(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】塩素低減固体燃料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C10L 5/48 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
C10L5/48
(21)【出願番号】P 2020148011
(22)【出願日】2020-09-03
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 智典
(72)【発明者】
【氏名】武藤 恭宗
(72)【発明者】
【氏名】吉川 知久
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103552171(CN,A)
【文献】特開平07-214022(JP,A)
【文献】特開2016-067646(JP,A)
【文献】特開2002-274900(JP,A)
【文献】特開2011-031226(JP,A)
【文献】特開2002-356578(JP,A)
【文献】特開2021-147531(JP,A)
【文献】特開2013-199542(JP,A)
【文献】特開2000-096066(JP,A)
【文献】特開2012-179560(JP,A)
【文献】特開2000-015635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 5/48
B09B 3/40
C08J 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックを
250~600℃に加熱する加熱工程と、
加熱後の廃プラスチックを破砕する破砕工程と、
廃プラスチック破砕物を水洗する洗浄工程
を含み、
破砕工程後、洗浄工程前に、廃プラスチック破砕物の水分含有量が
15~
55質量%となるように廃プラスチック破砕物に加水し、加水後に45~1500分間静置する加水工程を有する、
塩素低減固形燃料の製造方法。
【請求項2】
破砕工程後、加水工程前に、物理選別により長径が所定値以下の廃プラスチック破砕物を回収する選別工程を有する、請求項1記載の塩素低減固形燃料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素低減固体燃料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭、レストラン、コンビニエンスストア等から生ごみや紙類等の有機廃棄物が大量に都市ごみとして排出され、都市ごみを焼却した際に発生する焼却灰が埋立処分されているが、有機廃棄物には炭素分が多く含まれていることから、近年、これを燃料として有効利用する試みがなされている。しかし、都市ごみには塩化ビニル等の塩素含有樹脂が含まれているため、焼却灰にはダイオキシンが含まれることがある。
【0003】
そこで、都市ごみの焼却飛灰や焼却灰に対して、水洗により塩素分の除去処理、塩素分以外の所定の物質の除去処理を行なった後、固液分離して固形分をセメントの混練用材料として利用することが提案されている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-15190号公報
【文献】特開2014-193456号公報
【文献】特開2005-279370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、廃プラスチックの加熱処理物から上記先行技術に記載の水洗により塩素を低減した固体燃料の製造方法の創製を試みたところ、次のような問題が生じた。即ち、廃プラスチックの加熱処理物は、都市ごみの焼却灰(主灰、飛灰)と比較して、粒度分布が広いこと、塩化ビニル等の水洗や酸洗浄では溶解しない塩素を含有すること、樹脂の加熱残渣の他、脆化が進んでいない樹脂や、金属、ガラス、繊維等の多種多様な夾雑物を含んでおり、粒子によって水洗時の流動性や浮沈性等の性質、塩素の溶出特性が異なることなどから、水洗により廃プラスチックの加熱処理物から塩素を除去することは困難であった。
そこで、廃プラスチックの加熱処理物を微細化することが考えられるが、廃プラスチックの加熱処理物には金属が含まれているため、刃の摩耗や金属の噛み込みにより作業が中断しやすいこと、加熱による脆化の進度が異なる樹脂が混在することなどから、水洗により廃プラスチックの加熱処理物から塩素を除去することは困難であった。また、廃プラスチックの加熱処理物を数mm程度に粗破砕することが考えられるが、水洗時に水と十分に交わらない場合があり、また粒径や密度により水洗時の流動性や浮沈性等の性質が異なるため、水洗効率が低下すること、搬送する際にポンプや配管で閉塞しやすいこと、脱水時に機械の破損や摩耗・損傷等が発生することなどから、なお水洗により廃プラスチックの加熱処理物から塩素を除去することが困難であった。
本発明の課題は、塩素が低減された固体燃料の効率的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み検討した結果、廃プラスチックを加熱して脆化し、それを破砕した後、水洗前に廃プラスチック破砕物に加水することで、水洗時に廃プラスチック破砕物から塩素が溶出しやすくなるだけでなく、廃プラスチック破砕物の浮遊が抑制され、ハンドリング性も改善されるため、塩素が低減された固体燃料を効率よく製造できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔4〕を提供するものである。
〔1〕廃プラスチックを加熱する加熱工程と、
加熱後の廃プラスチックを破砕する破砕工程と、
廃プラスチック破砕物を水洗する洗浄工程
を含み、
破砕工程後、洗浄工程前に、廃プラスチック破砕物に加水する加水工程を有する、
塩素低減固形燃料の製造方法。
〔2〕加水工程において、廃プラスチック破砕物の水分含有量を5~70質量%に調整する、請求項1記載の塩素低減固形燃料の製造方法。
〔3〕洗浄工程を、加水工程終了から所定時間経過後に行う、請求項1又は2記載の塩素低減固形燃料の製造方法。
〔4〕破砕工程後、加水工程前に、物理選別により長径が所定値以下の廃プラスチック破砕物を回収する選別工程を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の塩素低減固形燃料の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、塩素が低減された固体燃料を簡便な操作で効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の塩素低減固体燃料の製造方法は、加熱工程、破砕工程、加水工程及び水洗工程を含むものである。以下、各工程について説明する。
【0010】
〔加熱工程〕
第1の工程は、廃プラスチックを加熱する工程である。これにより、廃プラスチックの分解が進み、廃プラスチックの表面や内部に空隙が発生して脆化し強度が低下するため、次工程における破砕を効率的に行うことができる。なお、廃プラスチックは、2以上を混合しても構わない。
本発明で使用される廃プラスチックは、使用済みのプラスチック製品や、工場等でのプラスチックの製造・加工時に生じる屑や不良品等であり、プラスチック以外の異物(例えば、金属、紙、木、その他の無機物及び有機物)が付着又は混入していても構わない。
廃プラスチックとしては、例えば、シュレッダーダスト、建築廃プラスチック、農業廃プラスチック、漁業廃プラスチック、海洋廃プラスチックを挙げられる。これら廃プラスチックには、通常ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素含有樹脂が含まれている。ここで、本明細書において「シュレッダーダスト」とは、工業用シュレーダーで産業廃棄物又は一般廃棄物を破砕し、金属を回収した後に廃棄される破片の混合物をいう。産業廃棄物の具体例としては、例えば、廃自動車、廃家電、自動販売機、OA機器が挙げられる。
【0011】
加熱温度は廃プラスチックを脆化できれば特に限定されないが、ダイオキシン発生防止の観点から、溶融温度以上であって、燃焼温度よりも低い温度が好ましい。具体的には、250~500℃が好ましく、275~475℃がより好ましく、300~450℃が更に好ましい。
加熱時間は、廃プラスチックを脆化できれば特に限定されないが、通常0.5~5時間であり、好ましくは0.5~4時間であり、更に好ましくは1~3時間である。
加熱装置は、廃プラスチックを収容し、かつ上記温度に設定できれば特に限定されないが、例えば、固定炉、ストーカー炉、ロータリーキルン炉、流動床炉、堅型炉、多段炉等を挙げることができる。
【0012】
〔破砕工程〕
破砕工程は、加熱工程後の廃プラスチックを破砕する工程である。これにより、廃プラスチックが粒子になり、塩素を除去しやすくなる。
加熱工程後の廃プラスチックは、加熱により脆化し、強度が低下しているため、破砕により容易に粒子とすることができるが、通常、破砕機を用いる。
破砕機としては廃プラスチックを破砕できれば特に限定されないが、衝撃式の破砕機が好ましい。例えば、インパクトクラッシャー、ハンマークラッシャー、ロールクラッシャー、ロータリークラッシャーを挙げることができる。
【0013】
本発明においては、塩素低減、製造効率向上の観点から、破砕後の廃プラスチックの長径を制御することが好ましい。長径が制御された廃プラスチック破砕物を採取するために、例えば、破砕機に所望のふるい目のスクリーンを装着してもよい。スクリーンは、2段式としても構わない。このように廃プラスチック破砕物の長径を制御することで、金属やガラス等の不燃物、板状や棒状の樹脂等を取り除くことができるため、機械の破損や摩耗・損傷等の運転トラブルを防止できるだけでなく、洗浄工程において当該破砕物から塩素をより一層除去しやすくなる。
廃プラスチック破砕物の長径は、30mm未満が好ましく、20mm未満がより好ましく、15mm未満が更に好ましい。ここで、本明細書において「長径」とは、廃プラスチック破砕物のうち、最も大きな破砕物を採取して、当該破砕物の径が最大となる箇所を測定した値である。
【0014】
〔選別工程〕
本発明においては、所望の長径に高度に制御された廃プラスチック破砕物を採取するために、破砕後の廃プラスチックを物理選別する選別工程を有することができる。
物理選別としては特に限定されないが、例えば、風力選別、比重選別、磁力選別、渦電流選別、ふるい分け、ソーター選別(光学、電磁誘導、透過X線、蛍光X線等)を挙げることができる。なお、選別条件は、上記した長径の廃プラスチック破砕物を採取できるように、選別方法により適宜設定すればよい。
【0015】
風力選別は、公知の風力選別機を用いることが可能であり、特に限定されないが、例えば、ジグザグ式、内部循環式を挙げることができる。
風力選別において、例えば、内部循環式を用いた場合、ファンにより下から上方向に空気の流れを作ると、廃プラスチック破砕物の重量物は空気の流れに逆らって下方向に移動し、他方軽量物は空気の流れに乗って上方向に移動する。このようにして廃プラスチック破砕物は、重量物と軽量物とに選別され、軽量物が回収される。この場合、重産物に金属やガラス等の不燃物が主体になるように、風力選別の風速を設定することが好ましい。例えば、風速は、5m/s以上が好ましく、7.5m/s以上がより好ましく、10m/s以上が更に好ましい。なお、風力の上限値は廃プラスチックの種類により適宜設定可能であるが、通常30m/s以下であり、好ましくは25m/s以下である。
【0016】
比重選別機は、公知の比重選別機を用いることが可能であり、乾式及び湿式のいずれでも構わないが、乾式のテーブル式比重選別機が好ましく、エアテーブルが更に好ましい。
比重選別において、例えば、エアテーブルを用いた場合、振動式テーブルの上面に供給された廃プラスチック破砕物は、振動式テーブルを通過する空気流によって振動式テーブルの上面から浮上した状態となり、振動式テーブルの傾斜方向に付与された振動により、比重の大きい高比重物が下層に、比重の小さい低比重物が上層に移動し、下層の高比重物は振動式テーブルの上面から摩擦力と振動力とを受けて斜め上方へ移動し、上層の低比重物は振動式テーブルの上面から摩擦力と振動力とを受けずに斜め下方へ押し流される。そして、振動式テーブルから高比重物と低比重物が別々に排出され、低比重物が回収される。
【0017】
磁力選別は、公知の磁力選別機を用いることが可能であり、例えば、ドラム式、プーリー式及び吊下げ式のいずれでもよく、特に限定されない。
磁力選別では、例えば、高磁力の磁場が存在するマグネットドラムと、マグネットドラムに巻き回されたベルトコンベヤ(移動式ベルト)と、ベルトコンベヤのベルト面上に試料を供給するフィーダとを有する磁力選別装置を用いて、磁着物と非磁着物に選別し、非磁着物が回収される。
磁力選別機の表面磁束密度は、磁着物除去の観点から、700~10000ガウスが好ましく、1000~7500ガウスがより好ましく、1500~5000ガウスが更に好ましい。
【0018】
渦電流選別機は、公知の渦電流選別機を用いることが可能であり、特に限定されないが、例えば、回転磁石式、直行ベルトコンベヤ式、回転円筒式を挙げることができる。
渦電流選別においては、例えば、コンベヤベルトの先端側に設けられた回転磁石体の移動磁界の電磁誘導作用を受けて内部に生じる誘導電流と移動磁界との相互作用によって、コンベヤベルトの先端側に搬送された廃プラスチック破砕物に回転磁石体の回転方向に推力を与え、コンベヤベルトの表面からこの推力と導電性物質に作用する重力との合成力の方向に導電性物質を飛び出させて除去し、非導電物質を回収する。
回転磁石体の回転数は、導電性物質除去の観点から、1500rpm以上が好ましく、3000rpm以上がより好ましく、4500rpm以上が更に好ましい。
【0019】
ふるい分けとしては、例えば、振動式、面内運動式、回転式、固定式が挙げられるが、これらに限定されない。ふるい分けは、篩上物と篩下物とに選別し、粒度調整された篩下物を回収する。
【0020】
また、物理選別は、2以上組み合わせて行うことができる。例えば、風力選別した軽量物に針金や金属片が含まれている場合には、風力選別及びふるい分けを組み合わせて行うことができる。具体的には、風力選別した軽量物をふるい分けしてふるい上物とふるい下物に選別し、ふるい下物を回収する。この場合、ふるい目は、5~30mmが好ましく、5~20mmがより好ましく、5~10mmが更に好ましい。また、風力選別した重量物を比重選別して高比重物と低比重物に選別し、低比重物を回収してもよい。この場合、風力選別した重量物をふるい分けしてふるい上物とふるい下物に選別し、ふるい下物を比重選別に供し、低比重物を回収しても構わない。
【0021】
物理選別としては、風力選別、比重選別、磁力選別及びふるい分けから選択される1又は2以上が好ましく、風力選別、比重選別及びふるい分けから選択される1又は2以上が更に好ましい。
【0022】
〔加水工程〕
加水工程は、廃プラスチック破砕物に加水する工程である。なお、廃プラスチック破砕物を物理選別した場合には、上記した回収物に加水する。これにより、廃プラスチック破砕物の中心部にまで水分が浸透し、当該破砕物に含まれる塩素が溶出するため、洗浄工程において当該破砕物から塩素を除去しやすくなる。
廃プラスチック破砕物への加水量は、多過ぎると、流動性が低下するため、ハンドリング性が損なわれ、他方少な過ぎると、破砕物の中心部にまで水分が浸透し難くなるため、塩素の除去が不十分となる。そのため、廃プラスチック破砕物の水分含有量は、5~70質量%に調整することが好ましく、15~65質量%がより好ましく、20~60質量%が更に好ましく、20~55質量%がより更に好ましい。ここで、本明細書において「水分含有量」は、JISZ7302-3:1999 廃棄物固形化燃料-第3部:水分試験方法に準拠して分析するものとする。
【0023】
水としては、例えば、JIS A 5303付属書Cに規定される上水道水、該上水道水以外の水(例えば、河川水、湖沼水、井戸水、地下水、工業用水)を挙げることができる。
また、水は、冷却水、常温水及び温水のいずれでもよく、特に限定されない。
加水方法は、廃プラスチックの破砕後であれば、破砕物の搬送中、搬送前後のいずれでも構わない。例えば、スクリューコンベヤの入り口、ベルトコンベヤ上、又は搬送の乗り継ぎ箇所等において廃プラスチック破砕物に水を添加又は噴霧する方法、連続式又はバッチ式の撹拌装置内に廃プラスチック破砕物を収容し、該破砕物に水を添加又は噴霧し撹拌する方法等を挙げることができるが、上記した水分含有量に調整できれば特に限定されない。
【0024】
〔静置〕
本発明においては、加水工程後の廃プラスチック破砕物を所定時間静置することが好ましい。これにより、廃プラスチック破砕物の中心部に水分がより一層浸透して当該破砕物に含まれる塩素がより一層溶出しやすくなり、塩素の除去率をより高めることができる。
静置は、加水された廃プラスチック破砕物をそのままの状態で放置すればよく、必要により加温しても構わない。また、加水後の廃プラスチック破砕物を、搬送コンベヤにより次工程で使用する洗浄装置へ搬送し、洗浄するまでの経過時間が所定時間となるように、静置時間を設定しても構わない。
静置時間は、塩素低減の観点から、加水工程終了から洗浄工程までの経過時間が、10~1500分であることが好ましく、20~900分がより好ましく、30~600分が更に好ましく、45~300分がより更に好ましい。
【0025】
〔洗浄工程〕
洗浄工程は、加水工程後の廃プラスチック破砕物を水洗する工程である。なお、加水後の廃プラスチック破砕物を静置した場合には、静置工程終了後の廃プラスチック破砕物を水洗する。これにより、中心部にまで水分が浸透し塩素が溶出した廃プラスチック破砕物から塩素を十分に除去することができる。また、長径が制御された廃プラスチック破砕物を洗浄対象とすることで、水洗時の運転トラブルが防止され、製造効率を向上させることができる。
【0026】
洗浄工程は、廃プラスチック破砕物を水と接触させることができれば特に限定されないが、例えば、廃プラスチック破砕物を洗浄装置に収容し攪拌する方法、廃プラスチック破砕物を水に浸漬させる方法、廃プラスチック破砕物に水を散布する方法を挙げることができる。
洗浄装置の撹拌方式は、例えば、堅型及び横型のいずれでもよいが、塩素除去の観点から、横型が好ましい。また、洗浄は、2段洗浄を行ってもよく、1又は2以上の洗浄装置を組み合わせてもよい。
【0027】
水の使用量は、塩素除去、製造効率の観点から、加水後の廃プラスチック破砕物の固形分量と、加水後の廃プラスチック破砕物の水分含量及び洗浄に使用する水使用量との総量との質量比(破砕物の固形分量/水の総量)が、1~30であることが好ましく、1.5~20がより好ましく、2~10が更に好ましく、2.5~5がより更に好ましい。ここで、本明細書において「加水後の廃プラスチック破砕物の固形分量」とは、加水後の廃プラスチック破砕物から水分含有量を除いた残分をいう。
洗浄時間は廃プラスチック破砕物量や水使用量により適宜設定可能であるが、通常2~30分である。
また、水は、冷却水、常温水及び温水のいずれでも構わないが、塩素除去の観点から、温水が好ましい。水の温度は、25~80℃が好ましく、30~70℃がより好ましく、35~60℃が更に好ましい。
【0028】
〔固液分離工程〕
固液分離工程は、洗浄後の廃プラスチック破砕物を固液分離し、固形物を回収する工程である。これにより、固形物として塩素が低減された固体燃料を回収することができる。
固液分離としては固形物と水とを分離できれば特に限定されないが、例えば、遠心分離を挙げることができる。遠心分離の操作方式は、連続式でも、回分式(バッチ式)でも構わない。
遠心分離としては、例えば、遠心ろ過、遠心沈降が挙げられる。遠心分離は、複数回行っても、遠心沈降と遠心ろ過を組み合わせて行ってもよい。
【0029】
遠心ろ過は、遠心ろ過機を用いて行うことができる。遠心ろ過機には様々な形式が存在するが、本工程では特に限定されない。中でも、製造効率の観点から、連続式スクリュー排出型が好ましい。
遠心ろ過機のろ材としては、例えば、ろ布、スクリーンを挙げることができるが、孔径0.05mm以上のスクリーンを使用すると、効率よく固液分離できる点で好ましい。
遠心ろ過における遠心力は、通常200~2000Gであるが、製造効率の観点から、300~1500Gが好ましい。
【0030】
遠心沈降は、遠心沈降機を用いて行うことができる。遠心沈降機にも様々な形式が存在するが、本工程では特に限定されない。中でも、製造効率の観点から、連続式デカンタ型が好ましい。
遠心沈降における遠心力は、通常300~4000Gであるが、製造効率の観点から、500~2000Gが好ましい。
【0031】
なお、固液分離工程の排水には、微粒子が多く含まれることがある。そのため、固液分離後、排水から固形物を回収する工程を有することができる。排水処理は、例えば、脱水機を使用することができる。脱水機としては、例えば、遠心沈降機を挙げることができる。脱水処理は、複数回行っても構わない。
【0032】
このようにして、本発明の塩素低減固体燃料を製造することができるが、得られた固体燃料は、塩素だけでなく、金属も低減されている。また、水分が20質量%以下に低減されており、ハンドリング性も良好で、燃焼性に優れるため、そのままで窯前燃料として利用することができる。
また、廃プラスチック、廃畳、微粉炭、廃油等と混合して窯前燃料として利用してもよく、更に石炭と一緒に石炭ミルに投入して、乾燥・粉砕してもよい。
【0033】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、比重選別で回収された高比重物、磁力選別で回収された磁着物、渦電流選別で回収された導電性物質を、更に物理選別に供してもよい。これにより、金、銀、パラジウム、白金、銅等の有価金属が回収されるため、品位のより高い塩素低減固体燃料を製造することができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0035】
塩素含有量の分析
塩素含有量は、ISO 587 Solid mineral fuels - Determination of chlorine using Eschka mixtureに準拠して分析した。
【0036】
水分含有量の分析
水分含有量は、JISZ7302-3:1999 廃棄物固形化燃料-第3部:水分試験方法に準拠して分析した。
【0037】
本実施例で使用した装置は、以下のとおりである。
(1)破砕機 :御池鐵工所製、型式:MHM-50R
(2)風力選別機:御池鐵工所製、型式:ジグザグ式
(3)竪型洗浄機:佐竹化学機械工業製、型式:A720を1m3タンクに装着
(4)横型洗浄機:氣工社製、型式:KDW610を1m3タンクに装着
(5)遠心ろ過機:コトブキ技研工業製、型式:N452K
【0038】
本実施例で使用した廃プラスチックは、以下のとおりである。
・原料A:自動車シュレッダーダスト(排出元A社)
・原料B:自動車シュレッダーダスト(排出元B社)
・原料C:廃家電、自動販売機及びOA機器を含むシュレッダーダスト(排出元C社)
【0039】
実施例1~5
(加熱工程、破砕工程)
原料A~Cを表1に示す条件にて加熱した後、30mmのスクリーンを装着したハンマークラッシャーで破砕した。次に、ジグザグ式風力選別機を用いて、廃プラスチック破砕物を風速10m/sの条件で重量物と軽量物に選別し、軽量物を回収した。そして、軽量物の塩素含有量を分析した。その結果を表1に示す。
【0040】
【0041】
(加水工程、洗浄工程)
水分含有量が25質量%となるように軽量物に加水した後、1時間静置した。次に、加水後の軽量物を、表2に示す方式の洗浄装置を用いて50℃の温水で水洗した。その後、ろ布式の遠心ろ過機により脱水して、固体とろ液に分離し、固体を固体燃料として回収した。そして、固体燃料の塩素含有量を分析した。なお、加水量は、加水後の軽量物の水分含量を分析した。また、洗浄工程での水の使用量は、加水後の廃プラスチック破砕物の固形分量と、加水後の廃プラスチック破砕物の水分含有量及び洗浄に使用する水使用量との総量との質量比(破砕物の固形分量/水の総量)が3となるように設定した。更に、洗浄時の水面の浮遊物の有無を観察した。これら結果を表2に示す。
【0042】
比較例1
加水工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の操作により、固体燃料を製造した。洗浄時の水面の浮遊物の有無の観察結果、加水後の軽量物の水分含量及び固体燃料の塩素含有量の分析結果を表2に示す。
【0043】
【0044】
実施例6~10
加水工程において、表3に示す水分含量となるように軽量物に加水したこと以外は、実施例3と同様の操作により、固体燃料を製造した。洗浄時の水面の浮遊物の有無の観察結果、加水後の軽量物の水分含量及び固体燃料の塩素含有量の分析結果を、実施例3の結果とともに表3に示す。
【0045】
【0046】
実施例11~15
加水後の軽量物を表4に示す時間静置したこと以外は、実施例3と同様の操作により、固体燃料を製造した。洗浄時の水面の浮遊物の有無の観察結果、加水後の軽量物の水分含量及び固体燃料の塩素含有量の分析結果を、実施例3の結果とともに表4に示す。
【0047】
【0048】
表2から、廃プラスチックを加熱して破砕した後、廃プラスチック破砕物に加水し、加水後の廃プラスチック破砕物を水洗することで、塩素が低減された固体燃料を効率よく製造できることがわかる。また、表3から、廃プラスチック破砕物の加水量を一定量以上とすることで、固体燃料中の塩素をより一層低減できることがわかる。更に、表4から、加水された廃プラスチック破砕物を一定時間静置した後に水洗することで、固体燃料中の塩素をより一層低減できることがわかる。