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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
B41J2/17 207
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020171419
(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公開番号】P2022063079
(43)【公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土岐 宣浩
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 広弥
(72)【発明者】
【氏名】濱野 徹
(72)【発明者】
【氏名】武田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】亀山 文恵
(72)【発明者】
【氏名】島田 皓樹
(72)【発明者】
【氏名】麻田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】武永 健
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑典
(72)【発明者】
【氏名】荒木 裕太
(72)【発明者】
【氏名】丸山 泰司
(72)【発明者】
【氏名】松山 淳志
(72)【発明者】
【氏名】楢谷 友輔
(72)【発明者】
【氏名】田中 耕輔
(72)【発明者】
【氏名】松村 英明
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-192862(JP,A)
【文献】特開2014-088012(JP,A)
【文献】特開2013-086423(JP,A)
【文献】特開2003-312026(JP,A)
【文献】特開2012-140018(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0146417(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送方向に搬送する搬送手段と、
媒体に液体を吐出する吐出手段に対向して設けられ媒体を支持するプラテンと、
前記プラテンの下方に配置され、前記搬送方向と交差する交差方向において所定位置に向かって下方に傾斜する第1傾斜部と、
前記所定位置から前記搬送方向において下方に傾斜する第2傾斜部と、を備え、
前記第1傾斜部は、前記搬送方向において谷状の斜面を形成する両側壁を含む、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記第1傾斜部は、前記両側壁の両下縁部を接続するように設けられる底部を含む、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出装置であって、
前記底部は、矩形の溝状に形成される、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
記第1傾斜部を2つ備え
2つの前記第1傾斜部は、前記交差方向において共通の前記所定位置に向かって下方に傾斜する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
請求項に記載の液体吐出装置であって、
前記所定位置は、一方の前記第1傾斜部の前記両側壁の両下端部、及び他方の前記第1傾斜部の前記両側壁の両下端部に囲まれた領域に形成される、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
請求項に記載の液体吐出装置であって、
前記第2傾斜部は、廃液を収容する収容部へ向けて下方に傾斜する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
請求項に記載の液体吐出装置であって、
前記第2傾斜部は、底面が傾斜した溝形状に形成される、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の液体吐出装置であって、
前記所定位置は、前記搬送手段により搬送される媒体の前記交差方向の中央位置に配置される、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の液体吐出装置であって、
前記吐出手段から吐出され、媒体に着弾しなかった滴を吸収可能な、前記プラテンに下側から支持された第1吸収部材をさらに備え、
前記第1吸収部材に吸収された液体は、前記プラテンに形成された複数の開口を介して前記第1傾斜部へと流れる
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項10】
請求項に記載の液体吐出装置であって、
前記複数の開口は、前記第1傾斜部の上方に形成される、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項11】
請求項6~8のいずれか1項に記載の液体吐出装置であって、
前記収容部は、前記液体吐出装置の筐体に対して着脱可能である、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項12】
請求項11に記載の液体吐出装置であって、
前記収容部に収容され、液体を吸収可能な第2吸収部材をさらに備える、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項13】
請求項9又は10に記載の液体吐出装置であって、
前記第1吸収部材は、前記吐出手段のメンテナンス動作において前記吐出手段から吐出された液体を吸収する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の液体吐出装置であって、
前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部の少なくとも一部に撥水加工が施されている、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録装置等の液体吐出装置では、吐出ヘッドから吐出された液体の一部が媒体へ着弾しない場合がある。例えば、インクジェット記録装置では、いわゆる縁無し記録や記録ヘッドのメンテナンス時の予備吐出等の動作において、記録ヘッドから吐出されたインク滴の一部が記録媒体へ着弾しない場合がある。特許文献1には、記録媒体に滴下されなかったインク滴を回収する構成が開示されている。具体的には、第1の廃インク保持部材と第2の廃インク保持部材との間に配置された廃インク受け部に斜面を形成することで、インク滴を第2の廃インク保持部材に導くことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-86423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、斜面の角度を緩やかに設定すると、斜面に小さなインク滴が付着した場合に、重力の影響よりも表面張力の影響が大きくなってしまい、小さなインク滴が斜面下方へ移動できずに滞留してしまう場合がある。一方で、斜面の角度を急に設定すると、斜面の高さが高くなってしまい装置が高さ方向に大型化してしまう場合がある。
【0005】
本発明は、装置の大型化を抑制しつつ、媒体に着弾しなかった液体をより効果的に移動させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
媒体を搬送方向に搬送する搬送手段と、
媒体に液体を吐出する吐出手段に対向して設けられ媒体を支持するプラテンと、
前記プラテンの下方に配置され、前記搬送方向と交差する交差方向において所定位置に向かって下方に傾斜する第1傾斜部と、
前記所定位置から前記搬送方向において下方に傾斜する第2傾斜部と、を備え、
前記第1傾斜部は、前記搬送方向において谷状の斜面を形成する両側壁を含む、
ことを特徴とする液体吐出装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、装置の大型化を抑制しつつ、媒体に着弾しなかった液体をより効果的に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るインクジェット記録装置の内部構成を概略的に示す斜視図。
図2図1のインクジェット記録装置の側面断面図。
図3】廃液の回収を説明するための正面断面図。
図4】廃液の回収を説明するための側面断面図。
図5】廃液の回収を説明するための上面図。
図6】廃液の回収を説明するための分解図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
なお、この明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0011】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0012】
以下、媒体に液体を吐出可能な液体吐出装置の一例としてのインクジェット記録装置1について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
<インクジェット記録装置の概要(図1~2)>
図1は、一実施形態に係るインクジェット記録装置1(以下、記録装置1)内部構成を概略的に示す斜視図である。図2は、図1の記録装置1の側面の断面図である。
【0014】
記録装置1は、媒体としての記録媒体3に液体としてのインクを吐出して記録を行う装置である。記録装置1は、筐体10と、筐体10に設けられる給紙部21、搬送ローラ22、ピンチローラ23、プラテン24、記録ユニット40、排紙ローラ25及び拍車26と、を含む。
【0015】
給紙部21は、筐体10内に記録媒体3を給紙する。例えば、給紙部21は、記録媒体3を積載可能な給紙カセット211と、給紙カセット211に積載された記録媒体3を1枚ずつ筐体10内へ搬送する給紙ローラ212とを含む。
【0016】
搬送ローラ22及び搬送ローラ22に従動するピンチローラ23は、給紙ローラ212により搬送されてきた記録媒体3をさらに下流へと搬送する。搬送ローラ22及びピンチローラ23は互いに当接してニップ部を形成する。記録媒体3は、このニップ部に到達すると、搬送ローラ22の回転駆動とピンチローラ23の把持によりさらに搬送される。例えば、不図示の搬送モータの回転駆動力が不図示の搬送駆動列を介して搬送ローラ22に伝達されることで、搬送ローラ22は回転し記録媒体3は搬送される。
【0017】
プラテン24は、搬送ローラ22の搬送方向下流側において記録媒体3を下側で支持する。換言すれば、プラテン24は、記録媒体3の搬送経路を形成する。プラテン24は、記録ヘッド41のインク吐出面に対向して設けられている。また、プラテン24には、プラテン24上側のインク滴をプラテン24下側に通過させる複数の開口241が形成されている。
【0018】
また、本実施形態では、記録装置1は、プラテン24上に設けられる吸収部材5を含む(図3参照)。吸収部材5は、プラテン24に形成された開口241を覆うようにして、プラテン24に下側から支持されている。吸収部材5は、記録ヘッド41から吐出され、記録媒体3に着弾しなかったインク滴を吸収可能な部材である。例えば、吸収部材5は、いわゆる縁無し記録の際に記録媒体3の外側に吐出されたインク滴、又は記録ヘッド41のメンテナンス動作としての予備吐出時に記録ヘッド41から吐出されたインク滴等を吸収する。また例えば、吸収部材5は、インクの吸収透過性が良好なウレタンフォーム等、液体を吸収、保持可能な材料で構成されてもよい。
【0019】
吸収部材5に吸収されたインクは、プラテン24の開口241を介して流路形成部6へと滴下され、流路形成部6により形成された流路を通って廃液タンク8(収容部)へ移動する。これらの構成については<廃液の回収(図3~6)>にてより具体的に説明する。
【0020】
記録ユニット40は、記録媒体3に記録を行う。記録ユニット40は、記録媒体3にインクを吐出可能な記録ヘッド41と、記録ヘッド41を走査方向に往復移動可能なキャリッジ42とを含む。なお、走査方向は、記録媒体3の搬送方向と直交する方向である。記録ヘッド41は、例えば、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色のインクをそれぞれのノズル列から吐出し得る。なお、記録ヘッド41が吐出するインクの色数等は適宜設定可能である。キャリッジ42には、例えば、不図示のキャリッジモータの駆動力がタイミングベルト44を介して伝達される。駆動力が伝達されると、キャリッジ42は、キャリッジレール43によってガイドされながら、走査方向に往復移動する。なお、記録ヘッド41は、記録媒体3の幅に相当する領域にノズル列が配置されたラインヘッドであってもよい。
【0021】
搬送ローラ22及びピンチローラ23により記録媒体3が記録ヘッド41と対向する記録位置まで搬送されると、キャリッジ42が走査方向に移動している状態で記録ヘッド41がインクを吐出する。搬送ローラ22等による記録媒体3の搬送と記録ユニット40による記録動作の繰り返しにより、搬送方向に渡って記録媒体3に画像が記録される。
【0022】
ここで、記録媒体3に余白を残さず端部まで記録を行う場合、すなわち、いわゆる縁無し記録を行う場合には、記録媒体3の端部よりも用紙幅方向の外側に記録ヘッド41からインク滴が吐出されることになる。記録媒体3の外側に吐出されたインク滴は、前述した吸収部材5に吸収される。
【0023】
記録ユニット40により記録がなされた記録媒体3は、搬送ローラ22及びピンチローラ23により、プラテン24の搬送方向下流側に配置された排紙ローラ25及び拍車26へと搬送される。
【0024】
排紙ローラ25及び排紙ローラ25に従動する拍車26は、記録媒体3を筐体10の外部へと排出する。排紙ローラ25及び拍車26は、互いに当接してニップ部を形成する。記録媒体3は、このニップ部に到達すると、排紙ローラ25の回転駆動と拍車26の把持により筐体10の外部へと搬送される。例えば、不図示の搬送モータの回転駆動力が不図示の搬送駆動列を介して伝達されることで、排紙ローラ25は回転し記録媒体3は搬送される。排紙ローラ25の搬送方向下流側には排紙トレイ27が配置され、記録が終了した記録媒体3は、排紙トレイ27上へ排紙され積載される。
【0025】
<廃液の回収(図3~6)>
記録ヘッド41から吐出され、記録媒体3に着弾しなかったインク(以下、廃液或いは廃インクと表記する場合がある)の回収について説明する。図3は、廃液の回収を説明するための正面断面図である。図4は、廃液の回収を説明するための図3におけるA-A線で切断した側面断面図である。図5は、廃液の回収を説明するための上面図である。図6は、廃液の回収を説明する分解斜視図である。
【0026】
概略を述べると、記録媒体3に着弾しなかったインクは、廃インクとしてプラテン24に配置された吸収部材5に吸収される。その後、吸収部材5から染み出した廃インクが流路形成部6上に滴下され、流路形成部6により形成された流路を通って廃液を収容する廃液タンク8により回収される。以下、廃液の回収に関係する各構成について具体的に説明する。
【0027】
(吸収部材5及びプラテン24)
吸収部材5は、前述した通りプラテン24上に設けられている。吸収部材5は、廃インクを吸収する本体51と、本体51から鉛直方向下側へ延出する垂れ部52とを含む。本実施形態では、吸収部材5は、プラテン24の開口241を通過してプラテン24の下側まで延出するように設けられている。本体51が吸収した廃インクは、重力の作用により本体51より下側に設けられている垂れ部52に集まってくる。そして、垂れ部52のインク保持容量を超える量の廃インクが垂れ部52に集まると、垂れ部52の鉛直方向下側から廃インクが染み出し、鉛直方向下側へ廃インクが滴下される。すなわち、廃インクは、吸収部材5により、開口241を通ってプラテン24の上側から下側へと移動する。垂れ部52から滴下された廃インクは、プラテン24の下方に配置された流路形成部6に滴下される。さらに言えば、開口241は、後述する流路形成部6の傾斜部60の上方に形成されており、垂れ部52から滴下された廃インクは、傾斜部60に滴下される。
【0028】
なお、吸収部材5がプラテン24上に配置されない構成も採用可能である。この場合、プラテン24上に着弾した廃インクは、他の部位に対して鉛直方向下方に設けられた開口241に廃インクが導かれ、開口241を介して廃インクが鉛直方向下方へ滴下される。
【0029】
また、プラテン24の開口241は、廃インクの滴下を促進するため、縁無し記録時にインクが着弾しやすい記録媒体3の端部付近や、記録ヘッド41のメンテナンス動作時に予備吐出が行われる付近に設けられてもよい。また、垂れ部52及び開口241の数は適宜設定可能である。
【0030】
なお、プラテン24を介さずにインク滴が流路形成部6に直接供給される構成も採用可能である。また、プラテン24に流路形成部6が配置、或いはこれらが一体にされた構成も採用可能であり、その場合には廃インクが流路形成部6に直接滴下されてもよい。
【0031】
(流路形成部6)
流路形成部6は、記録ヘッド41から吐出され、記録媒体3に着弾しなかった液体の流路を画定する。流路形成部6は、例えば樹脂材料等により成形される。本実施形態では、流路形成部6はプラテン24の下方において筐体10の底部11と一体に形成されている。しかしながら、流路形成部6は筐体10とは別の部品によって形成され、筐体10に対して取り付けられてもよい。流路形成部6は、傾斜部60及び傾斜部73を含む。
【0032】
((傾斜部60))
傾斜部60は、液体であるインク滴を所定位置65へ向かわせる流路を画定するように、所定位置に向かって下方に傾斜する。本実施形態では、流路形成部6は、2つの傾斜部60a、60bを含む。以下、傾斜部60a、60bに共通する事項を説明する場合、これらをまとめて傾斜部60と表記する場合がある。また、傾斜部60a、60bの各構成要素についても同様とする。
【0033】
傾斜部60は、インク滴を所定位置65へ向かわせる流路として、流路600を画定する。また、本実施形態では、傾斜部60は、走査方向で記録装置1の外側から内側(中心)へ向かって下方に傾斜する。よって、流路600は、インク滴を走査方向の内側の所定位置65へと向かわせる。すなわち、流路600の流れ方向は、記録媒体3の搬送方向と直交する記録媒体3の幅方向の成分を含む。
【0034】
また、本実施形態では、傾斜部60は、流路600の幅方向で、谷状の斜面を形成する側壁61、62(両側壁)を含む。側壁61、62はそれぞれ、記録ユニット40の走査方向が長手方向となるように延びて配置されている。また、側壁61、62は、短手方向の傾斜によって谷状の斜面を形成する。なお、側壁61、62により形成される斜面の角度及び長さは適宜設定可能であり、それぞれ同じでもよいし、互いに異なっていてもよい。また、側壁61、62により形成される斜面の角度は、流路600の流れ方向、或いは幅方向に渡って一定でなく、変化していてもよい。また、側壁61、62により形成される斜面は1つの平面に限らず、複数の平面が接続して構成されていたり、曲面が含まれていたりしてもよい。また、本実施形態では、側壁61、62には全体に渡って斜面が形成されているが、側壁61、62は水平或いは垂直な面を形成する部分を含んでいてもよい。つまり、側壁61、62が形成する谷状の斜面の形状は限定されず、インク滴を流路600の幅方向内側に集められるように形成されていればよい。
【0035】
また、本実施形態では、傾斜部60は、側壁61、62の両下縁部を接続するように設けられる底部71を含む。底部71は、側壁61、62の長手方向に沿って走査方向に延びるように設けられている。本実施形態では、底部71は、矩形の溝状に形成される。なお、底部71が形成する溝の形状は限定されず、矩形の他、U字形、半円形等であってもよい。また、底部71は、溝を形成せずに側壁61、62の両下縁部を略水平に接続していてもよい。
【0036】
側壁61、62の構造について換言すれば、側壁61、62が形成する斜面の法線は、鉛直方向に対して傾きを有しているといえる。また、側壁61、62が形成する斜面を仮想的に延長させた場合にこれらが交差する点を結んだ線分は、水平方向に対して傾きを有しているといえる。
【0037】
ここで、前述した通り、本実施形態では流路形成部6は2つの傾斜部60a、60bを含む。傾斜部60aは、インク滴を所定位置65へ向かわせる流路600aを画定するように、所定位置65に向かって下方に傾斜する。また、傾斜部60bは、インク滴を所定位置65へ向かわせる流路600bを画定するように、所定位置65に向かって下方に傾斜する。すなわち、傾斜部60a、60bは、共通の所定位置65へインク滴を向かわせるように流路600a、600bをそれぞれ画定する。換言すれば、所定位置65は、所定位置65は、流路600aと流路600bとが合流地点であると言える。本実施形態では、流路600a、600bの合流地点である所定位置65は、記録装置1の、記録媒体3の幅方向の中央位置に配置される。また、所定位置65は、一方の傾斜部60aの側壁61a、62aの両下端部、及び他方の傾斜部60bの側壁61b、62bの両下端部に囲まれた領域に形成される。
【0038】
また、2つの傾斜部60a、60bは、所定位置65を挟んで互いに対向するように配置されている。より具体的には、傾斜部60a、60bは、それらが形成する流路600a、600bが所定位置65を走査方向に同一の直線上に画定されるように配置されている。これにより、傾斜部60を搬送方向に小型化することができる。
【0039】
また、傾斜部60aの側壁61a、62a及び傾斜部60bの側壁61b、62bは、これらが形成する斜面を仮想的に延長させた場合に略1点の交点で交わるように設けられている。また、側壁61a、62a、61b、62bは、それぞれが形成する斜面の鉛直方向の最も下側に近接した位置が交点となるように配置されている。
【0040】
(((傾斜部73))
傾斜部73は、流路形成部6は、所定位置65から廃液を収容する廃液タンク8へと液体を向かわせる流路730を画定するように、廃液タンク8に向かって下方に傾斜する。本実施形態では、傾斜部73は、底面が傾斜した溝形状に形成される。流路730を通過した廃インクは、流路730の下流側端部の排出部75から廃液タンク8へと導入される。なお、傾斜部73の溝形状は適宜設定可能である。
【0041】
また、本実施形態では、流路730の流れ方向が記録媒体3の搬送方向の成分を含むように、傾斜部73が形成されている。さらに言えば、傾斜部73は、流路730の流れ方向の水平成分が記録媒体3の搬送方向と平行になるように形成されている。このため、所定位置65に到達したインク滴を最短距離で廃液タンク8まで到達させることが可能になる。よって、傾斜部73を記録媒体3の搬送方向に短くでき、且つ傾斜部73の高さを低くできるので、装置サイズの小型化と廃液タンク8の大型化の両立が可能となる。また、流路形成部6の近くに廃液タンク8を配置することができる。
【0042】
((廃液タンク8))
廃液タンク8は、廃液(廃インク)を収容する。本実施形態では、廃液タンク8は、記録装置1の筐体10に対して着脱可能に設けられている。また、廃液タンク8には、液体を吸収可能な吸収部材81が収容されている。本実施形態では、廃液タンク8は、装置後方から脱着可能に配置しているので、吸収部材81の保持容量を超える廃インクを吸収させる前に容易に交換可能であり、廃インクの漏れなどを抑制でき、記録装置1の装置寿命の低下を抑制することができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば、傾斜部60は、側壁61、62により流路600の幅方向で谷状の斜面を形成する。これにより、例えば流路600の流れ方向に下方に傾斜した1つの斜面を形成する場合に比べて、各斜面の傾斜角度を大きくすることができる。したがって、廃インクが斜面を下りやすくなり、より効果的に廃インクを移動させることができる。また、流路600の幅方向に谷状の斜面が形成されることで、流路600の流れ方向の傾斜を緩やかにしても斜面自体の傾斜を確保できるので、流路形成部6が高さ方向に大きくなることを抑制でき、装置の大型化を抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態では、谷状の斜面により廃インクが流路600の幅方向中央側に集まるため、小さなインク滴が合体し大きなインク滴になりやすい。インク滴が大きいほど、インク滴をその場に留まらせようとする表面張力の影響度よりも、インク滴を斜面の下方に移動させようとする重力の影響度が大きくなるため、廃インクをより効果的に移動させることができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、廃インクをより効果的に移動させることで、廃インクが流路形成部6に滞留する時間が低減されるので、廃インクの漏れや記録媒体3への汚れの付着の発生を抑制することができる。具体的には、流路形成部6の斜面上に廃インクが滞留している状態で、運搬などのために記録装置1が傾けられてしまった場合に、流路形成部6に滞留しているインクが装置外装の隙間等から漏れ出してしまうことを抑制することができる。また、記録装置1が傾けられてしまった場合に、流路形成部6に滞留しているインクが搬送ローラ22等に付着することで記録媒体3を廃インクで汚してしまうことを抑制することができる。
【0046】
また、廃インクが斜面上に長時間滞留してしまうと、インク滴の水分が蒸発して斜面上で蒸発インクの残留成分が固まってしまい、次に排出された小さなインク滴も同じ場所で蒸発を繰り返すことで徐々に斜面上の廃インクの堆積物が溜まり、堆積物が記録媒体に付着してしまったり、装置外装の隙間などからインク堆積物が漏れだしたりする可能性があった。本実施形態によれば、側壁61、62により形成される谷状の斜面により廃インクがより移動しやすくなることで、廃インクが流路形成部6に滞留する時間が低減されるので、廃インクの堆積物の発生、堆積物の装置外への漏れ出し、及び堆積物の記録媒体3への付着を抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、側壁61、62の両下縁部を接続するように底部71が設けられており、底部71が溝状に形成されている。溝状の形状により、インク滴がより集まりやすくなる。よって、小さなインク滴が合体し大きいインク滴になりやすく、インク滴は重力の作用が大きくなることで底部71をより移動しやすくなる。
【0048】
また、本実施形態によれば、流路形成部6が2つの傾斜部60a、60bを含み、それらの流路600a、600bが流路形成部6の略中央に配置される。これにより、傾斜部60が1つの場合と比べて流路600を短くでき、各斜面の傾斜角度を確保しつつ流路形成部6の高さをより抑制することができる。また、幅方向に渡ってより広い範囲に流路600を形成できるので、吸収部材5の配置の自由度を確保することができる。
【0049】
<他の実施形態>
上記実施形態では、液体吐出装置として記録機能のみを有するプリンタであるインクジェット記録装置1を例示したが、液体吐出装置の他の例としては、コピー機能やファクシミリ機能等を有するマルチファンクションプリンタ等が挙げられる。また、液体吐出装置は、液体としてインクを吐出するものに限らず、基板に液体を吐出してインプリント処理を行うためのもの等であってもよい。
【0050】
また、流路形成部6の少なくとも一部にフッ素コート等の撥水加工が施される構成も採用可能である。これにより、撥水加工が施されない場合と比較して緩やかな斜面でも廃インクを重力で移動させやすくなり、斜面及び溝の高さを低くすることができ、装置サイズのさらなる小型化が可能になる。
【符号の説明】
【0051】
1 インクジェット記録装置、41 記録ヘッド、6 流路形成部、60 傾斜部、61 側壁、62 側壁
図1
図2
図3
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図5
図6