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  • -負極及び亜鉛二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】負極及び亜鉛二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/24 20060101AFI20241002BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20241002BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20241002BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241002BHJP
   H01M 10/30 20060101ALI20241002BHJP
   H01M 12/08 20060101ALI20241002BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20241002BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20241002BHJP
   H01M 4/52 20100101ALI20241002BHJP
【FI】
H01M4/24 H
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/62 C
H01M10/30 Z
H01M12/08 K
H01M50/434
H01M50/446
H01M4/52
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020154999
(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公開番号】P2021057339
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2019173416
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100218800
【弁理士】
【氏名又は名称】河内 亮
(72)【発明者】
【氏名】浅井 宏太
(72)【発明者】
【氏名】七瀧 努
(72)【発明者】
【氏名】山田 直仁
(72)【発明者】
【氏名】横山 昌平
(72)【発明者】
【氏名】清水 壮太
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-042775(JP,A)
【文献】特開2015-185258(JP,A)
【文献】国際公開第2013/118561(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/076047(WO,A1)
【文献】特開2017-216235(JP,A)
【文献】特開2013-201133(JP,A)
【文献】特開平9-92277(JP,A)
【文献】特開平11-242954(JP,A)
【文献】特開2016-4734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62、
10/00-10/04、10/06-10/34、
12/00-16/00、50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛二次電池に用いられる負極であって、
Zn粒子及びZnO粒子を含む負極活物質と、
はんだを含む導電助剤と、
を含み、
前記はんだがSn、Pb、Bi、In及びZnからなる群から選択される、少なくともSnを含む1種以上を含み、
前記はんだが三次元ネットワークを構成し、前記三次元ネットワークにZn粒子及びZnO粒子が組み込まれている、負極。
【請求項2】
前記はんだが、Sn-Pb系はんだ、Sn-Bi系はんだ、Sn-In系はんだ、及びSn-Zn系はんだからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項に記載の負極。
【請求項3】
前記はんだが、粒径0.1~100μmの粒子状である、請求項1又は2に記載の負極。
【請求項4】
前記はんだの粒径が3~100μmである、請求項に記載の負極。
【請求項5】
前記はんだの粒径が3~50μmである、請求項に記載の負極。
【請求項6】
前記負極がバインダー樹脂をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の負極。
【請求項7】
前記負極活物質、前記導電助剤及び(前記負極がバインダー樹脂を含む場合には)前記バインダー樹脂の合計容量に対する、前記はんだの含有割合が、5~60容量%である、請求項1~のいずれか一項に記載の負極。
【請求項8】
正極と、
請求項1~のいずれか一項に記載の負極と、
前記正極と前記負極とを水酸化物イオン伝導可能に隔離するセパレータと、
電解液と、
を含む、亜鉛二次電池。
【請求項9】
前記セパレータが層状複水酸化物(LDH)セパレータである、請求項に記載の亜鉛二次電池。
【請求項10】
前記LDHセパレータが多孔質基材と複合化されている、請求項に記載の亜鉛二次電池。
【請求項11】
前記正極が水酸化ニッケル及び/又はオキシ水酸化ニッケルを含み、それにより前記亜鉛二次電池がニッケル亜鉛二次電池をなす、請求項10のいずれか一項に記載の亜鉛二次電池。
【請求項12】
前記正極が空気極であり、それにより前記亜鉛二次電池が亜鉛空気二次電池をなす、請求項10のいずれか一項に記載の亜鉛二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極及び亜鉛二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ニッケル亜鉛二次電池、空気亜鉛二次電池等の亜鉛二次電池では、充電時に負極から金属亜鉛がデンドライト状に析出し、不織布等のセパレータの空隙を貫通して正極に到達し、その結果、短絡を引き起こすことが知られている。このような亜鉛デンドライトに起因する短絡は繰り返し充放電寿命の短縮を招く。
【0003】
上記問題に対処すべく、水酸化物イオンを選択的に透過させながら、亜鉛デンドライトの貫通を阻止する、層状複水酸化物(LDH)セパレータを備えた電池が提案されている。例えば、特許文献1(国際公開第2013/118561号)には、ニッケル亜鉛二次電池においてLDHセパレータを正極及び負極間に設けることが開示されている。また、特許文献2(国際公開第2016/076047号)には、樹脂製外枠に嵌合又は接合されたLDHセパレータを備えたセパレータ構造体が開示されており、LDHセパレータがガス不透過性及び/又は水不透過性を有する程の高い緻密性を有することが開示されている。また、この文献にはLDHセパレータが多孔質基材と複合化されうることも開示されている。さらに、特許文献3(国際公開第2016/067884号)には多孔質基材の表面にLDH緻密膜を形成して複合材料を得るための様々な方法が開示されている。この方法は、多孔質基材にLDHの結晶成長の起点を与えうる起点物質を均一に付着させ、原料水溶液中で多孔質基材に水熱処理を施してLDH緻密膜を多孔質基材の表面に形成させる工程を含むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/118561号
【文献】国際公開第2016/076047号
【文献】国際公開第2016/067884号
【発明の概要】
【0005】
ところで、亜鉛二次電池の短寿命化を招く別の要因として、負極活物質である亜鉛の形態変化が挙げられる。すなわち、充放電の繰り返しにより亜鉛が溶解及び析出を繰り返すにつれて、負極が形態変化して、気孔の閉塞による高抵抗化、孤立亜鉛の蓄積による充電活物質の減少等を生じ、その結果、充放電が困難になるとの問題がある。
【0006】
本発明者らは、今般、Zn粒子及びZnO粒子とともに導電助剤としてはんだを負極に用いることにより、亜鉛二次電池において、充放電の繰り返しに伴う負極の劣化を抑制して耐久性を向上し、それによりサイクル寿命を長くすることができるとの知見を得た。
【0007】
したがって、本発明の目的は、亜鉛二次電池において、充放電の繰り返しに伴う負極の劣化を抑制して耐久性を向上し、それによりサイクル寿命を長くすることを可能とする負極を提供することにある。
【0008】
本発明の一態様によれば、亜鉛二次電池に用いられる負極であって、
Zn粒子及びZnO粒子を含む負極活物質と、
はんだを含む導電助剤と、
を含む、負極が提供される。
【0009】
本発明の他の一態様によれば、
正極と、
前記負極と、
前記正極と前記負極とを水酸化物イオン伝導可能に隔離するセパレータと、
電解液と、
を含む、亜鉛二次電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明によるはんだを含む負極の充放電時における微構造変化の推定メカニズムを説明するための概念図である。
図2】はんだを含まない従来型負極の充放電時における微構造変化の推定メカニズムを説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の負極は亜鉛二次電池に用いられる負極である。この負極は、負極活物質と、導電助剤とを含む。負極活物質はZn粒子及びZnO粒子を含む。導電助剤ははんだを含む。このようにZn粒子及びZnO粒子とともに導電助剤としてはんだを負極に用いることにより、亜鉛二次電池において、充放電の繰り返しに伴う負極の劣化を抑制して耐久性を向上し、それによりサイクル寿命を長くすることができる。
【0012】
前述のとおり、従来の負極においては、充放電の繰り返しにより亜鉛が溶解及び析出を繰り返すにつれて、負極が形態変化して、気孔の閉塞による高抵抗化、孤立亜鉛の蓄積による充電活物質の減少等を生じ、その結果、充放電が困難になるとの問題がある。この推定メカニズムは以下のようなものと考えられる。負極においては、充放電反応式:
ZnO+HO+2OH+2e ⇔ Zn+4OH … 式(1)
に従い、ZnOは充電時にZnに変化する一方、Znは放電時にZnOに変化する。しかし、充電により生じたZn粒子が放電時に全てZnO粒子に戻れる訳ではなく、Znの一部が残留して蓄積される。そして、充放電が繰り返されるにつれて必要なZnO粒子が徐々に減っていき容量が低下する。図2にこの一連の推定メカニズムが概念的に示される。図2には、Zn粒子(放電活物質)及びZnO粒子(充電活物質兼電子伝導物質)を含む負極活物質12及び集電体16を含む従来の負極10’(はんだを含まない)が電解液18及びセパレータ20とともに示されている。まず、充放電サイクル開始前においては、図2(a)に示されるように、負極10’はZnO粒子をZn粒子よりも多く含んでいる。次に、充電されると、式(1)の反応が右方向にする進行する結果、図2(b)に示されるようにZnO粒子がZn粒子に変化してZn粒子が増大する。Zn粒子は充電活物質のみならず電子伝導物質としても機能するので、Zn粒子の増加により電子伝導パスが増加する。一方、放電時には、式(1)の反応が左方向に進行する結果、図2(c)に示されるようにZn粒子がZnO粒子に変化してZn粒子が減少する。しかし、その際、集電体16から遠い負極10’表面付近(図中でAと記した領域)のZn粒子が電気的に孤立化し、放電できずにZn粒子のまま蓄積し、その結果、ZnO量が減少すると考えられる。そして、充放電が繰り返されると、図2(d)に示されるようにZn蓄積量が徐々に増加する一方、充電に必要なZnO量が徐々に減少してしまい、定格容量充電がすることができなくなる。
【0013】
これに対し、図1に概念的に示されるように、本発明の負極10は、Zn粒子及びZnO粒子とともに導電助剤14としてはんだを含むものであり、この導電助剤14、すなわちはんだがZn蓄積量の増大(すなわちZnO量の減少)を抑制するものと考えられる。まず、充放電サイクル開始前においては、図1(a)に示されるように、負極10はZnO粒子をZn粒子よりも多く含んでいる。次に、充電されると、式(1)の反応が右方向に進行する結果、図1(b)に示されるようにZnO粒子がZn粒子に変化してZn粒子が増大する。Zn粒子は充電活物質のみならず電子伝導物質としても機能するので、Zn粒子の増加により電子伝導パスが増加する。一方、放電時には、式(1)の反応が左方向に進行する結果、図2(c)に示されるようにZn粒子がZnO粒子に変化してZn粒子が減少する。このとき、Zn粒子が減少しても導電助剤14(はんだ)が電子伝導パスを確保するため、集電体16から遠い負極10表面付近(図中でAと記した領域)のZn粒子とも導通がとれるため、充電により生成したZn粒子のより多くの部分(理想的にはほぼ全て)を放電に関与させることができ、その結果、ZnO粒子の減少が効果的に抑制される。すなわち、集電体16から遠い負極10表面付近におけるZn粒子の電気的な孤立化及び蓄積、並びにそれによるZnO量の減少を効果的に抑制することができる。こうして、充放電が繰り返されても、図1(d)に示されるようにZn蓄積量が徐々に増加することがなく、それ故、充電に必要なZnO量を十分に確保することができ、定格容量充電をすることができる。こうして、充放電の繰り返しに伴う負極10の劣化を抑制して耐久性を向上し、それによりサイクル寿命を長くすることができる。
【0014】
なお、図1において負極10の上面と下面の間で導電助剤14(はんだ)の領域が繋がっていないように描かれているが、これは断面として二次元的に描かれているためであり、奥行きを考慮した三次元的には負極10の上面と下面の間で導電助剤14の領域が繋がっており、それにより導電助剤14の電子伝導パスが確保されているのが好ましい。
【0015】
負極活物質12は、Zn粒子及びZnO粒子を含む。Zn粒子は、典型的には金属Zn粒子であるが、Zn合金やZn化合物の粒子を用いてもよい。金属Zn粒子は、亜鉛二次電池に一般的に使用される金属Zn粒子が使用可能であるが、それよりも小さい金属Zn粒子の使用が電池のサイクル寿命を長くする観点からより好ましい。具体的には、金属Zn粒子のD50粒径は、好ましくは5~200μmであり、より好ましくは8~100μmであり、さらに好ましくは10~50μmである。負極10におけるZn粒子の好ましい含有量は、ZnO粒子の含有量を100重量部とした場合に、1~50重量部であるのが好ましく、より好ましくは2~45重量部、さらに好ましくは5~35重量部である。あるいは、負極10におけるZn粒子の好ましい含有量は、ZnO粒子の含有量を100容量部とした場合に、1~40容量部であるのが好ましく、より好ましくは2~35容量部、さらに好ましくは4~30容量部である。後述するように金属Zn粒子にはIn、Bi等のドーパントがドープされていてもよい。ZnO粒子は亜鉛二次電池に用いられる市販の酸化亜鉛粉末、もしくはそれらを出発原料として用いて固相反応等により粒成長させた酸化亜鉛粉末を用いればよく特に限定されない。ZnO粒子のD50粒径は、好ましくは0.1~20μmであり、より好ましくは0.1~10μm、さらに好ましくは0.1~5μmである。
【0016】
負極活物質12、導電助剤14及び(負極10がバインダー樹脂を含む場合には)バインダー樹脂の合計容量に対する、負極活物質12の含有割合は、40~95容量%であるのが好ましく、より好ましくは50~90容量%、さらに好ましくは60~80容量%である。なお、はんだの含有割合の算出においては、はんだの含有量としてははんだの金属成分量(換算値)を用いるものとする一方、バインダー樹脂の含有量はバインダー樹脂の固形分量(換算値)を用いるものとする。
【0017】
導電助剤14ははんだを含む。亜鉛二次電池の機能を損なわないかぎり、あらゆる種類のはんだが使用可能である。好ましいはんだは、Sn、Pb、Bi、In及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含むものであり、より好ましくは少なくともSnを含むものである。このような組成のはんだを用いることで、強アルカリの電解液(例えば水酸化カリウム水溶液)中で望ましくない反応(例えば水素の発生)が起こりにくくなる。そのような好ましいはんだの具体例としては、Sn-Pb系はんだ、Sn-Bi系はんだ、Sn-In系はんだ、Sn-Zn系はんだ、及びそれらの組合せが挙げられる。Sn-Pb系はんだ、Sn-Bi系はんだ、Sn-In系はんだ、及びSn-Zn系はんだの組成は一般的に知られている組成であることができ、特に限定されないが、典型的にはSnを40~95重量%含み、残部がPb、Bi、In、Zn等の他の元素であるものである。特に好ましい組成は、最も低温で溶融できる点で共晶組成である。Sn-Pb系はんだ、Sn-Bi系はんだ、Sn-In系はんだ、Sn-Zn系はんだの共晶組成(重量%)は、それぞれ、Sn63%-Pb37%、Sn42%-Bi58%、Sn48%-In52%、Sn91%-Zn9%である。もっとも、所望の特性が得られるかぎり、はんだの組成は共晶組成でなくてもよい。はんだは、粒径0.1~100μmの粒子状であるのが好ましく、より好ましい粒径は3~100μm、さらに好ましくは3~50μm、特に好ましくは5~30μmである。特に、はんだは三次元ネットワークを構成し、三次元ネットワークにZn粒子及びZnO粒子が組み込まれている。こうすることで充放電の繰り返しに伴う導電助剤14の望ましくない移動を効果的に抑制でき、導電助剤14を所望の位置に効果的に保持することができる。はんだの三次元ネットワークははんだ粒子を溶融させて互いに結合させることにより形成することができる。なお、導電助剤14ははんだのみで構成されるのが好ましいが、負極10は上述の効果を損なわない程度において他の導電助剤を含んでいてもよい。
【0018】
負極活物質12、導電助剤14及び(負極10がバインダー樹脂を含む場合には)バインダー樹脂の合計容量に対する、はんだの含有割合は、5~60容量%であるのが好ましく、より好ましくは10~50容量%、さらに好ましくは20~40容量%である。なお、はんだの含有割合の算出においては、はんだの含有量としてははんだの金属成分量(換算値)を用いるものとする一方、バインダー樹脂の含有量はバインダー樹脂の固形分量(換算値)を用いるものとする。
【0019】
負極10はバインダー樹脂(図示せず)をさらに含んでいてもよい。負極10がバインダーを含むことで、負極形状を保持しやすくなる。バインダー樹脂は公知の様々なバインダーが使用可能であるが、好ましい例としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。PVA及びPTFEの両方を組み合わせてバインダーとして用いるのが特に好ましい。
【0020】
負極10はシート状のプレス成形体であるのが好ましい。こうすることで、負極活物質12の脱落防止や電極密度の向上を図ることができ、負極10の形態変化をより効果的に抑制することができる。かかるシート状のプレス成形体の作製は、負極材料にバインダーを加えて混練し、得られた混練物にロールプレス等のプレス成形を施してシート状に成形すればよい。
【0021】
負極10には集電体16が設けられるのが好ましい。集電体16の好ましい例としては、銅パンチングメタルや銅エキスパンドメタルが挙げられる。この場合、例えば、銅パンチングメタルや銅エキスパンドメタル上に、Zn粒子、ZnO粒子、はんだ、及び所望によりバインダー樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン粒子)を含む混合物を塗布して負極10/集電体16からなる負極板を好ましく作製することができる。その際、乾燥後の負極板(すなわち負極10/集電体16)にプレス処理を施して、負極活物質12の脱落防止や電極密度の向上を図ることも好ましい。あるいは、上述したようなシート状のプレス成形体を銅エキスパンドメタル等の集電体16に圧着してもよい。
【0022】
亜鉛二次電池
本発明の負極10は亜鉛二次電池に適用されるのが好ましい。したがって、本発明の好ましい態様によれば、正極(図示せず)と、負極10と、正極と負極10とを水酸化物イオン伝導可能に隔離するセパレータ20と、電解液18とを含む、亜鉛二次電池が提供される。本発明の亜鉛二次電池は、上述した負極10を用い、かつ、電解液18(典型的にはアルカリ金属水酸化物水溶液)を用いた二次電池であれば特に限定されない。したがって、ニッケル亜鉛二次電池、酸化銀亜鉛二次電池、酸化マンガン亜鉛二次電池、亜鉛空気二次電池、その他各種のアルカリ亜鉛二次電池であることができる。例えば、正極が水酸化ニッケル及び/又はオキシ水酸化ニッケルを含み、それにより亜鉛二次電池がニッケル亜鉛二次電池をなすのが好ましい。あるいは、正極が空気極であり、それにより亜鉛二次電池が亜鉛空気二次電池をなしてもよい。
【0023】
セパレータ20は層状複水酸化物(LDH)セパレータであるのが好ましい。すなわち、前述したように、ニッケル亜鉛二次電池や空気亜鉛二次電池の分野において、LDHセパレータが知られており(特許文献1~3を参照)、このLDHセパレータを本発明の亜鉛二次電池にも好ましく使用することができる。LDHセパレータは、水酸化物イオンを選択的に透過させながら、亜鉛デンドライトの貫通を阻止することができる。本発明の負極の採用による効果と相まって、亜鉛二次電池の耐久性をより一層向上することができる。
【0024】
LDHセパレータは、特許文献1~3に開示されるように多孔質基材と複合化されたものであってもよい。多孔質基材はセラミックス材料、金属材料、及び高分子材料のいずれで構成されてもよいが、高分子材料で構成されるのが特に好ましい。高分子多孔質基材には、1)フレキシブル性を有する(それ故薄くしても割れにくい)、2)気孔率を高くしやすい、3)伝導率を高くしやすい(気孔率を高めながら厚さを薄くできるため)、4)製造及びハンドリングしやすいといった利点がある。特に好ましい高分子材料は、耐熱水性、耐酸性及び耐アルカリ性に優れ、しかも低コストである点から、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンであり、最も好ましくはポリプロピレンである。多孔質基材が高分子材料で構成される場合、機能層が多孔質基材の厚さ方向の全域にわたって組み込まれている(例えば多孔質基材内部の大半又はほぼ全部の孔がLDHで埋まっている)のが特に好ましい。この場合における高分子多孔質基材の好ましい厚さは、5~200μmであり、より好ましくは5~100μm、さらに好ましくは5~30μmである。このような高分子多孔質基材として、リチウム電池用セパレータとして市販されているような微多孔膜を好ましく用いることができる。
【0025】
電解液18は、アルカリ金属水酸化物水溶液を含むのが好ましい。アルカリ金属水酸化物の例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム等が挙げられるが、水酸化カリウムがより好ましい。亜鉛含有材料の自己溶解を抑制するために、電解液中に酸化亜鉛、水酸化亜鉛等を添加してもよい。
【実施例
【0026】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0027】
例1~16
(1)正極の用意
ペースト式水酸化ニッケル正極(容量密度:約700mAh/cm)を用意した。
【0028】
(2)負極の作製
以下に示される各種原料粉末を用意した。
<負極活物質>
・ZnO粉末(正同化学工業株式会社製、JIS規格1種グレード、平均粒径D50:0.2μm)
・金属Zn粉末(三井金属鉱業株式会社製、Bi及びInがドープされたもの、Bi:1000重量ppm、In:1000重量ppm、平均粒径D50:50μm)
<導電助剤>
・表1に示される各種組成及び粒径のはんだ(粉末又はペースト)
<樹脂バインダー>
・ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散水溶液(ダイキン工業株式会社製、固形分60%)
【0029】
例1~15については、表1に示される配合割合(はんだは金属成分換算、PTFEは固形分換算)に従い、ZnO粉末に金属Zn粉末及びはんだを加え、さらにPTFEを添加して、プロピレングリコールと共に混練した。一方、例16については、表1に示される配合割合(はんだは金属成分換算、PTFEは固形分換算)に従い、ZnO粉末に金属Zn粉末を加え、さらにPTFEを添加して、プロピレングリコールと共に混練した。
【0030】
得られた混練物をロールプレスで圧延して、負極活物質シートを得た。負極活物質シートを、錫メッキが施された銅エキスパンドメタルに圧着した。はんだを添加した試料(例1~15)ははんだ成分に適した条件で熱処理を行って負極として用いる一方、はんだを添加していない試料(例16)は熱処理を行わずにそのまま負極として用いた。
【0031】
(3)電解液の作製
48%水酸化カリウム水溶液(関東化学株式会社製、特級)にイオン交換水を加えてKOH濃度を5.4mol%に調整した後、酸化亜鉛を0.42mol/L加熱攪拌により溶解させて、電解液を得た。
【0032】
(4)評価セルの作製
正極と負極の各々を不織布で包むとともに、電流取り出し端子を溶接した。こうして準備された正極及び負極を、LDHセパレータを介して対向させ、電流取り出し口が設けられたラミネートフィルムに挟んで、ラミネートフィルムの3辺を熱融着した。こうして得られた上部開放されたセル容器に電解液を加え、真空引き等により電解液を十分に正極及び負極に浸透させた。その後、ラミネートフィルムの残りの1辺も熱融着して、簡易密閉セルとした。
【0033】
(5)評価
充放電装置(東洋システム株式会社製、TOSCAT3100)を用いて、簡易密閉セルに対し、0.1C充電及び0.2C放電で化成を実施した。その後、1C充放電サイクルを実施した。同一条件で繰り返し充放電サイクルを実施し、試作電池の1サイクル目の放電容量の70%まで放電容量が低下するまでの充放電回数を記録した。各例の充放電回数を、例16における充放電回数を1.0とした場合の相対値として表1に示す。
【0034】
【表1】
【符号の説明】
【0035】
10,10’ 負極
12 負極活物質
14 導電助剤
16 集電体
18 電解液
20 セパレータ


図1
図2