IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシーの特許一覧

特許7564645時間分域反射率測定を用いた液位測定システムおよび方法
<>
  • 特許-時間分域反射率測定を用いた液位測定システムおよび方法 図1
  • 特許-時間分域反射率測定を用いた液位測定システムおよび方法 図2
  • 特許-時間分域反射率測定を用いた液位測定システムおよび方法 図3
  • 特許-時間分域反射率測定を用いた液位測定システムおよび方法 図4
  • 特許-時間分域反射率測定を用いた液位測定システムおよび方法 図5
  • 特許-時間分域反射率測定を用いた液位測定システムおよび方法 図6
  • 特許-時間分域反射率測定を用いた液位測定システムおよび方法 図7
  • 特許-時間分域反射率測定を用いた液位測定システムおよび方法 図8
  • 特許-時間分域反射率測定を用いた液位測定システムおよび方法 図9
  • 特許-時間分域反射率測定を用いた液位測定システムおよび方法 図10
  • 特許-時間分域反射率測定を用いた液位測定システムおよび方法 図11
  • 特許-時間分域反射率測定を用いた液位測定システムおよび方法 図12
  • 特許-時間分域反射率測定を用いた液位測定システムおよび方法 図13
  • 特許-時間分域反射率測定を用いた液位測定システムおよび方法 図14
  • 特許-時間分域反射率測定を用いた液位測定システムおよび方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】時間分域反射率測定を用いた液位測定システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/26 20220101AFI20241002BHJP
   G21C 17/035 20060101ALI20241002BHJP
   G01K 7/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
G01F23/26 Z
G21C17/035
G01K7/00 381Z
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020097988
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2020201258
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-05-23
(31)【優先権主張番号】16/431,934
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508177046
【氏名又は名称】ジーイー-ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】GE-HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】スプライシャル ジュニア.,ウィリアム フランシス
(72)【発明者】
【氏名】ダヤル,ヨゲシュワ-ル
(72)【発明者】
【氏名】アーンハート,ジョナサン アール.
(72)【発明者】
【氏名】フィドラー,アンドリュー エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ソーヤー,スティーブン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】リカード,キース ディー.
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-194421(JP,A)
【文献】特開2014-115266(JP,A)
【文献】米国特許第04786857(US,A)
【文献】特開2016-194422(JP,A)
【文献】特表2011-521227(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0153029(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0027137(US,A1)
【文献】米国特許第05717337(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0063982(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/22-23/26
G21C 17/00-17/14
G01K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部および底部を有するとともに液体を含むように構成されたレセプタクルと、
前記底部を通って前記レセプタクル内に延びるプローブであって、導電性管、前記導電性管内の少なくとも1つのマーカ、前記導電性管内に同軸に配置されるとともに前記少なくとも1つのマーカに接続される少なくとも1つの導電性ロッドを含む、プローブと、
前記プローブにパルスを送信するように構成されたパルスユニットと、
前記プローブからの少なくとも第1の反射パルスおよび第2の反射パルスを受信するように構成されたデジタイザと、
を備える、液位を測定するためのシステム。
【請求項2】
前記プローブが前記レセプタクル内で垂直方向に配向されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プローブが上端部および下端部を有し、前記下端部は前記パルスユニットからの前記パルスを受信するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プローブの前記上端部が前記レセプタクル内にある、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記導電性管が、前記レセプタクル内の液体に浸透するように穿孔されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の反射パルスが前記レセプタクルの前記底部の前記液体との最初の界面からのものであり、前記第2の反射パルスが前記レセプタクル内の液体と空気との界面からのものである、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記パルスユニットが前記プローブから少なくとも1000フィート(約304.8メートル)離れて配置されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記プローブを前記パルスユニットおよび前記デジタイザに接続する同軸ケーブルをさらに備え、前記同軸ケーブルは、前記パルスユニットから前記プローブに前記パルスを伝達するとともに前記プローブから前記デジタイザに前記第1の反射パルスおよび前記第2の反射パルスを伝達するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記レセプタクルが沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのマーカが、本体部分および複数のフィン部分を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
記原子炉圧力容器が局部出力領域モニタ(LPRM)管を含み、前記プローブが前記LPRM管内に配置されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記LPRM管が、前記レセプタクル内の前記液体に浸透するように穿孔されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
記原子炉圧力容器が、上部ガイド、炉心プレート、および前記上部ガイドと前記炉心プレートとの間の燃料集合体を含み、前記プローブが前記炉心プレートと前記燃料集合体とを通って延びる、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
上部および底部を有するレセプタクルの液位を測定するための方法であって、
前記レセプタクルの前記底部に液体を通して挿入されるプローブに、パルスユニットを使用してパルスを送信する工程であって、前記プローブが、導電性管、前記導電性管内の少なくとも1つのマーカ、前記導電性管内に同軸に配置されるとともに前記少なくとも1つのマーカに接続される少なくとも1つの導電性ロッドを含む、プローブにパルスを送信する工程と、
前記レセプタクルの前記底部の前記液体との最初の界面から第1の反射パルスの形態で、デジタイザを使用して第1のインピーダンス不整合を受信する工程と、
前記レセプタクル内の液体と空気との界面から第2の反射パルスの形態で、前記デジタイザを使用して第2のインピーダンス不整合を受信する工程と、
前記第1の反射パルスと前記第2の反射パルスとの間の時間を計算する工程と、
前記時間を距離に変換する工程とを含み、前記距離は、前記レセプタクル内の前記液位を示す、レセプタクルの液位を測定するための方法。
【請求項15】
前記送信工程が、前記液体を通って液体と空気との前記界面に上向きに移動する前記パルスを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記送信工程が、前記パルスを生成するためにアバランシェ(avalanche)モードでトランジスタを作動させる工程を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記作動工程により、少なくとも5ボルトの大きさと4ナノ秒以下の幅とを有するガウシアン(Gaussian)パルスが生成される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記レセプタクルが沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器であり、前記送信工程が通常の運転条件または事故条件の間に行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記変換工程が、前記プローブの下端部から周知の距離に配置された少なくとも1つのマーカを用いて、前記プローブを通る前記パルスの速度を計算する工程を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記パルスの前記速度に基づいて前記液体の温度を決定する工程をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液位を測定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、時間分域反射率測定(TDR法)は、金属ケーブルの障害の特性評価および位置特定に使用されてきた。時間分域反射率測定(TDR法)に基づく水位測定システムは存在するが、一般的に、インパルスや比較的特殊な時間分域反射率測定(TDR法)の識別方法を利用して、比較的遠くから(運転中の沸騰水型原子炉(BWR)などの)水位を遠隔で測定するようには構成されていない。例えば、1つの従来の時間分域反射率測定(TDR法)システムは、インパルスではなくステップ波を利用している。他の従来のアプローチには、この一般的なカテゴリーの技術を使用する誘導波レーダ(GWR)技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2010/0067643号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0177122号明細書
【文献】米国特許第9074922号明細書
【文献】米国特許第9212943号明細書
【文献】米国特許第9395227号明細書
【文献】国際公開第2013/073178号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、そのような従来の技術はすべて、使用済燃料プール(SFP)の近傍(すなわち、比較的近接した位置)に電子機器を必要とし、したがって、高い放射線および/または高温を含む可能性のある敵対的な環境での水位測定には適していない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
液位を測定するためのシステムは、レセプタクル、プローブ、パルスユニット、およびデジタイザを備える。レセプタクルは、上部および底部を有し、液体を収容するように構成される。プローブは、底部を通ってレセプタクル内に延びる。パルスユニットは、プローブにパルスを送信するように構成される。デジタイザは、プローブから少なくとも第1の反射パルスと第2の反射パルスとを受信するように構成される。
【0006】
レセプタクルは、沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器である。原子炉圧力容器は、上部ガイドと、炉心プレートと、上部ガイドと炉心プレートとの間に配置された燃料集合体とを含む。プローブは、炉心プレートと燃料集合体との間を通って延びる。加えて、原子炉圧力容器は、 局部出力領域モニタ(LPRM)管を含む。プローブは、LPRM管内に配置される。LPRM管は、レセプタクル内の液体に対して透過性を有するように穿孔される。
【0007】
プローブは、レセプタクル内で垂直方向に配向される。プローブは、上端部と下端部とを有する。上端部は、レセプタクル内にある。下端部は、パルスユニットからのパルスを受信するように構成される。プローブは、導電性管と、導電性管内に配置された少なくとも1つのマーカと、導電性管内に同軸に配置されるとともに少なくとも1つのマーカに接続された少なくとも1つの導電性ロッドとを含む。導電性管は、レセプタクル内の液体に浸透するように穿孔される。
【0008】
パルスユニットは、プローブから少なくとも1000フィート(約304.8メートル)離れた位置に配置される。システムは、プローブをパルスユニットおよびデジタイザに接続する同軸ケーブルをさらに含む。同軸ケーブルは、パルスユニットからプローブにパルスを伝達し、プローブからデジタイザに第1の反射パルスおよび第2の反射パルスを伝達するように構成される。第1の反射パルスは、レセプタクルの底部にある液体との最初の界面からのものである。第2の反射パルスは、レセプタクル内の液体と空気との界面からのものである。
【0009】
レセプタクル内の液位を測定するための方法は、プローブをレセプタクルの底部に挿入し、液体に通す工程を含む。加えて、方法は、プローブにパルスを送信する工程を含む。さらに、方法は、レセプタクルの底部の液体との最初の界面から、第1の反射パルスの形態で第1のインピーダンス不整合を受信する工程を含む。方法はまた、レセプタクル内の液体と空気との界面から第2の反射パルスの形態で第2のインピーダンス不整合を受信する工程を含む。方法はまた、第1の反射パルスと第2の反射パルスとの間の時間を計算する工程を含む。さらに、方法は、時間を距離に変換する工程を含む。距離は、レセプタクル内の液位を示すものである。
【0010】
送信工程は、液体を通って液体と空気との界面までパルスを上向きに移動させる工程を含む。送信工程はまた、パルスを生成するためにアバランシェモード(avalanche)でトランジスタを作動させる工程を含む。トランジスタの作動工程は、少なくとも5ボルトの大きさおよび4ナノ秒以下の幅を有するガウシアンパルスを生じさせる。レセプタクルは、沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器であり、送信工程は、通常の作動状態または事故状態の間に行われる。
【0011】
変換工程は、プローブの下端部から既知の距離に配置された少なくとも1つのマーカを用いて、プローブを通るパルスの速度を計算する工程を含む。方法は、パルスの速度に基づいて液体の温度を決定する工程をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、例示的な実施形態による沸騰水型原子炉(BWR)内の液位を測定するためのシステムを含む沸騰水型原子炉(BWR)を示す断面図である。
図2図2は、例示的な実施形態による時間分域反射率測定(TDR法)プローブを示す概略図である。
図3図3は、例示的な実施形態によるTDRプローブを含む局部出力領域モニタ(LPRM)管を示す断面図である。
図4図4は、例示的な実施形態によるTDRプローブを含むLPRM管を示す切欠図である。
図5図5は、例示的な実施形態によるTDRプローブのマーカを示す斜視図である。
図6図6は、例示的な実施形態によるTDRプローブを含むLPRM管を示す断面図である。
図7図7は、例示的な実施形態によるTDRプローブとパルスユニットおよびデジタイザとの接続を示す概略図である。
図8図8は、例示的な実施形態によるパルスユニットおよびTDRケーブルを示す概略図である。
図9図9は、例示的な実施形態による液位を測定するための方法の間の反射の電圧対時間TDRシグネチャを示す図である。
図10図10は、例示的な実施形態による、関連する時間差を示した、液位を測定するための方法の間の反射の電圧対時間TDRシグネチャを示す図である。
図11図11は、例示的な実施形態によるデータとの畳み込みのためのエッジフィルタを示す図である。
図12図12は、例示的な実施形態によるプローブ上部エッジフィルタおよびプローブ底部エッジフィルタの、データとの畳み込みを示す図である。
図13図13は、例示的な実施形態によるデータとのマーカエッジフィルタの畳み込みを示す図である。
図14図14は、例示的な実施形態による空気と水との界面エッジフィルタの、データとの畳み込みを示す図である。
図15図15は、例示的な実施形態による、TDRデータを使用して液位を測定する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書の非限定的な実施形態の様々な特徴および利点は、添付の図面と併せて詳細な説明を検討すると、より明らかになるであろう。添付の図面は、単に例示目的で提供されているに過ぎず、特許請求の範囲を限定するように解釈されるべきではない。添付の図面は、特に明記されていない限り、縮尺で描かれたものとはみなされない。明瞭にするために、図面の様々な寸法が誇張されている場合がある。
【0014】
要素または層が、別の要素または層の「上にある」、「接続されている」、「結合されている」、または「覆っている」と言及される場合、これは、他の要素または層の直接上にあるか、接続されているか、結合されているか、若しくは覆っているか、または介在する要素若しくは層が存在していてもよいことが理解されるべきである。これに対して、ある要素が「直接上にある」、「直接接続されて」、または「他の要素または層に直接結合されて」いると言及される場合、介在する要素または層は存在しない。同様の符号は、本明細書全体を通して同様の要素を示す。本明細書で使用されるように、「および/または」という用語は、関連付けられて記載された1つ以上の項目の任意のおよびすべての組み合わせを含む。
【0015】
本明細書では、第1、第2、第3などの用語が、様々な要素、構成要素、領域、層、および/またはセクションを説明するために使用されることがあるが、これらの要素、構成要素、領域、層、および/またはセクションは、これらの用語によって限定されるべきではないことが理解されるべきである。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、層、またはセクションを他の領域、層、またはセクションと区別するためにのみ使用される。したがって、後述する第1の要素、構成要素、領域、層、またはセクションは、例示的な実施形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層、またはセクションと称することができる。
【0016】
空間的に相対的な用語(例えば、「beneath」、「below」、「lower」、「above」、「upper」など)は、説明を容易にするために、本明細書では、図示のような別の1つ以上の要素または特徴に対する1つの要素または特徴の関係を説明するために使用されてもよい。空間的に相対的な用語は、図に描かれている配向に加えて、使用中または操作中の装置の異なる配向を包含することを意図していることが理解されるべきである。例えば、図の装置が裏返しされた場合、他の要素または特徴の「below」または「beneath」と記載されている要素は、続いて、他の要素または特徴の「above」に配向されるであろう。したがって、「below」という用語は、「上」の配向と「下」の配向の両者を包含してもよい。装置は、他の配向(90度回転または他の配向)であってもよく、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子は、それに応じて解釈される。
【0017】
本明細書で使用される用語は、様々な実施形態のみを説明する目的であり、例示的な実施形態を限定することを意図していない。本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確にそうでないことを示さない限り、複数形も含むことが意図される。本明細書で使用される場合、用語「includes」、「including」、「comprises」、および「comprising」のうちの少なくともいずれかは、記載された特徴、整数、ステップ、操作、要素、および構成要素のうちの少なくともいずれかの存在を特定するが、それらの1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素、および群のうちの少なくともいずれかの存在または追加を排除するものではないことが、さらに理解されるであろう。
【0018】
例示的な実施形態は、例示的な実施形態の理想化された実施形態(および中間構造体)の概略図である断面図を参照して本明細書に記載されている。したがって、例えば、製造技術および許容誤差のうちの少なくともいずれかの結果として、図示の形状からの変動が予想される。以上により、例示的な実施形態は、本明細書に図示された領域の形状に限定されるものと解釈されるべきではなく、例えば、製造に起因する形状の逸脱を含むものである。
【0019】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、例示的な実施形態が属する当該技術分野において通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に使用されている辞書で定義されている用語を含む用語は、関連する技術の文脈においてその意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書で明示的にそう定義されていない限り、理想化されたまたは過度に形式的な意味で解釈されないことが、さらに理解されるであろう。
【0020】
図1は、例示的な実施形態による沸騰水型原子炉(BWR)内の液位を測定するためのシステムを含む沸騰水型原子炉(BWR)を示す切欠図である。図1を参照すると、液位を測定するためのシステム1000は、レセプタクル、プローブ、パルスユニット、およびデジタイザを備える。レセプタクルは、上部および底部を有し、液体を収容するように構成される。プローブは、底部を通ってレセプタクル内に延びる。パルスユニットは、プローブにパルスを送信するように構成される。デジタイザは、プローブからの少なくとも第1の反射パルスおよび第2の反射パルスを受信するように構成される。レセプタクル、プローブ、パルスユニット、およびデジタイザは、本明細書でさらに詳細に後述する。
【0021】
レセプタクルは、例示的な実施形態はこれに限定されないが、沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器(RPV)100である。原子炉圧力容器100は、上部ガイド110と、炉心プレート130と、上部ガイド110と炉心プレート130との間の燃料集合体120とを備える。プローブは、底部を通って、炉心プレート130および燃料集合体120を通って延び、原子炉圧力容器100内に延びる時間分域反射率測定(TDR法)プローブ300である。上部ガイド110と炉心プレート130との間の領域は、燃料領域140とみなされる。一実施例では、TDRプローブ300は、TDRプローブ300の上端部が、通常の運転状態では原子炉圧力容器100内の液位よりも低く、事故状態では液位よりも高くなるように、上部ガイド110で終端する(例えば、既存の沸騰水型原子炉がシステム1000を含むように後付けされている場合)。別例では、TDRプローブ300は、TDRプローブ300の上端部が、通常の運転状態および事故状態の間、原子炉圧力容器100内の液位よりも上にあるように、上部ガイド110を通って延びてもよい(例えば、システム1000と一体的に設けられた新しい沸騰水型原子炉の場合)。
【0022】
図2は、例示的な実施形態による時間分域反射率測定(TDR法)プローブを示す概略図である。図2を参照すると、TDRプローブ300は、導電性管310と、導電性管310内に配置された少なくとも1つのマーカ330と、導電性管310内に同軸に配置されるとともに少なくとも1つのマーカ330に接続された少なくとも1つの導電性ロッド320とを含む。TDRプローブ300は、3つのマーカ330を含むように図示されているが、例示的な実施形態はこれに限定されないことを理解すべきである。
【0023】
TDRプローブ300は、上端部と下端部とを有する。設置の際に、TDRプローブ300の上端部はレセプタクル内にある。TDRプローブ300の下端部も、レセプタクル内にある。例示的な実施形態では、TDRプローブ300の上端部は、燃料領域340を通って延びるように構成される(原子炉圧力容器内に設置される場合)。加えて、TDRプローブ300の導電性管310は、レセプタクル内の液体に対して透過性を有するように穿孔される。その結果、TDRプローブ300内の液位は、レセプタクル内の液位と同じである。また、TDRプローブ300は、レセプタクル内で垂直方向に配向される。
【0024】
TDRプローブ300の下端部は、パルスユニットからのパルスを受信するように構成される。加えて、パルスは、反射パルスがデジタイザに戻って送信されるように、TDRプローブ300の様々な位置に沿って反射される。一例では、第1の反射パルスは、レセプタクルの底部にある液体との最初の界面からのものである。別例では、第2の反射パルスは、レセプタクル内の液体と空気との界面からのものである。本明細書で使用されるように、液体と空気との界面はまた、液体と気体との界面(例えば、水と蒸気との界面)とも呼ばれてもよいことが理解されるべきである。加えて、本明細書でさらに詳細に後述するように、反射パルスは、1つ以上のマーカ330およびTDRプローブ300の上面のうちの少なくともいずれか一方からのものである。
【0025】
パルスユニットおよびデジタイザのうちの少なくともいずれか一方は、TDRプローブ300に対して遠隔に相対的に配置され、これは、特定の環境(例えば、原子炉環境)の安全性の観点から有益である。例えば、例示的な実施形態はこれに限定されないが、パルスユニットおよびデジタイザのうちの少なくともいずれか一方は、TDRプローブ300から少なくとも1000フィート(約304.8メートル)離れた位置に配置される。この遠隔配置を可能にするために、TDRプローブ300をパルスユニットおよびデジタイザに接続するための同軸ケーブルが設けられてもよい。これにより、同軸ケーブルは、パルスユニットからTDRプローブ300にパルスを伝達し、TDRプローブ300からデジタイザに少なくとも第1の反射パルスおよび第2の反射パルスを伝達するように構成される。同軸ケーブル、パルスユニット、およびデジタイザについては、本明細書でさらに詳細に後述する。
【0026】
図3は、例示的な実施形態によるTDRプローブを含む局部出力領域モニタ(LPRM)管を示す断面図である。図3を参照すると、局部出力領域モニタ(LPRM)管210は、原子炉圧力容器100内に配置される。例えば、LPRM管210は、底部を通って、燃料領域140を通って(これにより、炉心プレート130および燃料集合体120を通って)、原子炉圧力容器100内に(例えば、垂直に)延びる。TDRプローブ300(導電性管310および1本以上の導電性ロッド320を含む)は、LPRM管210内に配置される。トラバーシングインコアプローブ(TIP)管410もまた、LPRM管210内に配置され、TDRプローブ300に対して相対的に平行に配置されているが、例示的な実施形態はこれに限定されない。LPRM管210は、原子炉圧力容器100内の液体に対して透過性を有するように穿孔される。その結果、LPRM管210内の液位は、原子炉圧力容器100内の液位と同じである。
【0027】
例示的な実施形態では、LPRM管210は、0.8乃至1.2インチ(約2.03乃至3.04センチメートル)(例えば、1インチ(約2.54センチメートル))の範囲の直径Dを有する。加えて、(TDRプローブ300の)導電性管310およびTIP管410は、それぞれ、0.350乃至0.400インチ(約0.88乃至1.01センチメートル)(例えば、0.375インチ(約0.95センチメートル))の範囲の直径を有する。さらに、TDRプローブ300の導電性ロッド320は、0.035乃至0.045インチ(約0.08乃至0.11センチメートル)(例えば、0.040インチ(約0.10センチメートル))の範囲の直径を有する。
【0028】
図4は、例示的な実施形態によるTDRプローブを含むLPRM管を示す切欠図である。図4を参照すると、TDRプローブ300、TIP管410、およびLPRM検出器220がLPRM管210内に配置されている。TDRプローブ300に関して、複数のスペーサ350が、TDRプローブ300の導電性ロッド320と導電性管310との間の相対的に等しい距離(例えば、同軸配置)を維持するのを支援するために、内部に設けられる。スペーサ350の各々は、その内部を導電性ロッド320が延びる貫通孔を形成する。スペーサ350の各々はまた、TDRプローブ300の導電性管310の内面に接触する3つの径方向に配置されたフィンを含んでもよいが、例示的な実施形態はこれに限定されるものではない。加えて、スペーサ350の各々は、絶縁材料(例えば、セラミック)で形成されてもよい。さらに、少なくとも1つのマーカ330は、TDRプローブ300の底部から周知の距離に配置される。これにより、マーカ330による反射パルスは、付加的な情報(例えば、パルス伝播速度)を計算するために使用される。マーカ330については、本明細書でさらに詳細に後述する。
【0029】
図5は、例示的な実施形態によるTDRプローブのマーカを示す斜視図である。図5を参照すると、マーカ330は、本体部分332および複数のフィン部分336を含む。マーカ330の本体部分332は、TDRプローブ300の1本以上の導電性ロッド320を収容するように構成されたブラインドホール334(例えば、各端部における)を形成する。1つのマーカ330のみが利用される場合、TDRプローブ300の少なくとも1つの導電性ロッド320は、各端部のブラインドホール334を介してマーカ330に接続された2本の導電性ロッド320の形態である。複数、例えば3つのマーカ330が利用される場合(例えば、図2)、TDRプローブ300内の少なくとも1本の導電性ロッド320は、各マーカ330のブラインドホール334を介して、直列かつ同軸にマーカ330に交互に接続された4本の導電性ロッド320の形態である。したがって、マーカ330の数をnとすると、導電性ロッド320の数は、n+1である。いくつかの実施形態では、1つ以上のマーカ330は、利用される場合、導電性ロッド320と一体的に形成される。
【0030】
マーカ330の本体部分332は、円筒形状を有し、複数のフィン部分336は、本体部分332の長さ部分に沿って延在し、径方向に配置されるとともに等距離に間隔をあけて配置される。例えば、フィン部分336は、本体部分332の両端部と面一になるように、本体部分332の全長に沿って延びる。マーカ330はまた、本体部分332が複数のフィン部分336と一体的に形成されたモノリシック構造体である。3つのフィン部分336が図面に図示されているが、例示的な実施形態はこれに限定されないことが理解されるべきである。
【0031】
マーカ330は、導電性ロッド320、マーカ330、および導電性管310の間のインピーダンスの不一致の結果として、反射パルスが(パルスユニットからの初期パルスに応答して)デジタイザに戻って送信されるように構成される。インピーダンスの不一致は、抵抗性、容量性、および/または誘導性の違いによるものである。適切な幅および振幅の反射パルスが生成されるように(容易に検知するために)、マーカ330は、約1インチ乃至約3インチ(約2.54乃至7.62センチメートル)(例えば、2インチ(約5.08センチメートル))の範囲の長さを有する。一実施例では、導電性ロッド320およびマーカ330は、同じ導電性材料(例えば、ステンレス鋼)で形成される。別例では、導電性ロッド320が、1つの導電性材料(例えば、白金)で形成され、マーカ330が、別の導電性材料(例えば、ステンレス鋼)で形成されてもよい。いずれの状況においても、インピーダンスの不一致は、少なくとも導電性ロッド320およびマーカ330に関する形状の変化に起因してもよい。
【0032】
図6は、例示的な実施形態によるTDRプローブを含むLPRM管を示す断面図である。図6を参照すると、LPRM管210は、TDRプローブ300(これは、導電性管310および導電性ロッド320を含む)、TIP管410、およびLPRMケーブル230を含む。設置されると、境界部150の近傍の構造物(これは、プレートであってもよい)は、原子炉圧力容器内に設けられる。TDRケーブル500の端部には、シール370が設けられる。シール370は、セラミックで形成され、液密性があり、比較的高い圧力に耐えることができるように構成されている。応力緩和構造体360は、熱膨張によるひずみを緩和するために利用される。応力緩和構造体360は、ジグザグ形態であるように示されているが、例示的な実施形態はこれに限定されないことを理解すべきである。例えば、これに代えて、応力緩和構造体360は、螺旋状の形態を有してもよい。TDRケーブル500は、パルスユニットおよびデジタイザに接続される同軸ケーブルの一部であるとみなされる。例えば、TDRプローブ300、パルスユニット、およびデジタイザは、集合的に同軸ケーブルと呼ばれる複数のケーブルセグメントを介して接続される。
【0033】
図7は、例示的な実施形態による、パルスユニットおよびデジタイザへのTDRプローブの接続を示す概略図である。図7を参照すると、TDRプローブ300は、ティー510を介してパルスユニット600およびデジタイザ700に接続される。例えば、TDRプローブ300は、同軸ケーブルの第1のセグメントでティー510に接続される。パルスユニット600は、同軸ケーブルの第2のセグメントでティー510に接続される。デジタイザ700は、同軸ケーブルの第3のセグメントでティー510に接続される。例示的な実施形態はこれに限定されないが、ティー510はBayonet Neill*Concellman(BNC)コネクタである。上述したように、パルスユニット600は、TDRプローブ300にパルスを送信するように構成される。デジタイザ700は、TDRプローブ300から反射パルスを受信し、反射パルスのデジタル表現を生成するように構成される。デジタイザ700は、アナログ/デジタル変換器(ADC)を含み、コンピュータに実装される。図7には特に示されていないが、プロセス制御カード(PCC)がスイッチとして使用されてもよい。
【0034】
図8は、例示的な実施形態によるパルスユニットおよびTDRケーブルを示す概略図である。図8を参照すると、パルスユニット600は、TDRケーブル500を介してTDRプローブ300に送信される(より長いステップ状の波形とは対照的に)短い電気パルスを生成するように構成される。短い電気パルスを使用することにより、TDRプローブ300の様々な要素からの反射を時間的に分離することができる。その結果、反射を分析するために自動検知アルゴリズムが使用される。これに対し、より長いステップ状の波形では、TDRプローブ300の様々な要素からの反射が互いに干渉する傾向にあり、その結果、その検知を失敗させる。
【0035】
例示的な実施形態では、パルスは、異なる反射の間の干渉を確実に最小限にするために、高速立ち上がり時間と高速立ち下がり時間の両者を示す。例えば、パルスユニット600は、必要とされる迅速な立ち上がり時間および立ち下がり時間を有するガウシアンパルスを生成する。しかしながら、(例えば、TDRケーブル500および/または導電性ロッド320の)スキン効果のために、短いパルスは、長いパルスよりも急速に減衰される。したがって、パルス幅に加えて、ロバストな動作を確保するために、信号レベルも考慮されるべきである。例えば、パルスユニット600は、75オームのケーブルに5乃至15Vのパルスを生成する。
【0036】
パルスユニット600は、パルスを生成するためにアバランシェモードで動作するように構成されたトランジスタを含む。トランジスタは、ベース、コレクタ、およびエミッタを端子として有するバイポーラ接合トランジスタ(BJT)である。アバランシェモードでは、コレクタからエミッタへの降伏電圧(例えば、110V)を超えるまで、正の電圧がコレクタに印加される。コレクタからエミッタへの降伏電圧を超えると、コレクタからエミッタにパルス状の電流が流れる。パルスの立ち上がり時間および立ち下がり時間は、それぞれサブナノ秒の範囲である。
【0037】
抵抗R1およびコンデンサC1は、以下の目的を果たす抵抗-コンデンサ(RC)ネットワークを形成する。R1とC1の相対的な値は、トランジスタのコレクタ上の電圧の蓄積率に影響を与える。電圧が十分に高い値まで蓄積されると、トランジスタはアバランシェモードに入る。C1の大きさは、結果として生じるアバランシェの幅にも影響する。C1の値を高くすると、アバランシェの開始時にC1に多くの電荷が存在するため、アバランシェがより長い時間間隔で持続するようになる。逆に、C1の値が低いと、アバランシェの開始時にC1に存在する電荷が少なくなるため、アバランシェがより短い時間間隔で持続することになる。このように、パルス幅は、C1の値に基づいて選択可能である。パルスユニット600は、比較的一貫した1乃至3ナノ秒幅のパルスを生成する。
【0038】
トランジスタは、低い固有のコレクタからエミッタへの漏出を有する比較的低い寄生容量値を有する。低い寄生容量値により、比較的高い振幅の狭パルスを生成可能である。加えて、低い固有のコレクタからエミッタへの漏出により、R1およびC1によって形成されたRCネットワークが充電されているときに、アバランシェの早期発生が防止される。低い固有のコレクタからエミッタへの漏出がなければ、放電が迅速に行われない可能性があり、その結果、パルスの立ち上がり時間が長くなる。
【0039】
抵抗R2は、比較的きれいな方法で(例えば、バウンスのない)アバランシェが容易に終端するように構成されている。抵抗R3、R4、およびR5は、複数の機能を有する。例示的な実施形態では、R3、R4、R5によって形成される並列抵抗により、パルスユニット600の出力インピーダンスとTDRケーブル500のインピーダンスとが一致する。加えて、パルス(アバランシェが発生したときに生じる)は、R3、R4、R5によって形成された並列抵抗を通って流れ、TDRパルス電圧を展開する。図8には示されていないが、並列抵抗を形成するために、抵抗R6がR3、R4、R5とともに含まれてもよい。並列抵抗の使用はまた、複数の回路経路により、アバランシェ電流が接地に到達するために利用可能な表面積を増加させることができるため、有益である。これにより、スキン効果損失と自己インダクタンス効果の両方が最小化される。スキン効果の損失を最小化することにより、結果として生じるパルスの振幅を大きくすることが支援される。自己インダクタンス効果を最小化すると、より迅速なアバランシェが発生し、結果として発生するパルスの振幅を増加させることが支援される。より迅速なアバランシェは、狭いパルスを生成するのを支援する。
【0040】
本明細書でさらに詳細に述べるように、レセプタクル(例えば、原子炉圧力容器100)内の液位を測定するための方法は、プローブ(例えば、TDRプローブ300)をレセプタクルの底部に挿入し、液体を貫通させる工程を含む。加えて、方法は、プローブにパルスを送信する工程を含む。さらに、方法は、レセプタクルの底部の液体との最初の界面から、第1の反射パルスの形態で第1のインピーダンス不整合を受信する工程を含む。方法はまた、レセプタクル内の液体と空気との界面から第2の反射パルスの形態で第2のインピーダンス不整合を受信する工程を含む。方法はまた、第1の反射パルスと第2の反射パルスとの間の時間を計算する工程を含む。さらに、方法は、時間を距離に変換する工程を含み、距離は、レセプタクル内の液位を示す。
【0041】
送信工程は、液体を通って液体と空気との界面までパルスを上向きに移動させる工程を含む。送信工程はまた、パルスを生成するためにアバランシェモードでトランジスタを作動させる工程を含む。トランジスタの動作工程は、少なくとも5ボルトの大きさおよび4ナノ秒以下の幅を有するガウシアンパルスを生じさせる。レセプタクルは、沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器であり、送信工程は、通常の作動状態または事故状態の間に行われる。
【0042】
変換工程は、プローブの下端部から既知の距離に配置された少なくとも1つのマーカ(例、マーカ330)を用いて、プローブを通るパルスの速度を計算する工程を含む。方法は、パルスの速度に基づいて液体の温度を決定する工程をさらに含む。
【0043】
図9は、例示的な実施形態による液位を測定するための方法の間の反射の電圧対時間TDRシグネチャを示す図である。図10は、例示的な実施形態による、関連する時間差を示した、液位を測定するための方法の間の反射の電圧対時間TDRシグネチャを示す図である。図9および図10を参照すると、液位(例えば、水位)を決定するために使用される生データは、プローブ(例えば、TDRプローブ300)から外れたパルスユニット(例えば、パルスユニット600)からの初期パルスのデジタル化された反射から得られる。図示の反射のシグネチャ(これは、トレースとも呼ばれる)は、50kHzのパルスレートで、プローブの上部に29cmの空隙を有する550°F(約287.77℃)の温度で捕捉された100個の個別のシグネチャの平均値を含むが、例示的な実施形態はこれに限定されるものではない。
【0044】
図9および図10において、図示の反射は、プローブの底部、1つ以上のマーカ、空気と水との界面、およびプローブの上部を含むプローブの様々な要素に対応する。各反射は、2つの点、すなわち反射の開始点(ローカルベースラインから離脱したところ)と反射の頂点とを特徴とする。プローブの底面に関して、反射の開始点にはPBと符号が付され、反射の頂点にはPBと符号が付されている。マーカ(1つのマーカを想定)に関して、反射の開始点にはPMと符号が付され、反射の頂点にはPMと符号が付されている。空気と水との界面に関して、反射の開始点にはAWと符号が付され、反射の頂点にはAWと符号が付されている。プローブの上部に関して、反射の開始点にはPTと符号が付され、反射の頂点にはPTの符号が付されている。
【0045】
ソフトウェアは、プローブの反射および対応する要素を自動的に検知するために使用され、プローブの要素は、プローブの底部、1つ以上のマーカ、空気と水との界面(存在する場合)、およびプローブの上部を含む。例示的な実施形態では、各反射と対応する要素について、ソフトウェアは、反射の開始点と反射の頂点(振幅)の時間内の位置を決定する。反射の開始点は、反射がローカルベースラインから離脱する場所として定義される。開始点は、エッジ検出法を使用して見つけることができる。この方法では、各要素に対して最適化されるとともにデータをデジタル的に畳み込む、ガウス導関数に基づくデジタルフィルタが使用される。この技術は、標準的な有限差分法よりもS/N比を劇的に向上させることができる。フィルタリングされた応答が所定のレベルを超えるときを判断するために、閾値検出が続いて使用される。この技術は、ノイズの存在下での反射とそれに対応する要素の検知に特に有用である。反射および対応する要素の開始点(またはエッジ)が検知されると、反射の頂点(振幅)は、エッジ付近の単純な最大値/最小値探索によって決定される。
【0046】
本明細書でより詳細に後述するように、エッジ検出方法は、3つのステップを含む。エッジ検出方法の第1のステップは、フィルタの定義を含む。エッジ検出方法の第2のステップは、生データ(または前処理されたデータ)とのフィルタの畳み込みを含む。エッジ検出方法の第3のステップは、フィルタリングされたデータ内の要素(頂点)の検知を含む。
【0047】
エッジ検出方法の第1のステップに関して、フィルタは、以下のガウス方程式に基づく。
【数1】
数1において、μはセントロイドである。加えて、σはフィルタのスケール幅(ガウシアン分布の全幅半値(FWHM))に関係しており、以下のようになっている。
【数2】
【0048】
スケール幅は、求められているデータ内の要素の「サイズ」に関係している。すべての定数は、TDRシグネチャデータ(t,V)の縦軸(時間)の単位である。スケール幅は、その「サイズ」またはFWHM持続時間のシグネチャの特徴を強調するようにフィルタを調整する。この方法は、選択されたスケール幅に過度に敏感なものではないが、TDR信号の小さいまたは大きい特徴は、フィルタリングされた応答では強調されない。このことが、この手法を典型的な有限差分法よりも有用なものとしている。
【0049】
エッジフィルタは、後述するガウシアン分布の1次微分であると定義される。
【数3】
また、エッジフィルタは、任意の直流成分(例えば、「バックポーチ」)を除去する傾向があり、これにより、閾値の検知がより強固になる。
【0050】
フィルタの実装は、第1のデータ点の右側に中心となるセントロイドを含む。便利な中心位置は、全幅半値(FWHM)の7倍の距離にある。これによりフィルタの縦座標を正にすることができ、フィルタの左側が切り捨てられない。フィルタスケールサイズの選択は、要素の大きさを考慮して選択されるべきである。例示的な実施形態では、TDR要素のためのFWHMは、上部プローブ反射および底部プローブ反射のための13ns、マーカ反射のための5ns、および空気と水との界面反射のための4nsである。これらは、TDR要素の反射のFWHMを取ることによって決定される。
【0051】
図11は、例示的な実施形態によるデータとの畳み込みのためのエッジフィルタを示す図である。図11を参照すると、4つのガウスエッジ検出フィルタが示されている。左側には、点線(......)で示された空気と水との界面エッジフィルタが示されている。空気と水との界面エッジフィルタの右側には破線(_ _ _)で示されたマーカエッジフィルタがある。さらに右側には、実線(___)で示されるプローブ上部エッジフィルタとプローブ底部エッジフィルタとがある。図示のように、プローブ上部エッジフィルタとプローブ底部エッジフィルタとは同じものである。
【0052】
エッジ検出方法の第2のステップに関して、2つの1次元関数の数学的畳み込みは、次の式で定義される。
【数4】
各フィルタのプローブからのTDRシグネチャとの畳み込みは、本明細書でより詳細に後述する様々な応答を生成する。
【0053】
図12は、例示的な実施形態によるプローブ上部エッジフィルタおよびプローブ底部エッジフィルタの、データとの畳み込みを示す図である。図12を参照すると、プローブからのTDRシグネチャ(図9)が、フィルタリングされた応答とともに示されている。要素検知のための閾値は-0.05ボルトである。加えて、個別のノイズ閾値を定義するための関心のある局部領域が特定される(例えば、点線の実線部分)。ソフトウェアによって決定されたプローブ上部反射およびプローブ底部反射の開始時間は、TDRシグネチャ上の円によって示される。
【0054】
図13は、例示的な実施形態によるデータとのマーカエッジフィルタの畳み込みを示す図である。図13を参照すると、プローブからのTDRシグネチャ(図9)が、フィルタリングされた応答とともに示されている。要素検知のための閾値は-0.01ボルトである。加えて、マーカ反射の開始に対応する最大電圧値の位置を特定するための関心のある局部領域が特定される(例えば、円と重なる点線の実線部分)。ソフトウェアによって決定されたマーカ反射の開始時間は、TDRシグネチャ上の円によって示される。
【0055】
図14は、例示的な実施形態による空気と水との界面エッジフィルタの、データとの畳み込みを示す図である。図14を参照すると、プローブからのTDRシグネチャ(図9)が、フィルタリングされた応答とともに示されている。要素検知のための閾値は0.006ボルトである。加えて、個別のノイズ閾値を定義するための関心のある局部領域が特定される(例えば、円と重なる点線の実線部分)。ソフトウェアによって決定された水と空気との界面反射の開始時間は、TDRシグネチャ上の円によって示される。
【0056】
エッジ検出方法の第3のステップに関して、反射の開始(またはエッジ)が検知されると、反射の頂点(振幅)は、エッジ付近の単純な最大値/最小値探索によって決定される。フィルタリングされた応答における最大値(または最小値)は、反射の先頭(または立ち下がり)エッジの中点の位置に対応する。しかしながら、TDR反射は対称ではない可能性があるため(例えば、先頭エッジおよび立ち下がりエッジは異なる勾配を有する)、その位置は、正確な中間点の位置からわずかに歪んでいるかもしれないことに注意すべきである。畳み込みの出力は比較的滑らかであるので、頂点検知の方法は、閾値を越えてフィルタリングされた応答における最小値または最大値を見つけることを含む。各要素に使用される閾値は、図12乃至14に関連して上述した。方針は、閾値を、フィルタリングされた応答における望ましくない頂点上に移動しない最低値に設定することである。これは、探索がバックグラウンドノイズのすぐ上の最小アップピークを求める、空気と水との界面反射に対して特に適用可能である。
【0057】
探索の開始点および終了点を適切に選択することにより、マーカ反射および空気と水との界面反射を正確に位置付ける可能性が高められる。例示的な実施形態では、マーカはプローブの底部から6フィート(約1.82メートル)の位置にある。このようなシナリオでは、適切な開始点は、プローブ底面反射の頂点の後である。例えば、開始点は、プローブ底面反射の開始後にプローブ底面FWHMが2つになるように選択される。マーカ反射の終了点は、開始点後100nsの位置となるように選択される。空気と水との界面反射は、プローブ上部反射の前に位置すると仮定される。その結果、この領域は、プローブ上部反射の開始位置に基づいて定義され、その前に2つのプローブ上部FWHMを延ばす。
【0058】
先頭エッジの中間点(またはおおよその位置)が発見されると、次のタスクは、TDRシグネチャ(反射の開始)におけるローカルベースラインからの離脱の点を見つけることである。これは、TDR信号が局所のノイズ閾値を下回るまで、中間点から時間的に後方に移動することによって達成される。ノイズ閾値は、TDRシグネチャ内の関心のある局所領域の統計から決定される。この関心のある局所領域の開始位置は、中間点の前の2つのFWHMである。しかしながら、プローブ上部反射については、開始位置は、空気と水との界面反射(もしあれば)からの可能性のある干渉を除去するために、中間点の前の3つのFWHMである。時間の長さは、1つのFWHMである。この関心領域における電圧の平均および標準偏差が決定される。局所のノイズ閾値は、平均プラスまたはマイナス3標準偏差として定義される。プラスまたはマイナスの符号は、反射がプラスであるかマイナスであるかに応じて決定される。
【0059】
マーカ反射は、プローブ底面反射の「バックポーチ」に位置するダウンパルスである。高温(例えば、550°F(約287.77℃))では、マーカ反射が位置する領域(「バックポーチ」)には、ローカルバックグラウンドの比較的大きな傾きが存在する。その結果(および上述のように)、第1の探索は、フィルタリングされた応答の負の頂点のためのものである。その領域(期待されるフィルタリングされた応答の大きさ)に閾値が設定され、その結果、TDR信号中のマーカ反射の降下の中間が見出される。次に、元のTDR信号(フィルタリングされていない時間-電圧信号)のこの位置から時間的に逆行するウォークが、電圧の最大頂点が見つかるまで実行される。探索のための関心のある領域の範囲は、マーカ反射の降下の中間の前の1つのマーカFWHMに限定される。この領域(図13を参照)では、最大電圧の時間位置(プラス1の時間ステップ)は、マーカ反射の開始に対応する。要約すると、反射の頂点値の位置は、反射の開始点から3FWHM以内のTDRシグネチャの最小値(または最大値)を探索することによって実行される。
【0060】
一旦上記の特徴(例えば、4つの反射に関連して)がTDR信号内に位置すると、プローブ内の状態に関する情報が決定される。プローブ内のそのような条件は、液体(例えば、水)内のパルス伝搬速度、液体温度、および液位を含む。
【0061】
液(例えば、水)位は、プローブの底部での反射と、空気と水との界面での反射(もしあれば)との間の時間差を測定することによって決定される。空気と水との界面の反射が検知されない場合には、プローブは水で満たされていると仮定される。一方、空気と水との界面の反射が検知された場合は、各反射の開始点(反射がローカルベースラインから離脱する場所)から時間差が決定される。この時間差に続いて水中でのパルス伝播速度を乗算して、プローブの底部からの水中領域の長さを計算する。
【0062】
水中でのパルス伝播速度は水温に敏感であるため(これは炉心内の軸方向の高さにわたってある程度変化すると予想される)、この速度を直接測定できることが有益である。この点で、プローブに1つ以上のマーカを設けることによって、予想される温度変化によりパルス伝搬速度がプローブの異なる領域に沿ってどのように変化するかについて、より多くの情報を得ることができる。加えて、そのような情報は、データ更新サイクルごとに入手可能である。位置決めに関して、1つ以上のマーカは、プローブの底部(および/または上部)から周知の1つ以上の位置に配置される。プローブの底面反射とマーカの反射との間の時間差を測定することにより、この領域のパルス伝播速度を決定することができる。
【0063】
炉心領域の開始位置に配置された単一のマーカでは、3つの可能なパルス伝播速度、すなわち1)プレナム領域速度(プローブ底面とマーカとの間)、2)炉心領域速度(マーカとプローブ上面との間)、および3)プローブ平均速度(プローブ底面とプローブ上面との間)が利用可能である。プレナム領域速度は、更新サイクルごとに利用できる可能性があるが、炉心領域速度およびプローブ平均速度は、プローブが満杯のときにのみ利用できる。測定方法に関わらず、速度は各基準点と最後に更新された時刻との間の状態を表す。
【0064】
水中でのパルス伝播速度は、水の密度の直接関数である。加えて、水の密度は温度の強い関数(かつ圧力の弱い関数)である。パルス伝播速度の水温への依存性は、TDRを用いた新しい測定機能の重要性を示唆している可能性がある。特筆すべきは、局所的な伝播速度を直接測定することで、局所的な水温に関連付けることができるということである。これは、パルス伝播速度および水温に関連するルックアップテーブルを使用して実施することができる。その結果、パルス伝搬速度の各測定は、水温(例えば、プレナム領域、炉心領域、プローブ平均)に変換される。速度と同様に、水温は、各基準点とそれが最後に更新された時刻との間の状態を表す。マーカの上の水温に有意な変動がある場合、水位の決定は、保守的な水位測定をもたらす(例えば、炉心内の温度がプレナム領域よりも高温である場合)。
【0065】
図15は、例示的な実施形態による、TDRデータを使用して液位を測定する方法を示すフローチャートである。図15を参照すると、方法は、後述するステップS100乃至S200を含む。
【0066】
ステップS100では、プローブのTDR反射データが得られる。プローブは、図1のTDRプローブ300であり、TDR反射データは、本明細書で議論されるTDRシグネチャのラインに沿ったものである。
【0067】
ステップS110では、ガウシアンエッジフィルタをTDR反射データに畳み込む。ガウシアンエッジフィルタは、図11のプローブ底部エッジフィルタ、マーカエッジフィルタ、空気と水との界面エッジフィルタ、およびプローブ上部エッジフィルタを含む。
【0068】
ステップS120では、プローブの底部、1つ以上のマーカ、空気と水との界面(もしあれば)、およびプローブの上部を含む各要素についての単純な閾値化によって、畳み込みデータの頂点を見つけることができる。
【0069】
ステップS130では、図12乃至14に示すように、各要素がTDR反射データ中のローカルベースラインから離脱する時間内の位置が見つかる。
【0070】
ステップS140では、TDR反射データから各要素の開始の時刻および電圧が記録される。
【0071】
ステップS150では、各要素の頂点の値の時間内の位置を求める。
【0072】
ステップS160では、TDR反射データから各要素の頂点の時刻および電圧が記録される。
【0073】
ステップS170では、各マーカとプローブ上部とプローブ底部との間の領域でパルス伝搬速度を計算する。上述したように、各マーカ、プローブ上部、およびプローブ底部の位置(したがって、その間の距離)は周知である。その結果、一旦ある領域の反射の間の時間差が決定されると、パルス伝播速度が計算される。
【0074】
ステップS180では、各領域のパルス伝播速度の相関関係から水温を決定する。例えば、パルス伝播速度に基づくルックアップテーブルから水温を決定する。また、ルックアップテーブルは、経験的な研究から得られたものである。
【0075】
ステップS190では、検知された要素およびパルス伝播速度を用いて水位を決定する。例えば、プローブ底面反射と、空気と水との界面反射との間の時間差(例えば、図10のΔt)をパルス伝播速度に乗じて、プローブ底面から空気と水との界面(水面)までの水域の長さを計算する。
【0076】
ステップS200では、結果を表示するとともに記録する。結果は、水位と領域水温とを含む。
【0077】
多くの例示的な実施形態が本明細書に開示されているが、他の変形が可能であることが理解されるべきである。そのような変形は、本開示の趣旨および範囲からの逸脱とみなされるべきではなく、当業者には自明であろうそのような修正はすべて、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15