(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20241002BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B25J19/00 J
H01L21/68 A
(21)【出願番号】P 2020194498
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 隆之
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 陽介
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-018475(JP,A)
【文献】国際公開第2019/138496(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0366562(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
H01L 21/67-21/687
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームと、前記アームの基端側が先端側に回動可能に連結される支持アームと、少なくとも前記支持アームの先端側から前記アームの先端側に向かって引き回される複数本の配線と、前記アームと前記支持アームとの連結部分である関節部において複数本の前記配線を保持する配線保持構造とを備え、
前記配線保持構造は、前記支持アームに対する前記アームの回動の軸方向である回動軸方向において間隔をあけた状態で重なる複数本の前記配線を保持する第1配線保持部材および第2配線保持部材と、前記支持アームに対する前記アームの回動動作に伴って曲がる複数本の前記配線の曲率半径の大きさを規定するためのガイド部材と
、前記回動軸方向に直交する方向に並ぶ複数本の前記配線を保持する第3配線保持部材および第4配線保持部材とを備え、
前記第1配線保持部材は、前記支持アームの先端側に取り付けられるとともに前記回動軸方向における前記アームの一方側に配置され、
前記第2配線保持部材は、前記アームの基端側に取り付けられるとともに前記回動軸方向における前記アームの一方側に配置され、
前記ガイド部材は、前記支持アームの先端側に取り付けられ前記回動軸方向における前記アームの一方側に配置されるとともに前記配線の引き回し方向において前記第1配線保持部材と前記第2配線保持部材との間に配置され、
前記ガイド部材の外周面には、前記回動軸方向において間隔をあけた状態で重なる複数本の前記配線のそれぞれが配置される複数のガイド溝が形成され
、
前記第3配線保持部材は、前記支持アームの先端側に取り付けられるとともに前記回動軸方向における前記アームの一方側に配置され、
前記第4配線保持部材は、前記アームの基端側に取り付けられるとともに前記回動軸方向における前記アームの一方側に配置され、
前記配線の引き回し方向において前記第3配線保持部材と前記第4配線保持部材との間に前記第1配線保持部材、前記第2配線保持部材および前記ガイド部材が配置されていることを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記配線保持構造は、
前記ガイド部材として、前記支持アームに対する前記アームの回動方向の一方側へ前記アームが回動したときの複数本の前記配線の曲率半径の大きさを規定するための
第1ガイド部材と、前記支持アームに対する前記アームの回動方向の他方側へ前記アームが回動したときの複数本の前記配線の曲率半径の大きさを規定するための
第2ガイド部材とを備えることを特徴とする請求項1記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記ガイド部材は、前記回動軸方向から見たときに、前記支持アームに対する前記アームの回動中心の近傍に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の産業用ロボット。
【請求項4】
前記配線の引き回し方向における前記第2配線保持部材と前記ガイド部材との距離は、前記配線の引き回し方向における前記第1配線保持部材と前記ガイド部材との距離よりも長くなっていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、搬送対象物を搬送する産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空中でガラス基板を搬送する水平多関節型の産業用ロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の産業用ロボットは、ガラス基板が搭載される2個のハンドと、2個のハンドのそれぞれが先端側に回動可能に連結される2個のアームと、2個のアームの基端側が回動可能に連結される共通アームと、共通アームが回動可能に連結される本体部とを備えている。アームと共通アームとの連結部分である関節部には、減速機が配置されている。減速機は、中空波動歯車装置である。
【0003】
特許文献1に記載の産業用ロボットでは、減速機は、略円筒状に形成される出力軸を備えている。減速機の出力軸の上端部には、アームの基端側の下端部が固定されている。ハンド、アームおよび共通アームは、真空チャンバーの中に配置されている。中空状に形成されるアームの内部は真空となっており、中空状に形成される共通アームの内部は大気圧となっている。減速機の出力軸の内周側には、真空になっているアームの内部領域と、大気圧になっている共通アームの内部領域とを隔てるための円板状の蓋が固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の産業用ロボットでは、たとえば、ハンドに取り付けられるセンサ等に接続される2本の配線が、共通アームの先端側からアームの先端側に向かって引き回されることがある。この産業用ロボットの使用時には、共通アームに対してアームが何度も回動するため、共通アームに対してアームが回動したときに、アームと共通アームとの連結部分となる関節部において2本の配線同士が不規則に接触すると、配線が損傷するおそれがある。したがって、特許文献1に記載の産業用ロボットでは、アームと共通アームとの連結部分となる関節部において、2本の配線同士の接触が防止されていることが好ましい。
【0006】
そこで、本発明の課題は、アームとアームの基端側が先端側に回動可能に連結される支持アームとを備える産業用ロボットにおいて、支持アームの先端側からアームの先端側に向かって複数本の配線が引き回されていても、アームと支持アームとの連結部分となる関節部での複数本の配線同士の接触を簡易な構成で防止することが可能な産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の産業用ロボットは、アームと、アームの基端側が先端側に回動可能に連結される支持アームと、少なくとも支持アームの先端側からアームの先端側に向かって引き回される複数本の配線と、アームと支持アームとの連結部分である関節部において複数本の配線を保持する配線保持構造とを備え、配線保持構造は、支持アームに対するアームの回動の軸方向である回動軸方向において間隔をあけた状態で重なる複数本の配線を保持する第1配線保持部材および第2配線保持部材と、支持アームに対するアームの回動動作に伴って曲がる複数本の配線の曲率半径の大きさを規定するためのガイド部材と、回動軸方向に直交する方向に並ぶ複数本の配線を保持する第3配線保持部材および第4配線保持部材とを備え、第1配線保持部材は、支持アームの先端側に取り付けられるとともに回動軸方向におけるアームの一方側に配置され、第2配線保持部材は、アームの基端側に取り付けられるとともに回動軸方向におけるアームの一方側に配置され、ガイド部材は、支持アームの先端側に取り付けられ回動軸方向におけるアームの一方側に配置されるとともに配線の引き回し方向において第1配線保持部材と第2配線保持部材との間に配置され、ガイド部材の外周面には、回動軸方向において間隔をあけた状態で重なる複数本の配線のそれぞれが配置される複数のガイド溝が形成され、第3配線保持部材は、支持アームの先端側に取り付けられるとともに回動軸方向におけるアームの一方側に配置され、第4配線保持部材は、アームの基端側に取り付けられるとともに回動軸方向におけるアームの一方側に配置され、配線の引き回し方向において第3配線保持部材と第4配線保持部材との間に第1配線保持部材、第2配線保持部材およびガイド部材が配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明において、たとえば、配線保持構造は、ガイド部材として、支持アームに対するアームの回動方向の一方側へアームが回動したときの複数本の配線の曲率半径の大きさを規定するための第1ガイド部材と、支持アームに対するアームの回動方向の他方側へアームが回動したときの複数本の配線の曲率半径の大きさを規定するための第2ガイド部材とを備えている。
【0009】
本発明の産業用ロボットでは、アームと支持アームとの連結部分である関節部において複数本の配線を保持する配線保持構造は、支持アームの先端側に取り付けられるとともに回動軸方向におけるアームの一方側に配置される第1配線保持部材と、アームの基端側に取り付けられるとともに回動軸方向におけるアームの一方側に配置される第2配線保持部材と、支持アームの先端側に取り付けられ回動軸方向におけるアームの一方側に配置されるとともに配線の引き回し方向において第1配線保持部材と第2配線保持部材との間に配置されるガイド部材とを備えている。
【0010】
また、本発明では、第1配線保持部材および第2配線保持部材に、回動軸方向において間隔をあけた状態で重なる複数本の配線が保持され、ガイド部材の外周面に、回動軸方向において間隔をあけた状態で重なる複数本の配線のそれぞれが配置される複数のガイド溝が形成されている。そのため、本発明では、支持アームの先端側からアームの先端側に向かって複数本の配線が引き回されていても、関節部での複数本の配線同士の接触を防止することが可能になる。
【0011】
また、第1配線保持部材および第2配線保持部材に保持される複数本の配線が回動軸方向に直交する方向で並んでいる場合には、共通のガイド部材によって複数本の配線の曲率半径の大きさを規定することはできず、配線の本数に応じた複数のガイド部材が必要になるが、本発明では、第1配線保持部材および第2配線保持部材に保持される複数本の配線が回動軸方向において間隔をあけた状態で重なっているため、共通のガイド部材によって複数本の配線の曲率半径の大きさを規定することが可能になる。したがって、本発明では、支持アームの先端側からアームの先端側に向かって複数本の配線が引き回されていても、関節部での複数本の配線同士の接触を簡易な構成で防止することが可能になる。
また、本発明では、配線保持構造は、回動軸方向に直交する方向に並ぶ複数本の配線を保持する第3配線保持部材および第4配線保持部材を備え、第3配線保持部材は、支持アームの先端側に取り付けられるとともに回動軸方向におけるアームの一方側に配置され、第4配線保持部材は、アームの基端側に取り付けられるとともに回動軸方向におけるアームの一方側に配置され、配線の引き回し方向において第3配線保持部材と第4配線保持部材との間に第1配線保持部材、第2配線保持部材およびガイド部材が配置されている。
そのため、配線の引き回し方向における第3配線保持部材および第4配線保持部材の外側では、複数本の配線を、回動軸方向に直交する方向に並べた状態で引き回すことが可能になる。したがって、配線の引き回し方向における第3配線保持部材および第4配線保持部材の外側において複数本の配線が回動軸方向に重なった状態で引き回される場合と比較して、複数本の配線をコンパクトに引き回すことが可能になる。
【0012】
本発明において、ガイド部材は、回動軸方向から見たときに、支持アームに対するアームの回動中心の近傍に配置されていることが好ましい。このように構成すると、支持アームに対するアームの回動動作に伴って曲がる配線の、曲がった部分に負荷がかかりにくくなる。したがって、支持アームに対するアームの回動動作に伴って何度も曲がる配線の、アームの回動動作に起因する劣化を抑制することが可能になる。
【0013】
本発明において、配線の引き回し方向における第2配線保持部材とガイド部材との距離は、配線の引き回し方向における第1配線保持部材とガイド部材との距離よりも長くなっていることが好ましい。このように構成すると、支持アームに対するアームの回動動作に伴って曲がる配線の、曲がった部分に負荷がかかりにくくなる。したがって、支持アームに対するアームの回動動作に伴って何度も曲がる配線の、アームの回動動作に起因する劣化を抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明では、アームとアームの基端側が先端側に回動可能に連結される支持アームとを備える産業用ロボットにおいて、支持アームの先端側からアームの先端側に向かって複数本の配線が引き回されていても、アームと支持アームとの連結部分となる関節部での複数本の配線同士の接触を簡易な構成で防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる産業用ロボットの平面図である。
【
図4】
図3に示す配線保持構造の構成を説明するための側面図である。
【
図7】(A)は
図3のG-G方向から第1配線保持部材および配線を示す図であり、(B)は
図3のH-H方向から第3配線保持部材および配線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
(産業用ロボットの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる産業用ロボット1の平面図である。
図2は、
図1に示す産業用ロボット1の側面図である。
【0020】
本形態の産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、真空中で使用されるロボットである。具体的には、ロボット1は、搬送対象物である液晶ディスプレイ用のガラス基板2(以下、「基板2」とする。)を真空中で搬送する水平多関節型のロボットである。ロボット1は、基板2が搭載される2個のハンド4、5と、2個のハンド4、5のそれぞれが先端側に回動可能に連結される2個のアーム6、7と、2個のアーム6、7の基端側が回動可能に連結される支持アームとしての共通アーム8と、共通アーム8が回動可能に連結される本体部9とを備えている。
【0021】
ハンド4は、アーム6の先端側に回動可能に連結され、ハンド5は、アーム7の先端側に回動可能に連結されている。ハンド4は、ハンド5よりも下側に配置されている。アーム6は、ハンド4よりも下側に配置されている。アーム7は、ハンド5よりも上側に配置されている。共通アーム8は、アーム6よりも下側に配置されている。本体部9は、共通アーム8よりも下側に配置されている。
【0022】
本体部9は、共通アーム8の基端部8aが固定される回動軸と、上下方向を回動の軸方向として回動軸を回動させる回動機構と、回動軸および回動機構と一緒に共通アーム8を昇降させる昇降機構と、回動機構や昇降機構が収容される有底円筒状のケース体11とを備えている。ケース体11の上端の開口は、蓋体12によって覆われている。蓋体12には、ケース体11の径方向の外側に広がる鍔部12aが形成されている。
【0023】
上述のように、ロボット1は、真空中で基板2を搬送する。ロボット1は、真空チャンバー13に取り付けられて使用される。
図2に示すように、ロボット1の、鍔部12aの下面よりも上側の部分は、真空チャンバー13の中に配置されている。すなわち、ロボット1の、鍔部12aの下面よりも上側の部分は、真空中に配置されており、ハンド4、5、アーム6、7および共通アーム8は、真空中に配置されている。一方、ロボット1の、鍔部12aの下面よりも下側の部分は、大気中に配置されている。
【0024】
アーム6、7は、上下方向から見たときの形状が細長い長円形状となるとともに上下方向の厚さが薄いブロック状に形成されている。アーム6の長さとアーム7の長さとは等しくなっている。共通アーム8は、略V形状に形成されている。また、共通アーム8は、本体部9の回動軸に固定される上述の基端部8aと、アーム6、7の基端側が回動可能に連結される2個の先端部8bと、2個の先端部8bのそれぞれと基端部8aとを繋ぐ2個の連結部8cとから構成されている。連結部8cは、細長い円筒状に形成されている。
【0025】
アーム6と共通アーム8との連結部分は、関節部16となっている。アーム7と共通アーム8との連結部分は、関節部17となっている。共通アーム8に対してアーム6、7は、上下方向を回動の軸方向として回動する。すなわち、本形態では、上下方向(鉛直方向)は、共通アーム8に対するアーム6、7の回動の軸方向である回動軸方向となっている。アーム6、7は、中空状に形成されている。中空状に形成されるアーム6、7の内部は真空となっている。共通アーム8は、中空状に形成されている。中空状に形成される共通アーム8の内部は大気圧となっている。また、本体部9の内部(すなわち、ケース体11の内部)も大気圧となっている。
【0026】
ロボット1は、アーム6に対してハンド4を回動させるとともに共通アーム8に対してアーム6を回動させる駆動機構と、アーム7に対してハンド5を回動させるとともに共通アーム8に対してアーム7を回動させる駆動機構とを備えている。駆動機構は、上述の特許文献1に記載された産業用ロボットの駆動機構と同様に構成されており、駆動機構の構成は公知の構成であるため、駆動機構の説明は省略する。
【0027】
なお、アーム6の基端側の内部には、駆動機構の一部を構成するプーリが配置されており、このプーリは、固定部材18を介して共通アーム8の一方の先端部8bに固定されている。固定部材18は、アーム6および共通アーム8の外部に配置されている。固定部材18は、一方の先端部8bに固定される側面部18aと、側面部18aの上端に繋がる平板状の上面部18bとから構成されている。上面部18bは、上面部18bの厚さ方向と上下方向とが一致するように配置されている。また、上面部18bは、アーム6の基端部の上側に配置されている。
【0028】
また、アーム7の基端側の内部にも、駆動機構の一部を構成するプーリが配置されており、このプーリは、固定部材19を介して共通アーム8の他方の先端部8bに固定されている。固定部材19は、アーム7および共通アーム8の外部に配置されている。固定部材19は、他方の先端部8bに固定される側面部19aと、側面部19aの上端に繋がる平板状の上面部19bとから構成されている。上面部19bは、上面部19bの厚さ方向と上下方向とが一致するように配置されている。また、上面部19bは、アーム7の基端部の上側に配置されている。
【0029】
(配線および配線保持構造の構成)
図3は、
図1に示す関節部16の平面図である。
図4は、
図3に示す配線保持構造23の構成を説明するための側面図である。
図5は、
図4のE部の拡大図である。
図6は、
図3のF部の拡大図である。
図7(A)は、
図3のG-G方向から配線保持部材24および配線22を示す図であり、
図7(B)は、
図3のH-H方向から配線保持部材26および配線22を示す図である。
【0030】
ロボット1は、少なくとも共通アーム8の一方の先端側からアーム6の先端側に向かって引き回される複数本の配線22と、関節部16において複数本の配線22を保持する配線保持構造23とを備えている。本形態のロボット1は、2本の配線22を備えており、配線保持構造23は、2本の配線22を保持している。なお、
図1、
図2では、配線22および配線保持構造23の図示を省略している。
【0031】
配線22の一端は、たとえば、ハンド4に取り付けられるセンサ等に接続されている。配線22の他端は、たとえば、本体部9に設けられる制御基板に接続されている。すなわち、配線22は、たとえば、本体部9からアーム6の先端部まで引き回されている。共通アーム8の一方の先端側からアーム6の先端側において、配線22は、アーム6および共通アーム8の外部を引き回されている。すなわち、共通アーム8の一方の先端側からアーム6の先端側において、配線22は真空中を引き回されている。本形態の配線22は、4本の芯線を有する4芯ケーブルである。
【0032】
配線保持構造23は、上下方向(すなわち、共通アーム8に対するアーム6、7の回動の軸方向である回動軸方向)において間隔をあけた状態で重なる2本の配線22を保持する2個の配線保持部材24、25と、水平方向(すなわち、回動軸方向に直交する方向)に並ぶ2本の配線22を保持する2個の配線保持部材26、27とを備えている。本形態の配線保持部材24は第1配線保持部材であり、配線保持部材25は第2配線保持部材であり、配線保持部材26は第3配線保持部材であり、配線保持部材27は第4配線保持部材である。
【0033】
また、配線保持構造23は、共通アーム8に対するアーム6の回動動作に伴って水平方向に曲がる2本の配線22の曲率半径の大きさを規定するためのガイド部材28を備えている。具体的には、配線保持構造23は、共通アーム8に対するアーム6の回動方向の一方側へアーム6が回動したときの2本の配線22の曲率半径の大きさを規定するためのガイド部材28と、共通アーム8に対するアーム6の回動方向の他方側へアーム6が回動したときの2本の配線22の曲率半径の大きさを規定するためのガイド部材28との2個のガイド部材28を備えている。
【0034】
配線保持部材24は、共通アーム8の先端側に取り付けられている。また、配線保持部材24は、アーム6の上側に配置されている。具体的には、配線保持部材24は、固定部材18の上面部18bの上面に固定されており、固定部材18を介して共通アーム8の一方の先端部8bに取り付けられている。配線保持部材24は、共通アーム8に対するアーム6の回動中心CLよりも共通アーム8の先端寄りに配置されている。
【0035】
配線保持部材25は、アーム6の基端側に取り付けられている。また、配線保持部材25は、アーム6の上側に配置されている。具体的には、配線保持部材25は、アーム6の上面に固定される固定板29を介してアーム6の上面に取り付けられている。固定板29は、平板状の部材を所定形状に折り曲げることで形成されており、ネジによってアーム6の上面に固定されている。配線保持部材25は、固定板29の上面に固定されている。配線保持部材25は、回動中心CLよりもアーム6の先端寄りに配置されている。
【0036】
配線保持部材24、25は、配線22が配置される直線状の2本のガイド溝30aが形成されるブロック状の溝形成部材30と、溝形成部材30が固定されるL形状の固定用ブラケット31とから構成されている(
図7(A)参照)。ガイド溝30aは、水平方向に伸びる四角溝状に形成されている。2本のガイド溝30aは、上下方向において間隔をあけた状態で形成されている。配線保持部材24の固定用ブラケット31は、ネジによって上面部18bの上面に固定され、配線保持部材25の固定用ブラケット31は、ネジによって固定板29の上面に固定されている。
【0037】
細長い円筒状に形成される連結部8cの長手方向と上下方向とに直交する方向を連結部8cの短手方向とすると、配線保持部材24の溝形成部材30のガイド溝30aは、連結部8cの短手方向における連結部8cの中心位置に配置されている。このガイド溝30aは、連結部8cの長手方向と平行になっている。連結部8cの長手方向におけるこのガイド溝30aの両端、および、連結部8cの短手方向におけるこのガイド溝30aの一端は開口している。連結部8cの短手方向におけるこのガイド溝30aの開口は、固定用ブラケット31によって塞がれている。
【0038】
また、上下方向から見たときの形状が細長い長円形状となるアーム6の長手方向と上下方向とに直交する方向をアーム6の短手方向とすると、配線保持部材25の溝形成部材30のガイド溝30aは、アーム6の短手方向におけるアーム6の中心位置に配置されている。このガイド溝30aは、アーム6の長手方向と平行になっている。アーム6の長手方向におけるこのガイド溝30aの両端、および、アーム6の短手方向におけるこのガイド溝30aの一端は開口している。アーム6の短手方向におけるこのガイド溝30aの開口は、固定用ブラケット31によって塞がれている。
【0039】
上下方向から見たときに、連結部8cの短手方向の中心線とアーム6の短手方向の中心線との交点が回動中心CLとなっている。連結部8cの長手方向とアーム6の長手方向とが一致するように連結部8cとアーム6とが重なっているときには、連結部8c、アーム6の短手方向において、配線保持部材24の溝形成部材30のガイド溝30aと配線保持部材25の溝形成部材30のガイド溝30aとが同じ位置に配置されている。また、配線保持部材24と配線保持部材25とは同じ高さに配置されている。すなわち、配線保持部材24に保持される2本の配線22と、配線保持部材25に保持される2本の配線22とは同じ高さに配置されている。
【0040】
ガイド部材28は、共通アーム8の先端側に取り付けられている。また、ガイド部材28は、アーム6の上側に配置されている。具体的には、ガイド部材28は、上面部18bの上面にネジによって固定されており、固定部材18を介して共通アーム8の一方の先端部8bに取り付けられている。ガイド部材28は、略円柱状に形成されている。2個のガイド部材28は、連結部8cの長手方向において同じ位置に配置されている。また、2個のガイド部材28は、連結部8cの短手方向において隣接配置されるとともに、上下方向から見たときに、連結部8cの短手方向の中心に対して対称に配置されている。
【0041】
ガイド部材28は、配線22の引き回し方向において配線保持部材24と配線保持部材25との間に配置されている。すなわち、ガイド部材28は、連結部8cの長手方向とアーム6の長手方向とが一致するように連結部8cとアーム6とが重なっているときに、連結部8c、アーム6の長手方向において配線保持部材24と配線保持部材25との間に配置されている。配線22の引き回し方向における配線保持部材25とガイド部材28との距離は、配線22の引き回し方向における配線保持部材24とガイド部材28との距離よりも長くなっている。
【0042】
ガイド部材28の外周面には、上下方向において間隔をあけた状態で重なる2本の配線22のそれぞれが配置される2本のガイド溝28aが形成されている。ガイド溝28aは、たとえば、V溝状に形成されている。共通アーム8に対するアーム6の回動動作に伴って水平方向に曲がる2本の配線22の曲率半径は、ガイド溝28aの曲率半径に応じて規定される。2本のガイド溝28aの上下方向のピッチは、溝形成部材30の2本のガイド溝30aの上下方向のピッチと等しくなっている。
【0043】
連結部8cの短手方向において隣接配置される2個のガイド部材28のうちの一方のガイド部材28のガイド溝28aの底部と他方のガイド部材28のガイド溝28aの底部との、連結部8cの短手方向における距離は、配線22の外形よりも若干大きくなっている。2本の配線22は、2個のガイド部材28の間を通過している。配線22の引き回し方向において、少なくとも配線保持部材24と配線保持部材25との間では、2本の配線22は、上下方向において間隔をあけた状態で、かつ、上下方向に重なった状態で引き回されている。
【0044】
ガイド部材28は、上下方向から見たときに、回動中心CLの近傍に配置されている。
図6に示すように、上下方向から見たときに、ガイド部材28の中心は、回動中心CLよりも共通アーム8の先端寄りに配置されている。また、説明の便宜上、共通アーム8の先端側(
図3のX1方向側)を左側とし、共通アーム8の基端側(
図3のX2方向側)を右側とすると、
図6に示すように、ガイド溝28aの右端は、回動中心CLよりも右側に配置されている。
【0045】
配線保持部材26は、共通アーム8の先端側に取り付けられている。また、配線保持部材26は、アーム6の上側に配置されている。具体的には、配線保持部材26は、ネジによって上面部18bの上面に固定されており、固定部材18を介して共通アーム8の一方の先端部8bに取り付けられている。配線保持部材27は、アーム6の基端側に取り付けられている。また、配線保持部材27は、アーム6の上側に配置されている。具体的には、配線保持部材27は、ネジによって固定板29の上面に固定されており、固定板29を介してアーム6の上面に取り付けられている。
【0046】
配線保持部材26は、配線保持部材24よりも共通アーム8の先端寄りに配置されている。配線保持部材27は、配線保持部材25よりもアーム6の先端寄りに配置されている。すなわち、配線22の引き回し方向において、配線保持部材24、25およびガイド部材28は、配線保持部材26と配線保持部材27との間に配置されている。また、配線保持部材27は、配線保持部材25よりも下側に配置されている。
【0047】
配線22の引き回し方向における配線保持部材26、27の外側では、2本の配線22は、水平方向に並んだ状態で引き回されている。すなわち、配線保持部材24と配線保持部材25との間において上下方向で重なっていた2本の配線22の並びは、配線保持部材24と配線保持部材26との間、および、配線保持部材25と配線保持部材27との間において、上下方向から水平方向に変わる。
【0048】
配線保持部材26と配線保持部材27とは、同形状に形成されている。配線保持部材26は、連結部8cの長手方向の両側および下側が開口する略四角溝状に形成されている(
図7(B)参照)。配線保持部材26に保持される2本の配線22は、連結部8cの短手方向で並んでいる。配線保持部材26に保持される2本の配線22の下面は、上面部18bの上面に接触している。また、配線保持部材27は、アーム6の長手方向の両側および下面が開口する略四角溝状に形成されている。配線保持部材27に保持される2本の配線22は、アーム6の短手方向で並んでいる。配線保持部材27に保持される2本の配線22の下面は、固定板29の上面に接触している。
【0049】
配線保持部材26は、連結部8cの短手方向における連結部8cの中心位置に配置され、配線保持部材27は、アーム6の短手方向におけるアーム6の中心位置に配置されている。連結部8cの長手方向とアーム6の長手方向とが一致するように連結部8cとアーム6とが重なっているときには、連結部8c、アーム6の短手方向において、配線保持部材26と配線保持部材27とが同じ位置に配置されている。また、このときには、アーム6の短手方向において、配線保持部材24の溝形成部材30のガイド溝30aと配線保持部材25の溝形成部材30のガイド溝30aと配線保持部材26と配線保持部材27とが同じ位置に配置されている。
【0050】
また、ロボット1は、共通アーム8の他方の先端側からアーム7の先端側に向かって引き回される2本の配線22と、関節部17において2本の配線22を保持する配線保持構造23とを備えている。関節部17に設置される配線保持構造23は、配線保持部材24、26およびガイド部材28が固定部材19の上面部19bの上面に固定されている点、および、配線保持部材25、27が固定板29を介してアーム7の上面に取り付けられている点を除いて、関節部16に設置される配線保持構造23と同様に構成されているため、関節部17に設置される配線保持構造23の説明は省略する。
【0051】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、関節部16、17において、共通アーム8の先端側に取り付けられるとともにアーム6、7の上側に配置される配線保持部材24は、上下方向において間隔をあけた状態で重なる2本の配線22を保持し、かつ、アーム6、7の基端側に取り付けられるとともにアーム6、7の上側に配置される配線保持部材25は、上下方向において間隔をあけた状態で重なる2本の配線22を保持している。また、本形態では、共通アーム8の先端側に取り付けられるとともにアーム6、7の上側に配置されるガイド部材28は、配線22の引き回し方向において配線保持部材24と配線保持部材25との間に配置されている。
【0052】
また、本形態では、ガイド部材28の外周面に、上下方向において間隔をあけた状態で重なる2本の配線22のそれぞれが配置される2本のガイド溝28aが形成されており、2本の配線22は、少なくとも配線保持部材24と配線保持部材25との間で上下方向において間隔をあけた状態で引き回されている。そのため、本形態では、共通アーム8の先端側からアーム6、7の先端側に向かって2本の配線22が引き回されていても、関節部16、17での2本の配線22同士の接触を防止することが可能になる。
【0053】
また、配線保持部材24、25に保持される2本の配線22が水平方向で並んでいる場合には、4個のガイド部材28がないと、2本の配線22の曲率半径の大きさを規定することはできないが、本形態では、配線保持部材24、25に保持される2本の配線22が上下方向において間隔をあけた状態で重なっているため、2個のガイド部材28によって2本の配線22の曲率半径の大きさを規定することが可能になる。したがって、本形態では、共通アーム8の先端側からアーム6、7の先端側に向かって2本の配線22が引き回されていても、関節部16、17での2本の配線22同士の接触を簡易な構成で防止することが可能になる。
【0054】
なお、本形態において、4芯ケーブルである2本の配線22に代えて、8本の芯線を有する8芯ケーブルを1本使用すれば、配線保持部材24、25は不要になる。また、8芯ケーブルを1本使用する場合には、ガイド部材28の外周面に1本のガイド溝28aを形成すれば良い。しかしながら、4芯ケーブルである配線22と比較して8芯ケーブルは曲がりにくいため、8芯ケーブルを使用する場合には、共通アーム8に対するアーム6、7の回動動作に伴って曲がる8芯ケーブルを曲げるための大きなスペースが必要になる。これに対して本形態では、配線22を曲げるためのスペースを小さくすることが可能になる。
【0055】
本形態では、ガイド部材28は、上下方向から見たときに、共通アーム8に対するアーム6、7の回動中心CLの近傍に配置されている。また、本形態では、配線22の引き回し方向における配線保持部材25とガイド部材28との距離は、配線の引き回し方向における配線保持部材24とガイド部材28との距離よりも長くなっている。そのため、本形態では、共通アーム8に対するアーム6、7の回動動作に伴って曲がる配線22の、曲がった部分に負荷がかかりにくくなる。したがって、本形態では、共通アーム8に対するアーム6、7の回動動作に伴って何度も曲がる配線22の、アーム6、7の回動動作に起因する劣化を抑制することが可能になる。
【0056】
本形態では、配線保持部材24、25およびガイド部材28は、配線22の引き回し方向において配線保持部材26と配線保持部材27との間に配置されており、配線22の引き回し方向における配線保持部材26、27の外側では、2本の配線22は、水平方向に並んだ状態で引き回されている。そのため、本形態では、配線22の引き回し方向における配線保持部材26、27の外側で、2本の配線22が上下方向に重なった状態で引き回される場合と比較して、2本の配線22をコンパクトに引き回すことが可能になる。
【0057】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0058】
上述した形態において、共通アーム8の先端側からアーム6、7の先端側に向かって引き回される配線22の数は3本以上であっても良い。この場合には、配線22の本数に応じた複数のガイド溝28aが上下方向において所定のピッチでガイド部材28に形成されている。また、配線22の本数に応じた複数のガイド溝30aが上下方向において所定のピッチで溝形成部材30に形成されている。
【0059】
上述した形態において、ロボット1は、共通アーム8に代えて、アーム6の基端側が先端側に回動可能に連結されるアームと、アーム7の基端側が先端側に回動可能に連結されるアームとを個別に備えていても良い。この場合には、アーム6が連結されるアームおよびアーム7が連結されるアームは支持アームとなっている。また、ロボット1が備えるハンドの数は、1個であっても良い。この場合には、ロボット1は、たとえば、ハンド4と、アーム6と、アーム6の基端側が先端側に回動可能に連結されるアームとを備えている。この場合には、アーム6が連結されるアームは支持アームとなっている。
【0060】
上述した形態において、ロボット1によって搬送される搬送対象物は、半導体ウエハ等のガラス基板以外のものであっても良い。また、上述した形態において、ロボット1は、ロボット1の外部圧力が大気圧となっている環境下で使用されても良い。さらに、本発明が適用される産業用ロボットは、垂直多関節型のロボットであっても良い。この場合のロボットは、アームと、アームの基端側が先端側に回動可能に連結される支持アームとを備えており、たとえば、アームは、支持アームに対して水平方向を回動の軸方向として回動する。すなわち、この場合には、たとえば、水平方向が支持アームに対するアームの回動の軸方向である回動軸方向となっている。
【符号の説明】
【0061】
1 ロボット(産業用ロボット)
6、7 アーム
8 共通アーム(支持アーム)
16、17 関節部
22 配線
23 配線保持構造
24 配線保持部材(第1配線保持部材)
25 配線保持部材(第2配線保持部材)
26 配線保持部材(第3配線保持部材)
27 配線保持部材(第4配線保持部材)
28 ガイド部材
28a ガイド溝
CL 回動中心