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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】熱電発電装置の取付装置、及び取付方法
(51)【国際特許分類】
   H10N 10/813 20230101AFI20241002BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
H10N10/813
H02N11/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020081022
(22)【出願日】2020-05-01
(65)【公開番号】P2021176158
(43)【公開日】2021-11-04
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 純
【審査官】田邊 顕人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-166368(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0213448(US,A1)
【文献】特開2018-186635(JP,A)
【文献】特開2009-088408(JP,A)
【文献】特開2008-091453(JP,A)
【文献】特開2007-311719(JP,A)
【文献】特表2010-532577(JP,A)
【文献】特開2007-228752(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0091628(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0102468(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 10/813
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管との間で熱伝達が可能な状態に、熱電発電装置を支持させるための複数の支持構造体と、
前記複数の支持構造体のうちの隣り合う支持構造体を連結する連結機構と、
前記複数の支持構造体のうちで一方の端に位置する支持構造体に取り付けられた第1の連結構造体と、
前記複数の支持構造体のうちで他方の端に位置する支持構造体に取り付けられ、前記第1の連結構造体と連結させることが可能な第2の連結構造体と、
を備え、
前記支持構造体は、鉛直に吊るすために用いられる吊下具が取り付けられる取付部を有し、
前記吊下具は、前記配管に取り付けられた取付補助具または他の取付装置に一端が取り付けられ、少なくとも前記支持構造体を吊り下げるために、他端が前記取付部に取り付けられる
熱電発電装置の取付装置。
【請求項2】
配管との間で熱伝達が可能な状態に、熱電発電装置を支持させるための複数の支持構造体と、
前記複数の支持構造体のうちの隣り合う支持構造体を連結する連結機構と、
前記複数の支持構造体のうちで一方の端に位置する支持構造体に取り付けられた第1の連結構造体と、
前記複数の支持構造体のうちで他方の端に位置する支持構造体に取り付けられ、前記第1の連結構造体と連結させることが可能な第2の連結構造体と、
を備え、
前記支持構造体は、前記配管の径方向上、前記配管に向けて前記支持構造体の本体より突出し、前記配管に接触する部分が凸状の曲面となっている突出部、を備える、
熱電発電装置の取付装置。
【請求項3】
配管との間で熱伝達が可能な状態に、熱電発電装置を支持させるための複数の支持構造体と、
前記複数の支持構造体のうちの隣り合う支持構造体を連結する連結機構と、
前記複数の支持構造体のうちで一方の端に位置する支持構造体に取り付けられた第1の連結構造体と、
前記複数の支持構造体のうちで他方の端に位置する支持構造体に取り付けられ、前記第1の連結構造体と連結させることが可能な第2の連結構造体と、
を備え、
前記連結機構は、連結する前記隣り合う支持構造体の間の距離が離れる方向を制限すると共に、前記距離が短くなる方向に弾性力を作用させることにより、前記距離を変更可能に前記隣り合う支持構造体を連結する、
熱電発電装置の取付装置。
【請求項4】
前記連結機構には、複数の皿ばねが含まれ、
前記連結機構は、前記複数の皿ばねにより、前記弾性力を作用させる、
請求項3に記載の熱電発電装置の取付装置。
【請求項5】
前記複数の支持構造体、前記隣り合う支持構造体毎の連結機構、前記第1の連結構造体、及び前記第2の連結構造体を取付モジュールとして、異なる取付モジュールがそれぞれ備える前記第1の連結構造体と前記第2の連結構造体とを連結させることにより、前記取付モジュールを複数、備える、
請求項1~4の何れか1項に記載の熱電発電装置の取付装置。
【請求項6】
前記支持構造体に支持させるために前記熱電発電装置が取り付けられる取付構造体、
を更に備える請求項1~5の何れか1項に記載の熱電発電装置の取付装置。
【請求項7】
配管との間で熱伝達が可能な状態に、熱電発電装置を支持させるための複数の支持構造体と、
前記複数の支持構造体のうちの隣り合う支持構造体を連結する連結機構と、
前記複数の支持構造体のうちで一方の端に位置する支持構造体に取り付けられた第1の連結構造体と、
前記複数の支持構造体のうちで他方の端に位置する支持構造体に取り付けられ、前記第1の連結構造体と連結させることが可能な第2の連結構造体と、
を備え、
前記支持構造体に支持させるために前記熱電発電装置が取り付けられる取付構造体、
を更に備え、
前記取付構造体は、
前記熱電発電装置と前記配管との間の熱伝達を中継し、前記熱電発電装置が取り付け可能な第1の部材と、
前記取付構造体を前記支持構造体に取り付けるための第2の部材と、
前記第2の部材を用いて前記取付構造体を前記支持構造体に取り付けた場合に、前記第1の部材と前記第2の部材との間の距離を広げる方向に弾性力を作用する弾性部材と、
を備える熱電発電装置の取付装置。
【請求項8】
前記複数の支持構造体は、前記配管に密着して取り付けられ、かつ、前記配管に密着する側の面と反対側の面において前記熱電発電装置を支持する
請求項1~7の何れか1項に記載の熱電発電装置の取付装置。
【請求項9】
前記第1の連結構造体、及び前記第2の連結構造体は、それぞれ回転可能に支持された部材を備え、前記部材間の距離を調整可能な調整部材により、前記第1の連結構造体、及び前記第2の連結構造体がそれぞれ取り付けられた前記支持構造体の間の距離を調整可能に連結する、
請求項1~8の何れか1項に記載の熱電発電装置の取付装置。
【請求項10】
取付補助具を配管に取り付ける第1のステップと、
前記配管に取り付けられた前記取付補助具に吊下具の一端を取り付け、前記吊下具の他端を鉛直に吊るす第2のステップと、
前記配管との間で熱伝達が可能な状態に熱電発電装置を支持するための支持構造体、および連結に用いられる連結構造体を有する取付装置を、吊り下げられた前記吊下具の他端に取り付ける第3のステップと、
前記取付装置を前記配管に環状に密着させるために、前記連結構造体を用いて前記取付装置の両端を連結する第4のステップと、
前記配管に取り付けられた状態にある前記取付装置の前記支持構造体に、前記熱電発電装置を取り付ける第5のステップと、
を備えた熱電発電装置の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱電発電装置の配管への取り付けに用いられる熱電発電装置の取付装置、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゼーベック効果を利用して発電を行う熱電発電装置は、それまで廃棄されていた廃熱エネルギーを電力として回収するために広く利用されている。廃熱エネルギーの回収のために熱電発電装置を取り付ける箇所、つまり熱源としては、廃熱エネルギーを有する流体が流れる配管がある。配管に熱電発電装置を取り付ける場合、より多くの廃熱エネルギーを回収できるように、配管の周囲に複数の熱電発電装置を配置させることが多い。
【0003】
配管は、流体の温度に応じて、膨張、或いは収縮することにより、変形する。熱電発電装置は、配管を流れる流体の温度に係わらず、配管との間で良好な熱伝達が行える状態を維持させる必要がある。このことから、配管への複数の熱電発電装置の取り付けでは、配管の周方向上、互いに隣り合う2つの熱電発電装置を、弾性を有する連結部材によりそれぞれ連結させることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6149407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
互いに隣り合う2つの熱電発電装置をそれぞれ連結部材により連結させる場合、配管への熱電発電装置の取り付けは、配管に取り付ける熱電発電装置の数が多くなるほど、困難となり、必要な人数は多くなる。これは、熱電発電装置の数が多くなるほど、全体の重量が重くなり、全体の長さも長くなるからである。
【0006】
全体の重量が重くなるほど、取り扱いが困難となり、必要な人数はより多くなる。熱電発電装置を配管に取り付ける場合、最後に残った1つの連結部材は、全ての熱電発電装置を配管の表面上の適切な位置に配置させた状態で2つの熱電発電装置の間に取り付ける必要がある。各熱電発電装置を適切な位置に維持させるために必要な人数は、全体の長さが長くなるほど、多くなる。このようなことから、配管に取り付ける熱電発電装置の数が多くなるほど、配管への熱電発電装置の取り付けは、困難となり、必要な人数は多くなる。
【0007】
配管に取り付けた熱電発電装置のうちの何れかに不具合が発生することがあり得る。不具合が発生した熱電発電装置は、多くの場合、配管から取り外す必要がある。1つ以上の熱電発電装置を取り外した場合、連結部材のうちで連結に使用されないものが生じることになり、他の全ての熱電発電装置も配管に取り付けた状態を維持できなくなる。そのため、再度、全ての熱電発電装置を配管に取り付ける作業が必要となる。
【0008】
熱電発電装置を取り付ける配管は、作業員にとって細いものとは限らない。配管は、大人一人が抱えられない太さの場合もある。配管が太くなるほど、取り付けられる熱電発電装置の数は多くなる傾向にある。このようなこともあり、熱電発電装置をより容易に配管に取り付けられるようにすることも重要である。
【0009】
本開示は、配管に熱電発電装置をより容易に取り付けることが可能な熱電発電装置の取付装置、及び取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る熱電発電装置の取付装置は、配管との間で熱伝達が可能な状態に、熱電発電装置を支持させるための複数の支持構造体と、複数の支持構造体のうちの隣り合う支持構造体を連結する連結機構と、複数の支持構造体のうちで一方の端に位置する支持構造体に取り付けられた第1の連結構造体と、複数の支持構造体のうちで他方の端に位置する支持構造体に取り付けられ、第1の連結構造体と連結させることが可能な第2の連結構造体と、を備える。
【0011】
本開示に係る熱電発電装置の取付方法は、取付補助具を配管に取り付ける第1のステップと、配管に取り付けられた取付補助具に吊下具の一端を取り付け、吊下具の他端を鉛直に吊るす第2のステップと、配管との間で熱伝達が可能な状態に熱電発電装置を支持するための支持構造体、および連結に用いられる連結構造体を有する取付装置を、吊り下げられた吊下具の他端に取り付ける第3のステップと、取付装置を配管に環状に密着させるために、連結構造体を用いて取付装置の両端を連結する第4のステップと、配管に取り付けられた状態にある取付装置の支持構造体に、熱電発電装置を取り付ける第5のステップと、を備える
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、配管に熱電発電装置をより容易に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態1に係る熱電発電装置の取付装置により、多数の熱電発電装置を配管に取り付けた状態の例を示す図である。
図2】本実施の形態1に係る熱電発電装置の取付装置を構成する取付モジュールの例を示す図である。
図3】隣り合う2つの取付モジュールを連結する部分の透視図である。
図4】全ての取付モジュールを配管に取り付けた後の状態を示す図である。
図5】取付モジュールの取り付け後、各支持構造物への取付構造体の取り付け方の例を説明する図である。
図6】各支持構造物に取付構造体を全て取り付けた後の状態の例を示す図である。
図7】各支持構造物に取付構造体を固定した後、各取付構造体への熱電発電装置の取り付け方の例を説明する図である。
図8】取付構造体の分解図である。
図9】熱電発電装置の分解図である。
図10】熱電発電装置の例を示す斜視図である。
図11】熱電発電装置の取付構造体への取付方法を説明する図である。
図12】支持構造体、取付構造体、及び熱電発電装置の一部透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示に係る熱電発電装置の取付装置、及び熱電発電装置の取付方法の実施の形態を、図を参照して説明する。なお、以下に示す変形例を含む実施の形態は一例であり、これらの実施の形態に本開示は限定されるものではない。
【0015】
熱電発電装置の取付方法の実施の形態は、熱電発電装置の取付装置の実施の形態によって実現される。ここでは、熱電発電装置の取付装置の実施の形態の説明を通して、熱電発電装置の取付方法の実施の形態を説明する。
【0016】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態1に係る熱電発電装置の取付装置により、多数の熱電発電装置を配管に取り付けた状態の例を示す図である。本実施の形態に係る熱電発電装置の取付装置1は、廃熱エネルギーを有する流体が流れる配管3に熱電発電装置2を取り付けることを想定したものであり、複数の取付モジュール10を連結させた構成となっている。以降、熱電発電装置の取付装置1は、「取付装置1」と略記する。
【0017】
配管3の取付装置1が取り付けられる部分は、図1に示すように、軸方向が鉛直方向と平行か、或いは鉛直方向に近い方向となっている。そのような軸方向の配管3に取付装置1を取り付ける場合、取付装置1の鉛直方向上の位置を維持させる必要がある。本実施の形態では、その維持を取付補助具4により行えるようにしている。図1中に示す取付補助具4は、電信柱用の取付バンドである。取付装置1は、取付補助具4からワイヤ5によって吊り下げられることにより、鉛直方向上の位置が維持された状態で配管3に取り付けられている。以降は、図2図12に示す説明図を参照し、取付装置1の構成、熱電発電装置2の構成、及び取付装置1の配管3への取付方法、配管3に取り付けた取付装置1への熱電発電装置2の取付方法について具体的に説明する。
【0018】
図2は、本実施の形態1に係る熱電発電装置の取付装置を構成する取付モジュールの例を示す図である。図3は、隣り合う2つの取付モジュールを連結する部分の透視図である。図2では、隣り合う2つの取付モジュール10を連結させた例を示している。
【0019】
各取付モジュール10は、配管3との間で熱伝達が可能な状態に、定められた数の熱電発電装置2を支持させるための支持構造体20を複数、連結させた構成である。取付モジュール10の両端に位置する2つの支持構造体20には、それぞれ、連結用の連結構造体22、或いは23が取り付けられている。それにより、2つの取付モジュール10は、連結構造体22、23により連結させることができる。取付モジュール10は、両端の連結構造体22、23を連結させることもできる。連結構造体22、23は、本実施の形態における第1の連結構造体、或いは第2の連結構造体に相当する。ここでは便宜的に、連結構造体22は第1の連結構造体、連結構造体23は第2の連結構造体にそれぞれ相当すると想定する。
【0020】
本実施の形態では、各支持構造体20は、1つの熱電発電装置2を支持させるものとなっている。支持構造体20に支持させる熱電発電装置2の数は、特に限定されない。つまり、熱電発電装置2の数は、2以上であっても良い。このこともあり、図2に示すような支持構造体20は1例であり、この例に限定されない。
【0021】
支持構造体20は、対向する同じ形状の板状部材201、対向する同じ形状の板状部材202を組み立てて作製される。そのため、支持構造体20は、図2に示すように、全体が矩形の枠の形状となっている。支持構造体20での位置関係は、枠内を内側、枠外を外側とそれぞれ表現する。また、配管3に取り付けた状態を想定した位置関係の表現も行う。
【0022】
板状部材202の配管3側の面には、図3に示すように、その面から配管3側に突出し、配管3と接触する部分が凸状の曲面となっている鋲2021が設けられている。鋲2021の近傍には、穴2022が設けられている。1つの板状部材202に、鋲2021は3つ、穴2022は2つ設けられている。鋲2021は、本実施の形態における突出部に相当する。
【0023】
板状部材202の配管3側の面は、支持構造体20の本体の配管3側の面に相当する。その面は、鋲2021により、図3に示すように、取付装置1を配管3に取り付けた際、支持構造体20の本体と配管3との間に隙間を生じさせる。この結果、支持構造体20は、通常、配管3と鋲2021のみが接触する。
【0024】
取付装置1は、熱電発電装置2と配管3との間の熱伝達が良好に行えるように、全ての取付モジュール10が配管3に強く接触している状態にする必要がある。その状態にするまでの間に、多くの支持構造体20は、配管3との間の相対的な位置関係を変化させることになる。つまり、多くの支持構造体20は、配管3上の位置を移動することになる。本実施の形態では、その移動がより容易に行えるように、言い換えれば、その移動に要する力がより小さくなるように、鋲2021を設け、支持構造体20の本体を配管3から離すようにしている。この鋲2021により、配管3の表面に多少の凹凸が存在していたとしても、その凹凸部分が板状部材202に引っかかるようなことは回避されるか、例え回避できなくともその程度は抑えられる。このため、鋲2021は、取付装置1の配管3への適切な取り付けをより容易に行えるように機能する。
【0025】
2つの板状部材201の外側には、図2に示すように、各端にそれぞれL字型のL字部材24が取り付けられている。L字部材24は、両端部にそれぞれ穴が形成された部材である。2つの板状部材201の2つの端部にも穴が形成されている。それにより、L字部材24は、L字部材24、及び板状部材201の2つの穴を貫通するピン31により、ピン31を軸に回転可能に板状部材201に取り付けられている。このピン31は、例えば両端に溝が形成されたピンである。両端に溝が形成されている場合、ピン31は、各溝にそれぞれ取り付けられたEリング32により、抜けない状態となっている。
【0026】
隣り合う2つの支持構造体20に取り付けられたL字部材24は、平らな部分が対向し、対向する部分にそれぞれ設けられた穴に部材を貫通できる状態とされる。本実施の形態では、その状態で、ボルト33、脱落防止金具34、及び複数の皿ばね35により、2つのL字部材24を連結させるようにしている。複数の皿ばね35は全て、脱落防止金具34の反対側に位置するL字部材24とボルト33の頭部との間に配置されている。
【0027】
2つのL字部材24にそれぞれボルト33用に形成された穴のうちの一方は、ネジ穴であり、他方はネジ穴ではない。ネジ穴でない穴は、ボルト33の頭部側に位置するL字部材24に形成され、ネジ穴は、頭部の反対側に位置するL字部材24に形成されている。それにより、ボルト33のネジ部は、ネジ穴でない穴から挿入し、ネジ穴に螺合させるようになっている。脱落防止金具34は、ネジ穴から突出したネジ部に螺合される。ネジ部に螺合された脱落防止金具34は、ボルト33の軸方向上、及び径方向上に弾性力を作用させ、ボルト33が緩むのを防止する。緩むのを防止することにより、ボルト33が2つのL字部材24から脱落するのも防止される。ここでは以降、便宜的に、区別するのが望ましい場合、ボルト33の頭部側に位置するL字部材24を「L字部材24A」、その反対側に位置するL字部材24を「L字部材24B」と表記する。
【0028】
2つのL字部材24を連結させることにより、隣り合う2つの支持構造体20が連結されることになる。そのため、2つのL字部材24、ピン31、2つのEリング32、ボルト33、ワッシャ341、脱落防止金具34、及び複数の皿ばね35の全ては、本実施の形態における連結機構の構成部品に相当する。この連結機構は、L字部材24を板状部材201に回転可能に支持させていることから、2つの支持構造体20の相対的な位置関係を変更可能に連結する。そのため、配管3の径の太さに対応することができる。また、2つのL字部材24に設けられた穴にボルト33を貫通させていることから、2つの支持構造体20の間の距離が離れる方向が制限される。そのボルト33を貫通させた複数の皿ばね35により、2つの支持構造体20間の距離が小さくなる方向に弾性力が作用する。このため、2つの支持構造体20は、その間の距離が変更可能に連結される。
【0029】
上記のような構成の連結機構は、2つの支持構造体20毎に2つ取り付けられている。そのため、配管3の温度変化に伴う変形、つまり膨張、或いは収縮には、2つの支持構造体20毎に取り付けた対の連結機構により対応することができる。配管3の温度変化に伴う変形の影響は、対の連結機構にそれぞれ分散されることから、特定の連結機構に局所的に大きい力が加わるようなことは回避できる。このようなことから、配管3の温度変化が生じたとしても、配管3に取り付けられた全ての取付モジュール10は適切な状態が常に維持される。
【0030】
なお、2つの支持構造体20毎に取り付ける連結機構の数は、2に限定されない。つまり連結機構の数は、1であっても良く、3以上であっても良い。また、連結機構の構成も、本実施の形態に限定されない。また、L字部材24Bの穴をネジ穴から普通の穴に変更し、脱落防止金具34の代わりに、或いは脱落防止金具34と共に、ナットを用いるようにしても良い。
【0031】
取付モジュール10の一方の端に位置する支持構造体20の端部には、それぞれ、L字部材24BにL字部材25がボルト33、脱落防止金具34、及び複数の皿ばね35により連結されている。L字部材25は、L字部材24Aと比較し、ボルト33が挿入される穴から先の一方側の部分がより長くなっている、その一方側の部分の端部に穴251が形成されている、の2点で異なっている。この穴251は、図1に示すように、ワイヤ5を取り付けるのを想定したものである。
【0032】
このL字部材25の水平方向に伸びる部分にも穴が形成されている。連結構造体22は、この穴を貫通するピン31、及び2つのEリング32により、L字部材25にピン31を軸に回転可能に取り付けられている。
【0033】
連結構造体22は、対応する同じ形状の板状部材221、及びその2つの板状部材221の間に取り付けられた板状部材222、を備えた構成である。板状部材222には、板状部材221に対向する面に穴が形成され、板状部材221には、その穴を想定した穴が形成されている。板状部材221に形成された穴は、例えばネジ穴である。そのネジ穴に、先端部が棒先となっているネジ36を螺合させ、棒先を板状部材222の穴内に突出させるようになっている。その結果、板状部材222は、その棒先を軸に回転可能に支持されている。
【0034】
板状部材222の長手方向の側面にも2つの穴2221が形成されている。この穴2221は、例えばネジ穴である。
【0035】
連結構造体22は、本実施の形態における狭義の第1の連結構造体に相当する。広義には、L字部材24B、L字部材25、ボルト33、脱落防止金具34、及び複数の皿ばね35も第1の連結構造体に相当する。
【0036】
取付モジュール10の他方の端に位置する支持構造体20の端部には、それぞれ、L字部材24AにL字部材26がボルト33、脱落防止金具34、及び複数の皿ばね35により、連結されている。L字部材26は、L字部材24Bと比較し、ボルト33が挿入される穴から鉛直方向上、反対の向きに伸びる2つの部分が共により長くなっている、その一方側の部分の端部に穴261が形成されている、の2点で異なっている。この穴261も、穴251と同じく、ワイヤ5を取り付けるのを想定したものである。
【0037】
連結構造体23は、対応する同じ形状の板状部材231、及びその2つの板状部材231の間に取り付けられた2つの板状部材232、233を備えた構成である。板状部材232には、板状部材231に対向する側に穴が形成され、板状部材231には、その穴を想定した穴が形成されている。板状部材231に形成された穴は、例えばネジ穴である。そのネジ穴に、先端部が棒先となっているネジ36を螺合させ、棒先を板状部材232の穴内に突出させることにより、板状部材232は、その棒先を軸に回転可能に支持されている。板状部材233は、2つの板状部材231からそれぞれビス39により取り付けられるようになっている。板状部材232の長手方向の側面にも2つの穴2321が形成されている。
【0038】
連結構造体23は、本実施の形態における狭義の第2の連結構造体に相当する。広義には、L字部材24、L字部材26、ボルト33、脱落防止金具34、及び複数の皿ばね35も第2の連結構造体に相当する。
【0039】
L字部材26のボルト33が挿入される穴から鉛直方向上、反対の向きに伸びる2つの部分が共により長くなっていることから、図2に示すように、連結構造体22の板状部材221間の幅W1は、連結構造体23の板状部材231間の幅W2よりも広くなっている。そのため、連結構造体23の2つの板状部材231は共に、連結構造体22の2つの板状部材221の間に配置させることができる。
【0040】
板状部材221の端部であって、L字部材25を取り付ける側とは反対側の端部には、穴が形成されている。同様に、板状部材231の端部であって、L字部材26を取り付ける側とは反対側の端部にも穴が形成されている。この2つの穴は、相対的な位置関係を変更可能に2つの連結構造体22、23を連結させるためのものである。2つの連結構造体22、23の連結は、この2つの穴にピンとして、例えばヒンジピン37を貫通させることで行われる。それにより、2つの連結構造体22、23は、互いにヒンジピン37を軸に回転可能に連結される。このヒンジピン37の端部に溝が形成されている場合、ヒンジピン37は、不図示のEリングを用いて2つの穴に貫通させた状態を維持させることができる。
【0041】
取付装置1を配管3に取り付けるためには、取付装置1全体の長さは配管3の外周の長さに応じたものにする必要がある。このため、2つの連結構造体22、23には、連結させる2つの取付モジュール10間の距離を調整する機能を持たせている。
【0042】
上記のように、板状部材222には、2つの穴2221が形成され、板状部材232にも、2つの穴2321が形成されている。板状部材222、232の穴のうち、板状部材222に形成させた穴2221はネジ穴である。それにより、本実施の形態では、図3に示すように、板状部材232の穴2321にボルト38のネジ部を挿入し、そのネジ部を板状部材222の穴2221に螺合させるようにしている。このため、ボルト38のネジ部を板状部材222の穴2221に螺合させる長さを通して、連結させた2つの支持構造体20の間の距離を調整することができる。2つの板状部材222、232は回転可能に支持させ、板状部材221、231をヒンジピン37により回転可能に連結させているのは、この調整を適切に行えるようにするためである。板状部材221、231は共に、本実施の形態における回転可能に支持された部材に相当する。
【0043】
なお、板状部材222に形成させる穴2221はネジ穴でなくとも良い。つまりボルト38にナットを螺合させ、板状部材222と板状部材232との間の距離を調整するようにしても良い。板状部材222、232は共に、回転可能に支持された部材であることから、ボルト38は、本実施の形態における調整部材に相当する。
【0044】
ボルト38による距離調整は、取付装置1を構成する全ての支持構造体20が配管3に強く接触している状態にするために行われる。その状態では、各連結機構を構成する複数の皿ばね35により、板状部材222と板状部材232との間の距離を広げる方向に弾性力が作用する。このため、ボルト38を板状部材222のネジ穴に螺合させるだけで、板状部材222と板状部材232との間の距離は安定的に維持される。
【0045】
上記のように、連結構造体22、23は、2つの取付モジュール10の端に位置する支持構造体20間の距離を調整可能に、その2つの取付モジュール10を連結する。このため、連結させる連結構造体22、23のうちの1つ以上で距離調整を行うことにより、取り付けるべき配管3の太さに対応させることができる。取付モジュール10の数、更には取付モジュール10を構成する支持構造体20の数、の変更を通して、配管3の様々な太さに対応させることができる。
【0046】
なお、連結機構と同じく、連結構造体22に用いるL字部材24Bの穴をネジ穴から普通の穴に変更し、脱落防止金具34の代わりに、或いは脱落防止金具34と共に、ナットを用いるようにしても良い。連結構造体23も同様に、L字部材26の穴をネジ穴から普通の穴に変更し、脱落防止金具34の代わりに、或いは脱落防止金具34と共に、ナットを用いるようにしても良い。
【0047】
図4は、全ての取付モジュールを配管に取り付けた後の状態を示す図である。図4では、各取付モジュール10を配管3に取り付けるために、各取付モジュール10を取付補助具4から吊り下げるのに用いたワイヤ5も示している。このワイヤ5は、L字部材25の穴251、或いはL字部材26の穴261に取り付けられたものである。
【0048】
取付モジュール10は、個別か、或いは連結させた複数の取付モジュール10毎に、取付補助具4に吊り下げられる。作業員は、例えば必要な取付モジュール10を全て吊り下げた後、隣り合う2つの取付モジュール10を順次、連結させる。その後、作業員は、連結させた連結構造体22、23のうちの1つ以上に対する距離調整を行い、全ての支持構造体20が配管3の表面に適切に接している状態にさせる。その状態にさせることにより、全ての取付モジュール10の配管3への取り付けが終了する。この距離調整を行う際、大部分の支持構造体20は、配管3表面上を移動する。この支持構造体20の配管3表面上の移動は、板状部材202に設けられた鋲2021により、より小さい力で行うことができる。
【0049】
図1は、取付装置1を3つ、配管3に取り付けた状態を示している。複数の取付装置1を配管3に取り付ける場合、次の取付モジュール10の配管3への取り付けは、直前に取り付けた取付モジュール10を取付補助具4の代用にして、同様に行うことができる。図1では、同じL字部材25の穴251、同じL字部材26の穴261をそれぞれワイヤ5で結んで各取付モジュール10を吊り下げ、全ての取付モジュール10を配管3に取り付けた状態を示している。
【0050】
図5は、取付モジュールの取り付け後、各支持構造物への取付構造体の取り付け方の例を説明する図である。図6は、各支持構造物に取付構造体を全て取り付けた後の状態の例を示す図である。
【0051】
取付構造体50は、熱電発電装置2を支持構造体20に支持させるためのものである。本実施の形態では、図5、及び図6に示すように、各支持構造体20に1つの取付構造体50を取り付けるようになっている。
【0052】
図7は、各支持構造物に取付構造体を固定した後、各取付構造体への熱電発電装置の取り付け方の例を説明する図である。図7に示すように、熱電発電装置2は、支持構造体20に固定された取付構造体50に対し、それぞれ1つ取り付けるようになっている。
【0053】
このように、本実施の形態では、熱電発電装置2を支持させる支持構造体20を複数、作製し、配管3の周方向上、隣り合わせる2つの支持構造体20を連結機構により連結させ、取付モジュール10としている。それにより、取付モジュール10は、配管3の周方向を想定して複数の支持構造体20を並べ、相対的な位置関係を変更可能に、その周方向上、隣り合う2つの支持構造体20を連結させた構成となっている。このため、図1、及び図7に示すように、後述するフィンが鉛直方向上、上になる位置に各熱電発電装置2を支持させることができる。
【0054】
各取付モジュール10では、端に位置する支持構造体20にそれぞれ、連結構造体22、23を取り付けている。それにより、取付モジュール10は、配管3に1つ取り付けるだけでなく、複数、連結させて配管3に取り付けることも可能となっている。熱電発電装置2は、配管3に全ての取付モジュール10を取り付けた後、支持構造体20毎に、取付構造体50を取り付け、支持構造体20に固定した取付構造体50に対して取り付けるようになっている。
【0055】
複数の支持構造体20を取付モジュール10とすることにより、取付モジュール10の配管3の周方向上の長さはより短くさせることができ、その重さはより抑えられる。また、取付モジュール10の配管3への取り付け時には、熱電発電装置2はもとより、取付構造体50も各支持構造体20に取り付けておく必要はない。取付補助具4の配管3への取り付けも容易に行うことができる。このようなことから、必要な数の取付モジュール10の配管3への取り付けは、例え大人一人が抱えられない太さの配管3であっても、通常、一人の作業員が容易に行うことができる。全ての取付モジュール10の取り外しも、一人の作業員が容易に行うことができる。
【0056】
取付構造体50の支持構造体20への取り付け、熱電発電装置2の取付構造体50への取り付けは共に、個別に行うことができる。取付構造体50、熱電発電装置2は共に、取り外しも個別に行うことができる。取付構造体50、熱電発電装置2は共に、一人の作業員が容易に取り扱うことができるものである。そのため、取付構造体50を含む熱電発電装置2の支持構造体20への取り付け、及び支持構造体20からの取り外しの両方とも、一人の作業員が容易に行うことができる。これらのことから、取付構造体50を含む熱電発電装置2の支持構造体20への取り付け、及び取付構造体50を含む熱電発電装置2の支持構造体20からの取り外しの両方とも、一人の作業員が容易に行うことができる。このようなことから明らかなように、取付構造体50を含む取付装置1は、取付装置1の配管3への取り付け、取り外しはもとより、熱電発電装置2の取り付け、取り外しも一人の作業員が行えるようにすることを想定した設計となっている。
【0057】
配管3は、温度により、膨張、或いは収縮し、周方向上の長さが変化する。その周方向上の長さの変化分は、配管3に取り付けた取付モジュール10によって分散・吸収され、取付構造体50、及び熱電発電装置2への影響は回避されるか、或いは影響の程度は非常に低く抑えられる。そのため、取付構造体50、及び熱電発電装置2は、配管3の温度変化に伴う径方向上の相対的な変化に対応させ、配管3からの熱伝達が良好に行える状態を維持させれば良いことになる。この径方向上の相対的な変化分は、周方向上の長さの変化分と比較して、非常に小さい。そのため、配管3の温度が変化しても、配管3から熱電発電装置2への良好な熱伝達が行える状態を維持させることができる。本実施の形態では、この良好な熱伝達は、後述するコイルばね54、648により実現される。
【0058】
取付装置1を取り付ける配管3の太さが太くなるほど、同じ数の支持構造体20を備える取付モジュール10の重さを重くさせる必要性が生じる。このことから、想定する作業員の人数、配管3が設置された環境等を考慮して、取付モジュール10を構成させる支持構造体20の数を増減させるのが好ましい。複数の支持構造体20を取付モジュール10とすることは、取付装置1の構成要素の軽量化、及び短縮化を可能にすることから、配管3への取り付けをより容易に行えるようにするうえで有効である。
【0059】
以降は、図8図12に示す各説明図を参照し、取付構造体50、熱電発電装置2の各構成、取付構造体50、熱電発電装置2の各取付方法について具体的に説明する。
【0060】
図8は、取付構造体の分解図である。始めに図8を参照し、取付構造体50の構成について具体的に説明する。
【0061】
図8において、51は、取付構造体50のベースとなる板状部材である。取付構造体50は、板状部材51に、4つのL字部材52、1つ以上の温度調整板53、及びL字部材52毎の1つのコイルばね54を取り付けた構成となっている。本実施の形態において、板状部材は第1の部材、L字部材52は第2の部材、コイルばね54は弾性部材にそれぞれ相当する。
【0062】
L字部材52は、取付構造体50の支持構造体20への取り付けに用いられる。このL字部材52には、図8に示すように、2つの貫通する穴521、522が形成されている。穴521は、板状部材51にL字部材52を取り付けるためのものである。板状部材51にも、L字部材52を取り付けるための穴511が形成されている。この穴511はネジ穴である。L字部材52の板状部材51への取り付けは、例えば穴521にスペーサ57を挿入した後、ワッシャ58を通したボルト56のネジ部にスペーサ57、コイルばね54を順次、通し、そのネジ部を穴511に螺合させることで行われる。
【0063】
L字部材52は、穴521から離れた側の端部が板状部材51の外側に突出する状態に、板状部材51に取り付けられる。これは、その端部に設けられた穴522が取付構造体50の支持構造体20への取り付け用だからである。穴522が形成された端部の板状部材51側の面は、後述するように、支持構造体20の板状部材202と接触する。取付構造体50は、穴522にボルト59のネジ部を挿入し、挿入したネジ部を板状部材202の穴2022に螺合させることにより、支持構造体20に固定される。この板状部材51側の面は、以降「接触面」と表記する。
【0064】
ボルト56の穴511への螺合は、コイルばね54を縮ませることを想定したものである。縮ませたコイルばね54は、ボルト56の軸方向上、L字部材52と板状部材51との間を離す方向に弾性力を作用させる。スペーサ57は、コイルばね54に適切な弾性力を作用させるための部材として用いている。
【0065】
板状部材51は、L字部材52が取り付けられる側の反対側を配管3の表面に接触させるようになっている。板状部材51は、支持構造体20に取り付けた場合、常に配管3の表面に接触させる必要がある。そのため、取付構造体50は、支持構造体20に取り付けた場合、コイルばね54を更に縮めるようにしている。コイルばね54を更に縮めさせ、取付構造体50を支持構造体20に取り付けることにより、その取り付けの後、L字部材52の接触面と配管3の表面との間の距離が変化しても、その変化分、コイルばね54の長さも変化する。このため、コイルばね54により、板状部材51を配管3の表面に圧接させた状態が常に維持される。その状態が常に維持できることから、配管3と板状部材51との間の適切な熱伝達も常に維持される。
【0066】
熱電発電装置2は、板状部材51のL字部材52と同じ側に取り付けられる。熱電発電装置2が備える熱電変換モジュールは、熱エネルギーを電力エネルギーに変換する熱電素子を多数、接続させたモジュールである。熱電素子には、使用可能な温度範囲が存在する。温度調整板53は、板状部材51と熱電発電装置2との間に位置し、板状部材51から熱電発電装置2との間の熱伝達を中継する。板状部材51と熱電発電装置2との間に配置された温度調整板53のうちで熱電発電装置2と接触する温度調整板53の温度は、その数が多くなるほど、低くなる。このことから、温度調整板53は、使用可能な温度範囲内で熱電素子を動作させるために、必要に応じて用いられる。それにより、温度調整板53は、取付構造体50にとって必須の部品ではない。
【0067】
なお、温度調整板53に用いる材質は、特に限定されない。熱電発電装置2と接する温度調節板53が適切な温度となるように、温度調節板53の数だけでなく、温度調節板53に用いる材質を決定しても良い。これは、材質により、熱伝導率が異なるからである。温度調節板53全体で熱電発電装置2への熱伝達量を調整すれば良いことから、熱伝導率の異なる複種類の温度調節板53を用意し、種類の異なる温度調節板53を組み合わせて用いても良い。熱伝導率の異なる複種類の温度調節板53を用意する場合、例え配管3の最高温度が想定と異なったとしても、温度調節板53の組み合わせにより、容易に対応することができる。
【0068】
温度調整板53には、図8に示すように、2つの対向する端部に1つの穴531、及びその穴531の両側にそれぞれ1つの穴532が形成されている。穴531は、温度調整板53を板状部材51に取り付けるためのものである。計2つの穴532は、熱電発電装置2を板状部材51に取り付けるためのものである。板状部材51にも、これら穴531、532の配置に合わせて穴が形成されている。形成されている穴は、ネジ穴である。それにより、温度調整板53は、穴531にボルト55の先端部を挿入し、板状部材51の穴にボルト55のネジ部を螺合させることにより、板状部材51に取り付けることができる。熱電発電装置2の取り付け方については後述する。
【0069】
図9は、熱電発電装置の分解図である。次に図9を参照し、取付装置1への取り付けを想定する熱電発電装置2について具体的に説明する。
【0070】
図9において、61は、熱電変換モジュールである。62、63は共に、熱伝導媒体である。熱伝導媒体62は、板状部材51、或いは温度調整板53と接触させる部品である。2つの熱電変換モジュール61は、2つの熱伝導媒体62、63の間に、熱伝導媒体62の面に沿って並べて配置される。
【0071】
熱伝導媒体63は、熱電変換モジュール61と冷却部64との間に配置されている。そのため、冷却部64は、配管3から熱電変換モジュール61を介して伝達された熱を放熱するための構成要素となっている。
【0072】
冷却部64は、図9に示すように、板状部材641と、1つの端部が直角、或いは直角に近い角度で折り曲がった板状部材642との間に、4つのヒートパイプ643を挟んで固定させたものである。板状部材641は、例えばヒートパイプ643を個別に安定的に固定するための4つの溝が形成されたものである。1つのヒートパイプ643は、1つの溝に配置される。この溝により、板状部材641は、板状部材642と比較し、厚い形状となっている。
【0073】
板状部材641に形成された溝は、ヒートパイプ643が不適切な状態に潰れるのを防止する。また、ヒートパイプ643との接触面積をより大きくさせる。4つのヒートパイプ643には、多数のフィン644が取り付けられている。それにより、冷却部64は、熱伝導媒体63を介して伝達された熱をヒートパイプ643により多数のフィン644を介して効率的に放熱させることができる構造となっている。
【0074】
板状部材642の折れ曲がった部分には、フィン644の配置を維持させるための支持部材646がボルト6401を用いて取り付けられている。板状部材641、642、645は、ボルト6403、及びナット6404を用いて一体化されている。
【0075】
板状部材645には、4つのボルト647が固定されている。板状部材645には、4つのボルト647を通す4つの穴が形成されている。各ボルト647のネジ部は、板状部材642側の反対側から板状部材645の穴に挿入され、板状部材645から突出している。各ボルト647は、突出したネジ部にナット6402を螺合させることにより、板状部材645に固定されている。固定された各ボルト647のネジ部には、それぞれコイルばね648が挿入される。
【0076】
ボルト647の突出したネジ部の長さは、コイルばね648の軸方向上の長さより長くなっている。各ネジ部は、段差が設けられた板状部材65に形成された穴651に挿入される。穴651から突出するネジ部は、螺合させるナット653により、コイルばね648の軸方向上の長さが調整可能である。これは、板状部材65を基点に、熱電変換モジュール61を押す方向にコイルばね648に弾性力を作用させるためである。
【0077】
板状部材65の幅方向、つまり配管3の周方向に対向する端部には、それぞれ2つの穴652が形成されている。この穴652は、熱電発電装置2を取付構造体50に取り付けるためのものである。各穴652には、配管3の径方向上、外側からボルト654のネジ部が挿入され、ネジ部の挿入部分はスペーサ655が挿入される。ボルト654のネジ部は、温度調整板53の穴532内に挿入され、板状部材51の穴に螺合される。
【0078】
穴532は、板状部材65の幅方向に対向する端部にそれぞれ設けられている。そのため、スペーサ655は、その端部と温度調整板53との間の距離を一定に維持させる。それにより、スペーサ655は、熱電変換モジュール61が適切な力で配管3に向けて押されるように、コイルばね648に作用させる弾性力を制限する。そのために、ナット653によるボルト647のネジ部への螺合は、コイルばね648の軸方向上の長さが長めになるように行われる。ナット653は、コイルばね648に作用させる弾性力の調整には用いられない。
【0079】
ボルト647のネジ部を穴651に挿入することにより、熱電発電装置2は、配管3の径方向以外が板状部材65によって位置決めされる。このことから、広義には、本実施の形態における取付構造体には、取付構造体50の他に、板状部材65、コイルばね648、ボルト654、及びスペーサ655を加えることができる。
【0080】
図10は、熱電発電装置の例を示す斜視図である。図10(a)は、配管3の径方向上、外側の視点での斜視図であり、図10(b)は、配管3の径方向上、内側の視点での斜視図である。図10(a)、図10(b)に示すように、熱電発電装置2は、板状部材65により、取付構造体50に取り付け可能な状態に組み立てられている。
【0081】
図11は、熱電発電装置の取付構造体への取付方法を説明する図である。図12は、支持構造体、取付構造体、及び熱電発電装置の一部透視図である。図12では、取付構造体50、及び熱電発電装置2を断面図で示し、取付モジュール10の一部を透視図で示している。
【0082】
熱電発電装置2は、図11に示すように、ボルト654のネジ部を穴652、及びスペーサ655に順次、挿入させた後、そのネジ部を穴532内に挿入し、板状部材51に設けられた穴511にネジ部を螺合させることにより、取付構造体50に取り付けられる。取り付けられた後、熱電発電装置2の熱電変換モジュール61は、スペーサ655、コイルばね648により、温度調整板53に向けて適切な弾性力により押しつけられることとなる。
【0083】
取付構造体50は、熱電発電装置2が取り付けられる前に、支持構造体20に取り付けられる。その取り付けは、図12に示すように、L字部材52に設けられた穴522からボルト59のネジ部を挿入させ、穴522から突出したネジ部を板状部材202に形成された穴2022に螺合させることにより行われる。図12では、ボルト59は省略している。
【0084】
取付構造体50の板状部材51は、コイルばね54により、配管3に向けて押しつけられる。スペーサ57は、板状部材51が適切な力で配管3に押しつけられるのを実現させる。それにより、例え配管3の表面とL字部材52の接触面との間の距離が配管3の温度により変化したとしても、板状部材51は、コイルばね54により、配管3の表面に圧接した状態に維持される。
【0085】
板状部材51、L字部材52、スペーサ57のそれぞれの配管3の径方向上の長さは、板状部材51が配管3の表面に押しつけられる力に影響する。しかし、各長さは全て比較的に短い。そのため、各長さの配管3の温度に伴う変化分は、僅かな範囲内に収まる。結果、板状部材51は、配管3の温度に係わらず、常に適切な圧力で配管3の表面に押しつけられた状態を維持する。
【0086】
一方、熱電発電装置2では、熱電変換モジュール61は、その熱電変換モジュール61を挟む2つの熱伝導媒体62、63と共に、コイルばね648により、板状部材51に向けて押しつけられる。スペーサ655は、熱電変換モジュール61、及び2つの熱伝導媒体62、63が適切な力で押しつけられるのを実現させる。板状部材51と同様の理由により、熱電変換モジュール61、及び2つの熱伝導媒体62、63は、配管3の温度に係わらず、常に適切な圧力で板状部材51に向けて押しつけられた状態に維持される。
【0087】
なお、本実施の形態では、熱電変換モジュール61を保護する意味もあり、取付構造体50を介して、熱電発電装置2を支持構造体20に取り付ける構成を採用している。配管3の温度が熱電変換モジュール61の使用可能な範囲内に収まる場合、取付構造体50は構成から除外しても良い。取付構造体50を使用しない場合、例えば板状部材65の穴652に挿入するボルト654のネジ部を板状部材202の穴2022に螺合させるようにして、熱電発電装置2を支持構造体20に支持させても良い。
【0088】
連結構造体22、23は、一つの取付モジュール10の両端部の連結、或いは他の取付モジュール10との連結用の構造体である。これら連結構造体22、23の構成は、様々な変形が可能である。連結構造体22、23は、既存の距離調整が可能な部品、或いはモジュールを取り付け可能なものであっても良い。つまり、連結構造体22、23は、2つの支持構造体20間の距離を変更可能でなくとも良い。
【符号の説明】
【0089】
1 熱電発電装置の取付装置、2 熱電発電装置、3 配管、4 取付補助具、5 ワイヤ、10 取付モジュール、20 支持構造体、22 連結構造体(第1の連結構造体)、23 連結構造体(第2の連結構造体)、24 L字部材(連結機構の一部)、25 L字部材、26 L字部材、31 ピン(連結機構の一部)、32 Eリング(連結機構の一部)、33 ボルト(連結機構の一部)、34 脱落防止金具(連結機構の一部)、35 皿ばね(連結機構の一部)、36 ネジ、37 ヒンジピン、38 ボルト(調整部材)、39 ビス、50 取付構造体、51 板状部材(第1の部材)、52 L字部材(第2の部材)、54 コイルばね(弾性部材)、222 板状部材(回転可能に支持された部材)、232 板状部材(回転可能に支持された部材)、2021 鋲。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12