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特許7564615回転電機の制御装置、プログラム、回転電機の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】回転電機の制御装置、プログラム、回転電機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241002BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M7/48 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019204094
(22)【出願日】2019-11-11
(65)【公開番号】P2021078263
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】柏▲崎▼ 貴司
(72)【発明者】
【氏名】赤間 貞洋
(72)【発明者】
【氏名】塚本 康裕
(72)【発明者】
【氏名】眞貝 知志
(72)【発明者】
【氏名】石田 稔
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-181947(JP,A)
【文献】特開2014-192950(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180237(WO,A1)
【文献】特開2018-074880(JP,A)
【文献】特開2016-019330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42~ 7/98
H02P27/00~27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相の巻線(11)を有する回転電機(10)と、前記回転電機との間で電力の入出力を行う第1蓄電装置(40)及び第2蓄電装置(42)と、を備える回転電機システム(100)に適用される回転電機の制御装置(50)であって、
前記回転電機システムは、
前記第1蓄電装置に接続され、直列接続された上アームスイッチと下アームスイッチとを相毎に有し、それら上アームスイッチと下アームスイッチとの接続点が各相の巻線の両端のうち第1端に接続される第1インバータ(20)と、
前記第2蓄電装置に接続され、直列接続された上アームスイッチと下アームスイッチとを相毎に有し、それら上アームスイッチと下アームスイッチとの接続点が前記各相の巻線の両端のうち第2端に接続される第2インバータ(30)と、
前記第1蓄電装置と前記第1インバータとを接続する第1接続線(LE1)に設けられる第1遮断スイッチ(60)と、
前記第2蓄電装置と前記第2インバータとを接続する第2接続線(LE2)に設けられる第2遮断スイッチ(62)と、を備え、
前記第1インバータ又は前記第2インバータのいずれか一方に異常が発生したか否かを判定する異常判定部と、
前記第1蓄電装置及び前記第2蓄電装置のうち、前記異常が発生した側の蓄電装置を異常側蓄電装置とし、他方の蓄電装置を正常側蓄電装置とする場合、前記異常判定部により前記異常が発生したと判定されたときに、前記異常側蓄電装置と前記回転電機との間における電力の入出力を遮断する電力遮断部と、
前記電力遮断部により前記異常側蓄電装置と前記回転電機との間における電力の入出力が遮断された場合に、前記正常側蓄電装置により前記回転電機の出力トルクを、当該遮断前における前記回転電機の出力トルク(TE)である遮断前トルク(TS)に維持できるか否かを、前記正常側蓄電装置の電圧に基づいて判定するトルク判定部と、
前記トルク判定部により前記遮断前トルクに維持できると判定された場合に、前記回転電機の出力トルクを前記遮断前トルクに維持すべく、前記第1インバータ及び前記第2インバータのうち、前記正常側蓄電装置に接続されるインバータである正常側インバータの電流指令値を変更する指令値変更部と、を備える回転電機の制御装置。
【請求項2】
前記正常側蓄電装置の電圧を、前記回転電機に印加される電圧の電圧制限値とする場合に、前記回転電機のdq座標系において前記回転電機に流れるd,q軸電流により規定される楕円が電圧制限楕円(CB)とされており、
前記トルク判定部は、前記dq座標系において前記遮断前トルクと等しいトルクとなる点を結んだ等トルク線(LB)の一部が前記電圧制限楕円内に存在する場合に、前記遮断前トルクに維持できると判定し、前記等トルク線が前記電圧制限楕円内に存在しない場合に、前記遮断前トルクに維持できないと判定する請求項に記載の回転電機の制御装置。
【請求項3】
前記指令値変更部は、前記トルク判定部により前記遮断前トルクに維持できると判定された場合に、前記正常側インバータの電流指令値を、前記電圧制限楕円内で前記等トルク線上の等トルク点(PB)の電流指令値に変更する請求項に記載の回転電機の制御装置。
【請求項4】
前記指令値変更部は
記トルク判定部により前記遮断前トルクに維持できないと判定された場合に、前記回転電機が高回転状態であるか否かを判定し、
前記回転電機が高回転状態でないと判定した場合に、前記正常側インバータの電流指令値を、前記電圧制限楕円上において前記回転電機の出力トルクが最大となる最大トルク点(PC)の電流指令値に変更する請求項2または3に記載の回転電機の制御装置。
【請求項5】
前記指令値変更部は、前記回転電機が前記高回転状態であると判定した場合に、前記正常側インバータの電流指令値を、前記電圧制限楕円内でd軸上のゼロトルク点(PD)の電流指令値に変更する請求項に記載の回転電機の制御装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
記第1インバータ及び前記第2インバータのいずれか一方に前記異常が発生したと前記異常判定部により判定した場合に、前記第1インバータ及び前記第2インバータのうち前記異常が発生した異常側インバータにおいて、前記異常が発生した特定スイッチを特定するとともに、前記特定スイッチにオフ異常が発生したか、又はオン異常が発生したかを判定し、
記特定スイッチに前記オフ異常が発生したと判定た場合に、前記第1遮断スイッチと前記第2遮断スイッチとのうち前記異常が発生した側の異常側スイッチをオフに切り替えるとともに、前記異常側インバータにおける前記上アームスイッチと前記下アームスイッチとのうち、前記特定スイッチを含むアーム側の全てのスイッチをオフに切り替え、前記特定スイッチを含まないアーム側の全てのスイッチをオンに切り替え、
記特定スイッチに前記オン異常が発生したと判定た場合に、前記異常側スイッチをオフに切り替えるとともに、前記特定スイッチを含むアーム側の全てのスイッチをオンに切り替え、前記特定スイッチを含まないアーム側の全てのスイッチをオフに切り替える請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の回転電機の制御装置。
【請求項7】
多相の巻線(11)を有する回転電機(10)と、前記回転電機との間で電力の入出力を行う第1蓄電装置(40)及び第2蓄電装置(42)と、を備える回転電機システム(100)に適用されるプログラムであって、
前記回転電機システムは、
前記第1蓄電装置に接続され、直列接続された上アームスイッチと下アームスイッチとを相毎に有し、それら上アームスイッチと下アームスイッチとの接続点が各相の巻線の両端のうち第1端に接続される第1インバータ(20)と、
前記第2蓄電装置に接続され、直列接続された上アームスイッチと下アームスイッチとを相毎に有し、それら上アームスイッチと下アームスイッチとの接続点が前記各相の巻線の両端のうち第2端に接続される第2インバータ(30)と、
前記第1蓄電装置と前記第1インバータとを接続する第1接続線(LE1)に設けられる第1遮断スイッチ(60)と、
前記第2蓄電装置と前記第2インバータとを接続する第2接続線(LE2)に設けられる第2遮断スイッチ(62)と、を備え、
コンピュータに、
前記第1インバータ又は前記第2インバータのいずれか一方に異常が発生したか否かを判定する異常判定処理と、
前記第1蓄電装置及び前記第2蓄電装置のうち、前記異常が発生した側の蓄電装置を異常側蓄電装置とし、他方の蓄電装置を正常側蓄電装置とする場合、前記異常判定処理により前記異常が発生したと判定されたときに、前記異常側蓄電装置と前記回転電機との間における電力の入出力を遮断する電力遮断処理と、
前記電力遮断処理により前記異常側蓄電装置と前記回転電機との間における電力の入出力が遮断された場合に、前記正常側蓄電装置により前記回転電機の出力トルクを、当該遮断前における前記回転電機の出力トルク(TE)である遮断前トルク(TS)に維持できるか否かを、前記正常側蓄電装置の電圧に基づいて判定するトルク判定処理と、
前記トルク判定処理により前記遮断前トルクに維持できると判定された場合に、前記回転電機の出力トルクを前記遮断前トルクに維持すべく、前記第1インバータ及び前記第2インバータのうち、前記正常側蓄電装置に接続されるインバータである正常側インバータの電流指令値を変更する指令値変更処理と、を実行させるプログラム。
【請求項8】
多相の巻線(11)を有する回転電機(10)と、前記回転電機との間で電力の入出力を行う第1蓄電装置(40)及び第2蓄電装置(42)と、を備える回転電機システム(100)に適用される回転電機の制御方法であって、
前記回転電機システムは、
前記第1蓄電装置に接続され、直列接続された上アームスイッチと下アームスイッチとを相毎に有し、それら上アームスイッチと下アームスイッチとの接続点が各相の巻線の両端のうち第1端に接続される第1インバータ(20)と、
前記第2蓄電装置に接続され、直列接続された上アームスイッチと下アームスイッチとを相毎に有し、それら上アームスイッチと下アームスイッチとの接続点が前記各相の巻線の両端のうち第2端に接続される第2インバータ(30)と、
前記第1蓄電装置と前記第1インバータとを接続する第1接続線(LE1)に設けられる第1遮断スイッチ(60)と、
前記第2蓄電装置と前記第2インバータとを接続する第2接続線(LE2)に設けられる第2遮断スイッチ(62)と、を備え、
前記第1インバータ又は前記第2インバータのいずれか一方に異常が発生したか否かを判定する異常判定ステップと、
前記第1蓄電装置及び前記第2蓄電装置のうち、前記異常が発生した側の蓄電装置を異常側蓄電装置とし、他方の蓄電装置を正常側蓄電装置とする場合、前記異常判定ステップにより前記異常が発生したと判定されたときに、前記異常側蓄電装置と前記回転電機との間における電力の入出力を遮断する電力遮断ステップと、
前記電力遮断ステップにより前記異常側蓄電装置と前記回転電機との間における電力の入出力が遮断された場合に、前記正常側蓄電装置により前記回転電機の出力トルクを、当該遮断前における前記回転電機の出力トルク(TE)である遮断前トルク(TS)に維持できるか否かを、前記正常側蓄電装置の電圧に基づいて判定するトルク判定ステップと、
前記トルク判定ステップにより前記遮断前トルクに維持できると判定された場合に、前記回転電機の出力トルクを前記遮断前トルクに維持すべく、前記第1インバータ及び前記第2インバータのうち、前記正常側蓄電装置に接続されるインバータである正常側インバータの電流指令値を変更する指令値変更ステップと、を備える回転電機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の制御装置、プログラム及び回転電機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オープン巻線を有する回転電機を備える駆動システムが知られている。この駆動システムでは、例えば特許文献1に見られるように、回転電機を構成する各相の巻線の両端のうち第1端には第1インバータが接続されている。回転電機は、この第1インバータを介して第1電圧源に接続されており、第1インバータと第1電圧源との間に第1リレーが設けられている。また、回転電機を構成する各相の巻線の両端のうち第2端には第2インバータが接続されている。回転電機は、この第2インバータを介して第2電圧源に接続されており、第2インバータと第2電圧源との間に第2リレーが設けられている。
【0003】
上述した駆動システムでは、第1インバータ又は第2インバータのいずれかの相において、上アームスイッチと下アームスイッチとの双方がオンされる上下アーム短絡異常が検出された場合に、第1,第2リレーのうち上下アーム短絡異常が発生した短絡インバータと接続される短絡側リレーをオフする。これにより、短絡側リレーを介して短絡インバータと接続される短絡側電圧源に過電流が流れることを防ぐことができ、当該電圧源を保護することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-123223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
短絡側リレーがオフされると、第1,第2電圧源のうち短絡側電圧源とは異なる1つの電圧源のみを用いて回転電機の駆動が継続される。特許文献1の技術では、1つの電圧源のみを用いて回転電機の駆動を継続する場合の問題について十分に検討がされていない。
【0006】
例えば、回転電機が高回転状態で駆動している際に、上下アーム短絡異常が発生することが考えられる。この場合に、1つの電圧源のみを用いて回転電機の駆動が継続され、例えば回転電機の出力トルクが急激に減少すると、第1,第2インバータのうち短絡インバータとは異なるインバータに含まれる上,下アームスイッチのオンオフの切り替えが複数回行われるチャタリングが発生する。この結果、回転電機の駆動を適正に継続できない問題が生じる。なお、このような問題は、上下アーム短絡異常に限られず、インバータに含まれる上,下アームスイッチがオフしたままとなるオフ異常、インバータに含まれる上,下アームスイッチ又はリレーがオンしたままとなるオン異常が発生する場合において、1つの電圧源のみを用いて回転電機の駆動を継続するときに共通の問題である。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、インバータ又はリレーに異常が発生した場合でも、回転電機の駆動を適正に継続できる回転電機の制御装置、プログラム及び回転電機の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の手段は、多相の巻線を有する回転電機と、前記回転電機との間で電力の入出力を行う第1蓄電装置及び第2蓄電装置と、を備える回転電機システムに適用される回転電機の制御装置であって、前記回転電機システムは、前記第1蓄電装置に接続され、直列接続された上アームスイッチと下アームスイッチとを相毎に有し、それら上アームスイッチと下アームスイッチとの接続点が各相の巻線の両端のうち第1端に接続される第1インバータと、前記第2蓄電装置に接続され、直列接続された上アームスイッチと下アームスイッチとを相毎に有し、それら上アームスイッチと下アームスイッチとの接続点が前記各相の巻線の両端のうち第2端に接続される第2インバータと、前記第1蓄電装置と前記第1インバータとを接続する第1接続線に設けられる第1遮断スイッチと、前記第2蓄電装置と前記第2インバータとを接続する第2接続線に設けられる第2遮断スイッチと、を備え、前記第1インバータ及び前記第1遮断スイッチの少なくとも一方、又は前記第2インバータ及び前記第2遮断スイッチの少なくとも一方に異常が発生したか否かを判定する異常判定部と、前記第1蓄電装置及び前記第2蓄電装置のうち、前記異常が発生した側の蓄電装置を異常側蓄電装置とし、他方の蓄電装置を正常側蓄電装置とする場合、前記異常判定部により前記異常が発生したと判定されたときに、前記異常側蓄電装置と前記回転電機との間における電力の入出力を遮断する電力遮断部と、前記電力遮断部により前記異常側蓄電装置と前記回転電機との間における電力の入出力が遮断された場合に、前記回転電機の出力トルクを、当該遮断前における前記回転電機の出力トルクである遮断前トルクに維持すべく、前記第1インバータ及び前記第2インバータのうち、前記正常側蓄電装置に接続されるインバータである正常側インバータの電流指令値を変更する指令値変更部と、を備える。
【0009】
この構成では、第1インバータ及び第1スイッチの少なくとも一方、又は第2インバータ及び第2スイッチの少なくとも一方に異常が発生した場合に、第1蓄電装置及び前記第2蓄電装置のうち、異常が発生した側の異常側蓄電装置と回転電機との間における電力の入出力を遮断する。そして、異常側蓄電装置とは異なる正常側蓄電装置のみを用いて回転電機の駆動を継続する。この場合において、上記構成では、回転電機の出力トルクを回転電機の遮断前トルクに維持すべく、第1インバータ及び第2インバータのうち、正常側蓄電装置に接続される正常側インバータの電流指令値を変更する。これにより、異常側蓄電装置と回転電機との間の電力遮断による回転電機の出力トルクの減少を抑制でき、正常側インバータにおけるチャタリングの発生を抑制できる。この結果、回転電機の駆動を適正に継続できる。
【0010】
第2の手段では、前記電力遮断部により前記異常側蓄電装置と前記回転電機との間における電力の入出力が遮断された場合に、前記正常側蓄電装置の電圧に基づいて、前記正常側蓄電装置により前記遮断前トルクに維持できるか否かを判定するトルク判定部を備え、前記指令値変更部は、前記トルク判定部の判定結果に基づいて、前記回転電機の出力トルクを前記遮断前トルクに維持すべく前記正常側インバータの電流指令値を変更する。
【0011】
異常側蓄電装置と回転電機との間における電力の入出力が遮断された場合に、正常側蓄電装置により遮断前トルクに維持できるか否かは、正常側蓄電装置の蓄電状態により変動する。第2の手段では、正常側蓄電装置の電圧に基づいて、正常側蓄電装置により遮断前トルクに維持できるか否かを判定する。正常側蓄電装置の電圧は、正常側蓄電装置の蓄電量に比例する。そのため、正常側蓄電装置の電圧を用いて、正常側蓄電装置により遮断前トルクに維持できるか否かを適正に判定できる。
【0012】
具体的には、第3の手段で示すように、前記正常側蓄電装置の電圧を、前記回転電機に印加される電圧の電圧制限値とする場合に、前記回転電機のdq座標系において前記回転電機に流れるd,q軸電流により規定される楕円が電圧制限楕円とされており、前記トルク判定部は、前記dq座標系において前記遮断前トルクと等しいトルクとなる点を結んだ等トルク線の一部が前記電圧制限楕円内に存在する場合に、前記遮断前トルクに維持できると判定し、前記等トルク線が前記電圧制限楕円内に存在しない場合に、前記遮断前トルクに維持できないと判定することが好ましい。
【0013】
第4の手段では、前記指令値変更部は、前記トルク判定部により前記遮断前トルクに維持できると判定された場合に、前記正常側インバータの電流指令値を、前記電圧制限楕円内で前記等トルク線上の等トルク点の電流指令値に変更する。
【0014】
この構成では、遮断前トルクに維持できると判定された場合には、遮断前トルクに維持する場合の正常側インバータの電流指令値を、電圧制限楕円と等トルク線とを用いて定まる等トルク点の電流指令値に変更する。そのため、電圧制限楕円と等トルク線とを用いて、変更後の電流指令値を容易に設定することができる。
【0015】
第5の手段では、前記指令値変更部は、前記トルク判定部により前記遮断前トルクに維持できないと判定された場合に、前記正常側インバータの電流指令値を、前記電圧制限楕円上において前記回転電機の出力トルクが最大となる最大トルク点の電流指令値に変更する。
【0016】
この構成では、遮断前トルクに維持できないと判定された場合には、遮断前トルクに維持できない場合の正常側インバータの電流指令値を、電圧制限楕円上において回転電機の出力トルクが最大となる最大トルク点の電流指令値に変更する。そのため、遮断前トルクに維持できない場合でも、ある程度の出力トルクを確保することができる。また、異常側蓄電装置と回転電機との間の電力遮断による回転電機の出力トルクの減少を抑制でき、正常側インバータにおけるチャタリングの発生を好適に抑制できる。
【0017】
第6の手段では、前記指令値変更部は、前記トルク判定部により前記遮断前トルクに維持できないと判定された場合に、前記回転電機が高回転状態であるか否かを判定し、前記回転電機が前記高回転状態でない場合に、前記正常側インバータの電流指令値を前記最大トルク点の電流指令値に変更し、前記回転電機が前記高回転状態である場合に、前記正常側インバータの電流指令値を、前記電圧制限楕円内でq軸上のゼロトルク点の電流指令値に変更する。
【0018】
遮断前トルクに維持できない場合には、回転電機の回転を維持しながら回転電機の出力トルクを減少させるために、回転電機に発生させる出力トルクをゼロとすることが考えられる。この場合において、回転電機が高回転状態であるときには、回転電機の逆起電力が過大であることから、この逆起電力が第1インバータ等に印加されることを抑制するために、回転電機にd軸電流を流すことが好ましい。第6の手段では、遮断前トルクに維持できない場合であって、回転電機が高回転状態である場合の正常側インバータの電流指令値を、電圧制限楕円内でd軸上のゼロトルク点の電流指令値に変更する。これにより、回転電機の回転を維持しながら回転電機の出力トルクを減少させることができるとともに、回転電機の逆起電力を抑制できる。これにより、第1インバータ等に過大な逆起電力が印加されることを抑制でき、第1インバータ等を適正に保護できる。
【0019】
そして、回転電機が高回転状態でなくなった場合には、ゼロトルク点の電流指令値から最大トルク点の電流指令値に変更する。これにより、遮断前トルクからの回転電機の出力トルクの減少を好適に抑制できる。
【0020】
第7の手段では、前記異常判定部は、前記第1インバータ及び前記第2インバータのいずれか一方に前記異常が発生したと判定した場合に、前記第1インバータ及び前記第2インバータのうち前記異常が発生した異常側インバータにおいて、前記異常が発生した特定スイッチを特定するとともに、前記特定スイッチにオフ異常が発生したか、又はオン異常が発生したかを判定し、前記電力遮断部は、前記異常判定部により前記特定スイッチに前記オフ異常が発生したと判定された場合に、前記第1遮断スイッチと前記第2遮断スイッチとのうち前記異常が発生した側の異常側スイッチをオフに切り替えるとともに、前記異常側インバータにおける前記上アームスイッチと前記下アームスイッチとのうち、前記特定スイッチを含むアーム側の全てのスイッチをオフに切り替え、前記特定スイッチを含まないアーム側の全てのスイッチをオンに切り替え、前記異常判定部により前記特定スイッチに前記オン異常が発生したと判定された場合に、前記異常側スイッチをオフに切り替えるとともに、前記特定スイッチを含むアーム側の全てのスイッチをオンに切り替え、前記特定スイッチを含まないアーム側の全てのスイッチをオフに切り替える。
【0021】
この構成では、第1インバータ及び第2インバータのいずれか一方に異常が発生したと判定した場合に、第1インバータ及び第2インバータのうち異常が発生した異常側インバータにおいて、異常が発生した特定スイッチを特定するとともに、特定スイッチに発生した異常の種類を判定する。そして、判定した異常の種類によって、異常側インバータに含まれる上,下アームスイッチのオンオフを切り替える。これにより、特定スイッチに発生した異常の種類に応じて、異常側インバータを適正に中性点駆動することができ、回転電機の駆動を継続できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】駆動システムの全体構成図。
図2】変更処理の手順を示すフローチャート。
図3】第2電圧制限楕円内に等トルク線の一部が存在する場合の電流指令値を示す図。
図4】第2電圧制限楕円内に等トルク線が存在しない場合の電流指令値を示す図。
図5】第2電圧制限楕円内に等トルク線が存在しない場合の電流指令値を示す図。
図6】q軸電流をゼロとした場合における角速度とd軸電流との関係を示す図。
図7】第1インバータの上アームスイッチが異常となった場合における異常の種類とスイッチの切り替えとの関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る回転電機の制御装置を、車載の回転電機システム100に適用した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る回転電機システム100は、回転電機10と、第1インバータ20と、第2インバータ30と、第1蓄電装置としての第1バッテリ40と、第2蓄電装置としての第2バッテリ42と、回転電機10を制御対象とする制御装置50と、を備えている。
【0025】
回転電機10は、力行駆動及び回生駆動の機能を有し、具体的には、MG(Motor Generator)である。回転電機10は、第1バッテリ40及び第2バッテリ42との間で電力の入出力を行うものである。具体的には、力行駆動時には、第1バッテリ40及び第2バッテリ42から入力される電力により駆動し、車両に推進力を付与し、回生駆動時には、車両の減速エネルギを用いて発電を行い、第1バッテリ40及び第2バッテリ42に電力を出力する。
【0026】
回転電機10は、オープンデルタ型の3相の巻線11を有する。巻線11は、U相、V相、及び、W相の各相に対応した多相巻線である。回転電機10のロータは、車両の駆動輪と動力伝達が可能なように接続されている。回転電機10は、例えば同期機である。
【0027】
回転電機10の各相の巻線11の両端のうち第1端は、第1インバータ20を介して、第1バッテリ40に接続されている。第1バッテリ40は、充放電可能な蓄電池であり、例えば複数のリチウムイオン蓄電池が直列接続された組電池である。なお、第1バッテリ40は、他の種類の蓄電池であってもよい。
【0028】
第1インバータ20は、高電位側のスイッチング素子である上アームスイッチ22(22A,22B,22C)、及び低電位側のスイッチング素子である下アームスイッチ23(23A,23B,23C)の直列接続体が、並列に接続されて構成されている。各相において、上アームスイッチ22と下アームスイッチ23の接続点には、巻線11の第1端が接続されている。なお、本実施形態では、スイッチ22,23として、電圧制御形の半導体スイッチング素子を用いており、より具体的にはIGBTを用いている。各スイッチ22,23には、フリーホイールダイオード24が逆並列にそれぞれ接続されている。
【0029】
また、各相の巻線11の両端のうち第2端は、第2インバータ30を介して、第2バッテリ42に接続されている。第2バッテリ42は、充放電可能な蓄電装置である。なお、第2バッテリ42は、第1バッテリ40と同一の種類の蓄電装置であってもよければ、異なる種類の蓄電装置であってもよい。
【0030】
第2インバータ30は、高電位側のスイッチング素子である上アームスイッチ32(32A,32B,32C)、及び低電位側のスイッチング素子である下アームスイッチ33(33A,33B,33C)の直列接続体が、並列に接続されて構成されている。各相において、上アームスイッチ32と下アームスイッチ33の接続点には、巻線11の第2端が接続されている。なお、本実施形態では、スイッチ32,33として、電圧制御形の半導体スイッチング素子を用いており、より具体的にはIGBTを用いている。各スイッチ32,33には、フリーホイールダイオード34が逆並列にそれぞれ接続されている。
【0031】
第1バッテリ40の高電位側と第1インバータ20の高電位側とは、第1電源線LE1により接続されており、第1バッテリ40の低電位側と第1インバータ20の低電位側とは、第1接地線LG1により接続されている。第1電源線LE1と第1接地線LG1との間には、第1コンデンサ25が接続されている。また、第2インバータ30の高電位側と第2バッテリ42の高電位側とは、第2電源線LE2により接続されており、第2インバータ30の低電位側と第2バッテリ42の低電位側とは、第2接地線LG2により接続されている。第2電源線LE2と第2接地線LG2との間には、第2コンデンサ35が接続されている。なお、本実施形態では、第1インバータ20の高電位側と第2インバータ30の高電位側とは接続線により接続されておらず、第1インバータ20の低電位側と第2インバータ30の低電位側とは、接続線により接続されていない。
【0032】
第1電源線LE1のうち第1コンデンサ25と第1バッテリ40との間に、第1遮断スイッチ60が設けられている。また、第2電源線LE2のうち第2コンデンサ35と第2バッテリ42との間に、第2遮断スイッチ62が設けられている。本実施形態では、これらのスイッチ60,62として、リレースイッチが用いられている。第1遮断スイッチ60及び第2遮断スイッチ62は、回転電機10の駆動時において通常オンされている。なお、本実施形態において、第1電源線LE1が「第1接続線」に相当し、第2電源線LE2が「第2接続線」に相当する。
【0033】
制御装置50は、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等からなる周知のマイクロコンピュータを備えている。制御装置50は、各種信号を取得し、取得した情報に基づき、各種制御を実施する。
【0034】
具体的には、制御装置50は、回転電機10の駆動時に、第1バッテリ40の第1電圧VB1を検出する第1電圧センサ51、第2バッテリ42の第2電圧VB2を検出する第2電圧センサ52、回転電機10の各相の巻線11に流れる電流IBを検出する相電流センサ53、及び回転電機10の電気角θを検出する回転角センサ54等から検出値を取得する。制御装置50は、取得した検出値に基づき、回転電機10の制御量をその指令値に制御すべく、第1インバータ20及び第2インバータ30を制御する。制御量は、例えば出力トルクTEである。
【0035】
具体的には、制御装置50は、第1インバータ20の制御において、デッドタイムを挟みつつスイッチ22,23を交互にオンとすべく、スイッチ22,23それぞれに対応する第1駆動信号SG1を、スイッチ22,23に出力する。第1駆動信号SG1は、スイッチ22,23のオン状態への切り替えを指示するオン指令と、オフへの切り替えを指示するオフ指令とのいずれかをとる。第2インバータ30における第2駆動信号SG2についても同様である。
【0036】
また、制御装置50は、取得した検出値に基づいて、第1インバータ20及び第1遮断スイッチ60の異常を判定する。第1インバータ20の異常は、例えば第1インバータ20に含まれるスイッチ22,23がオフしたままとなるスイッチ22,23のオフ異常や、スイッチ22,23がオンしたままとなるスイッチ22,23のオン異常である。また、第1遮断スイッチ60の異常は、例えば第1遮断スイッチ60がオフしたままとなる第1遮断スイッチ60のオフ異常である。そして、判定した異常に基づいて、第1,第2遮断スイッチ60,62のオンオフを切り替えるべく、第1,第2切替信号SC1,SC2を生成し、生成した第1,第2切替信号SC1,SC2を第1,第2遮断スイッチ60,62に出力する。制御装置50は、生成した第1,第2切替信号SC1,SC2に対応するように、第1,第2駆動信号SG1,SG2を生成する。
【0037】
さらに、制御装置50は、取得した第1バッテリ40の第1電圧VB1に基づいて、第1バッテリ40の第1残容量(例えばSOC)を算出し、取得した第2バッテリ42の第2電圧VB2に基づいて、第2バッテリ42の第2残容量(例えばSOC)を算出する。そして、算出した第1残容量及び第2残容量に基づいて、第1,第2駆動信号SG1,SG2を生成する。
【0038】
ところで、本実施形態の回転電機システム100では、例えば第1インバータ20のいずれかの相において、上アームスイッチ22にオン異常が発生し、上アームスイッチ22と下アームスイッチ23との双方がオンされる上下アーム短絡異常が発生することがある。この場合に、従来技術のように、第1遮断スイッチ60と第2遮断スイッチ62のうち、上下アーム短絡異常が発生した第1インバータ20と接続される第1遮断スイッチ60をオフすることができる。これにより、第1バッテリ40に過電流が流れることを防ぐことができ、第1バッテリ40を保護することができる。
【0039】
第1遮断スイッチ60がオフされた後は、第2バッテリ42のみを用いて回転電機10の駆動が継続される。この場合に、第2インバータ30に含まれるスイッチ32,33に出力される第2駆動信号SG2によっては、回転電機10の駆動を適正に継続できない。
【0040】
例えば、回転電機10が高回転状態で駆動している際に、上下アーム短絡異常が発生することが考えられる。この場合に、第2バッテリ42のみを用いて回転電機10の駆動が継続されるとともに、第2インバータ30に含まれるスイッチ32,33に出力される第2駆動信号SG2が、第1遮断スイッチ60がオフされる前の第2駆動信号SG2に維持されると、回転電機10の出力トルクTEが急激に減少する。これにより、スイッチ32,33のオンオフの切り替えが複数回行われるチャタリングが発生すると、回転電機10の駆動を適正に継続できない。
【0041】
そこで、本実施形態の回転電機システム100では、回転電機10の出力トルクTEを、第1遮断スイッチ60がオフされる前の回転電機10の出力トルクTEである遮断前トルクTSに維持すべく、スイッチ32,33に出力される第2駆動信号SG2を変更する変更処理を実施する。これにより、第1遮断スイッチ60がオフされることによる回転電機10の出力トルクTEの減少を抑制でき、第2インバータ30におけるチャタリングの発生を抑制できる。この結果、回転電機10の駆動を適正に継続できる。なお、第2インバータ30において上下アーム短絡異常が検出された場合、及び第1インバータ20又は第2インバータ30に他の異常が検出された場合についても同様である。
【0042】
図2に、本実施形態の変更処理のフローチャートを示す。制御装置50は、回転電機10の駆動時に、所定の制御周期毎に変更処理を繰り返し実施する。
【0043】
変更処理を開始すると、まずステップS10~S16において、回転電機システム100のうち第1インバータ30及び第1遮断スイッチ60の少なくとも一方、又は第2インバータ30及び第2遮断スイッチ62の少なくとも一方に異常が発生したか否かを判定する。なお、本実施形態において、ステップS10~S1の処理が「異常判定部」に相当する。
【0044】
具体的には、まずステップS10において、相電流センサ53から取得された電流IBに基づいて、回転電機システム100に異常が発生したか否かを判定する。
【0045】
第1,第2インバータ20,30に含まれるスイッチ22,23,32,33のオン異常による過電流や、スイッチ22,23,32,33及び第1,第2遮断スイッチ60,62のオフ異常による電流遮断が発生していない場合に、取得された電流IBが規定電流範囲内となる。この場合、ステップS10で否定判定し、変更処理を終了する。
【0046】
一方、過電流や電流遮断が発生した場合に、取得された電流IBが規定電流範囲外となる。この場合、ステップS10で肯定判定し、続くステップS12において、第1,第2電圧センサ51,52から取得された第1,第2電圧VB1,VB2に基づいて、異常が発生した機器は、第1,第2インバータ20,30であるか否かを判定する。
【0047】
第1,第2遮断スイッチ60,62のオフ異常により、第1,第2バッテリ40,42と第1,第2インバータ20,30との間の電力遮断が発生した場合に、第1,第2電圧VB1,VB2の脈動が抑制される。この場合、ステップS12で否定判定し、ステップS16に進む。
【0048】
一方、電力遮断が発生していない場合に、第1,第2インバータ20,30に含まれるスイッチ22,23,32,33のオンオフの切り替えにより第1,第2電圧VB1,VB2が脈動する。この場合、ステップS12で肯定判定し、続くステップS14において、異常が発生したインバータは、第1インバータ20であるか否かを判定する。ステップS14で肯定判定すると、ステップS18において、第1遮断スイッチ60をオフし、ステップS22~S30に進む。一方、ステップS14で否定判定すると、ステップS20において、第2遮断スイッチ62をオフし、ステップS32~S40に進む。
【0049】
つまり、ステップS18,S20では、回転電機システム100に異常が発生したと判定した場合に、第1バッテリ40と第2バッテリ42とのうち、異常が発生した側のバッテリと回転電機10との間における電力の入出力を遮断する。なお、本実施形態において、ステップS18,S20の処理が「電力遮断部」に相当する。
【0050】
続くステップS22~S30では、異常が発生したスイッチ22,23を特定するとともに、その異常がオフ異常であるかオン異常であるかを判定する。つまり、ステップS22~S30では、第1,第2インバータ20,30のうち異常が発生したスイッチを含むインバータである異常側インバータが第1インバータ20である場合に、この第1インバータ20において、各スイッチ22,23のうち異常が発生したスイッチである特定スイッチを特定する。また、特定スイッチにオフ異常が発生したか、又はオン異常が発生したかを判定する。
【0051】
具体的には、まずステップS22において、異常が発生したスイッチは、上アームスイッチ22であるか否かを判定する。ステップS22で肯定判定すると、ステップS24において、上アームスイッチ22に発生した異常がオフ異常であるか否かを判定する。また、ステップS22で否定判定すると、ステップS26において、下アームスイッチ23に発生した異常がオフ異常であるか否かを判定する。
【0052】
ステップS22~S26では、例えば相電流センサ53から取得された電流IBの大きさや向きの他、第1,第2インバータ20,30の駆動方法に基づいて判定を実施する。駆動方法には、例えばPWM駆動や中性点駆動が存在する。ここで、PWM駆動は、回転電機10への出力電圧の目標値である目標電圧と、三角波信号等のキャリア信号との大小比較に基づいて、各相の上,下アームスイッチの状態を制御する駆動である。また、中性点駆動は、該当するインバータの上,下アームスイッチの少なくとも一方をオン状態に維持する駆動である。
【0053】
上アームスイッチ22にオフ異常が発生した場合、ステップS24で肯定判定し、ステップS28において、上アームスイッチ22をオフに切り替えるとともに、下アームスイッチ23をオンに切り替え、ステップS44~S54に進む。つまり、ステップS28では、上アームスイッチ22にオフ異常が発生したと判定した場合に、第1遮断スイッチ60と第2遮断スイッチ62とのうち、異常が発生した側のスイッチである第1遮断スイッチ60をオフに切り替える。そして、第1インバータ20における上アームスイッチ22と下アームスイッチ23のうち、異常が発生した上アームスイッチ22を含む全ての相の上アームスイッチ22をオフに切り替え、全ての相の下アームスイッチ23をオンに切り替える(図7参照)。
【0054】
一方、上アームスイッチ22にオン異常が発生した場合、ステップS24で否定判定し、ステップS30において、上アームスイッチ22をオンに切り替えるとともに、下アームスイッチ23をオフに切り替え、ステップS44~S54に進む。つまり、ステップS30では、上アームスイッチ22にオン異常が発生したと判定した場合に、第1遮断スイッチ60と第2遮断スイッチ62とのうち、異常が発生した側のスイッチである第1遮断スイッチ60をオフに切り替える。そして、第1インバータ20における上アームスイッチ22と下アームスイッチ23のうち、異常が発生した上アームスイッチ22を含む全ての相の上アームスイッチ22をオンに切り替え、全ての相の下アームスイッチ23をオフに切り替える(図7参照)。
【0055】
また、下アームスイッチ23にオフ異常が発生した場合、ステップS26で肯定判定し、ステップS30に進む。また、下アームスイッチ23にオン異常が発生した場合、ステップS26で否定判定し、ステップS28に進む。
【0056】
また、ステップS32~S40では、異常が発生したスイッチ32,33を特定するとともに、その異常がオフ異常であるかオン異常であるかを判定する。具体的には、まずステップS32において、異常が発生したスイッチは、上アームスイッチ32であるか否かを判定する。ステップS32で肯定判定すると、ステップS34において、上アームスイッチ32に発生した異常がオフ異常であるか否かを判定する。また、ステップS32で否定判定すると、ステップS36において、下アームスイッチ33に発生した異常がオフ異常であるか否かを判定する。
【0057】
上アームスイッチ32にオフ異常が発生した場合、ステップS34で肯定判定し、ステップS38において、上アームスイッチ32をオフに切り替えるとともに、下アームスイッチ33をオンに切り替え、ステップS64~S74に進む。つまり、ステップS38では、上アームスイッチ32にオフ異常が発生したと判定した場合に、第1遮断スイッチ60と第2遮断スイッチ62とのうち、異常が発生した側のスイッチである第2遮断スイッチ62をオフに切り替える。そして、第2インバータ30における上アームスイッチ32と下アームスイッチ33のうち、異常が発生した上アームスイッチ32を含む全ての相の上アームスイッチ32をオフに切り替え、全ての相の下アームスイッチ33をオンに切り替える。
【0058】
一方、上アームスイッチ32にオン異常が発生した場合、ステップS34で否定判定し、ステップS40において、上アームスイッチ32をオンに切り替えるとともに、下アームスイッチ33をオフに切り替え、ステップS64~S74に進む。つまり、ステップS40では、上アームスイッチ22にオン異常が発生したと判定した場合に、第1遮断スイッチ60と第2遮断スイッチ62とのうち、異常が発生した側のスイッチである第2遮断スイッチ62をオフに切り替える。そして、第2インバータ30における上アームスイッチ32と下アームスイッチ33のうち、異常が発生した上アームスイッチ32を含む全ての相の上アームスイッチ32をオンに切り替え、全ての相の下アームスイッチ33をオフに切り替える。
【0059】
また、下アームスイッチ33にオフ異常が発生した場合、ステップS36で肯定判定し、ステップS40に進む。また、下アームスイッチ33にオン異常が発生した場合、ステップS36で否定判定し、ステップS38に進む。
【0060】
ステップS44~S54では、回転電機10の出力トルクTEを遮断前トルクTSに維持すべく、異常が発生していない側の第2バッテリ42に接続される第2インバータ30の電流指令値IKを変更する。ここで、第1遮断スイッチ60がオフされる直前とは、例えば、異常判定した制御周期の1つ前、又は数個前を意味する。
【0061】
具体的には、まずステップS44において、第2電圧センサ52から取得された第2電圧VB2に基づいて、遮断前トルクTSに維持できるか否かを判定する。なお、本実施形態において、ステップS44,S64の処理が「トルク判定部」に相当する。
【0062】
ここで、遮断前トルクTSの維持判定について、図3図5を用いて説明する。図3には、第1バッテリ40の第1電圧VB1と第2バッテリ42の第2電圧VB2との加算値を回転電機10に印加される電圧の電圧制限値VRとする場合に、回転電機10のdq座標系において、回転電機10に流れる電流IBにより定まる回転電機10の電流ベクトルのd軸成分(以下、d軸電流)Id及びq軸成分(以下、q軸電流)Iqにより規定される楕円である第1電圧制限楕円CAが記載されている。第1電圧制限楕円CAは、第1バッテリ40及び第2バッテリ42により回転電機10への電力供給が可能な場合において、回転電機10に流すことができる電流ベクトルの範囲である。
【0063】
また、図3には、回転電機10に流れる単位大きさあたりの電流ベクトルに対して回転電機10の出力トルクTEが最大となるd,q軸電流Id,Iqから定まる最大トルク最小電流曲線LAが記載されている。図3に矢印YA(破線)で示すように、本実施形態では、第1バッテリ40及び第2バッテリ42により回転電機10への電力供給が可能な場合において、回転電機10には第1電圧制限楕円CAと最大トルク最小電流曲線LAとの交点PAで定まる電流ベクトルが流れている。つまり、この交点PAで定まる電流ベクトルが流れる場合の出力トルクTEが遮断前トルクTSである。図3には、出力トルクTEが遮断前トルクTSと等しくなるd,q軸電流Id,Iqから定まる等トルク線LBが記載されている。
【0064】
第1遮断スイッチ60のオフにより、第2バッテリ42のみから回転電機10に電力供給されるようになると、電圧制限値VRの低下により、電圧制限楕円が第1電圧制限楕円CAから第2電圧制限楕円CBへと縮小する。ここで第2電圧制限楕円CBは、第2バッテリ42の第2電圧VB2を電圧制限値VRとする場合に規定される電圧制限楕円である。ステップS42では、第2電圧制限楕円CB内に等トルク線LBの一部が存在するか否かを判定することにより、回転電機10の出力トルクを遮断前トルクTSに維持できるか否かを判定する。
【0065】
第2電圧制限楕円CB内に等トルク線LBの一部が存在する場合、遮断前トルクTSに維持できると判定する。この場合、ステップS44で肯定判定し、続くステップS50において、第2インバータ30の電流指令値IKを、第2電圧制限楕円CB内で等トルク線LB上の等トルク点PB(図3参照)の電流指令値IKに変更し、変更処理を終了する。ここで電流指令値IKは、ある出力トルクTEを生成するためのd,q軸電流Id,Iqの制御目標値である。
【0066】
一方、第2電圧制限楕円CB内に等トルク線LBが存在しない場合、遮断前トルクTSに維持できないと判定する。この場合、ステップS44で否定判定し、続くステップS48において、回転電機10が高回転状態であるか否かを判定する。ここで高回転状態とは、回転電機10の角速度ωが閾値ωth(図6参照)よりも大きいことを意味し、回転電機10の角速度ωは、回転角センサ54から取得される回転電機10の電気角θに基づいて算出される。
【0067】
回転電機10の角速度ωが閾値ωth以下であり、回転電機10が低回転状態である場合には、ステップS48で肯定判定する。この場合、続くステップS52において、第2インバータ30の電流指令値IKを、第2電圧制限楕円CB上において回転電機10の出力トルクTEが最大となる最大トルク点PC(図4参照)の電流指令値IKに変更し、変更処理を終了する。
【0068】
一方、回転電機10の角速度ωが閾値ωthよりも大きく、回転電機10が高回転状態である場合には、ステップS48で否定判定する。この場合、続くステップS54において、第2インバータ30の電流指令値IKを、第2電圧制限楕円CB内でq軸上のゼロトルク点PD(図5参照)の電流指令値IKに変更し、変更処理を終了する。
【0069】
つまり、ステップS48~S54では、ステップS44の判定結果に基づいて、遮断前トルクTSに維持すべく第2インバータ30の電流指令値IKを変更する。なお、本実施形態において、ステップS48~54,S68~S74の処理が「指令値変更部」に相当する。
【0070】
なお、ステップS64~S74の処理は、ステップS44~S54の処理と略同一の処理であるため、重複した説明を省略する。つまり、ステップS64では、第1電圧センサ51から取得された第1電圧VB1に基づいて、回転電機10の出力トルクを遮断前トルクTSに維持できるか否かを判定する。また、ステップS68~S74では、ステップS64の判定結果に基づいて、遮断前トルクTSに維持すべく第1インバータ20の電流指令値IKを変更する。
【0071】
一方、異常が発生した機器が第1,第2遮断スイッチ60,62である場合、ステップS16において、異常が発生した遮断スイッチが、第1遮断スイッチ60であるか否かを判定する。ステップS16で肯定判定すると、ステップS30に進み、ステップS16で否定判定すると、ステップS40に進む。異常が発生した機器が第1,第2遮断スイッチ60,62である場合、この第1,第2遮断スイッチ60,62の異常により、第1,第2バッテリ40,42のうち異常が発生した側のバッテリと回転電機10との間における電力の入出力が遮断される。なお、ステップS16で肯定判定した場合に、ステップS28に進んでもよければ、ステップS16で否定判定した場合に、ステップS38に進んでもよい。
【0072】
続いて、図3図5を用いて、変更処理をより具体的に説明する。図3では、第2電圧制限楕円CB内に等トルク線LBの一部が存在する状況が示されている。この場合、図3に矢印YB(実線)で示すように、第2インバータ30の電流指令値IKが等トルク点PBの電流指令値IKに変更される。
【0073】
本実施形態では、等トルク点PBとして、第2電圧制限楕円CB内かつ等トルク線LB上において、交点PAに最も近い点を等トルク点PBとして設定する。これにより、d軸電流Idの絶対値の増大を抑制でき、第2バッテリ42の電力消費を抑制できる。
【0074】
図4図5では、第2電圧制限楕円CB内に等トルク線LBが存在しない状況が示されている。このうち、図4では、図5に比べて第1電圧制限楕円CAが小さく、第1遮断スイッチ60がオフされる前の回転電機10が低回転状態である状況が示されている。また、図5では、図4に比べて第1電圧制限楕円CAが大きく、第1遮断スイッチ60がオフされる前の回転電機10が高回転状態である状況が示されている。
【0075】
図4に示すように、第2電圧制限楕円CB内に等トルク線LBが存在せず、回転電機10が低回転状態である場合、図4に矢印YC(実線)で示すように、第2インバータ30の電流指令値IKが最大トルク点PCの電流指令値IKに変更される。
【0076】
ここで、最大トルク点PCの求め方について、図4を用いて説明する。図4には、遮断前トルクTSから出力トルクTEを減少させた等トルク線を作成した場合に、初めて第2電圧制限楕円CBに当接した特定等トルク線LCが記載されている。最大トルク点PCを求める場合には、この特定等トルク線LCを求め、第2電圧制限楕円CBと特定等トルク線LCとの交点を、最大トルク点PCとして設定する。
【0077】
また、図5に示すように、第2電圧制限楕円CB内に等トルク線LBが存在せず、回転電機10が高回転状態である場合、図5に矢印YD(実線)で示すように、第2インバータ30の電流指令値IKがゼロトルク点PDの電流指令値IKに変更される。
【0078】
本実施形態では、ゼロトルク点PDとして、第2電圧制限楕円CB内において、d軸電流Idが最も小さい点をゼロトルク点PDとして設定する。これにより、回転電機10の逆起電力を抑制でき、第1インバータ20等に過大な逆起電力が印加されることを抑制できる。
【0079】
ここで、ゼロトルク点PDにおけるd軸電流Idは、式1~式4を用いて以下のように示される。式1には、回転電機10のdq座標系において回転電機10に印加される電圧のd軸成分(以下、d軸電圧)Vd及びq軸成分(以下、q軸電圧)Vqと、第2バッテリ42の第2電圧VB2との関係が示されている。
【0080】
【数1】
本実施形態では、d軸電圧Vdが、回転電機10のd軸電流Id、d軸インダクタンスLd、鎖交磁束成分Ψa、及び角速度ωを用いて式2のように表され、q軸電圧Vqは、回転電機10のq軸電流Iq、q軸インダクタンスLq、及び角速度ωを用いて式3のように表される。
【0081】
【数2】
【数3】
そのため、q軸電流Iqがゼロとなるゼロトルク点PDのd軸電流Idは、式1~式3を用いて式4のように表される。
【0082】
【数4】
図6に示すように、ゼロトルク点PDにおけるd軸電流Idは、角速度ωが大きくなるほど小さくなり、角速度ωの増大により一定の値(-Ψa/Ld)に収束する。
【0083】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0084】
・本実施形態では、第1インバータ20及び第1遮断スイッチ60の少なくとも一方に異常が発生した場合に、第1バッテリ40と回転電機10との間における電力の入出力を遮断する。そして、第2バッテリ42のみを用いて回転電機10の駆動を継続する。この場合において、本実施形態では、回転電機10の出力トルクTEを遮断前トルクTSに維持すべく、第2バッテリ42に接続される第2インバータ30の電流指令値IKを変更する。これにより、第1バッテリ40と回転電機10との間の電力遮断による回転電機10の出力トルクTEの減少を抑制でき、第2インバータ30におけるチャタリングの発生を抑制できる。この結果、回転電機10の駆動を適正に継続できる。
【0085】
・第1バッテリ40と回転電機10との間における電力の入出力が遮断された場合に、第2バッテリ42により回転電機10の出力トルクTEを遮断前トルクTSに維持できるか否かは、第2バッテリ42の蓄電状態により変動する。本実施形態では、第2バッテリ42の第2電圧VB2に基づいて、第2バッテリ42により遮断前トルクTSに維持できるか否かを判定する。第2電圧VB2は、第2バッテリ42の蓄電状態に比例する。そのため、第2電圧VB2を用いて、第2バッテリ42により遮断前トルクTSに維持できるか否かを適正に判定できる。
【0086】
・本実施形態では、遮断前トルクTSに維持できると判定された場合には、遮断前トルクTSに維持する場合の第2インバータ30の電流指令値IKを、第2電圧制限楕円CBと等トルク線LBとを用いて定まる等トルク点PBの電流指令値IKに変更する。そのため、第2電圧制限楕円CBと等トルク線LBとを用いて、変更後の電流指令値IKを容易に設定することができる。
【0087】
・一方、遮断前トルクTSに維持できないと判定された場合には、遮断前トルクTSに維持できない場合の第2インバータ30の電流指令値IKを、第2電圧制限楕円CB上において回転電機10の出力トルクTEが最大となる最大トルク点PCの電流指令値IKに変更する。そのため、遮断前トルクTSに維持できない場合でも、ある程度の出力トルクTEを確保することができる。また、第1バッテリ40と回転電機10との間の電力遮断による回転電機10の出力トルクTEの減少を抑制でき、第2インバータ30におけるチャタリングの発生を好適に抑制できる。
【0088】
・遮断前トルクTSに維持できない場合には、回転電機10の回転を維持しながら回転電機10の出力トルクTEを減少させるために、回転電機10に発生させる出力トルクTEをゼロとすることが考えられる。この場合において、回転電機10が高回転状態であるときには、回転電機10の逆起電力が過大であることから、この逆起電力が第1インバータ20等に印加されることを抑制するために、回転電機10にd軸電流Idを流して弱め界磁を実施することが好ましい。本実施形態では、遮断前トルクTSに維持できない場合であって、回転電機10が高回転状態である場合の第2インバータ30の電流指令値IKを、第2電圧制限楕円CB内でq軸上のゼロトルク点PDの電流指令値IKに変更する。これにより、回転電機10の回転を維持しながら回転電機10の出力トルクTEを減少させることができるとともに、回転電機10の逆起電力を抑制できる。これにより、第1インバータ20等に過大な逆起電力が印加されることを抑制でき、第1インバータ20等を適正に保護できる。
【0089】
そして、回転電機10が低回転状態となった場合には、ゼロトルク点PDの電流指令値IKから最大トルク点PCの電流指令値IKに変更する。これにより、遮断前トルクTSからの回転電機10の出力トルクTEの減少を好適に抑制できる。
【0090】
・本実施形態では、第1インバータ20に異常が発生したと判定された場合に、この第1インバータ20において、異常が発生したスイッチ22,23を特定するとともに、特定したスイッチ22,23に発生した異常の種類を判定する。そして、判定した異常の種類によって、第1インバータ20に含まれるスイッチ22,23のオンオフ状態を切り替える。これにより、発生した異常の種類に応じて、第1インバータ20を中性点制御することができ、回転電機10の駆動を継続できる。なお、本実施形態の上記効果は、第2インバータ30及び第2遮断スイッチ62の少なくとも一方に異常が発生した場合にも同様に得ることができる。
【0091】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0092】
・回転電機10としては、3相のものに限らず、2相のものまたは4相以上のものであってもよい。第1インバータ20と第2インバータ30としては、回転電機10が有する相数分の上,下アームスイッチの直列接続体を備えるインバータであればよい。
【0093】
・第1蓄電装置及び第2蓄電装置としては、バッテリに限られず、キャパシタであってもよい。
【0094】
・第1インバータ20と第2インバータ30とが備えるスイッチとしては、IGBTに限らず、例えばMOSFETであってもよい。この場合、スイッチに逆接続されるダイオードとしてMOSFETのボディダイオードを用いることができ、MOSFETとは別にフリーホイールダイオード24,34を用いる必要がない。
【0095】
・本実施形態では、等トルク点PBとして、第2電圧制限楕円CB上かつ等トルク線LB上において、交点PAに最も近い点を選択したが、これに限られない。第2電圧制限楕円CBよりも内側で等トルク線LB上の点であってもよい。また、第2電圧制限楕円CB上かつ等トルク線LB上において、交点PAから最も遠い点を選択してもよい。この場合でも、交点PAに最も近い点と同様に、第2電圧制限楕円CBと等トルク線LBとを用いて、変更後の電流指令値IKを容易に設定することができる。
【0096】
・本実施形態では、ゼロトルク点PDとして、第2電圧制限楕円CB上においてd軸電流Idが最も小さい点を選択したが、これに限られない。第2電圧制限楕円CBよりも内側でq軸上の点であってもよい。但し、第2電圧制限楕円CB上においてd軸電流Idが最も小さい点を選択することで、第2電圧制限楕円CBを用いて、変更後の電流指令値IKを容易に設定することができる。
【0097】
・本開示に記載の制御装置及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0098】
11…巻線、20…第1インバータ、30…第2インバータ、40…第1バッテリ、42…第2バッテリ、50…制御装置、60…第1遮断スイッチ、62…第2遮断スイッチ、100…回転電機システム、LE1…第1電源線、LE2…第2電源線、TE…出力トルク、TS…遮断前トルク。
図1
図2
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図7