形成されたスリットで構成され、
前記各枢軸は、大径頭部と、前記スリットに挿通された小径軸体とで構成され、前記スリットを回転軸として少なくとも前記第1分割筒および前記第2分割筒のいずれか一方が回動可能となる、
ことを特徴とする請求項1に記載の撒き餌かご。
【請求項3】
前記第1分割筒と前記第2分割筒の結合がロック状態である場合に、前記係合片を前記係合孔から外すことにより前記第1分割筒と前記第2分割筒の結合がロック解除となる、
ことを特徴とする請求項1に記載の撒き餌かご。
【請求項4】
前記スリットのそれぞれの長さは、前記枢軸がスリットの前記第1分割筒下側端部にある状態において前記係合片が少なくとも前記第1の開口の上端縁辺よりも下側に位置するような長さであって、前記枢軸が対応する前記スリットの前記第1分割筒上側端部にある状態において前記係合片が係合孔に係合できる位置にくるような長さである、
ことを特徴とする請求項2に記載の撒き餌かご。
【請求項5】
前記第2分割筒を構成する第2分割筒本体の周壁部は、前記第2分割筒本体の上端から中間付近まで斜めの方向に延びた形状であって断面弧状の第1部分周壁部と、前記第2分割筒本体の中間近傍からしばらく直線に延びた断面略C字状の第2部分周壁部と、その後徐々に下端に向かって曲線を描くように形成された断面円形状の第3部分周壁部で形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の撒き餌かご。
【請求項6】
前記第1部分周壁部は、中央に前記舌片、その両端に挟部が形成され、前記舌片と前記各挟部の間には切り欠きが形成され、前記舌片は自身の弾力で径方向に可動するようになっている、
ことを特徴とする請求項5に記載の撒き餌かご。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撒き餌かごに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2片1組の相補的な分割筒をその下端にて枢着し、一方の分割筒を他方の分割筒から開いてまき餌をすくい、これらの分割筒を互いに閉じて結合するように構成された撒き餌かごがが知られている(特許文献1参照)。
上記した構造の撒き餌かごにおいては、まき餌をかごの収容室内に充填するときには、一方の分割筒と他方の分割筒を開いた状態にする。かごの収容室内にまき餌を充填し終わったときには一方の分割筒と他方の分割筒を閉じた状態にするが、一方の分割筒の周壁部が、他方の分割筒の周壁部の弧状面に対して拡開後に内向きに収縮することにより、一方の分割筒が他方の分割筒に嵌合し、一方の分割筒と他方の分割筒が結合してロック状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、撒き餌かごが水中に投げ込まれて撒き餌かごは水中を沈降していくが、所定ポイントの位置において撒き餌を水中に放出すために釣竿をしゃくると、撒き餌かごには、しゃくりによる上下動と撒き餌かごに流れ込む水流により遠心力が発生し径方向外側方向に力が生じる。したがって、撒き餌かごには径方向外側に力がかかり、一方の分割筒と他方の分割筒の結合が次第に弱まり、最終的に一方の分割筒と他方の分割筒が開いた状態になってしまい、撒き餌が意図せず水中に大量に放出してしまう虞がある。そして一方の分割筒と他方の分割筒が開いた状態になってしまうと、撒き餌かごが水の抵抗を受け易くなり、釣竿に対して水の抵抗による影響が及び、釣竿を動かした際の負荷が増大する。そのため、例えば釣竿回収時等の際、釣り竿を動かしたときに釣竿が破損する虞もあった。
【0005】
そこで、本発明は、2片1組の分割筒の結合力を向上させることによって、水中に置かれた2片1組の分割筒の閉じた状態を確実に維持することができる撒き餌かごを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る撒き餌かごの一側面は、第1の開口を有する第1分割筒(3)と第2の開口を有する第2分割筒(4)を備えた撒き餌かごであって、前記第1分割筒(3)と前記第2分割筒(4)のいずれか一方を回動させる枢着手段(10,15)が設けられ、前記第1の開口(13)の上方に位置する第1分割筒(3)の周壁部に係合孔(24)が形成され、前記係合孔に係合される係合片(24)を先端に有する舌片(25)が前記第2分割筒(4)の周壁部に形成され、前記枢着手段(10,15)による回動によって前記第1分割筒(3)と前記第2分割筒(4)の軸方向が同じになった後に、前記係合片(24)を前記係合孔(24)に係合することにより前記第1分割筒(3)と前記第2分割筒(4)の結合がロック状態となることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る撒き餌かごの他の側面は、前記枢着手段(10,15)は、前記第2分割筒(4)の下方の周壁部(21)の互いに対向する2ヵ所からそれぞれ径方向外側に向かって起立する枢軸(10,10)と、前記第1分割筒(3)の下方に形成された腕部(18,18)にそれぞれ形成されたスリット(15,15)で構成され、前記枢軸(10)は、大径頭部(10a)と、前記スリット(15)に挿通された小径軸体(10b)とで構成され、前記スリット(15)を回転軸として少なくとも前記第1分割筒(3)および前記第2分割筒(4)のいずれか一方が回動可能となることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る撒き餌かごの他の側面は、前記第1分割筒(3)と前記第2分割筒(4)の結合がロック状態である場合に、前記係合片を前記係合孔から外すことにより前記第1分割筒(3)と前記第2分割筒(4)の結合がロック解除となることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る撒き餌かごの他の側面は、前記各スリット(15,15)のそれぞれの長さは、前記枢軸(10,10)が対応する前記スリット(15)の前記第1分割筒(3)下側端部にある状態において前記係合片(24)が少なくとも前記第1の開口13の上端縁辺22aよりも下側に位置するような長さであって、前記枢軸(10,10)が対応する前記スリット(15)の前記第1分割筒(3)上側端部にある状態において前記係合片(24)が前記係合孔(23)に係合できる位置にくるような長さであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る撒き餌かごの他の側面は、前記第2分割筒(4)を構成する第2分割筒本体(8)の周壁部(21)は、前記第2分割筒本体(8)の上端から中間付近まで斜めの方向に延びた形状であって断面弧状の第1部分周壁部(21a)と、前記第2分割筒本体(8)の中間近傍からしばらく直線に延びた断面略C字状の第2部分周壁部(21b)と、その後徐々に下端に向かって曲線を描くように形成された断面円形状の第3部分周壁部(21c)で形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る撒き餌かごの他の側面は、前記第1部分周壁部21aは、中央に前記舌片(25)、その両端に挟部(28,28)が形成され、前記舌片(25)と前記各挟部(28,28)の間には切り欠き(29)が形成され、前記舌片(25)は自身の弾力で径方向に可動するようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、2片1組の分割筒の結合力を向上させることによって、水中に置かれた2片1組の分割筒の閉じた状態を維持することができる撒き餌かごを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る撒き餌かごのロック状態を示した正面図である。
【
図2】実施形態に係る撒き餌かごのロック状態を示した側面図である。
【
図3】第2分割筒4を第1分割筒3に対して概ね90度開いた状態を示した図である。
【
図4】第2分割筒4を第1分割筒3に対して概ね45度開いた状態を示した図である。
【
図5】第1分割筒3と第2分割筒4の結合をロックする直前の状態を示した図である。
【
図7】枢軸10とスリット15の枢着状態の遷移を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて、本発明に係る撒き餌かごについて説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではなく、様々な構成を採用することもできる。
【0015】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態例に基づき、更に詳細に説明する。
図1は実施形態に係る撒き餌かごのロック状態を示した正面図である。
図2は実施形態に係る撒き餌かごのロック状態を示した側面図である。
図3は、第2分割筒4を第1分割筒3に対して概ね90度開いた状態を示した図である。
図4は、第2分割筒4を第1分割筒3に対して概ね45度開いた状態を示した図である。
図5は、第1分割筒3と第2分割筒4の結合をロックする直前の状態を示した図である。
図6は、
図1のA-A線断面図である。
図7は、枢軸10とスリット15の枢着状態の遷移を示した図である。
図8は、ロック機構を説明するための図である。
【0016】
以下の説明において、上下について述べる場合には、撒き餌かご1の底面側を下、底面とは反対側を上とする。
【0017】
図1に示すように、撒き餌かご1は、第1分割筒3(外筒)と第2分割筒4(内筒)を含んで構成されている。第1分割筒3と第2分割筒4は、開閉手段(枢着手段:枢軸10とスリット15で構成される。)を介して開閉可能に結合されている。第1分割筒3と第2分割筒4が閉じた状態においてその内部は撒き餌収容室51(
図1、
図2参照)として形成される。
【0018】
[第1分割筒3]
第1分割筒3は、第1分割筒本体7と、第1分割筒本体7の上端に形成された屋根部5とが一体に形成されている。
【0019】
(屋根部5)
屋根部5は、周面に撒き餌放出(散出)兼水抜き用の開口9が形成された外側の円錐体6と、同じく周面に周面に撒き餌放出兼水抜き用の開口9が形成され外側の円錐体6内に摺動自在に挿入される内側の円錐体16とを嵌合させて形成されている。外側の円錐体6と内側の円錐体16を相対的に回動させることによって開口9の開閉量の調節が行えるようになっている。なお、撒き餌放出兼水抜き用の開口9は撒き餌を放出させる機能以外に、釣り竿をしゃくりあげた際のかごの上穴(図示せず)から入った水の圧力による第1分割筒本体7内部の詰まりを防止するための水抜き孔としても機能する。
屋根部5の頂上には、例えばT形状の天秤(図示せず)を間にして釣り針が接続されている道糸を連結するための連結部17が設けられている。
【0020】
(第1分割筒本体7)
第1分割筒本体7は、その縁面(分割面)22が第1分割筒本体7の軸方向に延び、その縁面22で断面略長方形状の第1の開口(切り込みが連続(延在)して形成された開口:第1の切り込み)13が形成される。ここで「略」とは長方形に近い楕円形状のような形状も含む意である。第1の開口13の第1周壁部11の内、下側の第1周壁部11は、第1分割筒3と第2分割筒4を結合するようにするために
図6に示すように180度を越えている。すなわち、第1周壁部11の下側の断面形状は、第1の開口13の短手方向一端11aから他端11bまでを結ぶ周壁の横断面形状が略C字形状(
図6参照)となっている。
【0021】
第1の開口13の第1周壁部11の上側(断面略C字状の周壁部分)には、後述する第2分割筒4の舌片25の係合片(フック部)24を係合するための係合孔23が形成されている。第1周壁部11の下側には、第1の開口13とは反対側に第2の開口(切り込みが連続(延在)して形成された開口:第2の切り込み)12が形成されている(
図2)。この第2の開口12の軸方向の長さ(切り込みの深さ)は、第1分割筒3と第2分割筒4を嵌合させ上下スライドロック(後述する)した状態において(
図1、
図2、
図7(D)参照)、第2分割筒4の第3部分周壁部21c(
図3参照:後述する)が第2の開口12の内側領域(開口領域)を全て覆うことを可能にする長さである必要がある。
【0022】
第1の開口13と第2の開口12で挟まれた一対の腕部18,18は回転腕として使用され、この各腕部18,18には細長いスリット(軸受孔)15,15が形成されている。このスリット15,15の長さは、後述する枢軸10,10がスリットの最下端にある状態(
図7(A)参照)において係合片(フック)24,24が係合孔23,23から外れて少なくとも第1の開口13の上端縁辺22aよりも下側に位置する(
図8(A)参照)ような長さであって、後述する枢軸10,10がスリット15,15の最上端にある状態(
図7(D)参照)において係合片(フック部)24,24が係合孔23,23に嵌合できる(
図8(C)参照)ような長さが好ましい。したがって、後述する枢軸10,10がスリット15,15の最上端に位置していない状態であって係合片(フック部)24,24が係合孔23,23に嵌合できるのであればそのような長さにすることもできる。また、第1分割筒3には、多数の貫通孔(水抜穴)43が形成されている。
【0023】
[第2分割筒4]
第2分割筒4は、
図3に示すように、第2分割筒本体8、撒き餌放出部19および底部29を備えて構成されている。なお、底部29としては一般に円錐形状の錘が用いられる。
【0024】
(第2分割筒本体8)
第2分割筒本体8は第2周壁部21を有する。第2周壁部21は、
図3に示すように、第2分割筒本体8の上端から上端-中間付近まで斜めの方向に延びて撒き餌をすくいやすい形状に形成された横断面弧状の第1部分周壁部21aと、第2分割筒本体8の上端-中間付近からしばらく直線に延びた横断面略C字状の第2部分周壁部21bと、その後徐々に下端に向かって曲線を描くように(カーブするように)形成された横断面円形状の第3部分周壁部21cで形成されている。
第1部分周壁部21aは、中央に舌片25、その両端に挟部28,28が形成されている(
図1参照)。舌片25と挟部28,28の間には切り欠き39(
図1参照)が形成され、舌片25は材質(樹脂等)の弾力で径方向に多少可動するようになっている。
【0025】
第3部分周壁部21cの径方向両端部には、
図6および
図8に示すように、大径頭部10aと小径軸体10bで構成された一対の枢軸10,10が形成(起立)されている。小径軸体10bはスリット(軸受孔)15に挿通させた状態で第3部分周壁部21cに一体に形成されている。この枢軸10,10はそれぞれ、スリット(軸受孔)15,15に嵌合して第1分割筒3の腕部18,18に回転自在に枢着される。また、枢軸10,10はスリット(軸受孔)15,15を長手方向に沿って移動可能である。
また、第2分割筒4には、多数の貫通孔(水抜穴)44が形成されている。
【0026】
(撒き餌放出部19および底部29)
第2分割筒本体8の下端に撒き餌放出部19を構成する内側筒体26が一体に形成(連設)されている。内側筒体26には、その周面に撒き餌放出用の開口31が形成されている。さらにその下端に円錐状の底部29が一体に形成(連設)されている。底部29は円錐状に形成され、この下側に水の通孔29aがあり、下端には、錘や仕掛結合用の結合部材(図示せず)が連設されている。底部29が錘等である場合には結合部材(図示せず)は取り付けられていない。
【0027】
撒き餌放出部19は、内側筒体26と外側筒体27を備えて構成される。内側筒体26の外側には、内側の筒体26に対して摺動自在(回転自在)に外側筒体27が嵌着されており、その周面に開口31と略同形状の撒き餌放出(散出)用の開口32が形成されている。すなわち、外側筒体27は回転部材として機能し、外側の筒体27と内側の筒体26を相対的に回動させることによって開口31と開口32の重複する領域面積(開閉量)の調節が行えるようになっている。
【0028】
(枢着機構)
枢着機構は、第2分割筒(4)の第2周壁部21の互いに対向する2ヵ所からそれぞれ径方向外側に向かって起立する断面略T字状の枢軸10,10と、第1分割筒(3)の腕部18,18にそれぞれ形成された細長のスリット15,15で構成されている(
図1、
図2参照)。スリット15,15を回転軸として枢軸10,10を回転(回動)させることができる(
図8(A)~
図8(D)参照)。
【0029】
[第1分割筒3と第2分割筒4のロック解除の状態からロック後の状態までの遷移]
(撒き餌充填時の状態および作用)
撒き餌充填時においては、第2分割筒(4)を第1分割筒(3)に対して概ね90度開いた状態である(
図3、
図7(A)参照)。これは、第1分割筒3の第1周壁部14と第2分割筒4の第2周壁部21の弧状面とが第1分割筒3と第2分割筒4の枢軸10を含む中心線40(
図6参照)に対してその両側にまたがって嵌合する関係が解消されている(嵌合が解除されている)からである。
この状態において、第2分割筒4でシャベルのように撒き餌をすくう、もしくは撒き餌を第2分割筒4の内部に詰める。
【0030】
(撒き餌充填後、第1分割筒3の回動中の状態および作用)
第2分割筒4で撒き餌をすくった後に、第1分割筒3に対して枢軸10を回転中心として第2分割筒(4)を第1分割筒(3)に対して回動(回転)させる(
図4、
図7(B)参照)。
【0031】
(第1分割筒3と第2分割筒4をロックさせる直前の状態および作用)
第2分割筒(4)を第1分割筒(3)に対して枢軸10を回転中心としてさらに回動(回転)させ、第2分割筒(4)の軸方向と第1分割筒(3)の軸方向が同じになった状態である(
図5、
図7(C)参照)。
【0032】
(第1分割筒3と第2分割筒4をロックさせた直後の状態および作用)
第2分割筒(4)の軸方向と第1分割筒(3)の軸方向が同じになった後に、第2分割筒(4)を上方に移動させ、係合片(フック部)24を係合孔(フック孔)23に係合させる(
図1、
図2、
図7(D)参照)。第2分割筒(4)の上方への移動は、枢軸10がスリット15の下側から上側にスライドすることにより容易に行われる。
また、ロック後の状態では、第1分割筒3の第1周壁部14と第2分割筒4の第2周壁部21の弧状面とが第1分割筒3と第2分割筒4の枢軸10を含む中心線40(
図2,
図5、
図6参照)に対してその両側にまたがって嵌合する関係が生じている(嵌合されている)。すなわち、第1分割筒3と第2分割筒4を閉じる際、第1分割筒3の第1周壁部14が、第2分割筒4の第2周壁部21の弧状面に対して拡開後に内向きに収縮することにより、第1分割筒3が第2分割筒(4)に嵌合し、第1分割筒3と第2分割筒4が自動的に結合(ロック)する。
【0033】
ここで、
図2に示すように第1分割筒3と第2分割筒4をロックさせた状態において撒き餌かご1を水中に置いた場合を想定する。撒き餌かご1の右側(
図2の紙面の右側)から左方向(
図2の左向き細矢印の方向)に水流が生じており、釣竿(図示せず)でしゃくり(撒き餌かご1を上下動させる動作)を行っていると仮定すると、撒き餌かご1を構成する第1分割筒3の第1の開口13を閉じている(塞いでいる)第2分割筒4の第2周壁部21の内側から径方向外側(
図2の左向き中太矢印の方向)に遠心力が生じる。
【0034】
上記した従来の撒き餌かごによれば、2片1組の分割筒の結合は、一方の分割筒の周壁部が他方の分割筒の周壁部の弧状面に対して拡開後に内向きに収縮することによりロックされていたので、このロックしている箇所に上記した遠心力がまともにかかると2片1組の分割筒が開いてしまうことがあった。
しかし、本実施形態によれば、従来のロック機構にさらに追加で第2分割筒4に形成されている係合片24を第1分割筒3に形成されている係合孔23に係合させているので、第1分割筒3と第2分割筒4の結合力をより向上させている。しかも係合片24は外側に向かって弾性力が作用し、内側に向かって反力が作用しているので、上記した遠心力を受けると外側に向かって生じる弾性力の増大にともなって内側に向かう反力も増大する。
【0035】
したがって、第1分割筒3と第2分割筒4は、係合片24の係合孔23に対しての係合機能と、第1分割筒3の第1周壁部14と第2分割筒4の第2周壁部21の弧状面との嵌合機能とにより、第1分割筒3と第2分割筒4の結合状態を維持する結合力がより増大する。このため、第1分割筒3と第2分割筒4の閉じた状態を確実に維持することができる。
【0036】
[本実施形態の効果]
本実施形態に係る撒き餌かご(1)は、第1の開口を有する第1分割筒(3)と第2の開口を有する第2分割筒(4)を備える。第1分割筒(3)と第2分割筒(4)のいずれか一方を回動させる枢着手段(10,15)が設けられ、第1の開口(13)の上方に位置する第1分割筒(3)の周壁部に係合孔(23)が形成され、係合孔(23)に係合される係合片(24)を先端に有する舌片(25)が第2分割筒(4)の第2周壁部(21)に形成され、枢着手段(10,15)による回動によって第1分割筒(3)と第2分割筒(4)の軸方向が同じになった後に、係合片(24)を係合孔(23)に係合することにより第1分割筒(3)と第2分割筒(4)の結合がロック状態となる。
第1分割筒(3)と前記第2分割筒(4)を結合する前であって第1分割筒(3)と前記第2分割筒(4)の軸方向が異なる状態において結合前の第2分割筒(4)に撒き餌充填が行われる。そして枢着手段による回動動作の後に簡易な構造のロック機構を介して、第1分割筒(3)と第2分割筒(4)を結合させて、その結合にロックを施している。
したがって、簡易なロック機構により、第1分割筒(3)と第2分割筒(4)を強固に結合させることができるので、水中に置かれた2片1組の分割筒の閉じた状態を維持することができ、撒き餌充填後の水中でのかご使用中における結合力の低下に起因する撒き餌の放出を抑制することができる。
【0037】
本実施形態に係る撒き餌かご(1)によれば、枢着手段(10,15)は、前記第2分割筒(4)の下方の周壁部(21)の互いに対向する2ヵ所からそれぞれ径方向外側に向かって起立する枢軸(10,10)と、第1分割筒(3)の下方に形成された腕部(18,18)にそれぞれ形成されたスリット(15,15)で構成される。各枢軸(10,10)は、大径頭部(10a)と、前記スリット(15)に挿通された小径軸体(10b)とで構成され、前記スリット(15)を回転軸として少なくとも第1分割筒(3)および前記第2分割筒(4)のいずれか一方が回動可能となる。
したがって、一回で餌をすくうことができる量を増大させることができる。
【0038】
本実施形態に係る撒き餌かご(1)によれば、第1分割筒(3)と第2分割筒(4)の結合がロック状態である場合に、係合片を係合孔から外すことにより第1分割筒(3)と第2分割筒(4)の結合がロック解除となる。
したがって、ロック解除が簡易な構成で行えるので、撒き餌充填を効率よくスムースに行うことができる。
【0039】
本実施形態に係る撒き餌かご(1)によれば、各スリット(15,15)のそれぞれの長さは、枢軸(10,10)が対応するスリットの第1分割筒(3)下側端部にある状態において係合片(24)が少なくとも第1の開口(13)の上端縁辺(22a)よりも下側に位置するような長さであって、枢軸(10,10)が対応するスリット(15,15)の第1分割筒(3)上側端部にある状態において係合片(24)が係合孔(23)に係合できる位置にくるような長さである。
したがって、各スリット(15,15)の長さが第1分割筒(3)と第2分割筒(4)の回動が行えるように各スリット(15,15)の長さが決定されるので、第1分割筒(3)と第2分割筒(4)の回動が確実に行える。
【0040】
本実施形態に係る撒き餌かご(1)によれば、第2分割筒(4)を構成する第2分割筒本体(8)の周壁部(21)は、前記第2分割筒本体(8)の上端から中間付近まで斜めの方向に延びた形状であって断面弧状の第1部分周壁部(21a)と、前記第2分割筒本体(8)の中間近傍からしばらく直線に延びた断面略C字状の第2部分周壁部(21b)と、その後徐々に下端に向かって曲線を描くように形成された断面円形状の第3部分周壁部(21c)で形成されている。
したがって、第2分割筒本体(8)の周壁部(21)の先端形状はすくいやすいように斜め方向であり、中間付近の形状は直線であり、後端付近の形状は急勾配となっているので、一回で餌をすくうことができる量を増大させることができる。
【0041】
本実施形態に係る撒き餌かご(1)によれば、第1部分周壁部21aは、中央に前記舌片(25)、その両端に挟部(28,28)が形成され、前記舌片(25)と前記各挟部(28,28)の間には切り欠き(29)が形成され、前記舌片(25)は自身の弾力で径方向に可動するようになっている。
したがって、係合爪の弾性機能により係合爪が係合孔に係合し易くなる。
【0042】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 撒き餌かご
2 かご本体
3 第1分割筒
4 第2分割筒
5 屋根部
6 円錐体
7 第1分割筒本体
8 第2分割筒本体
9 撒き餌放出兼水抜き用開口
10 枢軸
10a 大径頭部
10b 小径軸体
11 第1周壁部
12 第2の開口
13 第1の開口
14 第1周壁部
15 スリット
16 円錐体
17 連結部
18 腕部
19 餌放出部
20 錘体
21 第2周壁部
21a 第1部分周壁部
21b 第2部分周壁部
21c 第3部分周壁部
22 縁面
22a 上端縁面
23 係合孔(フック孔)
24 係合片(フック部)
25 舌片
26 内側筒体
27 外側筒体
28 挟部
29 底部
29a 通孔
31 開口
32 開口
39 切り欠き
40 中心線
51 餌収容室
【要約】
【課題】1組の分割筒の結合力を向上させることによって、水中に置かれた1組の分割筒の閉じた状態を維持することができる撒き餌かごを提供すること。
【解決手段】撒き餌かご1は、第1の開口を有する第1分割筒3と第2の開口を有する第2分割筒4を備える。第1分割筒3と第2分割筒4のいずれか一方を回動させる枢着手段が設けられ、第1の開口13の上方に位置する第1分割筒3の周壁部に係合孔23が形成され、係合孔23に係合される係合片24を先端に有する舌片25が第2分割筒4の第2周壁部21に形成され、枢着手段による回動によって第1分割筒3と第2分割筒4の軸方向が同じになった後に、係合片24を係合孔23に係合することにより第1分割筒3と第2分割筒4の結合がロック状態となる。
【選択図】
図1