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特許7564710非水電解質二次電池用負極活物質、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用負極活物質、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20241002BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241002BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20241002BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241002BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20241002BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/13
H01M4/134
H01M4/36 A
H01M4/36 C
H01M4/48
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020530303
(86)(22)【出願日】2018-12-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 KR2018015351
(87)【国際公開番号】W WO2019112325
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-06-12
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】10-2017-0166044
(32)【優先日】2017-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0155595
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517108310
【氏名又は名称】デジュ・エレクトロニック・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DAEJOO ELECTRONIC MATERIALS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オ・ソンミン
【合議体】
【審判長】井上 信一
【審判官】▲高▼橋 徳浩
【審判官】須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106356508(CN,A)
【文献】特開2012-33317(JP,A)
【文献】特開2010-170943(JP,A)
【文献】国際公開第2016/204366(WO,A1)
【文献】特表2016-504722(JP,A)
【文献】特開2005-243640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/04- 4/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素、酸化ケイ素(SiO、0<x≦2)、及びケイ酸マグネシウムを含むケイ素酸化物複合体を含む負極活物質において、
前記ケイ酸マグネシウムは、MgSiOを含み、
X線回折分析の際、2θ=27.5°乃至29.5°で検出されるSi(111)による回折ピークの強度Isi(111)及び2θ=30°乃至32°で検出されるMgSiOによる回折ピークの強度IMgSiO3(610)の比が0.1<IMgSiO3(610)/ISi(111)<0.3であり、
前記ケイ素酸化物複合体は、酸素原子に対するケイ素原子数の割合(Si/O)が0.5乃至2であり、
前記ケイ素酸化物複合体は、前記ケイ素酸化物複合体の全重量に対してマグネシウムを2wt%乃至30wt%で含
前記ケイ素酸化物複合体は、表面に炭素を含む被覆層をさらに含み、
前記ケイ素酸化物複合体の全100重量部当たりの前記被覆層は、2乃至20重量部である、
非水電解質二次電池用負極活物質。
【請求項2】
前記ケイ素酸化物複合体は、X線回折分析の際、Si(111)による回折ピークが2θ=27.5°乃至29.5°で表され、
前記回折ピークの半値幅(FWHM)から計算されたケイ素結晶子の大きさが2nm乃至100nmである、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
【請求項3】
前記ケイ酸マグネシウムは、MgSiOをさらに含む、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
【請求項4】
前記炭素を含む被覆層は、非晶質炭素、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブ、黒鉛、グラフェン、酸化グラフェン、還元された酸化グラフェンで構成された群から選択される少なくともいずれか1つ以上を含む、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極活物質
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項による非水電解質二次電池用負極活物質を含む負極
【請求項6】
請求項5による負極を含む非水電解質リチウム二次電池
【請求項7】
ケイ素粒子及び二酸化ケイ素粒子の混合物と、マグネシウムを反応器に投入する第1段階と、
前記反応器の圧力を0.000001torr乃至1torrに調節する第2段階と、
前記混合物と前記マグネシウムを気相中で加熱してケイ素酸化物複合体を製造する第3段階と、
前記ケイ素酸化物複合体を700℃乃至1100℃で冷却し、前記冷却したケイ素酸化物複合体を金属板に蒸着する第4段階と、
前記冷却及び金属板に蒸着したケイ素酸化物複合体を平均粒径0.5μm乃至15μmに粉砕及び粉級する第5段階とを含む、請求項1による非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法
【請求項8】
前記第5段階のケイ素酸化物複合体及び炭素源を投入し、600℃乃至1200℃で熱処理して前記ケイ素酸化物複合体の表面に炭素を含む被覆層を形成する第6段階をさらに含むものである、請求項7に記載の非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法
【請求項9】
前記炭素源は、メタン、プロパン、ブタン、アセチレン、ベンゼン、及びトルエンで構成された群から選択される少なくともいずれかのものである、請求項8に記載の非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法
【請求項10】
前記第6段階では、前記炭素源以外に、窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガス、水素、水蒸気からなる群から選択された少なくともいずれか1つ以上をさらに投入する、請求項8に記載の非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池用負極活物質、及びその製造方法に関し、より詳細には、ケイ素、二酸化ケイ素とマグネシウムを気相反応により反応させてケイ素酸化物複合体を製造し、表面に炭素を被覆させることによって導電性を改善することはもちろん、リチウムの吸蔵・放出による体積変化に安定的な構造を示し、寿命特性及び容量効率の特性が大きく改善される効果を示す、非水電解質二次電池用負極活物質、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の携帯用小型電子機器及び電気自動車の電源として脚光を浴びているリチウム二次電池は、有機電解液を使用することによって、既存のアルカリ水溶液を使用した電池より2倍以上の高い放電電圧を示す高いエネルギー密度を示す電池である。
【0003】
リチウム二次電池の正極活物質としては、LiCoO、LiMn、LiNi1-xCo(0<x<1)等のように、リチウムのインターカレーションが可能な構造を有する遷移金属からなる酸化物を主に使用しており、負極活物質としては、リチウムの挿入及び脱離が可能な人造黒鉛、天然黒鉛、及びハードカーボンを含む様々な形態の炭素系材料が適用されてきた。
【0004】
リチウム二次電池の負極材料としては、黒鉛が主に利用されているが、黒鉛は、単位質量当たりの容量が372mAh/gと小さく、リチウム二次電池の高容量化が難しい。
【0005】
炭素系負極活物質を代替することができる新規な材料としては、Si、Sn、Al、Sb等の金属材料が検討されている。このような金属材料では、Liとの合金化/非合金化反応により充電/放電が行われ、商用負極活物質であるグラファイト(graphite)に比べて高い容量を示すものと知られている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、Si、Sn、Al、Sb等の金属は、Liと合金化/非合金化する過程で大きい体積膨張及び収縮を引き起こすことになり、これによる微粉化、伝導経路(path)の喪失等により、寿命特性が低下するという問題点を有している。特に、Siの場合、放電容量(4200mAh/g)、放電電圧(0.4V)の側面で高容量の負極素材として最適な物質であると知られているが、Liイオンが物質内に挿入(充電)する際に誘発される約400%に至る大きい体積膨張により活物質の退化が発生し、寿命特性の急激な低下を示してきた。
【0007】
酸化ケイ素(SiO)は、ケイ素に比べて容量の小さい炭素系負極容量(約350mAh/g)に比べて何倍以上高い容量(約1500mAh/g)を有しており、二酸化ケイ素マトリックスにシリコンナノ結晶が均一に分散された構造で、他のケイ素系材料に比べて体積膨張率と寿命(容量維持率)特性が大きく改善された素材として脚光を浴びている。
【0008】
しかし、このように容量と寿命特性に優れた酸化ケイ素は、初期の充電の際、リチウムと酸化ケイ素が反応してリチウム酸化物(酸化リチウムとケイ酸リチウム等)が生成され、生成されたリチウム酸化物は、放電の際に可逆的に正極に戻らなくなる。一方、酸化ケイ素(SiO)は、ケイ素に比べて容量の小さい炭素系負極容量(約350mAh/g)に比べて何倍以上高い容量(約1500mAh/g)を有しており、二酸化ケイ素マトリックスにシリコンナノ結晶が均一に分散された構造で、他のケイ素系材料に比べて体積膨張率と寿命(容量維持率)特性が大きく改善された素材として脚光を浴びている。
【0009】
従来、このように電極の作製時の安定性を向上させるために、SiOとマグネシウム化合物とを混合して加熱する方法として、ケイ素-ケイ素酸化物複合体を介して初期の充/放電効率を向上させる方法が提案されている。また、SiO粉末を水素マグネシウム(MgH)又は水素化カルシウム(CaH)と反応させて、マグネシウム又はカルシウムが含有されたケイ素-ケイ素酸化物複合体を製造する方法が報告されている(特許文献2)。この方法は、SiO粉末及びMgH又はCaHの反応の際、酸素の混入が減少するが、局部的な発熱反応によりケイ素結晶の大きさが急激に成長し、Mg又はCaが不均一に分布されるので、SiOに対して容量維持率が低下することが示された。
【0010】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決するために、表面の伝導性はもちろん、リチウムの吸蔵・放出による体積変化に安定的な構造に対して鋭意検討を実施した結果、ケイ素微細結晶又は微粒子を気相反応により二酸化ケイ素に分散させて、表面の少なくとも一部に導電性を付与するために炭素を被覆させることによって、前記問題を解決し、安定的に大容量の充放電容量を有し、充放電のサイクル特性及び効率性を大きく向上させることができることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】韓国公開特許公報第10-2014-0042146号(公開日2014.04.07)
【文献】日本公開特許公報第2012-033317号(公開日2012.02.16)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記のような従来の二次電池負極活物質の問題点を解決するために、充電及び放電容量、初期の充電及び放電効率、並びに容量維持率が改善された非水電解質リチウム二次電池用負極活物質を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質を製造するための製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、前記ケイ素酸化物複合体を含む非水電解質二次電池用負極活物質を含む負極、及び非水電解質リチウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、ケイ素、酸化ケイ素(SiO、0<x≦2)、及びケイ酸マグネシウムを含むケイ素酸化物複合体を含む負極活物質において、前記ケイ酸マグネシウムは、MgSiOを含み、X線回折分析の際、2θ=27.5°乃至29.5°で検出されるSi(111)による回折ピークの強度Isi(111)及び2θ=30°乃至32°で検出されるMgSiOによる回折ピークの強度IMgSiO3(610)の比が0.1<IMgSiO3(610)/ISi(111)<0.5のものである非水電解質二次電池用負極活物質を提供する。本発明によるケイ素酸化物複合体を含む負極活物質において、前記ISi(111)及びIMgSiO3(610)の好ましい比は、0.15<IMgSiO3(610)/ISi(111)<0.3であってもよい。
【0016】
本発明によるケイ素酸化物複合体は、MgSiO型のマグネシウムシリケート相が一定部分以上含まれることを特徴とする。本発明によるケイ素酸化物複合体は、前記ケイ素酸化物複合体は、酸化ケイ素及び結晶質MgSiOを含むマトリックス内にケイ素微粒子が均質的に分散され得る。MgSiOは、Liイオンと反応しにくいため、電極とした場合に、Liイオンが吸蔵される際、電極の膨張量を減少させることによって、サイクル特性及び初期の充電及び放電効率を向上させることができる。
【0017】
本発明によるケイ素酸化物複合体は、前記IMgSiO3(610)/ISi(111)が0.1乃至0.5の範囲を満たすことによって、ケイ酸マグネシウム塩の存在によって電池特性の悪化を抑制することができ、また、安定的なLi化合物の生成、吸蔵、脱着が容易である。また、初期の効率をさらに向上させることができる。
【0018】
本発明によるケイ素酸化物複合体は、前記IMgSiO3(610)/ISi(111)が0.5を超えると、MgSiO型の結晶が過量形成されるため、初期の充電及び放電容量が小さくなり、好ましくない。前記IMgSiO3(610)/Isi(111)が0.1未満であると、MgSiO型のマグネシウムシリケート相の量が少なく、これによって、充電及び放電の試験の際のサイクル特性の改善効果が小さくなる。初期の充電及び放電容量が小さくなる理由は、SiOに含まれ、本来のLi原子と合金化するSi原子と添加されたMg原子が反応し、Li原子と反応しにくいMgSiO型が過量形成されるためであり得る。
【0019】
本発明によるケイ素酸化物複合体は、X線回折分析の際、Si(111)による回折ピークが2θ=27.5°乃至29.5°で示され、前記回折ピークの半値幅(FWHM)から計算されたケイ素結晶子の大きさが2nm乃至100nmであることを特徴とする。
【0020】
本発明によるケイ素酸化物複合体は、銅対負極としたX線回折(Cu-Kα)で2θ=27.5°乃至29.5°付近を中心にしたSi(111)に帰属される回折線の広がりに基づき、シェラの式により求めたケイ素粒子の微細結晶粒径が2乃至100nmであることが好ましく、より好ましくは2乃至50nmで、さらに好ましくは2乃至30nmである。
【0021】
本発明による非水電解質二次電池用負極活物質において、前記ケイ素酸化物複合体は、全100重量部当たりのマグネシウムが2重量部乃至30重量部の割合で含まれたことを特徴とする。
【0022】
本発明による非水電解質二次電池用負極活物質において、前記ケイ酸マグネシウムは、MgSiOをさらに含むことを特徴とする。ケイ酸マグネシウムは、酸化ケイ素より熱力学的にギブス自由エネルギーが負の値を有する酸化物であり、非晶質でリチウムを安定的に初期不可逆反応の発生を抑制する役割をするため、好ましいかもしれない。
【0023】
本発明による非水電解質二次電池用負極活物質において、前記ケイ酸マグネシウムは、一般式MgSiO(0.5≦x≦2、2.5≦y≦4)で表される化合物を示す。本発明による非水電解質二次電池用負極活物質において、前記ケイ酸マグネシウムはMgSiO(enstatite)結晶を主成分として含むことが好ましい。MgSiO(enstatite)結晶がX線回折パターンの分析の際、回折角28°<2θ<29°の範囲内でケイ素結晶に帰属されるピークが示され、回折角30.5°<2θ<31.5°の範囲でMgSiO結晶に帰属されるピークが示されることが好ましい。また、MgSiO(forsterite)結晶を含むことが好ましい。
【0024】
本発明による非水電解質二次電池用負極活物質において、前記ケイ素酸化物複合体は酸素原子に対するケイ素原子数の割合(Si/O)が0.5乃至2である非水電解質二次電池用負極活物質であることを特徴とする。
【0025】
本発明による非水電解質二次電池用負極活物質において、前記ケイ素酸化物複合体は、表面に炭素を含む被覆層をさらに含むことを特徴とする。本発明による非水電解質二次電池用負極活物質において、前記ケイ素酸化物複合体の全100重量部当たりの前記被覆層は、2乃至20重量部であることを特徴とする。本発明による非水電解質二次電池用負極活物質において、前記炭素コーティング層の被覆量が2質量部以下であると、充分な伝導性向上の効果を得ることができず、前記被覆量が20質量部以上であると、被覆量の増加による伝導性向上の効果が示されない。
【0026】
本発明による非水電解質二次電池用負極活物質において、前記炭素被膜の平均厚さは1nm乃至2μmであってもよく、好ましくは5nm乃至1μmであってもよく、より好ましくは10nm乃至0.8μmであってもよい。本発明による非水電解質二次電池用負極活物質において、前記炭素被膜の平均厚さが1nm未満であると、伝導性向上を得ることができず、平均厚さが2μmを超えると、炭素材料の追加による伝導性向上の効果を得ることができない。
【0027】
本発明による非水電解質二次電池用負極活物質において、前記炭素を含む被覆層は、非晶質炭素、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブ、黒鉛、グラフェン、酸化グラフェン、還元された酸化グラフェンで構成された群から選択される少なくともいずれか1つ以上を含むことを特徴とする。
【0028】
本発明による非水電解質二次電池用負極活物質において、前記炭素を被覆したケイ素複合体の平均粒径は、0.5μm乃至20μmであり得る。平均粒径は、レーザ回折法による粒度分布測定において、重量平均D50(即ち、累積重量が50%になるときの粒径又はメジアン径)で測定した値である。本発明による非水電解質二次電池用負極活物質において、前記炭素を被覆したケイ素複合体の平均粒径が小さ過ぎると、体積密度が小さくなり、単位体積当たりの充放電容量が減少し、逆に平均粒子サイズが大き過ぎると、電極膜の作製が難しいため、集電体から剥離の恐れがある。
【0029】
本発明による非水電解質二次電池用負極活物質において、前記炭素を被覆したケイ素複合体の比表面積は、1乃至40m/gであることが好ましい。また、本発明による非水電解質二次電池用負極活物質において、前記炭素を被覆したケイ素複合体の比表面積は、1m/g乃至20m/gであることがさらに好ましい。本発明による非水電解質二次電池用負極活物質において、複合酸化物の比表面積が1m/g未満である場合、充放電特性が低下し、好ましくなく、40m/gを超える場合、電解液との接触面積が増加し、電解液の分解反応が促進して副反応を起こすため、好ましくない。
【0030】
本発明はまた、本発明によるケイ素酸化物複合体を含む負極活物質を含む負極を提供する。
【0031】
本発明による負極は、黒鉛、導電性カーボンブラック、ソフトカーボン、ハードカーボン、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブ、グラフェン、還元された酸化グラフェン、及びグラフェンナノフレークからなる群から選択される少なくとも1つ以上を前記負極活物質の全重量に対して30wt%乃至95wt%の割合で含むことを特徴とする。即ち、本発明による負極は、前記ケイ素酸化物複合体以外に従来の負極に使用されている負極材料、具体的に、黒鉛、導電性カーボンブラック、ソフトカーボン、ハードカーボン、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブ、グラフェン、還元された酸化グラフェン、及びグラフェンナノフレークからなる群から選択される少なくとも1つ以上をさらに含むことが可能である。本発明による前記ケイ素酸化物複合体以外に負極に含まれる材料は、前記負極活物質の全重量に対して30wt%乃至95wt%の割合で含むことが好ましい。
【0032】
本発明はまた、本発明による非水電解質二次電池用負極活物質を含む非水電解質リチウム二次電池を提供する。
【0033】
本発明はまた、平均粒子サイズが0.1μm乃至20μmのケイ素粒子及び平均粒子サイズが10nm乃至300nmの二酸化ケイ素粒子を混合した混合物と、平均粒子サイズが1mm乃至100mmのマグネシウムを反応器に入れる第1段階と、前記反応器の圧力を0.000001torr乃至1torrに調節する第2段階と、前記混合物と前記マグネシウムを600℃乃至1600℃で加熱してケイ素酸化物複合体を製造する第3段階と、前記ケイ素酸化物複合体を冷却し、及び金属板に蒸着する第4段階と、前記冷却及び金属板に蒸着したケイ素酸化物複合体を平均粒径0.5μm乃至15μmに粉砕及び粉級する第5段階とを含む、本発明による非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法を提供する。
【0034】
本発明による非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法は、Si/SiOの原料粉末混合体とマグネシウムを共に加熱し、Si/SiOの原料粉末混合体とマグネシウム粒子の均一な気相反応でケイ素複合体が合成され、従来の固相反応のようにMgが局部的に過剰混合発熱反応によりケイ素が急激に成長することを防止し、結果として、ケイ素酸化物複合体の容量維持率を向上させることができる。
【0035】
本発明による非水電解質二次電池用負極活物質は、このように蒸気相に反応するため、Si、SiO、マグネシウムのそれぞれが原子の水準で結合状態にあるため、Liイオンの吸蔵及び放出の際の体積変化が小さく、充放電の繰り返しにより電極活物質に亀裂が発生しにくい。従って、サイクルの数が多くても、容量の低下が生じ難い。既存のもののような少ないサイクルでの急激な容量の低下がないため、サイクル特性に優れる。本ケイ素複合体は、各相が原子の水準で結合状態にあるため、放電の際にLiイオンの脱離が容易であり、Liイオンの充電と放電のバランスがよく、充放電効率が高いという特徴もある。
【0036】
本発明による非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法は、前記第5段階のケイ素酸化物複合体及び炭素源を供給し、600℃乃至1200℃上で反応してケイ素酸化物複合体の表面に配置された炭素を含む被覆層を形成する第6段階をさらに含むことを特徴とする。
【0037】
本発明による非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法において、前記原料として使用されるケイ素は、平均粒子サイズが2μm乃至20μmであり、前記二酸化ケイ素は、平均粒子サイズが10nm乃至300nmであることを特徴とする。
【0038】
本発明による非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法において、前記炭素源は、メタン、プロパン、ブタン、アセチレン、ベンゼン、及びトルエンで構成された群から選択される少なくともいずれかであることを特徴とする。
【0039】
本発明による非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法において、前記ケイ素酸化物複合体及び炭素源を投入し、窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガス、水素、水蒸気からなる群から選択された少なくともいずれか1つ以上をさらに投入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0040】
本発明による非水電解質二次電池用負極活物質は、気相反応によりケイ素、二酸化ケイ素とマグネシウムを反応させて、表面に導電性を付与するために炭素をコーディングすることによって、本発明による非水電解質二次電池用負極活物質を含むリチウム二次電池の導電性はもちろん、リチウムの吸蔵・放出による体積変化に安定的な構造を示し、寿命特性、充電、及び放電容量、初期の充電及び放電効率、並びに容量維持率を向上させることができる。従って、本発明による負極活物質を含めて、安定的且つ高性能の非水電解質リチウム二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の一実施例及び比較例で製造された炭素がコーティングされたケイ素酸化物複合体のXRDの測定結果を示す。
図2】本発明の一実施例及び比較例で製造された炭素がコーティングされたケイ素酸化物複合体のXRDの測定結果を示す。
図3】本発明の一実施例及び比較例で製造された炭素がコーティングされたケイ素酸化物複合体のXRDの測定結果を示す。
図4】本発明の一実施例及び比較例で製造された炭素がコーティングされたケイ素酸化物複合体のXRDの測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下では、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。しかしながら、本発明が以下の実施例により限定されるわけではない。
【0043】
<実施例1>マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体の製造
【0044】
ケイ素粉末と二酸化ケイ素(SiO)粉末を1:1のモル比で均一に混合した粉末15kgとマグネシウム1.5kgを0.0001乃至1torrの減圧雰囲気で1,400℃で熱処理し、前記ケイ素、二酸化ケイ素(SiO)の混合粉末による酸化ケイ素蒸気とマグネシウム蒸気を同時に発生させることによって気相で反応させた後、700℃で冷却させて析出してから、ジェットミルで粉砕粉級し、平均粒径(D50)が6.3μmであるマグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体粉末を回収した。
【0045】
炭素を含む被覆層を形成するために回収されたマグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体粉末をチューブ状の電気炉を用いて、1,000℃、2時間の条件でアルゴン(Ar)とメタン(CH)の混合ガス下でCVD処理をし、炭素の含量が5wt%である炭素コーティング層が形成されたマグネシウムが6.2wt%含まれたケイ素酸化物複合体(試料1)を製造した。
【0046】
前記マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体(試料1)に対して、BET比表面積が6.2m/g、比重2.3g/cm、平均粒径(D50)が6.3μmであり、X線回折分析(CuKα)により測定したケイ素の結晶子の大きさが8nmであることを確認した。
【0047】
<実施例2>マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体の製造
【0048】
800℃で冷却させて析出することを除いては、前記実施例1と同じ方法でマグネシウムが9wt%含まれたケイ素酸化物複合体を製造し、炭素の含量が5wt%である炭素コーティング層が形成されたケイ素酸化物複合体粉末を製造した。
【0049】
前記マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体(試料2)に対して、BET比表面積が6.3m/g、比重2.3g/cm、平均粒径(D50)が6.2μmであり、X線回折分析(CuKα)により測定したケイ素結晶の大きさが8nmであることを確認した。
【0050】
<実施例3>マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体の製造
【0051】
900℃で冷却させて析出することを除いては、前記実施例1と同じ方法でマグネシウムが11.7wt%含まれたケイ素酸化物複合体を製造し、炭素の含量が10wt%である炭素コーティング層が形成されたケイ素酸化物複合体粉末(試料3)を製造した。
【0052】
前記マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体(試料3)に対して、BET比表面積が5.8m/g、比重2.4g/cm、平均粒径(D50)が6.7μmであり、X線回折分析(CuKα)により測定したケイ素結晶の大きさが11nmであることを確認した。
【0053】
<実施例4>マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体の製造
【0054】
1000℃で冷却させて析出することを除いては、前記実施例1と同じ方法でマグネシウムが4.6wt%含まれたケイ素酸化物複合体を製造し、炭素の含量が7wt%である炭素コーティング層が形成されたケイ素酸化物複合体粉末(試料4)を製造した。
【0055】
前記マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体(試料4)に対して、BET比表面積が7.3m/g、比重2.3g/cm、平均粒径(D50)が6.2μmであり、X線回折分析(CuKα)により測定したケイ素結晶の大きさが7nmであることを確認した。
【0056】
<実施例5>マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体の製造
【0057】
1100℃で冷却させて析出することを除いては、前記実施例1と同じ方法でマグネシウムが16.6wt%含まれたケイ素酸化物複合体を製造し、炭素の含量が4wt%である炭素コーティング層が形成されたケイ素酸化物複合体粉末(試料5)を製造した。
【0058】
前記マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体(試料5)に対して、BET比表面積が6.8m/g、比重2.4g/cm、平均粒径(D50)が7.1μmであり、X線回折分析(CuKα)により測定したケイ素結晶の大きさが14nmであることを確認した。
【0059】
<実施例6>マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体の製造
【0060】
800℃で冷却させて析出することを除いては、前記実施例1と同じ方法でマグネシウムが3wt%含まれたケイ素酸化物複合体を製造し、炭素の含量が5wt%である炭素コーティング層が形成されたケイ素酸化物複合体粉末(試料6)を製造した。
【0061】
前記マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体(試料6)に対して、BET比表面積が6.3m/g、比重2.3g/cm、平均粒径(D50)が5.9μmであり、X線回折分析(CuKα)により測定したケイ素結晶の大きさが6nmであることを確認した。
【0062】
<比較例1>マグネシウムが含まれていないケイ素酸化物複合体の製造
【0063】
マグネシウムを添加せずに熱処理したことを除いては、前記実施例1と同じ方法で炭素の含量が5wt%である炭素コーティング層が形成されたケイ素酸化物複合体(試料7)を製造した。
【0064】
前記ケイ素酸化物複合体(試料7)に対して、BET比表面積が6.5m/g、比重2.0g/cm、平均粒径(D50)が6.0μmであり、X線回折分析(CuKα)により測定したケイ素結晶の大きさが5nmであることを確認した。
【0065】
<比較例2>マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体の製造
【0066】
自然冷却で析出することを除いては、前記実施例1と同じ方法で炭素の含量が5wt%である炭素コーティング層が形成されたマグネシウムが1wt%含まれたケイ素酸化物複合体(試料8)を製造した。
【0067】
前記マグネシウムが含まれたケイ素酸化物複合体(試料8)に対して、BET比表面積が5m/g、比重2.2g/cm、平均粒径(D50)が6.5μmであり、X線回折分析(CuKα)により測定したケイ素結晶の大きさが8nmであることを確認した。
【0068】
<実験例1>
【0069】
前記実施例1乃至6及び比較例1、2により製造されたケイ素酸化物複合体(試料1乃至8)の平均粒径、比表面積、マグネシウムの含量を分析し、下記の表1に示した。
【0070】
【表1】
【0071】
<実験例>XRDの分析
【0072】
前記実施例1、2、及び実施例6で製造されたマグネシウムを含むケイ素複合体(試料1乃至8)に対してXRDを測定し、その結果を下記の表2及び図1乃至図3に示した。
【0073】
Malvern panalytical社(装備名:X’Pert3)のXRDで測定し、45kV、40mVで10度から60度まで30分間測定した。
【0074】
X線回折分析(CuKα)を介してSi(111)ピークの開始点と終わる地点を線で連結し、中心値から最大ピーク地点までの高さをIntensity Si(111)と決め、MgSiO(610)ピークもやはりSi(111)と同じ方法でIntensity MgSiO(610)を設定した。また、下記のScherrer’s equation(シェラの式)でSi結晶の大きさを計算した。
【0075】
<Scherrer’s equation(シェラの式)>
【0076】
D=0.9λ/(βcosθ)
【0077】
D:粒径サイズ(particle diameter size)
【0078】
β:FWHM(full width at half maximum)
【0079】
λ:wave length of X-Ray(0.1541nm)
【0080】
下記の表2で、X線回折分析の際、2θ=27.5°乃至29.5°で検出されるSi(111)による回折ピークの強度Isi(111)及び2θ=30°乃至32°で検出されるMgSiOによる回折ピークの強度IMgSiO3の比IMgSiO3(610)/ISi(111)を見ると、本発明の実施例1乃至6の場合、0.1を超え、0.5未満であるのに比べて、比較例の場合、MgSiOのピークが検出されないか、又は0.1未満であることが確認できる。
【0081】
【表2】
【0082】
<製造例>電池の製造
【0083】
前記実施例及び比較例によって製造されたケイ素酸化物複合体粉末を電極活物質として含むリチウム二次電池用負極と電池(コインセル)を作製した。
【0084】
前記活物質、導電材としてSUPER-P、ポリアクリル酸(polyacrylic acid)を重量比が80:10:10になるように水と混合し、負極スラリーを製造した。
【0085】
前記組成物を厚さ18μmの銅箔に塗布して乾燥させることによって、厚さ70μmの電極を製造し、前記電極が塗布された銅箔を直径14mmの円形にパンチングし、コインセル用負極を製造して、反対極に厚さ0.3mmの金属リチウム箔を使用した。
【0086】
分離膜として厚さ0.1mmの多孔質ポリエチレンシートを使用し、電解液としてエチレンカーボネート(EC)とジエチレンカーボネート(DEC)を体積比1:1で混合した溶液に1M濃度のLiPFを溶解させて電解質に使用し、前記の構成要素を適用し、厚さ2mm、直径32mmのコインセル(電池)を作製した。
【0087】
<実験例>
【0088】
前記製造例で製造されたコインセルを0.1Cの定電流で電圧が0.005Vになるまで充電し、0.1Cの定電流で電圧が2.0Vになるまで放電し、充電容量(mAh/g)、放電容量(mAh/g)、及び初期の充/放電効率(%)を求めて、その結果を下記の表3に示した。
【0089】
また、前記製造例でサンプル毎に作製したコインセルを1回の充電と放電をさせた以降、2回からの充電と放電では0.5Cの定電流で電圧が0.005Vになるまで充電し、0.5Cの定電流で電圧が2.0Vになるまで放電し、サイクル特性(50回の容量維持率)を求めて、その結果を下記の表3に示した。
【0090】
本発明の実施例により、2θ=27.5°乃至29.5°で検出されるSi(111)による回折ピークの強度Isi(111)及び2θ=30°乃至32°で検出されるMgSiOによる回折ピークの強度IMgSiO3の比が0.1<IMgSiO3(610)/ISi(111)<0.5である場合、初期の効率及び50回の容量維持率が大きく改善されることを確認することができる。
【0091】
【表3】


図1
図2
図3
図4