(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】複合型熱成形食器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/58 20060101AFI20241002BHJP
B29C 43/20 20060101ALI20241002BHJP
A47G 21/04 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B29C43/58
B29C43/20
A47G21/04 Z
(21)【出願番号】P 2023507408
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(86)【国際出願番号】 CN2020120839
(87)【国際公開番号】W WO2022077257
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】519456594
【氏名又は名称】沙伯特(中山)有限公司
【氏名又は名称原語表記】SABERT (ZHONGSHAN) LIMITED
【住所又は居所原語表記】No.231, Pingchang Road, Sanxiang Township Zhongshan, Guangdong, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ワン カムユー
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-195585(JP,U)
【文献】特開平11-077907(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105029984(CN,A)
【文献】特開2001-341271(JP,A)
【文献】特開昭47-029461(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0037443(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00-43/58
B32B 1/00-43/00
A47G 21/00-23/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合型熱成形食器の製造方法であって、
前記製造方法は予熱ステップ、複合ステップ及び熱成形ステップを順に行うことを含み、
前記予熱ステップは複数層の成形材料を温度35℃~150℃下で加熱することを含み、前記成形材料は紙、プラスチック及び無機層のうちの1種又は少なくとも2種を含み、
前記複合ステップは予熱後の前記成形材料を積層して複合材を形成し、
前記熱成形ステップは温度が80℃~150℃で、圧力が0.05MPa~0.5MPaで前記複合材をホットプレスして三次元形状のボディを形成することを含み、
前記予熱ステップでは、隣接する2つの前記成形材料の間に接着剤が塗布され、
前記接着剤は質量%で20%~50%のホモポリアクリレート及び50%~80%のシリカ顔料を含み、又は接着剤は質量%で50%~95%のPVA及び5%~50%の澱粉を含み、前記接着剤の使用量は3g/m
2~15g/m
2である
ことを特徴とする複合型熱成形食器の製造方法。
【請求項2】
前記成形材料は自己接着性を有し、前記成形材料は前記予熱ステップでは半溶融状態で他の前記成形材料と接着することを特徴とする請求項1に記載の複合型熱成形食器の製造方法。
【請求項3】
前記熱成形ステップの後に、前記三次元形状のボディの内外面に撥油層が塗布され、前記撥油層は質量%で1%~50%の澱粉、50%~98%のポリアクリレートエマルジョン及び1%~3%のアルキルケテンダイマーエマルジョンを含み、前記撥油層の塗布量は0.1g/m
2~2g/m
2であることを特徴とする請求項1に記載の複合型熱成形食器の製造方法。
【請求項4】
前記製造方法は乾燥ステップを含み、前記乾燥ステップは前記複合ステップと熱成形ステップの間に行われ、前記乾燥ステップは前記複合材を乾燥させ、乾燥温度は100℃~200℃であることを特徴とする請求項1に記載の複合型熱成形食器の製造方法。
【請求項5】
前記三次元形状のボディの複合厚さは100μm~10mmであり、前記三次元形状のボディの耐屈曲力は0.9kgf~2.0kgfであり、前記三次元形状のボディの層間結合力は120J/m
2よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の複合型熱成形食器の製造方法。
【請求項6】
前記製造方法は複合マシンによって行われ、前記複合マシンは搬送機構、予熱領域、複合領域及び熱成形領域を含み、前記搬送機構は少なくとも2つの巻き戻し装置を含み、前記予熱領域は少なくとも2つの加熱ローラを含み、前記複合領域は複数のプレスローラを含み、前記熱成形領域はモールディング装置を含み、前記成形材料は前記巻き戻し装置によって前記予熱領域に搬送され、前記加熱ローラは前記成形材料を加熱し、前記プレスローラによって複数層の前記成形材料を複合し、前記モールディング装置は複合後の前記成形材料を熱成形することを特徴とする請求項1~
5のいずれか一項に記載の複合型熱成形食器の製造方法。
【請求項7】
複合型熱成形食器を生産する方法の発明であって、前記食器は請求項1~
6のいずれか一項に記載の製造方法によって複合型熱成形食器を生産することを特徴とする複合型熱成形食器を生産する方法の発明。
【請求項8】
前記接着剤は質量%で20%~50%のホモポリアクリレート及び50%~80%のシリカ顔料を含み、又は接着剤は質量%で50%~95%のPVA及び5%~50%の澱粉を含み、
前記食器の内外面に撥油層が塗布され、前記撥油層は質量%で1%~50%の澱粉、50%~98%のポリアクリレートエマルジョン、1%~3%のアルキルケテンダイマーエマルジョンを含み、前記撥油層の塗布量は0.1g/m
2~2g/m
2であることを特徴とする請求項
7に記載の複合型熱成形食器を生産する方法の発明。
【請求項9】
前記食器はハンドル及び本体部を含み、前記ハンドルと前記本体部は一体成形されて接続され、前記ハンドルと本体部との間のコーナーに内弧が形成されることを特徴とする請求項
7又は
8に記載の複合型熱成形食器を生産する方法の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食器分野に関し、具体的に複合型熱成形食器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パルプモールド食器は近年の市場で人気が比較的に高い食器であり、一部のプラスチック食器を代替する長所及び特徴を有し、食品包装に広く適用される環境に優しい材料である。しかし、パルプモールド食器の生産プロセスは複雑であり、一般的に、一定濃度のパルプスラリー溶液を形成するために原料を破砕する必要があり、真空システムによって水を吸い取ってウエットブランクを形成し、さらに高温ホットプレスによってウエットブランクを乾燥させ、それにより乾燥製品を形成する。パルプモールド食器は製造コストが高く、多くのプロセスを合わせる必要があり、例えば、真空パルプ吸引、高圧力乾燥成形を必要とする。そして、パルプモールド食器の厚さ及び強度はパルプモールド食器の使用性能に重要な影響を与え、厚さ及び強度が要件を満たすことができなければ、パルプモールド食器は使用されるときに、崩れやすく、食べ物を入れにくい。
【0003】
プラスチック食器は外食産業でよく用いられる材料であり、食品と直接接触可能な材料である。環境保護意識の継続的な高まりに伴い、人々は、市場で用いられているプラスチック食器、例えばPP、PET、PE等のほとんどが生分解不能であることを認識しており、そして、ほとんどのプラスチック食器の製造コストが高い。現在、分解性プラスチックで製造された食器もあり、例えば、PLA食器は工業分解性を有するが、価格が高く、市場での使用率は相対的に低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の第1目的は製造プロセスが簡単であり、コストが低く、厚さ及び強度が制御されやすい複合型熱成形食器の製造方法を提供することである。
【0005】
本発明の第2目的は上記の製造方法によって製造された複合型熱成形食器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の第1目的を実現するために、本発明に係る複合型熱成形食器の製造方法は予熱ステップ、複合ステップ及び熱成形ステップを順に行うことを含み、予熱ステップは複数層の成形材料を温度35℃~150℃下で加熱することを含み、成形材料は紙、プラスチック及び無機層のうちの1種又は少なくとも2種を含み、複合ステップは予熱後の前記成形材料を積層して複合材を形成し、熱成形ステップは温度が80℃~150℃で、圧力が0.05MPa~0.5MPaで複合材をホットプレスして三次元形状のボディを形成することを含む。
【0007】
上記の解決手段から分かるように、食器は複数層の同じ材料又は異なる材料を熱成形することによって複合構造を形成し、得られた食器の厚さがより高く、強度がより高く、予熱ステップでは、加熱により自己接着性材料に粘性が生じ、他の成形材料と接着し、又は加熱により得られた複合材の水分を低下させ、複合材の液体に対する吸収性を向上させ、接着剤で複合材を容易に接着し、該製造方法は予熱した後に熱成形することによって直接製品を得て、製品の表面は滑らかで皺がなく、且つ操作プロセスは簡単であり、複雑な工程を必要とせず、生産コストをよりよく制御する。
【0008】
さらなる解決手段として、成形材料は自己接着性を有し、成形材料は予熱ステップで半溶融状態であり、複合ステップでは半溶融状態で他の成形材料と接着する。
【0009】
これで分かるように、予熱ステップは自己接着性を有する成形材料に粘性を生じさせ、成形材料と他の成形材料をより容易且つ迅速に接着して積層させ、複合構造を形成する。
【0010】
さらなる解決手段として、予熱ステップでは、隣接する2つの成形材料の間に接着剤が塗布され、接着剤は質量%で20%~50%のホモポリアクリレート及び50%~80%のシリカ顔料を含み、又は接着剤は質量%で50%~95%のPVA及び5%~50%の澱粉を含み、接着剤の使用量は3g/m2~15g/m2である。
【0011】
これで分かるように、接着剤で非粘着性成形材料を接着して複合構造を形成し、製品の厚さを確保するとともに、複合材の接着強度を確保し、最終的な食器完成品の層間剥離の状況を回避する。
【0012】
さらなる解決手段として、熱成形ステップの後に、三次元形状のボディの内外面に撥油層が塗布され、撥油層は質量%で1%~50%の澱粉、50%~98%のポリアクリレートエマルジョン及び1%~3%のアルキルケテンダイマーエマルジョンを含み、撥油層の塗布量は0.1g/m2~2g/m2である。
【0013】
これで分かるように、撥油層を追加することで、食器は良好な撥水撥油効果を有し、食べ物を入れた食器を加熱するときに、食器が漏れることを回避し、また、該撥油層はフッ素を含まず、PFAS成分を含まず、食品安全要件をよりよく満たし、環境に優しい。
【0014】
さらなる解決手段として、製造方法は乾燥ステップを含み、乾燥ステップは予熱ステップと熱成形ステップとの間に行われ、乾燥ステップは複合材を乾燥させ、乾燥温度は100℃~200℃である。
【0015】
これで分かるように、熱成形ステップの前に乾燥ステップを行うことで、複合材の含水量をよりよく制御し、複合材の液体に対する吸収性を改善し、それによって複合材は接着剤をより均一に吸収し、複合材の層間粘着強度を確保し、ボディ成形率を向上させる。
【0016】
さらなる解決手段として、三次元形状のボディの複合厚さは100μm~10mmであり、三次元形状のボディの耐屈曲力は0.9kgf~2.0kgfであり、三次元形状のボディの層間結合力は120J/m2よりも大きい。
【0017】
これで分かるように、該厚さ及び強度を有する食器は、食器の日常使用性能が消費者の要件を満たし、使用体験がよりよいことを確保する。
【0018】
さらなる解決手段として、製造方法は複合マシンによって行われ、複合マシンは搬送機構、予熱領域、複合領域及び熱成形領域を含み、搬送機構は少なくとも2つの巻き戻し装置を含み、予熱領域は少なくとも2つの加熱ローラを含み、複合領域は複数のプレスローラを含み、熱成形領域はモールディング装置を含み、成形材料は巻き戻し装置によって予熱領域に搬送され、加熱ローラは成形材料を加熱し、プレスローラによって複数層の成形材料を複合し、モールディング装置は複合後の成形材料を熱成形する。
【0019】
これで分かるように、複合マシンによって食器の自動生産を実現し、さらに食器の製造プロセスをより簡単にし、生産効率を効果的に向上させる。
【0020】
上記の第2目的を実現するために、本発明に係る複合型熱成形食器は上記の製造方法で製造され、食器は少なくとも2層の成形材料を含み、前記成形材料を積層して複合構造を形成し、前記成形材料は紙、プラスチック及び無機材料のうちの1種又は少なくとも2種を含む。
【0021】
さらなる解決手段として、隣接する2層の成形材料の間に接着剤が設けられ、接着剤は質量%で20%~50%のホモポリアクリレート及び50%~80%のシリカ顔料を含み、又は接着剤は質量%で50%~95%のPVA及び5%~50%の澱粉を含み、接着剤の使用量は3g/m2~15g/m2であり、食器の内外面に撥油層が塗布され、撥油層は質量%で1%~50%の澱粉、50%~98%のポリアクリレートエマルジョン及び1%~3%のアルキルケテンダイマーエマルジョンを含み、前記撥油層の塗布量は0.1g/m2~2g/m2である。
【0022】
さらなる解決手段として、食器はハンドル及び本体部を含み、ハンドルと本体部は一体成形されて接続され、ハンドルと本体部との間のコーナーに内弧が形成される。
これで分かるように、ハンドルと本体部との間のコーナーに内弧が形成されることで、モールディング後の製品の内弧の位置に割れが形成されることを回避する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は本発明に係る環境に優しい複合型熱成形食器の第1実施形態の複合構造模式図である。
【
図2】
図2は本発明に係る環境に優しい複合型熱成形食器の第2実施形態の複合構造模式図である。
【
図3】
図3は本発明に係る環境に優しい複合型熱成形食器の第3実施形態の複合構造模式図である。
【
図4】
図4は本発明に係る環境に優しい複合型熱成形食器の第4実施形態の複合構造模式図である。
【
図5】
図5は本発明に係る環境に優しい複合型熱成形食器がスプーンである場合の正面図である。
【
図6】
図6は本発明に係る環境に優しい複合型熱成形食器がフォークである場合の正面図である。
【
図7】
図7は本発明に係る環境に優しい複合型熱成形食器がナイフである場合の正面図である。
【
図8】
図8は本発明に係る環境に優しい複合型熱成形食器の製造方法実施例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面及び実施例を参照して本発明をさらに説明する。
【0025】
複合型熱成形食器は少なくとも2層の成形材料を含み、成形材料を積層して複合構造を形成し、成形材料は紙、プラスチック及び無機材料のうちの1種又は少なくとも2種を含む。製造過程では、成形材料は自己接着性を有する場合、成形材料を予熱し、成形材料に粘性を生じさせ、他の成形材料と接着しやすく、複合構造を形成する。成形材料は自己接着性を有さない場合、隣接する2層の成形材料の間に接着剤が設けられ、接着剤は質量%で20%~50%のホモポリアクリレート及び50%~80%のシリカ顔料を含み、又は接着剤は質量%で50%~95%のPVA及び5%~50%の澱粉を含み、接着剤の使用量は3g/m2~15g/m2である。食器の内外面に撥油層が塗布され、撥油層は質量%で1%~50%の澱粉、50%~98%のポリアクリレートエマルジョン及び1%~3%のアルキルケテンダイマーエマルジョンAKDを含み、撥油層の塗布量は0.1g/m2~2g/m2である。
【0026】
図1を参照し、第1実施形態の食器1は第1成形材料11、第2成形材料12及び第3成形材料13を含み、第1成形材料11、第2成形材料12及び第3成形材料13は垂直方向に層毎に積層され、中間層に位置する第2成形材料12の成形材料は自己接着性を有し、隣接層の成形材料は直接接着する。食器の内面及び外面にそれぞれ撥油層14が塗布される。
【0027】
図2を参照し、第2実施形態の食器は第1成形材料21、第2成形材料22及び第3成形材料23を含み、第1成形材料21、第2成形材料22及び第3成形材料23は垂直方向に層毎に積層され、中間層に位置する第2成形材料22は自己接着性を有し、隣接層の成形材料は直接接着する。食器の内面及び外面に撥油層はない。
【0028】
図3を参照し、第3実施形態の食器は第1成形材料31、第2成形材料31及び第3成形材料31を含み、第1成形材料31、第2成形材料32及び第3成形材料33は垂直方向に層毎に積層される。各層の成形材料はいずれも自己接着性を有さず、隣接層の成形材料の間に接着層34を有する。食器の内面及び外面にそれぞれ撥油層35が塗布される。
【0029】
図4を参照し、第4実施形態の食器は第1成形材料41、第2成形材料42及び第3成形材料43を含み、第1成形材料41、第2成形材料42及び第3成形材料43は垂直方向に層毎に積層される。各層の成形材料はいずれも自己接着性を有さず、隣接層の成形材料の間に接着層44を有する。食器の内面及び外面に撥油層が塗布されない。
【0030】
上記第1実施形態~第4実施形態の食器の構造は異なる種類の食器に用いることができ、乾燥食品、ウェット食品、油っこい食品と直接接触して使用することができる。食器の製造過程で、食器の最終的な性能に基づいて三次元形状のボディに撥油層を塗布するか否かを選択することができ、食器が撥水撥油効果を有することを要求しない場合、三次元形状のボディに撥油層を塗布する必要がなく、食器が撥水撥油効果を有することを要求する場合、三次元形状のボディに撥油層を塗布する。
【0031】
図5を参照し、食器はスプーンであってもよく、ハンドル51及び本体部52を含み、ハンドル51と本体部52は一体成形されて接続され、ハンドル51と本体部52との間にコーナー53が形成され、コーナー53は内弧であり、内弧は食器に向かって凹んでいる。ハンドル51と本体部52との間に一定の曲率半径を有する内弧が形成されることで、モールディング後の製品の内弧の位置に割れが形成されることを回避する。
図5を参照し、食器がスプーンである場合、本体部52は略楕円形の凹形支持ブロックであり、該凹形支持ブロックは少量の液体及び固体を入れることができる。
図6を参照し、食器がフォークである場合、本体部52はフォーク形状であり、ハンドル51と本体部52との間のコーナー53は内弧を形成する。
図7を参照し、食器はナイフである場合、本体部52に複数の鋸歯54が形成され、ハンドル51と本体部52との間のコーナー53は内弧を形成する。スプーン、フォーク及びナイフのほか、食器はボウル、皿、平皿等であってもよい。
【0032】
成形材料は紙、プラスチック及び無機材料のうちの1種又は少なくとも2種を選択し、プラスチックは通常のプラスチック及びバイオプラスチックを含み、従って、成形材料は紙、通常のプラスチック、バイオプラスチック及び無機材料のうちの1種又は少なくとも2種を選択することができる。紙の主な材質は植物繊維であり、紙、バイオプラスチック及び無機材料は分解性を有し、環境に優しい。好ましくは、成形材料のうちの1種が通常のプラスチックである場合、成形材料のうちの他の1種は分解性材料である。
【0033】
紙の具体的な指標特徴は表1に示す。
【0034】
【0035】
表1において、紙の層数は1~5層であり、それによって、食器において、材質が紙である1層の成形材料は、その自体構造が1~5層の紙を積層することによって形成され、さらに食器の厚さ及び強度を確保する。食器を製造する成形材料は市場の完成品を購入することができ、完成品は1~5層の紙を有するため、自体が複数層に積層された成形材料を購入し、再び複合して積層することによって、食器の強度をよりよくし、製造プロセスをより簡単にする。
【0036】
紙は第1植物繊維及び第2植物繊維のうちの1種又は2種を含んでもよく、第1植物繊維は木材パルプ、バガスパルプ及び麦わらパルプのうちの1種であり、第2植物繊維は葦パルプ、竹パルプ及び棕櫚パルプのうちの1種である。
【0037】
バイオプラスチックの具体的な指標特徴は表2に示す。
【0038】
【0039】
各層のバイオプラスチックはPLA、PBAT、PBS又はPBSAのうちの1種を選択することができ、バイオプラスチックは生分解性を有し、得られた食器は環境により優しい。
【0040】
通常のプラスチックの具体的な指標特徴は表3に示す。
【0041】
【0042】
無機材料の具体的な指標特徴は表4に示す。
【0043】
【0044】
無機材料は食器の製造過程で板状に統合され、無機材料が他の成形材料に接着することを容易にする。
【0045】
食器の1つの成形材料は自己接着性を有する場合、接着剤を使用せずに隣接層を接着することができる。自己接着性を有する成形材料は、PLA、PBAT、PE、PP、PET、PVDC及びPBS等を有する。
【0046】
各層の成形材料は自己接着性を有さない場合、隣接する2層の成形材料の間に接着剤が設けられ、接着剤は接着の役割を果たし、隣接する2層の成形材料を接着する。接着剤は質量%で20%~50%のホモポリアクリレート及び50%~80%のシリカ顔料を含み、接着剤の使用量は3g/m2~15g/m2である。好ましくは、接着剤は30%のホモポリアクリレート及び70%のシリカ顔料を含み、接着剤の使用量は8g/m2である。別の実施形態として、接着剤は質量%で50%~95%のPVA及び5%~50%の澱粉を含む。
【0047】
接着剤の具体的な指標特徴は表5に示す。
【0048】
【0049】
撥油層は質量%で1%~50%の澱粉、50%~98%のポリアクリレートエマルジョン及び1%~3%のアルキルケテンダイマーエマルジョンを含み、撥油層の塗布量は0.1g/m2~2g/m2である。好ましくは、撥油層は20%~50%の澱粉、48%~78%のポリアクリレートエマルジョン及び2%のアルキルケテンダイマーエマルジョンを含み、撥油層の塗布量は1g/m2である。撥油層は食器の内外面に同時に設けられてもよい。
【0050】
撥油層における澱粉の具体的な指標特徴は表6に示す。
【0051】
【0052】
撥油層におけるポリアクリレートエマルジョンの具体的な指標特徴は表7に示す。
【0053】
【0054】
撥油層におけるアルキルケテンダイマーエマルジョン(AKD)の具体的な指標特徴は表8に示す。
【0055】
【0056】
図8を参照し、本発明の複合型熱成形食器の製造方法は、予熱ステップ、接着剤塗布ステップ、複合ステップ、仕上げステップ、乾燥ステップ、ダイカットステップ、熱成形ステップ及び撥油層塗布ステップを順に行うことを含む。本発明の複合型熱成形食器は複合マシンによって複合され、各ステップに対応して複合マシンに搬送機構、予熱領域、接着剤塗布領域、複合領域、仕上げ領域、乾燥領域、ダイカット領域及び熱成形領域が設けられる。搬送機構は少なくとも2つの巻き戻し装置を含み、リール状の成形材料は巻き戻し装置のローリングによって搬送される。接着剤塗布領域は複数の塗布ローラを含み、塗布ローラに接着剤が塗布される。複合領域は1つ又は複数のプレスローラを含み、複数層の成形材料はプレスローラの間から通過する。仕上げ領域は複数の研磨装置を含む。乾燥領域は複数の乾燥装置を含む。ダイカット領域はダイカット装置を含み、ダイカット装置は複合材を切断することに用いられる。熱成形領域はモールディング装置を含み、モールディング装置は一定サイズの複合材をホットプレス成形する。
【0057】
予熱ステップは具体的に、複数層の成形材料を複数の巻き戻し装置によって予熱領域に搬送し、1層の成形材料は1つの巻き戻し装置に対応する。予熱領域で、加熱ローラによって各層の成形材料の表面を35℃~150℃の温度下で加熱し、設定温度100℃~200℃まで加熱し、加熱温度は成形材料の材質に基づいて調整可能であり、好ましくは、設定温度150℃まで加熱し、加熱方式は熱油熱交換又は蒸気熱交換であってもよい。
【0058】
成形材料は自己接着性を有する場合、接着剤塗布ステップを行う必要がなく、予熱ステップを行った後、成形材料の表面は半溶融状態であり、成形材料に対して直接複合ステップを行う。
【0059】
成形材料は自己接着性を有さない場合、複合ステップの前に、成形材料に対して接着剤塗布ステップを行う必要がある。接着剤塗布ステップは具体的に、第1塗布ローラの外面に接着剤を塗布し、複合材の接着面を第1塗布ローラの外面と接触させ、接着剤を複合材の接着面に塗布し、接着面と他の成形材料は接着剤によって接着される。
【0060】
複合ステップは具体的に、複数層の成形材料がプレスローラから通過するときに、複数層の成形材料をプレスローラの圧力下で接着し、複合材を形成する。上記複合ステップでは、成形材料の層数は2~10層であってもよく、プレスローラの搬送速度は30m/min~150m/minであり、プレスローラのプレス圧力は10psi~200psiである。複合材の厚さは100μm~10mmであり、複合材の層間結合力は120J/m2よりも大きい。該接着剤は20%~50%のホモポリアクリレート及び50%~80%のシリカ顔料を含み、接着剤の使用量は3g/m2~15g/m2であり、又は接着剤は50%~95%のPVA及び5%~50%の澱粉を含む。
【0061】
仕上げステップは具体的に、複合材が仕上げ領域内にあるときに仕上げツールによって複合材に対して研磨又は印刷動作を行う。
【0062】
乾燥ステップは具体的に、乾燥領域内で複合材を乾燥させ、乾燥の温度は100℃~200℃であり、加熱方式は熱油熱交換又は蒸気熱交換である。
【0063】
ダイカットステップは具体的に、ダイカット装置によって複合材を切断して一定のサイズを有する複数の小塊を形成する。
【0064】
熱成形ステップは具体的に、ダイカットステップで複合材を所要の規格に切断した後、複合材が熱成形領域に入り、熱成形領域で所定の形状のモールディング装置、例えば特定の形状の金型を用いてホットプレス成形を行い、三次元形状のボディを形成する。熱成形ステップでは、ホットプレス速度は60pcs/minであり、ホットプレス温度は80℃~150℃であり、ホットプレス圧力は0.05MPa~0.5MPaであり、ホットプレス時間は0.5s~2sであり、加熱方式は電気加熱である。好ましくは、ホットプレス温度は100℃であり、ホットプレス圧力は0.15MPaであり、ホットプレス時間は1.5sである。
【0065】
熱成形ステップを経て、三次元形状を有するボディを得る。食器が最終的に有する機能に基づいて、食器に撥油層を塗布し、食器に撥水撥油効果を有させることができ、撥油層の塗布を行わなくてもよい。撥油層塗布ステップは具体的に、三次元形状を有するボディを、撥油剤を有する容器内に浸漬し、ボディの内外面に塗布層を形成する。撥油層は質量%で20%~50%の澱粉、48%~78%のポリアクリレートエマルジョン及び2%のアルキルケテンダイマーエマルジョンを含み、撥油層の塗布量は1g/m2であり、塗布の時間は1s~5sである。撥油層の塗布が完了した後、撥油剤が塗布された食器を乾燥させ、乾燥温度は100℃~180℃であり、乾燥時間は5s~10sである。
【0066】
図8を参照し、予熱ステップ及び複合ステップが完了した後、複合材のダイカット及び熱成形ステップを直接行うことができる。
【0067】
本発明の複合型熱成形食器は、その耐水性、耐油脂性、耐屈曲性及び層間結合力を検出することによって食器の性能を示す。
【0068】
耐水性の試験は食器が85℃の水に浸漬に耐える時間を試験するものであり、具体的な試験方式としては、食器を85℃の水に浸漬し、一定時間ごとに取り出して、食器の浸透状況を観察し、浸透が発生すれば、該浸漬時間を食器が浸漬に耐える時間とする。
【0069】
耐油脂性の試験は食器が85℃の油に浸漬に耐える時間を試験するものであり、具体的な試験方式としては、食器を85℃の油に浸漬し、一定時間ごとに取り出して、食器の浸透状況を観察し、浸透が発生すれば、該浸漬時間を食器が浸漬に耐える時間とする。
【0070】
耐屈曲性試験kgfは、食器が耐える最大圧力を示すことに用いられ、数値が高いほど、製品が屈曲及び破断に耐える性能が高いことを示す。浸水前の耐屈曲性試験については、食器に負荷を継続的に印加し、食器が屈曲するときに、食器にかかる負荷の重量は食器が耐える最大圧力である。浸水後の耐屈曲性試験は、10min浸水した後に耐える最大圧力値を試験する。
【0071】
製品の層間結合力は、食器の隣接層間の接着力を示すことに用いられ、数値が高いほど、製品の隣接層間の接着力が高く、層間剥離に耐える性能が高いことを示す。製品の層間結合力の試験方式は米国製紙工業国際規格TAPPI T569に記載の試験方法に従うことができる。
【0072】
以下、具体的な実施例を参照して本発明をさらに説明し、それによって本発明をよりよく理解する。
【0073】
本発明は16個の実施例及び5つの比較例を提供し、16個の実施例の製造方法は基本的に同じであり、相違点は以下の各表に示す。実施例1~実施例10の各層の成形材料の選択及び接着剤、撥油層成分の割合は表9に示し、実施例11~実施例13の各層の成形材料の選択及び接着剤、撥油層成分の割合は表10に示し、実施例14~実施例16の各層の成形材料の選択及び接着剤、撥油層成分の割合は表11に示し、比較例1~比較例5の材料選択は表12に示す。上記表における接着層数は接着剤による接着層数に等しくなく、理由としては、一部の成形材料は自己接着性を有し、自己接着性を有する成形材料と他の成形材料との間に接着剤を必要とせず、例えば、接着剤g/m2が0である実施例に示すとおりである。
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
実施例1~16、比較例1~5の食器を試験する。
【0079】
実施例1~実施例16の食器の性能試験結果及び比較例1~比較例5の食器の性能試験結果は表13に示す。
【0080】
【0081】
表9~表13から分かるように、実施例4と実施例5の食器を比較した結果、実施例4と実施例5の食器の層数は異なり、実施例4では3層であり、実施例5では4層である。実施例10と実施例13の食器を比較した結果、実施例10と実施例13の食器の層数は異なり、実施例10では3層であり、実施例13では4層である。実施例15と実施例16の食器を比較した結果、実施例15と実施例16の食器の層数は異なり、実施例15では3層であり、実施例16では4層である。4層の成形材料を有する食器の耐水性及び耐油脂性は3層の成形材料を有する食器の耐水性及び耐油脂性と基本的に同じであり、4層の成形材料を有する食器の耐屈曲性は3層の成形材料を有する食器の耐屈曲性よりも優れているが、3層の成形材料を有する食器の層間結合力は4層の成形材料を有する食器の層間結合力よりも優れている。従って、3層の成形材料を有する食器の層間強度はよりよく、食器は3層の成形材料を有することが好ましい。
【0082】
実施例10と実施例13を比較した結果、2つの実施例では接着剤の使用量は異なり、接着剤の塗布量を向上させることによって、製品の層間結合力を高めることができ、同時に製品の耐水性及び耐油脂性を向上させ、接着剤の8g/m2塗布量は塗布製造装置が提供できる安定パラメータに基づくものである。
【0083】
実施例6~9の食器は撥油層を有さず、実施例6~9の食器と実施例4の食器をそれぞれ比較した結果、撥油層を有さない食器の耐屈曲性は撥油層を有する食器の耐屈曲性よりも明らかに低く、撥油層が食器の漏れを減少させることができると説明される。
【0084】
実施例1と実施例3、実施例2と実施例4、実施例14と実施例15を比較した結果、撥油層の澱粉の使用割合を向上させることによって、製品の耐屈曲性を高めることができるが、割合が過度に増加すると、製品の耐水性が低下する。適切な使用量はこの2つの性能を両立することができる。
【0085】
実施例1~16と比較例1を比較した結果、実施例1~16の食器は、高い剛性耐屈曲性及び層間結合力を有し、市場の通常の単層板紙食器よりも優れている。実施例1~16と比較例2~4を比較した結果、実施例1~16の食器の浸水前の剛性耐屈曲性は従来のプラスチック食器と同等であり、一部の実施例の性能は従来のプラスチック食器よりも優れており、実施例の食器は従来のプラスチック食器を代替して使い捨て食器として使用することができることを示している。実施例1~16と比較例5を比較した結果、実施例1~16の食器の浸水前後の剛性耐屈曲性の低下率は従来の紙モールド食器よりも低く、強度安定性がよりよい。
【0086】
さらに、実施例4の食器と比較例1~5の食器を比較し、性能の向上効果は表14に示す。
【0087】
【0088】
表14から分かるように、実施例4の複合型熱成形食器は各性能において従来の食器に比べて性能が大幅に向上し、且つ生分解性能がよく、家庭で堆肥化することができる。
【0089】
最後に強調する必要がある点として、以上は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を制限するためのものではなく、当業者にとって、本発明は様々な変化や変更を有することができ、本発明の精神及び原則内で行われる任意の修正、均等置換、改良等は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。