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  • 特許-筒型照明ランプ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】筒型照明ランプ
(51)【国際特許分類】
   F21K 9/66 20160101AFI20241002BHJP
   F21K 9/00 20160101ALI20241002BHJP
   F21K 9/275 20160101ALI20241002BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20241002BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20241002BHJP
   F21Y 103/10 20160101ALN20241002BHJP
【FI】
F21K9/66
F21K9/00 100
F21K9/275
F21Y115:10
F21Y115:30
F21Y103:10
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020055276
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021157901
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】515032547
【氏名又は名称】リアラン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121773
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 正
(72)【発明者】
【氏名】宇野 一世
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-153517(JP,A)
【文献】特開2016-157713(JP,A)
【文献】特許第4755323(JP,B1)
【文献】特開2017-037797(JP,A)
【文献】国際公開第2016/139842(WO,A1)
【文献】特開2017-195036(JP,A)
【文献】特開2014-099302(JP,A)
【文献】特開2015-153516(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0334066(US,A1)
【文献】中国実用新案第209926283(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/66
F21K 9/00
F21K 9/275
F21Y 115/10
F21Y 115/30
F21Y 103/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子が実装される基板と、前記基板を覆う筒型の樹脂カバーと、を有する筒型照明ランプにおいて、
前記樹脂カバーは、照らす空間側である正面側に位置する正面発光領域部と、背面側に位置する背面非発光領域部と、を備え、
前記正面発光領域部及び前記背面非発光領域部は、ガラス繊維が添加されたポリカーボネート樹脂から形成され、
前記正面発光領域部は、樹脂に対して前記ガラス繊維が質量比で3~8%添加されており、前記背面非発光領域部は、樹脂に対して前記ガラス繊維が質量比で9~20%添加されており、前記正面発光領域部よりも前記背面非発光領域部の前記ガラス繊維の添加率を相対的に高くすることで、前記正面発光領域部の透光率を上げながら前記背面非発光領域部の剛性や強度を上げていると共に、
前記基板は、高熱伝導性素材である金属又はセラミック製の平板であり、ヒートシンクとして兼用されており、
別途ヒートシンクが設置されていないため、前記基板が前記樹脂カバーの背面側内面から4mm以内の位置に設置され、
前記樹脂カバーは、前記基板を当該位置に直接挟み込んで保持するために、前記背面非発光領域部の内側に一体に形成された、長手軸方向の略全体にわたって延在する一対の保持爪を備えていることを特徴とする筒型照明ランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間を照らす照明器具に関し、特に、樹脂カバーを有する筒型照明ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィスの天井に設置される照明器具として、蛍光灯型(直管型)のLED照明器具が提供されており、例えば、下記特許文献1~3に開示されている。従来のLED照明器具の照明ランプのカバーの素材としては、アクリルやポリカーボネート等の樹脂が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-4093号公報
【文献】特開2015-88441号公報
【文献】特開2015-153517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、アクリル製のカバーだと照明ランプが落下したときにカバーが割れてしまうおそれがあり、ポリカーボネート製のカバーの場合には、割れ難いが、自重や熱膨張による反りが発生し易い。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、割れ難く、且つ反りの発生を防止した樹脂カバーを有する筒型照明ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明に係る筒型照明ランプは、発光素子が実装される基板と、前記基板を覆う筒型の樹脂カバーと、を有する筒型照明ランプにおいて、前記樹脂カバーは、照らす空間側である正面側に位置する正面発光領域部と、背面側に位置する背面非発光領域部と、を備え、前記正面発光領域部及び前記背面非発光領域部は、ガラス繊維が添加されたポリカーボネート樹脂から形成され、前記正面発光領域部は、樹脂に対して前記ガラス繊維が質量比で3~8%添加されており、前記背面非発光領域部は、樹脂に対して前記ガラス繊維が質量比で9~20%添加されており、前記正面発光領域部よりも前記背面非発光領域部の前記ガラス繊維の添加率を相対的に高くすることで、前記正面発光領域部の透光率を上げながら前記背面非発光領域部の剛性や強度を上げていると共に、前記基板は、高熱伝導性素材である金属又はセラミック製の平板であり、ヒートシンクとして兼用されており、別途ヒートシンクが設置されていないため、前記基板が前記樹脂カバーの背面側内面から4mm以内の位置に設置され、前記樹脂カバーは、前記基板を当該位置に直接挟み込んで保持するために、前記背面非発光領域部の内側に一体に形成された、長手軸方向の略全体にわたって延在する一対の保持爪を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る筒型照明ランプによれば、樹脂カバーが割れ難く、また樹脂カバーの反りの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係るLED照明器具の斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る筒型照明ランプの分解斜視図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る筒型照明ランプの断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態の変形例1に係る筒型照明ランプの断面図である。
図5図5は、本発明の実施形態の変形例2に係る筒型照明ランプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、蛍光灯型(直管型)のLED照明器具1について説明する。LED照明器具1は、天井等の取付面に固定される器具本体10と、器具本体10に着脱可能に取り付けられる筒型照明ランプ20とを備える。
【0010】
器具本体10は、給電しながら筒型照明ランプ20を挟持する一対のソケット11を備える。筒型照明ランプ20は、細長い円筒形状の樹脂カバー21と、金属製基板31と、LEDチップ33と、口金35とを備える。
【0011】
樹脂カバー21は、設置時に照らす空間側である正面側に位置する正面発光領域部22と、取付面側である背面側に位置する背面非発光領域部23とを備える。樹脂カバー21は、その背面側の内面に設置された、金属製基板31を保持する基板保持部25を備える。
【0012】
図2及び図3に示すように、正面発光領域部22と背面非発光領域部23との境界は、円筒形状の樹脂カバー21の長手軸に平行に延在しており、長手軸に垂直な円形断面で見たときに、長手軸回りの円周方向において背面側の3分の1(120°)の領域に背面非発光領域部23が設置され、正面側の残りの3分の2(240°)の領域に正面発光領域部22が設置されている。
【0013】
なお、図2は、筒型照明ランプ20の一部を分解して断面を示す斜視図であり、図3は、筒型照明ランプの長手軸に垂直な面による断面図である。
【0014】
樹脂カバー21の素材は、ガラス繊維を所定量添加したポリカーボネート樹脂である。正面発光領域部22は、樹脂に対して質量比でガラス繊維を5%添加したポリカーボネート樹脂から形成され、背面非発光領域部23は、樹脂に対して質量比でガラス繊維を10%添加したポリカーボネート樹脂から形成されている。
【0015】
また、正面発光領域部22のポリカーボネート樹脂には、さらに光を均一に照射するための拡散剤が配合されており、背面非発光領域部23のポリカーボネート樹脂には、さらに白色に着色するための塗料(二酸化チタン)が配合されている。したがって、樹脂カバー21を外から見たとき、正面発光領域部22と背面非発光領域部23の色や透明度は異なっており、正面発光領域部22は白色がかった半透明(すりガラス調)に見えるのに対して、背面非発光領域部23は、透明度の低い白色に見える。
【0016】
ポリカーボネート樹脂のガラス繊維の添加量が増えると、樹脂カバー21の剛性や強度は高くなるが、光の透過率(透光率)が下がる。したがって、本実施形態では、正面発光領域部22のガラス繊維の樹脂に対する添加率を相対的に下げることで、正面発光領域部22の透光率を高くし、背面非発光領域部23のガラス繊維の樹脂に対する添加率を相対的に上げることで、背面非発光領域部23の剛性や強度を高くしている。
【0017】
このように、空間を照らす照明光が透過する正面発光領域部22の透光率を上げながら、背面非発光領域部23の剛性や強度を上げることで、照明としての機能を確保しつつ、筒型照明ランプ20の剛性や強度を向上させることができる。
【0018】
もちろん、正面発光領域部22と背面非発光領域部23のガラス繊維の樹脂に対する添加率は適宜変更可能である。但し、正面発光領域部22のガラス繊維の添加率が大きくなると、透光率が低下し、照明としての照射光量が低下してしまう。よって、正面発光領域部22の強度を保ちつつ、透光率を確保するために、正面発光領域部22への添加率は、質量比で3~8%であることが望ましい。
【0019】
また、背面非発光領域部23は、透光率が低くても問題ないため、強度を確保するために、ガラス繊維の添加率を大きくすることが望ましいが、ガラス繊維の添加量が大きくなると、粘度が増して押出成形等の量産性が低下してしまう。
【0020】
よって、背面非発光領域部23の量産性を確保しつつ、強度を上げるために、非発光領域部23への添加率は、質量比で9~20%であることが望ましい。
【0021】
基板保持部25は、背面非発光領域部23の内面側に背面非発光領域部23と一体に形成されており、基板保持部25の素材も背面非発光領域部23と同じである。基板保持部25は、LEDチップ33が実装された金属製基板31を保持するための一対の保持爪26を備えている。
【0022】
保持爪26は、細長い円筒形状の樹脂カバー21内で長手軸方向の略全体にわたって延在する金属製基板31を保持するため、2本の保持爪26が、金属製基板31を挟み込むように、長手軸方向の略全体にわたって延在して設置されている。
【0023】
金属製基板31は、樹脂カバー21内で長手軸方向の略全体にわたって延在する細いアルミニウム製の長尺板であり、複数のLEDチップ33が長手軸方向に沿って基板上に実装されている。金属製基板31は、これらLEDチップ33に電力を供給する図示しない配線を備えている。
【0024】
ここで、金属製基板31は、アルミニウム製の基板であり、熱伝導率が高く、LEDチップ33が発生する熱を放熱するヒートシンクとしても機能している。したがって、従来のように、LEDチップ33を載置するための樹脂製基板と、放熱用の金属製ヒートシンクとを別々に設置する必要がなく、本実施形態によれば、コンパクト且つ低コストの筒型照明ランプ20を提供することができる。
【0025】
また、金属製基板31がヒートシンクを兼用することで、別途ヒートシンクを設置する必要がなく、従来と比べて金属製基板31を樹脂カバー21内のより背面寄りに設置することができる。本実施形態では、幅12mmの金属製基板31が、外径26mm厚み0.75mmの樹脂カバー21の背面側内面から4mm以内の位置に設置されている(図3参照)
【0026】
このように、LEDチップ33の設置された金属製基板31を正面発光領域部22から離れた背面側の位置において、樹脂カバー21の内側に直接保持させて設置することで、LEDチップ33から正面発光領域部22までの距離を大きく取ることができ、正面発光領域部22へと到達するLED照明光がより均一化され、筒型照明ランプ20の目視によるグレアの発生を低減させることができる。
【0027】
口金35は、樹脂カバー21の両端に固定設置されており、ソケット11と着脱可能に連結される。口金35の双方又は一方は、ソケット11と電気的に連結され、口金35を介して、外部電力が筒型照明ランプ20内へと供給される。
【0028】
以上、LED照明器具1の構成について説明したが、本実施形態によれば、樹脂カバー21を構成するポリカーボネート樹脂のガラス繊維の添加率を調整し、正面発光領域部22の透光率を上げながら、背面非発光領域部23の剛性や強度を上げることで、照明としての機能を確保しつつ、筒型照明ランプ20の剛性や強度を向上させることができ、樹脂カバー21の割れや反りの発生を抑えることができる。
【0029】
続いて、本実施形態の変形例について説明する。上記実施形態では、正面発光領域部22を構成するポリカーボネート樹脂のガラス繊維の添加率は全体で同じであったが、変形例1,2では、添加率を場所によって異ならせている。
【0030】
図4に示すように、変形例1に係る筒型照明ランプ20'では、長手軸に垂直な断面において、正面発光領域部22'の背面側から最も離れた中央付近のガラス繊維の添加率を最も大きくし、この中央部分から背面側に向けて、徐々に添加率を段階的に低くしている。具体的には、中央部分の第一領域22A'の添加率を8%とし、その両側の背面側寄りの第二領域22B'の添加率を5%とし、さらにその背面側寄りの背面非発光領域部23と隣接する第三領域22C'の添加率を3%としている。
【0031】
正面発光領域部22'の第一領域22A'は、樹脂カバー21'の背面側内部に設置されたLEDチップ33の正面に位置する。通常、LEDチップ33の照射光量は正面が最も大きく、周辺に行くにしたがって徐々に照射光量が小さくなる。
【0032】
したがって、上記実施形態のように、正面発光領域部22のガラス繊維の添加率が全体で一律であって、正面発光領域部22の透光率が全体で一律であれば、正面発光領域部22の背面側と最も離れた中央部分が最も明るく、背面側に寄るにしたがって、少しずつ暗くなり、場所によって明るさが異なってしまう。
【0033】
これに対して、本変形例1によれば、正面発光領域部22'の背面側と離れた中央部分(第一領域22A')の透光率を低くし、背面側に寄るにしたがって段階的に透光率を上げることで、正面発光領域部22'の明るさを全領域で均一化することができる。
【0034】
次に、図5に示すように、変形例2に係る筒型照明ランプ20''では、長手軸に垂直な断面において、正面発光領域部22''の背面側から最も離れた中央部分である第一領域22A''のガラス繊維の添加率を8%とし、その両側の第二領域22B''及び第三領域22C''の添加率を3%と5%とで異ならせている。
【0035】
このように、所定の位置にガラス繊維の添加率3%の第二領域22B'を設置することで、その領域からの照射光量を意図的に大きくすることができる。図5に示すように、金属製基板31が斜めに設置される場合であって、真下を明るく照らしたい場合に、本変形例2のように、正面発光領域部22''の真下方向に位置する第二領域22B''の添加率を下げて透光率を上げることで、真下の照明光量を上げることができる。
【0036】
このとき、正面発光領域部22の第二領域22B''以外の領域22A'',22C''のガラス繊維の添加率は相対的に高くなっており、真下方向の第二領域22B''以外の部分の強度を上げることで、樹脂カバー21''全体での剛性や強度を確保することができる。
【0037】
以上、変形例1,2のように、正面発光領域部22のガラス繊維の添加率を場所によって段階的に変え、透光率が段階的に異なる領域を複数設置することで、正面発光領域部22を透過する照明光を全体で均一にしたり、所望の領域の光量を大きくしたりするなど、適宜照明の光量を調整することができる。
【0038】
変形例1,2では、筒型照明ランプ20',20''の長手軸回りの円周方向において透光率の異なる領域を設定しているが、筒型照明ランプ20',20''の長手軸方向に透光率の異なる領域を設定するようにしても良い。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、LED照明器具を構成する各部材の形状やサイズは適宜変形可能である。
【0040】
また、上記実施形態では、金属製基板上に実装する発光素子として、LEDチップを使用しているが、半導体レーザ(LD:Laser Diode)チップ等、適宜他の発光素子を用いることができる。
【0041】
また、上記実施形態では、発光素子を実装する金属製基板の素材として、アルミニウムを使用しているが、金属製基板をヒートシンクとして機能させることのできる高熱伝導性の金属であれば、銅等、他の金属を用いることができる。
【0042】
また、発光素子を実装する基板の素材は、金属に限らず、窒化アルミニウム等の高熱伝導性素材である高熱伝導性セラミックを用いることができる。
【0043】
また、背面非発光領域部の添加材は、さらに強度が必要な場合にフィラーなどの金属材料を添加することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 LED照明器具
10 器具本体
11 ソケット
20 筒型照明ランプ
21 樹脂カバー
22 正面発光領域部
23 背面非発光領域部
25 基板保持部
26 保持爪
31 金属製基板
33 LEDチップ
35 口金
図1
図2
図3
図4
図5