(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】LiDAR用途のためのガラス窓
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20241002BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20241002BHJP
C03C 17/32 20060101ALI20241002BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20241002BHJP
G02B 1/11 20150101ALI20241002BHJP
【FI】
G01S7/481 A
C03C21/00 101
C03C17/32 C
G02B5/22
G02B1/11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020125413
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-05-26
(32)【優先日】2019-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ニコラウス シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】ボリス アイヒホアン
(72)【発明者】
【氏名】フランク-トーマス レンテス
(72)【発明者】
【氏名】イェンス ウルリッヒ トーマス
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー プラッパー
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-145059(JP,A)
【文献】特開平07-005516(JP,A)
【文献】特開2018-158125(JP,A)
【文献】特開2016-031236(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1472934(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51,
G01S 17/00-17/95,
G03C 17/32,21/00,
G02B 1/11, 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LiDARシステムのためのガラス窓であって、前記ガラス窓は曲げられた形状を有し、且つガラス窓の面積の少なくとも50%が、0.1mm~15mmの長さのスケールについて
SE
G<-2.3×10
-6×2×R
0[1/mm]+7.3×10
-4
[式中、R
0はガラス窓のmmでの目標曲率半径である]
が該当する幾何学的なスロープエラーSE
Gを有し、ここで、少なくとも100mm
2のガラス窓の面積が、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、少なくとも0.00001の幾何学的なスロープエラーSE
Gを有する、前記ガラス窓。
【請求項2】
前記ガラス窓の面積の少なくとも50%が、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、0.00050未満の幾何学的なスロープエラーを有する、請求項1に記載のガラス窓。
【請求項3】
前記ガラス窓の面積の少なくとも50%が、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、
SE
O<-1.1×10
-6×2×R
0[1/mm]+3.6×10
-4
が該当する光学的なスロープエラーSE
Oを有する、請求項1または2に記載のガラス窓。
【請求項4】
前記ガラス窓の面積の少なくとも50%が、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、0.00025未満の光学的なスロープエラーを有する、請求項1または2に記載のガラス窓。
【請求項5】
前記ガラス窓の面積の少なくとも50%が、15mmを上回る長さのスケールについて、
SE
G<-4.8×10
-5×2×R
0[1/mm]+9.8×10
-3
に該当する幾何学的なスロープエラーSE
Gを有する、且つ/または
SE
O<-2.4×10
-5×2×R
0[1/mm]+4.9×10
-3
に該当する光学的なスロープエラーSE
Oを有する、請求項1または2に記載のガラス窓。
【請求項6】
前記ガラス窓が環または環の部分である、請求項1または2に記載のガラス窓。
【請求項7】
前記目標曲率半径が50mm~200mmであり、且つ/または前記ガラス窓が壁厚1mm~5mmおよび/または軸長20mm~200mmおよび/または中心角30°~360°を有する、請求項1または2に記載のガラス窓。
【請求項8】
前記ガラス窓の面積の少なくとも50%が、RMS粗さ10nm未満、有利には7.5nm未満、好ましくは5nm未満を有する、請求項1または2に記載のガラス窓。
【請求項9】
前記ガラス窓が、400nm~700nmの波長範囲における可視光について平均透過率10%未満を有し、且つ近赤外のスペクトル範囲の動作波長、殊に905nm、940nmおよび/または1550nmの波長を有する光について平均透過率90%以上を有する、請求項1または2に記載のガラス窓。
【請求項10】
前記ガラス窓が可視光の吸収のためにコーティングを備えており、前記コーティングは有利には、400nm~700nmの波長範囲における可視光について平均透過率10%未満を有し、且つ近赤外のスペクトル範囲の動作波長、殊に905nm、940nmおよび/または1550nmの波長を有する光について平均透過率90%以上を有する、請求項9に記載のガラス窓。
【請求項11】
前記ガラス窓が、ホウケイ酸ガラスまたはアルミノシリケートガラス、殊にアルカリ・アルミノシリケートガラス、アルカリ土類・アルミノシリケートガラス、またはアルカリ不含のアルミノシリケートガラスを含む、請求項1または2に記載のガラス窓。
【請求項12】
前記ガラス窓が、化学強化および/または熱強化された材料を含む、請求項1または2に記載のガラス窓。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載のガラス窓を製造するための方法であって、以下の段階:
ガラス窓として使用するための曲げられたガラス面を形成する段階、
曲げられたガラス面の少なくとも1つの区間を研削および/または研磨して、前記曲げられたガラス面の少なくとも50%において、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、SE
G<-2.3×10
-6×2×R
0[1/mm]+7.3×10
-4の幾何学的なスロープエラーSE
G、および有利にはSE
O<-1.1×10
-6×2×R
0[1/mm]+3.6×10
-4の光学的なスロープエラーSE
Oに調節する段階
を含む、前記方法。
【請求項14】
前記研削および/または研磨する段階において、曲げられたガラス面の少なくとも50%において、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、幾何学的なスロープエラー0.00050未満、および有利には光学的なスロープエラー0.00025未満に調節される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
曲げられたガラス面を形成する段階が、
ガラス溶融物からガラス管を引き出すこと、および有利にはガラス管を切断すること、または
平板ガラスを熱間成型すること
を含む、請求項13または14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学システムおよび機器のための、殊にLiDARシステム(LiDAR、英語のLight Detection And Ranging)のためのガラス窓に関する。さらに本発明はかかる窓ガラスを有するLiDARシステム、並びにかかる窓ガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LiDAR(「Light Detection And Ranging」の略称)またはLaDAR(「Laser Detection And Ranging」の略称)は、レーザー光を用いた光学的距離および速度の測定方法であり、以下ではLIDARと称する。このために、LiDARシステムは近赤外スペクトル(NIR)のレーザー光線、つまり波長780nmを超える波長を有するレーザー光線を発し、それが周囲中で物体により反射され、少なくとも部分的にLiDARシステムに再度到達して、そこで検出される。反射光線のパターンから、LiDARシステムは対象物を認識でき、レーザー光線の所要時間(飛行時間)から対象物の距離を計算できる。いくつかのLiDARシステムは、発せられた光線と反射された光線との位相の関係に基づき、対象物の速度も計算できる。
【0003】
LiDARシステムもしくはLiDARセンサは現在、自動運転を可能にするための重要な要素である。LiDARシステムについてのさらなる用途および使用分野は、例えば、ロボットタクシー、ロボットトラック、ロボット飛行タクシー、産業用および物流用ロボット、ドローン、船舶および船、鉱業、建設用および鉱業用機械、安全および軍事、宇宙衛星、並びに空から、地上および水中からのトポロジー図/地図の作成、風力タービンの最適化、空港での乱気流の測定、航空機の乱気流の測定などである。
【0004】
全てのLiDARシステムは少なくとも1つの光学窓を必要とし、これは、LiDARシステムの光電子素子と周囲との間に配置され、環境の影響に対する機械的な保護を意味する。理想的には、光学窓はLiDARシステムの光電子素子と周囲との間の気密性すら確実にできる。種々のLiDARシステムを、それらの構造に応じて、より正確にはLiDARシステム中で使用される窓の形態および構造に関して区別できる。例えば、いくつかのLiDARシステムは、システムの敏感な構成部品を外界から隔離するための平面の窓を備える。他のLiDARシステムは、平面の窓の代わりに湾曲したもしくは曲げられた窓を含む。さらに、エミッタおよび検出器が典型的には静止している環状の窓内で回転する回転LiDARシステム(英語の「spinning LiDAR」)が普及している。
【0005】
公知のLiDARシステムにおいて、多くの場合、殊に曲げられた窓を有する回転LiDARシステムおよびその他のLiDARシステムのためには、ポリマー材料からの窓が使用される。これらのポリマー窓は、多くの場合、材料、例えばポリカーボネート(PC)またはポリメチルメタクリレート(PMMA)から、モールド溶融法または射出成型法を用いて製造される。
【0006】
ただし、ポリマー材料製のLiDAR窓はその寿命および信頼性に関して欠点がある。
【0007】
例えば、ポリマー窓は引っかき耐性が低いことに基づき、引っかき傷がつきやすくなることが多い。ポリマー窓における引っかき傷は、LiDARシステムの稼働に際して、(a)小さな衝突粒子(例えば空気中の砂、または先行する自動車からの粒子)に起因する周囲の影響によって、(b)窓の機械的な洗浄によって、および/または(c)ワイパーを使用した際に窓の表面上を引っかく硬質物質または砂によって生じることがある。引っかかれた表面は、それを通じて反射されるべき光および反射された光を通さなければならず、光学的な性能およびシステムの信頼性を、殊に光の除去、誤った画素への光の誤送、散乱および信号/ノイズ比の低下によって大々的に妨げる。
【0008】
従来技術のポリマー窓のさらなる欠点は、ポリマー窓上でのさらなる層の付着性が不十分であることである。多くの場合、LiDAR窓を、特定の光学的特性、物理的特性および/または機械的特性を改善するために、追加的な層と接合することができる。ポリマー窓の付着特性が不十分であることに起因して、この追加層が少なくとも部分的に剥離することが多く、そのことは、信号の強度、ひいては信号/ノイズ比を低下させる。さらに、局所的に剥離されたコーティングは、信号強度に望ましくないジャンプをもたらす。付着特性は、光学的に作用するコーティング以外のさらなる層、例えば引っかき保護層または撥水層が施与される場合、さらに減少する。
【0009】
さらに、ポリマー窓は、低く且つ多くの場合不十分な環境安定性を有する。ポリマーはUV光線下で通常は変色(褐変)する有機材料である。そのような変色は信号強度の低下をもたらす。例えばポリカーボネートは比較的UV安定性であるが、利用者はLiDAR用途のためにはUV安定性が低すぎると嘆くことが多い。さらに、ポリマー表面は、天候の影響、例えば雰囲気からの(化学反応による)析出物によって劣化し、それも信号強度を下げる。
【0010】
さらに、ポリマー窓は気密性ではないので、LiDARシステムにおいて短い時間の後に周囲の雰囲気の湿分が入り、なぜなら、ポリマー材料を通じて水蒸気が拡散するからである。システム内の湿分は、システムの腐食および機械的な故障をもたらしかねない。
【0011】
さらに、ポリマー材料は比較的低い溶融温度を有する。これは殊に、窓の上に加熱層がもたらされるLiDARシステムにとっては致命的であり、なぜなら、ここで加熱層の過熱に際する窓の溶融リスクがあるからである。窓の溶融はLiDARシステム全体の機能を破壊し得る。
【0012】
ポリマー窓の前記の多くの欠点に起因して、LiDAR窓のためにガラス材料を使用する手法がある。そのような窓は、例えば国際公開第2019/030106号(WO2019/030106A1)および国際公開第2019/009336号(WO2019/009336A1)の文献内に開示されている。ただし、従来技術に記載されるガラス窓も、その他の実務上公知のガラス窓も、実際にはLiDARシステムにおける使用のためには適しておらず、なぜなら、従来のガラス窓を使用する際は、固有の許容差(Toleranz)に起因して大きすぎる信号の変動が生じるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】国際公開第2019/030106号
【文献】国際公開第2019/009336号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、従来技術の欠点を克服することである。殊に、本発明の課題は、従来技術の欠点を克服し且つLiDARシステムにおける使用に適した、光学システムのための窓を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
これらの課題は、請求項1に記載のガラス窓および請求項16に記載の方法によって解決される。前記ガラス窓および方法のさらなる構成および実施態様は、従属請求項および後述の説明の対象である。
【0016】
発明の説明
本発明の1つの態様は、光学システムまたは用途のための、殊にLiDARシステムのためのガラス窓に関する。従って、前記ガラス窓は光学システム、殊にLiDARシステムに設置可能であることができる。本発明によるガラス窓は、他の光学機器、殊に環の幾何学的形状を有する光学機器のためにも適し得ることが理解される。ガラス窓は曲げられた形状もしくは面を有し、従って純粋な平板ガラスとは異なる。曲げられた形状とは、ガラス窓が三次元的に曲げられた形態を有することを意味する。ガラス窓は、1つまたは複数の曲げ軸周りに、つまり一軸または多軸に曲げられ得る。例えば、曲げられたガラス窓は、環、環の部分(円の切り抜きまたは部分)、らせんの部分または曲げられた自由な形状の面として構成され得るか、または非対称に曲げられていてよい。前記ガラス窓は、1つまたは複数の曲率を有することができ、その際、ガラス窓の複数の曲率は同じかまたは異なっていてよい。前記ガラス窓は、特定の領域では曲げられ、且つ他の領域では曲げを含まないことがある。前記ガラス窓は軸方向に曲げを含まない、つまり、まっすぐに構成されることができる。「ガラス」は本発明の範囲においては、ガラスセラミックも含み得る。ただし、好ましい実施態様において、「ガラス」との用語は、もっぱらアモルファスの材料であると理解される。
【0017】
ガラス窓の面積の少なくとも50%は、0.1mm~15mmの間の長さのスケールについて、以下が該当する幾何学的なスロープエラーSEGを有する:
SEG<-2.3×10-6×2×R0[1/mm]+7.3×10-4、
有利にはSEG<-1.1×10-6×2×R0[1/mm]+3.6×10-4、
好ましくはSEG<-6.8×10-7×2×R0[1/mm]+2.2×10-4、
ここで、SEGは無次元の幾何学的なスロープエラー(英語のSlope Error)であり、且つR0はガラス窓の目標曲率半径[mm]である。殊に、R0は、スロープエラーが観察されるガラス窓の位置でのガラス窓の目標曲率半径であることができる。スロープエラーを計算するための参照面として、それぞれ、ガラス窓の観察される位置での理想的な面が利用される。目標曲率半径R0は殊に、ガラス窓の外面に関する目標曲率半径、つまり目標曲率外半径であってよい。
【0018】
本発明による条件は、目標曲率半径に応じたスロープエラーについての具体的な準拠すべき値を初めて示す。スロープエラーは接線誤差と称することもでき、理想的な目標曲率からの局所的な勾配のずれ、もしくはある長さの区間もしくは周囲長の区間にわたる壁厚の変化(壁厚変動)を記載し、その際、本発明によるスロープエラーの値は、構造の方向付け(軸または接線)には依存しない。スロープエラーの観察および測定の際にそれぞれガラス窓の該当位置での理想的な面が参照面として使用される。ガラスの環の形でのガラス窓の場合、これは例えば、一貫して同一の目標曲率半径を有する数学的に完全な環であり得る。
【0019】
本発明は、LiDAR用途のためにガラス窓を使用することを可能にするために、ガラス窓を提供するための明確な教示を、必要とされる具体的な特性および表面品質および表面の良さに関して調節されるべき許容差と共に初めて示す。殊に、本発明は特定の条件によって、ガラス窓の目標曲率半径に応じた準拠すべきスロープエラーについての明示的な限定を示す。
【0020】
これまで、ガラス窓は固有の許容差、およびそれにより引き起こされる大きすぎる信号の変動に起因して、LiDAR用途には適さないことが多かった。これに関し、本願で定義されるパラメータ、許容差および特性の定量化は多数の影響因子、例えばそれぞれの用途で必要とされる画像化特性、その用途において通常使用される波長、光学素子の正確な幾何学的形状、オプトエレクトロニクス部品および分析ソフトウェアなどに強く依存することに言及すべきである。従って、特定のシステム(ここでは殊にLiDARシステム)についての上限の規定は、本発明者らによる本発明の基礎をなす実質的な技術開発に基づいている。
【0021】
これに関し、本発明者らは、LiDARシステムにおいて適するためのガラス窓が意外なことに多くのパラメータに関して比較的大きな許容差を有し得ることを見出した。しかしながら、最適なシステムの性能および適切な信号品質のためには、とりわけ、幾何学的および有利には光学的なスロープエラーのパラメータが関連していることが判明した。本発明によれば、壁厚の変化の長さに対する無次元の比を考慮するスロープエラーは、前記で定義された許容差もしくは値内に維持されるべきである。これに関し、本発明者らは殊に、LiDARシステムの要求を満たすために、ガラス窓の目標曲率に応じてどのような範囲内のスロープエラーが提供されるべきかを見出した。
【0022】
本発明によるガラス窓を提供するか、もしくはスロープエラーの必要な値を達成するために、ガラス窓を例えば研削および/または研磨工程を用いて後処理することができる。さらに、本発明者らは、殊に長さΔL=0.1mm~15mmにおける壁厚の変動が、LiDARシステムのためのガラス窓の達成されるべき適性に関連していることを見出した。比較的短い波の変動は物理的に散乱効果をもたらし、且つ典型的には粗さを介して記述され、且つ粗さのパラメータを用いて特定され、比較的長い波の変動はLiDARシステムではあまり強く知覚されず、なぜなら、それは光学的な開口の大きさのオーダーに該当するからである。それらは場合によっては実際の角度方向と外見上の角度方向との間の変化をもたらす。0.1mm~15mmの長さのスケールについての幾何学的なスロープエラーおよび有利には光学的なスロープエラーについて本発明による値を有するガラス窓は、LiDARシステムにおいてガラス窓を使用する際に、信号の変動を最小化し、且つ十分とみなされる±10%の許容差の範囲内に維持することを可能にする。0.1mm~15mmの長さのスケールについての幾何学的なスロープエラーおよび有利には光学的なスロープエラーについて本発明による値を有するガラス窓の使用は、平均値に比して10%未満、有利には7%未満、好ましくは6%未満、なおもさらに好ましくは4%未満の平均値からのLiDAR信号の相対標準偏差を可能にする。この標準偏差は、環状の窓の場合、殊に窓の様々な回転角度の場合、様々な窓の位置でのLiDAR信号の規格化された信号強度のn回の測定を用いて算出できる。標準偏差sは以下のように計算でき、ここでχiは個々の測定値でありχはそれらの平均値である。nは好ましくは少なくとも5、または少なくとも7であってよい。1つの実施態様においてはn=9である。
【0023】
【0024】
幾何学的なスロープエラーは、白色光干渉法を用いて測定できる。
【0025】
1つの実施態様において、ガラス窓は目標曲率半径R0=42.5mmを有し得る。例えば、ガラス窓は目標外径OD=85mmを有し得る。この場合、ガラス窓の面積の50%は、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、0.0005345未満、有利には0.0002665未満、好ましくは0.0001622未満の幾何学的なスロープエラーSEGを有し得る。この実施態様においてガラス窓は例えばガラスの環であってよい。
【0026】
1つの実施態様において、ガラス窓は目標曲率半径R0=67.5mmを有し得る。例えば、ガラス窓は目標外径OD=135mmを有し得る。この場合、ガラス窓の面積の50%は、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、0.0004195未満、有利には0.0002115未満、好ましくは0.0001282未満の幾何学的なスロープエラーSEGを有し得る。この実施態様においてガラス窓は例えばガラスの環であってよい。
【0027】
さらなる構成において、ガラス窓の面積の少なくとも50%は、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、幾何学的なスロープエラーSEGについての下限値を有し得る。例えば、ガラス窓の面積の少なくとも50%は、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、以下が該当する幾何学的なスロープエラーSEGを有し得る:
SEG>-6.8×10-8×2×R0[1/mm]+2.2×10-5、
有利にはSEG>-1.1×10-7×2×R0[1/mm]+3.6×10-5、
好ましくはSEG>-2.3×10-7×2×R0[1/mm]+7.3×10-5、
ここで、SEGは無次元の幾何学的なスロープエラーであり、且つR0はガラス窓の目標曲率半径[mm]である。殊に、R0は、スロープエラーが観察されるガラス窓の位置でのガラス窓の目標曲率半径であることができる。
【0028】
1つの実施態様において、ガラス窓は目標曲率半径R0=42.5mmを有し得る。例えば、ガラス窓は目標外径OD=85mmを有し得る。この場合、ガラス窓の面積の50%は、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、少なくとも0.0000162、有利には少なくとも0.0000267、好ましくは少なくとも0.0000535の幾何学的なスロープエラーSEGを有し得る。この実施態様においてガラス窓は例えばガラスの環であってよい。
【0029】
1つの実施態様において、ガラス窓は目標曲率半径R0=67.5mmを有し得る。例えば、ガラス窓は目標外径OD=135mmを有し得る。この場合、ガラス窓の面積の50%は、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、少なくとも0.0000128、有利には少なくとも0.0000212、好ましくは0.0000420未満の幾何学的なスロープエラーSEGを有し得る。この実施態様においてガラス窓は例えばガラスの環であってよい。
【0030】
さらなる構成において、ガラス窓の面積の少なくとも50%は、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、以下が該当する幾何学的なスロープエラーSEGを有し得る:
-6.8×10-8×2×R0[1/mm]+2.2×10-5<SEG<-2.3×10-6×2×R0[1/mm]+7.3×10-4、
有利には-1.1×10-7×2×R0[1/mm]+3.6×10-5<SEG<-1.1×10-6×2×R0[1/mm]+3.6×10-4、
好ましくは-2.3×10-7×2×R0[1/mm]+7.3×10-5<SEG<-6.8×10-7×2×R0[1/mm]+2.2×10-4、
ここで、SEGは無次元の幾何学的なスロープエラーであり、且つR0はガラス窓の目標曲率半径[mm]である。殊に、R0は、スロープエラーが観察されるガラス窓の位置でのガラス窓の目標曲率半径であることができる。
【0031】
さらなる構成において、ガラス窓の面積の少なくとも50%は、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、0.00050未満、有利には0.00040未満、好ましくは0.00035未満、さらに好ましくは0.00025(=2.5×10-4)未満の幾何学的なスロープエラーを有し得る。殊に、ガラス窓の面積の少なくとも50%は、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、少なくとも0.00001、有利には少なくとも0.000025、好ましくは少なくとも0.00004の幾何学的なスロープエラーSEGを有し得る。例えば、ガラス窓の面積の少なくとも50%は、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、0.00001~0.00040、有利には0.000025~0.00035、好ましくは0.00005~0.00025の幾何学的なスロープエラーを有し得る。
【0032】
換言すれば、ガラス窓の面積の少なくとも50%における幾何学的なスロープエラーについて、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、以下の関係が該当し得る:
0<(ΔWT)/ΔL<X、
ここで、WT(英語のwall thickness)は、mmでの壁の厚さを示し、且つLはガラス窓のmmでの長さを示し、且つXは前記で定義された値についての変数である。殊に、X=2.5×10-4であってよい。
【0033】
さらなる構成において、ガラス窓の面積の少なくとも50%は、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、以下が該当する光学的なスロープエラーSEOを有し得る:
SEO<-1.1×10-6×2×R0[1/mm]+3.6×10-4、
有利にはSEO<-5.6×10-7×2×R0[1/mm]+1.8×10-4、
好ましくはSEO<-3.4×10-7×2×R0[1/mm]+1.1×10-4、
ここで、SEOは無次元の光学的なスロープエラーであり、且つR0はガラス窓の目標曲率半径[mm]である。殊に、R0は、スロープエラーが観察されるガラス窓の位置でのガラス窓の目標曲率半径であることができる。
【0034】
1つの実施態様において、ガラス窓は目標曲率半径R0=42.5mmを有し得る。例えば、ガラス窓は目標外径OD=85mmを有し得る。この場合、ガラス窓の面積の50%は0.1mm~15mmの長さのスケールについて、0.000267未満、有利には0.000133未満、好ましくは0.000081未満の光学的なスロープエラーSEOを有し得る。この実施態様においてガラス窓は例えばガラスの環であってよい。
【0035】
1つの実施態様において、ガラス窓は目標曲率半径R0=67.5mmを有し得る。例えば、ガラス窓は目標外径OD=135mmを有し得る。この場合、ガラス窓の面積の50%は、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、0.000212未満、有利には0.000104未満、好ましくは0.000064未満の光学的なスロープエラーSEOを有し得る。この実施態様においてガラス窓は例えばガラスの環であってよい。
【0036】
さらなる構成において、ガラス窓の面積の少なくとも50%は、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、光学的なスロープエラーSEOについての下限値を有し得る。例えば、ガラス窓の面積の少なくとも50%は、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、以下が該当する光学的なスロープエラーSEOを有し得る:
SEO>-3.4×10-8×2×R0[1/mm]+1.1×10-5、
有利にはSEO>-5.6×10-8×2×R0[1/mm]+1.8×10-5、
好ましくはSEO>-1.1×10-7×2×R0[1/mm]+3.6×10-5、
ここで、SEOは無次元の幾何学的なスロープエラーであり、且つR0はガラス窓の目標曲率半径[mm]である。殊に、R0は、スロープエラーが観察されるガラス窓の位置でのガラス窓の目標曲率半径であることができる。
【0037】
1つの実施態様において、ガラス窓は目標曲率半径R0=42.5mmを有し得る。例えば、ガラス窓は目標外径OD=85mmを有し得る。この場合、ガラス窓の面積の50%は、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、少なくとも0.000008、有利には少なくとも0.000013、好ましくは少なくとも0.000027の光学的なスロープエラーSEOを有し得る。この実施態様においてガラス窓は例えばガラスの環であってよい。
【0038】
1つの実施態様において、ガラス窓は目標曲率半径R0=67.5mmを有し得る。例えば、ガラス窓は目標外径OD=135mmを有し得る。この場合、ガラス窓の面積の50%は0.1mm~15mmの長さのスケールについて、少なくとも0.000006、有利には少なくとも0.000010、好ましくは少なくとも0.000021の光学的なスロープエラーSEOを有し得る。この実施態様においてガラス窓は例えばガラスの環であってよい。
【0039】
さらなる構成において、ガラス窓の面積の少なくとも50%は、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、以下が該当する光学的なスロープエラーSEOを有し得る:
-3.4×10-8×2×R0[1/mm]+1.1×10-5<SEO<-1.1×10-6×2×R0[1/mm]+3.6×10-4、
有利には-5.6×10-8×2×R0[1/mm]+1.8×10-5<SEO<-5.6×10-7×2×R0[1/mm]+1.8×10-4、
好ましくは-1.1×10-7×2×R0[1/mm]+3.6×10-5<SEO<-3.4×10-7×2×R0[1/mm]+1.1×10-4、
ここで、SEOは無次元の光学的なスロープエラーであり、且つR0はガラス窓の目標曲率半径[mm]である。殊に、R0は、スロープエラーが観察されるガラス窓の位置でのガラス窓の目標曲率半径であることができる。
【0040】
さらなる構成において、ガラス窓の面積の少なくとも50%は、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、0.00025未満、有利には0.00020未満、好ましくは0.00018未満、さらに好ましくは0.00013(=1.3×10-4)未満の光学的なスロープエラーを有し得る。殊に、ガラス窓の面積の少なくとも50%は、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、少なくとも0.000005、有利には少なくとも0.000013、好ましくは少なくとも0.00002の光学的なスロープエラーSEGを有し得る。例えば、ガラス窓の面積の少なくとも50%は、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、0.000005~0.00025、有利には0.000013~0.00020、好ましくは0.00002~0.00013の光学的なスロープエラーを有し得る。
【0041】
換言すれば、光学的なスロープエラーについて、ガラス窓の面積の少なくとも50%において、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、以下の関係が該当し得る:
0<(n-1)×(ΔWT)/ΔL<X、
ここで、WT(英語のwall thickness)は、mmでの壁の厚さを示し、且つLはmmでの長さを示し、且つnはレーザー波長905nmについてのガラス窓の屈折率を示し、且つXは前記で定義された値についての変数である。殊に、X=1.3×10-4であってよい。
【0042】
幾何学的なスロープエラーと光学的なスロープエラーとの間の本質的な違いは、幾何学的なスロープエラーは、観察される長さに関する幾何学的な壁厚の変化(両側の合計)に基づくことである。壁厚の変化は波面の透過率の変化をもたらし、そのことは、幾何学的なパラメータの他に、使用される材料の屈折率も考慮される光学的なスロープエラーによって記述できる。殊に、ガラス窓の両方の互いに反対の両方の側もしくは表面が、光学的スロープエラーの前記で定義された値を有し得る。
【0043】
有利には、ガラス窓はこの最大の許容された幾何学的なスロープエラーまたはそれより小さい最大の許容された幾何学的なスロープエラー、および/またはこの最大の許容された光学的なスロープエラーまたはそれより小さい最大の許容された光学的なスロープエラーを、その面積の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、なおもさらに好ましくは少なくとも90%において有する。換言すればガラス窓は、前記の最大のスロープエラーによって記述される高い表面品質および表面の良さを、少なくとも、光学システム、例えばLiDARシステムにおけるガラス窓の使用に際しそのシステムで有効に使用されるガラス窓の部分において十分な程度に有する。LiDARシステムの場合、これは殊に、(放出されたまたは反射された)レーザー光が通り抜けるガラス窓の部分である。
【0044】
本発明の1つの実施態様において、ガラス窓は曲げられた形状を有し、且つ少なくとも100mm2のガラス窓の面積において、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、以下が該当する幾何学的なスロープエラーを有し得る:
SEG<-2.3×10-6×2×R0[1/mm]+7.3×10-4、
有利にはSEG<-1.1×10-6×2×R0[1/mm]+3.6×10-4、
好ましくはSEG<-6.8×10-7×2×R0[1/mm]+2.2×10-4、
ここで、SEGは無次元の幾何学的なスロープエラーであり、且つR0はガラス窓の目標曲率半径[mm]である。殊に、R0は、スロープエラーが観察されるガラス窓の位置でのガラス窓の目標曲率半径であることができる。
【0045】
本発明の1つの実施態様において、ガラス窓は曲げられた形状を有し、且つ少なくとも100mm2のガラス窓の面積において、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、0.00050未満、有利には0.00040未満、好ましくは0.00035未満、さらに好ましくは0.00025(=2.5×10-4)未満の幾何学的なスロープエラーを有し得る。本発明の1つの実施態様において、ガラス窓は曲げられた形状を有し、且つ少なくとも100mm2のガラス窓の面積において、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、以下が該当する幾何学的なスロープエラーを有し得る:
SEG>-6.8×10-8×2×R0[1/mm]+2.2×10-5、
有利にはSEG>-1.1×10-7×2×R0[1/mm]+3.6×10-5、
好ましくはSEG>-2.3×10-7×2×R0[1/mm]+7.3×10-5、
ここで、SEGは無次元の幾何学的なスロープエラーであり、且つR0はガラス窓の目標曲率半径[mm]である。殊に、R0は、スロープエラーが観察されるガラス窓の位置でのガラス窓の目標曲率半径であることができる。
【0046】
さらなる構成において、ガラス窓は曲げられた形状を有し、且つ少なくとも100mm2のガラス窓の面積において、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、以下が該当する幾何学的なスロープエラーを有し得る:
-6.8×10-8×2×R0[1/mm]+2.2×10-5<SEG<-2.3×10-6×2×R0[1/mm]+7.3×10-4、
有利には-1.1×10-7×2×R0[1/mm]+3.6×10-5<SEG<-1.1×10-6×2×R0[1/mm]+3.6×10-4、
好ましくは-2.3×10-7×2×R0[1/mm]+7.3×10-5<SEG<-6.8×10-7×2×R0[1/mm]+2.2×10-4、
ここで、SEGは無次元の幾何学的なスロープエラーであり、且つR0はガラス窓の目標曲率半径[mm]である。殊に、R0は、スロープエラーが観察されるガラス窓の位置でのガラス窓の目標曲率半径であることができる。
【0047】
本発明の1つの実施態様において、ガラス窓は曲げられた形状を有し、且つ少なくとも100mm2のガラス窓の面積において、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、以下が該当する光学的なスロープエラーSEOを有し得る:
SEO<-1.1×10-6×2×R0[1/mm]+3.6×10-4、
有利にはSEO<-5.6×10-7×2×R0[1/mm]+1.8×10-4、
好ましくはSEO<-3.4×10-7×2×R0[1/mm]+1.1×10-4、
ここで、SEOは無次元の光学的なスロープエラーであり、且つR0はガラス窓の目標曲率半径[mm]である。殊に、R0は、スロープエラーが観察されるガラス窓の位置でのガラス窓の目標曲率半径であることができる。
【0048】
本発明の1つの実施態様において、ガラス窓は曲げられた形状を有し、且つ少なくとも100mm2のガラス窓の面積において、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、以下が該当する光学的なスロープエラーSEOを有し得る:
SEO<-3.4×10-8×2×R0[1/mm]+1.1×10-5、
有利にはSEO<-5.6×10-8×2×R0[1/mm]+1.8×10-5、
好ましくはSEO<-1.1×10-7×2×R0[1/mm]+3.6×10-5、
ここで、SEOは無次元の光学的なスロープエラーであり、且つR0はガラス窓の目標曲率半径[mm]である。殊に、R0は、スロープエラーが観察されるガラス窓の位置でのガラス窓の目標曲率半径であることができる。
【0049】
本発明の1つの実施態様において、ガラス窓は曲げられた形状を有し、且つ少なくとも100mm2のガラス窓の面積において、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、以下が該当する光学的なスロープエラーSEOを有し得る:
-3.4×10-8×2×R0[1/mm]+1.1×10-5<SEO<-1.1×10-6×2×R0[1/mm]+3.6×10-4、
有利には-5.6×10-8×2×R0[1/mm]+1.8×10-5<SEO<-5.6×10-7×2×R0[1/mm]+1.8×10-4、
好ましくは-1.1×10-7×2×R0[1/mm]+3.6×10-5<SEO<-3.4×10-7×2×R0[1/mm]+1.1×10-4、
ここで、SEOは無次元の光学的なスロープエラーであり、且つR0はガラス窓の目標曲率半径[mm]である。殊に、R0は、スロープエラーが観察されるガラス窓の位置でのガラス窓の目標曲率半径であることができる。
【0050】
殊に、少なくとも100mm2のガラス窓の面積は0.1mm~15mmの長さのスケールについて、少なくとも0.00001、有利には少なくとも0.000025、好ましくは少なくとも0.00004の幾何学的なスロープエラーを有し得る。例えば、少なくとも100mm2のガラス窓の面積は、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、0.00001~0.00040、有利には0.000025~0.00035、好ましくは0.00005~0.00025の幾何学的なスロープエラーを有し得る。
【0051】
有利には、ガラス窓は前記の最大の許容された幾何学的なスロープエラーまたはそれより小さい最大の許容された幾何学的なスロープエラー、および/または前記の最大の許容された光学的なスロープエラーまたはそれより小さい最大の許容された光学的なスロープエラーを、少なくとも100mm2、好ましくは少なくとも500mm2、さらに好ましくは少なくとも1000mm2、なおもさらに好ましくは少なくとも1m2の面積において有する。
【0052】
例えば、ガラス窓は、前記の最大の許容された幾何学的なスロープエラーまたはそれより小さい最大の許容された幾何学的なスロープエラー、および/または前記の最大の許容された光学的なスロープエラーまたはそれより小さい最大の許容された光学的なスロープエラーを、250000mm2以下、有利には30000mm2以下、さらに好ましくは1500mm2以下の面積において有する。
【0053】
殊に、ガラス窓は、前記の最大の許容された幾何学的なスロープエラーまたはそれよりも小さい最大の許容された幾何学的なスロープエラー、および/または前記の最大の許容された光学的なスロープエラーまたはそれよりも小さい最大の許容された光学的なスロープエラーを、100mm2~250000mm2、有利には500mm2~30000mm2、殊に1000mm2~1500mm2の面積において有する。
【0054】
換言すればガラス窓は、前記の最大スロープエラーによって記述される高い表面品質および表面の良さを、少なくとも、光学システム、例えばLiDARシステムにおけるガラス窓の使用に際しそのシステムで有効に使用されるガラス窓の部分において十分な程度に有する。LiDARシステムの場合、これは殊に、(放出されたまたは反射された)レーザー光が通り抜けるガラス窓の部分である。
【0055】
さらなる構成において、ガラス窓の面積の少なくとも50%は15mmを上回る長さのスケールについて、殊に15mm~環状のガラス窓のmmでの周囲長の半分(U/2)の長さのスケールについて、以下が該当する幾何学的なスロープエラーSEGを有し得る:
SEG<-4.8×10-5×2×R0[1/mm]+9.8×10-3、
有利にはSEG<-2.4×10-5×2×R0[1/mm]+4.9×10-3、
好ましくはSEG<-9.7×10-6×2×R0[1/mm]+2.0×10-3、
ここで、SEGは無次元の幾何学的なスロープエラーであり、且つR0はガラス窓の目標曲率半径[mm]である。殊に、R0は、スロープエラーが観察されるガラス窓の位置でのガラス窓の目標曲率半径であることができる。
【0056】
1つの実施態様において、ガラス窓は目標曲率半径R0=42.5mmを有し得る。例えば、ガラス窓は目標外径OD=85mmを有し得る。この場合、ガラス窓の面積の50%は15mmを上回る長さのスケールについて、殊に15mm~環状のガラス窓のmmでの周囲長の半分(U/2)の長さのスケールについて、0.0057未満、有利には0.0029未満、好ましくは0.0011未満の幾何学的なスロープエラーSEGを有し得る。この実施態様においてガラス窓は例えばガラスの環であってよい。
【0057】
さらなる構成において、幾何学的なスロープエラーは下限を有し得る。例えば、ガラス窓の面積の少なくとも50%は、15mmを上回る長さのスケールについて、殊に15mm~環状のガラス窓のmmでの周囲長の半分(U/2)の長さのスケールについて、以下が該当する幾何学的なスロープエラーSEGを有し得る:
SEG>-9.7×10-7×2×R0[1/mm]+2.0×10-4、
有利にはSEG>-2.4×10-6×2×R0[1/mm]+4.9×10-4、
好ましくはSEG>-4.8×10-6×2×R0[1/mm]+9.8×10-4、
ここで、SEGは無次元の幾何学的なスロープエラーであり、且つR0はガラス窓の目標曲率半径[mm]である。殊に、R0は、スロープエラーが観察されるガラス窓の位置でのガラス窓の目標曲率半径であることができる。
【0058】
1つの実施態様において、ガラス窓は目標曲率半径R0=42.5mmを有し得る。例えば、ガラス窓は目標外径OD=85mmを有し得る。この場合、ガラス窓の面積の50%は15mmを上回る長さのスケールについて、殊に15mm~環状のガラス窓のmmでの周囲長の半分(U/2)の長さのスケールについて、少なくとも0.00011、有利には少なくとも0.00029、好ましくは少なくとも0.00057の幾何学的なスロープエラーSEGを有し得る。この実施態様においてガラス窓は例えばガラスの環であってよい。
【0059】
さらなる構成において、ガラス窓の面積の少なくとも50%は、15mmを上回る長さのスケールについて、殊に15mm~環状のガラス窓のmmでの周囲長の半分(U/2)の長さのスケールについて、以下が該当する幾何学的なスロープエラーSEGを有し得る:
-9.7×10-7×2×R0[1/mm]+2.0×10-4<SEG<-4.8×10-5×2×R0[1/mm]+9.8×10-3、
有利には-2.4×10-6×2×R0[1/mm]+4.9×10-4<SEG<-2.4×10-5×2×R0[1/mm]+4.9×10-3、
好ましくは-4.8×10-6×2×R0[1/mm]+9.8×10-4<SEG<-9.7×10-6×2×R0[1/mm]+2.0×10-3、
ここで、SEGは無次元の幾何学的なスロープエラーであり、且つR0はガラス窓の目標曲率半径[mm]である。殊に、R0は、スロープエラーが観察されるガラス窓の位置でのガラス窓の目標曲率半径であることができる。
【0060】
さらなる構成において、ガラス窓の面積の少なくとも50%は、15mmを上回る長さのスケールについて、殊に15mm~環状のガラス窓のmmでの周囲長の半分(U/2)の長さのスケールについて、以下が該当する光学的なスロープエラーSEGを有し得る:
SEO<-2.4×10-5×2×R0[1/mm]+4.9×10-3、
有利にはSEO<-1.2×10-5×2×R0[1/mm]+2.5×10-3、
好ましくはSEO<-4.8×10-6×2×R0[1/mm]+9.8×10-4、
ここで、SEOは無次元の光学的なスロープエラーであり、且つR0はガラス窓の目標曲率半径[mm]である。殊に、R0は、スロープエラーが観察されるガラス窓の位置でのガラス窓の目標曲率半径であることができる。
【0061】
1つの実施態様において、ガラス窓は目標曲率半径R0=42.5mmを有し得る。例えば、ガラス窓は目標外径OD=85mmを有し得る。この場合、ガラス窓の面積の50%は15mmを上回る長さのスケールについて、殊に15mm~環状のガラス窓のmmでの周囲長の半分(U/2)の長さのスケールについて、0.0029未満、有利には0.0014未満、好ましくは0.00057未満の光学的なスロープエラーSEOを有し得る。この実施態様においてガラス窓は例えばガラスの環であってよい。
【0062】
さらなる構成において、幾何学的なスロープエラーは下限を有し得る。例えば、ガラス窓の面積の少なくとも50%は、15mmを上回る長さのスケールについて、殊に15mm~環状のガラス窓のmmでの周囲長の半分(U/2)の長さのスケールについて、以下が該当する光学的なスロープエラーSEOを有し得る:
SEO>-4.8×10-7×2×R0[1/mm]+9.8×10-5、
有利にはSEO>-1.2×10-6×2×R0[1/mm]+2.5×10-4、
好ましくはSEO>-2.4×10-6×2×R0[1/mm]+4.9×10-4、
ここで、SEOは無次元の光学的なスロープエラーであり、且つR0はガラス窓の目標曲率半径[mm]である。殊に、R0は、スロープエラーが観察されるガラス窓の位置でのガラス窓の目標曲率半径であることができる。
【0063】
1つの実施態様において、ガラス窓は目標曲率半径R0=42.5mmを有し得る。例えば、ガラス窓は目標外径OD=85mmを有し得る。この場合、ガラス窓の面積の50%は、15mmを上回る長さのスケールについて、殊に15mm~環状のガラス窓のmmでの周囲長の半分(U/2)の長さのスケールについて、少なくとも0.000057、有利には少なくとも0.00014、好ましくは少なくとも0.00029の光学的なスロープエラーSEOを有し得る。この実施態様においてガラス窓は例えばガラスの環であってよい。
【0064】
さらなる構成において、ガラス窓の面積の少なくとも50%は、15mmを上回る長さのスケールについて、殊に15mm~環状のガラス窓のmmでの周囲長の半分(U/2)の長さのスケールについて、以下が該当する光学的なスロープエラーSEOを有し得る:
-4.8×10-7×2×R0[1/mm]+9.8×10-5<SEO<-2.4×10-5×2×R0[1/mm]+4.9×10-3、
有利には-1.2×10-6×2×R0[1/mm]+2.5×10-4<SEO<-1.2×10-5×2×R0[1/mm]+2.5×10-3、
好ましくは-2.4×10-6×2×R0[1/mm]+4.9×10-4<SEO<-4.8×10-6×2×R0[1/mm]+9.8×10-4、
ここで、SEOは無次元の光学的なスロープエラーであり、且つR0はガラス窓の目標曲率半径[mm]である。殊に、R0は、スロープエラーが観察されるガラス窓の位置でのガラス窓の目標曲率半径であることができる。
【0065】
さらなる構成において、ガラス窓の面積の少なくとも50%は、15mmを上回る長さのスケールについて、殊に15mm~環状のガラス窓のmmでの周囲長の半分(U/2)の長さのスケールについて、0.004未満、有利には0.003未満、さらに好ましくは0.0025未満、なおもさらに好ましくは0.002未満の幾何学的なスロープエラー、および/または0.002未満、有利には0.0015未満、さらに好ましくは0.00125未満、なおもさらに好ましくは0.001未満の光学的なスロープエラーを有し得る。殊に、ガラス窓の面積の少なくとも50%は、15mmを上回る長さのスケールについて、殊に15mm~環状のガラス窓のmmでの周囲長の半分(U/2)の長さのスケールについて、少なくとも0.0001、有利には少なくとも0.0002、さらに好ましくは少なくとも0.0003の幾何学的なスロープエラー、および/または少なくとも0.00005、有利には少なくとも0.0001、さらに好ましくは少なくとも0.00015の光学的なスロープエラーを有し得る。
【0066】
例えば、幾何学的なスロープエラーについて、ガラス窓の面積の少なくとも50%において15mmを上回る長さのスケールについて、殊に15mm~環状のガラス窓のmmでの周囲長の半分(U/2)の長さのスケールについて、以下の関係が該当し得る:
0<(ΔWT)/ΔL<X、
ここで、WT(英語のwall thickness)は、mmでの壁の厚さを示し、且つLはガラス窓のmmでの長さ(例えば周囲長)を示し、且つXは前記で定義された値についての変数である。殊に、X=2×10-3であってよい。
【0067】
例えば、光学的なスロープエラーについて、ガラス窓の面積の少なくとも50%において15mmを上回る長さのスケールについて、殊に15mm~環状のガラス窓のmmでの周囲長の半分(U/2)の長さのスケールについて、以下の関係が該当し得る:
0<(n-1)×(ΔWT)/ΔL<X、
ここで、WT(英語のwall thickness)はmmでの壁の厚さを示し、且つLはガラス窓のmmでの長さ(例えば周囲長)を示し、且つnはガラス窓の屈折率を示し、且つXは前記で定義された値についての変数である。殊に、X=1×10-3であってよい。
【0068】
有利には、ガラス窓は、前記の最大の許容された幾何学的なスロープエラーまたはそれよりも小さい最大の許容された幾何学的なスロープエラー、および/または前記の最大の許容された光学的なスロープエラーまたはそれよりも小さい最大の許容された光学的なスロープエラーを、15mmを上回る長さのスケールについて、殊に15mm~環状のガラス窓のmmでの周囲長の半分(U/2)の長さのスケールについて、その面積の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、なおもさらに好ましくは少なくとも90%において有する。換言すればガラス窓は、前記のスロープエラーによって記述される高い表面品質および表面の良さを、少なくとも、光学システム、例えばLiDARシステムにおけるガラス窓の使用に際しそのシステムで有効に使用されるガラス窓の部分において十分な程度に有する。LiDARシステムの場合、これは殊に、(放出されたまたは反射された)レーザー光が通り抜けるガラス窓の部分である。
【0069】
幾何学的なスロープエラーおよび光学的なスロープエラーは15mm~ガラス窓のmmでの周囲長の半分(U/2)の長さのスケールについては、0.1mm~15mmの長さのスケールについてのスロープエラーよりも信号の品質にあまり影響しないのだが、そのさらなる構成は光学的な品質およびシステムの性能をさらに改善できる。
【0070】
1つの実施態様によれば、ガラス窓は環または環の部分であってよい。換言すれば、ガラス窓は環状または環の部分の形状、つまり、中空円筒形状または中空円筒の部分の形状を有し得る。この場合、スロープエラーを計算するために、一貫して同一の目標曲率半径もしくは一貫して同一の目標外径を有する数学的に完全な環の外面を参照面として利用できる。環状のガラス窓、殊に完全な環状のガラス窓を、例えば、エミッタおよび検出器が環内部で回転する回転LiDARシステムのために使用できる。ガラス窓は、複数の曲げられたガラス面から構成され得る。殊に、完全な環は1つ以上の環の部分から構成され得る。例えば3つの120°の環の部分が360°の環を構成できる。代替的に、曲げられたガラス面、例えば1つの環の部分をガラス窓として、殊にLiDAR窓として使用できることが理解される。
【0071】
前記ガラス窓は、少なくとも25mm、有利には少なくとも50mm、および/または最大200mmの目標曲率半径を有し得る。目標曲率半径は殊に、25mm~200mmの範囲であってよい。環状のガラス窓の場合、目標曲率半径は、ガラス窓の外径であってよい。ガラス窓は、少なくとも1.0mmおよび/または最大5mm、有利には1.0mm~5mmの範囲の壁の厚さを有し得る。壁の厚さは、ガラス窓の全体の大きさに依存することがあり、より小さなガラス窓は通常、より小さな厚さを有する。ガラス窓の軸長は、少なくとも15mmおよび/または最大200mmであってよく、殊に20mm~200mmの長さであってよい。ガラス窓は、30°~360°、有利には60°~270°、好ましくは90°~120°の中心角を有し得る。例えば中心角120°を有する3つの環の部分を、1つの環から製造できる。ガラス窓は、その寸法に関して、そのガラス窓が使用されるべきLiDARシステムの大きさに適合されることができる。これに関し、先述の値は有利な値を意味する。先述の寸法および程度は殊に、環または環の部分としてのガラス窓の実施態様に関し得る。
【0072】
有利には、ガラス窓は以下の許容差に準拠する:
n=n0±2.5%、および/または
OD=OD0±1.0%(WT固定の場合)、および/または
OD=OD0±0.2%(ID固定の場合)、および/または
ID=ID0±0.2%(OD固定の場合)、
ここで、nは実際の屈折率、n0は目標屈折率、ODは実際の外径、OD0は目標外径、IDは実際の内径、ID0は目標内径、且つWTは実際の壁の厚さを記述する。ODは2Rであり且つOD0は2R0であってよい。示された許容差は、有利な1パラメータの許容差を定義する一方で、他のパラメータは理想的であるとして想定される。
【0073】
先述の幾何学的パラメータおよび輪郭は接触式センサ、例えば測定機器Zeiss O-Inspecを用いて測定できる。
【0074】
さらなる構成においては、ガラス窓の面積の少なくとも50%、有利には60%、好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、なおもさらに好ましくは少なくとも90%が、10nm未満、有利には7.5nm未満、好ましくは5nm未満のRMS粗さ(いわゆる二乗粗さ)を有し得る。殊にRMS粗さは、動作波長、つまりそれぞれの用途における使用に関連する光線の波長の0.5%未満であることができる。従って、LiDARシステムにおいて、RMS粗さの値は、使用されるレーザー光の波長(典型的には905nm、940nmまたは1550nm)の0.5%未満であってよい。そのようなRMS粗さは、ガラス窓の表面品質および表面の良さをさらに高めることができ、ひいては光学的な用途、例えばLiDARシステムにおいて使用する際、さらに信号品質を改善できる。前記RMS粗さ(粗さRqとしても示す)は、白色光干渉法を用いて、例えば300μm×300μmの面積で測定できる。上記の範囲内での小さいRMS粗さは、例えば除去(例えば研削、研磨、エッチング)および/または施与(例えば起伏の被覆)を行うことによって達成でき、ここで、起伏は例えばガラス窓の表面における引き筋に基づき存在し得る。前記の粗さは、DIN EN ISO 4287:2010に準拠して測定できる。
【0075】
1つの実施態様において、ガラス窓は可視光用、すなわち、少なくとも400nm~700nmの波長を有する光について本質的に不透明であることができ、動作波長を有する光(例えばレーザー光)について本質的に透明であることができる。動作波長は近赤外スペクトル範囲(NIR)、例えば780nm~3μmの動作波長であってよい。動作波長は殊に、905nm、940nmおよび/または1550nmであってよい。「本質的に不透明」とは、ガラス窓が、これについて挙げられた波長の光について、10%以下、有利には7.5%未満、好ましくは5%未満の平均透過率(T平均)を有することを意味できる。「本質的に透明」とは、ガラス窓が、これについて挙げられた波長の光について、90%以上、有利には少なくとも92%、好ましくは92%~94%の平均透過率(T平均)を有することを意味できる。
【0076】
殊に、ガラス窓は、700nm以下の波長を有する光について本質的に不透明であってよい。有利には、ガラス窓は、それぞれの用途において使用される光(例えば波長905nm、940nmまたは1550nmを有するレーザー光)の動作波長の最大80%まで、有利には最大85%まで、さらに好ましくは最大90%までの波長について不透明であってよい。有利には、ガラス窓は、800nm以上の波長を有する光、例えば800nm~2500nm、有利には800nm~1600nmの波長を有する光、殊に少なくとも、約905nm、約940nmおよび/または約1550nmの波長を有するレーザー光について本質的に透明であってよい。
【0077】
ガラス窓は、この光学的特性および構成およびさらなる光学的特性および構成を、少なくとも関連する範囲において、もしくは少なくとも50%、有利には少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、なおもさらに好ましくは少なくとも90%、なおもさらに好ましくは少なくとも99%の十分に大きな面積で有し得る。
【0078】
特定の波長について本質的に不透明であり、且つ他の特定の波長についてのみ本質的に透明であるガラス窓の構成によって、稼働において妨げになる可能性がある波長がブロックされ、検出器に達しないことを確実にすることができる。
【0079】
ガラス窓の不透明な特性を実現するために、ガラス窓の種々のさらなる構成を別々または組み合わせて備えることができる。例えば、1つの実施態様においてガラス窓は可視光を吸収するために、可視光について本質的に不透明であり且つ少なくとも動作波長の範囲における光(例えばレーザー光)について本質的に透明なコーティングを備えることができる。前記コーティングは、有機または無機であってよい。前記コーティングは、視覚的に黒くてよい。前記コーティングは、例えばディップコーティングであってよい。前記コーティングは、殊に700nm以下の波長を有する可視光について本質的に不透明であってよい。有利には、前記コーティングは、少なくとも400nmの波長を有する可視光について本質的に不透明であってよい。例えば前記コーティングは少なくとも、400nm~700nmの波長を有する可視光について本質的に不透明であってよい。前記コーティングは好ましくは少なくとも、800nmを上回る波長を有する光、殊に約905nm、約940nmおよび/または約1550nmの波長を有する光について本質的に透明であってよい。
【0080】
代替的または追加的に、ガラス窓は可視光を吸収するために、可視光について本質的に不透明であり且つ少なくとも動作波長の範囲における光(例えばレーザー光)について本質的に透明なシートを備えることができる。前記シートはその外観において視覚的に暗い、例えば黒くてよい。例えば、前記シートは黒いポリマーフィルムであってよい。前記シートは、殊に700nm以下の波長を有する可視光について本質的に不透明であってよい。有利には、前記シートは、少なくとも400nmの波長を有する可視光について本質的に不透明であってよい。例えば前記シートは少なくとも、400nm~700nmの波長を有する可視光について本質的に不透明であってよい。前記シートは好ましくは少なくとも、800nmを上回る波長を有する光、殊に約905nm、約940nmおよび/または約1550nmの波長を有する光について本質的に透明であってよい。
【0081】
代替的または追加的に、ガラス窓は、着色ガラス(黒ガラス)を大量に含み得る。
【0082】
ガラス窓は1つまたは複数のさらなる層を備えることができる。ガラス窓は加熱層を含み得る。加熱層は例えば、ガラス窓の霜を除去するために役立つ。ガラス窓は、水の接触角が90°を上回る疎水性層を含むことができる。疎水性層は例えば、ガラス窓からの液滴の流れ落ちを改善できる。ガラス窓は、ガラス窓を機械的な損傷から保護するために、引っかき傷保護層を含むことができる。ガラス窓は、水の接触角が90°未満である親水性層を含むことができる。親水性層は、例えば、ガラス窓と接触する液体が、ガラス窓上で均一なフィルムを形成するために役立つことができる。
【0083】
ガラス窓が視覚的に黒い成分を備えることは、外部からシステムが見えることを防ぐことができるという、さらなる利点を有する。さらに、場合によりシステムの敏感な構成要素、例えば検出器を、太陽光線から保護することができる。
【0084】
従って、ガラス窓が追加的にコーティング、シート、ポリマー層を備えている実施態様において、ガラス窓は少なくとも2つの層(ガラスおよびさらなる層)を含む。その際、前記第1の層もしくはガラス材料は、可視光について、および動作波長の範囲内の光について、高い光透過率(例えば90%を上回る)を有することができ、従って、例えば波長少なくとも1600nmまで、有利には少なくとも1000nmまで、好ましくは少なくとも950nmまでを有する光について90%を上回る光透過率を有することができる。第1の層は好ましいRMS粗さ、つまり10nm未満、有利には7.5nm未満、好ましくは5nm未満のRMS粗さを有し得る。殊に第1の層のRMS粗さは、動作波長、つまりそれぞれの用途において使用される関連する光線の波長の0.5%未満であることができる。従って、LiDARシステムにおいて、RMS粗さの値は、使用されるレーザー光の波長(典型的には905nm、940nmまたは1550nm)の0.5%未満であってよい。第2の層(例えばコーティング、シートまたはポリマー層)は、可視光について低い光透過率および動作波長の範囲内の光について高い光透過率の記載された特性を有し得る。第2の層のRMS粗さは、第1の層のRMS粗さに相応することができる。
【0085】
さらなる構成によれば、ガラス窓は内側(つまり、例えば動作中にエミッタおよび検出器に向いている側)および/または外側(つまり、例えば動作中に周囲に向いている側)に反射防止層を備えることができる。ガラス窓と、1つまたは複数の反射防止層との複合物は、動作波長、つまり殊に近赤外スペクトル範囲(NIR)について高透過性であることができる。換言すれば、1つまたは複数の反射防止層は、空気/ガラスの界面で動作波長範囲内の光について反射損失を低減し、それによって動作波長範囲内の光のより高い透過率をもたらすことができる。これにより、ガラス窓を通じた動作波長範囲内の光(例えばレーザー光線)の透過率を、外部への放出に関しても、周囲から検出器に戻る反射された光線の透過率に関しても最大化することができる。例えば、1つまたは複数の追加的な反射防止層により、動作波長について、ガラス窓の平均透過率(T平均)少なくとも95%(片側のコーティングの場合)、好ましくは少なくとも98%(殊に両側のコーティングの場合)を達成できる。ガラス窓が、先述の特性を有する複数の反射防止層を含む反射防止層系(AR層系)を含み得ることが理解される。AR層系は、単独のAR層よりも広い波長範囲をカバーできる。
【0086】
1つの実施態様によれば、ガラス窓はホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、例えばアルカリ・アルミノシリケートガラスまたはアルカリ土類・アルミノシリケートガラスを含み得る。
【0087】
前記ガラスは強化されているか、または強化可能であってよい。
【0088】
ガラス窓の好ましい材料は、下記の組成範囲を質量%で有し得る:
【表1】
【0089】
1つの実施態様において、ガラスはホウケイ酸ガラス(例えば高い加水分解耐性を有するもの)およびアルミノシリケートガラス、例えばホウ素不含および/またはアルカリ不含のアルミノシリケートガラス、またはナトリウム含有アルミノシリケートガラスから選択される。本発明により使用可能な例示的な組成物を以下の表に示す。
【0090】
【0091】
「R2O」はLi2O、Na2OおよびK2Oから選択されるアルカリ金属酸化物を意味する。「RO」はMgO、ZnO、CaO、BaOおよびSrOから選択される金属酸化物を意味する。
【0092】
1つの実施態様において、ガラスは少なくとも1.450、殊に少なくとも1.500の屈折率ndを有する。前記屈折率ndは、1.750まで、または1.650までであってよい。
【0093】
例えばカリウム含有塩溶融物中に浸漬することによってイオン交換して、任意の化学強化を実施する。ケイ酸カリウムの水溶液、そのペーストまたはその分散液を使用してもよく、またはイオン交換を蒸着または温度により活性化された拡散によって実施してもよい。通常は一番目に記載した方法が好ましい。化学強化はとりわけ、圧縮応力および浸透深さのパラメータによって特徴付けられる:
【0094】
「圧縮応力」または「表面応力」(Compressive stress、CS)は、イオン交換後にガラス表面によってガラスネットワークに及ぼされる抑圧効果に起因する応力と理解される一方で、ガラスにおける変形は生じない。
【0095】
「浸透深さ」または「イオン交換層の深さ」または「イオン交換深さ」(「depth of layer」また「depth of ion exchanged layer」、DoL)とは、イオン交換が生じ且つ圧縮応力が生成されたガラス表面層の厚さと理解される。圧縮応力CSおよび浸透深さDoLはそれぞれ、例えば、光学的な原理に基づく市販の応力測定装置FSM6000によって測定できる。
【0096】
従って、イオン交換は、ガラスがイオン交換法によって硬化されるかもしくは化学強化されることを意味し、ガラスの精製もしくはガラスの処理の分野の当業者にはよく知られている方法である。化学強化のために使用される典型的な塩は、例えばK+含有溶融塩または塩混合物である。慣例的に使用される塩は、KNO3、KCl、K2SO4またはK2Si2O5を含み、添加剤、例えばNaOH、KOHおよび他のナトリウム塩またはカリウム塩も使用して、化学強化のためのイオン交換の速度をより良好に調節もしくは制御する。
【0097】
さらなる構成において、ガラス窓は、化学的および/または熱的に強化された材料を含み得る。このさらなる構成において、応力層の層深さ(DOL、depth of layer)は10μm~100μm、有利には25μm~75μm、好ましくは約50μmが構成され得る。応力は、少なくとも100MPa、有利には少なくとも200MPa、好ましくは少なくとも300MPaであってよい。前記応力は、1500MPa未満、例えば1000MPa未満であってよい。前記応力はガラス窓の機械的な耐性を非常に高めることができる。化学強化は殊に、ナトリウムイオンのカリウムイオンによるイオン交換、またはリチウムイオンのナトリウムイオンおよび/またはカリウムイオンによるイオン交換によって行うことができる。イオン交換を、相応の塩を用いて、高められた温度、約350~550℃、例えば400~480℃で材料を処理することによって行うことができる。適した塩は、例えば関係するイオンの硝酸塩およびハロゲン化物、例えばKNO3、KCl、NaNO3、NaClおよびそれらの混合物である。処理時間は所望の層深さに依存する。処理時間は少なくとも2時間、少なくとも4時間、または少なくとも5時間であってよい。選択的に、前記時間は最長16時間、最長12時間、または最長8に限定される。
【0098】
さらなる態様は、レーザー光、殊に動作波長905nm、940nmまたは1550nmを有するレーザー光を発するためのレーザー光源、レーザー光の向きを変えるためのスキャン装置、反射されたレーザー光を検出するための検出装置、および上述の種類のガラス窓を含む、LiDARシステムに関する。ガラス窓は、LiDARシステムのハウジングに組み込まれることができる。
【0099】
LiDARシステムは、なおもさらなる構成要素、例えば放出された光を集光し、向きを変え、反らしたりするためのレンズ配置、および/または評価装置を含むことが理解される。
【0100】
本発明のさらなる態様は、光学システムのためのガラス窓の製造方法、殊に上述の種類のガラス窓の製造方法に関する。前記方法は、以下の段階を任意の順で含む:
・ ガラス窓として使用するための曲げられたガラス面、殊にガラスの環および/またはガラスの環の部分を形成する段階、
・ 前記曲げられたガラス面の少なくとも一部の区間を研削および/または研磨して、曲げられたガラス面の少なくとも50%において、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、-2.3×10-6×2×R0[1/mm]+7.3×10-4未満の幾何学的なスロープエラー(つまり、SEG<-2.3×10-6×2×R0[1/mm]+7.3×10-4)、および有利には-1.1×10-6×2×R0[1/mm]+3.6×10-4未満の光学的なスロープエラー(つまり、SEO<-1.1×10-6×2×R0[1/mm]+3.6×10-4)に調節する段階。
【0101】
1つの実施態様において、前記方法は以下の段階を含む:
・ ガラス溶融物からガラス管を引き出す段階、
・ 前記ガラス管の少なくとも1つの区間を研削および/または研磨して、ガラス窓として使用される区間の面積の少なくとも50%において、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、-2.3×10-6×2×R0[1/mm]+7.3×10-4未満の幾何学的なスロープエラー(つまり、SEG<-2.3×10-6×2×R0[1/mm]+7.3×10-4)、および有利には-1.1×10-6×2×R0[1/mm]+3.6×10-4未満の光学的なスロープエラー(つまり、SEO<-1.1×10-6×2×R0[1/mm]+3.6×10-4)に調節する段階、および
・ ガラス管を切断し、所定の長さの1つまたは複数の環を製造する段階、ここで、前記1つまたは複数の環は有利にはガラスの部分(環の部分)に切り分けられる。前記のガラスの部分は、中心角60°~270°を有し得る。1つまたは複数の環、もしくは1つ、複数または全てのガラスの部分を、光学システム用、殊にLiDARシステム用のガラス窓として使用できる。
【0102】
1つの実施態様において、前記方法は以下の段階を含み得る:
・ 平板ガラスを熱間成型して、少なくとも区間的に曲げられたガラス窓を、殊に環の部分の形態で構成する段階、
・ 前記曲げられたガラス窓もしくは環の部分の少なくとも1つの区間を研削および/または研磨して、前記曲げられたガラス窓もしくは環の部分の面積の少なくとも50%において、0.1mm~15mmの長さのスケールについて-2.3×10-6×2×R0[1/mm]+7.3×10-4未満の幾何学的なスロープエラー(つまり、SEG<-2.3×10-6×2×R0[1/mm]+7.3×10-4)、および有利には-1.1×10-6×2×R0[1/mm]+3.6×10-4未満の光学的スロープエラー(つまり、SEO<-1.1×10-6×2×R0[1/mm]+3.6×10-4)に調節する段階。
【0103】
前記環の部分は、中心角60°~270°を有し得る。
【0104】
選択的なさらなる段階において、曲げられたガラス面を、1つまたは複数のさらなる曲げられたガラス面と組み立ててガラス窓にすることができる。殊に、環の部分を、1つまたは複数のさらなる環の部分と結合して、完全な環にし、例えば3つの120°の環の部分を組み立てて360°の環にすることができる。代替的に、曲げられたガラス面、例えば1つの環の部分をガラス窓として、殊にLiDAR窓として使用できることが理解される。
【0105】
1つの実施態様において、ガラス管もしくは環の部分を、幾何学的形状および表面において、ガラス窓が好ましい幾何学的なスロープエラーおよび/または好ましくは光学的なスロープエラーを、その面積の少なくとも60%において、有利には少なくとも70%において、好ましくは少なくとも80%において、さらに好ましくは少なくとも90%において超えないように(例えば研削および/または研磨によって)後処理できる。
【0106】
有利には、前記後処理によって0.1mm~15mmの長さのスケールについて幾何学的なスロープエラーSEG<-1.1×10-6×2×R0[1/mm]+3.6×10-4、好ましくはSEG<-6.8×10-7×2×R0[1/mm]+2.2×10-4、および/またはSEG>-6.8×10-8×2×R0[1/mm]+2.2×10-5、有利にはSEG>-1.1×10-7×2×R0[1/mm]+3.6×10-5、好ましくはSEG>-2.3×10-7×2×R0[1/mm]+7.3×10-5が提供され得る。
【0107】
有利には、前記後処理によって、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、幾何学的なスロープエラー0.00040未満、好ましくは0.00035未満、さらに好ましくは0.00025(=2.5×10-4)未満、および/または少なくとも0.00001、有利には少なくとも0.000025、好ましくは少なくとも0.00004が提供され得る。
【0108】
有利には、前記後処理によって0.1mm~15mmの長さのスケールについて光学的なスロープエラーSEO<-5.6×10-7×2×R0[1/mm]+1.8×10-4、好ましくはSEO<-3.4×10-7×2×R0[1/mm]+1.1×10-4、および/またはSEO>-3.4×10-8×2×R0[1/mm]+1.1×10-5、有利にはSEO>-5.6×10-8×2×R0[1/mm]+1.8×10-5、好ましくはSEO>-1.1×10-7×2×R0[1/mm]+3.6×10-5が提供され得る。
【0109】
有利には、前記後処理によって、0.1mm~15mmの長さのスケールについて、光学的なスロープエラー0.00020未満、好ましくは0.00018未満、さらに好ましくは0.00013(=1.3×10-4)未満、および/または少なくとも0.00001、有利には少なくとも0.000025、好ましくは少なくとも0.00004が提供され得る。
【0110】
この発明において、「研削」とは、材料を削り取ることによって、研磨媒体(例えば結合された粒または固定されていない粒)を用いて工具の幾何学的な(長波長の)形態が写し取られる工程と理解される。「研磨」とは、表面の短波長の特性を目的に応じて改善する機械的および/または熱機械的および/または化学機械的な工程であると理解される。その際、品質の要件に応じて、両方の工程段階を連続で、または各々単独で使用できる。
【0111】
前記方法は、その幾何学的な特徴において、製品の幾何学的形状に応じて大面積で設計されることがあるので、工具は処理の際に調節されるべき面積の大部分に当たる。これは好ましくは製品の面積の20%であるべきである。代替的に、局所加工用工具も使用でき、それは殊に多軸に曲げられた面の場合に十分に平坦な加工を可能にする。光学部品の分野において、そのような工程は「ゾーン研磨」として知られている。
【0112】
前記後処理によって、内側の表面(つまり、例えば後の稼働においてエミッタおよび検出器に向く側)、および/または外側の表面(つまり、例えば後の稼働において周囲に向く側)が、所望の光学的品質を備えることができる。ガラス管が切断される環の長さは、後処理に関して、殊に研削工程および/または研磨工程に関して最適化された長さであってよい。
【0113】
ガラス管もしくは環の部分の研削および/または研磨によって、表面の材料が削り取られ、それによって同時に、10nm未満、有利には7.5nm未満、好ましくは5nm未満のRMS粗さを有する光学的に平坦な表面が提供され得る。殊に、研削および/または研磨によって大きな長さのスケール(数ミリメートル)での壁厚の変動、およびガラス表面上の引き筋が除去できるか、または少なくともその用途のためにもはや意味がない程度に低減できるので、特に小さなスロープエラーを実現できる。
【0114】
研削および/または研磨に追加的もしくは代替的に、ガラス管もしくは環の部分の後処理をエッチングによって行って、ガラス窓の所望の表面特性および所望の光学的品質を達成できる。
【0115】
引き出された管もしくは熱間成型された環の部分の品質に応じて、研削工程および/またはその他の後処理工程によってさらに幾何学的なパラメータ、例えば外径、内径、同心度、真円度などを最適化できるか、または最適化しなければならない。
【0116】
前記方法のさらなる構成において、ガラス窓の(もしくはガラス管の、環の、または環の部分の)分光学的特性を、コーティングを用いて調節できる。
【0117】
このために、前記方法は1つまたは複数の反射防止層(AR層)をガラス窓上、殊にガラス窓の外側上に施与するさらなる段階を含み得る。1つまたは複数の反射防止層の施与は、ガラス窓と1つまたは複数の反射防止層との複合物が近赤外(NIR)において、殊に予定されている動作波長について高透過性になることをもたらすことができる。例えば、前記複合物は殊に近赤外スペクトル範囲(NIR)における動作波長について、例えば905nm、940nmまたは1550nmの動作波長について、4%未満、有利には3%未満、好ましくは2%未満の反射率を有することができる。換言すれば、1つまたは複数の反射防止層は、空気/ガラスの界面で動作波長範囲内の光について反射損失を低減し、それによって動作波長範囲内の光のより高い透過率をもたらすことができる。施与される反射防止層は、層系であってよい。
【0118】
追加的または代替的に、前記方法は、可視光について本質的に不透明であり且つ動作波長の範囲の光について本質的に透明である1つまたは複数の層をガラス窓に施与するさらなる段階を含み得る。殊に、この1つまたは複数の層をガラス窓の内側に施与できる。前記1つまたは複数の層は、コーティング、貼り合わせられたシート、および/またはポリマー面(例えばポリマーの環/ポリマーの環の部分)であってよい。前記1つまたは複数の層は、視覚的には黒く、且つ近赤外スペクトル(NIR)において透明であってよい。可視スペクトル範囲で不透明な層は、光学的用途(例えばLiDARシステム)においてのぞき込むことができないため、外観的な利点を有することができ、且つ太陽光線が光学システムに入ることを防ぐことができるので検出器が目眩ましされず且つ捉えられた信号が妨害されないため、技術的な利点を有することができる。
【0119】
いくつかの先述の特徴、効果、利点、実施形態およびさらなる構成は、本発明のガラス窓に関してのみ記載されているが、これらは本発明による方法並びに本発明によるLiDARシステムについて相応に該当し、その逆もまた然りである。殊に、本発明による方法は、本発明によるガラス窓に関して記載された特性、パラメータおよび値をもたらすために、さらなる段階を含み得る。
【0120】
本発明の実施例を次に、添付の模式的な図面に関連してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【
図1】幾何学的なスロープエラーを説明するための、ガラス窓を切り取った模式図である。
【
図2】従来技術および本発明のガラス窓を使用した場合の信号の品質についての比較測定のグラフである。
【
図3】ガラス面の光学的なスロープエラーの測定の例示的な写真である。
【発明を実施するための形態】
【0122】
図面の説明
図1はガラス窓10を模式的に切り取ったものを示し、これは幾何学的なスロープエラーΔWT/ΔL(英語のSlope Error)を可視化するためにだけ利用される。
図1は、より良い概観のために、外側の1つの側の輪郭の変化のみを示す。しかしながら、本発明に関し、スロープエラーについては壁厚の変化が関係し、それは外側の輪郭および内側の輪郭上の誤差もしくは輪郭の変化によって一緒に生じることが理解される。
【0123】
ガラス窓10は外側へと凸状に曲がっている。ガラス窓10の外側の第1の表面12、およびガラス窓10の内側の第2の表面14が理解される。長さ、ここでは周囲長に沿って見ると、ガラス窓10は壁厚の変動もしくは壁厚の変化を有する。特定の長さのスケール(ΔL)の長さもしくはここでは周囲長の区間にわたる壁厚(WT)の変化によって、ガラス窓はこの区間において理想的な目標曲率からの局所的な勾配のずれを有する。
【0124】
本発明の発明者らは、ガラス窓における殊に特定の上限を上回るスロープエラーが、光学システムおよび機器、特にLiDARシステムにおけるガラス窓の使用に著しい悪影響を及ぼすことを見出した。本発明により、LiDARシステムにおいて使用するために適しており且つ殊に信号の変動を最小化し且つ±10%の十分な許容差の範囲内に保つガラス窓が提供される。
【0125】
本発明の実施態様による3つのガラス窓および従来技術のガラス窓をLiDARシステムにおいて使用する場合の実験的に調査された信号の変動の比較を
図2に示す。従来技術のガラス窓は
図2の符号において#0として示される一方で、本発明の3つの実施態様のガラス窓は
図2の符号において#1、#2および#3として示される。#0で示される従来技術のガラス窓は、ここでは曲げられたガラス管からのガラスの環であった。
【0126】
図2において、従来技術のガラス窓(ガラスの環)を使用する場合、調査されたLiDAR信号は平均値の周りで約±30%変動したことが理解される。そのような大きな変動は、適切とみなされる約±10%の許容差の範囲外であり、それゆえに従来技術のガラス窓はLiDARシステムにおける使用に適していない。適切とみなされる許容差の範囲は
図2において破線によって境界を示している。
【0127】
従来技術のガラス窓とは対照的に、調査された測定結果は、本発明の実施態様によるガラス窓(ガラスの環)を使用する場合の調査されたLiDAR信号が最大±10%変動することを示す。従って、本発明によるガラス窓をLiDARシステムにおいて使用する場合、LiDAR信号は約±10%の許容差の範囲内である。従って、本発明によるガラス窓はLiDARシステムにおいて使用するために適しており、その際、ポリマー窓の欠点を克服する。
【0128】
調査されたLiDAR信号の変動を、平均値からの標準偏差によって表すこともでき、それを以下の表に示す:
【表3】
【実施例】
【0129】
本発明によるガラス窓の実施態様の第1の例は、目標外径85mmおよび目標壁厚2.0mmを有する完全な環(360°)の形状を有する。本発明によるガラス窓のさらなる実施態様の第2の例は、目標外径135mmおよび目標壁厚2.0mmを有する完全な環(360°)の形状を有する。両方の例において、ガラス窓は、動作波長905nmのレーザーを用いるLiDARシステムにおいて使用することが予定されており、且つ以下の寸法およびパラメータを有する:
【表4】
ここで、ODは実際の外径、OD
0は目標外径、IDは実際の内径、ID
0は目標内径、WTは実際の壁厚、nは屈折率、およびSE
Gは幾何学的なスロープエラーを記載する。示されるとおり、許容差は、他の示されるパラメータが理想的であると仮定される場合の1つのパラメータの許容差である。
【0130】
本発明によるガラス窓の材料は、この実施例においてはDURAN(登録商標)ガラスであり、ほぼ以下の組成(質量%)を有する:
【表5】
【0131】
RMS粗さ、幾何学的なスロープエラー、および光学的なスロープエラーは、ガラスの環の内側及び外側の研削および研磨による後処理を用いて調節されている。
【0132】
幾何学的なスロープエラーおよび光学的なスロープエラーは、測定装置「Zygo Verifire」およびソフトウェア「MX Software」(Zygo社)を用いて測定された。
【0133】
ガラス面の光学的なスロープエラーの測定の例示的な写真を
図3に示す。この写真において最も高く測定された光学的なスロープエラーSE
Oは領域16にあり、ここで0.1mm~15mmの長さのスケールについて0.0004である。
【符号の説明】
【0134】
10 ガラス窓
12 第1の表面
14 第2の表面
16 最も高い光学的なスロープエラーを有する領域