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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】基板パッケージ及び電動工具
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/30 20160101AFI20241002BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20241002BHJP
   H02K 5/22 20060101ALI20241002BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20241002BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20241002BHJP
【FI】
H02K11/30
B25F5/00 G
B25F5/00 A
H02K5/22
H01L25/04 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020203636
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2022090992
(43)【公開日】2022-06-20
【審査請求日】2023-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻本 直生
(72)【発明者】
【氏名】中村 暁斗
(72)【発明者】
【氏名】北村 孝太
(72)【発明者】
【氏名】無類井 格
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-034278(JP,U)
【文献】特開2010-214518(JP,A)
【文献】国際公開第2012/042971(WO,A1)
【文献】特開2005-347359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/30
B25F 5/00
H02K 5/22
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動工具に用いられるモータを駆動するためのスイッチング素子が搭載されている基板パッケージであって、
電気絶縁性を有している基板と、
前記基板の表面に形成されており、導電性を有しているパターン部と、
前記パターン部の一部を覆っている樹脂と、
前記パターン部上であって前記樹脂に覆われていない部分に配置されており、前記樹脂よりも熱伝導率の高い放熱部と、
電気絶縁性を有し、空気よりも熱伝導率の高い絶縁樹脂と、
前記放熱部の表面と接触するように配置されており、柔軟性及び電気絶縁性を有し、空気よりも熱伝導率の高い放熱シートと、
を備え、
前記絶縁樹脂は、前記放熱部及び前記放熱シートを覆っている、
基板パッケージ。
【請求項2】
前記放熱部が配置されている前記パターン部には、前記スイッチング素子が接続されている、
請求項1に記載の基板パッケージ。
【請求項3】
前記放熱部が配置されている前記パターン部は、電気的な接続がされていないダミーパターン部であり、
前記ダミーパターン部には、前記スイッチング素子が接続されていない、
請求項1に記載の基板パッケージ。
【請求項4】
前記パターン部を複数備えており、
前記複数のパターン部には、第1パターン部と第2パターン部とが含まれており、
前記第1パターン部は、前記スイッチング素子と接続されており、
前記第2パターン部は、電気的な接続がされていないダミーパターン部であり、前記スイッチング素子が接続されておらず、
前記放熱部は、前記放熱部として第1放熱部と第2放熱部とを有しており、
前記第1放熱部は、前記第1パターン部上であって前記樹脂に覆われていない部分に配置されており、
前記第2放熱部は、前記第2パターン部上であって前記樹脂に覆われていない部分に配置されている、
請求項1に記載の基板パッケージ。
【請求項5】
前記放熱部は、半田で形成されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の基板パッケージ。
【請求項6】
前記基板の前記パターン部が設けられている面と垂直な方向において、前記放熱部は前記樹脂より厚い、
請求項1から5のいずれか1項に記載の基板パッケージ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の基板パッケージと、
前記モータと、
を備える、
電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に基板パッケージ及び電動工具に関し、より詳細には、基板を備える基板パッケージ及び基板パッケージを備える電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ブラシレスモータを用いた電動工具のインバータ回路基板が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-214518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような、電動工具に用いられる回路基板(基板)では、スイッチング素子等が駆動することにより基板上で発生する熱を逃がしやすくすることが望まれている。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされており、基板上で発生する熱を逃がしやすくする基板パッケージ及び電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る基板パッケージは、電動工具に用いられるモータを駆動するためのスイッチング素子が搭載されている。前記基板パッケージは、基板と、パターン部と、樹脂と、放熱部と、絶縁樹脂と、放熱シートと、を備えている。前記基板は、電気絶縁性を有する。前記パターン部は、前記基板の表面に形成されており、導電性を有している。前記樹脂は、前記パターン部の一部を覆っている。前記放熱部は、前記パターン部上であって前記樹脂に覆われていない部分に配置されており、前記樹脂よりも熱伝導率が高い。前記絶縁樹脂は、電気絶縁性を有し、空気よりも熱伝導率が高い。前記放熱シートは、前記放熱部の表面と接触するように配置されている。前記放熱シートは、柔軟性及び電気絶縁性を有し、前記空気よりも熱伝導率が高い。前記絶縁樹脂は、前記放熱部及び前記放熱シートを覆っている。
【0007】
電動工具は、前記基板パッケージと、前記モータと、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、基板上で発生する熱を逃がしやすくする基板パッケージ及び電動工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る電動工具の概略構成を示す概略図である。
図2図2は、同上の電動工具の要部の分解斜視図である。
図3図3は、同上の電動工具における基板パッケージ及びモータの斜視図である。
図4図4は、同上の基板パッケージの分解斜視図である。
図5図5は、同上の基板パッケージにおける駆動基板の平面図である。
図6図6は、図5のA-A線における断面図である。
図7図7は、変形例に係る電動工具の要部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。本開示において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さのそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。なお、図面中の各方向を示す矢印は一例であり、電動工具1の使用時の方向を規定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0011】
(1)概要
まず、本実施形態に係る電動工具1の概要について、図1図4及び図6を参照して説明する。以下の説明では、回転軸111の軸方向に沿う方向を前後方向と規定し、回転軸111から見てドライバビット18等の先端工具側を前、回転軸111から見て基板パッケージ2側を後とする。また、以下の説明では、胴体部101と装着部103とが並んでいる方向を上下方向と規定し、装着部103から見て胴体部101側を上とし、胴体部101から見て装着部103側を下とする。
【0012】
図1に示すように、電動工具1は、例えば電池パック17等の動力源からの動力(電力等)によって動作する。具体的には、電池パック17から電力が供給されたモータ11(駆動源)の回転軸111が回転し、伝達機構12を介して出力軸13に回転駆動力が伝達される。例えばドライバビット18等の先端工具を脱着可能な取付部14(チャック)は、出力軸13に固定されている。すなわち、出力軸13が回転すると取付部14も回転する。この取付部14に先端工具が取り付けられている場合、電動工具1は、作業対象となるワーク(加工対象物)に対して、締結部品(例えば、ネジ等)を取り付けることができる。
【0013】
本実施形態の電動工具1のハウジング10には、基板パッケージ2、モータ11、及び伝達機構12等が収納されている。図4に示すように、基板パッケージ2は、モータ11を駆動するための駆動基板3を有している。
【0014】
駆動基板3は、モータ11を駆動するための複数(図4の例では6個)のスイッチング素子E1~E6を有している。6個のスイッチング素子E1~E6は、モータ11を駆動する際に、ジュール熱によって発熱する。
【0015】
本実施形態の基板パッケージ2は、図6に示すように、基板31の表面に形成されているパターン部32上であって樹脂33(レジスト)に覆われていない部分に配置されている放熱部34を備えている。放熱部34は樹脂33よりも熱伝導率が高いため、パターン部32上に樹脂33の代わりに放熱部34が配置されることで、パターン部32からの放熱経路の熱抵抗値が小さくなる。そのため、本実施形態の基板パッケージ2は、駆動基板3の基板31上で発生する熱を逃がしやすい構成である。
【0016】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る電動工具1の詳細な構成について、図1図6を参照して説明する。
【0017】
(2.1)電動工具の構成
まず、本実施形態に係る電動工具1の構成について図1図3を参照して説明する。
【0018】
図1に示すように、電動工具1は、作業者が片手で把持可能な可搬型の電動工具である。電動工具1は、ハウジング10と、モータ11と、伝達機構12と、出力軸13と、取付部14と、トリガ15と、制御部16と、を備えている。
【0019】
ハウジング10は、胴体部101と、グリップ部102と、装着部103とを有している。胴体部101の形状は、後端が有底の筒状である。胴体部101は、基板パッケージ2と、モータ11と、伝達機構12とを収容している。グリップ部102は、胴体部101から下側に突出している。装着部103は、電池パック17が取り外し可能に装着されるように構成されている。本実施形態では、装着部103は、グリップ部102の先端部(下端部)に設けられている。言い換えれば、胴体部101と装着部103とが、グリップ部102にて連結されている。
【0020】
電動工具1には、充電式の電池パック17が着脱可能に取り付けられる。本実施形態の電動工具1は、電池パック17を電源として動作する。すなわち、電池パック17は、モータ11を駆動する電流を供給する電源である。電池パック17は、電動工具1の構成要素ではない。ただし、電動工具1は、電池パック17を備えていてもよい。電池パック17は、複数の二次電池(例えば、リチウムイオン電池)を直列接続して構成された組電池と、組電池を収容したケースと、を備えている。
【0021】
トリガ15は、グリップ部102から突出している。トリガ15は、モータ11の回転を制御するための操作を受け付ける操作部である。トリガ15を引く操作により、モータ11のオンオフを切替え可能である。また、トリガ15を引く操作の引込み量で、モータ11の回転速度を調整可能である。上記引込み量が大きい程、モータ11の回転速度が速くなる。
【0022】
制御部16は、トリガ15に対する操作に応じてモータ11の回転速度を制御する。具体的には、制御部16は、トリガ15の引込み量に応じて、モータ11の回転速度を制御するための制御信号を基板パッケージ2の駆動基板3に出力する。
【0023】
基板パッケージ2は、モータ11を駆動するための駆動基板3を有しており、制御部16から出力される制御信号に基づいてモータ11を駆動する。図2に示すように、基板パッケージ2は、モータ11の後側で、ハウジング10の胴体部101に収容される。また、基板パッケージ2は、複数(図2の例では4個)のねじ21を有している。4個のねじ21が、モータ11が有する複数のねじ孔114(図3参照)と嵌合することで、モータ11に対して基板パッケージ2が固定される。基板パッケージ2の詳細については、「(2.2)基板パッケージの構成」の欄で説明する。
【0024】
モータ11は、回転軸111を備えており、電池パック17から供給される電力を回転軸111の回転駆動力に変換する。本実施形態のモータ11は、インナーロータ型のブラシレスモータである。図2に示すように、モータ11は、基板パッケージ2の前側で、胴体部101に収容される。
【0025】
図3に示すように、モータ11は、複数(図3の例では9個)のコイル112と、複数(図3の例では3個)の接続端子113と、複数(図3の例では4個)のねじ孔114とを有している。3個の接続端子113は、9個のコイル112と、基板パッケージ2の駆動基板3とを電気的に接続する端子である。すなわち、3個の接続端子113を介して、9個のコイル112と駆動基板3とが電気的に接続される。4個のねじ孔114は、基板パッケージ2の4個のねじ21が嵌合するねじ孔である。
【0026】
図1に示すように、伝達機構12は、胴体部101の内部空間においてモータ11より前側に位置している。伝達機構12は、モータ11の回転軸111から伝達される回転駆動力を、出力軸13に伝達する機構である。なお、本実施形態の伝達機構12は、アンビルに回転打撃を加えることで大きな締付トルクを発生させるインパクト機構を含んでいる。すなわち、本実施形態の電動工具1はインパクト回転工具である。
【0027】
出力軸13の先端(前端)には取付部14が設けられている。取付部14は、例えばドライバビット18やドリルビット等の先端工具が着脱できる。出力軸13が回転するのに伴い、取付部14に取り付けられた先端工具が回転する。図1に示すようにドライバビット9が取付部14に取り付けられている場合、ドライバビット9が締結部材(ねじ等)に当てられた状態でドライバビット9が回転することにより、締結部材を締め付ける又は緩めるといった作業が可能となる。
【0028】
(2.2)基板パッケージの構成
次に、本実施形態に係る基板パッケージ2の構成について図3図6を参照して説明する。
【0029】
図3に示すように、本実施形態の基板パッケージ2は、駆動基板3と、放熱シート4(絶縁樹脂)と、固定板5と、ポッティング部6(絶縁樹脂)とを備えている。
【0030】
図4に示すように、駆動基板3は、基板31と、複数(図4の例では6個)のスイッチング素子E1~E6とを有している。基板31には、複数(図4の例では4個)の第1凹部311と、複数(図4の例では3個)の第2凹部312(図5参照)と、が形成されている。4個の第1凹部311及び3個の第2凹部312は、回転軸111(図2参照)の径方向において、内側に向かって凹んだ形状をしている。特に3個の第2凹部312は、円弧状に凹んでいる。4個の第1凹部311に、固定板5が有する複数(図2の例では4個)の突出部52が嵌まることにより、固定板5に対する駆動基板3の位置決めがされる。3個の第2凹部312に3個のねじ23が嵌まった状態で、3個のねじ23が固定板5の3個のねじ孔51に嵌合される。これにより、駆動基板3は、固定板5に対して固定される。また、基板31には複数(図4の例では3個)の孔313が形成されている。3個の孔313には、3個の接続端子113(図3参照)が通される。駆動基板3の詳細については、「(2.3)駆動基板の構成」の欄で説明する。
【0031】
放熱シート4は、例えばシリコーン樹脂等で形成されており、柔軟性と電気絶縁性とを有している。言い換えると、放熱シート4は絶縁樹脂である。また、常温での放熱シート4の熱伝導率は0.5~10.0W/m・K程度であり、空気の熱伝導率(25mW/m・K程度)と比べて遥かに高い。このような放熱シート4が駆動基板3と接触するように配置されることで、駆動基板3の放熱性能を向上させることができる。
【0032】
放熱シート4の基部40には、複数(図4の例では4個)の凹部41と、複数(図4の例では3個)の孔42が形成されている。4個の凹部41は、回転軸111(図2参照)の径方向において、内側に向かって凹んだ形状をしている。4個の凹部41に固定板5の4個の突出部52が嵌まることにより、固定板5に対する放熱シート4の位置決めがされる。3個の孔42は、3個の接続端子113と基部40とが接触しないように設けられている。4個の凹部41と固定板5の4個の突出部52とが嵌合した状態で、放熱シート4は、前後方向において駆動基板3と固定板5とに挟まれるようにして配置される。また、放熱シート4は、駆動基板3の後面側に接触するように配置される。
【0033】
固定板5は、例えばアルミニウムや鉄等の金属で形成されている。本実施形態の固定板5はアルミニウムで形成されている。アルミニウムは導電性を有するため、固定板5は、電気絶縁性を有する放熱シート4を介して駆動基板3の後面側に配置される。
【0034】
固定板5の基部50には、3個のねじ孔51と、4個の突出部52と、複数(図4の例では3個)の孔53とが形成されている。3個のねじ孔51には、3個のねじ23が嵌合する。4個の突出部52は、基部50から前方に突出している。4個の突出部52は、駆動基板3の4個の第1凹部311及び放熱シート4の4個の凹部41に嵌まる形状をしている。3個の孔53は、3個の接続端子113と基部50とが接触しないように設けられている。4個の突出部52が4個の第1凹部311及び4個の凹部41に嵌まった状態で、3個のねじ孔51に3個のねじ23が嵌合される。これにより、固定板5と駆動基板3とで放熱シート4を挟み込んだ状態で、固定板5と駆動基板3と放熱シート4とが一体的に固定される。
【0035】
また、4個の突出部52には、複数(図4の例では4個)の孔521が形成されている。固定板5と駆動基板3と放熱シート4とが一体的に固定された状態で、4個の孔521に4個のねじ21が通される。4個の孔521に4個のねじ21が通された状態で、4個のねじ21がモータ11(図3参照)の4個のねじ孔114(図3参照)と嵌合することで、固定板5、駆動基板3及び放熱シート4と、モータ11とが固定される。
【0036】
ポッティング部6は、例えばウレタン樹脂等で形成されており、電気絶縁性を有している。言い換えると、ポッティング部6は、絶縁樹脂である。ポッティング部6は、駆動基板3の電気絶縁性、防水性、防塵性、又は耐振動性を向上させる目的で用いられている。また、常温でのポッティング部6の熱伝導率は0.2~1.0W/m・K程度であり、空気の熱伝導率(25mW/m・K程度)と比べて遥かに高い。
【0037】
図3に示すように、ポッティング部6は、一体的に固定された駆動基板3と放熱シート4と固定板5とを覆うようにして形成されている。また、駆動基板3と放熱シート4との間、放熱シート4と固定板5との間、又は駆動基板3と固定板5との間に隙間がある場合、当該隙間にはポッティング部6を構成する樹脂によって埋められる。なお、本開示でいう「覆う」とは、ある部材を直接的に覆うことの他に、他の部材を介して当該ある部材を間接的に覆うことも含む。例えば駆動基板3のスイッチング素子E1(図4参照)が放熱シート4に覆われポッティング部6が放熱シート4を更に覆う場合、「ポッティング部6がスイッチング素子E1を覆う」という。
【0038】
ポッティング部6は、駆動基板3と放熱シート4と固定板5とが一体的に固定され、かつ、固定板5とモータ11とが一体的に固定された状態のときに、駆動基板3と放熱シート4と固定板5とを覆うように形成される。
【0039】
(2.3)駆動基板の構成
次に、本実施形態に係る駆動基板3の構成について図5及び図6を参照して説明する。
【0040】
図6に示すように、本実施形態の駆動基板3は、基板31と、パターン部32と、樹脂33(ソルダーレジスト)と、放熱部34と、を有している。
【0041】
基板31は、例えば紙の基材とフェノール樹脂等で形成される紙フェノール基板や、ガラス布の基材とエポキシ樹脂等で形成されるガラスエポキシ基板等の電気絶縁性を有する基板である。本開示でいう「基板」は、基板が4層以上の構成である場合には、プリプレグを含む。
【0042】
パターン部32は、基板31の表面に形成されている。本開示でいう「基板31の表面」とは、基板31の前面又は後面のことをいう。パターン部32は、例えば銅等の金属で形成されており、導電性を有する。
【0043】
図5に示すように、本実施形態の駆動基板3は、複数(図5の例では6個)のパターン部32を有している。複数のパターン部32には、第1パターン部321と、第2パターン部322と、複数(図5の例では3個)の第3パターン部323と、第4パターン部324とが含まれている。
【0044】
第1パターン部321は、駆動基板3の領域A1に形成されている。第1パターン部321は、6個のスイッチング素子E1~E6のうちの少なくとも1個と接続されている。図6に示すように、第1パターン部321には、スイッチング素子E2の接続端子T2が接続されている。なお、本実施形態の第1パターン部321は、3個のスイッチング素子E1~E3(図5参照)と接続されている。第1パターン部321に3個のスイッチング素子E1~E3の接続端子が半田を介して接続されていてもよい。第1パターン部321はスイッチング素子E2と接続されているため、第1パターン部321にはスイッチング素子E2で発生した熱が接続端子T2から伝わる。したがって、第1パターン部321は、スイッチング素子E2で発生した熱が伝わりやすい部分である。
【0045】
図5に示すように、第2パターン部322は、駆動基板3の領域A2に形成されている。第2パターン部322は、6個のスイッチング素子E1~E6等の電子部品(素子)と電気的に接続されていないダミーパターン部である。すなわち、第2パターン部322は、6個のスイッチング素子E1~E6のいずれとも接続されていない。第2パターン部322には、基板31を介して、6個のスイッチング素子E1~E6で発生した熱が伝わる。
【0046】
3個の第3パターン部323は、3個の領域A3~A5に形成されている。3個の第3パターン部323は、3個の孔313の周囲に形成されている。3個の第3パターン部323には、3個の接続端子113が接続される。すなわち、3個の第3パターン部323は、3個の接続端子113を介して、モータ11(図3参照)の9個のコイル112(図3参照)と接続される。また、3個の第3パターン部323は、3個のスイッチング素子E1~E3のうちの1個と、3個のスイッチング素子E4~E6のうちの1個と、接続されている。領域A3に形成されている第3パターン部323は、スイッチング素子E1及びスイッチング素子E4と接続されている。領域A4に形成されている第3パターン部323は、スイッチング素子E2及びスイッチング素子E5と接続されている。領域A5に形成されている第3パターン部323は、スイッチング素子E3及びスイッチング素子E6と接続されている。3個の第3パターン部323は6個のスイッチング素子E1~E6のうちの2個と接続されているため、3個の第3パターン部323には6個のスイッチング素子E1~E6のうちの2個で発生した熱が接続端子から伝わる。したがって、3個の第3パターン部323は、6個のスイッチング素子E1~E6のうちの2個で発生した熱が伝わりやすい部分である。
【0047】
第4パターン部324は、6個のスイッチング素子E1~E6以外の素子である2個のダイオードD1~D2と接続されている。第4パターン部324には、6個のスイッチング素子E1~E6は接続されていない。言い換えると、第4パターン部324は、6個のスイッチング素子E1~E6以外の素子と接続されており、6個のスイッチング素子E1~E6とは接続されていない。
【0048】
図6に示すように、樹脂33は、パターン部32の一部を覆っている薄膜樹脂である。本実施形態の樹脂33は、第1パターン部321の一部と、第2パターン部322の一部と、3個の第3パターン部323の各々の一部とを覆っている。常温での樹脂33の熱伝導率は数100mW/m・K程度である。
【0049】
放熱部34は、パターン部32上であって樹脂33に覆われていない部分に配置されている。図6の例では、放熱部34は、第1パターン部321上であって樹脂33に覆われていない部分に配置されている。本実施形態の放熱部34は半田で形成されている。常温での半田の熱伝導率は45W/m・K程度であり、樹脂33の熱伝導率と比べて遥かに高い。
【0050】
また、本実施形態の放熱部34は、パターン部32が設けられている面と垂直な方向(前後方向)において、樹脂33より厚い。言い換えると、放熱部34の前後方向の厚み寸法は、樹脂33の前後方向の厚み寸法より大きい。放熱部34は、放熱シート4及びポッティング部6に覆われている。放熱部34の表面は放熱シート4と接触している。また、放熱部34と放熱シート4との間に隙間がある場合には、ポッティング部6を構成する樹脂で当該隙間が埋められることにより、放熱部34はポッティング部6と接触する。
【0051】
図5に示すように、本実施形態の駆動基板3は、複数(図5の例では6個)の放熱部34を有している。領域A1に形成されている5個の放熱部34は、第1パターン部321上であって樹脂33に覆われていない部分に形成されている第1放熱部341である。また、領域A2に形成されている放熱部34は、第2パターン部322上であって樹脂33に覆われていない部分に形成されている第2放熱部342である。
【0052】
(3)作用効果
上述のように、本実施形態の電動工具1は、基板パッケージ2とモータ11とを備えている。また、本実施形態の基板パッケージ2は、パターン部32上であって樹脂33(ソルダーレジスト)に覆われていない部分に配置されている放熱部34を備えている。本実施形態の放熱部34は樹脂33より熱伝導率が高いため、パターン部32から熱を逃がしやすくすることができる。これにより、基板31上で発生する熱を逃がしやすくすることができる。
【0053】
また、本実施形態のパターン部32は銅で形成されている。銅は比較的熱伝導率が高いため、基板31上で発生する熱をより逃がしやすくすることができる。
【0054】
また、本実施形態の基板パッケージ2は、放熱部34の表面と接触するように配置されている放熱シート4又はポッティング部6を更に備えている。放熱シート4及びポッティング部6は空気よりも熱伝導率が高いため、パターン部32から熱をより逃がしやすくすることができる。
【0055】
また、本実施形態の放熱シート4又はポッティング部6は、少なくとも放熱部34を覆っている。放熱シート4又はポッティング部6が放熱部34を覆っているため、基板31上で発生した熱を放熱部34から放熱シート4又はポッティング部6に逃がしやすくすることができる。
【0056】
また、本実施形態の第1放熱部341が配置されている第1パターン部321には、3個のスイッチング素子E1~E3が接続されている。これにより、3個のスイッチング素子E1~E3で発生した熱を逃がしやすくすることができる。
【0057】
また、本実施形態の第2放熱部342が配置されている第2パターン部322には、電気的な接続がされていないダミーパターン部である。また、第2パターン部322には、6個のスイッチング素子E1~E6のいずれも接続されていない。駆動基板3の空きスぺースに、第2パターン部322を形成し、第2パターン部322上に樹脂33の代わりに第2放熱部342を配置することで、第2パターン部322から熱を逃がしやすくすることができる。
【0058】
本実施形態では、第1放熱部341が第1パターン部321上であって樹脂33に覆われていない部分に配置されており、第2放熱部342が第2パターン部322上であって樹脂33に覆われていない部分に配置されている。これにより、第1パターン部321から熱を逃がしやすくすると共に、第2パターン部322から熱を逃がしやすくすることができる。
【0059】
本実施形態では、放熱部34は半田で形成されている。半田の熱伝導率は樹脂33と比べて遥かに高いため、放熱部34から熱をより逃がしやすくすることができる。
【0060】
本実施形態では、前後方向において放熱部34は樹脂33より厚いため、放熱部34と、放熱シート4又はポッティング部6とが接触しやすくなり、放熱部34から放熱シート4又はポッティング部6に熱をより逃がしやすくすることができる。
【0061】
(4)変形例
以下、上記実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、上記実施形態と適宜組み合わせて適用可能である。
【0062】
3個の第3パターン部323のうちの少なくとも1個以上に、1個以上の第3放熱部が形成されていてもよい。第3放熱部は、第3パターン部323上であって樹脂33に覆われていない部分に配置される。第3放熱部が形成されることで、第3パターン部323から熱を逃がしやすくすることができる。
【0063】
第4パターン部324上であって樹脂33に覆われていない部分に配置される第4放熱部が形成されていてもよい。第4放熱部が形成されることで、第4パターン部324から熱を逃がしやすくすることができる。
【0064】
放熱部34は、導電性ポリマー等で形成されていてもよい。また、上述の第1放熱部341、第2放熱部342、第3放熱部、及び第4放熱部の全てが同一の物質で形成されている必要はない。例えば第1放熱部341が半田で形成され、第2放熱部342が導電性ポリマーで形成されるようにしてもよい。
【0065】
樹脂33は、第2パターン部322の一部を覆っていなくてもよい。
【0066】
また、図7に示すように、基板パッケージ2aがモータ11aの前側の位置に配置されるようにして、ハウジング10aに収容されるようにしてもよい。基板パッケージ2aは、モータ11aの回転軸115が通される孔22を備えている。モータ11aの回転軸115は軸受19によって支持される。
【0067】
電動工具1は、先端工具にインパクトを加えることにより締結部品を締め付けるインパクトドライバではなく、ドリルドライバであってもよい。
【0068】
また、上記実施形態の電動工具1は、先端工具を用途に応じて交換可能であるが、先端工具が交換可能であることは必須ではない。例えば、電動工具1は、特定の先端工具のみ用いることができる電動工具であってもよい。
【0069】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る基板パッケージ(2;2a)は、電動工具(1)に用いられるモータ(11;11a)を駆動するためのスイッチング素子(E1;E2;E3)が搭載されている。基板パッケージ(2;2a)は、基板(31)と、パターン部(32)と、樹脂(33)と、放熱部(34)と、を備えている。基板(31)は、電気絶縁性を有する。パターン部(32)は、基板(31)の表面に形成されており、導電性を有している。樹脂(33)は、パターン部(32)の一部を覆っている。放熱部(34)は、パターン部(32)上であって樹脂(33)に覆われていない部分に配置されており、樹脂(33)よりも熱伝導率が高い。
【0070】
この態様によれば、パターン部(32)上に樹脂(33)の代わりに放熱部(34)を配置することにより、パターン部(32)からの放熱経路における熱抵抗を下げることができる。これにより、スイッチング素子(E1;E2;E3)等が駆動することにより基板(31)上で発生する熱を逃がしやすくすることができる。
【0071】
第2の態様に係る基板パッケージ(2;2a)は、第1の態様において、絶縁樹脂(放熱シート4;ポッティング部6)を更に備える。絶縁樹脂(放熱シート4;ポッティング部6)は、放熱部(34)の表面と接触するように配置されている。絶縁樹脂(放熱シート4;ポッティング部6)は、電気絶縁性を有し、空気よりも熱伝導率が高い。
【0072】
この態様によれば、空気よりも熱伝導率の高い絶縁樹脂(放熱シート4;ポッティング部6)が放熱部(34)の表面と接触しているため、パターン部(32)からの放熱経路における熱抵抗をより下げることができる。
【0073】
第3の態様に係る基板パッケージ(2;2a)では、第2の態様において、絶縁樹脂(放熱シート4;ポッティング部6)は、少なくとも放熱部(34)を覆っている。
【0074】
この態様によれば、絶縁樹脂(放熱シート4;ポッティング部6)が放熱部(34)を覆っているため、基板(31)上で発生する熱が放熱部(34)から絶縁樹脂(放熱シート4;ポッティング部6)に逃げやすくすることができる。
【0075】
第4の態様に係る基板パッケージ(2;2a)では、第1から第3のいずれかの態様において、放熱部(34)が配置されているパターン部(32)には、スイッチング素子(E1;E2;E3)が接続されている。
【0076】
この態様によれば、発熱量の多いスイッチング素子(E1;E2;E3)が接続されているパターン部(32)からの放熱経路における熱抵抗を下げることができる。
【0077】
第5の態様に係る基板パッケージ(2;2a)では、第1から第3のいずれかの態様において、放熱部(34)が配置されているパターン部(32)は、電気的な接続がされていないダミーパターン部である。ダミーパターン部には、スイッチング素子(E1;E2;E3)が接続されていない。
【0078】
この態様によれば、基板(31)の空きスペース等にダミーパターン部を形成し、ダミーパターン部からの放熱経路における熱抵抗を下げることができる。
【0079】
第6の態様に係る基板パッケージ(2;2a)は、第1から第3の態様において、パターン部(32)を複数備えている。複数のパターン部(32)には、第1パターン部(321)と第2パターン部(322)と含まれている。第1パターン部(321)は、スイッチング素子(E1;E2;E3)と接続されている。第2パターン部(322)は、電気的な接続がされていないダミーパターン部であり、スイッチング素子(E1;E2;E3)が接続されていない。放熱部(34)は、放熱部(34)として第1放熱部(341)と第2放熱部(342)とを有している。第1放熱部(341)は、第1パターン部(321)上であって樹脂(33)に覆われていない部分に配置されている。第2放熱部(342)は、第2パターン部(322)上であって樹脂(33)に覆われていない部分に配置されている。
【0080】
この態様によれば、スイッチング素子(E1;E2;E3)が接続されている第1パターン部(321)に第1放熱部(341)が配置されると共に、ダミーパターン部である第2パターン部(322)に第2放熱部(342)が配置されることで、基板(31)上で発生する熱をより逃がしやすくすることができる。
【0081】
第7の態様に係る基板パッケージ(2;2a)では、第1から第6のいずれかの態様において、放熱部(34)は、半田で形成されている。
【0082】
この態様によれば、スイッチング素子(E1;E2;E3)をパターン部(32)に実装するときなどに使用する半田で放熱部(34)を形成することで、容易に放熱部(34)を形成することができる。
【0083】
第8の態様に係る基板パッケージ(2;2a)では、第1から第7のいずれかの態様において、基板(31)のパターン部(32)が設けられている面と垂直な方向において、放熱部(34)は樹脂(33)より厚い。
【0084】
この態様によれば、放熱部(34)が樹脂(33)より厚いことで、放熱部(34)と絶縁樹脂(放熱シート4;ポッティング部6)とが接触しやすくなり、パターン部(32)からの放熱経路における熱抵抗を下げることができる。
【0085】
第1の態様以外の構成については、基板パッケージ(2;2a)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【0086】
第9の態様に係る電動工具(1)は、第1から第8のいずれかの態様に係る基板パッケージ(2;2a)と、モータ(11,11a)とを備える。
【0087】
この態様によれば、基板パッケージ(2;2a)において、パターン部(32)上に樹脂(33)の代わりに放熱部(34)を配置することにより、パターン部(32)からの放熱経路における熱抵抗を下げることができる。これにより、スイッチング素子(E1;E2;E3)等が駆動することにより基板(31)上で発生する熱を逃がしやすくすることができる。
【符号の説明】
【0088】
1 電動工具
2,2a 基板パッケージ
31 基板
32 パターン部
321 第1パターン部
322 第2パターン部
33 樹脂
34 放熱部
341 第1放熱部
342 第2放熱部
4 放熱シート(絶縁樹脂)
6 ポッティング部(絶縁樹脂)
11,11a モータ
E1~E6 スイッチング素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7