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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】高所作業安全管理システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/02 20060101AFI20241002BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20241002BHJP
   G01C 5/00 20060101ALI20241002BHJP
   A62B 35/00 20060101ALN20241002BHJP
【FI】
G08B21/02
G08B25/04 K
G01C5/00 Z
A62B35/00 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020170248
(22)【出願日】2020-10-08
(65)【公開番号】P2022062324
(43)【公開日】2022-04-20
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】591080678
【氏名又は名称】株式会社中電工
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大地 秀二
(72)【発明者】
【氏名】加村 敦
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-093515(JP,A)
【文献】特開2019-178996(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0193799(US,A1)
【文献】特開2002-239021(JP,A)
【文献】特開2017-101942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 21/00-31/00
G01C 5/00
A62B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
安全帯を装着して高所作業を行う作業者を管理する高所作業安全管理システムにおいて、
前記安全帯のフックに設けられ、作業者の落下を防止する落下防止用部材に前記フックがかけられた状態であるか否かを検出するフック状態検出センサと、
作業者に装着され、作業者の周囲の大気圧を検出する作業者側大気圧センサと、
前記作業者側大気圧センサ及び前記フック状態検出センサを有する子機と、
前記作業者側大気圧センサとは別に構成されるとともに、作業者が高所にいるか否かの判定を行う際の基準となる基準高さに配置され、当該基準高さにおける大気圧を検出する基準大気圧センサと、
作業者による高所作業が不安全状態であることを報知する報知部と、
前記報知部を制御する制御部と
前記基準大気圧センサ及び前記制御部を有する親機とを備え、
前記子機には、前記作業者側大気圧センサから出力された大気圧の検出値と、前記フック状態検出センサの検出結果とを送信する子機側送信部が設けられ、
前記親機には、前記子機側送信部から送信された前記大気圧の検出値及び前記検出結果を受信する親機側受信部が設けられ、
前記親機は、前記高所作業安全管理システムの運用前に行われるシステム設定時における前記子機の前記作業者側大気圧センサの検出値と前記親機の前記基準大気圧センサの検出値との差である第1オフセット値を記憶する記憶部を備え、
前記第1オフセット値は、前記システム設定時に前記子機の前記作業者側大気圧センサの検出値から前記親機の前記基準大気圧センサの検出値を減算することによって得られた値であり、
前記制御部は、前記作業者側大気圧センサから出力された大気圧の検出値と、前記基準大気圧センサから出力された大気圧の検出値との差に基づいて、作業者が前記基準高さよりも所定以上高い高所にいるか否かを判定し、作業者が高所にいると判定し、かつ、前記フック状態検出センサにより、前記フックが前記落下防止用部材にかけられた状態でないことが検出された場合には、不安全状態であることを前記報知部に報知させるように構成され、前記判定時には、前記親機の前記基準大気圧センサの検出値から前記子機の前記作業者側大気圧センサの検出値と、前記記憶部に記憶された前記第1オフセット値と、所定の閾値とを減算して得られた値に基づいて作業者が高所にいるか否かを判定するように構成されていることを特徴とする高所作業安全管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の高所作業安全管理システムにおいて、
前記作業者側大気圧センサ及び前記フック状態検出センサは、前記フックに設けられていることを特徴とする高所作業安全管理システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の高所作業安全管理システムにおいて、
記報知部を有する管理者端末備え
前記親機には、前記制御部から出力される前記報知部の制御信号を送信する親機側送信部が設けられ、
前記管理者端末には、前記親機側送信部から送信された前記制御信号を受信する管理者側受信部が設けられていることを特徴とする高所作業安全管理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の高所作業安全管理システムにおいて、
前記子機は、第1子機及び第2子機を含んでおり、
前記第1子機及び第2子機は、単一の前記親機と通信可能に接続されていることを特徴とする高所作業安全管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば各種建築物の建築作業や維持管理、保守点検作業等で使用される高所作業安全管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、エレベーターの保守点検作業で使用される保守点検支援システムが開示されている。特許文献1の保守点検支援システムは、保守員が所持する携帯端末を備えており、この携帯端末には気圧センサが内蔵されている。この保守点検支援システムによれば、気圧センサが検出した大気圧の値と、予め設定されている基準階での大気圧の値との差によって携帯端末の位置と基準階との高度の差を求め、高度の差が所定の値以下であれば、乗りかごを基準階に移動させて表示装置に保守点検作業を実施することを予告するメッセージを表示装置に表示させるように構成されている。
【0003】
また、特許文献2には、高所作業推定装置が開示されている。この高所作業推定装置も、作業者が所持する携帯端末を備えている。携帯端末には、気圧センサと加速度センサが内蔵されている。高所作業推定装置は、気圧センサによって作業者の存在する場所の気圧の情報を示す気圧情報を取得し、取得した気圧情報と基準気圧との差分が所定の閾値を超過した場合、作業者が高所にいると判定し、閾値を超過しない場合、作業者は高所にいないと判定する。さらに、高所作業推定装置は、加速度センサで取得された加速度情報に基づいて作業者が作業を実施しているか否かを判定する。そして、作業者が高所におり、かつ、作業を実施している場合にのみ、携帯端末や監督者端末にアラートや振動等の警告が出力されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-165521号公報
【文献】特許第6684863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、各種建築物の建築作業や維持管理、保守点検作業等においては、高所作業が必要な場面が多く存在する。一般に、作業者は安全帯を身に付けているが、高所作業時にフックをかけていなければ万一の場合の墜落事故を未然に防止することはできない。
【0006】
この点、特許文献1では、保守員が所持する携帯端末に内蔵された気圧センサによって携帯端末の位置と基準階との高度の差を検出しているが、その検出結果は、単に乗りかごの移動や保守点検作業を実施することを予告するメッセージを表示装置に表示させる制御に使用されているだけであり、墜落事故を防止するために使用されるものではなかった。
【0007】
また、特許文献2では、作業者が高所におり、かつ、作業を実施している場合にのみ、警告を出力するので、安全帯のフックを手摺り等にかけて正しく高所作業を行っていても、いちいち警告が出力されることになり、警告が煩わしく感じることが考えられる。加えて、特許文献2では、作業者が動いていない場合には加速度が0になるので作業を行っていないと判定し、その結果、高所にいたとしても警告が出力されないことになる。しかしながら、作業者が作業を行っていなかったとしても高所にいれば安全帯のフックをかけておかなければならず、このような場合、特許文献2の装置では対応できなかった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高所作業時に安全帯のフックをかけ忘れないようにして高所作業が安全に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の発明は、安全帯を装着して高所作業を行う作業者を管理する高所作業安全管理システムにおいて、前記安全帯のフックに設けられ、作業者の落下を防止する落下防止用部材に前記フックがかけられた状態であるか否かを検出するフック状態検出センサと、作業者に装着され、作業者の周囲の大気圧を検出する作業者側大気圧センサと、前記作業者側大気圧センサとは別に構成されるとともに、作業者が高所にいるか否かの判定を行う際の基準となる基準高さに配置され、当該基準高さにおける大気圧を検出する基準大気圧センサと、作業者による高所作業が不安全状態であることを報知する報知部と、前記報知部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記作業者側大気圧センサから出力された大気圧の検出値と、前記基準大気圧センサから出力された大気圧の検出値との差に基づいて、作業者が前記基準高さよりも所定以上高い高所にいるか否かを判定し、作業者が高所にいると判定し、かつ、前記フック状態検出センサにより、前記フックが前記落下防止用部材にかけられた状態でないことが検出された場合には、不安全状態であることを前記報知部に報知させるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、安全帯を装着した作業者が高所(基準高さから例えば2m以上の所)にいると、作業者側大気圧センサから出力された大気圧の値が、基準高さに配置されている基準大気圧センサから出力された大気圧の値に比べて低くなり、制御部は、この差に基づいて、作業者が高所にいると判定できる。また、安全帯のフックが例えば手摺りやロープのような落下防止用部材にかけられた状態であるか否かが、フック状態検出センサにより検出される。作業者が高所にいながら、安全帯のフックを落下防止用部材にかけていない場合は、作業者による高所作業が不安全状態であると言える。この場合に、制御部は、作業者による高所作業が不安全状態であることを報知部に報知させ、例えば監督者や管理者等にそのことを知らせることができる。これにより、不安全状態を改めるように作業者に注意できる。また、不安全状態であることを報知部によって作業者自身に知らせることもでき、この場合も不安全状態を改めさせて安全に高所作業を行うことができる。
【0011】
第2の発明は、前記作業者側大気圧センサ及び前記フック状態検出センサは、前記フックに設けられていることを特徴とする。この構成によれば、作業者側大気圧センサとフック状態検出センサとをまとめることで、コンパクト化を図ることができる。
【0012】
第3の発明は、前記作業者側大気圧センサ及び前記フック状態検出センサを有する子機と、前記基準大気圧センサ及び前記制御部を有する親機と、前記報知部を有する管理者端末とを備え、前記子機には、前記作業者側大気圧センサから出力された大気圧の検出値と、前記フック状態検出センサの検出結果とを送信する子機側送信部が設けられ、前記親機には、前記子機側送信部から送信された前記大気圧の検出値及び前記検出結果を受信する親機側受信部と、前記制御部から出力される前記報知部の制御信号を出力する親機側送信部とが設けられ、前記管理者端末には、前記親機側送信部から送信された前記制御信号を受信する管理者側受信部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、親機を設置箇所に設置して固定しておくことで、子機の高さ変化を正確に検出できる。作業者が高所におり、かつ、フックが落下防止用部材にかけられていない場合には、そのことを管理者に報知することができる。これにより、不安全状態を改めるように作業者に対して的確に指示できる。
【0014】
第4の発明は、前記子機は、第1子機及び第2子機を含んでおり、前記第1子機及び第2子機は、単一の前記親機と通信可能に接続され、前記親機は、前記高所作業安全管理システムの運用前に行われる設定時における前記第1子機の前記作業者側大気圧センサの検出値と前記親機の前記基準大気圧センサの検出値との差である第1オフセット値と、システム設定時における前記第2子機の前記作業者側大気圧センサの検出値と前記親機の前記基準大気圧センサの検出値との差である第2オフセット値とを記憶する記憶部を備え、前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記第1オフセット値及び前記第2オフセット値を適用して、作業者が高所にいるか否かを判定するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、作業者側大気圧センサと基準大気圧センサとの差を用いて作業者が高所にいるか否かを判定することができるので、判定結果が正確なものになる。
【0016】
第5の発明は、前記第1オフセット値は、前記設定時に前記第1子機の前記作業者側大気圧センサの検出値から前記親機の前記基準大気圧センサの検出値を減算することによって得られた値であり、前記制御部は、前記親機の前記基準大気圧センサの検出値から前記第1子機の前記作業者側大気圧センサの検出値と、前記第1オフセット値と、所定の閾値とを減算して得られた値に基づいて作業者が高所にいるか否かを判定するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、作業者の周囲の大気圧と基準高さの大気圧との差に基づいて作業者が高所にいると判定することができ、この場合に、安全帯のフックが落下防止用部材にかけられた状態でない時、作業者による高所作業が不安全状態であることを周囲に報知することができるので、高所作業時に安全帯のフックをかけ忘れないようにして安全に高所作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る高所作業安全管理システムが使用される作業現場を示す図である。
図2】上記高所作業安全管理システムの概略構成図である。
図3】上記高所作業安全管理システムのブロック図である。
図4】1台の親機に複数の子機を接続した使用形態を説明する図である。
図5】複数の子機にそれぞれ親機を接続した使用形態を説明する図である。
図6】親機と子機が同一高さにある場合のオフセット値の算出手法を示す図である。
図7】親機と子機とをペアリングする場合のオフセット値の算出手法を示す図である。
図8】上記高所作業安全管理システムの運用時を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る高所作業安全管理システム1(図2及び図3に示す)が使用される作業現場を示す図である。作業現場は、例えば各種建築物の建築作業や維持管理、保守点検作業等が行われる現場である。建築作業の場合、屋内外の配管作業や配線作業等が含まれる。このような各種作業現場では、足場に上がっての作業、機械の上に登っての作業、高い作業台上での作業等、いわゆる高所作業が伴うことがある。高所作業とは、例えば床や地面の高さを基準高さとした場合、基準高さから例えば1.5mまたは2.0m以上高い所(所定以上高い所)での作業と定義することができ、労働安全衛生法の定義にしたがってもよい。
【0021】
図1に示すように、作業現場には、作業者Aが歩行したり、各種作業を行ったりするための作業床100と、落下防止用部材101とが設けられている。作業床100は、高所作業を行うための床であり、基準高さから所定以上高い所に配置されている。作業床100は、足場板で構成されていてもよいし、作業台で構成されていてもよい。落下防止用部材101は、作業者Aの作業床100からの落下を防止するための部材であり、例えば手摺りや横に張り渡されたロープ等を挙げることができるが、これらに限られるものではなく、各種構造物の一部であってもよい。
【0022】
作業者Aは、高所作業に備えて安全帯200を装着している。この実施形態では、安全帯200がフルハーネスタイプのものである場合について説明する。安全帯200は、作業者Aの腰に巻き付ける腰ベルト201、大腿部に巻き付ける脚ベルト202、腰ベルト201から肩まで延びる肩ベルト203と、腰ベルト201から左右にそれぞれ延びるロープ204の先端部に取り付けられたフック205とを備えている。尚、本発明は、フルハーネスタイプの安全帯200以外の安全帯、例えば脚ベルト202や肩ベルト203の無い安全帯にも適用することができる。また、フック205は、1つだけ設けられていてもよい。
【0023】
図2は、高所作業安全管理システム1の一構成例を示しており、高所作業安全管理システム1の概略構成図である。高所作業安全管理システム1は、作業者Aに装着される子機2と、子機2から離れて設置される親機3と、管理者端末4とを備えている。子機2と親機3とは、LPWA(Low Power Wide Area)の近距離無線通信によって通信可能に構成されている。また、親機3と管理者端末4とは、例えばインターネット回線やローカルエリアネットワーク回線等を介して接続することができるが、これもLPWAの近距離無線通信によって通信可能に構成されていてもよい。通信手段の詳細については後述する。
【0024】
高所作業安全管理システム1は、安全帯200を装着して高所作業を行う作業者Aを管理するシステムである。作業者Aの管理とは、作業者Aが不安全な高所作業を行っているか否かを判定し、安全であれば特に報知等することなく、作業を継続させ、不安全であれば例えば管理者や作業者A自身に報知し、不安全であることを知らせて改善させることである。本高所作業安全管理システム1を使用することで、作業者Aの管理が可能になる。以下、高所作業安全管理システム1の詳細について説明する。
【0025】
(子機2の構成)
子機2は、安全帯200に設けることができ、安全帯200と一体化することができる。図2に示す形態では、子機2がフック205に設けられていて、フック205と一体化されている。子機2は、フック205の基端部であるロープ204が連結される部分に内蔵することもできる。尚、子機2は、後述するフック状態検出センサ20以外の部分が安全帯200の腰ベルト201に取り付けられていてもよいし、安全帯200を介することなく、作業者Aに取り付けられていてもよい。作業者Aが複数人いる場合には、子機2が複数存在することになり、複数の子機2が高所作業安全管理システム1の一部を構成する。
【0026】
図3に示すように、子機2は、フック状態検出センサ20と、作業者側大気圧センサ21と、子機側送信部22と、子機側マイクロコンピュータ(子機側制御部)23と、電池24とを備えている。フック状態検出センサ20と、作業者側大気圧センサ21とは分離させることができ、作業者側大気圧センサ21は作業者Aのヘルメットに装着することもできる。
【0027】
図2に示すように、フック状態検出センサ20は、フック205の内周部、即ちフック205における落下防止用部材101(図1に示す)と接触する部分に設けられており、当該フック205が落下防止用部材101にかけられた状態であるか否かを検出するためのセンサである。フック205を落下防止用部材101にかけると、フック205の自重によってフック状態検出センサ20が落下防止用部材101に接触する。このフック状態検出センサ20は、落下防止用部材101との接触によって非導通状態(OFF状態)から導通状態(ON状態)に切り替わる周知のスイッチ等で構成することができる。また、フック状態検出センサ20は、所定以上の圧力が作用したことを検出する感圧センサ等で構成することもできる。フック状態検出センサ20から延びる信号線(図示せず)は子機側マイクロコンピュータ23に接続されている。
【0028】
作業者側大気圧センサ21、子機側送信部22、子機側マイクロコンピュータ23及び電池24のうち、全てまたは一部がフック205に内蔵されている。作業者側大気圧センサ21は、作業者Aに装着され、作業者Aの周囲の大気圧を検出するセンサであり、従来から周知の気圧センサで構成されている。この実施形態では、作業者側大気圧センサ21がフック205に内蔵されているが、フック205と作業者Aとは高さ方向にはそれほど大きく離れることはなく、一般的に作業者Aと略同じ高さにフック205が配置されることから、作業者側大気圧センサ21によって検出された大気圧は、作業者Aがいる高さの大気圧と等しくなる。作業者側大気圧センサ21を作業者Aのヘルメットや腰ベルト201等に設けてもよく、この場合も、作業者Aがいる高さの大気圧を作業者側大気圧センサ21によって検出できる。作業者側大気圧センサ21は、作業者Aの安全を考えた場合には大気圧の検出サイクルが短い方が好ましいが、電池24の消耗も考慮すると、例えば1秒に1回程度のサイクルで大気圧を検出し、検出値(大気圧値)を出力する。作業者側大気圧センサ21は、子機側マイクロコンピュータ23に接続されており、作業者側大気圧センサ21による検出値は子機側マイクロコンピュータ23に入力される。
【0029】
子機側送信部22は、作業者側大気圧センサ21から出力された大気圧の値と、フック状態検出センサ20の検出結果とを送信する部分である。子機側送信部22は、近距離無線通信が可能な通信モジュール等で構成されており、例えば従来から周知のLoRaモジュール、SigfoxモジュールやNB-IoTモジュール等の低電力広域ネットワークモジュールを利用することができる。
【0030】
子機側マイクロコンピュータ23は、子機側送信部22を制御する部分である。子機側マイクロコンピュータ23は、作業者側大気圧センサ21から入力された検出値が入力される都度、子機側送信部22へ出力し、検出値を子機側送信部22によって親機3に送信させる。また、子機側マイクロコンピュータ23は、フック状態検出センサ20の検出結果を子機側送信部22へ出力し、検出結果を子機側送信部22によって親機3に送信させる。フック状態検出センサ20の検出結果には、フック205が落下防止用部材101にかけられていないOFF状態と、フック205が落下防止用部材101にかけられているON状態とが含まれている。子機側送信部22から送信するフック状態検出センサ20の検出結果は、フック状態検出センサ20のON及びOFF信号であってもよいし、フック205が落下防止用部材101にかけられていないことを示す信号及びフック205が落下防止用部材101にかけられていることを示す信号であってもよい。
【0031】
電池24は、フック状態検出センサ20、作業者側大気圧センサ21、子機側送信部22及び子機側マイクロコンピュータ23に電力を供給するためのものである。電池24は、充電池であってもよいし、交換可能な乾電池であってもよい。
【0032】
(親機3の構成)
親機3は、例えば作業現場の床や地面、作業台の下側部分等、高さが変化しない所(設置位置)に設置される。1つの作業現場に1台の親機3が設置されてもよいし、複数台の親機3が設置されてもよい。例えば、複数階を有する建築物の場合、1つの階に1台の親機3を設置することができる。親機3は、高さ方向に移動しないように設置してあればよく、水平方向への移動は差し支えない。その理由は後述する高所の検出アルゴリズムによるものである。
【0033】
図4は、1台の親機3に第1子機2A、第2子機2B、第3子機2Cを接続した使用形態を説明する図である。この図に示すように、第1子機2Aは第1作業者A1に装着され、第2子機2Bは第2作業者A2に装着され、第3子機3Aは第3作業者A3に装着されている。子機2の数は3台に限られるものではなく、2台であってもよいし、4台以上であってもよい。つまり、子機2は複数台の子機2A、2B、2Cを含んでいてもよく、複数台の子機2A、2B、2Cは単一の親機3と通信可能に接続されている。
【0034】
また、本発明は図4に示す使用形態だけでなく、図5に示すように複数の子機2A、2B、2Bにそれぞれ親機3A、3B、3Cを接続した使用形態にも適用できる。この図に示すように、第1作業者A1に装着された第1子機2Aは、第1作業者A1が使用する作業床100の下側部分に固定された第1親機3Aに接続されており、また、第2作業者A2に装着された第2子機2Bは、第2作業者A2が使用する作業床100の下側部分に固定された第2親機3Bに接続されており、また、第3作業者A3に装着された第3子機2Cは、第3作業者A3が使用する作業床100の下側部分に固定された第3親機3Cに接続されている。子機2及び親機3のペアは、3つに限られるものではなく、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0035】
図3に示すように、親機3は、基準大気圧センサ30と、親機側受信部31と、親機側送信部32と、親機側マイクロコンピュータ(制御部)33と、記憶部34と、電池35とを備えている。電池35は、子機2の電池24と同じもので構成することができる。図2に示すように、基準大気圧センサ30、親機側受信部31、親機側送信部32、親機側マイクロコンピュータ33、記憶部34及び電池35は、1つの筐体36に収容して一体化することができるが、それらのうちの一部のみを筐体3Aに収容し、他を別の筐体(図示せず)に収容することもできる。
【0036】
図3に示すように、基準大気圧センサ30は、子機2の作業者側大気圧センサ21とは別に構成されるとともに、作業者Aが高所にいるか否かの判定を行う際の基準となる基準高さに設置され、当該基準高さにおける大気圧を検出するセンサである。基準大気圧センサ30自体は、作業者側大気圧センサ21を構成している気圧センサと同じもので構成することができる。基準大気圧センサ30は、親機3に設けられているので、作業者Aが作業を行っている時には、子機2の作業者側大気圧センサ21から離れて配置されることになり、子機2の作業者側大気圧センサ21とは異なる高さの大気圧を検出する。具体的には、親機3が高さの変化しない所に設置されるので、作業者Aの作業中、常に同じ高さ、例えば床や地面、作業台の高さの大気圧を検出し続ける。
【0037】
親機側受信部31は、子機側送信部22と通信可能な通信モジュールであり、具体的には子機側送信部22と同規格の通信モジュールで構成されている。親機側受信部31は、子機側送信部22から送信された大気圧の検出値、即ち子機2の作業者側大気圧センサ21で検出された大気圧の検出値を受信するとともに、フック状態検出センサ20の検出結果を受信する。
【0038】
親機側送信部32は、後述するが、親機側マイクロコンピュータ33から出力される制御信号を出力する部分である。親機側送信部32は、子機側送信部22と同様な通信モジュールで構成されていてもよいし、インターネット回線やローカルエリアネットワーク回線との無線通信が可能な通信モジュールで構成されていてもよい。
【0039】
親機側マイクロコンピュータ33は、後述する管理者端末4のスピーカ42や表示部40を遠隔制御する部分である。親機側マイクロコンピュータ33は、作業者側大気圧センサ21から出力された大気圧の検出値と、基準大気圧センサ30から出力された大気圧の検出値との差に基づいて、作業者Aが基準高さよりも所定以上高い高所にいるか否かを判定する高所判定部33aを備えている。高所判定部33aには、親機側受信部31で受信した作業者側大気圧センサ21の検出値と、基準大気圧センサ30の検出値とが入力される。さらに、高所判定部33aには、高所作業安全管理システム1の運用前に行われる設定時に検出された子機2の作業者側大気圧センサ21の検出値と、略同時に検出された基準大気圧センサ30の検出値との差であるオフセット値も入力される。
【0040】
すなわち、高所作業安全管理システム1の運用前には、高所作業安全管理システム1の設定が行われる。高所作業安全管理システム1の設定時には、まず、親機3を設置位置に設置し、子機2を作業者Aに装着し、子機2を装着した作業者Aを親機3の設置位置の高さと同じ高さに立たせる。尚、作業者Aの身長による基準高さとの差をオフセット値で吸収することができるので、同じ高さでなくてもよい。
【0041】
そして、作業者側大気圧センサ21と基準大気圧センサ30の検出値を親機側マイクロコンピュータ33に入力する。親機側マイクロコンピュータ33は、作業者側大気圧センサ21の検出値から基準大気圧センサ30の検出値を減算する。この減算処理によって得られた値がオフセット値である。つまり、作業者側大気圧センサ21と基準大気圧センサ30を同じ気圧センサで構成していても、バラつきが生じるのは避けられず、例えば同じ高さで同じタイミングで大気圧を検出しても検出値に差が出ることがある。また、作業者Aが装着している作業者側大気圧センサ21の高さは、作業者Aが親機3の設置位置の高さと同じ高さに立っていたとしても、基準大気圧センサ30よりも高い所に位置している場合がある。上記センサのバラつきによる高所判定部33aの判定誤差及び実際の作業者側大気圧センサ21の高さによる高所判定部33aの判定誤差が生じないようするするために、予めオフセット値を算出しておく。つまり、キャリブレーションによる高さ方向の原点補正を行う。算出されたオフセット値は、記憶部34に記憶させておく。記憶部34は、例えば半導体メモリやSSD(Solid State Drive)等で構成されており、データの記録、読み出しが可能になっている。
【0042】
図5に示す形態では、3台の親機3A、3B、3Cに対応して3台の子機2A、2B、2Cがあるので、親機3Aと子機2Aのオフセット値を親機3Aの記憶部34に記憶させておき、親機3Bと子機2Bのオフセット値を親機3Bの記憶部34に記憶させておき、親機3Cと子機2Cのオフセット値を親機3Cの記憶部34に記憶させておけばよい。
【0043】
一方、図4に示す形態では、子機2が複数台に対して親機3が1台であるため、オフセット値は、子機2毎に算出して記憶部34に記憶させておく。例えば図4に示すように、第1子機2A、第2子機2B、第3子機2Cが存在している場合、第1子機2Aの作業者側大気圧センサ21と親機3の基準大気圧センサ30との検出値の差である第1オフセット値と、第2子機2Bの作業者側大気圧センサ21と親機3の基準大気圧センサ30との検出値の差である第2オフセット値と、第3子機2Cの作業者側大気圧センサ21と親機3の基準大気圧センサ30との検出値の差である第3オフセット値とを記憶部34に記憶させる。子機2が4台以上ある場合には、その分、オフセット値が増えることになるが、記憶部34に記憶させておくことができる。
【0044】
図6は、子機2の作業者側大気圧センサ21と、親機3の基準大気圧センサ30とのオフセット値の算出例を示している。図6では、第1子機2A、第2子機2B及び第3子機2Cが単一の親機3に通信可能に接続される場合である。オフセット値を算出する場合、第1子機2A、第2子機2B、第3子機2C及び親機3は、略同一高さに配置しておき、略同じタイミングで大気圧を検出して得られた検出値を用いる。第1子機2Aの作業者側大気圧センサ21の検出値が10601.234paであり、親機3の基準大気圧センサ30の検出値が10625.678paであったとした場合、第1オフセット値は、作業者側大気圧センサ21の検出値から作業者側大気圧センサ21の検出値を減算した値、即ち、-24.444paとなる。同様の算出手法によって第2子機2Bと親機3とのオフセット値である第2オフセット値、第3子機2Cと親機3とのオフセット値である第3オフセット値も算出できる。これにより、大気圧センサ21、30間のキャリブレーションを実行できる。
【0045】
図7は、親機と子機とをペアリングする場合のオフセット値の算出例を示している。図7の場合、図6とは異なり、作業者Aに子機2が装着されている。この例でオフセット値を算出する場合、作業者Aが親機3と同じ高さの床面や地面に立った状態で、子機2及び親機3が略同じタイミングで大気圧を検出して得られた検出値を用いる。例えば子機2及び親機3にそれぞれペアリングスイッチ(図示せず)を設けておき、子機2及び親機3のペアリングスイッチが押された時点での作業者側大気圧センサ21の検出値と、基準大気圧センサ30の検出値を記憶しておく。同じ環境でペアリングする必要があるため、事前に登録しておくことはできない。
【0046】
例えば、子機2の作業者側大気圧センサ21の検出値が10607.234paであり、親機3の基準大気圧センサ30の検出値が10625.678paであったとした場合、オフセット値は、作業者側大気圧センサ21の検出値から作業者側大気圧センサ21の検出値を減算した値、即ち、-18.444paとなる。子機2が2台以上ある場合には、同様にして第2オフセット値、第3オフセット値を算出することができる。これにより、親機3と子機2のペアリングを行うことができる。
【0047】
高所判定部33aは、高所作業安全管理システム1の運用時に、記憶部34に記憶されたオフセット値を適用して、作業者が高所にいるか否かを判定するように構成されており、オフセット値が複数記憶されている場合には、例えば第1オフセット値、第2オフセット値、…をそれぞれ適用して、作業者が高所にいるか否かを判定する。
【0048】
具体的には、高所判定部33aは、親機3の基準大気圧センサ30の検出値から子機2の作業者側大気圧センサ21の検出値と、オフセット値と、所定の閾値とを減算して得られた値に基づいて作業者が高所にいるか否かを判定する。
【0049】
次に、図8に基づいて、高所作業安全管理システム1の運用時における高所判定部33aの判定について説明する。図8では、第1子機2A、第2子機2B及び第3子機2Cを単一の親機3に通信可能に接続して高所作業安全管理システム1を運用する場合を示している。親機3と第1子機2Aとの第1オフセット値は-18.444paであり、親機3と第2子機2Bとの第2オフセット値は-15.256paであり、親機3と第3子機2Cとの第3オフセット値は-16.856paである。この場合の第1~第3オフセット値は、図7に示すペアリングによって算出した値である。また、高所であるか否かを判定する高所しきい値は、2m以上の高さでの作業を高所と設定した場合、20.0paとなる。高所しきい値は、高所と判定する高さに応じて任意に設定することができる。また、高所作業安全管理システム1の運用時には、親機3は基準高さに設置されている。この親機3の基準大気圧センサ30の検出値は10611.234paであったとする。
【0050】
第1子機2Aを装着した作業者A1は基準高さに立っており、第1子機2Aの作業者側大気圧センサ21の検出値は10593.678paであったとする。この場合、高所判定部33aは次の演算を実行する。第1子機2Aの作業者側大気圧センサ21の検出値から親機3の基準大気圧センサ30の検出値と、第1オフセット値と、高所しきい値とを減算する。得られた値(Z)は20.888paとなる。高所判定部33aは、Z>0なので、作業者A1は高所と定義される所よりも低いところにいると判定する。
【0051】
また、第2子機2Bを装着した作業者A2は作業台の上に立っており、第2子機2Bの作業者側大気圧センサ21の検出値は10566.945paであったとする。この場合、高所判定部33aは次の演算を実行する。第2子機2Bの作業者側大気圧センサ21の検出値から親機3の基準大気圧センサ30の検出値と、第2オフセット値と、高所しきい値とを減算する。得られた値(Z)は-49.033paとなる。高所判定部33aは、Z<0なので、作業者A2は高所と定義される所にいると判定する。
【0052】
また、第3子機2Cを装着した作業者A3は昇降装置の上に立っており、第3子機2Cの作業者側大気圧センサ21の検出値は10480.678paであったとする。この場合、高所判定部33aは次の演算を実行する。第3子機2Cの作業者側大気圧センサ21の検出値から親機3の基準大気圧センサ30の検出値と、第3オフセット値と、高所しきい値とを減算した値(Z)が-127.7paとなる。高所判定部33aは、Z<0なので、作業者A3は高所と定義される所にいると判定する。
【0053】
尚、上記演算の結果、仮にZ=0となった場合、誤差も含み、基本的にはあり得ないので、高所判定部33aは親機3の方が子機2よりも低い位置にいると判定する。
【0054】
図3に示すように、親機側マイクロコンピュータ33は、制御信号生成部33bを備えている。制御信号生成部33bは、高所判定部33aによる判定の結果、作業者Aが高所にいると判定され、かつ、フック状態検出センサ20により、フック205が落下防止用部材101にかけられた状態でないことが検出された場合には、そのことを周囲に報知するための報知信号(制御信号の一例)を生成する。報知信号が生成されるということは、作業者Aが高所作業にいるのに、フック205を落下防止用部材101にかけていないということであり、作業者による高所作業が不安全状態であるといえる。つまり、制御信号生成部33bは、作業者による高所作業が不安全状態である場合に限り、報知信号を生成する。
【0055】
一方、制御信号生成部33bは、高所判定部33aによる判定の結果、作業者Aが高所にいないと判定された場合には、フック状態検出センサ20の検出結果にかかわらず、報知信号を生成しない。また、制御信号生成部33bは、フック状態検出センサ20により、フック205が落下防止用部材101にかけられた状態であると検出された場合には、高所判定部33aによる判定結果にかかわらず、報知信号を生成しない。制御信号生成部33bで生成された報知信号は、親機側送信部32から管理者端末4へ送信される。
【0056】
(管理者端末4の構成)
管理者端末4は、管理者が携帯する情報端末で構成されている。管理者端末4としては、例えばスマートフォン、タブレット型端末、ノート型パーソナルコンピュータ等を挙げることができるが、これらに限られるものではなく、例えばデスクトップ型パーソナルコンピュータで構成されていてもよい。管理者は、例えば作業現場を管理する者、監督する監督者等であり、必ずしも作業現場にいる必要はなく、例えば管理事務所等にいてもよい。
【0057】
管理者端末4は、表示部40と、操作部41と、スピーカ42と、管理者側受信部43と、管理者側マイクロコンピュータ(管理者側制御部)44と、電池45とを備えている。表示部40、操作部41及びスピーカ42は、管理者側マイクロコンピュータ44に接続されている。また、電池45は、子機2の電池24と同じもので構成することができる。
【0058】
表示部40は、管理者端末4の筐体46に設けられており、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等で構成されている。操作部41は、例えばタッチ操作可能な感圧式タッチパネルや、ボタン、スイッチ等で構成されている。感圧式タッチパネルの場合、表示部40と重ねて設けることができる。スピーカ42は、各種音声を発することができるものである。
【0059】
管理者側受信部43は、親機側送信部32と通信可能な通信モジュールであり、具体的には親機側送信部32と同規格の通信モジュールで構成されている。管理者側受信部43は、親機側送信部32から送信された報知信号を受信する。
【0060】
管理者側マイクロコンピュータ44は、操作部41の操作及び管理者側受信部43で受信された報知信号の入力を受け付けるとともに、表示部40及びスピーカ42を制御する部分である。具体的には、管理者側マイクロコンピュータ44は、管理者側受信部43で受信された報知信号の入力を受け付けると、作業者による高所作業が不安全状態であることを表示部40に報知させる。表示部40による報知例としては、表示部40に例えば「高所作業中にフックをかけていない」といった文章による表示形態や、不安全状態であることを示す記号やマークを表示する形態等を挙げることができる。また、管理者側マイクロコンピュータ44は、管理者側受信部43で受信された報知信号の入力を受け付けると、作業者による高所作業が不安全状態であることをスピーカ42に報知させる。スピーカ42による報知例としては、スピーカ42に例えば「高所作業中にフックをかけていない」といった音声による形態や、各種警報音(アラーム音)を発生させる形態等を挙げることができる。上記表示部40及びスピーカ42は、作業者による高所作業が不安全状態であることを報知する報知部の例である。表示部40及びスピーカ42の一方のみ設けられていてもよい。また、報知部は、例えば所定の振動を発生する振動発生器で構成されていてもよい。
【0061】
以上の構成により、親機側マイクロコンピュータ33が、作業者Aが高所にいると判定し、かつ、フック205が落下防止用部材101にかけられた状態でないことが検出された場合には、親機側送信部32が報知信号を管理者端末4に送信する。これにより、管理者端末4の表示部40及びスピーカ42を制御して、作業者Aが不安全状態であることを報知させることができる。
【0062】
報知部としての表示部40及びスピーカ42は、管理者端末4以外にも子機2に設けられていてもよい。図示しないが、子機2にスピーカや振動発生器を設けておき、親機側マイクロコンピュータ33が、作業者Aが高所にいると判定し、かつ、フック205が落下防止用部材101にかけられた状態でないことが検出された場合には、子機2に報知信号を送信し、これにより、スピーカや振動発生器によって作業者Aが不安全状態であることを報知することができる。
【0063】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態に係る高所作業安全管理システム1によれば、安全帯200を装着した作業者Aが高所にいると、作業者側大気圧センサ21から出力された大気圧の値が、基準大気圧センサ30から出力された大気圧の値に比べて低くなり、この大気圧の差に基づいて、高所判定部33aは作業者が高所にいると判定できる。また、安全帯200のフック205が落下防止用部材101にかけられた状態であるか否かが、フック状態検出センサ20により検出される。作業者Aが高所にいながら、安全帯200のフック205を落下防止用部材101にかけていない場合は、作業者Aによる高所作業が不安全状態であると言える。この場合に、作業者Aによる高所作業が不安全状態であることを表示部40やスピーカ42によって報知することができ、例えば監督者や管理者等にそのことを知らせることができる。これにより、不安全状態を改めるように作業者に注意できる。また、不安全状態であることを作業者A自身に知らせることもでき、この場合も不安全状態を改めさせて安全に高所作業を行うことができる。
【0064】
高所判定部33aが高所にいるか否かを判定する際に、作業者側大気圧センサ21と基準大気圧センサ30との検出値の差であるオフセット値を利用することで、判定結果が正確なものになる。
【0065】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上説明したように、本発明に係る高所作業安全管理システムは、例えば各種高所作業を行う作業現場で使用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 高所作業安全管理システム
2 子機
3 親機
4 管理者端末
20 フック状態検出センサ
21 作業者側大気圧センサ
22 子機側送信部
30 基準大気圧センサ
31 親機側受信部
32 親機側送信部
33 親機側マイクロコンピュータ(制御部)
33a 高所判定部
33b 信号生成部
40 表示部(報知部)
42 スピーカ(報知部)
100 作業床
101 落下防止用部材
200 安全帯
205 フック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8