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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】移動式除菌装置および室内除菌システム
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/20 20060101AFI20241002BHJP
   A47L 9/28 20060101ALI20241002BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20241002BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20241002BHJP
   B01D 46/44 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
A61L9/20
A47L9/28 E
A61L2/10
A61L2/18
B01D46/44
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020138905
(22)【出願日】2020-08-19
(65)【公開番号】P2022034951
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 佐知
(72)【発明者】
【氏名】大平 昭義
(72)【発明者】
【氏名】佐野 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】京谷 浩平
(72)【発明者】
【氏名】網野 梓
(72)【発明者】
【氏名】円谷 優佑
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-533810(JP,A)
【文献】特表2017-530777(JP,A)
【文献】国際公開第2013/051365(WO,A1)
【文献】特開2019-032256(JP,A)
【文献】特開2012-135325(JP,A)
【文献】特表平09-509340(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111317836(CN,A)
【文献】特開2018-130131(JP,A)
【文献】特表2018-513416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00- 9/22
A47L 9/22- 9/32
A61L 2/00- 2/28
B01D 46/00-46/90
B01J 19/12
F24F 8/00- 8/99
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人を検知するセンサと、
空気中に浮遊する微粒子を集塵する集塵手段と、
紫外線を照射してウイルスまたは細菌の少なくとも何れかを分解あるいは不活性化する除菌手段と、
自律走行可能とする移動手段と、
前記センサの検知内容が入力され、前記集塵手段、前記除菌手段、前記移動手段を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、
地図作成手段を備えるとともに、
前記センサの検知内容に応じて、前記集塵手段と前記除菌手段とを切り替えて稼働させ、
前記センサは、可視光を検知するカメラであり、
前記制御手段は、前記カメラによる部屋全体の画像から壁と壁とが作る線、壁と床とが作る線、壁と天井とが作る線を検知することにより部屋の形状と大きさ、また部屋の中での自己位置を推定する
ことを特徴とする移動式除菌装置。
【請求項2】
人を検知するセンサと、
部屋の形状と部屋内の自己位置を検出する距離センサと、
空気中に浮遊する微粒子を集塵する集塵手段と、
紫外線を照射してウイルスまたは細菌の少なくとも何れかを分解あるいは不活性化する除菌手段と、
自律走行可能とする移動手段と、
前記センサと前記距離センサの検知内容が入力され、前記集塵手段、前記除菌手段、前記移動手段を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、
地図作成手段を備えるとともに、
前記センサの検知内容に応じて、前記集塵手段と前記除菌手段とを切り替えて稼働させ、かつ、部屋の形状や間取りを検出する機能を有する空気調和機から、通信により、部屋の形状や間取りを取得する
ことを特徴とする移動式除菌装置。
【請求項3】
少なくとも1つの請求項1または請求項2に記載の移動式除菌装置と、
紫外線を照射してウイルスまたは細菌の少なくとも何れかを分解あるいは不活性化する少なくとも1つの固定除菌手段と前記固定除菌手段を制御する固定制御手段とを備えた固定式除菌装置とを備え、
前記制御手段は、
前記センサの検知内容に応じて、前記集塵手段と前記除菌手段とを切り替えて稼働させる
ことを特徴とする室内除菌システム。
【請求項4】
前記移動式除菌装置は、通信手段を有し、
前記固定式除菌装置は、前記通信手段と通信を行う固定通信手段を有し、
前記固定制御手段は、
前記センサの検知内容に応じて、前記固定除菌手段を稼働または非稼働とする
ことを特徴とする請求項3に記載の室内除菌システム。
【請求項5】
室内に設けられ、通信部を有するとともに人を検知する室内センサと、
空気中に浮遊する微粒子を集塵する集塵手段と、
紫外線を照射してウイルスまたは細菌の少なくとも何れかを分解あるいは不活性化する除菌手段と、
自律走行可能とする移動手段と、
通信手段と、
前記室内センサの検知内容が入力され、前記集塵手段、前記除菌手段、前記移動手段、前記通信手段を制御する制御手段を備える移動式除菌装置と、
紫外線を照射してウイルスまたは細菌の少なくとも何れかを分解あるいは不活性化する少なくとも1つの固定除菌手段と、固定通信手段と、前記固定除菌手段および固定通信手段を制御する固定制御手段とを備えた固定式除菌装置とを具備し、
前記制御手段は、
地図作成手段を備えるとともに、
前記室内センサの検知内容に応じて、前記集塵手段と前記除菌手段とを切り替えて稼働させ、
前記固定制御手段は、
前記室内センサの検知内容に応じて、前記固定除菌手段を稼働または非稼働とし、
前記室内センサは、可視光を検知するカメラであり、
前記制御手段は、前記カメラによる部屋全体の画像から壁と壁とが作る線、壁と床とが作る線、壁と天井とが作る線を検知することにより部屋の形状と大きさ、また部屋の中での自己位置を推定する
ことを特徴とする室内除菌システム。
【請求項6】
室内に設けられ、通信部を有するとともに人を検知する室内センサと、
部屋の形状と部屋内の自己位置を検出する距離センサと、
空気中に浮遊する微粒子を集塵する集塵手段と、
紫外線を照射してウイルスまたは細菌の少なくとも何れかを分解あるいは不活性化する除菌手段と、
自律走行可能とする移動手段と、
通信手段と、
前記室内センサと前記距離センサの検知内容が入力され、前記集塵手段、前記除菌手段、前記移動手段、前記通信手段を制御する制御手段を備える移動式除菌装置と、
紫外線を照射してウイルスまたは細菌の少なくとも何れかを分解あるいは不活性化する少なくとも1つの固定除菌手段と、固定通信手段と、前記固定除菌手段および固定通信手段を制御する固定制御手段とを備えた固定式除菌装置とを具備し、
前記制御手段は、
地図作成手段を備えるとともに、
前記室内センサの検知内容に応じて、前記集塵手段と前記除菌手段とを切り替えて稼働させ、かつ、部屋の形状や間取りを検出する機能を有する空気調和機から、通信により、部屋の形状や間取りを取得する
前記固定制御手段は、
前記室内センサの検知内容に応じて、前記固定除菌手段を稼働または非稼働とする
ことを特徴とする室内除菌システム。
【請求項7】
前記固定式除菌装置は、
前記移動式除菌装置では届かない高所に設置されており、前記固定式除菌装置の除菌対象範囲と前記移動式除菌装置の除菌対象範囲は重なっていないことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の室内除菌システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式除菌装置および室内除菌システムに関する。
【背景技術】
【0002】
室内に人が出入りする際に、室外で人に付着したウイルス、細菌、花粉などの微粒子が持ち込まれることがある。もしくはウイルスや細菌を保有している人が咳や会話などを行うことで、微粒子であるウイルスや細菌を含んだ飛沫が室内に飛散することがある。
このように、室内に持ち込まれて飛散した微粒子は、壁や天井などに付着しその部分に留まるか、空気中を一定時間浮遊しながら落下して、最終的には床や机上などに堆積する。また、床や壁面に堆積、付着した微粒子は人の歩行や接触により、空気中に再飛散する。
【0003】
空気中に浮遊している微粒子が人の鼻や口から体内に取り込まれたり、壁や机などに付着した微粒子が人の手の接触を介して人の口(粘膜)付近に運搬されて体内に取り込まれたりする。これにより、微粒子が花粉やダニのようなアレルゲンの場合にはアレルギー疾患の発祥の原因に、微粒子がウイルスや細菌の場合にはウイルスや細菌に起因する感染症の原因になることがある。
よって、アレルギー疾患や感染症などの発症や感染を抑制、感染拡大を防止するには、室内に浮遊する微粒子を集塵し取り除いたり、床や机上に堆積する微粒子を取り除いたりするのが効果的である。
【0004】
そこで、人に害を与えないように人の有無や行動に応じて空間にイオンや薬剤などを散布し、空気中のウイルスや細菌を分解除菌させたりするための移動体が提案されている。
例えば、特許文献1には、「イオンを放出するイオン発生機または清掃を行う」、「人感センサからの出力信号に基づいて筐体の外部周辺の人の存在情報を得る」、「周辺環境に基づいて排気口からイオンを含む気流を放出する」、「イオンが室内全体に行き渡り、除菌効果や脱臭効果を向上させることができる」自走式電子機器が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、「薬剤を収納するための収納部を設け」、「収納部に収納された薬剤をファンモータの回転による排気とともに排気口から噴出し、薬剤を部屋内に散布する」薬剤散布機能付き掃除ロボットが記載されている。
また、空気中の微粒子を効率よく集塵するために、人の行動に合わせて空気清浄運転が可能な移動型空気清浄機が提案されている。
例えば、特許文献3には、「人がいるかいないかを検知する人検知手段と」「人検知手段の情報を基に、駆動用モータとファンモータとを制御する制御手段を備えている」移動型空気清浄機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許2013-230201号公報
【文献】特開2006-130005号公報
【文献】特開2020-038035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、空気中における微粒子の濃度は非常に薄いため、空気中にイオンや薬剤を散布してもそのイオンや薬剤が微粒子に作用するとは限らず、空気中のウイルスや細菌などの微粒子の不活化や、分解は困難となっている。
【0008】
また、紫外線や薬剤により照射対象を除菌する装置は、紫外線が照射できる範囲しか除菌できないため、紫外線や薬剤が届かない領域は除菌することができない。
また、本体の外部の対象を除菌する機器では、人が存在する空間に人に害を与える薬剤等を散布することはできないため、人が不在の空間や、人に影響を与えない範囲のみでしか動作することができない。
【0009】
また、一般的な据置型空気清浄機では、空気中に浮遊する微粒子を集塵できるものの、床上に落下し付着した微粒子は集塵することができなかった。
以下、特許文献1~3に記載の装置の課題について説明する。
特許文献1に記載の自走式電子機器は、イオンを空気中に放出しているが、前述した通り空気中のウイルスや細菌などの微粒子を不活化、分解除菌することは困難である。また、床上の微粒子は清掃することが可能であるが、空気中の微粒子を集塵することはできない。
【0010】
特許文献2に記載の薬剤散布機能付き掃除ロボットは、文献中に記載のように害虫駆除のために薬剤を散布する場合には散布した薬剤が拡散して効果を発揮する。しかしながら、同様の方法で除菌に効果のある薬剤を散布しても、空気中のウイルスや細菌などの微粒子に直接接触して不活化、分解除菌することは困難である。また、薬剤は壁面に付着することで付着した箇所を除菌することは可能であるが、薬剤を霧状に噴霧すると付着する個所で除菌できても、薬剤が付着しない箇所では除菌できない。そのため、対象の全体を除菌することは困難であることから、清拭が必要である。
【0011】
特許文献3に記載の移動型空気清浄機では、空気中に浮遊する花粉などの微粒子を集塵することが可能であるが、壁面に付着した微粒子の除去や除菌することはできない。
以上のように、イオンや薬剤、紫外線等を散布、照射することにより対象を除菌する機構を備えたものでは、接触対象の除菌は可能であるものの空気中に浮遊する微粒子を集塵、除菌することはできなかった。
このように、従来の機器では、接触対象の除菌を行いつつ、空気中に浮遊する微粒子を集塵し除菌することは同時に行えない。
【0012】
本発明は上記実状に鑑み創案されたものであり、微粒子の集塵や分解除菌することが可能な移動式除菌装置および室内除菌システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明の移動式除菌装置は、人を検知するセンサと、空気中に浮遊する微粒子を集塵する集塵手段と、紫外線を照射してウイルスまたは細菌の少なくとも何れかを分解あるいは不活性化する除菌手段と、自律走行可能とする移動手段と、前記センサの検知内容が入力され、前記集塵手段、前記除菌手段、前記移動手段を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、地図作成手段を備えるとともに、前記センサの検知内容に応じて、前記集塵手段と前記除菌手段とを切り替えて稼働させ、前記センサは、可視光を検知するカメラであり、前記制御手段は、前記カメラによる部屋全体の画像から壁と壁とが作る線、壁と床とが作る線、壁と天井とが作る線を検知することにより部屋の形状と大きさ、また部屋の中での自己位置を推定する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、微粒子の集塵や分解除菌あるいは不活性化することが可能な移動式除菌装置および室内除菌システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る実施形態1の移動式除菌装置の模式図。
図2】本発明の実施形態1の移動式除菌装置の1例を下方から見た斜視図
図3】本発明の実施形態1の移動式除菌装置の制御ブロック図。
図4A】本発明の実施形態1の移動式除菌装置1のユーザ在室時の動作時の概略図。
図4B】本発明の実施形態1の移動式除菌装置1のユーザ不在時の動作時の概略図。
図5】本発明の実施形態1の移動式除菌装置のフローチャート。
図6】実施形態1の他例の距離センサを搭載した移動式除菌装置の斜視図。
図7】本発明の実施形態2の室内除菌システムを構成する固定式除菌装置の模式図。
図8A】本発明の実施形態2の室内除菌システムのユーザ在室時の動作の概略図。
図8B】本発明の実施形態2の室内除菌システムのユーザ不在室時の動作の概略図。
図9】本発明の実施形態2の室内除菌システムの制御ブロック図。
図10】本発明の実施形態2の室内除菌システムの制御のフローチャート。
図11】本発明の実施形態3の室内除菌システムの動作時の概略図。
図12】本発明の実施形態4の移動式除菌装置の模式図。
図13】本発明のその他の実施形態の室内除菌システムのユーザ在室時の動作の概略図。
図14】本発明のその他の実施形態の室内除菌システムのユーザ在室時の動作の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
<<実施形態1>>
図1に、本発明に係る実施形態1の移動式除菌装置1の模式図を示す。
本発明の実施形態1の移動式除菌装置1について説明する。
【0017】
[全体構成]
まず、本発明の実施形態1の移動式除菌装置1の構成について、図1を用いて説明する。
移動式除菌装置1は、本体1H外殻に紫外線照射部11と、吸気口12、排気口13とを備え、本体下方に駆動輪16を備えている。移動式除菌装置1は、移動手段の駆動輪16により、自律移動が可能である。
【0018】
除菌手段である紫外線照射部11は、紫外線101を照射する。紫外線101の照射により、照射対象の表面に付着したウイルスや細菌を分解または抗菌(消毒)あるいは不活性化することができる。
移動式除菌装置1の内部には、遠心羽根車14、フィルタ15、制御部110、通信部111、人検知センサ112、およびダストセンサ113を備えている。
【0019】
遠心羽根車14は、集塵手段である。遠心羽根車14を稼働することで、床面Y上の塵埃を含む吸気102を吸気口12から取り込む。吸い込んだ空気から、塵埃をフィルタ15で除去する。そして、フィルタ15を通して清浄にされた清浄空気103を排気口13から排出する。
フィルタ15はULPAフィルタ、HEPAフィルタなどの目の細かいフィルタであり、ウイルスや細菌などの微粒子を集塵することができる。
[床面ブラシ]
【0020】
図2に、本発明の実施形態1の移動式除菌装置1の1例を下方から見た斜視図を示す。
図2に示すように、吸気口12付近に床面ブラシ17を備えて床面Yに付着した微粒子をかきだす構造を備えていれば、床面Yに付着した微粒子をかきだして吸気口12(図1参照)から吸引し、集塵することも可能である。
移動式除菌装置1の本体1Hの底面1h1には、駆動輪16や吸気口12の間に水平方向に回転可能な床面ブラシ17が設置されている。床面ブラシ17は支軸17j廻りに水平方向に回転する。
【0021】
床面ブラシ17を床面Yに平行に回転させることで床面Yに付着した微粒子を巻き上げ、吸気口12から微粒子をより多く集塵できる。
また、本体1Hの底面1h1に紫外線照射部11Cを設ければ紫外線101Cにより床面Yに付着したウイルスや細菌を分解除菌あるいは不活性化することができる。そこで、本体1Hの底面1h1に紫外線照射部11Cを設置することが好ましい。
【0022】
図3に、本発明の実施形態1の移動式除菌装置1の制御ブロック図の一形態を示す。
移動式除菌装置1は、検知手段である人検知センサ112とダストセンサ113とを備えている。
【0023】
人検知センサ112により、室内の人の有無を検知し、ダストセンサ113により吸気102中の微粒子量を検知する。
また、移動式除菌装置1は、制御手段である制御部110と通信手段である通信部111とを備えている。
制御部110で、センサ(112、113)で取得した情報を処理して通信部111より外部に通信することができる。
【0024】
移動式除菌装置1は上述の構成を用いて、制御部110の制御により、各種センサ(112、113)により検知した情報を基にして駆動輪16を駆動して自律走行する。そして、制御部110の制御により、紫外線照射部11(図3において除菌部と記載)の紫外線照射により本体外側に位置するウイルスや細菌などを不活化、除菌する。また、移動式除菌装置1は、制御部110の制御により、遠心羽根車14(図3において集塵部と記載)を稼働させて塵埃をかきだし、吸気口12から塵埃を含む空気を吸い込み、フィルタ15により空気中のウイルスや細菌などの微粒子を集塵する。
【0025】
[制御構成]
次に、実施形態1の移動式除菌装置1の制御構成について、図3の制御ブロック図を用いて説明する。
[センサの種類]
前記したように、移動式除菌装置1は検知部として人検知センサ112とダストセンサ113を備えている。人検知センサ112でユーザが居るか居ないか検知する。ダストセンサ113で空気中の微粒子濃などの室内環境を測定する構成である。
【0026】
人検知センサ112はどのような方式のセンサでも良いが、レーザー、可視光、超音波、マイクロ波、ミリ波などを用いて、電波により非接触で人を検知することができるセンサが望ましい。
例えば、ユーザの存在の有無を検知する人検知センサ112としては、人から放射される赤外線を検知する赤外線センサ、人の形状を認識するサーモパイルや、人の画像を取得するカメラ、レーザーや超音波等の反射波を検知して対象との距離を検知する距離カメラ等が使用できる。
【0027】
ダストセンサ113は、空気中の微粒子量を検知できるセンサであればよい。本実施形態1では通過した微粒子を光で検知するセンサを想定しているが、室内環境を測定できるセンサであればセンサの種類は問わない。
室内環境を検知するセンサとしては、上述の微粒子の量を測定できるダストセンサ113や、室内の空気質を検出できるにおいセンサ、CO2センサ等が使用される。また、室内の使用状況を検出する温湿度センサ、照度センサなどが使用できる。
【0028】
ダストセンサ113やにおいセンサ、CO2センサ等で室内の空気の汚染状況を検知することで、空気清浄が必要な状態かどうかを認識できる。温湿度センサや照度センサにより室内の使用状況を把握できる。
検知部(112、113)により検知した結果は制御部110に送付される。そして、検知部(112、113)の検知結果に応じて、制御部110により、走行駆動部の駆動輪16、集塵部の遠心羽根車14、除菌部の紫外線照射部11などを駆動して移動式除菌装置1の動作を制御する。
【0029】
移動式除菌装置1は、走行駆動部である駆動輪16(図2参照)を制御することで、自由に移動することが可能である。ここで、本実施形態1では走行駆動部として駆動輪16を備えて車輪走行する形態を示すが、走行駆動部の構成は車輪走行に限らず、クローラ走行や多脚走行などの移動手段であれば良い。
また、集塵部である遠心羽根車14を駆動することで、移動式除菌装置1の外部から空気を吸引し、空気に含まれる微粒子をフィルタ15に集塵することができる。また、除菌部である紫外線照射部11を駆動することで、紫外線を照射し、照射対象のウイルスや細菌を不活化(抗菌)させることができる。ここで、本実施形態1では除菌部として紫外線照射部11を備えているが、紫外線に限らず、消毒薬(アルコールや次亜塩素酸水等)を噴霧する装置もしくは清拭する装置(薬品を散布する装置)であっても良い。
【0030】
また、制御部110は、通信部111を介して、動作状況である検知部(112、113)の検知結果をユーザに報知することが可能である。ユーザへの報知方法は問わない。例えば、通信部111がクラウド(クラウドコンピューティング)にデータを送信しその情報をユーザがブラウザで確認しても良いし、スマートフォンなどの表示装置に通信部111から直接データを送信しても良い。
【0031】
[動作方法]
次に、実施形態1の移動式除菌装置1の動作について、図4A図4Bの動作概要図、図5のフローチャートを用いて説明する。
図4Aに、本発明の実施形態1の移動式除菌装置1のユーザ在室時の動作時の概略図を示す。図4Bに、本発明の実施形態1の移動式除菌装置1のユーザ不在時の動作時の概略図を示す。
図5に、実施形態1の移動式除菌装置1のフローチャートの一形態を示す。
制御を開始すると、図5のステップS11で、図4Aに示すように、移動式除菌装置1は本体1H内に備えた人検知センサ112などの検知部から照射する電波112aにより本体1H前方のユーザを検知する。
【0032】
また同様に移動式除菌装置1自体の自己位置を下記のように認識する。そして、ダストセンサ113によりダスト量を検知しながら、図5のステップS12で、走行駆動部である駆動輪16を動作させて清掃動作を開始する。
[部屋形状認識、自己位置推定方法]
部屋内の移動式除菌装置1の自己位置を検出するには、まず移動式除菌装置1が除菌を行う部屋の形状を取得する。
【0033】
部屋の形状を取得するには、人検知センサ112の無線センサとして、もしくは人検知センサ112とは別に、赤外線を検知する赤外線センサ、可視光を検知するカメラ、レーザー等の反射波を検知して、対象との距離を検知する距離カメラ等を使用する。また、制御部110にSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)等の地図作成手段を備えることで、人の検知とは別に部屋の形状や部屋内の自己位置を検出することが可能である。
【0034】
例えば、人検知センサ112が可視光を検知するカメラであった場合、カメラの画像を処理して人を検知するとともに、部屋全体の画像から稜線(壁と壁とが作る線、壁と床とが作る線、壁と天井とが作る線)を検知することにより部屋の形状と大きさ、また部屋の中での自己位置(移動式除菌装置1自体の自己位置)を推定することが可能である。なお、部屋の形状や間取りを検出する機能を有する空気調和機が知られているが、通信によりこのような空気調和機等から部屋の形状や間取りを取得することも可能である。
【0035】
図6に、実施形態1の他例の距離センサ114を搭載した移動式除菌装置1の斜視図を示す。
例えば、人検知センサ112とは別に部屋全体を見渡せるレーザー照射型の距離センサ114を搭載している移動式除菌装置1の場合、距離センサ114により部屋の壁面との距離を検知することにより、部屋の形状と部屋内の移動式除菌装置1の自己位置を検出することが可能である。
【0036】
移動式除菌装置1は、部屋の形状と自己位置を検出することにより、走行軌跡を記録できる。これにより、移動式除菌装置1は、空気清浄や除菌できた場所を認識したり、部屋全体の空気清浄や除菌が完了したことを確認したりすることができる。
【0037】
図5のステップS13で、ユーザが在室しているか否か判断する。
ユーザが在室している場合(図5のステップS13でYES)、下記の動作が行われる。
【0038】
[室内に人が在室している場合の動作]
室内にユーザや人が在室していることを検知した場合、つまりユーザ在室時には、図5のステップS14で、集塵部の遠心羽根車14を動作させる。移動式除菌装置1は制御部110により集塵部である遠心羽根車14を駆動し、図4Aに示すように、微粒子を含んだ空気である吸気102を外部から本体1Hに取り込む。そして、移動式除菌装置1は空気中に浮遊するウイルスや細菌などの微粒子をフィルタ15(図1図6参照)に集塵し、清浄空気103を外部に放出する。移動式除菌装置1は、駆動輪16を動作させて部屋内を移動しながら集塵を続け、図5のステップS15で、ダスト量が基準以下か判断する。なお、ダスト量の基準は、予め清掃後のダスト量等を参考にして設定される。
【0039】
吸気102内の微粒子、ダスト量が基準よりも少なくなった場合(図5のステップS15でYES)には、空気中の微粒子の集塵が完了したと判断し、制御を終了する。
一方、吸気102内の微粒子、ダスト量が基準よりも少なくなっていない場合(図5のステップS15でNO)には、図5のステップS14に移行する。
ユーザが在室していない場合(図5のステップS13でNO)、下記の動作が行われる。
【0040】
[室内に人が不在の場合の動作]
室内に人が在室していない場合、ユーザ不在時には、図5のステップS16で、除菌部(11)を動作させる。つまり、図4Bに示すように、移動式除菌装置1は除菌部である紫外線照射部11を駆動し、室内の壁面や床面Y、もしくは家具などの表面に付着したウイルスや細菌などの微粒子を不活化、分解除菌あるいは不活性化する。(室内に浮遊しているウイルスなども紫外線の照射により不活性化可能である)
そして、図5のステップS17で、部屋全体を除菌したか否か判断される。前記したように、部屋の形状と自己位置を検出することにより、走行軌跡を記録できる。これにより、移動式除菌装置1(1A)は、空気清浄や除菌できた場所を認識したり、部屋全体の空気清浄や除菌が完了したことを確認したりすることができる。
【0041】
走行駆動部の駆動輪16の制御により、除菌対象の部屋全体を清掃したと判断した場合に(図5のステップS17でYES)、除菌の制御を終了する。
一方、部屋全体を清掃したと判断されない場合(図5のステップS17でNO)、図5のステップS17に移行し、除菌の動作を継続する。
【0042】
[効果]
人が室内に存在(在室)している場合に集塵部の遠心羽根車14を動作させることにより、人の活動で空気中に飛散する微粒子や飛沫を集塵し、効率よく空気中のウイルスや細菌などの微粒子を集塵することが可能となる。また、ウイルスや細菌を保有している人から飛散する微粒子を即座に集塵することにより、室内での感染症の感染を防止できる。
また、人に対して殺菌効果のある紫外線を照射すると人の健康被害を誘発する可能性があるため、ユーザの在室の有無を検知して除菌部の紫外線照射部11を切り替えて動作させる。これにより、人に害を与えずにウイルスや細菌の除菌が可能となる。なお、ここでは、ユーザ不在時には除菌部(11)だけを動作させて集塵部(14)を動作させない構成としているが、集塵部(14)はユーザの有無に関わらず動作させても問題ない。そのため、移動式除菌装置1は、除菌部(11)と同時に集塵部(14)を動作させても良く、その場合は物体に付着したウイルスや細菌の不活化と同時に空気中の微粒子を集塵することも可能である。
【0043】
また、実施形態1のような移動式除菌装置1は、室内を移動しながら紫外線を照射して微粒子を分解除菌あるいは不活性化することから、紫外線照射対象が広く、人が移動する領域はほとんどカバーできる。そのため、移動式除菌装置1の死角に入ったために除菌できない領域が少ない。
また、固定式の除菌手段や集塵手段では常に床の一部分に設置位置を設定しておく必要があり場所をとって邪魔になることがある。しかし、実施形態1のような移動式除菌装置1は、必要に応じて必要な部屋で動作させたり、使用しない場合は自動的に邪魔にならない場所に待機させることも可能であることから、人の邪魔にならないように室内の除菌を行うことができる。
【0044】
また、移動式であることから1台で複数の部屋の清掃や除菌に対応することも可能である。例えば、日中は人が活動しているが夜間は活動していないスペースなど、夜中に自動的に動作させておくことによって、複数の部屋を自動的に清掃、除菌することも可能である。また、最も効果の高い場所に移動して集塵、除菌動作を行うことが可能であるため、固定式に比べて効率と集塵、除菌性能が高く、集塵や除菌にかかる時間を短縮できる。また、集塵手段や除菌手段を移動させたり操作したりの手間が少なく室内除菌の効果を発揮することができる。
【0045】
以上のように、人の行動を検知するセンサ(112)と、空気中に浮遊する微粒子を集塵する集塵部(14)と、ウイルス/細菌等を分解あるいは不活性化する除菌部(11)と、自律走行可能な移動手段(駆動輪16)と、制御手段(制御部110)を備え、センサ(112)の検知内容に応じて集塵手段/除菌手段を切り替える。これにより、人の有無に限らず室内の微粒子、ウイルスや細菌を除去あるいは不活化し、室内に居住するユーザが感染症に罹患することを防止できる。
【0046】
実施形態1によれば、人の行動に合わせて空気中を浮遊する微粒子と床面Yや壁面に付着した微粒子の両方を集塵、除菌することが可能になるので、人に害を与えることなく室内を効率良く除菌することが可能である。そのため、ウイルスや細菌による感染症の感染を防止または抑制することができる。これにより、室内のウイルス、細菌などの微粒子を除去、分解除菌(抗菌)あるいは不活性化することで、アレルギー症状の発症や、感染症の感染を抑制できる。
【0047】
<<実施形態2>>
図7に、本発明の実施形態2の室内除菌システム3を構成する固定式除菌装置2の模式図を示す。
【0048】
図8Aに、本発明の実施形態2の室内除菌システム3のユーザ在室時の動作の概略図を示し、図8Bに、本発明の実施形態2の室内除菌システム3のユーザ不在室時の動作の概略図を示す。
本発明の実施形態2の室内除菌システム3は、実施形態1で説明した移動式除菌装置1(図1参照)と、実施形態2の固定式除菌装置2(図7参照)とを組み合わせて構成したものである。
【0049】
移動式除菌装置1は実施形態1の説明と同一であることから、実施形態1と異なる部分を中心に、固定式除菌装置2と室内除菌システム3の構成を以下説明する。
[全体構成]
実施形態2の室内除菌システム3の全体構成について説明する。
【0050】
図8Aに示すように、室内除菌システム3は、移動式除菌装置1(図1参照)と固定式除菌装置2(図7参照)とにより構成されている。
図7に示すように、固定式除菌装置2は、除菌部としての紫外線照射部21と、制御部210、通信部211とを備えている。固定式除菌装置2は、紫外線照射部21から紫外線201を外部(室内)に照射する構成である。
固定式除菌装置2は、移動式除菌装置1では届かない高所に設置されており、固定式除菌装置2の除菌対象範囲と移動式除菌装置1の除菌対象範囲は重なっていないことが望ましい。移動式除菌装置1と固定式除菌装置2との除菌対象範囲が重ならないことで、より効率的または効果的な除菌が可能となる。
【0051】
図9に、本発明の実施形態2の室内除菌システム3の制御ブロック図の一形態を示す。
固定式除菌装置2は、通信部211を介して移動式除菌装置1の通信部111(図1参照)と通信可能である。固定式除菌装置2は、移動式除菌装置1から受信した情報に基づいて、制御部210で除菌部である紫外線照射部21を駆動する。
つまり、固定式除菌装置2は、移動式除菌装置1の検知部の人検知センサ112(図3参照)で検知した情報に応じて、通信部111を介して送信された情報に応じて動作可能である。
【0052】
図8A図8Bに示すように、移動式除菌装置1は室内の床面Y付近を移動可能な状態で設置されている。一方、固定式除菌装置2は室内の天井T付近の壁面Kに固定し設定されている。移動式除菌装置1が室内を移動して室内のユーザや室内環境などの情報を取得し通信部111(図9参照)を介して情報を固定式除菌装置2に送信する。これにより、図7に示す固定式除菌装置2に検知部がなくても、移動式除菌装置1の検知部の人検知センサ112が人の行動を認識してそれに応じた動作が可能となる。
【0053】
[動作方法]
図10に、本発明の実施形態2の室内除菌システム3の制御のフローチャートの一形態を示す。
実施形態2の室内除菌システム3の動作を説明する。
室内除菌システム3が制御を開始すると、図10のステップS21、S22で、まず、図8A図8Bに示すように、移動式除菌装置1が駆動輪16を駆動して室内を移動しつつ、検知部の人検知センサ112で照射する電波112aにより室内の人の存在を検知するとともに、自己位置を認識する。また、移動式除菌装置1は、ダストセンサ113(図9参照)で室内環境を示すダスト量を検知する。
【0054】
続いて、ステップS23で、移動式除菌装置1はユーザが在室しているか否か判定する。
移動式除菌装置1の人検知センサ112により、室内にユーザが在室していることを検知した場合(ステップS23でYES)、ステップS24で、図8Aに示すように、室内除菌システム3は移動式除菌装置1の集塵部(14)を動作させる。つまり、移動式除菌装置1は制御部110により集塵部である遠心羽根車14を駆動する。これにより、微粒子を含んだ吸気102を外部から本体1Hに取り込み、空気中に浮遊するウイルスや細菌などの微粒子をフィルタ15(図1参照)に集塵し、清浄空気103を外部に放出する。このように、駆動輪16を動作させて部屋内を移動しながら集塵を続ける。
【0055】
そして、ステップS25で、吸気102内の微粒子、ダスト量が基準よりも少ないか否か判定する(ステップS25でYES)。
吸気102内の微粒子、ダスト量が基準よりも少なくなった場合(ステップS25でYES)には、空気中の微粒子の集塵が完了したと判断し、制御を終了する。
吸気102内の微粒子、ダスト量が基準よりも少なくない場合(ステップS25でNO)には、ステップS24に移行して部屋内を移動しながら集塵を続ける。
【0056】
一方で、移動式除菌装置1の人検知センサ112により、ユーザが不在であることを検知した場合(ステップS23でNO)、つまりユーザ不在時には、ステップS26で、図8Bに示すように、室内除菌システム3は移動式除菌装置1の除菌部の紫外線照射部11と、固定式除菌装置2の除菌部の紫外線照射部21とを動作させる。
そして、ステップS27で、部屋全体を除菌したか、或いは、一定時間経過したかが判定される。
【0057】
移動式除菌装置1が室内全体を走行して部屋全体を除菌したことが確認され、固定式除菌装置2による除菌に効果があると考えられる一定時間が経過するか、そのどちらかもしくは両方が達成された場合(ステップS27でYES)、室内全体を除菌したと判断して制御を終了する。なお、部屋全体を除菌したかは、予め移動式除菌装置1が部屋の形状を取得しているので可能である。
一方、移動式除菌装置1が室内全体を走行して部屋全体を除菌しておらず、かつ、固定式除菌装置2による除菌に効果があると考えられる一定時間が経過していない場合(ステップS27でNO)、ステップS26に移行し、除菌を継続する。
【0058】
[効果]
固定式除菌装置2から照射される紫外線201は室内空間の上方の領域でウイルスや細菌を分解除菌あるいは不活性化する。移動式除菌装置1から照射される紫外線101は室内空間の下方や家具など人が接触する部分を中心にウイルスや細菌を分解除菌あるいは不活性化する。よって、実施形態2の空間除菌システム3を使用することで、室内の上方の領域および下方の領域全体をくまなく除菌することが可能となる。
【0059】
人に対して殺菌効果のある紫外線を照射すると人の健康被害を誘発する可能性がある。そこで、移動式除菌装置1の人検知センサ112によりユーザの在室の有無を検知して、移動式除菌装置1の除菌部(11)と固定式除菌装置2の除菌部(21)とを切り替えて動作させることにより、人に害を与えずにウイルスや殺菌の除菌が可能となる。
【0060】
ここでは、ユーザ不在時には移動式除菌装置1の除菌部(11)だけを動作させて集塵部(14)を動作させない構成としている。しかしながら、移動式除菌装置1の集塵部(14)はユーザの有無に関わらず動作させても問題ないため、除菌部(11)と同時に集塵部(14)を動作させても良い。この場合は物体に付着したウイルスや細菌の分解除菌あるいは不活性化と同時に空気中の微粒子を集塵することも可能である。
【0061】
また固定式除菌装置2の設置位置が人の身長に比べて非常に高い場合など、除菌範囲が、人が活動する領域より十分に離れており、固定式除菌装置2から照射される紫外線201が人に害がない場合には、ユーザ在室時に移動式除菌装置1の集塵部と同時に固定式除菌装置2を動作させても良い。その場合は、空気中の微粒子集塵と同時に、室内の一部空間の物体に付着したウイルスと殺菌の分解除菌あるいは不活性化が可能となる。
【0062】
なお、実施形態2の室内除菌システム3は、1台の移動式除菌手段(1)と1台の固定式除菌手段(2)から構成されているが、移動式除菌手段(1)と固定式除菌手段(2)とを備えて構成されていれば、それぞれの台数は何台でもよい。そこで、対象とする部屋の大きさや除菌にかける時間によって移動式除菌手段(1)と固定式除菌手段(2)の数は適切に設定する必要がある。
【0063】
以上のように、移動式除菌装置1は、人の行動を検知するセンサ(112)と、空気中に浮遊する微粒子を集塵する集塵手段(14)と、ウイルス/細菌等を分解あるいは不活性化する除菌手段(11)と、自律走行可能な移動手段(16)と、制御手段(110)とを備えている。また、固定式除菌装置2は、除菌手段(21)と制御手段(210)とを備えている。
【0064】
そして、移動式除菌装置1のセンサ(112)の検知内容に応じて集塵手段/除菌手段を切り替える室内除菌システム3により、人の有無に限らず室内の微粒子、ウイルスや殺菌を除去あるいは不活化し、室内に居住するユーザが感染症に罹患することを抑制または防止できる。
なお、固定式除菌装置2は単数の場合を例示したが、固定式除菌装置2は複数備えてもよい。
また、固定式除菌装置2は、部屋の全体を見渡せる高い位置にある。この固定式除菌装置2に室内を見渡すカメラを備え、制御部210で部屋の形状や間取りを認識するようにして、結果を移動式除菌装置1に通信で知らせる。そして、移動式除菌装置2の制御に部屋の形状等を反映するようにしてもよい。この点は、次の実施形態3でも同様である。
【0065】
<<実施形態3>>
本発明の実施形態3の構造について、図11を用いて説明する。
図11に、本発明の実施形態3の室内除菌システム3Aの動作時の概略図を示す。
本発明の実施形態3の室内除菌システム3Aは、実施形態1の移動式除菌装置1を2台(1A、1B)と、実施形態2の固定式除菌装置2を1台とを備えた構成である。
移動式除菌装置1A、1Bの構成は実施形態1の移動式除菌装置1の構成同様、固定式除菌装置2の構成は実施形態2の固定式除菌装置2の構成と同様である。そこで、実施形態1や実施形態2と異なる部分(構成)を中心に、移動式除菌装置1A、1Bを2台と、固定式除菌装置2を1台とで、構成された室内除菌システム3Aの構成を以下で説明する。
【0066】
実施形態3の室内除菌システム3Aは、移動式除菌装置(A)1Aと移動式除菌装置(B)1Bの2台の移動式除菌装置と、固定式除菌装置2とを備えて構成されている。
移動式除菌装置(A)1Aと移動式除菌装置(B)1Bは、それぞれ検知部(112A)、(112B)、走行駆動部(16A)、(16B)、集塵部(14A)、(14B)、除菌部(11A)、(11B)、制御部(110A)、(110B)、通信部(111A)、(111B)を備えている。2台の移動式除菌装置(A)1Aと移動式除菌装置(B)1Bは、検知部である人検知センサ112Aと人検知センサ112Bによって室内の人の有無を検知することが可能である。
【0067】
固定式除菌装置2は除菌部の紫外線照射部21、制御部210、および通信部211を備えている。
そして、移動式除菌装置(A)1Aおよび移動式除菌装置(B)1Bと、固定式除菌装置2とはそれぞれ通信部を介して通信可能である。つまり、移動式除菌装置(A)1Aと移動式除菌装置(B)1Bの各検知部(112A)、(112B)で検知した情報に応じて、室内除菌システム3Aが動作可能である。
【0068】
本室内除菌システム3Aの動作を説明する。
室内除菌システム3Aが制御を開始すると、まず移動式除菌装置(A)1Aと移動式除菌装置(B)1Bが室内を移動しつつ、各人検知センサ112A、112Bそれぞれが照射する電波112Aa、112Baによって室内の人の存在を検知する。ここで、室内の人の有無はどちらの移動式除菌装置(1A、1B)が検知してもよい。図11では、移動式除菌装置(A)1Aの検知方向が人Pに近いことから移動式除菌装置(A)1Aの人検知センサ112Aによって人Pを検知している。
【0069】
前記実施形態2と同様に、室内にユーザが在室していることをどちらかの移動式除菌装置(1A、1B)が検知した場合、つまりユーザ在室時には室内除菌システム3Aは移動式除菌装置(A)1A及び移動式除菌装置(B)1Bの各集塵部(14A)、(14B)を動作する。
【0070】
これにより、それぞれの移動式除菌装置(1A、1B)は、移動しながら吸気102A、102Bをそれぞれ外部から本体1Ah、1Bhに取り込む。そして、移動式除菌装置(1A、1B)は、空気中に浮遊していた吸気102A、102Bに含まれるウイルスや細菌などの微粒子を本体1Ah、1Bh内部のフィルタ15A、15Bに集塵し、清浄空気103A、103Bにして外部に放出する。そして、ダストセンサ113A、1113Bの検知により、両方の吸気102A、102Bに含まれる微粒子が十分に少なくなった場合に、移動式除菌装置(1A、1B)は、空気中に含まれる微粒子の集塵が完了したと判断し、制御を終了する。
【0071】
前記実施形態2と同様に、ユーザが不在であることを両方の移動式除菌装置(1A、1B)が検知した場合、つまりユーザ不在時には室内除菌システム3Aは、移動式除菌装置(A)1Aと移動式除菌装置(B)1Bの除菌部(11A)、(11B)と、固定式除菌装置2の除菌部の紫外線照射部21を動作させる。
時間が経過し、室内除菌システム3Aは、移動式除菌装置(A)1Aと移動式除菌装置(B)1Bが2台で室内全体を走行して部屋全体を除菌したことが確認されるか、或いは、固定式除菌装置2による除菌に効果があると考えられる一定時間が経過するか、そのどちらかもしくは両方が達成された場合、室内全体を除菌したと判断して制御を終了する。
【0072】
なお、人に対して殺菌効果のある紫外線を照射すると人の健康被害を誘発する可能性がある。そこで、室内除菌システム3Aは、ユーザの在室の有無を検知して除菌部(11A)、(11B)、(21)を切り替えて動作させることにより、人に害を与えずにウイルスや殺菌の除菌が可能となる。また、前記実施形態1、2と同様に、集塵部(14A)、(14B)はユーザの有無に関わらず動作させても問題ない。そのため、移動式除菌装置(1A、1B)は、除菌部(11A)、(11B)と同時に集塵部(14A)、(14B)を動作させてもよい。その場合は、室内除菌システム3Aにより、物体に付着したウイルスや細菌の分解除菌あるいは不活性化と同時に空気中の微粒子を集塵することも可能である。
【0073】
また、前記実施形態2と同様に、固定式除菌装置2の設置位置によってはユーザ在室時に移動式除菌装置1の集塵部と同時に固定式除菌装置2を動作させても良く、その場合は、空気中の微粒子集塵と同時に、室内の一部空間の物体に付着したウイルスと殺菌の分解除菌あるいは不活性化が可能となる。なお、移動式除菌装置(A)1Aと移動式除菌装置(B)1Bの各人検知センサ112A、112Bによって、室内の何処にユーザがいるか分かる。一方、固定式除菌装置2の紫外線照射部21は、室内の形状と固定式除菌装置2の位置を取得することで、室内のどの場所に紫外線201を照射するか分かる。
【0074】
以上のように本実施形態3では、移動式除菌装置(1A、1B)が2台で人Pを検知し、空気中の微粒子の集塵を行い、紫外線照射により室内のウイルスや細菌を分解除菌あるいは不活性化する。また、固定式除菌装置2は、移動式除菌装置(1A、1B)が届かない高所に紫外線照射部21から紫外線を照射しウイルスや細菌を分解除菌あるいは不活性化する。
そのため、室内除菌システム3Aは、1台の場合に比べて人Pの検知と空気の清浄、対象の分解除菌あるいは不活性化にかかる時間が短くなる。また、同じ時間で清浄を行う場合、室内除菌システム3Aは広い部屋の清浄と分解除菌あるいは不活性化に対応できる。
【0075】
実施形態3の室内除菌システム3Aは、2台の移動式除菌手段(1A、1B)と1台の固定式除菌手段(2)とを備えて構成されているが、移動式除菌手段と固定式除菌手段から構成されていれば台数はそれぞれ何台でも良い。
移動式除菌手段と固定式除菌手段とをそれぞれ単数または複数備えることで、部屋の大小に拘わらず、部屋を漏れなく分解除菌あるいは不活性化できる。
対象とする部屋の大きさや除菌にかける時間によって移動式除菌手段と固定式除菌手段の数は適切に設定または選択する必要がある。また、高所の除菌が必要でない場合や設置が困難な場合など、固定式除菌手段(2)を使用せずに複数の移動式除菌手段だけで室内除菌システム3Aを構成しても良い。
【0076】
以上のように、少なくとも1つの移動式除菌装置(1A、1B)を備えてセンサの検知内容に応じて集塵手段と除菌手段とを切り替える室内除菌システム3Aにより、人Pの有無に限らず室内の微粒子、ウイルスや殺菌を除去あるいは不活化して、室内に居住するユーザが感染症に罹患することを防止できる。
【0077】
<<実施形態4>>
図12に、本発明の実施形態4の移動式除菌装置1Cの模式図である。
本発明の実施形態4の移動式除菌装置1Cについて、図12を用いて説明する。
移動式除菌装置1Cの構成は実施形態1~3の移動式除菌装置1、(1A、1B)の構成と同様である。そこで、実施形態1~3と異なる部分を中心に、実施形態4の移動式除菌装置1Cの構成を以下説明する。
【0078】
実施形態4の移動式除菌装置1Cでは、本体1Ch内に集塵部である遠心羽根車14とフィルタ15、制御部110、通信部111、走行駆動部である駆動輪16を備えていることは実施形態1の構造と同一である。
移動式除菌装置1Cでは、紫外線照射部11nを本体1Chの内部に設けている。そして、移動式除菌装置1Cでは、紫外線照射部11nから照射される紫外線101がフィルタ15に集塵された微粒子に照射されることを特徴としている。
【0079】
そのため、紫外線101が本体1Chの外部に照射されることなく本体1Ch内でウイルスや細菌などの微粒子を分解除菌あるいは不活性化するため、周囲の人Pの有無に関わらず常に除菌手段の紫外線照射部11nを動作させることが可能である。
移動式除菌装置1Cは、壁面に付着して取れない微粒子の除菌はできないが、壁面や床面Yに一旦付着しても接触等で空気中に舞い上がった微粒子については吸気102として吸気口12から吸込まれる。そして、移動式除菌装置1Cの内部では、吸込まれた吸気102がフィルタ15で微粒子が集塵される。そして、移動式除菌装置1Cの排気口13から微粒子を含まない清浄空気103が排気口13から外部に放出される。
【0080】
集塵されたウイルスや細菌などの微粒子は移動式除菌装置1Cの内部で紫外線照射部11nから紫外線101を照射されて分解あるいは不活性化される。そのため、移動式除菌装置1Cにおけるフィルタ15の交換時に舞い上がることなく、感染症を予防できる。
【0081】
<<実施形態5>>
図13に、本発明の実施形態5の移動式除菌装置1Dの模式図を示す。
実施形態5の移動式除菌装置1Dは、外部と内部の両方を除菌する構成としている。
移動式除菌装置1Dは、本体1Dhの外部に紫外線101Aを照射する紫外線照射部11Aを本体1Dhの外側に配置している。また、移動式除菌装置1Dは、本体1Dhの内部に紫外線101Bを照射する紫外線照射部11Bを本体1Dhの内部に配置している。
【0082】
移動式除菌装置1Dは、本体1Dhの外部の壁面や床面Y等に付着している細菌やウイルスを紫外線照射部11Aからの紫外線照射により分解除菌あるいは不活性化する。移動式除菌装置1Dは、同時に外部から集塵してフィルタ15に付着した細菌やウイルスを、本体1Dhの内部の紫外線照射部11Bからの紫外線照射により分解除菌あるいは不活性化することが可能である。
よって、移動式除菌装置1Dは、人検知センサ112により人の存在を検知した場合は内部の紫外線照射部11Bのみを照射する。一方、人が不在の場合、移動式除菌装置1Dは、外部の紫外線照射部11Aと内部の紫外線照射部11Bの両方を駆動することで、人へ健康被害を与えることなく本体1Dh内外に存在する細菌やウイルスを分解除菌あるいは不活性化することが可能である。
【0083】
<<その他の実施形態>>
1.前記実施形態では、移動式除菌装置1が人検知センサ112を有する場合を説明したが、人検知センサ112を部屋に設けて、部屋に設けた人検知センサ112の検知内容に応じて、移動式除菌装置1と固定式除菌装置2とが除菌を行う構成としてもよい。
図14に、本発明のその他の実施形態の室内除菌システム3Tのユーザ在室時の動作の概略図を示す。
【0084】
前記実施形態では、人検知センサ112、112A、112Bを移動式除菌装置1、(1A、1B)に設ける構成を例示したが、これに代えて、図14に示すように、室内除菌システム3Tとして通信手段を有する人検知センサ212を室内に設ける。
人検知センサ212は、通信手段を介して、室内除菌システム3Tを構成する移動式除菌装置1、(1A、1B)と固定式除菌装置2と通信できる。
【0085】
そして、人検知センサ212の検知情報に基づいて、移動式除菌装置1の紫外線照射部11から紫外線101を照射し、固定式除菌装置2の紫外線照射部21から紫外線201を外部に照射する。
つまり、人検知センサ212の検知により、人が居ない所に移動式除菌装置1の紫外線照射部11から紫外線101を照射し、かつ、人が居ない所に固定式除菌装置2の紫外線照射部21から紫外線201を照射する構成としてもよい。この構成により、人が居ない場所に紫外線101、201を照射できる。
【0086】
2.前記実施形態で説明した構成は、本発明の一例であり、特許請求の範囲で記載した範囲内でその他の様々な形態が可能である。
【符号の説明】
【0087】
1、1C、1D 移動式除菌装置
1A 移動式除菌装置(A)(移動式除菌装置)
1B 移動式除菌装置(B)(移動式除菌装置)
2 固定式除菌装置
3、3A、3T 室内除菌システム
11、11n 紫外線照射部(除菌手段)
14 遠心羽根車(集塵手段)
16 駆動輪(移動手段)
21 紫外線照射部(固定除菌手段)
110 制御部(制御手段)
111 通信部(通信手段)
112、112A、112B 人検知センサ(センサ)
212 人検知センサ(室内センサ)
210 制御部(固定制御手段)
211 通信部(固定通信手段)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14