(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】同一品種の軸筒に配設するボールペンリフィル群
(51)【国際特許分類】
B43K 7/02 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
B43K7/02
(21)【出願番号】P 2020054894
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(72)【発明者】
【氏名】牧 貴之
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-128891(JP,A)
【文献】特開2001-341492(JP,A)
【文献】実開平05-068690(JP,U)
【文献】特開2020-029037(JP,A)
【文献】特開2002-059682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00- 1/12
B43K 5/00- 8/24
B43K 21/00-21/26
B43K 24/00-24/18
B43K 27/00-27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透明のインク収容管に、インクを収容し、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接あるいは継手部材を介して装着したボールペンリフィルの、前記ボールペンリフィルの外径と全長が同一で前記ボールペンチップのボール径が異なる同一品種の軸筒に配設するボールペンリフィル群において、インク収容管の表面に模様を印刷し、模様の太さをボール径に応じて階調変化させ
ると共に、前記インク収容管は、インクと接触する内層と基層との少なくとも二層構造からなる積層シートを有し、前記積層シートの端部に模様が形成されたことを特徴とする同一品種の軸筒に配設するボールペンリフィル群。
【請求項2】
前記ボールペンチップによる筆記描線の太さと前記インク収容管の印刷による模様の太さとが比例関係にあ
り、前記内層を構成する樹脂が、生分解性プラスチックを含むインク収容管で構成され、前記インクの消費に伴い追従するグリース状のインク追従体の、各インク収容管の後端部からグリース状のインク追従体の後端面までの距離を、一定の距離とし、ボールペンリフィル群の各インク収容管に収容するインク収容量が、ボールペンチップのボール径の相違に関わらず筆記可能距離が同等となるように、各インク収容管の内径をボール径に相対的に変化させることを特徴とする請求項1記載の同一品種の軸筒に配設するボールペンリフィル群。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一品種の軸筒に配設する複数のボールペンリフィルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からインクを直に収容し、インク収容管の先端に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接あるいは継手部材を介して配設してなるボールペンリフィルはよく知られている。こうしたボールペンリフィルは、透明または半透明のインク収容管を用いることが一般的であり、インクは外部から視認可能である。
【0003】
特許文献1には、ボール径の異なるボールペンリフィルを同一品種の軸筒に配設可能なボールペンリフィル群として考えた場合、インク収容管の全長や外径が異なると、軸筒にボールペンリフィルを配設した際にガタツキあるいは任意場所への配設が困難になるといった問題が生じるため、インク収容管の全長や外径を同一にし、その結果、同一のインク収容管を用いて、ボール径にあったインク収容量を収容することによる、インク収容管の後端部からインク後端面までの距離が変化することを抑制し、ボール径の相違による外観上のインク収容量の違いが分からず、かつボール径の変更にともなう機械組みの設定が容易なボールペンリフィル群を提供する技術が開示されている。
【0004】
しかし、特許文献1のインク収容管には、従来から、成形の容易性とインク量の視認性を確保するために、透明もしくは半透明の樹脂材料、例えばポリプロピレンが用いられていることが想到されており、近年、海洋に流出するマイクロプラスチックの問題が大きく注目を集めている。使い捨てを前提としたプラスチックの使用を控え、地球環境問題に対する取り組みが進むなか、筆記具を構成する部材についても脱プラスチックが要求されている。そのため、特許文献2には、インク収容管の管材料の基層に紙基材を用いることで、プラスチックの使用量を低減した、環境に配慮した筆記具用インク収容管を用いたボールペンリフィルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-59682
【文献】特開2020-29037
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2のインク収容管は、紙基材であることからインク収容管が不透明であるため、ボール径の異なるボールペンリフィルを同一品種の軸筒に配設可能なボールペンリフィル群として製造された場合、ボール径を確認する場合、微細な筆記先端を視認するか、インク収容管等の表面の小さく記載された文字情報によるものしか識別するほかなく、老若男女がボールペンリフィル群の中から使用しようと思うボール径を選択する際、容易に識別して指定のリフィルを取り上げることが困難である。
【0007】
そこで、本発明は、ボール径の異なるボールペンリフィルを群の中から必要とするボール径のボールペンリフィルを容易に選択できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、インク収容管内に不透明の筆記用インクを収容し、インク収容管の前端にボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接あるいは継手部材を介して装着したボールペンリフィルの前記ボールペンリフィルの外径と全長が同一で前記ボールペンチップのボール径が異なる同一品種の軸筒に配設するボールペンリフィル群において、インク収容管の表面に模様を印刷し、模様の太さをボール径に応じて階調変化させたことを特徴とする。
なお、インク収容管を不透明であるとは、内部に収容された筆記インクが全く見えないのみではなく、透過性が低く目視での内部の状態、例えばインク残量の視認が困難なものも含まれる。
また、模様の太さは、ボールペンチップによる筆記描線の太さと比例関係にあることが好ましい。なお、ここで示す比例関係とは、2倍、3倍等、拡大だけでなく、等倍も含む。
【0009】
また、インク収容管は、インクと接触する内層と基層との少なくとも二層構造を有し、前記基層は紙基材で構成され、前記内層は樹脂で構成されることを特徴とする。
また、前記内層を構成する樹脂が、アクリル樹脂、ポリスチレン、フッ素樹脂、シリコーン、或いはこれらの併用であることが好ましい。
また、前記内層を構成する樹脂が、生分解性プラスチックが含まれていることが好ましい。
【0010】
また、インクの消費に伴い追従するグリース状のインク追従体の、各インク収容管の後端部からグリース状のインク追従体の後端面までの距離を、一定の距離としたことを特徴とする。
【0011】
また、ボールペンリフィル群の各インク収容管に収容するインク収容量が、ボールペンチップのボール径の相違に関わらず筆記可能距離が同等となるように、各インク収容管の内径をボール径に相対的に変化させることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ボール径の異なるボールペンリフィルを同一品種の軸筒に配設可能なボールペンリフィル群としても、自分が必要とするボール径を感覚的に判断して瞬時に取り上げることができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るボール径の異なるボールペンリフィル群における外観図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係るボール径の異なるボールペンリフィル群における外観図である。
【
図3】本発明の第3実施形態に係るボール径の異なるボールペンリフィル群における外観図である。
【
図4】本発明の各実施形態ボールペンリフィル群のうちの一種を示すリフィルの縦断面図である
【
図5】実施形態に係るインク収容管の軸筒の平面図(a)、A-A矢視断面図(b)、B-B矢視側面図(c)およびB-B矢視拡大側面図(d)である。
【
図6】他の実施形態に係るインク収容管の軸筒の平面図(a)、A-A矢視断面図(b)、B-B矢視側面図(c)およびB-B矢視拡大側面図(d)である。
【
図7】積層シート(a)、該積層シートをスパイラル巻きしたインク収容管(b)、および該積層シートを平巻きしたインク収容管(c)、多重巻きしたインク収容管(d)を表す図である。
【
図8】各実施形態に係る同一品種の軸筒に収容するボールペンを示す斜視図である。
【
図9】各実施形態に係る同一品種の軸筒に収容するボールペンを示す正面図である。
【
図10】各実施形態に係る同一品種の軸筒に収容するボールペンを示す側面図である。
【
図11】
図8に示すボールペンの軸筒を示す軸方向に沿った断面図である。
【
図12C】
図8に示すボールペンの内筒を示す右側面図である。
【
図12D】
図8に示すボールペンの内筒を示す左側面図である。
【
図13A】
図8に示す筆記具のクリップ部材を示す斜視図である。
【
図13B】
図8に示す筆記具のクリップ部材を示す正面図である。
【
図13C】
図8に示す筆記具のクリップ部材を示す側面図である。
【
図14A】各実施形態に係る同一品種の軸筒に収容するボールペンのクリップ部材を取り付ける方法を説明するための正面図(その1)である。
【
図14B】各実施形態に係る同一品種の軸筒に収容するボールペンのクリップ部材を取り付ける方法を説明するための側面図(その1)である。
【
図15A】各実施形態に係る同一品種の軸筒に収容するボールペンのクリップ部材を取り付ける方法を説明するための正面図(その2)である。
【
図15B】各実施形態に係る同一品種の軸筒に収容するボールペンのクリップ部材を取り付ける方法を説明するための側面図(その2)である。
【
図16】各実施形態に係る同一品種の軸筒に収容するボールペンのクリップ部材を取り付ける方法を説明するための正面図(その3)である。
【
図17】各実施形態に係る同一品種の軸筒に収容するボールペンのクリップを開いた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。なお、本明細書中では、ボールペン1の軸線方向において、ボールペンチップ5側を「前」側と規定し、ボールペンチップとは反対側を「後」側と規定する。
【0015】
図1~
図3は、筒状に形成された内部が視認困難な不透明のインク収容管9の内部にインクを収容し、インク収容管9の前側の前端にボールを回転自在に抱持したボールペンチップ5を継手部材11を介して装着したリフィル4である。前記リフィル4の外径と全長は、同一で前記ボールペンチップ5のボール径が異なる同一品種の軸筒に配設するボールペンリフィル群を示した実施形態である。ボール径の異なるリフィル4は、インク収容管9の表面に線状の識別模様10を印刷し、各線の太さをボール径に応じて階調変化させている。
【0016】
図1における第1実施形態は、紙基材で構成されたインク収容管9に螺旋状の線である識別模様10を印刷した場合の同一品種の軸筒に配設するボールペンリフィル群である。
図1(a)はボール径0.3mmのボールペンチップ5aの場合のボールペンリフィル4a、
図1(b)はボール径0.4mmのボールペンチップ5bの場合のボールペンリフィル4b、
図1(c)はボール径0.5mmのボールペンチップ5cの場合のボールペンリフィル4c、
図1(d)はボール径0.7mmのボールペンチップ5dの場合のボールペンリフィル4d、
図1(e)のボールペンチップ5aはボール径1.0mmの場合のボールペンリフィル4eとしている。第1実施形態ではボールペンリフィル4aに記された識別模様10aの線幅が0.6mm、ボールペンリフィル4bに記された識別模様10bの線幅が0.8mm、ボールペンリフィル4cに記された識別模様10cの線幅が1.0mm、ボールペンリフィル4dに記された識別模様10dの線幅が1.5mm、ボールペンリフィル4eに記された識別模様10eの線幅が2.0mmとなっており、各識別模様10の印刷の太さが各ボールペンチップ5による筆記描線の太さの約3倍の比例関係となっている。識別模様10の着色は、インク色に準じた色が用いられている。そのように模様として印刷された線の太さを階調変化させることにより、同一品種の軸筒に配設可能なボールペンリフィル群としても、微小なボールペンチップの先端を確認せずとも容易にボール径の違いを感覚的に判断して瞬時に取り上げることができる。
【0017】
なお、模様の太さをボール径に応じて階調変化とは、模様の太さとボール径の大きさが相対的に変化していればよく、第1実施形態のようにボールペンチップ5のボール径が大きくなるにつれて識別模様10の線の太さが小さくなるようにすることも含む。さらに筆記描線の太さと前記インク収容管9への印刷による模様の太さとが比例関係とは、必ずしも相似的に拡大である必要はなく、筆記描線の太さとインク収容管9へ印刷された識別模様10の線の太さが略同一や縮小であることも含まれる。
【0018】
図2における第2実施形態は、第1実施形態と異なる識別模様10であり、紙基材で構成されたインク収容管9に前端側から後端側にかけて線状の識別模様10を印刷した場合の同一品種の軸筒に配設するボールペンリフィル群である。
図2(a)はボール径0.3mmのボールペンチップ5aの場合のボールペンリフィル4a、
図2(b)はボール径0.4mmのボールペンチップ5bの場合のボールペンリフィル4b、
図2(c)はボール径0.5mmのボールペンチップ5cの場合のボールペンリフィル4c、
図2(d)はボール径0.7mmのボールペンチップ5dの場合のボールペンリフィル4d、
図2(e)のボールペンチップ5aはボール径1.0mmの場合のボールペンリフィル4eとしている。また、識別模様10の印刷面積としては、インク収容管9の前端から後端にかけて着色する必要はなく、目視にて容易に判別可能な範囲であればよい。識別模様10が線の場合では、微小なボールペンチップの先端を確認せずとも容易にボール径の違いを感覚的に判断して瞬時に取り上げることを重視すると、識別模様10の線の太さは筆記描線の太さから2倍以上とすることが好ましい。
【0019】
図3における第3実施形態は、第1実施形態及び第2実施形態とは異なる識別模様10であり、紙基材で構成されたインク収容管9の外径に周状の複数の線である識別模様10を印刷した場合の同一品種の軸筒に配設するボールペンリフィル群である。
図3(a)はボール径0.3mmのボールペンチップ5aの場合のボールペンリフィル4a、
図3(b)はボール径0.4mmのボールペンチップ5bの場合のボールペンリフィル4b、
図3(c)はボール径0.5mmのボールペンチップ5cの場合のボールペンリフィル4c、
図3(d)はボール径0.7mmのボールペンチップ5dの場合のボールペンリフィル4d、
図3(e)のボールペンチップ5aはボール径1.0mmの場合のボールペンリフィル4eとしている。周状の線のピッチは各ボール径によらず一定で印刷されており、ボール径、すなわち筆記描線の太さが大きくなるにされインク収容管9の識別模様10の線の太さが大きくなり、非印刷部分が狭くなっている。また、識別模様10の印刷面積としては、インク収容管9の前端から後端にかけて着色する必要はなく、目視にて容易に判別可能な範囲であればよい。
【0020】
図4は、実施形態のリフィル群の一種によるリフィル4の縦断面図である。リフィル4は、筒状のインク収容管9と、筆記部であるボールペンチップ5と、インク収容管9とボールペンチップ5とを接続する継手部材11とを有する。インク収容管9は、インク13を収容するように構成される。継手部材11は、インク収容管9の前端部内にその後端部が圧入される。また、継手部材11の前端部内にはボールペンチップ5の後端部が装着される。筆記部となるボールペンチップ5は、先端にボールを包持し、筆記時のボールの回転に応じて、インク収容管9部分に収容されたインクが継手部材17内を介して吐出される。なお、継手部材11の内部に耐食性材料で形成された球体を収容し、インクの逆流防止機構を備えてもよい。
【0021】
継手部材11は、ポリプロピレン等の合成樹脂材料を用いるか、生分解性プラスチック等の環境負荷を低減させた内部の視認が困難な不透明材料や、高分子結合材および水を添加して混練した繊維性主材料を、加熱した金型のキャビテイ内に充填し、ついて添加した水を気化除去して固化させる繊維性成形品を用いることが好ましい。
【0022】
繊維性成形品を用いる場合における繊維性主材料としては、紙ごみ,古紙,綿布,麻,籾殻,豆腐殻,木粉のような天然の繊維性のもの、およびガラス繊維、並びにナイロン,ポリアクリル,ポリエステルのような合成樹脂からなる繊維の何れでも使用できるが、特に紙ごみ,古紙のような紙繊維が好ましい。なお、このような紙繊維の繊維長さは短いので、強度を必要とする成形品の場合には、他の繊維を5%~40%複合すると効果的であり、複合する繊維の長さは、3mm~10mmが好ましい。
【0023】
前述した高分子結合材としては、繊維性主材料と混練する際には、水に可溶であるか、低粘度のエマルジョンを形成し、水を気化除去した際には、固形状で成形品の離型が容易なものが好ましく、澱粉,ポリビニルアルコール,ポリアクリル酸,ポリアクリルアミド,ポリイタコン酸,カルボキシメチルセルロース、並びにこれらの共重合体のような水溶性高分子材料が使用でき、またユリア樹脂,メラミン樹脂,フェノール樹脂,不飽和ポリエステルのような本来は水溶性でない熱硬化性樹脂でも、その初期縮合物が水溶液もしくはエマルジョンとなるものは使用できる。この場合、加熱して高温となっている金型内では、添加した水を気化脱水した後の硬化反応により、不溶融性を有するようになるので、成形品の離型が容易となる。また、水溶性高分子材料の場合は、水を気化除去して固化した後も水溶性を有するので、耐水性を必要とする成形品の場合は、前記の熱硬化性樹脂が好ましい。この高分子結合材の配合割合は、固化時において繊維性主材料の10%~50%が好ましい。配合割合が50%以上の場合は繊維性主材料の量が不足し、一方10%未満では、繊維性主材料との均質な混練ができ難く、成形品の強度も低下して好ましくない。
【0024】
リフィル4のインク収容管9について説明する。実施形態におけるインク収容管9は、
図5に示すように、インクと接触する内層8と基層7との少なくとも二層構造を有し、前記基層7は紙基材で構成され、前記内層8は樹脂で構成される。インク収容管9の内層8はインクと接触する層である。内層8を構成する樹脂は、加工しやすく、筆記具用インクにも溶解しないもの、すなわち基層7まで浸透しないものであれば制限されるものではない。前記樹脂には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、シリコーン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS樹脂)、アクリル樹脂(エマルション形態を含む)、ワックス系エマルション単独、ワックス系エマルション単独および合成ゴム系ラテックスの混合液、アクリル系エマルションおよびワックス系エマルションの混合液、ポリ乳酸、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリグリコール酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ならびに、ポリブチレンアジペートテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレートサクシネート等の生分解性プラスチックが挙げられる。これらのうち、加工性や強度に優れ、取り扱いおよび入手容易などの点で、アクリル樹脂、ポリスチレン、フッ素樹脂、シリコーン、或いはこれらの併用および生分解性プラスチックが好ましい。なお、生分解性プラスチックは、インク収容管として必要な強度および寿命を付与しうるかぎり、環境に配慮した材料として好適である。
【0025】
内層8を形成する方法は、例えば、樹脂製フィルムを押出ラミネート等により貼合する方法、或いは液状の樹脂をコーティングする方法などを適宜選択することが可能である。内層8をコーティングにより形成する場合は、塗工量が5~30g/m2、好ましくは10~20g/m2である。樹脂製フィルムを貼合する場合、内層8の厚みは、通常3~90μmである。
【0026】
基層7を構成する紙基材には、液体貯蔵用に用いられる、一層構成または多層構成の紙基材を用いることができる。実施形態で用いる紙基材は、インク収容管9の成型に伴う屈曲耐性、落下衝撃吸収性、および端面の耐水性などに優れることが好ましい。この観点から、低密度の板紙の両側に高密度紙を積層した多層紙基材は、低密度層が曲げ応力や落下の衝撃を吸収する機能に優れるといえる。具体的には、坪量50~500g/m2のカートン用原紙などが好適に用いられる。基層7の厚みは、20~2000μmである。基層は一枚の紙で構成されてもよく、或いは2枚以上の紙を重ね合わせてもよい。
【0027】
実施形態のインク収容管9は、
図6に示すように内層8と基層7と外層6との三層構造を有していてもよい。外層6はインク収容管9の外側の層であり、基層7を被覆する層である。外層6を構成する樹脂は、内層8を構成する樹脂と同様に、加工しやすく、水性および油性のインクのいずれにも溶解しないもの、すなわち中間層5まで浸透しないものであればよい。さらにいえば、外気中の水分を吸収しないものが好ましい。
外層6を構成する樹脂としては、内層8を構成する材料と同様の樹脂が挙げられる。内層8を構成する樹脂と、外層6を構成する樹脂とは、同一でもよいし、異なっていてもよい。 外層6の厚みは、3~90μmである。
【0028】
実施形態のインク収容管9の好適な形態は、アクリル樹脂、ポリスチレン、フッ素樹脂、シリコーン、或いはこれらの併用およびポリ乳酸等の生分解性プラスチックなどの高分子化合物を紙基材の表裏に塗工および貼合して耐湿・耐水・耐油性を付与したものである。
【0029】
前記インク収容管9は、内層8および基層7の少なくとも二層構造を有していればよく(
図5b)、例えば、三層~五層構造であってもよい。他の実施形態は、
図6bに示すような、内層8、基層7、および外層6の三層構造を有するインク収容管、或いは、内側層4および基層7の間、または基層7および外側層6の間に、紫外線吸収膜、アルミニウム蒸着膜、または着色膜などの層を有してもよい。
【0030】
このような内層8および基層7の少なくとも二層構造からなる積層シートは、紙基材の表面および裏面に、内層用および外層用の樹脂を塗工または貼付することにより形成する。実施形態のインク収容管9は、前記した内層8および基層7の少なくとも二層構造からなる積層シートをスパイラルマシンなどを用いて円筒状に丸めながら成形する。円筒状に成形するとは、所望の巻き幅に裁断した積層シートを複数枚、例えば2~4枚用いて、芯棒に巻いて貼り筒状にすることである。巻き方は、
図7に示すように、積層シート(
図7(a))を芯棒にスパイラル(螺旋)状に巻きつける方法(スパイラル巻き:
図7(b))、積層シートを芯棒に対して直角に巻きつける方法(平巻き:
図7(c))、積層シートを多重に巻き付ける方法(多重巻き:
図7(d))のいずれでもよく、強度の観点から、スパイラル巻きや多重巻きが好ましい。また、
図7(a)に示すように積層シートの端部等に予め識別模様10を着色することにより、インク収容管9への各実施形態の識別模様10の形成を容易にすることができる。
【0031】
あるいは、別の製造方法として、中間層5である紙基材シートを所望の巻き幅に裁断した後、スパイラル巻きまたは平巻きにして筒状にし、円筒状の基層7を溶融樹脂に浸して引き上げ、乾燥させることにより、内層8および外層6を形成してもよい。ただし、この場合、内層8および外層6が同一の樹脂で形成されること、および、積層シートを均一な厚さにするための調整が必要な場合がある。
【0032】
前記インク収容管9の寸法は、通常の筆記具に使用する寸法であり、特段制限されるものではないが、概ね、内径1.5~6mm、外径1.8~10mm、長さ30~150mmの範囲内である。
【0033】
なお、実施形態におけるインク収容管9は、前記の紙基材とした材料でなくても、基材を生分解性プラスチック等のインク量の視認が困難な不透明な材料としても適用できる。
【0034】
インク収容管9の内部に収容されるインク13は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、水溶性有機溶剤、着色剤、及び水を含有する水性インク組成物である。特にポリオキシエチレンアルキルエーテルのHLB値が12~15であり、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルが炭素数8~12のアルキル基を有することが好ましい。前記のインクを用いることにより、乾燥性と、にじみという相反する特性を両立することが可能となる。
【0035】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとは、ポリオキシエチレン鎖とアルキル基がエーテル結合している化合物である。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルテトラデシルエーテル等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルは炭素数8~12のアルキル基を有することが好ましい。インクがポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有することにより、インクの紙への浸透性を高めることが可能となる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルのアルキル基の炭素数が8以上であることにより、描線のにじみを少なくすることが可能となる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルのアルキル基の炭素数が12以下であることにより、インクの紙への浸透性を高めることが可能となる。同様の観点から、前記アルキル基の炭素数は8~10であることが好ましい。また、前記アルキル基は分岐鎖状であることが好ましい。このようなアルキル基としては、イソデシル基及びエチルヘキシル基等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルのHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値は12~15である。HLB値が12以上であることにより、インクでのポリオキシエチレンアルキルエーテルの溶解安定性が増し、描線のにじみを抑制することが可能となる。HLB値が15以下であることにより、インクの紙面への浸透性を高めることが可能となる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量は、インク全量を基準として、0.1~10質量%であることが好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量が0.1質量%以上であることにより、インクの紙への浸透性を高める傾向がある。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量が10質量%以下であることにより、浸透性を維持しながら、優れた溶解安定性が得られる傾向がある。
【0036】
水溶性有機溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、ピロリドン、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、ソルビット、マンニット、ショ糖、ぶどう糖、還元デンプン加水分解物、及びピロリン酸ナトリウム等が挙げられる。水溶性有機溶剤の含有量は、インク全量を基準として、1~30質量%が好ましい。
【0037】
着色剤としては、染料及び顔料が挙げられる。染料は水溶性染料であることが好ましく、たとえば、直接染料、酸性染料及び塩基性染料等である。顔料は水分散性顔料であることが好ましく、たとえば、有機顔料及び無機顔料等である。前記着色剤は1種を単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。直接染料としては、たとえば、カラーインデックス(以下、C.I.という)Direct Black 17,同19,同38,同154、C.I.Direct Yellow 1,同4,同12,同29、C.I.Direct Orange 6,同8,同26,同29、C.I.Direct Red 1,同2,同4,同13、C.I.Direct Blue 2,同6,同15,同78,同87等が挙げられる。また、酸性染料としては、C.I.Acid Black2,同31、C.I.Acid Yellow 3,同17,同23,同73、C.I.Acid Orange 10,C.I.Acid Red 13,同14,同18,同27,同52,同73,同87,同92、C.I.Acid Blue 1,同9,同74,同90等が挙げられる。また、塩基性染料としては、C.I.Basic Yellow2,同3、C.I.Basic Red 1,同2,同8,同12、C.I.Basic Violet 1,同3,同10、C.I.Basic Blue 5,同9,同26等が挙げられる。水分散性顔料としては、水系媒体に分散可能であれば特に制限されず、たとえば、カーボンブラック及び金属粉等の無機顔料、アゾ系、フタロシアニン系及びキナクドリン系等の有機顔料、並びに蛍光顔料等が挙げられる。
【0038】
実施形態のインク13は、上述の成分の水溶液又は水分散液として、或いは上述の成分とは別に、水を含有する。水の含有量は、インク全量を基準として、好ましくは20~80質量%である。
【0039】
実施形態のインク13は、リン酸エステルを含有することが好ましい。インクがリン酸エステルを含有することにより、描線の乾燥性を損なうことなく、優れた潤滑性を得ることができる傾向がある。さらに、特定のリン酸エステルを含有することにより、描線のにじみを抑制できる傾向がある。リン酸エステルは下記式(2)で表される。
O=P(OR2 )p (OH)3 - p ・・・(2)
式中、R2は有機基を表す。前記有機基としては、たとえば、アルキル基及びアリール基等が挙げられる。前記アルキル基及びアリール基はさらにアルコキシ基等で置換されていてもよい。式中のpは1~3の整数である。リン酸エステルはポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルであることが好ましい。なお、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルは、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの構造を有していても、リン酸エステルに分類する。ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルの場合は下記式(3)で表される。
O=P[(OCH2CH2)qOR3]p(OH)3-p ・・・(3)
式中、R3は炭素数10以下のアルキル基を表す。アルキル基の炭素数は1~10であることが好ましく、6~10であることがより好ましい。式中のpは1~3の整数であり、qは溶解安定性が良好となるように適宜選択され、たとえば、2~10の整数である。ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルのR3のアルキル基の炭素数が10以下であることにより、描線の乾燥性を損なうことなく、にじみを抑制できる傾向がある。実施形態のインク13がリン酸エステルを含有する場合、リン酸エステルの含有量は、インク全量を基準として、0.05~5質量%であることが好ましく、0.5~2質量%であることがより好ましい。リン酸エステルの含有量が0.05質量%以上であることにより、描線の乾燥性を維持しながら、潤滑性を向上させることができる傾向がある。また、リン酸エステルの含有量が5質量%以下であることにより、潤滑性を維持しながら、優れた溶解安定性を得ることができる傾向がある。
【0040】
実施形態のインク13は、上述の成分に加えて、防錆剤、pH調整剤、増粘剤、防腐剤(防黴剤)、潤滑剤、染料溶解助剤、及び固着樹脂等の添加剤を含有していてもよい。
【0041】
防錆剤としては、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、チオ硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸塩、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、サポニン、並びにジアルキルチオ尿素等が挙げられる。防錆剤の含有量は、インク全量を基準として、好ましくは0.3~5質量%であり、より好ましくは0.5~3質量%である。
【0042】
pH調整剤としては、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及び酢酸ソーダ等の無機塩類、並びに、トリエタノールアミン及びジエタノールアミン等の水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等を用いることができる。
【0043】
増粘剤としては、天然系-キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、トラガカンドガム、アルギン酸、ゼラチン、寒天、カゼイン、サイリウムシートガム、タマリンドシートガム、合成系-メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸ナトリウム、及びカルボキシビニルポリマーなどが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。増粘剤の含有量は、インク全量を基準として、好ましくは0.1~3質量%であり、より好ましくは0.2~1質量%である。該含有量が3質量%を超えると、インクの粘度が高くなり過ぎて、ペン先で詰まり易くなる傾向がある。一方、該含有量が0.1質量%未満であると、インクの粘度が低くチップ先端よりインク漏れを起こしやすくなる傾向がある。
【0044】
防腐剤(防黴剤)としては、石炭酸、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、及び2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルフォニル)ピリジン等が挙げられる。防腐剤の含有量は、インク全量を基準として、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.1~1質量%である。
【0045】
潤滑剤としては、オレイン酸等の高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、チオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)及びチオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜燐酸トリエステル、並びに、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、及びアルカノールアミン塩等が挙げられる。潤滑剤の含有量は、インク全量を基準として、好ましくは0.3~5質量%であり、より好ましくは0.5~3質量%である。
【0046】
実施形態のインク13の粘度は、温度25℃及びせん断速度0.75s-1において、500~3000mPa・sであることが好ましい。前記粘度が500mPa・s以上であることにより、ボールペンチップ先端よりインク漏れを起こしにくく、描線のにじみが少なくなる傾向がある。また、前記粘度が3000mPa・s以下であることにより、インクの紙面等への優れた浸透性が得られる傾向がある。
【0047】
実施形態のインク13は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、水溶性有機溶剤、着色剤及び水、必要に応じて、リン酸エステル又は添加剤等を、たとえば、ディゾルバー、ヘンシェルミキサー及びホモミキサーなどの攪拌機を用いて、混合することにより得られる。
【0048】
インクの配合量の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.5質量部、リン酸エステル1.0質量部、着色剤30.0質量部、防錆剤0.1質量部、pH調整剤0.5質量部、増粘剤0.5質量部、水溶性有機溶剤15.0質量部、及び水52.4質量部を混合する。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルには、ノニオンEH208(日油株式会社製、ポリオキシエチレン-2-エチルヘキシル-エーテル、HLB14.6)を用いた。リン酸エステルには、プライサーフA208F(第一工業製薬株式会社製、ポリオキシエチレン-2-エチルヘキシル-エーテルリン酸エステル)を用いた。着色剤には、WATER BLACK 191-L 15%sol(オリエント化学工業株式会社製、黒色染料、15質量%水溶液)を用いた。防錆剤にはトリルトリアゾールを用いた。pH調整剤にはトリエタノールアミンを用いた。増粘剤にはキサンタンガムを用いた。水溶性有機溶剤にはプロピレングリコールを用いた。
【0049】
インク収容管9に充填されたインクの後端には、逆流防止や揮発防止を目的としたグリース状のインク追従体15が充填される。インク追従体15は、少なくとも、鉱油と、ポリブテンと、金属石鹸と、スチレン系熱可塑性エラストマーと、アタクチックポリプロピレンとを配合することで、インク追従性が十分に良好であり、逆流発生を十分に抑制することができる。特に、金属石鹸がステアリン酸アルミニウムまたはモノステアリン酸ナトリウムであり、前記鉱油の配合割合が50~90質量%であり、前記ポリブテンの配合割合が5~50質量%とすること、25℃におけるちょう度が100~500であることが好ましい。
【0050】
鉱油は、精製鉱油等を用いることができる。その動粘度は50~500mm2/sであることが好ましい。ここで、鉱油の動粘度は40℃におけるものであって、JIS K2283(2000)に規定する方法に準拠して測定され、温度:40℃、回転数:0.5rpmの条件で測定される数値である。鉱油の動粘度をこの数値範囲内に調整することにより、インク追従性及び耐衝撃性の向上等を達成することができる。鉱油は、原料となる石油を常法により精製して得られるものであってもよく、市販されているものを用いてもよい。例えば、ダイアナプロセスオイルPW-90、PW-150、PW-380、ダイアナフレシアP-90、P-180、P-430(以上出光興産社製、商品名)、スーパーオイルN68、M68、N460、M460(以上新日本石油社製、商品名)、コスモニュートラル100、150、350、500(以上コスモ石油ブリカンツ社製、商品名)が挙げられる。鉱油は、精製方法、動粘度又は商品名等により区別されるもののうち、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0051】
ポリブテンは、重量平均分子量を500~10000とすることが好ましい。重量平均分子量が前記下限値を下回る場合は相分離が生じやすく、前記上限値を超えると粘度が高くなり、インク追従性が低下し、筆記線にカスレを生じる傾向にある。ポリブテンは常法により合成可能であり、あるいは市販されているものを用いてもよい。例えば、出光ポリブテン2000H(出光興産社製、商品名、重量平均分子量:2900)、出光ポリブテン15H(出光興産社製、商品名、重量平均分子量:550)、ポリブテンHV-15(日本石油化学社製、商品名、重量平均分子量:540)が挙げられる。ポリブテンは、合成方法、重量平均分子量又は商品名等により区別されるもののうち、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0052】
金属石鹸は、鉱油及びポリブテンの混合物をゲル化可能なものが好適に用いられる。例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の高級脂肪酸が挙げられる。インク追従性の向上から、炭素数16~20の脂肪酸が好ましく、炭素数が前記範囲内にある飽和脂肪酸がより好ましい。または、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ナトリウム、リチウム、カリウム等の金属が挙げられる。その場合は、インク追従性の向上等の観点から、アルミニウム、リチウムが好ましい。特に、ステアリン酸アルミニウムまたはモノステアリン酸ナトリウムが好ましい。金属石鹸はインク追従体を調製する際に、通常固体の状態で用いられる。ステアリン酸アルミニウムやモノステアリン酸アルミニウムは、ジステアリン酸アルミニウムやトリステアリン酸アルミニウムと比較して融点が低いため、比較的低温で液体の状態となるため、インク追従体に用いられる他の成分に悪影響(過剰な揮発、炭化等)を与え難い。金属石鹸は、常法により合成可能であり、あるいは市販されているものを用いてもよい。例えば、アルミニウムステアレート300(日本油脂社製、商品名)、アルミニウムステアレート103(日東化成工業社製、商品名)などのステアリン酸アルミニウム、S-7000(堺化学社製、商品名)などのステアリン酸リチウムが挙げられる。金属石鹸は、高級脂肪酸の種類、金属の種類又は金属に対する高級脂肪酸の配位数等により区別されるもののうち、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0053】
スチレン系熱可塑性エラストマーは、インク追従体15の増稠剤として機能し得るものと考えられる。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SEBS)及びスチレン-プロピレン/ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SEPS)が挙げられる。これらのなかでは、本発明によるインク追従性の向上等の効果をより確実に奏する観点から、SEBS又はSEPSが好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマーは常法により合成可能であり、市販のもの用いてもよい。例えば、セプトン(クラレ社製、商品名)、タフブレン(旭化成社製、商品名)、クレイトンポリマー(JSR社製、商品名)が挙げられる。スチレン系熱可塑性エラストマーは、合成方法、スチレン含有量、重量平均分子量又は商品名等により区別されるもののうち、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0054】
アタクチックポリプロピレンは、インク追従体15に含まれる成分のうち、特に低分子の成分に対する増粘剤として機能し得るものと考えられる。実施形態に係るアタクチックポリプロピレンは、その重量平均分子量が1000~50000であると好ましい。重量平均分子量が前記下限値未満では、所望するダレ抑制効果が得られ難くなる傾向にあり、前記上限値を上回ると、粘度増加に伴い、インク追従性が低下する傾向にある。アタクチックポリプロピレンは、常法により合成可能であり、市販のものを用いてもよい。例えば、サンアタック(チバファインケミカル社製、商品名、重量平均分子量:5000~20000)、ヒロダイン8500(ヒロダイン工業社製、商品名、重量平均分子量:20000~30000)、ビスタックL(チバファインケミカル社製、商品名、重量平均分子量:5000~10000)が挙げられる。アタクチックポリプロピレンは、合成方法、重量平均分子量又は商品名等により区別されるもののうち、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0055】
インク追従体15において、上述の各成分の配合割合は、本発明によるインク追従性を向上する効果を奏するものであれば、特に制限されない。しかしながら、インク追従体の総量に対する鉱油の配合割合は、50~90質量%であると好ましい。鉱油の配合割合が前記上限値を超えると、インク追従体のダレが発生しやすく、耐衝撃性が低下する傾向にあり、前記下限値を下回ると、インク追従体の各成分が分離を起こしてインク中に混入しやすくなる。
【0056】
インク追従体15の総量に対するポリブテンの配合割合は、5~50質量%であると好ましい。ポリブテンの配合割合が前記上限値を超えると、インク追従体の各成分が分離を起こしてインク中に混入しやすくなり、前記下限値を下回ると、耐衝撃性が低下する傾向にある。
【0057】
また、インク追従体の総量に対する金属石鹸の配合割合は、0.1~10.0質量%であると好ましい。金属石鹸の配合割合が前記上限値を超えると、インク追従体の粘度が高くなり、インク追従性が低下する傾向にあり、前記下限値を下回ると、相分離が発生しやすくなる。
【0058】
インク追従体の総量に対するスチレン系熱可塑性エラストマーの配合割合は、0.1~10.0質量%であると好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマーの配合割合が前記上限値を超えると、インク追従体の粘度が高くなり、インク追従性が低下する傾向にあり、前記下限値を下回ると、相分離が発生しやすくなる。
【0059】
インク追従体の総量に対するアタクチックポリプロピレンの配合割合は、0.1~10.0質量%であると好ましい。アタクチックポリプロピレンの配合割合が前記上限値を超えると、インク追従体の粘度が高くなり、インク追従性が低下する傾向にあり、前記下限値を下回ると、相分離が発生しやすくなる。
【0060】
インク追従体15の調製例においては、まず、基油である鉱油及びポリブテンを混合して、基油の混合物を得る。更に基油の混合物を、ダブルアクション撹拌装置などの撹拌装置を用いて十分に撹拌することにより、十分均一に溶解又は分散した基油の混合物が得られる。次いで、基油の混合物に対して金属石鹸を添加し、好ましくは20~30℃の温度条件下、ダブルアクション撹拌装置などの混合装置を用いて十分に撹拌混合する。こうすることにより、基油がゲル状になった油分を容易に得ることができる。続いて、ゲル状になった油分に対してスチレン系熱可塑性エラストマーを添加して、好ましくは20~30℃の温度条件下で、前記混合装置を用いて十分に撹拌混合する。そして、前記成分のうちでは最後にアタクチックポリプロピレンを添加して、好ましくは20~30℃の温度条件下で、前記混合装置を用いて十分に撹拌混合して、インク追従体15を得る。アタクチックポリプロピレンは、強い剪断力の影響によりその粘度が顕著に低下する傾向にある。したがって、アタクチックポリプロピレンを他の成分よりも後にインク追従体に添加することで、アタクチックポリプロピレンに対する撹拌等の操作を施す時間を短くする。これにより、アタクチックポリプロピレンの粘度低下がより抑制されるため、このインク追従体を用いた逆流防止体の相分離が更に抑えられる。
【0061】
インク追従体15は、上述した成分以外に、更に構造安定剤、酸化防止剤、表面処理剤、着色剤、界面活性剤、増粘剤等の他の添加剤を配合されてもよい。ただし、これらの添加剤は、インク追従体を調製する際に、金属石鹸による基油のゲル化を阻害しない種類、量及び/又はタイミングで添加することが好ましい。
【0062】
また、ボールペンリフィル群の各インク収容管に収容するインク13の収容量を、インク収容管9の後端部からインク13の後端面までの距離を一定の距離とし、かつボールペンチップ5のボール径の相違に関わらず筆記可能距離が同等となるように、各インク収容管9の内径をボール径に比例させて大径または小径とし、インク13の消費に伴い追従するグリース状のインク追従体15の、各リフィルのインク収容管9の後端部からグリース状のインク追従体15の後端面までの距離を、一定の距離とすることが好ましい。その場合のインク収容管9の内径の大径または小径とするには、インク収容管9の基層7の厚さや巻き回数をボール径によって調整することが好ましい。ボール径による単位距離あたりのインク消費量は同じインク13を用いれば比例関係になるため、インク消費量の少ない、ボール径の小さいリフィル4にはインク13の収容量を少なく設定し、インク消費量の多い、ボール径の大きいリフィル4にはインク13の収容量を多く収容する。インク追従体15の収容量はインク収容管9の後端からインク追従体15の後端面までの距離をボール径によらず一定の範囲とすることにより、インク追従体を含めたインク収容管内の収容量の製造時における管理が容易になることに加え、ユーザーの使用によってボール径によるリフィル消費のばらつきも防ぐことができる。インク収容管9の後端からインク追従体15の後端までの距離の管理は、製造ライン上にてリフィル4の後端からのセンサーによる測定方法等が挙げられる。
【0063】
図8~
図11は、実施形態の同一品種の軸筒に配設するボールペンリフィル群の内の一つのリフィル4を備えたボールペン1を示し、
図8は斜視図、
図9は正面図、
図10は側面図である。また、
図11は、
図8に示す筆記具の軸筒を示す軸方向に沿った断面図である。実施形態は、いわゆるノック式のボールペンであり、後端のノック部材16を押し込むことにより、リフィル4のボールペンチップ5が軸筒2の先端開口2aから突出した状態と、リフィル4のボールペンチップ5が軸筒2内に収容された状態とを切り替えることができる。
【0064】
図8~
図11に示すように、実施形態のボールペン1は、筆記具本体107と、筆記具本体107の側部に保持されたクリップ部材108とを備える。筆記具本体107は、円筒状の軸筒2と、軸筒2内に収容されたリフィル4と、軸筒2の後端部に設けられた出没機構106と、を備える。出没機構106は、内筒110と、回転子12と、リフィル4を軸筒2の後端側に押圧するスプリング部材14と、軸線方向の前後に摺動可能なノック部材16とを備える。
【0065】
【0066】
本体部110aは略円筒状であり、本体部110aの外径は軸筒2の内径よりもわずかに小さい。また、本体部110aの後端部の内周面にはカム部110fが形成されている。カム部110fは、回転子12のカム部12bと協働して、ノック部材16を押圧することにより、回転子12を回動させてリフィル4のボールペンチップ5が軸筒2の先端開口2aから突出した状態と、軸筒2内に収容された状態とを切り替えることができる。内筒110のカム部110f及び回転子12のカム部12bの構成としては、周知の構成を採用することができる。
【0067】
後端部110bは、円環状に形成されており、外形が軸筒2の外径と略等しくなっている。後端部110bには前後方向に貫通する円形の貫通孔が形成されている。
【0068】
クリップ取付部110cは、本体部110aの後端から所定の距離をあけて設けられており、側方に向かって延びる柱体状に形成されている。クリップ取付部110cの横方向(
図12Bにおける左右方向)の両側面は平行に形成されている。
【0069】
クリップ取付部110cの後部には第1の取付切欠110gが形成されている。第1の取付切欠110gは、クリップ取付部110cの後端部の半径方向外側端部(
図12Cのクリップ取付部110cの上方かつ左側端部)から前方(
図12Cの下側)に向かって半径方向内側(
図12Cの右側)に傾斜するように伸びる切り欠きにより構成されている。第1の取付切欠110gの終端には円柱状の収容部110g1が形成されている。
【0070】
また、クリップ取付部110cの前部には横方向に貫通する第2の取付穴110hが形成されている。第2の取付穴110hは、右側の基端部110h1と、左側の逃げ部110h2とを有する。基端部110h1は、クリップ取付部110cの右側面に開口しており、円柱状に形成されている。また、逃げ部110h2はクリップ取付部110cの左側面に開口しており、基端部110h1よりも直径の大きな円柱状に形成されている。
【0071】
第1の取付切欠110gの収容部110g1及び第2の取付穴110hは長手方向に整列しており(すなわち、内筒110の中心軸から等距離に位置しており)、第1の取付切欠110gは第2の取付穴110hよりも後方に形成されている。
【0072】
組み立て状態において、内筒110は、本体部110aが軸筒2の後端開口2bから挿入され内筒110の内側に位置し、後端部110bが軸筒2の後端縁に当接するように配置されている。また、ノック部材16は、内筒110の後端部110bの貫通孔に前方から挿通され、突部16aが内筒10の本体部10aの内側に位置している。また、回転子12は、基端部12aがノック部材16の内側に前方から挿入されており、ノック部材16の先端縁が回転子12のカム部12bの後端面に当接している。また、回転子12のカム部12bの先端面がリフィル4に当接している。これにより、回転子12及びノック部材16はリフィル4を介して後方に向かって付勢されている。
【0073】
このような状態でノック部材16を押し込むことにより、回転子12が回転し、内筒110のカム部110fの凹部に回転子12のカム部12bの凸部が入り込んだ状態と、内筒110のカム部110fの凸部の先端と、回転子12のカム部12bの凸部の先端とが当接した状態とが切り替わり、リフィル4のボールペンチップ5が軸筒2内に収容された状態
と、軸筒2の先端から突出した状態とを切り替えることができる。
【0074】
図13A~
図13Cは、
図8に示す筆記具のクリップ部材を示し、
図13Aは斜視図、
図13Bは正面図、
図13Cは側面図である。なお、
図13A~
図13Cにおいては、クリップ部材を内筒から取り外した状態を示している。
図13A~
図13Cに示すように、クリップ部材108は、一本のステンレス等の金属線材が曲げ加工されて形成されている。クリップ部材108は、Uの字形に形成された先端部108Aと、Uの字形の形成された後端部108Cと、先端部108A及び後端部108Cの間の中間部108Bと、を有する。
【0075】
先端部108Aは、第1の縦部108bの前方部と、第2の縦部108cの前方部と、第1の縦部108bの前端と第2の縦部108cの前端とを接続する第1の円弧状部108aと、により構成されている。第1の縦部108bは、第1の円弧状部108aの右側(
図13Bの右側)の端部から後方に向かって中間部108Bまで延びている。また、第2の縦部108cは、第1の円弧状部108aの左側(
図13Bの左側)の端部から後方に向かって、中間部108Bを越えて後端部108Cまで延びている。
【0076】
後端部108Cは、第2の縦部108cの後端部と、第2の縦部108cの後端部から右側(
図13Bの右側)に円弧状に延びる第2の円弧状部108dと、第2の円弧状部108dの右側(
図13Bの右側)の端部から前方に延びる第3の縦部108eと、により構成されている。
【0077】
中間部108Bは、第3の縦部108eの前端部から左側(
図13Bの左側)に向かって延びる第1の端部108fと、第1の縦部108bの後端部から左側(
図13Bの左側)に向かって延びる第2の端部108gとを備える。第2の端部108gの先端には、左方向に向かって前方に傾斜する屈曲部108hが形成されている。
【0078】
クリップ部材108を内筒110から取り外した状態では、第1の縦部108bは、第2の縦部108cが延びる方向に対して、後方に向かって半径方向外側(
図13Cの左側)に傾斜している。このため、第1の端部108fは、第2の端部108gよりも筆記具本体側に位置している。
【0079】
組み立て状態において、内筒110のクリップ取付部110cの第1の取付切欠110gの収容部110g1及び第2の取付穴110hは、軸筒2の外面から所定の距離だけ離間し、長手方向に整列するように位置している。クリップ部材108は、第1の端部108fが内筒110のクリップ取付部110cの第1の取付切欠110gに挿入され、第2の端部108gがクリップ取付部110cの第2の取付穴110hに挿入されて固定されている。この際、第2の端部108gの先端の屈曲部108hが、第2の取付穴110hの逃げ部110h2内に位置している。クリップ部材108は、第1の縦部108bが、第2の縦部108cと略平行になるように変形された状態で取り付けられている。
【0080】
これにより、クリップ部材108の中間部108Bがクリップ取付部110cに保持される。また、上記の通り、クリップ部材108は変形された状態で取り付けられているため、クリップ部材108を構成する金属線材の弾性力により先端部108Aが筆記具本体7に向かって付勢される。これにより、
図10に示すように、クリップ部材108を内筒110に取り付けた状態で、クリップ部材108の先端部108Aが筆記具本体107の軸筒2の外周面に当接している。
【0081】
なお、クリップ部材108を取り付ける際には、まず、
図14A及び
図14Bに示すように、前後を反転させるとともに、表裏を反転させた状態(すなわち、第2の端部108gが第1の端部108fよりも後方側かつ筆記具本体107側に位置するような状態)で、第2の端部108gの屈曲部108hを第2の取付穴110hの基端部110h1に挿入し、クリップ部材108を第2の端部108gを中心に第1の円弧状部108aが後端側に位置するまで回転させて、屈曲部108hが逃げ部110h2内に位置するように第2の端部108gを第2の取付穴110hに挿入する。
【0082】
次に、
図15A、15Bに示すように、第2の縦部108cを第2の円弧状部108d側が筆記具本体107の左側に位置するように第1の円弧状部108aを湾曲させる。そして、
図15Bに矢印で示すように、第2の端部108gを中心として、第1の円弧状部108aが前方に位置するようにクリップ部材108を回動させる。
【0083】
次に、
図16に示すように、第3の縦部108e及び第1の端部108fを、第1の取付切欠110gに側方から挿入し、第1の端部108fを収容部110g1に配置する。これにより、クリップ部材108をクリップ取付部110cに取り付けることができる。なお、第1の端部108fを収容部110g1に配置した取り付けた後のクリップ部材108は、クリップ部材108又は内筒110を破壊しない限り、取り外すことができない。
【0084】
図17は本発明の第2実施形態による筆記具のクリップを開いた状態を示す側面図である。
図17に示すように、クリップ部材108の後端部108Cを筆記具本体107に向かって半径方向内側に押し込むと、クリップ取付部110cに保持された中間部108Bを支点として回動し、クリップ部材108の先端部108Aが筆記具本体107から離間するように半径方向外方に移動する。このため、実施形態のボールペン1の使用者は、片手の人差し指、中指、薬指、小指で筆記具本体107の軸筒2を把持した状態で、クリップ部材108の後端部108Cを押し込むことにより、クリップ部材108の先端部108Aを筆記具本体107から離間させて、クリップ部材108と筆記具本体107とを開くことができる。
【0085】
上記の構成による実施形態では、クリップ部材108の中間部108Bが筆記具本体107の側部に保持されており、クリップ部材108の後端部108Cを筆記具本体107に向かって押圧することにより、クリップ部材108が、クリップ部材108の先端部108Aが筆記具本体107から離間するように、回動する。このため、片手の人差し指、中指、薬指、小指で筆記具本体107の軸筒2を把持した状態で、クリップ部材108の後端部108Cを押し込むことにより、クリップ部材108を開くことができ、片手で操作することができる。
【0086】
また、実施形態によれば、クリップ部材108を構成する線材の弾性により先端部108Aが筆記具本体107に向かってが付勢されるため、ばねなどの付勢部材を用いることなく、簡単な構成でクリップ部材108を構成することができる。
【0087】
また、実施形態によれば、第2の取付穴110hが横方向に延びる穴により形成され第2の取付穴110hには逃げ部110h2が形成され、逃げ部110h2に第2の端部108gの屈曲部108hが配置されている。このように、クリップ部材108第2の端部108gに屈曲部108hが形成されているため、クリップ部材108が第2の取付穴110hから外れるのを防止できる。
【0088】
なお、実施形態では、第1の取付切欠110gを切り欠きから形成し、第2の取付穴110hを横方向に延びる穴により形成したが、これに限らず、切り欠きを横方向に延びる穴に変更してもよいし、横方向に延びる穴を切り欠きに変更してもよい。また、本実施形態では、クリップ部材108の第2の端部108gに屈曲部108hを形成したが、これに限らず、第1の端部108fに屈曲部を設けてもよい。
【0089】
また、実施形態では、内筒110にクリップ取付部110cを設け、クリップ取付部110cにクリップ部材108を取り付けているが、これに限らず、軸筒2の側面にクリップ取付部を設け、クリップ部材108を取り付けてもよい。
【0090】
また、実施形態では、第1の取付切欠110g及び第2の取付穴110hが長手方向に整列し、クリップ部材108を内筒110から取り外した状態において、第1の端部108fは、第2の端部108gよりも筆記具本体側に位置するように構成しているが、本発明はこれに限られない。クリップ部材108を平坦に形成した場合であっても、筆先側の第2の取付穴110hを第1の取付切欠110gよりも筆記具本体107側に形成すれば、クリップ部材108の先端部が筆記具本体107側に付勢することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 ボールペン
2 軸筒
2a 先端開口
2b 後端開口
4 リフィル
5 ボールペンチップ
6 外層
7 基層
8 内層
9 インク収容管
10 識別模様
11 継手部材
12 回転子
12a 基端部
12b カム部
13 インク
14 スプリング部材
15 インク追従体
16 ノック部材
16a 突部
106 出没機構
107 筆記具本体
108 クリップ部材
108A 先端部
108B 中間部
108C 後端部
108a 第1の円弧状部
108b 第1の縦部
108c 第2の縦部
108d 第2の円弧状部
108e 第3の縦部
108f 第1の端部
108g 第2の端部
108h 屈曲部
110 内筒
110a 本体部
110b 後端部
110c クリップ取付部
110f カム部
110g 第1の取付切欠
110g1 収容部
110h 第2の取付穴
110h1 基端部
110h2 逃げ部