(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】電気化学反応セルスタック
(51)【国際特許分類】
H01M 8/2465 20160101AFI20241002BHJP
C25B 9/70 20210101ALI20241002BHJP
H01M 8/0273 20160101ALI20241002BHJP
H01M 8/2483 20160101ALI20241002BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20241002BHJP
【FI】
H01M8/2465
C25B9/70
H01M8/0273
H01M8/2483
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
(21)【出願番号】P 2020175267
(22)【出願日】2020-10-19
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪井 文雄
(72)【発明者】
【氏名】松尾 卓哉
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-020886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/24
H01M 8/12
C25B 9/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に並べて配置された複数の電気化学反応単位から構成される電気化学反応ブロックであって、各前記電気化学反応単位は、電解質層と、前記電解質層を挟んで前記第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む電気化学反応単セルと、前記第1の方向視において、前記電解質層と、前記空気極と、前記燃料極とが互いに重なる領域を取り囲むフレーム部分を有するガス流通部材であって、前記空気極と前記燃料極との少なくとも一方である特定電極に面するガス室に供給または前記ガス室から排出されるガスが通るマニホールドを構成するマニホールド用孔が前記フレーム部分に形成されたガス流通部材と、を有する、電気化学反応ブロックと、
前記電気化学反応ブロックを挟んで前記第1の方向に互いに対向する一対のエンド部材であって、前記第1の方向視で少なくとも一部が前記フレーム部分に重なるように配置された一対のエンド部材と、
を備える電気化学反応セルスタックにおいて、
前記第1の方向において、前記一対のエンド部材の少なくとも一方である特定エンド部材の表面のうちの前記電気化学反応ブロックとは反対側の表面である特定表面側に配置され、かつ、断熱性を有する第1の断熱部材、を備え、
前記第1の断熱部材は、前記第1の方向視において、前記電気化学反応セルスタックにおける、前記電気化学反応セルスタックの中心を含む内側部分の外側に位置しており、
前記第1の断熱部材と隣り合う前記内側部分は空洞である、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項2】
第1の方向に並べて配置された複数の電気化学反応単位から構成される電気化学反応ブロックであって、各前記電気化学反応単位は、電解質層と、前記電解質層を挟んで前記第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む電気化学反応単セルと、前記第1の方向視において、前記電解質層、前記空気極、及び前記燃料極が互いに重なる領域を取り囲むように配置されているフレーム部分を有するガス流通部材であって、前記空気極と前記燃料極との少なくとも一方である特定電極に面するガス室に供給または前記ガス室から排出されるガスが通るマニホールドを構成するマニホールド用孔が前記フレーム部分に形成されたガス流通部材と、を有する、電気化学反応ブロックと、
前記電気化学反応ブロックを挟んで前記第1の方向に互いに対向する一対のエンド部材であって、前記第1の方向視で少なくとも一部が前記フレーム部分に重なるように配置された一対のエンド部材と、
を備える電気化学反応セルスタックにおいて、
前記第1の方向において、前記一対のエンド部材の少なくとも一方である特定エンド部材の表面のうちの前記電気化学反応ブロックとは反対側の表面である特定表面側に配置され、かつ、前記第1の方向視において、前記電気化学反応セルスタックの中心を含む内側部分の外側に位置する第1の断熱部材であって、断熱性を有する第1の断熱部材と、
前記特定表面側に配置され、かつ、前記内側部分に位置する第2の断熱部材であって、断熱性を有する第2の断熱部材と、を備え、
前記第1の断熱部材の厚みは、前記第2の断熱部材の厚みと比較して大きい、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項3】
第1の方向に並べて配置された複数の電気化学反応単位から構成される電気化学反応ブロックであって、各前記電気化学反応単位は、電解質層と、前記電解質層を挟んで前記第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む電気化学反応単セルと、前記第1の方向視において、前記電解質層、前記空気極、及び前記燃料極が互いに重なる領域を取り囲むように配置されているフレーム部分を有するガス流通部材であって、前記空気極と前記燃料極との少なくとも一方である特定電極に面するガス室に供給または前記ガス室から排出されるガスが通るマニホールドを構成するマニホールド用孔が前記フレーム部分に形成されたガス流通部材と、を有する、電気化学反応ブロックと、
前記電気化学反応ブロックを挟んで前記第1の方向に互いに対向する一対のエンド部材であって、前記第1の方向視で少なくとも一部が前記フレーム部分に重なるように配置された一対のエンド部材と、
を備える電気化学反応セルスタックにおいて、
前記第1の方向において、前記一対のエンド部材の少なくとも一方である特定エンド部材の表面のうちの前記電気化学反応ブロックとは反対側の表面である特定表面側に配置され、かつ、前記第1の方向視において、前記電気化学反応セルスタックの中心を含む内側部分の外側に位置する第1の断熱部材であって、断熱性を有する第1の断熱部材と、
前記特定表面側に配置され、かつ、前記内側部分に位置する第2の断熱部材であって、断熱性を有する第2の断熱部材と、を備え、
前記第1の断熱部材の熱伝導率は、前記第2の断熱部材の熱伝導率と比較して小さい、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項4】
第1の方向に並べて配置された複数の電気化学反応単位から構成される電気化学反応ブロックであって、各前記電気化学反応単位は、電解質層と、前記電解質層を挟んで前記第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む電気化学反応単セルと、前記第1の方向視において、前記電解質層、前記空気極、及び前記燃料極が互いに重なる領域を取り囲むように配置されているフレーム部分を有するガス流通部材であって、前記空気極と前記燃料極との少なくとも一方である特定電極に面するガス室に供給または前記ガス室から排出されるガスが通るマニホールドを構成するマニホールド用孔が前記フレーム部分に形成されたガス流通部材と、を有する、電気化学反応ブロックと、
前記電気化学反応ブロックを挟んで前記第1の方向に互いに対向する一対のエンド部材であって、前記第1の方向視で少なくとも一部が前記フレーム部分に重なるように配置された一対のエンド部材と、
を備える電気化学反応セルスタックにおいて、
前記第1の方向において、前記一対のエンド部材の少なくとも一方である特定エンド部材の表面のうちの前記電気化学反応ブロックとは反対側の表面である特定表面側に配置され、かつ、前記第1の方向視において、前記電気化学反応セルスタックの中心を含む内側部分の外側に位置する第1の断熱部材であって、断熱性を有する第1の断熱部材と、
前記特定表面側に配置され、かつ、前記内側部分に位置する第2の断熱部材であって、断熱性を有する第2の断熱部材と、を備え、
前記第2の断熱部材には、前記第2の断熱部材における前記第1の方向に略直交する第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面との少なくとも一方に開口する貫通孔と有底孔との少なくとも一方が形成されている、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項5】
請求項1から
請求項4までのいずれか一項に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記第1の方向視において、前記第1の断熱部材は、前記内側部分を取り囲むように配置されている、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項6】
請求項1から
請求項5までのいずれか一項に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記第1の方向視において、前記第1の断熱部材の少なくとも一部分は、前記フレーム部分と重なっている、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項7】
請求項1から
請求項6のいずれか一項に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記フレーム部分には、前記マニホールド用孔として、
前記第1の方向視において、前記電気化学反応単セルを挟んで対向する第1の側と第2の側とにそれぞれ位置する2つの空気室用マニホールド用孔であって、それぞれ、前記空気極に面する空気室に供給または前記空気室から排出されるガスが通る2つの空気室用マニホールド用孔と、
前記第1の方向視において、前記第1の側と前記第2の側とにそれぞれ位置する2つの燃料室用マニホールド用孔であって、それぞれ、前記燃料極に面する燃料室に供給または前記燃料室から排出されるガスが通る2つの燃料室用マニホールド用孔と、を有し、
前記第1の方向視において、前記第1の断熱部材は、4つの辺を有する略矩形状の外縁を有し、
前記第1の断熱部材の外縁を構成する4つの辺のうち、前記2つの空気室用マニホールド用孔のうちの前記第1の側に位置する特定空気室用マニホールド用孔と、前記2つの燃料室用マニホールド用孔のうちの前記第1の側に位置する特定燃料室用マニホールド用孔と、の両方に最も近接する辺を第1の辺とし、
前記第1の断熱部材の外縁のうちの前記第1の辺に接続する辺を第2の辺とし、
前記第1の辺の一部を構成する第1の部分外縁と、前記第1の部分外縁に対向する前記第1の断熱部材の第1の部分内縁との間の最短距離を第1の幅とし、
前記第2の辺の一部を構成する第2の部分外縁と、前記第2の部分外縁に対向する前記第1の断熱部材の第2の部分内縁との間の最短距離を第2の幅としたとき、
前記第1の幅は、前記第2の幅と比較して大きい、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項8】
請求項1から
請求項7までのいずれか一項に記載の電気化学反応セルスタックにおいて、
前記特定表面に配置され、かつ、前記第1の方向視において、前記電気化学反応セルスタックの少なくとも中央に重なる領域に配置された伝熱部材であって、前記特定エンド部材の熱伝導率より高い熱伝導率を有する伝熱部材、を備える、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、電気化学反応セルスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の種類の1つとして、固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という)が知られている。SOFCの構成単位である燃料電池発電単位(以下、単に「発電単位」という)は、固体酸化物を含む電解質層と、電解質層を挟んで所定の方向(以下、「第1の方向」という)に互いに対向する空気極および燃料極とを含む燃料電池単セル(以下、単に「単セル」という)を有している。
【0003】
SOFCは、一般に、複数の発電単位を第1の方向に並べて配置された構造体(以下、「発電ブロック」という)と、発電ブロックを挟んで第1の方向に互いに対向する一対のエンド部材とを備える燃料電池スタックの形態で利用される。
【0004】
このような燃料電池スタックの発電ブロックとして、さらに、電解質層と、空気極と、燃料極とが互いに重なる領域を取り囲むフレーム部分を有するガス流通部材を備える発電ブロックが知られている。当該フレーム部分には、空気極に面する空気室および燃料極に面する燃料室に供給または排出されるガスが通るマニホールドを構成するマニホールド用孔が形成されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃料電池スタックの発電時において、上記発電単位における発電反応は発熱反応であるため、第1の方向視において、燃料電池スタックの中央部分は、燃料電池スタックにおけるマニホールドに近い部分と比較して比較的高温になる傾向がある。これにより、単セルの面内における温度分布がばらつき、当該温度分布のバラツキにより生じる熱応力によって単セルが劣化し、または、単セルの発電効率が低下するなどの問題が生じるおそれがある。
【0007】
なお、このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」という。)の構成単位である電解単セルを複数備える電解セルスタックにも共通の課題である。なお、本明細書では、燃料電池単セルと電解単セルとをまとめて電気化学反応単セルと呼び、燃料電池スタックと電解セルスタックとをまとめて電気化学反応セルスタックと呼ぶ。また、このような課題は、SOFCやSOECに限らず、他のタイプの電気化学反応セルスタックにも共通の課題である。
【0008】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本明細書に開示される電気化学反応セルスタックは、第1の方向に並べて配置された複数の電気化学反応単位から構成される電気化学反応ブロックであって、各前記電気化学反応単位は、電解質層と、前記電解質層を挟んで前記第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む電気化学反応単セルと、前記第1の方向視において、前記電解質層と、前記空気極と、前記燃料極とが互いに重なる領域を取り囲むフレーム部分を有するガス流通部材であって、前記空気極と前記燃料極との少なくとも一方である特定電極に面するガス室に供給または前記ガス室から排出されるガスが通るマニホールドを構成するマニホールド用孔が前記フレーム部分に形成されたガス流通部材と、を有する、電気化学反応ブロックと、前記電気化学反応ブロックを挟んで前記第1の方向に互いに対向する一対のエンド部材であって、前記第1の方向視で少なくとも一部が前記フレーム部分に重なるように配置された一対のエンド部材と、を備える電気化学反応セルスタックにおいて、前記第1の方向において、前記一対のエンド部材の少なくとも一方である特定エンド部材の表面のうちの前記電気化学反応ブロックとは反対側の表面である特定表面に配置され、かつ、断熱性を有する第1の断熱部材、を備え、前記第1の断熱部材は、前記第1の方向視において、前記電気化学反応セルスタックにおける、前記電気化学反応セルスタックの中心を含む内側部分の外側に位置しており、前記第1の断熱部材と隣り合う前記内側部分は空洞である。本電気化学反応セルスタックでは、第1の断熱部材が、上記特定エンド部材の特定表面に配置されている。第1の方向視において、第1の断熱部材は、電気化学反応セルスタックにおける上記内側部分の外側に位置している。また、当該内側部分は、空洞である。換言すれば、第1の断熱部材の断熱性能は、空洞である内側部分の断熱性能と比較して高い。このため、第1の方向視において、比較的低温になりやすい電気化学反応セルスタックにおけるマニホールドに近い部分(第1の断熱部材に重なる部分)からの放熱を抑制しつつ、比較的高温になりやすい電気化学反応セルスタックの中央部分(内側部分に重なる部分)からの放熱を容易にすることができる。従って、本電気化学反応セルスタックによれば、電気化学反応単セルの面内における温度分布のバラツキを抑制し、ひいては、電気化学反応単セルの劣化や、電気化学反応単セルの発電効率の低下を抑制することができる。
【0011】
(2)本明細書に開示される電気化学反応セルスタックは、第1の方向に並べて配置された複数の電気化学反応単位から構成される電気化学反応ブロックであって、各前記電気化学反応単位は、電解質層と、前記電解質層を挟んで前記第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む電気化学反応単セルと、前記第1の方向視において、前記電解質層、前記空気極、及び前記燃料極が互いに重なる領域を取り囲むように配置されているフレーム部分を有するガス流通部材であって、前記空気極と前記燃料極との少なくとも一方である特定電極に面するガス室に供給または前記ガス室から排出されるガスが通るマニホールドを構成するマニホールド用孔が前記フレーム部分に形成されたガス流通部材と、を有する、電気化学反応ブロックと、前記電気化学反応ブロックを挟んで前記第1の方向に互いに対向する一対のエンド部材であって、前記第1の方向視で少なくとも一部が前記フレーム部分に重なるように配置された一対のエンド部材と、を備える電気化学反応セルスタックにおいて、前記第1の方向において、前記一対のエンド部材の少なくとも一方である特定エンド部材の表面のうちの前記電気化学反応ブロックとは反対側の表面である特定表面側に配置され、かつ、前記第1の方向視において、前記電気化学反応セルスタックの中心を含む内側部分の外側に位置する第1の断熱部材であって、断熱性を有する第1の断熱部材と、前記特定表面側に配置され、かつ、前記内側部分に位置する第2の断熱部材であって、断熱性を有する第2の断熱部材と、を備え、前記第1の断熱部材の厚みは、前記第2の断熱部材の厚みと比較して大きい。本電気化学反応セルスタックによれば、第1の断熱部材と、第2の断熱部材とが、上記特定エンド部材の特定表面側に配置されている。第1の方向視において、第1の断熱部材は、電気化学反応セルスタックにおける上記内側部分の外側に位置し、第2の断熱部材は、当該内側部分に位置している。また、第1の断熱部材の厚みは、第2の断熱部材の厚みと比較して大きい。換言すれば、例えば、第1の断熱部材の形成材料における熱伝導率と、第2の断熱部材の形成材料における熱伝導率とが同等である、または、第1の断熱部材の形成材料における熱伝導率が、第2の断熱部材の形成材料における熱伝導率よりも小さい構成において、第1の断熱部材の断熱性能は、第2の断熱部材の断熱性能と比較して高い。このため、第1の方向視において、比較的低温になりやすい電気化学反応セルスタックにおけるマニホールドに近い部分(第1の断熱部材に重なる部分)からの放熱を抑制しつつ、比較的高温になりやすい電気化学反応セルスタックの中央部分(第2の断熱部材に重なる部分)からの放熱を容易にすることができる。従って、本電気化学反応セルスタックによれば、電気化学反応単セルの面内における温度分布のバラツキを抑制し、ひいては、電気化学反応単セルの劣化や、電気化学反応単セルの発電効率の低下を抑制することができる。
【0012】
(3)本明細書に開示される電気化学反応セルスタックは、第1の方向に並べて配置された複数の電気化学反応単位から構成される電気化学反応ブロックであって、各前記電気化学反応単位は、電解質層と、前記電解質層を挟んで前記第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む電気化学反応単セルと、前記第1の方向視において、前記電解質層、前記空気極、及び前記燃料極が互いに重なる領域を取り囲むように配置されているフレーム部分を有するガス流通部材であって、前記空気極と前記燃料極との少なくとも一方である特定電極に面するガス室に供給または前記ガス室から排出されるガスが通るマニホールドを構成するマニホールド用孔が前記フレーム部分に形成されたガス流通部材と、を有する、電気化学反応ブロックと、前記電気化学反応ブロックを挟んで前記第1の方向に互いに対向する一対のエンド部材であって、前記第1の方向視で少なくとも一部が前記フレーム部分に重なるように配置された一対のエンド部材と、を備える電気化学反応セルスタックにおいて、前記第1の方向において、前記一対のエンド部材の少なくとも一方である特定エンド部材の表面のうちの前記電気化学反応ブロックとは反対側の表面である特定表面側に配置され、かつ、前記第1の方向視において、前記電気化学反応セルスタックの中心を含む内側部分の外側に位置する第1の断熱部材であって、断熱性を有する第1の断熱部材と、前記特定表面側に配置され、かつ、前記内側部分に位置する第2の断熱部材であって、断熱性を有する第2の断熱部材と、を備え、前記第1の断熱部材の熱伝導率は、前記第2の断熱部材の熱伝導率と比較して小さい。本電気化学反応セルスタックによれば、第1の断熱部材と、第2の断熱部材とが、上記特定エンド部材の特定表面側に配置されている。第1の方向視において、第1の断熱部材は、電気化学反応セルスタックにおける上記内側部分の外側に位置し、第2の断熱部材は、当該内側部分に位置している。また、第1の断熱部材の熱伝導率は、第2の断熱部材の熱伝導率と比較して小さい。換言すれば、例えば、第1の断熱部材の厚みと、第2の断熱部材の厚みとが同等である、または、第1の断熱部材の厚みが、第2の断熱部材の厚みよりも大きい構成において、第1の断熱部材の断熱性能は、第2の断熱部材の断熱性能と比較して高い。このため、第1の方向視において、比較的低温になりやすい電気化学反応セルスタックにおけるマニホールドに近い部分(第1の断熱部材に重なる部分)からの放熱を抑制しつつ、比較的高温になりやすい電気化学反応セルスタックの中央部分(第2の断熱部材に重なる部分)からの放熱を容易にすることができる。従って、本電気化学反応セルスタックによれば、電気化学反応単セルの面内における温度分布のバラツキを抑制し、ひいては、電気化学反応単セルの劣化や、電気化学反応単セルの発電効率の低下を抑制することができる。
【0013】
(4)本明細書に開示される電気化学反応セルスタックは、第1の方向に並べて配置された複数の電気化学反応単位から構成される電気化学反応ブロックであって、各前記電気化学反応単位は、電解質層と、前記電解質層を挟んで前記第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む電気化学反応単セルと、前記第1の方向視において、前記電解質層、前記空気極、及び前記燃料極が互いに重なる領域を取り囲むように配置されているフレーム部分を有するガス流通部材であって、前記空気極と前記燃料極との少なくとも一方である特定電極に面するガス室に供給または前記ガス室から排出されるガスが通るマニホールドを構成するマニホールド用孔が前記フレーム部分に形成されたガス流通部材と、を有する、電気化学反応ブロックと、前記電気化学反応ブロックを挟んで前記第1の方向に互いに対向する一対のエンド部材であって、前記第1の方向視で少なくとも一部が前記フレーム部分に重なるように配置された一対のエンド部材と、を備える電気化学反応セルスタックにおいて、前記第1の方向において、前記一対のエンド部材の少なくとも一方である特定エンド部材の表面のうちの前記電気化学反応ブロックとは反対側の表面である特定表面側に配置され、かつ、前記第1の方向視において、前記電気化学反応セルスタックの中心を含む内側部分の外側に位置する第1の断熱部材であって、断熱性を有する第1の断熱部材と、前記特定表面側に配置され、かつ、前記内側部分に位置する第2の断熱部材であって、断熱性を有する第2の断熱部材と、を備え、前記第1の断熱部材の密度は、前記第2の断熱部材の密度と比較して大きい。本電気化学反応セルスタックによれば、第1の断熱部材と、第2の断熱部材とが、上記特定エンド部材の特定表面側に配置されている。第1の方向視において、第1の断熱部材は、電気化学反応セルスタックにおける上記内側部分の外側に位置し、第2の断熱部材は、当該内側部分に位置している。また、第1の断熱部材の密度は、第2の断熱部材の密度と比較して大きい。換言すれば、例えば、第1の断熱部材の厚みと、第2の断熱部材の厚みとが同等である構成において、第1の断熱部材の断熱性能は、第2の断熱部材の断熱性能と比較して高い。このため、第1の方向視において、比較的低温になりやすい電気化学反応セルスタックにおけるマニホールドに近い部分(第1の断熱部材に重なる部分)からの放熱を抑制しつつ、比較的高温になりやすい電気化学反応セルスタックの中央部分(第2の断熱部材に重なる部分)からの放熱を容易にすることができる。従って、本電気化学反応セルスタックによれば、電気化学反応単セルの面内における温度分布のバラツキを抑制し、ひいては、電気化学反応単セルの劣化や、電気化学反応単セルの発電効率の低下を抑制することができる。
【0014】
(5)本明細書に開示される電気化学反応セルスタックは、第1の方向に並べて配置された複数の電気化学反応単位から構成される電気化学反応ブロックであって、各前記電気化学反応単位は、電解質層と、前記電解質層を挟んで前記第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む電気化学反応単セルと、前記第1の方向視において、前記電解質層、前記空気極、及び前記燃料極が互いに重なる領域を取り囲むように配置されているフレーム部分を有するガス流通部材であって、前記空気極と前記燃料極との少なくとも一方である特定電極に面するガス室に供給または前記ガス室から排出されるガスが通るマニホールドを構成するマニホールド用孔が前記フレーム部分に形成されたガス流通部材と、を有する、電気化学反応ブロックと、前記電気化学反応ブロックを挟んで前記第1の方向に互いに対向する一対のエンド部材であって、前記第1の方向視で少なくとも一部が前記フレーム部分に重なるように配置された一対のエンド部材と、を備える電気化学反応セルスタックにおいて、前記第1の方向において、前記一対のエンド部材の少なくとも一方である特定エンド部材の表面のうちの前記電気化学反応ブロックとは反対側の表面である特定表面側に配置され、かつ、前記第1の方向視において、前記電気化学反応セルスタックの中心を含む内側部分の外側に位置する第1の断熱部材であって、断熱性を有する第1の断熱部材と、前記特定表面側に配置され、かつ、前記内側部分に位置する第2の断熱部材であって、断熱性を有する第2の断熱部材と、を備え、前記第2の断熱部材には、前記第2の断熱部材における前記第1の方向に略直交する第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面との少なくとも一方に開口する貫通孔と有底孔との少なくとも一方が形成されている。内側断熱部材には貫通孔または有底孔があるため、内側断熱部材における単位体積当たりの断熱材充填率が、外側断熱部材における単位体積当たりの断熱材充填率と比較して、低くなる。このため、第1の方向視において、比較的低温になりやすい電気化学反応セルスタックにおけるマニホールドに近い部分(第1の断熱部材に重なる部分)からの放熱を抑制しつつ、比較的高温になりやすい電気化学反応セルスタックの中央部分(第2の断熱部材に重なる部分)からの放熱を容易にすることができる。従って、本電気化学反応セルスタックによれば、電気化学反応単セルの面内における温度分布のバラツキを抑制し、ひいては、電気化学反応単セルの劣化や、電気化学反応単セルの発電効率の低下を抑制することができる。
【0015】
(6)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記第1の方向視において、前記第1の断熱部材は、前記内側部分を取り囲むように配置されている構成としてもよい。本構成が採用された電気化学反応セルスタックでは、第1の方向視において、第1の断熱部材は、内側部分を取り囲むように配置されている。このため、第1の方向視において、比較的高温になりやすい電気化学反応セルスタックの中央部分(内側部分に重なる部分)からの放熱を容易にしつつ、比較的低温になりやすい電気化学反応セルスタックにおけるマニホールドに近い部分(第1の断熱部材に重なる部分)からの放熱をより効果的に抑制させることができる。従って、本電気化学反応セルスタックによれば、電気化学反応単セルの面内における温度分布のバラツキをより効果的に抑制し、ひいては、電気化学反応単セルの劣化や、電気化学反応単セルの発電効率の低下をより効果的に抑制することができる。
【0016】
(7)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記第1の方向視において、前記第1の断熱部材の少なくとも一部分は、前記フレーム部分と重なっている構成としてもよい。本構成が採用された電気化学反応セルスタックでは、第1の方向視において、第1の断熱部材の少なくとも一部分が、ガス流通部材のフレーム部分と重なっている。このため、第1の方向視において、比較的低温になりやすい電気化学反応セルスタックにおけるフレーム部分に重なる部分からの放熱をより効果的に抑制させることができる。従って、本電気化学反応セルスタックによれば、電気化学反応単セルの面内における温度分布のバラツキをより効果的に抑制し、ひいては、電気化学反応単セルの劣化や、電気化学反応単セルの発電効率の低下をより効果的に抑制することができる。
【0017】
(8)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記フレーム部分には、前記マニホールド用孔として、前記第1の方向視において、前記電気化学反応単セルを挟んで対向する第1の側と第2の側とにそれぞれ位置する2つの空気室用マニホールド用孔であって、それぞれ、前記空気極に面する空気室に供給または前記空気室から排出されるガスが通る2つの空気室用マニホールド用孔と、前記第1の方向視において、前記第1の側と前記第2の側とにそれぞれ位置する2つの燃料室用マニホールド用孔であって、それぞれ、前記燃料極に面する燃料室に供給または前記燃料室から排出されるガスが通る2つの燃料室用マニホールド用孔と、を有し、前記第1の方向視において、前記第1の断熱部材は、4つの辺を有する略矩形状の外縁を有し、前記第1の断熱部材の外縁を構成する4つの辺のうち、前記2つの空気室用マニホールド用孔のうちの前記第1の側に位置する特定空気室用マニホールド用孔と、前記2つの燃料室用マニホールド用孔のうちの前記第1の側に位置する特定燃料室用マニホールド用孔と、の両方に最も近接する辺を第1の辺とし、前記第1の断熱部材の外縁のうちの前記第1の辺に接続する辺を第2の辺とし、前記第1の辺の一部を構成する第1の部分外縁と、前記第1の部分外縁に対向する前記第1の断熱部材の第1の部分内縁との間の最短距離を第1の幅とし、前記第2の辺の一部を構成する第2の部分外縁と、前記第2の部分外縁に対向する前記第1の断熱部材の第2の部分内縁との間の最短距離を第2の幅としたとき、前記第1の幅は、前記第2の幅と比較して大きい構成としてもよい。本構成が採用された電気化学反応セルスタックでは、第1の断熱部材における上記第1の幅が、上記第2の幅と比較して大きい。このため、第1の方向視において、比較的低温になりやすい電気化学反応セルスタックにおけるマニホールドに近い部分における断熱性能をより効果的に高め、マニホールドに近い部分からの放熱をより効果的に抑制させることができる。従って、本電気化学反応セルスタックによれば、電気化学反応単セルの面内における温度分布のバラツキをより効果的に抑制し、ひいては、電気化学反応単セルの劣化や、電気化学反応単セルの発電効率の低下をより効果的に抑制することができる。
【0018】
(9)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記特定表面に配置され、かつ、前記第1の方向視において、前記電気化学反応セルスタックの少なくとも中央に重なる領域に配置された伝熱部材であって、前記特定エンド部材の熱伝導率より高い熱伝導率を有する伝熱部材、を備える構成としてもよい。本構成が採用された電気化学反応セルスタックでは、第1の方向視において、特定エンド部材の特定表面における、電気化学反応セルスタックの少なくとも中央に重なる領域に伝熱部材が配置されている。また、当該伝熱部材の熱伝導率は、特定エンド部材の熱伝導率より高い。このため、第1の方向視において、比較的高温になりやすい電気化学反応セルスタックの中央の発熱を、特定エンド部材を介して伝熱部材へと熱伝導させ、さらには、当該熱を伝熱部材の内部に拡散させることができる。従って、本電気化学反応セルスタックによれば、電気化学反応単セルの面内における温度分布のバラツキをより効果的に抑制し、ひいては、電気化学反応単セルの劣化や、電気化学反応単セルの発電効率の低下をより効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図
【
図2】
図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図
【
図3】
図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図
【
図4】
図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図
【
図5】
図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図
【
図6】
図2のVI-VIの位置における断熱部材60のXY断面構成を示す説明図
【
図7】第2実施形態における燃料電池スタック100AのXZ断面構成を示す説明図
【
図8】第2実施形態における断熱部材60AのXY断面構成を示す説明図
【
図9】第3実施形態における燃料電池スタック100BのXZ断面構成を示す説明図
【
図10】第3実施形態における断熱部材60BのXY断面構成を示す説明図
【
図11】第1変形例における断熱部材60CのXY断面構成を示す説明図
【
図12】第2変形例における断熱部材60DのXY断面構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.第1実施形態:
A-1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、第1実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、
図2は、
図1(および後述する
図6)のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、
図3は、
図1(および後述する
図6)のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
図4以降についても同様である。また、本明細書では、Z軸方向に直交する方向を、面方向と呼ぶものとする。
【0021】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)燃料電池発電単位(以下、単に「発電単位」という)102と、一対のターミナルプレート410,420と、一対の絶縁シート510,520と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のターミナルプレート410,420は、複数の発電単位102から構成される集合体(以下、「発電ブロック103」という)を上下から挟むように配置されている。一対の絶縁シート510,520は一対のターミナルプレート410,420を上下から挟むように配置されている。また、一対のエンドプレート104,106は、一対の絶縁シート510,520を上下から挟むように配置されている。また、燃料電池スタック100は、更に、上側のエンドプレート104の上方向側に、断熱部材60と、伝熱部材63とを備えている。断熱部材60および伝熱部材63については、後で詳述する。なお、上記配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。上側のエンドプレート104は、特許請求の範囲における特定エンド部材に相当し、断熱部材60は、特許請求の範囲における第1の断熱部材に相当する。
【0022】
図1に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(上側のエンドプレート104、各発電単位102、各ターミナルプレート410,420、各絶縁シート510,520および伝熱部材63)のZ軸方向回りの外周の4つの角部周辺には、各層を上下方向に貫通し、かつ、Z軸方向視において略円形の孔が形成されている。さらに燃料電池スタック100を構成する下側のエンドプレート106のZ軸方向回りの外周の4つの角部周辺の上面には、後述するボルト22の下側端部が螺合される孔(ねじ孔)が形成されている。各発電単位102と各ターミナルプレート410,420と各絶縁シート510,520と各エンドプレート104,106と伝熱部材63とに形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、上側のエンドプレート104から下側のエンドプレート106にわたって上下方向に延びるボルト孔109を構成している。以下の説明では、ボルト孔109を構成するために各層に形成された孔も、ボルト孔109ということがある。
【0023】
各ボルト22は、上下方向に延びる各ボルト孔109に挿通されている。各ボルト22の下側端部には、各ボルト22が、下側のエンドプレート106に係合可能なように、下側のエンドプレート106のZ軸方向回りの外周の4つの角部周辺の上面に形成された上記孔(ねじ孔)に螺合可能なねじ部が形成されている。このように、本実施形態の燃料電池スタック100では、各ボルト22の頭部24と下側のエンドプレート106とによって、各発電単位102および各エンドプレート104,106が一体に締結されている。ここで、「各ボルト22が、下側のエンドプレート106に係合」しているとは、各ボルト22が直接的にまたは他の部材(例えば、ナット)を介して下側のエンドプレート106に取り付けられていることを意味する。
【0024】
また、
図1から
図3に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(各発電単位102、下側のターミナルプレート420および下側の絶縁シート520)のZ軸方向回りの外周辺の付近には、各発電単位102と、下側のターミナルプレート420とを上下方向に貫通する孔が形成されており、各発電単位102に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、複数の発電単位102にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために各層に形成された孔も、連通孔108ということがある。
【0025】
図1および
図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の付近に位置する連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102の後述する空気室166に供給するガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の付近に位置する連通孔108は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出するガス流路である酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。酸化剤ガスOGとしては、例えば空気が使用される。空気室166は、特許請求の範囲におけるガス室に相当する。酸化剤ガス導入マニホールド161および酸化剤ガス排出マニホールド162は、それぞれ、特許請求の範囲におけるマニホールドに相当する。
【0026】
また、
図1および
図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周を構成する辺の内、上述した酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102の後述する燃料室176に供給するガス流路である燃料ガス導入マニホールド171として機能し、上述した酸化剤ガス導入マニホールド161として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の連通孔108は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出するガス流路である燃料ガス排出マニホールド172として機能する。燃料ガスFGとしては、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。燃料室176は、特許請求の範囲におけるガス室に相当する。燃料ガス導入マニホールド171および燃料ガス排出マニホールド172は、それぞれ、特許請求の範囲におけるマニホールドに相当する。
【0027】
(ターミナルプレート410,420、絶縁シート510,520およびエンドプレート104,106の構成)
一対のターミナルプレート410,420は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。各ターミナルプレート410,420のZ軸方向における厚み(板厚)は、0.2mm以上、3mm以下である。上側のターミナルプレート410は、複数の発電単位102から構成される発電ブロック103の上方向側に配置されており、下側のターミナルプレート420は、発電ブロック103の下方向側に配置されている。すなわち、上側のターミナルプレート410は、複数の単セル110の内、Z軸方向において、最も上方向側に位置する単セル110を備える発電単位102の上方向側に配置されている。また、下側のターミナルプレート420は、複数の単セル110の内、Z軸方向において、最も下方向側に位置する単セル110を備える発電単位102の下方向側に配置されている。
図1に示すように、上側のターミナルプレート410には、4つのボルト孔109が形成されている。また、下側のターミナルプレート420には、4つの連通孔108と、4つのボルト孔109とが形成されている(
図2および
図3参照)。上側のターミナルプレート410は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のターミナルプレート420は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0028】
一対の絶縁シート510,520は、略矩形のシート状の絶縁部材である。絶縁シート510,520は、例えばマイカ、アルミナ、窒化ケイ素、ジルコニア等により形成されている。各絶縁シート510,520のZ軸方向における厚み(シート厚)T1は、0.1mm以上、5mm以下であり、好ましくは、1mm以上、5mm以下である。上側の絶縁シート510は、上側のターミナルプレート410の上方向側に配置されており、下側の絶縁シート520は、下側のターミナルプレート420の下方向側に配置されている。上側のターミナルプレート410と同様に、上側の絶縁シート510には、4つのボルト孔109が形成されている。また、下側のターミナルプレート420と同様に、下側の絶縁シート520には、4つの連通孔108と、4つのボルト孔109とが形成されている。なお、本明細書において、「導電性部材」とは、電気抵抗率が100μΩ・m以下である部材を意味し、「絶縁部材」とは、電気抵抗率が10MΩ・m以上である部材を意味している。
【0029】
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一対のエンドプレート104,106の熱伝導率は、例えば、20W/m・K程度である。各エンドプレート104,106のZ軸方向における厚み(板厚)は、1mm以上、15mm以下である。上側のエンドプレート104は、上側の絶縁シート510の上方向側に配置されており、下側のエンドプレート106は、下側の絶縁シート520の下方向側に配置されている。換言すれば、一対のエンドプレート104,106は、発電ブロック103を挟んでZ軸方向に互いに対向し、かつ、Z軸方向視で、後述の空気極側フレーム130および燃料極側フレーム140におけるフレーム部分に重なるように配置されている。一対のエンドプレート104,106によって、一対の絶縁シート510,520と、一対のターミナルプレート410,420と、複数の発電単位102とが押圧された状態で挟持されている。
図1に示すように、上側のエンドプレート104には、4つのボルト孔109が形成されている。また、下側のエンドプレート106には、4つの流路用貫通孔107と、4つのボルト孔109とが形成されている(
図2および
図3参照)。4つの流路用貫通孔107は、それぞれ、酸化剤ガス導入マニホールド161、酸化剤ガス排出マニホールド162、燃料ガス導入マニホールド171、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0030】
(ガス通路部材27等の構成)
図2および
図3に示すように、燃料電池スタック100は、さらに、下側のエンドプレート106に対して複数の発電単位102とは反対側(すなわち、下側)に配置された4つのガス通路部材27を備える。4つのガス通路部材27は、それぞれ、酸化剤ガス導入マニホールド161、酸化剤ガス排出マニホールド162、燃料ガス導入マニホールド171、燃料ガス排出マニホールド172と上下方向に重なる位置に配置されている。各ガス通路部材27は、下側のエンドプレート106の流路用貫通孔107に連通する孔が形成された本体部28と、本体部28の側面から分岐した筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。なお、各ガス通路部材27の本体部28とエンドプレート106との間には、絶縁シート26が配置されている。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合材等により構成される。
【0031】
(発電単位102の構成)
図4は、
図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、
図5は、
図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図である。
図4および
図5に示すように、発電の最小単位である発電単位102は、燃料電池単セル(以下、単に「単セル」という)110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電部材134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電部材144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ軸方向回りの外周には、上述した各マニホールド161,162,171,172として機能する各連通孔108を構成する孔と、各ボルト孔109を構成する孔とが形成されている。なお、発電単位102は単セル110を備えるため、上述した発電ブロック103は、単セル110が上下方向に複数並べて配置された構造体であるとも表現できる。空気極側フレーム130および燃料極側フレーム140は、それぞれ、特許請求の範囲におけるガス流通部材に相当する。
【0032】
一対のインターコネクタ150は、Z軸方向視で単セル110より大きい略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。また、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のターミナルプレート410,420を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(
図2および
図3参照)。
【0033】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで上下方向(発電単位102が並ぶ配列方向)に互いに対向する空気極(カソード)114および燃料極(アノード)116とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で電解質層112および空気極114を支持する燃料極支持形の単セルである。空気極114および燃料極116は、それぞれ、特許請求の範囲における特定電極に相当する。
【0034】
電解質層112は、Z軸方向視で略矩形の平板形状部材であり、緻密な層である。電解質層112は、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、SDC(サマリウムドープセリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、ペロブスカイト型酸化物等の固体酸化物により形成されている。空気極114は、Z軸方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、多孔質な層である。空気極114は、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄酸化物))により形成されている。燃料極116は、Z軸方向視で電解質層112と略同一の大きさの略矩形の平板形状部材であり、多孔質な層である。燃料極116は、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。このように、本実施形態の単セル110(発電単位102)は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
【0035】
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、ステンレス等の金属材料により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。なお、単セル110とセパレータ120との接合箇所付近に、空気室166と燃料室176との間をシールするシール部材(例えば、ガラスシール部材)がさらに設けられてもよい。
【0036】
空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の空気室用孔131が形成されたフレーム部分を有する部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。フレーム部分は、Z軸方向視で、電解質層112と、空気極114と、燃料極116とが互いに重なる領域を取り囲む部分であり、上述の各マニホールド161,162,171,172として機能する各連通孔108を構成する孔(マニホールド用孔)は、フレーム部分に形成されている。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。空気極側フレーム130に形成された空気室用孔131によって、空気極114に面する空気室166が構成される。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス導入マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通流路132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通流路133とが形成されている。
【0037】
燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の燃料室用孔141が形成されたフレーム部分を有する部材であり、例えば、金属により形成されている。フレーム部分は、空気極側フレーム130におけるフレーム部分と同様に、Z軸方向視で、上記領域を取り囲む部分である。また、燃料極側フレーム140においても、上述の各連通孔108を構成する孔(マニホールド用孔)は、フレーム部分に形成されている。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。燃料極側フレーム140に形成された燃料室用孔141によって、燃料極116に面する燃料室176が構成される。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通流路142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通流路143とが形成されている。
【0038】
燃料極側集電部材144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電部材144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部(図示せず)とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触している。燃料極側集電部材144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサ149が配置されている。そのため、燃料極側集電部材144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電部材144を介した燃料極116とインターコネクタ150との電気的接続が良好に維持される。
【0039】
空気極側集電部材134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電部材134は、複数の略四角柱状の集電部材要素135から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電部材134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102における空気極側集電部材134は、上側のターミナルプレート410に接触している。空気極側集電部材134は、このような構成であるため、空気極114とインターコネクタ150とを電気的に接続する。なお、本実施形態では、空気極側集電部材134とインターコネクタ150とは一体の部材として形成されている。すなわち、該一体の部材の内の、上下方向(Z軸方向)に直交する平板形の部分がインターコネクタ150として機能し、該平板形の部分から空気極114に向けて突出するように形成された複数の凸部である集電部材要素135が空気極側集電部材134として機能する。また、空気極側集電部材134とインターコネクタ150との一体部材は、導電性のコートによって覆われていてもよく、空気極114と空気極側集電部材134との間には、両者を接合する導電性の接合層が介在していてもよい。なお、各発電単位102において、空気極側集電部材134と上側のインターコネクタ150とが別の部材であるとしてもよい。
【0040】
A-2.燃料電池スタック100の動作:
図2に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29、本体部28、下側のエンドプレート106の流路用貫通孔107、下側の絶縁シート520の連通孔108および下側のターミナルプレート420の連通孔108を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通流路132を介して、空気室166に供給される。また、
図3に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29、本体部28、下側のエンドプレート106の流路用貫通孔107、下側の絶縁シート520の連通孔108および下側のターミナルプレート420の連通孔108を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通流路142を介して、燃料室176に供給される。
【0041】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGに含まれる酸素と燃料ガスFGに含まれる水素との電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電部材134を介して一方のインターコネクタ150(または上側のターミナルプレート410)に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電部材144を介して他方のインターコネクタ150(または下側のターミナルプレート420)に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するターミナルプレート410,420から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0042】
図2に示すように、各発電単位102の酸化剤ガス排出連通流路133を介して空気室166から酸化剤ガス排出マニホールド162に排出された酸化剤オフガスOOGは、下側のターミナルプレート420の連通孔108、下側の絶縁シート520の連通孔108、下側のエンドプレート106の流路用貫通孔107、酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、
図3に示すように、各発電単位102の燃料ガス排出連通流路143を介して燃料室176から燃料ガス排出マニホールド172に排出された燃料オフガスFOGは、下側のターミナルプレート420の連通孔108、下側の絶縁シート520の連通孔108、下側のエンドプレート106の流路用貫通孔107、燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0043】
なお、本実施形態の燃料電池スタック100を構成する各発電単位102では、空気室166における酸化剤ガスOGの主たる流れ方向と燃料室176における燃料ガスFGの主たる流れ方向とが、略反対方向(互いに対向する方向)となっている。すなわち、本実施形態の発電単位102(燃料電池スタック100)は、カウンターフロータイプのSOFCである。
【0044】
A-3.断熱部材60および伝熱部材63の詳細構成:
次に、断熱部材60および伝熱部材63の詳細構成について説明する。
図6は、断熱部材60の詳細構成を示すXY断面図である。
図6には、
図2のVI-VIの位置における燃料電池スタック100のXY断面構成が示されている。なお、
図6には、説明の便宜上、空気極側フレーム130および燃料極側フレーム140に形成された各連通孔108(酸化剤ガス導入マニホールド161、酸化剤ガス排出マニホールド162、燃料ガス導入マニホールド171、燃料ガス排出マニホールド172)およびガス室用孔(空気室用孔131および燃料室用孔141)を点線により図示している。実際の構成では、断熱部材60および伝熱部材63には、上記各連通孔108は形成されていない。
【0045】
伝熱部材63は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。伝熱部材63の熱伝導率は、上側のエンドプレート104の熱伝導率より高く、例えば、25W/m・K程度以上である。伝熱部材63のZ軸方向における厚み(板厚)は、1mm以上、25mm以下である。伝熱部材63は、Z軸方向における、上側のエンドプレート104における発電ブロック103とは反対側の表面(以下、「表面S104」という)に接触して配置されている。より具体的には、伝熱部材63は、Z軸方向視において、内側部分IPと外側部分OPとに重なるように配置されている。ここで、内側部分IPは、燃料電池スタック100の中心POを含む部分であり、外側部分OPは、内側部分IPの外側に位置する部分である。本実施形態において、外側部分OPの内縁は、Z軸方向視において、セパレータ120の孔121の内縁に重なっており、外側部分OPは、空気極側フレーム130および燃料極側フレーム140における各フレーム部分を包含している。なお、上側のエンドプレート104の表面S104は、特許請求の範囲における特定表面に相当する。上側のエンドプレート104の表面S104における内側部分IPと重なる領域は、特許請求の範囲における「電気化学反応セルスタックの少なくとも中央に重なる領域」に相当する。
【0046】
断熱部材60は、内側部分IPにおいて上下方向に貫通する略矩形(本実施形態では、Z軸方向視において略正方形)の孔61と、Z軸方向回りの外周の4つの角部周辺に位置し、かつ、Z軸方向視において略円形の貫通孔が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、シリカ系材料により形成されている。当該4つの貫通孔の内縁は、Z軸方向視において、それぞれ、ボルト22の頭部24の外縁を取り囲んでいる。断熱部材60のZ軸方向における厚みH(板厚)は、例えば、3mm以上、25mm以下である(
図2および
図3参照)。断熱部材60の熱伝導率は、例えば、600℃時に0.01W/m・K以上、0.6W/m・K以下である。断熱部材60の密度は、例えば、0.15g/cm
3以上、2.5g/cm
3以下である。断熱部材60は、Z軸方向における、伝熱部材63における発電ブロック103とは反対側の表面(以下、「表面S63」という)に接触して配置されている。換言すれば、断熱部材60は、Z軸方向における、上側のエンドプレート104における表面S104側に配置されている。また、断熱部材60は、Z軸方向視において、外側部分OPに重なるように配置されている。より具体的には、本実施形態において、断熱部材60は、Z軸方向視において、空気極側フレーム130および燃料極側フレーム140における各フレーム部分と重なるように配置されている。また、断熱部材60と隣り合う内側部分IPは空洞となっている。より具体的には、本実施形態において、断熱部材60は、Z軸方向視において、単セル110が位置する部分のうち、電解質112と空気極114と燃料極116とが重なる部分と重なる内側部分IPを取り囲むように配置されている。このため、伝熱部材63の表面S63における内側部分IPに重なる領域は、燃料電池スタック100の外部に露出している。なお、断熱部材60は、接着剤等により伝熱部材63に接合されている。
【0047】
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100は、発電ブロック103と、一対のエンドプレート104,106とを備えている。また、上側のエンドプレート104の表面S104側に断熱部材60を更に備えている。断熱部材60は、Z軸方向視において、燃料電池スタック100における外側部分OPに位置しており、断熱部材60と隣り合う内側部分IPは空洞である。換言すれば、断熱部材60の断熱性能は、空洞である内側部分IPの断熱性能と比較して高い。このため、Z軸方向視において、比較的低温になりやすい燃料電池スタック100におけるマニホールド161,162,171,172に近い部分(断熱部材60に重なる部分)からの放熱を抑制しつつ、比較的高温になりやすい燃料電池スタック100の中央部分(内側部分IPに重なる部分)からの放熱を容易にすることができる。従って、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、単セル110の面内における温度分布のバラツキを抑制し、ひいては、単セル110の劣化や、単セル110の発電効率の低下を抑制することができる。
【0048】
本実施形態の燃料電池スタック100では、断熱部材60は、Z軸方向視において、内側部分IPを取り囲むように配置されている。このため、Z軸方向視において、比較的高温になりやすい燃料電池スタック100の中央部分(内側部分IPに重なる部分)からの放熱を容易にしつつ、比較的低温になりやすい燃料電池スタック100におけるマニホールド161,162,171,172に近い部分(断熱部材60に重なる部分)からの放熱をより効果的に抑制させることができる。従って、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、単セル110の面内における温度分布のバラツキをより効果的に抑制することができる。
【0049】
本実施形態の燃料電池スタック100では、断熱部材60の一部は、Z軸方向視において、空気極側フレーム130および燃料極側フレーム140のフレーム部分と重なっている。このため、Z軸方向視において、比較的低温になりやすい燃料電池スタック100におけるフレーム部分に重なる部分からの放熱をより効果的に抑制させることができる。従って、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、単セル110の面内における温度分布のバラツキをより効果的に抑制することができる。
【0050】
本実施形態の燃料電池スタック100は、Z軸方向視において、上側のエンドプレート104の表面S104における内側部分IPに配置された伝熱部材63を備えている。また、伝熱部材63の熱伝導率は、上側のエンドプレート104の熱伝導率より高い。このため、Z軸方向視において、比較的高温になりやすい燃料電池スタック100の中央の発熱を、上側のエンドプレート104を介して伝熱部材63へと熱伝導させ、さらには、当該熱を伝熱部材63の内部に拡散させることができる。従って、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、単セル110の面内における温度分布のバラツキをより効果的に抑制することができる。
【0051】
B.第2実施形態:
図7は、第2実施形態における燃料電池スタック100AのXZ断面構成を示す説明図であり、
図8は、第2実施形態における断熱部材60Aの詳細構成を示すXY断面図である。
図8には、
図7のVIII-VIIIの位置における燃料電池スタック100AのXY断面構成が示されている。なお、
図8には、
図6と同様に、説明の便宜上、空気極側フレーム130および燃料極側フレーム140に形成された各連通孔108およびガス室用孔(空気室用孔131および燃料室用孔141)を点線により図示しているが、実際の構成では、断熱部材60Aおよび伝熱部材63には、上記各連通孔108は形成されていない。
【0052】
図7に示すように、第2実施形態の燃料電池スタック100Aは、断熱部材60に代えて断熱部材60Aを備えている点で、上述した第1実施形態の燃料電池スタック100の構成と異なる。以下では、第2実施形態の燃料電池スタック100Aの構成のうち、上述した第1実施形態の燃料電池スタック100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0053】
本実施形態の断熱部材60Aは、第1実施形態の断熱部材60と同様に、伝熱部材63の表面S63に接触して配置されている。本実施形態の断熱部材60Aは、外側断熱部材601Aと、内側断熱部材603Aとの別部材から構成されている。本実施形態において、外側断熱部材601Aは、第1実施形態の断熱部材60と同様の構成である。すなわち、外側断熱部材601Aは、略矩形(本実施形態では、Z軸方向視において略正方形)の孔61Aが形成されたフレーム状の部材であり、例えば、シリカ系材料により形成されている。外側断熱部材601Aの厚みH(板厚)は、例えば、5mm以上、25mm以下である(
図7参照)。外側断熱部材601Aは、Z軸方向視において、外側部分OPに重なるように配置されている。より具体的には、本実施形態において、外側断熱部材601Aは、Z軸方向視において、空気極側フレーム130および燃料極側フレーム140における各フレーム部分と重なるように配置されている。なお、外側断熱部材601Aは、特許請求の範囲における第1の断熱部材に相当し、内側断熱部材603Aは、特許請求の範囲における第2の断熱部材に相当する。
【0054】
内側断熱部材603Aは、略矩形(本実施形態では、Z軸方向視において略正方形)の平板形状の部材であり、例えば、シリカ系材料により形成されている。内側断熱部材603AのZ軸方向における厚みH3(板厚)は、例えば、1mm以上、20mm以下である(
図7参照)。内側断熱部材603Aは、Z軸方向視において、内側部分IPに重なるように配置されている。より具体的には、本実施形態において、内側断熱部材603Aは、Z軸方向視において、単セル110が位置する部分のうち、電解質層112と空気極114と燃料極116とが重なる部分と重なるように配置されている。本実施形態において、内側断熱部材603Aは、外縁603eが、外側断熱部材601Aの孔61Aを画定する外縁に接するよう構成されている。
【0055】
上述の通り、本実施形態の燃料電池スタック100Aでは、外側断熱部材601Aの厚みHは、内側断熱部材603Aの厚みH3と比較して大きい。より具体的には、内側断熱部材603Aの厚みH3に対する、外側断熱部材601Aの厚みHの割合((H/H3)×100)は、101%以上であり、好ましくは、200%以上である。
【0056】
本実施形態の燃料電池スタック100Aは、発電ブロック103と、一対のエンドプレート104,106とを備えている。また、上側のエンドプレート104の表面S104に、外側断熱部材601Aと内側断熱部材603Aとから構成される断熱部材60Aを更に備えている。Z軸方向視において、外側断熱部材601Aは、燃料電池スタック100Aにおける外側部分OPに配置され、内側断熱部材603Aは、内側部分IPに配置されている。外側断熱部材601Aの厚みHは、内側断熱部材603Aの厚みH3と比較して大きい。換言すれば、例えば、外側断熱部材601Aの形成材料における熱伝導率と、内側断熱部材603Aの形成材料における熱伝導率とが同等である、または、外側断熱部材601Aの形成材料における熱伝導率が、内側断熱部材603Aの形成材料における熱伝導率よりも小さい構成において、外側断熱部材601Aの断熱性能は、内側断熱部材603Aの断熱性能と比較して高い。このため、Z軸方向視において、比較的低温になりやすい燃料電池スタック100Aにおけるマニホールド161,162,171,172に近い部分(外側断熱部材601Aに重なる部分)からの放熱を抑制しつつ、比較的高温になりやすい燃料電池スタック100Aの中央部分(内側断熱部材603Aに重なる部分)からの放熱を容易にすることができる。従って、本実施形態の燃料電池スタック100Aによれば、単セル110の面内における温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0057】
C.第3実施形態:
図9は、第3実施形態における燃料電池スタック100BのXZ断面構成を示す説明図であり、
図10は、第3実施形態における断熱部材60Bの詳細構成を示すXY断面図である。
図10には、
図9のX-Xの位置における燃料電池スタック100BのXY断面構成が示されている。なお、
図10には、
図6および
図8と同様に、説明の便宜上、空気極側フレーム130および燃料極側フレーム140に形成された各連通孔108およびガス室用孔(空気室用孔131および燃料室用孔141)を点線により図示しているが、実際の構成では、断熱部材60Bおよび伝熱部材63には、上記各連通孔108は形成されていない。
【0058】
図9に示すように、第3実施形態の燃料電池スタック100Bは、断熱部材60Aに代えて断熱部材60Bを備えている点で、上述した第2実施形態の燃料電池スタック100Aの構成と異なる。以下では、第3実施形態の燃料電池スタック100Bの構成のうち、上述した実施形態の燃料電池スタック100,100Aの構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0059】
本実施形態の断熱部材60Bは、上述の実施形態の断熱部材60,60Aと同様に、伝熱部材63の表面S63に接触して配置されている。本実施形態の断熱部材60Bは、外側断熱部材601Bと、内側断熱部材603Bとの別部材から構成されている。本実施形態において、外側断熱部材601Bは、第1実施形態の断熱部材60および第2実施形態の外側断熱部材601Aと同様の構成である。すなわち、外側断熱部材601Bは、略矩形(本実施形態では、Z軸方向視において略正方形)の孔61Bが形成されたフレーム状の部材であり、例えば、シリカ系材料により形成されている。外側断熱部材601Bの厚みH(板厚)は、例えば、3mm以上、25mm以下である(
図9参照)。外側断熱部材601Bの熱伝導率は、例えば、600℃時に0.01W/m・K以上、0.6W/m・K以下である。外側断熱部材601Bは、Z軸方向視において、外側部分OPに重なるように配置されている。より具体的には、本実施形態において、外側断熱部材601Bは、Z軸方向視において、空気極側フレーム130および燃料極側フレーム140における各フレーム部分と重なるように配置されている。なお、外側断熱部材601Bは、特許請求の範囲における第1の断熱部材に相当し、内側断熱部材603Bは、特許請求の範囲における第2の断熱部材に相当する。
【0060】
内側断熱部材603Bは、略矩形(本実施形態では、Z軸方向視において略正方形)の平板形状の部材であり、例えば、シリカ系材料により形成されている。内側断熱部材603BのZ軸方向における厚みH(板厚)は、外側断熱部材601Bの厚みHと同等である(
図7参照)。内側断熱部材603Bの熱伝導率は、例えば、600℃時に0.1W/m・K以上、1.5W/m・K以下である。内側断熱部材603Bは、Z軸方向視において、内側部分IPに重なるように配置されている。より具体的には、本実施形態において、内側断熱部材603Bは、Z軸方向視において、単セル110が位置する部分のうち、電解質層112と空気極114と燃料極116とが重なる部分と重なるように配置されている。本実施形態において、内側断熱部材603Bは、外縁603eが、外側断熱部材601Bの孔61Bを画定する外縁に接するよう構成されている。
【0061】
上述の通り、本実施形態の燃料電池スタック100Bでは、外側断熱部材601Bの熱伝導率は、内側断熱部材603Bの熱伝導率と比較して小さい。より具体的には、外側断熱部材601Bの熱伝導率の値に対する、内側断熱部材603Bの熱伝導率の値の割合((内側断熱部材603Bの熱伝導率値/外側断熱部材601Bの熱伝導率値)×100)は、101%以上であり、好ましくは、150%以上である。
【0062】
本実施形態の燃料電池スタック100Bは、発電ブロック103と、一対のエンドプレート104,106とを備えている。また、上側のエンドプレート104の表面S104に、外側断熱部材601Bと内側断熱部材603Bとから構成される断熱部材60Bを更に備えている。Z軸方向視において、外側断熱部材601Bは、燃料電池スタック100Aにおける外側部分OPに配置され、内側断熱部材603Bは、内側部分IPに配置されている。外側断熱部材601Bの熱伝導率は、内側断熱部材603Bの熱伝導率と比較して小さい。換言すれば、例えば、外側断熱部材601Bの厚みHと、内側断熱部材603Bの厚みHとが同等である、または、外側断熱部材601Bの厚みHが内側断熱部材603Bの厚みHよりも大きい構成において、外側断熱部材601Bの断熱性能は、内側断熱部材603Bの断熱性能と比較して高い。このため、Z軸方向視において、比較的低温になりやすい燃料電池スタック100Bにおけるマニホールド161,162,171,172に近い部分(外側断熱部材601Bに重なる部分)からの放熱を抑制しつつ、比較的高温になりやすい燃料電池スタック100Bの中央部分(内側断熱部材603Bに重なる部分)からの放熱を容易にすることができる。従って、本実施形態の燃料電池スタック100Bによれば、単セル110の面内における温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0063】
第3実施形態において、外側断熱部材601Bの熱伝導率と、内側断熱部材603Bの熱伝導率とが異なる構成に代えて、または、これとともに、外側断熱部材601Bの密度と、内側断熱部材603Bの密度とが異なる構成を採用することができる。より具体的には、外側断熱部材601Bの密度が、内側断熱部材603Bの密度と比較して大きい構成とすることができる。このような構成において、外側断熱部材601Bの密度は、例えば、1g/cm3以上、3g/cm3以下であり、内側断熱部材603Bの密度は、例えば、0.15g/cm3以上、2g/cm3以下である。より具体的には、内側断熱部材603Bの密度の値に対する、外側断熱部材601Bの密度の値の割合((外側断熱部材601Bの密度値/内側断熱部材603Bの密度値)×100)は、101%以上であり、好ましくは、150%以上である。
【0064】
上記構成では、外側断熱部材601Bの密度は、内側断熱部材603Bの密度と比較して大きい。換言すれば、例えば、外側断熱部材601Bの厚みHと、内側断熱部材603Bの厚みHとが同等である構成において、外側断熱部材601Bの断熱性能は、内側断熱部材603Bの断熱性能と比較して高い。このため、Z軸方向視において、比較的低温になりやすい燃料電池スタック100Bにおけるマニホールド161,162,171,172に近い部分(外側断熱部材601Bに重なる部分)からの放熱を抑制しつつ、比較的高温になりやすい燃料電池スタック100の中央部分(内側断熱部材603Bに重なる部分)からの放熱を容易にすることができる。従って、本実施形態の燃料電池スタック100Bによれば、単セル110の面内における温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0065】
D.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0066】
D-1.第1変形例:
図11は、第1変形例の燃料電池スタック100Cにおける断熱部材60Cの詳細構成を示すXY断面図である。なお、
図11には、
図6、
図8および
図10と同様に、説明の便宜上、空気極側フレーム130および燃料極側フレーム140に形成された各連通孔108およびガス室用孔(空気室用孔131および燃料室用孔141)を点線により図示しているが、実際の構成では、断熱部材60Cおよび伝熱部材63には、上記各連通孔108は形成されていない。
【0067】
図11に示すように、本変形例の燃料電池スタック100Cは、断熱部材60Aに代えて断熱部材60Cを備えている点で、上述した第2実施形態の燃料電池スタック100Aの構成と異なる。以下では、本変形例の燃料電池スタック100Cの構成のうち、上述した第2実施形態の燃料電池スタック100Aの構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0068】
本変形例の断熱部材60Cは、上述の実施形態の断熱部材60,60A,60Bと同様に、伝熱部材63の表面S63に接触して配置されている。本変形例の断熱部材60Cは、外側断熱部材601Cと、内側断熱部材603Cとの別部材から構成されている。本変形例において、外側断熱部材601Cは、孔61Cの形状を除き、第2実施形態の外側断熱部材601Aと同様の構成である。すなわち、外側断熱部材601Cは、例えば、シリカ系材料により形成されている。外側断熱部材601Cの厚み(板厚)は、例えば、3mm以上、25mm以下である。外側断熱部材601Cは、Z軸方向視において、外側部分OPに重なるように配置されている。より具体的には、本変形例において、外側断熱部材601Cは、Z軸方向視において、空気極側フレーム130および燃料極側フレーム140における各フレーム部分と重なるように配置されている。なお、外側断熱部材601Cは、特許請求の範囲における第1の断熱部材に相当し、内側断熱部材603Cは、特許請求の範囲における第2の断熱部材に相当する。
【0069】
本変形例では、外側断熱部材601Cの孔61Cの形状は、Z軸方向視において略長方形である。より具体的には、孔61Cは、Z軸方向視において、各連通孔108(例えば、酸化剤ガス排出マニホールド162および燃料ガス導入マニホールド171)が配置された部分における外側断熱部材601Cの幅W1が、連通孔108が配置されていない部分における外側断熱部材601Cの幅W2と比較して大きくなるよう形成されている。外側断熱部材601Cの幅W1は、例えば、10mm以上、50mm以下であり、幅W2は、例えば、5mm以上、40mm以下である。
【0070】
上記において、幅W1は、第1の辺S1の一部を構成する第1の部分外縁Po1と、第1の部分外縁Po1に対向する第1の部分内縁Pi1との最短距離である。また、幅W2は、第2の辺S2の一部を構成する第2の部分外縁Po2と、第2の部分外縁Po2に対向する第2の部分内縁Pi2との最短距離である。なお、第1の辺S1、第2の辺S2(および辺S3,S4)は、それぞれ、外側断熱部材601Cの外縁601eを構成する各辺である。第1の辺S1は、外縁601eを構成する4つの辺のうち、酸化剤ガス排出マニホールド162と燃料ガス導入マニホールド171との両方に最も近接している辺であり、第2の辺S2は、第1の辺S1に接続している辺である。また、第1の部分内縁Pi1および第2の部分内縁Pi2は、それぞれ、孔61Cを画定する外縁の一部を構成している。酸化剤ガス排出マニホールド162は、特許請求の範囲における特定空気室用マニホールド用孔に相当し、燃料ガス導入マニホールド171は、特許請求の範囲における特定燃料室用マニホールド用孔に相当する。幅W1は、特許請求の範囲における第1の幅に相当し、幅W2は、特許請求の範囲における第2の幅に相当する。
【0071】
内側断熱部材603Cは、Z軸方向視における形状が略長方形である点を除き、第2実施形態の内側断熱部材603Aと同様の構成である。すなわち、内側断熱部材603Cは、例えば、シリカ系材料により形成されている。内側断熱部材603CのZ軸方向における厚み(板厚)は、例えば、1mm以上、25mm以下である。内側断熱部材603Cは、Z軸方向視において、内側部分IPに重なるように配置されている。より具体的には、本変形例において、内側断熱部材603Cは、Z軸方向視において、単セル110が位置する部分のうち、電解質層112と空気極114と燃料極116とが重なる部分と重なるように配置されている。本変形例において、内側断熱部材603Cは、外縁603eが、外側断熱部材601Cの孔61Cを画定する外縁に接するよう構成されている。
【0072】
上記構成では、外側断熱部材601Cにおける幅W1が、幅W2と比較して大きい。このため、Z軸方向視において、比較的低温になりやすい燃料電池スタック100Cにおけるマニホールド161,162,171,172に近い部分における断熱性能をより効果的に高め、マニホールド161,162,171,172に近い部分からの放熱をより効果的に抑制させることができる。従って、本変形例の燃料電池スタック100Cによれば、単セル110の面内における温度分布のバラツキをより効果的に抑制することができる。
【0073】
D-2.第2変形例:
図12は、第2変形例の燃料電池スタック100Dにおける断熱部材60Dの詳細構成を示すXY断面図である。なお、
図12には、
図6、
図8および
図10と同様に、説明の便宜上、空気極側フレーム130および燃料極側フレーム140に形成された各連通孔108およびガス室用孔(空気室用孔131および燃料室用孔141)を点線により図示しているが、実際の構成では、断熱部材60Dおよび伝熱部材63には、上記各連通孔108は形成されていない。
【0074】
図12に示すように、第2変形例の燃料電池スタック100Dは、断熱部材60Aに代えて断熱部材60Dを備えている点で、上述した第2実施形態の燃料電池スタック100Aの構成と異なる。以下では、本変形例の燃料電池スタック100Dの構成のうち、上述した第2実施形態の燃料電池スタック100Aの構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0075】
本変形例の断熱部材60Dは、上述の実施形態の断熱部材60,60A,60B,60Cと同様に、伝熱部材63の表面S63に接触して配置されている。本変形例の断熱部材60Dは、外側断熱部材601Dと、内側断熱部材603Dとの別部材から構成されている。本変形例において、外側断熱部材601Dは、第2実施形態の外側断熱部材601Aと同様の構成である。すなわち、外側断熱部材601Dは、例えば、シリカ系材料により形成されている。外側断熱部材601Dの厚み(板厚)は、例えば、3mm以上、25mm以下である。外側断熱部材601Dは、Z軸方向視において、外側部分OPに重なるように配置されている。より具体的には、本変形例において、外側断熱部材601Dは、Z軸方向視において、空気極側フレーム130および燃料極側フレーム140における各フレーム部分と重なるように配置されている。なお、外側断熱部材601Dは、特許請求の範囲における第1の断熱部材に相当し、内側断熱部材603Dは、特許請求の範囲における第2の断熱部材に相当する。
【0076】
内側断熱部材603Dは、Z軸方向に貫通する複数の貫通孔603Hが形成された、略矩形(本実施形態では、Z軸方向視において略正方形)の平板形状の部材であり、例えば、シリカ系材料により形成されている。内側断熱部材603DのZ軸方向における厚み(板厚)は、外側断熱部材601Dの厚みと同等である。内側断熱部材603Bは、Z軸方向視において、内側部分IPに重なるように配置されている。より具体的には、本実施形態において、内側断熱部材603Dは、Z軸方向視において、単セル110が位置する部分のうち、電解質層112と空気極114と燃料極116とが重なる部分と重なるように配置されている。本変形例において、内側断熱部材603Dは、外縁603eが、外側断熱部材601Dの孔61Dを画定する外縁に接するよう構成されている。
【0077】
上述の通り、本変形例の燃料電池スタック100Dでは、内側断熱部材603Dには、複数の貫通孔603Hが形成されている。換言すれば、貫通孔603Hは、内側断熱部材603DにおけるZ軸方向に略直交する上面と、下面との両方に開口している。貫通孔603Hの数は、例えば、1以上、50以下である。貫通孔603Hの直径は、2mm以上、80mm以下である。本変形例の内側断熱部材603Dには、貫通孔603Hが形成されているため、内側断熱部材603Dにおける単位体積当たりの断熱材充填率は、外側断熱部材601Dにおける単位体積当たりの断熱材充填率と比較して、低い。例えば、内側断熱部材603Dの上記断熱材充填率は、例えば、5%以上、90%以下である。また、外側断熱部材601Dの上記断熱材充填率の値に対する、内側断熱部材603Dの断熱材充填率の値の割合((内側断熱部材603Dの上記断熱材充填率値/外側断熱部材601Dの上記断熱材充填率値)×100)は、5%以上であり、好ましくは、10%以上である。
【0078】
上記構成では、上述の通り、内側断熱部材603Dには貫通孔603Hがあるため、内側断熱部材603Dにおける上記断熱材充填率が、外側断熱部材601Dにおける上記断熱材充填率と比較して、低くなる。このため、Z軸方向視において、比較的低温になりやすい燃料電池スタック100Dにおけるマニホールド161,162,171,172に近い部分(外側断熱部材601Dに重なる部分)からの放熱を抑制しつつ、比較的高温になりやすい燃料電池スタック100Dの中央部分(内側断熱部材603Dに重なる部分)からの放熱を容易にすることができる。従って、本変形例の燃料電池スタック100Dによれば、単セル110の面内における温度分布のバラツキを抑制し、ひいては、単セル110の劣化や、単セル110の発電効率の低下を抑制することができる。
【0079】
D-3.その他変形例:
上記実施形態および第1変形例では、断熱部材60や、外側断熱部材601A,601B,601C,601Dを、上側のエンドプレート104の表面S104に備えているが、これに限定されない。例えば、これに代えて、または、これとともに、断熱部材60や、外側断熱部材601A,601B,601C,601Dを、下側のエンドプレート106の下方向側の表面に備えていてもよい。上記第1変形例において、内側断熱部材603Cが省略されていてもよい。
【0080】
上記実施形態および変形例において、断熱部材60や、外側断熱部材601A,601B,601C,601Dは、内側部分IPを完全に取り囲んでいる構成でなくてもよい。例えば、外側断熱部材601C等の幅方向(例えば、幅W1の方向)にスリットが形成されていてもよい。また、外側断熱部材601C等の一部が部分的に欠損していることにより、外側部分OPにおける伝熱部材63が露出している構成であってもよい。これと同様に、外側断熱部材601C等の一部が部分的に欠損していることにより、内側部分IPにおける伝熱部材63が露出している構成であってもよい。
【0081】
上記実施形態および変形例において、断熱部材60や、外側断熱部材601A,601B,601C,601Dに形成された孔61,61A,61B,61C,61Dの大きさおよび形状は特に限定されない。例えば、断熱部材60の孔61の形状は、Z軸方向視において、略長方形であってもよい。また、外側断熱部材601Cの孔61Cの形状は、Z軸方向視において、略正方形であってもよい。このような構成において、外側断熱部材601C(ひいては、燃料電池スタック100C)は、Z軸方向視において、第1の辺S1の長さが第2の辺S2の長さより短い略長方形の形状を有する。また、例えば、Z軸方向視において、断熱部材60の孔61の内縁は、セパレータ120の孔121の内縁より内側(中心PO側)に位置していてもよく、また、外側に位置していてもよい。他の例として、Z軸方向視において、断熱部材60の孔61の内縁は、空気極側フレーム130または燃料極側フレーム140の空気室用孔131または燃料室用孔141の内縁に重なっていてもよい。また、断熱部材60は、空気極側フレーム130と燃料極側フレーム140との少なくとも一方に重なっていなくてもよい。外側断熱部材601A,601B,601C,601Dについても、上記と同様である。
【0082】
上記実施形態および変形例において、例えば、燃料電池スタック100は、伝熱部材63を備えない構成としてもよい。
【0083】
上記第2変形例において、貫通孔603Hの数および直径は特に限定されない。また、貫通孔603Hに代えて、または、貫通孔603Hとともに有底孔が形成されていてもよい。当該有底孔は、内側断熱部材603Dの上面と、下面とのいずれに開口していてもよいが、上面に開口していることが好ましい。換言すれば、伝熱部材63から内側断熱部材603Dへの放熱がより容易である観点から、内側断熱部材603Dの下面と、伝熱部材63の表面S63との接触面積は、大きい方が好ましい。
【0084】
第2実施形態において、断熱部材60Aを構成する外側断熱部材601Aと内側断熱部材603Aとは、一体に形成されていてもよい。これと同様に、第3実施形態および変形例においても、断熱部材を構成する外側断熱部材と内側断熱部材とは、一体に形成されていてもよい。
【0085】
第2実施形態において、内側断熱部材603Aは、外縁603eが、外側断熱部材601Aの孔61Aを画定する外縁に接していなくてもよい。これと同様に、第3実施形態および変形例においても、内側断熱部材は、その外縁が、外側断熱部材の孔を画定する外縁に接していなくてもよい。
【0086】
上記実施形態および変形例において、空気極側フレーム130には、空気室用孔131と、酸化剤ガス供給連通流路132と、酸化剤ガス排出連通流路133との少なくとも1つが形成されていなくてもよい。これと同様に、燃料極側フレーム140には、燃料室用孔141と、燃料ガス供給連通流路142と、燃料ガス排出連通流路143との少なくとも1つが形成されていなくてもよい。
【0087】
上記実施形態および変形例における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。例えば、断熱部材60,60A,60B,60Cが、シリカ系材料以外の材料により形成されていてもよい。また、外側断熱部材601A,601B,601Cの形成材料は、外側断熱部材601A,601B,601Cが内側断熱部材603A,603B,603Cと比較して高い断熱性を有する限りにおいて、それぞれ、内側断熱部材603A,603B,603Cの形成材料と同一であってもよく、また、異なっていてもよい。
【0088】
また、上記実施形態および変形例では、ボルト孔109が、各マニホールド用の連通孔108とは独立して設けられているが、独立したボルト孔109を設けず、各マニホールド用の連通孔108がボルト孔としても用いられるとしてもよい。また、上記実施形態および変形例では、空気室166における酸化剤ガスOGの主たる流れ方向と燃料室176における燃料ガスFGの主たる流れ方向とが略反対方向であるカウンターフロータイプを例に挙げて説明しているが、本発明は、他のタイプ(上記2つの流れ方向が略同一方向であるコフロータイプや上記2つの流れ方向が交差するクロスフロータイプ等)にも適用可能である。
【0089】
上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解単セルや、複数の電解単セルを備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016-81813号公報に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されるとともに、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解単セルにおいて水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、連通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解単セルにおいても、本発明を適用することにより上記効果を得ることができる。
【0090】
また、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本明細書に開示される技術は、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池(または電解セル)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0091】
22:ボルト 24:頭部 26:絶縁シート 27:ガス通路部材 28:本体部 29:分岐部 60,60A,60B,60C,60D:断熱部材 61,61A,61B,61C,61D:孔 63:伝熱部材 100,100A,100B,100C,100D:燃料電池スタック 102:発電単位 103:発電ブロック 104,106:エンドプレート 107:流路用貫通孔 108:連通孔 109:ボルト孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 120:セパレータ 121:孔 124:接合部 130:空気極側フレーム 131:空気室用孔 132:酸化剤ガス供給連通流路 133:酸化剤ガス排出連通流路 134:空気極側集電部材 135:集電部材要素 140:燃料極側フレーム 141:燃料室用孔 142:燃料ガス供給連通流路 143:燃料ガス排出連通流路 144:燃料極側集電部材 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 149:スペーサ 150:インターコネクタ 161:酸化剤ガス導入マニホールド 162:酸化剤ガス排出マニホールド 166:空気室 171:燃料ガス導入マニホールド 172:燃料ガス排出マニホールド 176:燃料室 410,420:ターミナルプレート 510,520:絶縁シート 601A,601B,601C,601D:外側断熱部材 601e:外縁 603A,603B,603C,603D:内側断熱部材 603H: 貫通孔 603e:外縁 FG:燃料ガス FOG:燃料オフガス IP:内側部分 OG:酸化剤ガス OOG:酸化剤オフガス OP:外側部分 S104:表面 S63:表面