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特許7564709整形外科軟部組織の作製、製造または生産方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】整形外科軟部組織の作製、製造または生産方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/28 20060101AFI20241002BHJP
   A61F 2/08 20060101ALI20241002BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
A61F2/28
A61F2/08
B29C39/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020518752
(86)(22)【出願日】2018-10-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 US2018056642
(87)【国際公開番号】W WO2019079678
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】62/574,524
(32)【優先日】2017-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505261335
【氏名又は名称】ニューヨーク ソサエティ フォー ザ レリーフ オブ ザ ラプチャード アンド クリップルド, メインテイニング ザ ホスピタル フォー スペシャル サージェリー
【氏名又は名称原語表記】NEW YORK SOCIETY FOR THE RELIEF OF THE RUPTURED AND CRIPPLED, MAINTAINING THE HOSPITAL FOR SPECIAL SURGERY
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン,トニー
(72)【発明者】
【氏名】マーハー,スザンヌ エー.
(72)【発明者】
【氏名】ワーレン,ラッセル
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-508540(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0023130(US,A1)
【文献】特表2005-529682(JP,A)
【文献】特表2004-535242(JP,A)
【文献】特表平10-501155(JP,A)
【文献】特表平07-505792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/28
A61F 2/08
B29C 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分的に架橋されたポリマーに、少なくとも1つの外力を加えることと、人工整形外科軟部組織の線維配向が天然に存在する整形外科軟部組織の線維配向を模倣または再現できるようにする条件下かつその間、前記少なくとも1つの外力を加えながら前記部分的に架橋されたポリマーを更に架橋させることとを含み、前記部分的に架橋されたポリマーに少なくとも1つの外力を加えることにより、前記部分的に架橋されたポリマーに内力が生じる、人工整形外科軟部組織を作製、製造および/または生産する方法。
【請求項2】
前記人工整形外科軟部組織が軟骨であり、前記少なくとも1つの外力が、前記部分的に架橋されたポリマーに複数の異なる方向で加えられる径方向の力(F)を含み、前記部分的に架橋されたポリマーに圧縮力及び引張力の内力が生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記人工整形外科軟部組織が半月板であり、前記少なくとも1つの外力が、前記部分的に架橋されたポリマーに加えられる引張力を含み、前記部分的に架橋されたポリマーに周方向の力(F)、圧縮力及び引張力の内力が生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマーが架橋可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマーが、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリウレタン、ポリカーボネートウレタン、超高分子量ポリエチレン、ポリアクリル酸、コラーゲン、キトサン、ヒアルロン酸およびその他の合成または天然ポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマーの濃度が前記人工整形外科軟部組織の約10%~約40%の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記架橋が1以上の凍結/解凍サイクル、化学剤への曝露、またはUV光への曝露によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記凍結/解凍サイクルが
a.温度を約0.5℃/分の速度で約-20℃までランピングするステップと、
b.前記ポリマーを約‐20℃で約4~約24時間凍結させるステップと、
c.温度を約0.5℃/分の速度で約20℃までランピングするステップと、
d.前記ポリマーを約20℃で約4~約12時間解凍するステップと、を含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマーが、追加のポリマー、冷却ゲル、またはヒドロゲル、剛性多孔質ベース、天然組織、またはそれらの組み合わせに付着またはつなげられる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年10月19日に出願された米国特許出願第62/574,524号に対する優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、合成ポリマーおよび天然ポリマーを使用して、軟骨、半月板、線維輪、および腱/靭帯を含む人工整形外科軟部組織を作製、製造および/または生産する改善された方法に関する。この方法により、線維が天然に存在する組織と同じくまたはほぼ同じく整列した人工軟部組織がもたらされる。
【0003】
本発明はまた、本発明の方法を実施するための金型および他の装置を含む。
【背景技術】
【0004】
関節負荷は、体内の組織の発達および特性において重要な役割を果たしている。これが最も明白な1つの場所は軟骨の細胞外マトリックスであり、組織の深さに亘ってコラーゲン線維配列の異なるゾーンが存在する。軟骨は、3つのゾーン、すなわち、組織の約10~20%である骨から最も遠い表面接線ゾーン、組織の約40~60%である中間ゾーン、および組織の約30%である深いゾーン、から構成されている。この配列を再生することを試みて生理的な力が適用されているが、今まで、この構造を完全に再現することに成功していない。出生後の軟骨の観察により、負荷が加えられる前にその場でこの規定された構造の発生が示され、他の制約が構造を推進している可能性が開かれた。そのような要因の1つは、出生後の急速な細胞成長と成熟である。
【0005】
本発明は、これらの観察を使用して、天然組織を模倣する人工軟骨および他の整形外科軟部組織を生成する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、部分的に架橋されたポリマーに力を加えることと、人工整形外科軟部組織の線維配向が天然に存在する整形外科軟部組織の線維配向を模倣または再現できるようにする条件下でかつその時間の間、力を加えながらポリマーを架橋させることとを含む、人工整形外科軟部組織を作製、製造および/または生産する新規方法を提供することによって、当該技術における課題を克服する。
【0007】
いくつかの実施形態では、整形外科軟部組織は軟骨であり、軟骨は関節である。
【0008】
さらなる実施形態では、整形外科軟部組織は、半月板、線維輪、または腱/靭帯である。
【0009】
いくつかの実施形態では、整形外科軟部組織は独立している。いくつかの実施形態では、整形外科軟部組織が、別の冷却ゲル、ポリマー、またはヒドロゲル、多孔質PEEKまたは多孔質チタンなどの材料からなる少なくとも1つの剛性多孔質ベース、および/または天然組織に付着される。
【0010】
いくつかの実施形態では、本発明は、
a.金型の表面上にポリマーの均一な層を配置するステップであって、金型は半球として成形され、
b.ポリマーを部分的に架橋するステップと、
c.部分的に架橋されたポリマーおよび金型をエキスパンダ上に配置するステップであって、エキスパンダは半球として成形され、金型上のポリマーを径方向に膨張させることができ、
d.エキスパンダがポリマーを径方向に膨張させている間にポリマーを架橋するステップと、
e.金型からポリマーを取り外すステップと、を含む人工軟骨を作製、製造および/または生産する方法を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態では、本発明は、
a.ネガティブ金型でポリマーを成形するステップであって、金型は、ポリマーを注入するための入口ポート、ポリマーを含む領域、および少なくとも1つの剛性多孔質ベースのための領域を含み、
b.ポリマーを部分的に架橋するステップと、
c.ポリマーおよび少なくとも1つの剛性多孔質ベースを金型から取り外すステップと、
d.部分的に架橋されたポリマーと少なくとも1つの剛性多孔質ベースをローディングフレーム上に配置するステップであって、ローディングフレームは、ポストと、ポリマーおよび剛性多孔質ベースを所定の位置に保つための少なくとも1つのネジと、ポリマーに力を加えるクランクとを含み、
e.ポリマーを架橋するステップと、
f.ポリマーおよび剛性多孔質ベースをローディングフレームから取り外すステップと、を含む、人工半月板を作製、製造および生産する方法を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態では、ポリマーは架橋可能であり、ポリ(ビニルアルコール)、ポリウレタン、ポリカーボネートウレタン、超高分子量ポリエチレン、ポリアクリル酸、コラーゲン、キトサン、ヒアルロン酸またはその他の合成または天然のポリマーを含むが、それらに限定されるものではない。
【0013】
いくつかの実施形態では、架橋は、1つ以上の凍結/解凍サイクル、化学架橋剤の適用、および/またはUV光曝露によって行われる。
【0014】
本発明はまた、本明細書に記載の方法によって作製、製造および/または生産される人工整形軟部組織を提供する。
【0015】
本発明はまた、この方法を実施するための金型、エキスパンダおよび他の装置を提供する。
【0016】
本発明はキットも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明を例示する目的で、本発明の特定の実施形態を図面に示す。ただし、本発明は、図面に示された実施形態の正確な配置および手段に限定されない。
【0018】
図1】人工関節整形外科軟部組織を作製、製造または生産するときにポリマーに力を加える模式図である。図1Aは、軟骨を再生するために加えられる力を示す。図1Bは、半月板を再生するために加えられる力を示す。図1Cは、線維輪を再生するために加えられる力を示す。図1Dは、腱と靭帯を再生するために必要な力を示す。
図2】人工軟骨の作製、製造、生産に使用するための例示的な金型を示す。図2Aは、金型の垂直断面図である。図2Bは、例示的な金型が内部にある例示的な容器を示す。
図3】人工軟骨の作製、製造、生産に使用する例示的なエキスパンダを示す。
図4】金型を構成する4つのユニットで径方向の力を使用して人工軟骨を作製、製造、または生産するために使用する例示的な金型を示す。図4Aは、金型の構成要素の分解図である。図4Bは、組み立てられた金型の断面図である。
図5-1】本発明の人工軟骨が、天然に存在する軟骨と線維配列が類似していることを示す。図5Aは、3つの異なる層を示す膨張後のポリマーの8mmの生検パンチである。図5Bは、偏光下で画像化された位置を示す赤いボックスが付いた膨張ポリマーの断面図である。図5Cは、上層と下層で高複屈折を示す膨張ポリマーの偏光画像である。図5Dは、生まれたばかりのブタの関節軟骨からの軟骨の複屈折パターンの代表画像である。
図5-2】同上。
図6-1】人工半月板の作製、製造、または生産に使用する例示的な金型を示す。図6Aは金型の平面図である。図6Bは、金型の側面断面図である。図6Cは、金型から取り外した後のポリマーおよび剛性多孔質ベースである。図6Dは、金型から取り外した後のポリマーの断面図である。
図6-2】同上。
図7-1】人工半月板の作製、製造、または生産に使用される例示的なローディングフレームを示す。図7Aは、ローディングフレームの平面図である。図7Bは、ローディングフレームの側面図である。図7Cは、クランクの回転を示すローディングフレームの平面図である。図7Dは、ローディングフレームを使用したときにポリマーに加えられる力を示す。
図7-2】同上。
図8】人工半月板の厚さ100μmのスライスの偏光画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本明細書で使用される用語は、一般に、本発明の文脈および各用語が使用される特定の文脈内で、当該技術分野におけるそれらの通常の意味を有する。特定の用語は、本発明の方法およびそれらの使い方を説明する際の追加の指針を実施者に提供するために、以下または本明細書の他の部分で論じられる。さらに、当然のことながら、同じことでも複数の言い方がある。したがって、本明細書で論じられるいずれか1以上の用語に対して代替の言語および同義語を使用してもよいし、用語を本明細書で詳述または論じるかどうかに特別な意義を置くことはない。特定の用語の同義語は与えられている。1以上の同義語の記載により、他の同義語の使用を除外することはない。本明細書で論じられる用語の例を含む、本明細書のどこかにおける例の使用は実例のみであり、本発明または例示される用語の範囲および意味を決して限定しない。同様に、本発明はその好ましい実施形態に限定されない。
【0020】
「約」または「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値の許容誤差範囲内であることを意味し、これは値の測定または決定方法、すなわち、測定システムの制限、すなわち、医薬製剤などの特定の目的に必要な精度にある程度依存する。例えば、「約」は、当技術分野の慣行により、1標準偏差内または1標準偏差超を意味し得る。あるいは、「約」は所与の値の20%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%まで、さらにより好ましくは1%までの範囲を意味し得る。あるいは、特に生物学的システムまたはプロセスに関して、この用語は、値の1桁違い以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。本出願および特許請求の範囲に特定の値が記載されている場合、特に明記しない限り、特定の値の許容誤差範囲内を意味する「約」という用語と考えるのが妥当である。
【0021】
「ポリマー」という用語は、多くの場合、共有化学結合によって結び付けられた繰返し構造単位で構成される大きな分子を意味する。ポリマーは天然または合成であり得る。
【0022】
「冷却ゲル」という用語は、例えば1~10サイクルの反復凍結/解凍サイクルにより架橋されるポリマー材料を意味する。
【0023】
上記で論じたように、天然に存在する組織の線維配列を再現または模倣する軟骨および他の整形外科軟部組織を人工的に作り出すことは、今まで成功がない。軟骨における細胞の急速な成長および成熟は軟骨構造の発達における要因であり、細胞が分裂して成熟するにつれ、軟骨にかかる力が、軟骨におけるコラーゲン、すなわち線維の成長および配列に影響すると仮定された。
【0024】
この概念を使って、ポリマーが架橋されている間にポリマーに例えば、圧縮、引張などの力を加える方法およびシステムが作られた。これらの方法およびシステムにより、軟骨を含む天然に存在する整形外科軟部組織を再現または模倣する人工軟骨および他の整形外科軟部組織(図5参照)および天然に存在する半月板を再現または模倣する人工半月板(図8参照)がもたらされる。
【0025】
人工軟部整形外科組織の作製、製造、および/または生産方法
部分架橋冷却ゲル、化学架橋ポリマー、およびUV架橋ポリマーにおいて複数の方向に力を加える現在の本発明の方法は、様々な人工整形外科軟部組織の線維配列を模倣するために使用でき、軟骨(図1A)、半月板(図1B)、線維輪(図1C)、および腱/靭帯(図1D)を含むがこれらに限定されない、様々な人工整形外科軟部組織の作製、製造および/または生産に使用できる。本発明の方法は、冷却ゲルおよび架橋性ポリマー、ならびに別の冷却ゲル/ポリマーおよび/または多孔質PEEKまたは多孔質チタンなどの少なくとも1つの剛性多孔質ベースに付着したものに対して独立して実施することができる。
【0026】
図1に示すように、作製される整形外科軟部組織の種類に応じて、部分的または完全にポリマーを架橋しながら、ポリマーには様々な力が必然的に加えられる。
【0027】
図1Aは、ポリマーを架橋し、関節を含む人工軟骨を作製、製造、および/または生産するときに加えることができる力を示している。これらの力には、ポリマーの下に加えられる径方向の力(F)、およびポリマーの表面に引張をかつポリマーの基部に圧縮を生じさせる力が含まれる。実施例2で例示する方法は、ポリマーを架橋しながらこれらの力を使用して、天然軟骨と同様の線維配列を有する人工軟骨をもたらす(図5)。
【0028】
図1Bは、ポリマーを架橋し、設計された半月板を作製、製造、および/または製造するときに加えることができる力を示している。これらの力には、周方向(F)、Y(F)およびZ(F)方向の力、および引力および圧縮が含まれる。さらに、人工半月板を作製するとき、ポリマーを少なくとも1つの剛性多孔質ベースに取り付けることができる。実施例4に例示する方法は、ポリマーを架橋しながらこれらの力を使用して、天然の半月板と同様の線維配列を有する人工半月板をもたらす(図8)。
【0029】
図1Cは、ポリマーを架橋し、ねじり(Fτ)およびZ方向の力(F)を含む、人工線維輪を作製、製造、および/または生産するときに加えられる力を示す。
【0030】
図1Dは、ポリマーを架橋し、ねじり(Fτ)およびZ方向の力(F)を含む人工腱および靭帯を作製、製造、および/または生産するときに加えられる力を示す。さらに、人工腱および靭帯を作製するとき、ポリマーを少なくとも1つの多孔質ベースに取り付けることができる。
【0031】
上記のすべての方法では、使用するポリマーは架橋性であり、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリウレタン、ポリカーボネートウレタン、超高分子量ポリエチレン、ポリアクリル酸、コラーゲン、キトサン、ヒアルロン酸またはその他の合成または天然ポリマーを含む必要があるが、これらに限定されない。PVAは好ましいポリマーである。
【0032】
これらの方法のすべてでは、架橋は、1以上の凍結/解凍サイクル、化学架橋、および/またはUV光曝露により行われる。
【0033】
これらの方法のすべてにおいて、凍結/解凍のための好ましい方法は、温度を約0.5℃/分の速度で約-20℃までランピングすること、ポリマーを約-20℃で約4~約24時間、好ましくは20時間凍結して、その後温度を約0.5℃/分の速度で約20℃までランピングすること、ポリマーを約20℃で約4~約12時間、好ましくは4時間、解凍すること、とを含む。やはり、これは当業者によって変えることができる。凍結および/または解凍の両方の時間数は、サイクル数および歪み量と同様に変えることができる(表1参照)。
【0034】
これらのすべての方法では、UV架橋の好ましい方法は、30℃で液体ポリマーと共に405nmレーザを使用してポリマーを部分的に架橋し、反応性基の60%を架橋することである。この方法は、ネガティブ金型を使用するか、ステレオリソグラフィ3D印刷によって実行できる。歪み量および歪みサイクル数は、最終構造を達成するために変えることができる。
【0035】
これらのすべての方法では、化学的架橋の好ましい方法は、約0.5時間~約2時間、10%のホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、またはグルタルアルデヒドのいずれかでポリマーを部分的に架橋することである。やはり、これは当業者によって変えることができる。化学的架橋剤の濃度と曝露時間の両方を変えることができる。
【0036】
さらに、以下のパラメータも変化させて、ポリマー線維配列の量を決定することができ、所望の線維配列を有する所望の人工軟部整形外科組織を得るためにパラメータを変える方法を決定することは当該技術の範囲内にある。
【0037】
表1-人工軟部整形外科組織の作製におけるポリマー線維配列のパラメータ
【表1】
歪みサイクル=ポリマーが延伸される回数。例えば、一般にポリマーは最初の凍結/解凍サイクルの後に1回だけ延伸されるが、ポリマーは、2回目の凍結/解凍サイクルの後に再び延伸されることもあり、より整列した線維を生成できる。
歪みの割合(%)=元の形状からのポリマーの変形の割合(%)
歪み率=望ましい歪みの割合(%)に達するまでゆっくり時間を掛けて加えられた歪みの割合(%)
【0038】
人工軟骨の作製、製造および/または生産のための方法およびシステム
図1Aは、ポリマーを架橋し、関節を含む人工軟骨を作製、製造および/または生産するときに加えることができる力を示す。
【0039】
径方向の力を使用して軟骨を作製、製造または生産し、かつ引張力と圧縮力を生成する方法(図1A参照)は、
a.金型200を半球状容器300内に配置するステップであって、金型200は半球状の形状であり、少なくとも1つ、好ましくは4つなどの複数のリーフレット210と、リーフレットの自由端を受け入れかつ囲むリーフレットカラー220とを含み、
b.容器300内に液体ポリマーを注入するステップであって、容器300は金型200を囲み、
c.ポリマーを部分的に架橋して、ポリマー構造100を形成するステップと、
d.容器300から金型200およびポリマー100を取り外し、リーフレットカラー220を取り外すステップと、
e.金型200およびポリマー100をエキスパンダ400上に配置するステップであって、エキスパンダは、金型200の中央ポスト230がねじ込まれる中央ねじ込みチャネル410(エキスパンダ400の中央ボス/突起において画定される)を含む、ステップと、
f.所望の膨張に達するまで、エキスパンダ400を中央ポスト230にねじ込むことにより、表面上の金型200のポリマー100と共に金型200に向かってエキスパンダ400を進める(金型の径方向膨張は、金型の構成のために可能である)ステップと、
g.エキスパンダ400が金型200およびポリマー100を径方向に膨張させた後、ポリマー100を架橋するステップと、
h.金型からポリマーを取り外すステップと、を含むことができる(図2および3参照)。
【0040】
いくつかの実施形態では、ステップbにおける部分的架橋は、約1~約3サイクル、好ましくは1凍結/解凍サイクルによって、または約10秒~約30秒間のUV露光によって、または化学的架橋剤への曝露によって行われる。
【0041】
いくつかの実施形態では、ステップdにおける架橋は、約3~約5サイクル、好ましくは5凍結/解凍サイクルによって、または好ましくは約15分~約60分のUV光曝露によって、または化学的架橋剤への曝露によって行われる。
【0042】
いくつかの実施形態では、リーフレットエキスパンダは、好ましくは約1mm~約5mmだけ中央ポストの上方に前進される。歪み速度および最終な歪みの割合を変えるためにエキスパンダの半径を変えることができ、エキスパンダの好ましい半径は約25mm~約100mmである。
【0043】
軟骨を作製、製造または生産するためのシステムは、金型200、容器300、エキスパンダ400、およびポリマー100を含み得る。さらに、システムは、凍結/解凍またはUV光または化学的架橋剤のいずれかによってポリマーを架橋するサブシステムを含み得る。
【0044】
上記の方法およびシステムのすべてでは、使用されるポリマーは架橋性であり、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリウレタン、ポリカーボネートウレタン、超高分子量ポリエチレン、ポリアクリル酸、コラーゲン、キトサン、ヒアルロン酸またはその他の合成または天然ポリマーが含む必要があるが、これらに限定されない。PVAは好ましいポリマーである。ポリマーの濃度は、約10%~約40%の範囲であり、20%が理想的である。ポリマーは液体状態であることが好ましい。
【0045】
これらの方法のすべてにおいて、凍結/解凍の好ましい方法は、温度を約0.5℃/分の速度で約-20℃までランピングし、ポリマーを約-20℃で約4~約24時間、好ましくは20時間凍結し、次いで温度を約0.5℃/分の速度で20℃までランピングし、ポリマーを約20℃で約4~約12時間、好ましくは4時間解凍することを含むものである。やはり、これは当業者によって変えることができる。凍結および/または解凍の両方の時間数は、サイクル数および歪み量と同様に変えることができる(表1参照)。
【0046】
この方法の理想的なパラメータは、表1の軟骨の列に見られる。
【0047】
当然のことながら、エキスパンダ400以外の他の種類の装置は、本明細書に記載の様式でポリマーに標的とする力を加えるために使用することができる。
【0048】
人工軟骨の作製、製造および/または生産する方法のための金型およびエキスパンダ
本発明のさらなる態様は、径方向の力を使用して人工関節軟骨を作製、製造および/または生産する方法で使用される独特の金型およびエキスパンダである。
【0049】
図2Aに示す一実施形態では、金型は、リーフレット圧縮バネロッド240および引張バネ260を含む少なくとも1つのリーフレット210と、リーフレットカラー220と、少なくとも1つの圧縮バネ管250(バネロッド240が配置される多数の外側に延びるアームを有する)を含む中央ポスト230から成る。
【0050】
図4に示す一実施形態では、図示の金型200は、各々がリーフレット210と、リーフレット圧縮バネロッド240と、径方向に組み立てられ、リーフレットカラー220によって互いに保持されて、半球状である金型を形成する引張バネ260(バネ管250もバネ260の一端に取り付けるようにも構成される一方、バネ260の他端は、リーフレットに付勢力を加えるようにリーフレット210に連結されている)とを含む4つのリーフレットユニットで構成されている。カラー220は、弁尖の底部を受ける環状溝を有する。図2Bも参照のこと。
【0051】
金型は、半球状リーフレットエキスパンダ400と組み合わせて使用される。
【0052】
図3に示すエキスパンダの一実施形態では、エキスパンダ400は、金型200をエキスパンダ400に結合するために、金型の中央ポスト230がねじ込み式に受けられるねじ込みチャネル410を含む。
【0053】
金型200およびエキスパンダ400は、テフロン(登録商標)、PEEK、PEKK、ポリカーボネートまたはULTEMから、従来の製造方法を使用して作製でき、ポリカーボネートが好ましい材料である。3D印刷などのより新しい技術を使用して金型を製造することもできる。
【0054】
さらに、金型200およびエキスパンダ400は、凍結温度、温度変化、化学架橋剤、およびUV光への曝露に耐えることができる材料からなり得る。
【0055】
各リーフレット210は、約10mm~約50mmの好ましい半径で作製されている。エキスパンダ400は、約25mm~約100mmの好ましい半径で作製されている。半球状容器の内径を変えて、金型の表面に異なる厚さ、好ましくは約11mm~約60mmのポリマーを形成することができる。
【0056】
人工半月板を作製、製造および/または生産するための方法およびシステム
図1Bは、ポリマーを架橋し、人工半月板を作製、製造および/または生産するときに加えることができる力を示している。
【0057】
X、YおよびZ方向の力ならびに引張および圧縮(図1B参照)を使用して半月板を作製、製造、または生産する方法は、
a.液体ポリマーが金型500の出口ポート520から流れ始めるまで、金型500の入口ポート510に液体ポリマーを注入するステップであり、金型500は、ポリマーの所望の形状であり、入口ポート510、出口ポート520、ポリマー100のための領域(キャビティ)530および剛性多孔質ベース600のための領域(キャビティ)540を有し、
b.ポリマー100を部分的に架橋するステップと、
c.金型500から各端部(図6C参照)における剛性多孔質ベース600に付着された部分的に架橋されたポリマー100を取り除くステップと、
d.部分的に架橋されたポリマー100および剛性多孔質ベース600をローディングフレーム700内に配置するステップと、
e.止めネジ720を使用して、ローディングフレーム700のどちらかの側の親ネジ710に剛性多孔質ベース600を固定する(例えば、図7Dは、対応する穴に受け入れられる下向きに延びる突起(ピン)を含む1つのベース600を示す)ステップと、
f.ローディングフレーム700のクランク730を時計回り(第1の方向)に回転させて、剛性多孔質ベース600をクランク730に向けて移動させる(図7Cの矢印で示すように)ステップであり、これにより、次に部分的に架橋されたポリマー100の端部に引張力をもたらし、径方向(F)、軸方向(F)、周方向(F)の圧縮力および引力(図7Cおよび7Dを参照のこと)を生成するポスト740に対してポリマー100を押し付け(図示しているように、ポリマーを引っ張ってポスト740に接触させることにより、ポリマーがポスト740の一端に巻き付き、その側面に沿って延びる)、
g.ポリマー100を架橋するステップと、
h.ローディングフレーム700からポリマー100を取り外すステップと、を含むことができる(図6および7参照)。
【0058】
いくつかの実施形態では、ステップbにおける部分的架橋は、約1~約3サイクル、好ましくは1凍結/解凍サイクルによって、または10~30秒のUV光曝露によって、または化学架橋剤への曝露によって行われる。
【0059】
いくつかの実施形態では、ステップdにおける架橋は、約3~約5サイクル、好ましくは5凍結/解凍サイクルによって、または好ましくは約15分~約60分のUV光曝露によって、または化学的架橋剤への曝露によって行われる。
【0060】
架橋ステップgは、ポリマーが約20%~約50%、好ましくは30%の歪みに引き伸ばされた後に実行される。
【0061】
半月板を作製、製造、または生産するシステムは、金型500、ローディングフレーム700、少なくとも1つの剛性多孔質ベース600、およびポリマー100を含み得る。さらに、システムは、ポリマーを注入し、凍結/解凍またはUV光によってまたは化学的架橋剤への曝露によってポリマーを架橋するためのサブシステムを含み得る。
【0062】
上記の方法およびシステムのすべてでは、使用されるポリマーは架橋性であり、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリウレタン、ポリカーボネートウレタン、超高分子量ポリエチレン、ポリアクリル酸、コラーゲン、キトサン、ヒアルロン酸または任意の他の合成または天然ポリマーを含む必要があるが、これらに限定されない。PVAは好ましいポリマーである。ポリマーの濃度は、約10%~約40%の範囲であり、20%が理想的である。理想的には、ポリマーは液体状態である必要がある。
【0063】
ポリマーは、シリンジで金型500の入口ポート510内に注入することができる。
【0064】
これらの方法のすべてにおいて、凍結/解凍の好ましい方法は、温度を約0.5℃/分の速度で約-20℃までランピングすること、ポリマーを約-20℃で約4~約24時間、好ましくは20時間凍結し、その後、温度を約0.5℃/分の速度で約20℃までランピングすること、ポリマーを約20℃で約4~約12時間、好ましくは4時間解凍すること、とを含む。やはり、これは当業者によって変えることができる。凍結および/または解凍の両方の時間数は、サイクル数と同様に変えることができる(表1参照)。
【0065】
この方法の理想的なパラメータは表1の半月板の列に見られる。
【0066】
当然のことながら、ローディングフレーム700以外の他の種類の装置を使用して、本明細書に記載の様式でポリマーに目標とした力を加えることができる。
【0067】
人工半月板の作製、製造および/または生産する方法のための金型およびローディングフレーム
本発明のさらなる態様は、人工半月板を作製、製造および/または生産する方法で使用される独特の金型およびローディングフレームである。
【0068】
図6に示す一実施形態では、金型500は、入口ポート510、出口ポート520、ポリマー100を保持するためのウェル530、および剛性多孔質ベース600のための領域540から構成される。
【0069】
ポリマーが金型500から取り外された後、ポリマー100および剛性多孔質ベース600が装填フレーム700上に載置される。図7に示す一実施形態では、ローディングフレーム700は、ベース760、ポスト740、クランク730、少なくとも1つのウォーム750、少なくとも1つのウォームギア770、少なくとも1つの止めネジ720、および少なくとも1つの親ネジ710から構成される。ウォーム750およびウォームギア760は、ベース600が止めネジ720に固定(定着)される(次に止めネジ710に結合される)ため、剛性多孔質ベース600に運動を与えるように、クランク730の回転に基づいてネジ720の制御された動きを引き起こす機械的手段である。
【0070】
金型は、テフロン(登録商標)、PEEK、PEKK、ポリカーボネートまたはULTEMから、従来の製造方法を使用して作製され得、ポリカーボネートが好ましい材料である。金型は、3D印刷などの新しい技術を使用して製造することもできる。
【0071】
さらに、金型およびローディングフレームは、凍結温度、温度変化、化学的架橋剤、およびUV光への曝露に耐えることができる材料からなり得る。
【0072】
金型は、幅が約5mm~約20mm、高さが約3~約8mm、長さが約70mm~約100mmの三角形のキャビティを収容するために作成され得る。ローディングフレームは、約5mm~約15mmの半径、および約10%~約50%の歪みをポリマーに付与する能力を有するポストを含み得る。
【0073】
人工整形外科軟部組織
本発明はまた、本明細書に開示している方法およびシステムによって作製、製造および/または生産される人工整形外科軟部組織を提供する。
【0074】
一実施形態では、人工整形外科軟部組織は軟骨であり、表面接線ゾーン、中間ゾーン、および深いゾーンを含む天然に存在する軟骨の線維配列を有している。図5を参照のこと。
【0075】
さらなる実施形態では、人工整形外科軟部組織は半月板であり、天然に存在する軟骨の線維配列を有している。図8を参照のこと。いくつかの実施形態では、人工半月板は、少なくとも1つの剛性多孔質ベースに取り付けられる。
【0076】
さらなる実施形態では、人工整形外科軟部組織は線維輪であり、天然に存在する軟骨の線維配列を有していた。いくつかの実施形態では、人工線維輪は、髄核を模倣するまたは髄核の代替物であるヒドロゲルに付着している。
【0077】
さらに別の実施形態では、人工整形外科軟部組織は腱および靭帯であり、天然に存在する腱および靭帯の線維配列を有している。
【0078】
いくつかの実施形態では、人工整形外科軟部組織を単独で使用して、生体組織、より具体的には筋骨格組織、より具体的には整形外科軟部組織の欠損および/または損傷を治療、修復および/または置換する。
【0079】
いくつかの実施形態では、人工整形外科軟部組織は、生体組織、より具体的には整形外科軟部組織および骨などの剛性材料の両方を含む筋骨格組織の欠損および/または損傷を治療、修復および/または置換するために、少なくとも1つの剛性多孔質ベースと組み合わせてまたはそれに取り付けられて使用される。
【0080】
いくつかの実施形態では、人工整形外科軟部組織は、機械的付着(すなわち、縫合、ネジ、または剛性材料)、化学的付着(すなわち、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド)、またはUV付着(すなわち、ポリマーとレドックス試薬のメタクリル化)によって別のポリマーもしくは天然組織と組み合わせてまたはそれらに付着させて使用される。
【0081】
さらなる実施形態では、人工整形外科軟部組織を追加のポリマー、ヒドロゲルまたは冷却ゲルと組み合わせて使用して、生体組織、より具体的には筋骨格組織の欠損および/または損傷を治療、修復および/または置換する。
【0082】
キット
本発明はまた、人工軟骨を作製、製造および/または生産する新規な方法を実施するために必要な材料を含むキットを提供する。
【0083】
一実施形態では、キットは、人工軟骨を作製、製造および/または生産するための本発明の金型200およびリーフレットエキスパンダ400を含む。
【0084】
別の実施形態では、キットは、人工半月板を作製、製造および/または生産するための本発明の金型500およびローディングフレーム700を含む。
【0085】
さらなる実施形態では、キットは、ポリマーと、必要に応じて剛性多孔質ベースとを含む、方法用出発材料を提供する。
【0086】
いくつかの実施形態では、説明書がキットに含まれている。その説明書は、、様々な構成要素との金型及びエキスパンダまたはローディングフレームの組立、ならびに時間、温度およびサイクル数を含む凍結および解凍、化学物質濃度および曝露時間、または紫外線への曝露のいずれかによるポリマーの架橋についてのパラメータに関する情報を含み得る。
【実施例
【0087】
本発明は、本発明の好ましい実施形態をより十分に説明するために提示される以下の非限定的な実施例を参照することにより、よりよく理解され得る。それらは、決して本発明の広い範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【0088】
実施例1-放射状の力を使用して人工軟骨を作製するための金型の組み立て
この方法で使用する金型は4つのリーフレットを含む。この方法の最初のステップは、4つのリーフレットを1つの半球状金型内の径方向に向けて組み立てることである。
【0089】
図2および4に示すように、4つのリーフレットユニットは、径方向に組み立てられ、リーフレットカラー220によって一緒に保持されてるリーフレット210、リーフレット圧縮バネロッド240、および引張バネ260を含み、半球である金型を形成する(図2)。金型を組み立てるために、各リーフレット210は、中央ポスト230のチューブ250に取り付けられたリーフレット240上のロッドを介して中央ポスト230に取り付けられた(図5B)。次いで、リーフレットをリーフレットカラー220で一緒に保持した(図2Aおよび4B)。
【0090】
実施例2-径方向の力を使用する人工軟骨の作製
金型が組み立てられると、それは半球状容器300内に配置された(図2B)。10%液体ポリ(ビニルアルコール)5mlが容器300に注ぎ込まれ、金型の周りを取り囲み、金型200の表面に均一な厚さの層を形成した。
【0091】
次いで、液体ポリマーは、1)0.5℃/分の速度で-20℃までランプダウンするステップと、2)-20℃の温度に達したとき、チャンバを-20℃に20時間保持するステップと、その後、3)温度を0.5℃/分の速度で20℃までランピングして、4時間保持するステップと、を伴う1凍結/解凍サイクルを受けた。これにより、ランダムに整列されたポリマー鎖で部分的に架橋されたポリマーネットワークが生成された。
【0092】
部分的に架橋されたポリマー100および金型200を容器300から取り外し、リーフレットカラー220を取り外した。次いで、金型200の中央ポスト230を半球状リーフレットエキスパンダ400にねじ込んだ。リーフレットエキスパンダは、半球を中央ポスト(図3)の上方に前進させるように作用し、金型200上で鋳造されるポリマー100を径方向に膨張させた中央ねじ込み構成要素410を含んでいた。膨張率は、40%の歪みに達するまで1%/秒の歪み速度を生成するように制御された。次いで、膨張した金型は、記述されているように、残りの5凍結/解凍サイクルを受けた。
【0093】
実施例3-金型からのPVAの取り外しおよび線維配列の試験
PVAを膨張させた後、部分的に架橋したPVAにおいて架橋したランダムに整列したポリマー鎖が歪みの方向に整列し、新しいランダムに架橋した鎖を生成したさらなる架橋によってそれらの歪んだ位置に固定されていた。
【0094】
残りの架橋プロセスの完了後、PVAを金型から取り外し、水中で水和した状態を維持した。膨張後、人工軟骨は、天然に存在する軟骨に似た3つの異なる層を示している(図5A)。
【0095】
PVAの断面(図5B)を偏光光下で撮像した。PVAの100μmの区画は、先ず膨張および架橋されたPVAをその半径に沿って8分割し、次いで滑走式ミクロトームに取り付けられた凍結ステージ上で切断エッジを含む8片の1つを凍結した。PVAスライスが完全に凍結した後、100μmの切片を取り、顕微鏡スライド上に置いた。次に、スライドを円偏光下で画像化して、ポリマー鎖の配列を視覚化した。
【0096】
図5に示すように、実施例2(図5C)で作製した人工軟骨は、偏光下で区分された領域を有し、これらは天然に存在する関節軟骨(図5D)の配列に似ている。
【0097】
実施例4-人工半月板の作製
図6Aおよび6Bに示すネガティブ金型500が、ポリマーを所望の形状に鋳造した。金型は、入口ポート510、出口ポート520、ならびにポリマー540およびポリマー530と一体化するための剛性多孔質ベースを配置するための領域からなる。
【0098】
液体ポリマーが出口ポート520から流れ始めるまで、液体PVA(20%)をシリンジで入口ポート510に注入した。次いで、液体ポリマーを含む金型は、環境室に入れられ、1)0.5℃/分の速度で-20℃までランプダウンするステップと、2)-20℃の温度に達したとき、チャンバを-20℃に20時間保持するステップと、その後、3)温度を0.5℃/分の速度で20℃までランピングして4時間保持するステップと、を伴う1凍結/解凍サイクルを受けた。1凍結/解凍サイクルの後、部分的に架橋したポリマーを金型から取り出した。図6Cおよび6Dは、ポリマーの形状および金型から取り外したときの断面を示している。
【0099】
次いで、部分的に架橋されたPVAポリマーをローディングフレーム700に入れ、剛性多孔質ベースを、止めネジ720(図7A)によりローディングフレームの両側の親ネジ710に固定した。クランクを時計回りに回して、剛性多孔質ベース600をクランクに向かって移動させた(図7C)。これにより、部分的に架橋されたポリマー100の端部に引張力が生じ、ポリマーに作用する径方向(F)、軸方向(F)、周方向(F)の力、圧縮力および引張力(図7D)を生成するポスト740に対してポリマー100を押し付けた。30%の歪みに伸ばした後、ローディングフレーム上のPVAを環境室内に置き、上記のようにさらに5凍結/解凍サイクルを行った。
【0100】
凍結/解凍サイクルが完了すると、完全に架橋したPVA冷却ゲルをローディングフレームから取り外した。
【0101】
厚さ100μmの冷却ゲルのスライスの偏光画像は、PVA冷却ゲルの周方向配列を示している(図8)。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図8