(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】触媒支持材料、触媒支持体、触媒及び触媒を用いた反応方法
(51)【国際特許分類】
B01J 27/224 20060101AFI20241002BHJP
B01J 35/51 20240101ALI20241002BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20241002BHJP
B01J 37/14 20060101ALI20241002BHJP
C01B 3/40 20060101ALI20241002BHJP
C07C 1/04 20060101ALI20241002BHJP
C07C 9/00 20060101ALI20241002BHJP
C10G 2/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B01J27/224 M
B01J35/51
B01J37/04 101
B01J37/14
C01B3/40
C07C1/04
C07C9/00
C10G2/00
(21)【出願番号】P 2020568283
(86)(22)【出願日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 US2019035895
(87)【国際公開番号】W WO2019236926
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-06-02
(32)【優先日】2018-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518329756
【氏名又は名称】ネクスセリス イノベーション ホールディングス, エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】NEXCERIS INNOVATION HOLDINGS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】シーボー,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】オペンベ,ナフタリ
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル,ダグラス
【審査官】三村 潤一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-517176(JP,A)
【文献】国際公開第02/098557(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/025498(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/146954(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/119287(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0191401(US,A1)
【文献】特開2015-020929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C01B 3/00 - 6/34
C01B 32/956
C07B 31/00 - 61/00
C07B 63/00 - 63/04
C07C 1/00 - 409/44
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)SiC粒子とSiC粒子間の空隙中の1種又はそれ以上の金属酸化物の保護マトリックスとの複合体を含むコアであって、該保護マトリックスがSiC粒子を結合しており、及び理論密度の60%以上の密度を有する該コア、及び
b)該コアに付着した触媒活性層、
を含
み、
ここで、前記1種又はそれ以上の金属酸化物が、アルミナ、チタニア及びシリカからなる群から選択される、
触媒。
【請求項2】
前記保護マトリックスが、Al
2O
3を含む、
請求項1記載の触媒。
【請求項3】
前記保護マトリックスが、
(a)シリカ、アルミニウム及びケイ素の混合酸化物、並びにAl
6Si
2O
13からなる群から選択される1種又はそれ以上のさらなる金属酸化物、又は
(b)チタニア、並びにアルミニウム及びチタンの混合酸化物からなる群から選択される1種又はそれ以上のさらなる金属酸化物
をさらに含む、
請求項2記載の触媒。
【請求項4】
前記コア中の、前記金属酸化物保護マトリックス中の金属とSiCとの体積比が、0.05乃至0.50、0.05乃至0.30、又は0.10乃至0.25である、請求項1乃至
請求項3の何れか一項に記載の触媒。
【請求項5】
前記コア中のアルミニウムとSiCの体積比が、0.05乃至0.50、0.05乃至0.30、又は0.10乃至0.25である、
請求項4記載の触媒。
【請求項6】
前記コアが、理論密度の60%乃至95%、60%乃至90%、65%乃至90%又は
65%乃至80%の密度を有する、請求項1乃至
請求項5の何れか一項に記載の触媒。
【請求項7】
前記触媒活性層が、1種又はそれ以上の触媒活性金属を含む、請求項1乃至
請求項6の何れか一項に記載の触媒。
【請求項8】
前記1種又はそれ以上の触媒活性金属が、Ni、Co、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Os、Re、Au、Ag、Cu、Fe、Mn、Mg、V、Mo及びCrからなる群から選択される、
請求項7記載の触媒。
【請求項9】
前記触媒活性層が、コアを覆う多孔質コーティング、及び前記多孔質コーティングの内面及び外面に配置された触媒活性材料を含む、請求項1乃至
請求項6の何れか一項に記載の触媒。
【請求項10】
前記触媒活性層が、前記コアを覆う多孔質コーティングをさらに含み、ここで前記1種又はそれ以上の触媒活性金属が、該多孔質コーティングの内面及び外面に配置されている、
請求項7又は請求項8記載の触媒。
【請求項11】
前記多孔質コーティングが、コアを覆う多孔質酸化物シェルを含む、
請求項9又は請求項10記載の触媒。
【請求項12】
前記多孔質コーティングが、多孔質アルミナシェルを含む、
請求項9又は請求項10記載の触媒。
【請求項13】
前記コアと前記触媒活性層との間に配置された界面層をさらに含む、請求項1記載の触媒。
【請求項14】
前記界面層が、前記コアを覆う高密度コーティングを含み、ここで前記界面層が、理論密度の80%乃至100%、90%以上、又は95%以上の密度を有し、且つ、さらに前記界面層がアルミナ、α-アルミナ、シリカ、チタニア、又はバリウムストロンチウムアルミノシリケート(“BSAS”)を含む、
請求項13記載の触媒。
【請求項15】
前記コアと前記触媒活性層との間に配置された界面層をさらに含み、該界面層は前記コアを覆う高密度アルミナコーティングを含み、ここで該界面層は理論密度の70%乃至90%、80%乃至100%、90%以上、又は95%以上の密度有する、請求項1乃至
請求項14の何れか一項に記載の触媒。
【請求項16】
前記触媒活性層と前記コアとの間、又は前記触媒活性層と前記界面層との間に配置されたガス不透過性保護コーティングをさらに含む、
請求項13乃至請求項15の何れか一項に記載の触媒。
【請求項17】
前記ガス不透過性保護コーティングは、アルカリ土類アルミノケイ酸塩ガラス、アルカリ土類アルミノホウケイ酸ガラス、ランタニドアルミノケイ酸塩ガラス、CaO-SiO
2-Al
2O
3(“CAS”)、MgO-SiO
2-Al
2O
3(“MAS”)、SrO-SiO
2-Al
2O
3、BaO-SiO
2-Al
2O
3、混合アルカリ土類アルミノケイ酸塩、希土類元素ドープアルカリ土類アルミノケイ酸塩
、B
2O
3変性アルカリ土類アルミノケイ酸塩、及び又はTiO
2変性アルカリ土類アルミノケイ酸塩からなる群から選択される少なくとも1種のガラス形成剤と組み合わせてAl
2O
3を含む、
請求項16記載の触媒。
【請求項18】
SiC粒子とSiC粒子間の空隙中の1種又はそれ以上の金属酸化物の保護マトリック
スとの複合体コアであって、理論密度の60%以上の密度を有する前記コア、及び該コアを覆う多孔質コーティングを含み、ここで
、前記保護マトリックスがAl
2O
3を含む、触媒支持体。
【請求項19】
前記1種又はそれ以上の金属酸化物が、アルミナ、チタニア、及びシリカからなる群から選択される、
請求項18記載の触媒支持体。
【請求項20】
前記コアと前記多孔質コーティングとの間に配置された界面層をさらに含む、
請求項18記載の触媒支持体。
【請求項21】
前記多孔質コーティングと前記界面層との間に配置されたガス不透過性保護コーティングをさらに含む、
請求項20記載の触媒支持体。
【請求項22】
SiC粒子とSiC粒子間の空隙中の1種又はそれ以上の金属酸化物の保護マトリックスとの複合体を含む触媒コアの製造方法であって、
(a)SiC粉末と1種又はそれ以上の金属粉末を組み合わせて混合物を形成する工程、(b)圧縮下で前記混合物を所定の形状に形成する工程であって、ここで前記圧縮は理論密度の60%以上のグリーン状態にある密度を提供するのに十分な圧力を混合物に加え、それにより金属がSiC粒子の周りを流れるように金属粉末の塑性変形を引き起こす工程、及び
(c)金属の少なくとも一部が対応する金属酸化物に転化されるように酸素含有雰囲気中で前記所定の形状を加熱し、それにより、SiC粒子を結合する金属酸化物保護バリアをSiC粒子の周囲に形成する工程、
を含み、
ここで該触媒コアは理論密度の60%以上の密度を有し、且つ、前記1種又はそれ以上の金属粉末がAl及び/又はAl-Si合金を含む、方法。
【請求項23】
前記工程(a)において、SiC粉末が、合金中に25%までのSi、合金中に5%乃至20%のSi、合金中に10%乃至15%のSi、又は合金中に11%乃至13%のSi、を含有するAl-Si合金と組み合わされる、
請求項22記載の方法。
【請求項24】
(a)原料からCO及びH
2を含む合成ガスを発生させること、
(b)請求項1乃至
請求項17の何れか一項に記載の触媒を含む反応器容量を有する固定床反応器に合成ガスを供給すること、ここで前記触媒活性層はフィッシャー・トロプシュ合成に適した1種又はそれ以上の触媒活性金属を含み、そして
(c)触媒上で、固定床反応器内の合成ガスを反応させて、炭化水素生成物混合物を製造すること
を含む、炭化水素のフィッシャー・トロプシュ合成を行う方法。
【請求項25】
(a)請求項1乃至
請求項17の何れか一項に記載の触媒で満たされた複数の固定床反応器チューブ中に、メタン及び水蒸気を供給すること、ここで触媒活性層は、水蒸気メタン改質に適した1種又はそれ以上の触媒活性金属を含み、そして
(c)触媒上で該反応器チューブ内のメタン及び水蒸気を反応させ、水素を生成することを含む、水蒸気メタン改質方法。
【請求項26】
(a)請求項1乃至
請求項17の何れか一項に記載の触媒を含む反応器中に、1種又はそれ以上の反応物を供給すること、ここで前記触媒活性層は、反応を触媒するために適した1種又はそれ以上の触媒活性金属を含み、そして
(b)該触媒上で、反応器内の1種又はそれ以上の反応物を反応させ、生成物を生成すること、
を含む、触媒反応を行う方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、米国エネルギー省により授与された補助金番号DE-SC0013114の下で、一部政府の支援を受けて作られた。政府は発明に一定の権利を有する。
【0002】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年6月6日に出願された米国仮特許出願第62/62/681,652、発明の名称“触媒支持材料、触媒支持体、触媒及び触媒を用いた反応方法”の優先権を主張する。上述の仮特許出願の全開示は、本明細書に参照により組み込まれる。
【0003】
種々の触媒支持材料、触媒支持体(本明細書で触媒コアとも言う)、触媒、上記の製造方法、触媒を用いた反応方法が存在し得るが、本発明者の前に、本明細書に記載した発明を作る又は使用した者は誰もいなかったと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本明細書は、発明を特に指摘し、かつ、明確に主張する請求の範囲で締めくくられるが、本発明は、添付図面と併せて読み取る場合、それらの特定の実施形態の詳細な説明からよりよく理解されると考えられる。文脈が別段の指示をしない限り、図面内の類似の要素を識別するために同様の符号が図面内で使用されている。また、一部の図は、他の要素をより明確に示すために、特定の要素を省略して簡略化されている場合がある。そのような省略は、対応する詳細な説明に明示的に記載されている場合を除いて、例示的な実施形態のいずれかにおける特定の要素の存在又は不在を必ずしも示すものではない。
【0005】
【
図1】
図1は、コアと外層との界面を示す低倍率(左)及び高倍率(右)での発明触媒の断面SEM画像を示す。この材料は1250℃で空気中で処理され、外側Al-Si層を含む。
【
図2】
図2は、BSAS(A)でコーティングされ、BSAS(B)で共処理され、そしてBSASを保護層に変換するために高温で熱処理された、本発明材料の断面SEM画像を示す。BSASは白い材料である。
【
図3】
図3は、25%乃至75%の体積比でスラリー中のAl及びAl
2O
3の混合物として導入された、Al
2O
3混合物でコーティングされた発明材料の断面SEM画像を示す。
【
図4】
図4は、密着コーティングされたSiC/Al
2O
3複合コアペレットの断面SEM画像を示す。(A)はCASガラス形成剤と混合したAl
2O
3を含む層を指し、(B)はAl
2O
3層を指し、(C)は材料のコアである。
【
図5】
図5は、アルミナの第1界面層、次いでNi含有触媒活性材料の外層でコーティングされたSiC/Al
2O
3複合コアペレットの断面SEM画像を示す。
【
図6】
図6は、水蒸気含有及び高温環境下での本発明触媒の耐酸化性を実証する写真を示す。
図6Aは、空気中25%水蒸気を900℃で44時間曝露する前(左)及び後(右)の購入したままの市販のSiCペレットの写真であり、
図6Bは同じ条件及び時間での暴露前(左)及び後(右)の発明触媒支持体の写真を示す。
【
図7】
図7は、900℃でフォーミングガス(窒素中3%水素)中50%水蒸気の条件下で、時間に伴う発明材料の代表的なサンプルの重量増加結果を示す。
【
図8】
図8(A乃至D)は、0.8乃至0.99の範囲のアルファの炭素数に対するn番目の炭化水素の質量分率を表すプロットを示す。アルファが増加すると、より重い炭化水素の質量分率が大幅に増加する。
【
図9】
図9は、正規化された、不活性な充填床のラジアル伝導率のペレット空隙率と温度効果のプロットを示す。
【
図10】
図10は、市販のSMR触媒と本発明の触媒の両方について、1970hr
-1(空塔速度0.52m/s)での有効充填床熱伝導率のプロットを示す。
【
図11】
図11は、市販のSMR触媒(k
r)と本発明の触媒支持体(k
s)の停滞熱伝導率(k
r)の実験データの比較プロットを示す。
【
図12】
図12は、平均熱流束33.17kW/m
2を用いた反応器外壁温度に対する軸方向距離のプロットを示し、発明触媒からの熱伝導率の向上により、最大壁温度を13℃低下させることを示している。
【
図13】
図13は、1970hr
-1の空間速度での市販の及び発明触媒の充填床の壁及びガス温度に対する軸距離の比較である。
【
図14】
図14は、本発明の触媒のドライメタンスリップに対するGHSVの増加の影響を示し、支持体として本発明の触媒を使用すると、同等のドライスリップに対して36%高いGHSVが可能になることを示している。
【
図15】
図15は、同等の乾燥メタンスリップの熱流束プロファイルのプロットを示す。同じ壁温度とスリップに対して、本発明の材料は33%多くの熱を吸収する。
【
図16】
図16は、650乃至900℃の温度範囲、1乃至20baraの圧力、及び3の水蒸気対炭素(S/C)比でのメタンの平衡転化のグラフを示す。
【
図17】
図17は、SMR活性金属イオンを含浸させ、その後焼成した外側の多孔質層を有するオプションA、及び本発明の触媒支持体材料の外側に直接堆積した活性触媒の層を有するオプションB、を用いた水蒸気メタン改質条件における本発明の触媒支持体の触媒性能を示している。
【
図18】
図18は、SMR活性金属イオンを含浸させ、その後焼成した外側の多孔質層を有するオプションA、及び本発明の触媒支持体材料の外側に直接堆積した活性触媒の層を有するオプションB、を用いた水蒸気メタン改質条件下での本発明触媒支持体材料に対する空間速度研究の結果を示す。
【
図19】
図19は、SMR活性金属イオンを含浸させ、その後焼成した外側の多孔質層を有するオプションA、及び本発明の触媒支持体材料の外側に直接堆積した活性触媒の層を有するオプションB、を用いた水蒸気メタン改質条件における性能安定性を示す。
【
図20】
図20は、530℃及び830℃での、市販のSMR材料、異なる世代の本発明触媒、及び高密度SiC(ベンチマークとして機能する高密度SiCに正規化された値)の充填床熱伝導率を示す。
【0006】
図面は、本発明の範囲を限定するのではなく、例示するものである。本発明の実施形態は、必ずしも図面に描かれていない方法で行うことができる。したがって、図面は、単に発明の説明を助けることを意図するものである。従って、本発明は、図面に示される正確な配置に限定されない。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明
以下の詳細な説明は、関連技術の当業者が同じものを作成及び使用できるようにすることのみを目的として、本開示の実施形態の例を説明する。したがって、これらの実施形態の詳細な説明及び図解は、本質的に純粋に例示的なものであり、いかなる方法においても、本発明の範囲又はその保護を制限することを意図するものではない。
【0008】
本開示の実施形態は、炭化ケイ素(SiC)ベースのコア(当技術分野では触媒支持体とも呼ばれる)及びそれに付着した1つ又は複数の触媒活性材料(例えば、1つ又は複数の金属)を含む触媒を提供する(例えば、コア上にシェルを形成する多孔質触媒支持体層)。本開示の実施形態はまた、触媒、特にコアシェル触媒の製造に使用するためのSiCベースのコアを提供する。特にH2O(例えば水蒸気として)存在下での高温条件下での触媒反応でその後の使用中の酸化及び腐食からSiCベースのコアを保護するために、1つ又はそれ以上の保護材料がSiCベースのコアと組み合わせて使用される。いくつかの
実施形態では、触媒コアは、理論密度の60%以上の密度を有し、SiC粒子(又はサブ粒子)とSiC粒子間の空隙内の1つ又はそれ以上の金属酸化物(例えば、アルミナ)の保護マトリックスとの複合体を含む。他の実施形態では、SiCベースのコアは、SiCコアと外側の触媒活性層との間に位置する1つ又は複数の界面層によって保護されている。界面層は、例えば、高密度アルミナ(例えば、理論密度の≧80%、≧90%、又は≧95%)又はバリウムストロンチウムアルミノシリケート(“BSAS”)などの別の保護材料を含むことができる。さらに別の実施形態では、この界面層(本明細書では“第3の層”とも呼ばれる)は、複合SiC/酸化物(例えば、SiC/Al2O3)コア上に適用することができる。
【0009】
酸化物支持体上に分散した触媒金属を含む高表面積の活性触媒を達成するために典型的であるように、触媒活性材料は、多孔質触媒支持体材料の表面(内部表面を含む)上にスポット、ドット、ナノクラスターなどとして配置されるように、当業者に知られている、又は今後開発される様々な方法のいずれかでコアに接着することができる。いくつかの実施形態では、1種又はそれ以上の界面層(例えば、α-アルミナを含む層)が、多孔質触媒支持体に担持された触媒活性材料と、炭化ケイ素(SiC)からなる内部の適度に固体粒子のコアとの間に提供される。界面層の一実施形態は、その中に分散された活性触媒金属を備えた多孔質酸化物からなる多孔質触媒層からSiCコアを分離した、触媒支持体(すなわちコア)の外側の周りに適用されるA12O3の実質的に高密度層である。
【0010】
したがって、本開示の触媒は、少なくとも2層、3層及び場合によっては4(又はそれより多い)層の組み合わせによって定義される。第1の層は、その中に分散されたAl及び/又はSi、ならびにAl及びSiの酸化物(特に、アルミナ)などの他の成分を含みえる、SiCからなる理論密度コアの60%以上によって定義される。外側、第2層は、標的反応に対して触媒活性であり、そして典型的には、例えばナノクラスター、スポット、ドットなどの形態等で、それらの中に配置された少なくとも1種の活性触媒金属を備えた多孔質酸化物支持体からなる。第3の界面層及び、ある場合には第4の非多孔性の、気密の、保護コーティング層(“第4層”)が、第1層と第2層の間に位置する。界面層は、例えば、水蒸気による腐食から第1層(すなわちSiC表面)を保護するか又は不動態化した、実質的に高密度のα-アルミナ層であり得る。第4層は、気密性を有し、及び水蒸気を含む環境中高温度で、コア中のSiCの酸化を防止する、高密度(理論値の90%以上、95%以上、又は約100%)で、非多孔性の、密閉コーティングであり得る。第3層、及び場合によっては第4層はまた、長い動作寿命の間、コーティングされた触媒の接着又は第2層を固定又は支持するように作用する。それらの中に配置された活性金属を備えた多孔質触媒支持体からなる第2層又は外層が、構造物の表面から剥離、破断、剥がれ落ち或いは消失することは望ましくない。また、任意又はすべての層は、支持体のバルク放射率を増加するために、高放射率材料で構成されるか、混合されるか、コーティングされるか、もしくはドープされるか又は表面仕上げ改質され得る。
【0011】
さらに別の代替の実施形態では、特にコアがSiC粒子間の空隙内にアルミナなどの保護マトリックスを含む場合、多孔質界面層を第1の層と第2の層との間に提供することができる。例えば、本明細書でさらに説明するように、アルミナの半透明の多孔質層を使用して、触媒の放射率を高めることができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、触媒コアは、SiC粒子又はサブ粒子と、金属酸化物の保護マトリックス、及び、場合によっては、SiC粒子の周りの残留金属との複合体を含む。粒子は、サイズが0.01乃至100ミクロンの範囲でSiC及び他の成分の分離微結晶として定義される。本明細書に更に説明するように、本発明の触媒構造において、第1層(即ち、コア)のSiC粒子は、より大きく、圧縮された単一ペレット又は他の所望の形状を生成するため、製造中に圧縮される。触媒ペレットは、典型的には、約1mm乃至5
0mmの特徴的な寸法又は水力直径を有する。いくつかの実施形態では、触媒コアの密度は、理論密度の約60%乃至100%、又は理論密度の約60%乃至約90%、又は理論密度の約65%乃至約80%である。保護マトリックスは、水蒸気、及び場合によっては酸素が、反応条件下で、ペレットのコア(即ち、第1層)中のSiCに到達するのを防止するために作用する。一実施形態では、保護マトリックスはアルミナから構成される。代替実施形態では、保護マトリックスバリアは、アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア、又は前記の2種又はそれ以上の組み合わせから構成される。保護マトリックスは、腐食性酸化からSiC粒子を保護するだけでなく、SiC粒子を結合してコアを形成する粒間相としても機能する。その結果は、より多孔質(理論密度の60%未満)である従来のSiC触媒コアではなく、理論密度60%以上の複合体触媒コアである。
【0013】
上述したように、いくつかの実施形態では、保護マトリックスはAl2O3を含む。さらに別の実施形態では、保護マトリックスは、Al2O3、ならびにシリカ、及び/又はムライト(Al6Si2O13)などの組み合わされたアルミニウム及びシリコンの1種又はそれ以上の酸化物を含む。同様に、他の実施形態では、保護マトリックスは、アルミナ、ならびにチタニア、ジルコニア及び/又は組み合わされたジルコニア、アルミニウム、及び/又はチタンの1種又はそれ以上の酸化物を含む。また上記のように、いくつかの実施形態では、触媒コア(すなわち、第1層)は、例えば、理論密度の約60%乃至約100%、理論密度の約60%乃至約95%、理論密度の約60%乃至約90%、理論密度の約65%乃至約90%、又は理論密度の約65%乃至約80%の実際の密度など、いくらか高密度化されている。理論密度の60%でさえ、本開示のコアは、典型的には多孔質である市販のSiC触媒コアよりも高い密度を有する。
【0014】
他方、第2の層において、活性触媒金属は、約40%乃至約80%の範囲の多孔性(ボイドボリュームとも称する)を有する多孔質支持体内(すなわち、多孔質の内表面及び外表面)に分散される。第1層と第2層との間に配置され得る第3の任意の界面層は、高密度物質からなり、ここで第3層は、理論上の約80%乃至100%の密度を有する。下にあるSiCの第1層を保護するための保護層として機能する第3層は、例えば、コア上に実質的に高密度層を形成することができる、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア又は他の材料から構成され得、望ましくない反応に対して実質的に不活性であり、ならびに多孔質支持体及びその中に配置された活性触媒金属からなる第2層を接着するのを助けるように作用する。
【0015】
第4の、気密性を有する、保護コーティング層は、第3層と組み合わせて利用される場合、高温での水蒸気及び高酸化環境を含む、コア材料に対する腐食性ガスの安定性を高めるために、より高密度な、より密閉した保護コーティングを提供する。第4層は、アルカリ土類アルミノケイ酸塩ガラス、アルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラス、及びランタニドアルミノケイ酸ガラスなどのガラス形成剤と組み合わせたAl2O3を含む気密性(理論密度の90%以上又は95%以上)を有する保護コーティングであり得る。
【0016】
本開示の実施形態はまた、SiC及びAl(又はAl-Si合金)粉末を、バインダー、可塑剤、及び/又は潤滑剤などの1種又はそれ以上の添加剤とともに、混合することによって触媒コア(すなわち、支持体)を製造する方法を含む。その後、この混合物は、ドライプレス成形又は押出成形などによってペレット(又は他の所望の形状)に形成され、次いで、Al2O3の保護マトリックス中にSiCを含む高密度触媒コアを形成するために(例えば、周囲空気中で)焼成される。
【0017】
本開示の触媒支持体及び触媒は、当業者に知られているもの及び今後開発されるものを含む、任意の様々な形状で製造することができる。適切な形状には、例えば、球、シリンダー、ペレット、ビーズ、ローブシリンダー(例えば、ビローブ、トリローブ、テトラロ
ーブなど)、サドル、ホイール、リング、ポールリング、ラシヒリング、リブ付き又は溝付きシリンダー、ノッチ付きキューブ、溝付きのピラミッド、デイジー型、及びスター型のペレットが含まれる。あるいは、本開示の触媒は、モノリシック構造として製造することができる。触媒支持体は、例えば、押出成形、プレス成形、又は成形によって、所望の形状及び大きさに形成することができる。本明細書の説明の一部は明示的にペレットに言及しているが、文脈が別段の指示をしない限り、その説明は他の任意の触媒形状に等しく適用されることが理解される。
【0018】
本開示の触媒は、当業者に知られているもの及び今後開発されるものを含む、多種多様な反応器の型及び構成のいずれかで使用することができる。例えば、本開示の触媒は、固定床反応器(充填床反応器とも称する)、流動床反応器、メソチャネル反応器、ミリチャネル反応器、マイクロチャネル反応器、膜反応器、沸騰床反応器、クロマトグラフィー反応器、及び移動床反応器に使用することができる。本開示の触媒は、固定床(すなわち、充填床)反応器に特に有用であり、ここで自由流動性の触媒が、シリンダー(円筒)形、長方形、正方形、又は他の形状などの様々な断面形状の反応チャンバー内に装填される。自由流動性の触媒は、反応チャンバーの形状に適合し、反応操作のために所定の位置に固定される。作動中、触媒は、流動床反応器の場合のように移動するのではなく、反応チャンバー内の所定の位置に実質的に固定される。
【0019】
本開示の触媒コアは、当業者に知られているもの及び今後開発されるものを含む、(直接又は1種又はそれ以上の界面層を使用して)接着した多種多様な触媒活性材料のいずれかと共に使用することができる。適切な触媒活性材料は、例えば、Ni、Co、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Os、及びReなどの金属を含む。さらなる適切な触媒活性材料は、Au、Ag、Cu、Fe、Mn、Mg、V、Mo、及びCrを含む。
【0020】
本開示のさらなる実施形態は、本明細書に記載の触媒を使用する反応方法を含む。これらの反応方法は、例えば、水蒸気メタン改質、アセチル化、付加反応、アルキル化、脱アルキル化、水素化脱アルキル化、還元的アルキル化、アミノ化、芳香族化、アリール化、自己熱改質、カルボニル化、脱カルボニル化、還元的カルボニル化、カルボキシル化、還元的カルボキシル化、還元的カップリング、縮合、分解、水素化分解、環化、シクロオリゴマー化、脱ハロゲン化、二量化、エポキシ化、エステル化、フィッシャー・トロプシュ合成、ハロゲン化、ハロゲン化水素化、ホモロゲーション、水和、脱水、水素化、脱水素化、ヒドロカルボキシル化、ヒドロホルミル化、水素化分解、ヒドロメタル化、ヒドロシリル化、加水分解、水素処理法、水素化脱硫/水素化脱窒素(HDS/HDN)、異性化、メタン生成、メタノール合成、メチル化、脱メチル化、メタセシス、ニトロ化、酸化、部分酸化、重合、還元、水蒸気及び二酸化炭素の改質、スルホン化、テロメリゼーション、エステル交換、三量体化、水性ガスシフト(WGS)、及び逆水性ガスシフト(RWGS)を含む。
【0021】
本開示の様々な実施形態による触媒コア及び触媒は、本明細書でさらに説明されるように、いくつかの有利な特性及び特徴を示す。
【0022】
理論密度60%以上の、SiCベースの触媒コアの組成と製造
ニッケルベースの触媒は、伝統的に水蒸気メタン改質(“SMR”)反応、及び他の種類の触媒改質プロセスで使用されてきた。典型的には、ニッケル(触媒活性材料)は、多孔質セラミック(例えばアルミナ、セリア、酸化チタン、酸化マグネシウム、シリカ、複合材料、混合物など)を含むの高い内部表面積(10乃至1500m2/g)の触媒支持体上に小さなナノクラスター(平均直径5乃至100nm)として配置又は分散される。この種の触媒システムは、触媒的な乾式改質(DR)又は水蒸気と乾式改質の組み合わせ(CSR)、酸化的水蒸気改質(OSR)、自己熱改質(ATR)、酸化的脱水素(OD
R)、及び触媒的部分酸化(CPOX)、場合によっては、コークス形成を抑制し、及び/又は反応速度を増加させ、及び/又は水蒸気を用いた高温操作下での触媒の熱安定性を改善するのに有益な他の要素を添加して、使用されている。
【0023】
Niに加えて、Co、Ru、Rh、Pd、Ir、及びPtなどの他の金属が、主要な活性触媒金属として、又はNiと組み合わせた場合の促進剤又は安定剤として利用されている。高温プロセス(600℃を超える)は、主要な触媒活性材料として、又はNiと組み合わせて使用される促進剤もしくは安定剤として、1種又はそれ以上の白金族金属(“PGM”:Ru、Rh、Pd、Ir、Os、及びPt)を含む可能性が高い。工業的には、Niは、その十分な活性、低コスト、及び入手可能性のために、天然ガスのSMRを介した水素の生成用の好ましい活性金属である。ニッケルはSMRにおいて最も活性な触媒ではないが、工業用固定床反応器は通常平衡反応が制限される。
また、工業用固定床反応器(例えば、SMR用)での吸熱反応に必要な熱の追加は、市販の固定床触媒の有効熱伝導率が比較的低いため、遅くなる。
【0024】
従来のSMR触媒及び他の種の改質に使用される触媒について、ほとんどの場合、活性金属は、支持体又は高表面積支持体として機能する別の材料上に配置される。下記表1は、上記の技術のいくつかで一般的に使用される触媒システムの非網羅的な要約を提供する。表1に記載されているように、アルミナ支持体が一般的に使用されるが、その中に配置された活性金属を含む多孔質支持体の他の組成物もまた使用され得る。たとえば、天然ガス又はバイオガス原料を使用する工業用SMRは、典型的に、多孔質アルミナ支持体に担持されたNiを使用して触媒作用が及ぼされる。場合によっては、例えば、コークス形成に対する触媒の耐性を改善し、かつ、高水蒸気環境での高温操作に起因して、触媒の安定性を高めるために、少量の他の成分が添加される。表1中、ATRは自己熱改質反応を表す。CPOXは、触媒部分酸化反応を表す。DRは乾式改質反応を表す。OSRは、酸化的水蒸気改質反応を表す。SMRは、メタン水蒸気改質反応を表す。
【表1】
【0025】
炭化ケイ素(SiC)は、改質反応で使用するための触媒支持体として研究されている
1種の材料である。SiCは、ベース材料が高い熱伝導率を示すため魅力的であり、反応器内の熱伝導を改善するのに理想的である。例えば、室温で、高密度アルミナは、約25W/m・Kの熱伝導率を有し、530℃で約10W/m・Kに低下し、さらに830℃で約7W/m・Kに低下する。一方、バルク(高密度、半導体グレードではない)SiCは、室温で約130W/m・Kの熱伝導率を有する(530℃で約60W/m・Kに低下し、さらに830℃で約38W/mKに低下する)。アルミナと比較してSiCのより高い熱伝導率は、触媒支持体として使用される場合に有利である。SiCはまた、炭素形成を含む副反応に関して高レベルの不活性、酸及び塩基環境に対する耐性、機械的硬度、並びに触媒支持体に有利な他の特徴を示す。しかし、SiCは、水蒸気の存在下で揮発性のSiO-(OH)種を形成するSiO2を形成することによって材料を劣化させるため、高い反応温度で酸素及び/又は水蒸気にさらされる必要がある用途の触媒支持体又はコアとしては理想的ではない。
【0026】
したがって、いくつかの有利な特性を有するにもかかわらず、保護されていないSiCは、酸素(例えば、空気)及び/又はH2O(例えば、水蒸気)環境中、高温でので十分な安定性を欠いている。これらの条件下で、SiCの表面はSiO2に酸化され、水蒸気又は水蒸気と酸素の存在下でガス状のSi(OH)4を形成するためにさらに腐蝕する。時間とともに、この現象はすべてのSiCが酸化されるまで続く。これにより、SiC構造が低下又は弱まり、材料又は触媒システムの不具合をもたらす。これはSiCの主な故障メカニズムであり、その優れた熱特性にもかかわらず、高温と酸素(例えば空気)又は水(例えば水蒸気)の存在とを必要とする反応中の触媒支持体として工業的に採用されていない主な理由である。さらに、SiCがSiO2に変化すると、材料の熱特性が大幅に変化する。シリカはSiC値よりもはるかに低い熱伝導率を持っており、それゆえSiO2の形成もまた材料の熱伝導率を低下させる。
【0027】
これらの問題のために、保護されていないSiC基板(例えば、フォーム、モノリス、ペレットなど)に直接触媒活性材料を適用すると、水蒸気メタン改質触媒及び同様に他の多くの反応に対して許容できないほど短い触媒寿命を引き起こす、酸化速度を生じさせる。水蒸気を含む高温の酸化反応又は熱水反応に使用する場合は、SiC表面を保護又は不動態化する必要がある。したがって、改質及び関連する反応における触媒支持体としてのSiCの使用は、典型的には、市販のSiC(α又はβの何れか)にアルミナなどの外側多孔質層を配置させ、続いてNiなどの触媒活性金属を多孔質アルミナ層に含浸させるものに限定されてきた。代案として、Ni及び多孔質層(例えば、アルミナ)の添加は、単一の工程で行うことができる。SiCコアの外面へアルミナなどの多孔質セラミック触媒支持体層をコーティングすると、触媒の使用中に、下にあるSiCへの水蒸気と酸素の侵入速度が遅くなる。しかし、腐食へのわずかな遅れは、工業用メタン改質触媒の商業的に許容できる寿命を提供できない。
【0028】
本開示の触媒コアは、その有益な熱特性を利用する、一方で、酸化及び腐食からSiCコアを保護し、触媒の耐用年数を著しく増加させた、SiCを有利に用いる。一実施形態では、SiCコアは、SiCとアルミナ(及び任意でシリカ)の複合体を含む。アルミナは、複合コア内のSiC粒子の周りの保護マトリックスとして存在する。代替の実施形態では(又はコア内のSiC粒子の周りの保護アルミナマトリックスに加えて)、高密度アルミナのシェルコーティングがSiCコアの外側に広がる。(例えば、多孔質アルミナを含むアルミナの外側コーティングもまた、本明細書でさらに説明されるように、理論密度60%以上のSiC/Al2O3の複合コア上に提供され得ることが理解される。)
【0029】
第1の実施形態では、アルミニウム(例えば、Al-Si合金の粉末を含む粉末として)は、プレス成形又は押出成形などによりコアペレット又は他の所望の形状に形成する前に、SiC(例えば、粉末として)と組み合わされる。1種又はそれ以上の結合剤、可塑
剤、潤滑剤、加工助剤などの様々な添加剤が混合物に含まれ得る。プレス成形又は押出成形(又は他のペレット/コア形成プロセス)中に、アルミニウムはSiC粒子の周りを流れるように塑性変形する。次に、酸素の存在下でのその後の熱処理(すなわち、焼成)中に、アルミニウムを溶融し、SiC粒子間の空隙に再配置し、高温(例えば、約850℃又はそれ以上のプロセス温度)で酸素とともにアルミナに転化される。アルミニウムは、熱処理雰囲気から酸素を除去し、SiC粒子の酸化を防ぐだけでなく、アルミニウムの大部分を保護アルミナに転化する。アルミナ、及びマトリックスに閉じ込められる酸化されていないアルミニウムは、触媒の使用中にSiC粒子の水蒸気及び酸素の攻撃に対するコーティング及び保護を提供する。特定の熱処理温度では、高圧加圧プレスプロセス又は高温熱処理プロセスでのシステム内の他の材料と合金を形成していないアルミニウムは、熱処理温度がアルミニウムの融点(660℃)を超えると液体になる。生のままのアルミニウムの部分は溶融し、そしてSiC粒子の間及び周囲の隙間に流れ込む可能性があり、それによりアルミニウムが酸素にアクセスしやすくなり、アルミナマトリックスが形成される。最終的な構造では、SiCに付加されたアルミニウムがアルミナに転化され、アルミニウムの一部が他の材料と合金化されると考えられ、これにより、触媒の使用中(例えば、高温メタン水蒸気改質中)のコア内で内部液体膜を形成しない、SiC粒子の周囲に、安定した保護マトリックスを提供する。また、形成されたアルミナの一部がコアの表面に露出し、コアをさらに保護すると考えられる。SiをAlと組み合わせて(例えば、Al-Si合金粉末として)使用する場合、Siの一部はアルミナマトリックスに閉じ込められ、及びSiの一部は、焼成中に酸化し及び酸化アルミニウムと反応してムライト(Al6Si4O13)を形成すると考えられる。
【0030】
触媒コアのSiC粒子の周りに内部の保護アルミナマトリックスを提供することにより、本開示の実施形態は、SiCを酸化及び腐食から保護しながら、SiCの有利な熱特性を大部分保存する。アルミナの内部保護(又はバリア)マトリックスの追加は、高密度SiCコアの酸化及び腐食を制限することによって触媒の商業的寿命を延ばし、それにより、より長く及び商業的に許容できる触媒寿命を達成することができる。一実施形態では、触媒の寿命は、6ヶ月から5年の範囲である。他の実施形態では、触媒の寿命は、工業用改質チューブ内での交換を必要とする前に、6ヶ月から30ヶ月の範囲である。そのような延長された触媒寿命は、20バールの工業用圧力、3のS:C比、2000h-1のガス毎時空間速度(“GHSV”)、及び800℃を超える反応温度で達成することができる。
【0031】
場合によっては、SiC粉末は、Al-Si合金(例えば、最大約25%のSi、約5%乃至約20%のSi、約10%乃至約15%のSi、又は約11%乃至13%のSiを含む合金)と混合され、純粋又は実質的に純粋なAlの代わりに使用される。とりわけ、合金中のSiは、金属成分の溶融温度を低下させ、及び/又は溶融金属の濡れを改善するのに役立つ。一実施形態では、600℃未満の融点を有するAl及びSiの共晶合金又は近-共晶合金が使用される。
【0032】
あるいは、純粋又は実質的に純粋なAl及びSi粉末は、Al-Si合金よりむしろSiCと組み合わせることができる。同様に、1400℃未満の溶融温度を有する他のアルミニウム合金又は他の金属若しくは金属合金でさえも、(Al又はAl-Siと共に、又はその代わりに)使用できることが考えられる。
【0033】
高エネルギーを必要とする反応(例えば、強い吸熱又は発熱反応熱)に関して、本開示のペレット化又は粒子状触媒構造に関して本明細書に記載されるように、SiCが熱的に有効な形態で配置される場合、SiCの高い熱伝導率は、熱を吸熱反応チャンバーに半径方向に送り込むか、又は発熱反応チャンバーから熱を半径方向に除去するのに有利である。本明細書に記載の触媒はまた、驚くべきことに、自己熱反応に利点を提供するであろう
。本開示の触媒のより高い有効熱伝導率は、軸方向伝導及び熱伝達を増加させることによって、組み合わされた自己熱反応の強い発熱部分のために生じるチューブ状反応器内の局所的な軸方向熱勾配を低減するであろう。熱は、触媒床内の軸方向伝導によって、組み合わされた自己熱反応内の吸熱反応により効率的に伝達される。全体的な又は包括的な反応エネルギー又は熱は、自己熱反応に対してバランスが取れているが、発熱反応及び及びそれらの熱放出の局所的な速度は、通常、吸熱反応の局所的な反応速度を上回る。これは、局所的なホットスポットの形成を生じさせる。本開示の触媒は、反応チャネルの前部におけるホットスポットの大きさを低減し、かつ、反応チューブの末端で反応がより高い程度に到達するために、より遅い吸熱反応に対し、より多くの温度とともにより多くの時間を与えることによって、全体的なプロセス効率を改善する。
【0034】
本開示の触媒コアのアルミナ保護マトリックスは、例えば、SiC粒子の周りを流れるようにアルミニウムを塑性変形させ(例えば、ペレット形成中)、その後酸化熱処理プロセスによりSiC粒子の周囲にアルミナ保護バリアを形成することにより、SiC中に分散されたアルミニウムを含む組成物から作製することができる。任意に、シリコンは、SiC粉末に分散されたAl-Si合金を使用することによって、及び/又はAl粉末と一緒にSi粉末を加えることによって含まれ得る。
【0035】
1つの特定の実施形態では、SiC粉末は、アルミニウム及び任意にシリコンの、粉末又はサブ粒子(これらの用語は交換可能に使用される)と混合される。次いで、この混合物は、高圧又は高荷重の下でプレス成形されるか、あるいは押出成形されてペレット(又は他の所望の形状)になり、次に焼成されて、粒子が互いにくっついて容易にバラバラにならない結合(すなわち、融合)構造を形成する。結合構造のテストとして、プレス成形された粒子が1メートルの高さから落下した場合、それは粒子の元の配列に破壊又は破砕されない。本明細書でさらに説明されるように、ペレットは、触媒活性材料又は他のコーティング(例えば、界面層)でコーティングされる前又は後に焼成され得る。ペレットの焼成温度は、例えば、周囲空気中で、約0.5乃至24時間の間で850℃から1450℃の間、又は少なくとも2時間、約900℃から約1000℃の間で変化し得る。本明細書でさらに述べるように、いくつかの実施形態では、複数の熱処理工程が、様々な温度及び様々な条件下で使用され得る。その結果、Al2O3の粒間相により結合された角のあるSiC粒子で構成されるSiC/Al2O3複合コア(例えば、ペレット)になる。
【0036】
焼成前のペレット(又は他の形状)は、炭化ケイ素(SiC)粉末とアルミニウム-ケイ素(Al-Si)粉末-後者はAlとSiの粉末の混合物として、又はAlとSiの合金の粉末として-で構成される。1つの特定の実施形態では、異なる粒子サイズのSiC粉末がAl-Si粉末とブレンドされる。グリーンボディ(例えば、ペレット)内の粒子充填を最適化するために、SiC粉末の2種又はそれ以上の異なる粒子画分が使用され得る。例えば、SiCの粗いフラクション(例えば、約30乃至約70ミクロンの平均直径)は、粗いフラクション間の大きな隙間を埋めるために使用される細かいフラクションを有する、少量のSiCの細かいフラクション(例えば、約15乃至約30ミクロンの平均直径)と混合され得る。粉末ブレンドは、1種又はそれ以上の有機結合剤(ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール(“PVB”、エチル又はメチルセルロースなど)、及び/又は1種又はそれ以上の可塑剤(例えば、フタル酸ブチルベンジル“BBP”、エチレングリコール、ポリエチルグリコールなど)などの様々な添加剤とさらに混合される。これらの添加剤は、微粉末を、ドライプレス成形操作(又は他のペレット形成装置)により容易に供給することができる、より大きな凝集粉末を形成するために処理(たとえば、パン乾燥、粉砕及びふるい分離による、又はスプレー乾燥による)することを許容する。さらに、プレス成形操作を助けるために、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸などの潤滑剤、及び/又はグラファイトなどの炭素粉末は、ドライプレス成形操作を容易にするために、凝集粉末に添加され得る。
【0037】
ドライプレス成形が触媒コア(例えば、ペレットとして)を形成するために使用されるが、ただし、プロセスが、グリーン状態で目標密度(ブレンドされたSiC/Al粉末の理論密度の60%以上)を達成するように十分加圧し、アルミニウムの塑性変形を引き起こすならば、押出成形、湿式プレス成形、スリップキャスティング、静水圧プレス成形、射出成形、及び他の一般的なセラミック成形アプローチなどの様々な他の方法がコアを形成するために使用され得る。
【0038】
プレス成形された又は押出成形されたペレットは、ペレット形成に続いて焼成に供され得るが、代替の実施形態において、ペレットは、焼成に供される前に、実質的に酸素欠乏環境においてさらに焼成前高温熱処理に供され得る。使用する場合、焼成前熱処理工程は、アルミニウム(又はアルミニウム合金)粒子を、焼結させ(たとえば、400℃を超える温度で)、微細構造の再配置を見込んで、さらに溶融及び融合させ得る(たとえば、550℃を超える温度で)。この液相はまた、構造への酸素又は水蒸気(ガス)の拡散を防ぐことにより、空気又は酸素含有環境で、500℃を超える温度でのその後の熱処理中に、SiCの酸化をさらに遅くするか又は防ぎ得る。したがって、焼成前熱処理は、焼成温度と同じ又は異なる温度、特により低い温度で実施され得る。しかし、通常、ペレットは、ペレット形成後(つまり、焼成前熱処理なし)、SiC粒子の周りでアルミニウムをアルミナマトリックスに転化するのに十分な時間、850乃至1450℃又は900乃至1000℃の温度で焼成される。焼成は、酸素、空気、水蒸気、又は前述のものを窒素、アルゴン、水素及び/又は別のキャリアガスで希釈したものなどの酸素含有環境で実施される。一実施形態では、SiC及びAl(又はAl-Si)を含むペレットは、焼成環境中の酸素の量を制御する必要なしに、周囲空気中で焼成され、それによりコストを削減する。
【0039】
コア形成の例-金属酸化物の保護マトリックス内のSiC粒子
400グリットSiC(平均直径約40ミクロン)180g、1200グリットSiC(平均直径約15ミクロン)45グラム及びAl-Si合金粉末(バリメット共晶合金4047(11乃至13%Si)、グレードS-2、平均直径2ミクロン)21グラムを組み合わせて粉末ミキサーに移し、そこで混合を続けた。これとは別に、PVB3.5グラムを、イソプロピルアルコール50グラム中に加温して溶解した。次に、IPA溶液中のPVBを、連続混合しながら粉末にスプレーした。次に、均一に湿った粉末を浅い床に広げ、完全に乾くまで120℃で乾燥させた。この粉末に対して、4質量%のステアリン酸及び4質量%のグラファイトカーボン(KS-6)を添加した。これらの粉末は乾燥して加えられるが、イソプロピルアルコールは混合物を湿らせるために加えられる。この混合物は、プレス成形する前にもう一度乾燥させる。次に、乾燥粉末ブレンドは、実験室規模のプレス機でペレットにドライプレス成形される。プレス成形は手動又は自動のペレットプレス機で行われ、及び圧力は一軸に又は平衡に加えられ得る。
【0040】
上記の例は、使用する粗い及び細かいSiCフラクションの種類と量を変えることで変更できる。いくつかの実施形態では、粗いSiCは、230(平均直径で約70ミクロン)乃至600(平均直径で約30ミクロン)のグリットサイズを有するSiCから選択され得、一方、細かいSiCは、600(平均直径約30ミクロン)乃至1200(平均直径約15ミクロン)のグリッドサイズを有するSiCから選択され得る。混合SiC粉末中の粗いSiCの重量パーセントは50%乃至100%の間で変化し得、細かいSiCの重量パーセントは0%乃至50%の間で変化し得る。Al-Si合金粉末の場合、2乃至50ミクロンの中央粒子サイズなどのさまざまな粒子サイズを有する、バリメット共晶合金4047(11乃至13%Si)が使用され得る。具体的な例は、バリメット社のAl-Si共晶合金4047粉末のS-2、S-5、S-8、S-10、S-15、S-20、及びS-25グレードを含む。(モルベースで)最大約25%のSiを有するものなど
、他のAl-Si合金を使用することができる。混合物中のAl-Si(又は合金が使用されない場合はAl)の体積は、SiCの体積の約2.5%乃至約80%、SiCの体積の約5%乃至約50%、SiCの体積の約5%乃至約30%、SiCの体積の約10%乃至約30%、又はSiCの体積の約10%乃至約25%で変化させられ得る。Al又はAl-Si合金の代わりに、又はそれに加えて、他の酸化物形成金属が使用される場合、混合物中の同様の総量の酸化物形成金属が使用される(例えば、SiCの体積の2.5乃至80%、SiCの体積の5乃至50%、SiCの体積の5乃至30%、SiCの体積の10乃至30%、又はSiCの体積の10乃至25%)。
【0041】
PVB及びBBPの組み合わせの体積は、(ペレット形成前の総配合処方に基づいて)1%乃至15%で変化し得、一方、ステアリン酸及び炭素の重量パーセントは、それぞれ、0%乃至15%で変化し得る。最後に、PVBに対するBBPの体積比は0%乃至50%で変化し得る。これらの変化のまとめを以下の表2に示し、ここで、SiC及びAl-Siの量は、SiC及びAl-Si粉末の総量の体積%として報告され、及びPVP、BBP、ステアリン酸及び炭素の量も同様に、SiC及びAl-Si粉末の%として報告される。
図5は、外側の触媒活性層及びSiC/Al
2O
3コアと外側の触媒活性層との間のアルミナの追加の界面(すなわち、第3の)層とあわせて、上記の方法で製造されたSiC/Al
2O
3コアを有する触媒粒子のSEM画像を表す。
【表2】
【0042】
Al-コーティング堆積によるアルミナ界面/第3層堆積の例
前述のように、本開示の触媒のいくつかの実施形態は、コア上にコーティングされた1種又はそれ以上の界面(すなわち、第3層)を含む。SiCとAl2O3を含む触媒コアは、高温の酸化環境にさらされたときに、酸化からSiC成分をさらに保護するために、1種又はそれ以上のこれらの界面(すなわち、第3層)でコーティングされている。このような条件下で、保護されていないSiCでは、成長の遅い、シリカ薄片が発生する。この薄片は、顆粒のコアへのさらなる酸素拡散に対するバリアとして機能し、したがって、基層のさらなる攻撃を防ぎます。しかしながら、結果として生じるシリカ薄片の主な欠点は、意図された目的への適用性を制限する、揮発(例えば、Si(OH)4の形成)及びアルカリ塩の存在下での腐食(例えば、Na2SO4の形成)に対するその感受性である。これを軽減するために、保護用の“第3層”コーティングは、大気とSiC表面の間の
バリアとしての機能を果たす。いくつかの実施形態では、1種又はそれ以上の界面層のそれぞれは、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、又は前述の2種又はそれ以上の混合物又は酸化物化合物(例えば、ムライト)を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、界面層は、理論密度の80%以上、90%以上、又は95%以上の密度を有する。いくつかの特定の実施形態では、界面層は、コアの密度よりも高い密度を有する。
【0044】
他の例として、アルミニウム又は他の遷移金属又は金属酸化物との金属混合物を含むアルミニウム合金の外層は、焼成時に実質的に高密度の酸化物層に転化される界面層を形成するために、支持材料の表面上に薄いコーティングとして適用され得る。
【0045】
界面層を形成するためにこのシステムで使用される金属及び/又は金属酸化物の粒子サイズは、特定の範囲に制御され得る。例えば、粒子サイズは、実質的にほとんどの顆粒が約2ミクロンのサイズに収まるように制御され得る。顆粒サイズの範囲は、1ミクロン未満乃至最大20ミクロンまで変化し得る。
【0046】
このアプローチの一例は、コア表面に適用されたアルミニウムの薄いコーティングである。コーティングは、これらに限定されないが、ディップコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、又は真空浸透を含む多くの方法により適用でき、手動又は自動プロセスのいずれかで適用できる。使用されるコーティングスラリーは、完全な有機溶媒及び結合剤システムから、ポリマー結合剤を含む水性溶媒システム、又はそれらの組み合わせまで変化し得る。コーティング材料は、純粋なアルミナ材料から、他の金属、金属酸化物、又は非金属と混合されたアルミナまで変化し得る。また、界面コーティングは、前焼成された支持材料に、又は以下に開示されるように、形成されたままのコア形状に適用することができる。焼成後、コーティング中の金属(アルミニウムなど)はすべてアルミナに転化される。
【0047】
この特定の例では、完全な有機ベースのコーティング媒体が採用されている。第3層コーティング用のコーティングスラリーの組成を表3に開示する。成功したコーティング配合範囲の例がリストされているが、潜在的なコーティングシステムの観点から制限と見なされるべきではない。
【表3】
【0048】
スラリーは、本開示の、事前に焼成された又は事前に焼成されていない材料コアのいずれかに堆積される。この例では、コーティングは、手動又は代わりに自動スプレー装置を使用して、有機ベースのエアゾルスプレー方法によってコアに堆積さる。どちらの方法でも、最終的なコーティングに必要な厚さに応じて、スプレーは1つの工程で、又は中間の乾燥サイクルを伴って数回繰り返されるコーティングによって行われる。乾燥サイクルは
、60℃乃至150℃のさまざまな温度で行われ得る。乾燥すると、コーティングされたペレットは800℃乃至1500℃の範囲の温度、優先的には1000℃乃至1300℃、より優先的には1250℃乃至1350℃で焼成される。この結果は、(Al-Si合金を使用しているため)少量のムライトも含む、実質的に高密度(理論値の80%以上)のアルミナ界面層である。手動スプレーを使用して塗布され、アルミナ層に転化されたアルミニウム由来のコーティングの例を
図1に示す。
【0049】
ガラス形成剤のエアロゾル堆積によるBSAS“第3層”保護コーティングの例
前述のように、本開示の触媒支持体材料のコアを保護する1つの方法は、前述のように、アルミニウム又はアルミニウム及びシリコンの混合物もしくは合金などの他の元素の存在下でSiCを処理することを含む。これは、高温条件の高水蒸気環境での酸化に対するSiCの優れた保護を提供する。
【0050】
この例では、酸化からSiCコアを保護する2つの他の方法として、1つはSiCベースの複合コアの第2相としてバリウムストロンチウムアルミノシリケート(BSAS)を使用するものと、もう一つはSi-Cコアの周囲にBSASの保護コーティングを使用するものを示す。
図2は、両方の方法で得られた材料の例を示している。これらのSEM画像中の白い層はBSASである。
【0051】
この概念を実証するためにBSASが使用されているが、これらのコーティングで同様に使用できる可能性のあるガラス相形成剤は、CaO-SiO2-Al2O3、又はMgO-SiO2-Al2O3、SrO-SiO2-Al2O3、又はBaO-SiO2-Al2O3などのガラス形成酸化物の予備反応によって調製された多結晶固体である。他の適切なガラスは、ガラス相形成剤(BSAS自体など)中のアルカリ土類元素の二成分混合物、配合物中のアルカリ土類元素の代わりに希土類元素を添加すること、又はガラス改質剤として少量のB2O3又はTiO2を添加すること、を含み得る。一般に、希土類元素の修飾、同一物のホウケイ酸塩変異体、又はこれらの配合物のいずれかのチタニア修飾変異体を伴うアルカリ土類アルミノケイ酸塩は、密閉の、気密コーティングを提供するのに十分である。さらに、このようなガラスコーティングは、熱処理中、層の熱膨張及びその緻密化挙動を改変するために、アルミナ、チタニア、ジルコニアムライト又は他の一般的な酸化物セラミックなどの第2の結晶性セラミック相添加を含み得る。このような複合コーティングでは、結晶性酸化物相の含有量は、コーティング固形物の40体積パーセントに達し得る。
【0052】
最初の例では、ペレット化されたSiの焼成(すなわち、熱処理)の前又は後に、BSASがペレット化されたSiC上にコーティングされる。SiCの焼成後に塗布した場合、BSASコーティングはその後熱処理される。このコーティングの熱処理は、コア材料上に実質的に高密度な保護層の形成を導く。BSASコーティングは、使用中の酸化や腐食からSiCコアを保護する。
【0053】
あるいは、BSASはSiC粉末に添加され、両粉末は一緒に造粒される。この方法は、SiC/Al
2O
3複合コアの製造に関して前述したものの似ている。その後、造粒された粉末は、空気中で(例えば、1000℃を超える温度で)熱処理される。この処理中に、BSASは溶融し、プロセス中にSiCコーティングの周りを流れるガラス状の複合材料を形成し、SiCをカプセル化し、酸化を防ぐ。前駆体粉末の混合物をドライプレス成形及び熱処理することにより製造された実証済みのSiC/BSAS複合材料は、複合材料に対する独自の、これまで開示されていなかった方法である。
図2は、両方の方法で得られた材料の例を示している。これらのSEM画像の白い層はBSASである。
【0054】
(Al+Al
2
O
3
)由来のアルミナ“第3層”界面コーティングの例
この例では、完全に有機ベースの方法が利用されている。コーティングスラリーの特定の組成を表4に開示し、これは配合に使用される正確な試薬、及びこれらの成分が有し得る範囲を提供する。スラリーは、任意で水性媒体から配合され得る。この例では、アルミニウム金属とアルミナの組み合わせがコーティングスラリーに使用されている。アルミニウム金属とアルミナは、AlとAl2O3との比率が2.5体積%乃至50体積%の間で変化するように、表4に示される所定の比率で混合され得る。
【0055】
前の例と同様に、スラリーは、本開示の事前に焼成された、又は事前に焼成されていないコア材料のいずれかに堆積され、乾燥される。次いで、コーティングされたコア(ペレットなど)は、800℃乃至1500℃、優先的には1000℃乃至1400℃、及びより優先的には1250℃乃至1350℃の範囲の温度で焼成される。得られた材料は、
図3に示されるように、その周りに実質的に高密度なアルミナの均一層を有するコアである。
【表4】
【0056】
多層保護コーティングの例:
この例では、本発明の触媒コアは、高密度(密閉)保護コート(第4層)及び下にある界面層(第3層)を含む多層コーティングでコーティングされている。この方法により、70乃至90%の密度である界面層が生成され、続いて、以下に(Al2O3+ガラス形成剤)として言及される、ガラス相形成剤を少量添加したアルミニウム酸化物粉末コーティングを含む追加の保護コーティングが堆積される。1000乃至1400℃で焼成すると、多層構造によりコア上に密閉コーティングが作成される。
【0057】
界面層については、“Alコーティング堆積によるアルミナ“第3層”堆積の例”のプロセスは、コアの表面に10乃至40ミクロンの厚さのアルミニウム金属粉末の層を堆積するために使用される。一実施形態では、このコーティングは、空気中1000乃至1400℃で加熱されて、70乃至90%の密度のアルミニウム酸化コーティングを生成する。この熱処理後、(Al2O3+ガラス形成剤)粉体コーティングが、ディップコーティング、スプレー堆積などにより、20乃至80ミクロンの厚さで塗布される。次いで、堆積したコーティングは空気中1000乃至1400℃で焼成され、密閉性を有する保護コーティングを生成する。
【0058】
第2の実施形態では、最初のアルミニウム由来の層は、ディップコーティング、スプレー堆積などにより、20乃至80ミクロンの厚さの(Al2O3+ガラス形成剤)粉末コーティングの堆積前に、乾燥されるが、熱処理されない。次いで、堆積された両方のコーティングは、空気中1000乃至1400℃で焼成され、密閉コーティングを生成する。
【0059】
(Al2O3+ガラス形成剤)配合物は、(75乃至99%)が市販のアルミナ粉末で構成され、(1乃至25質量%)はガラス相形成材料である。ガラス形成剤の溶融は、コーティングの高密度化の強化、下にある表面へのより良い接着、及び熱処理中のコーティングの適合性を効果的に可能にし、密閉コーティングの達成を可能にする。
【0060】
ガラス形成剤の適切な候補は、CaO-SiO2-Al2O3(“CAS”)又はMgO-SiO2-Al2O3(“MAS”)、SrO-SiO2-Al2O3又はBaO-SiO2-Al2O3などのガラス形成酸化物の予備反応により調製された前駆体ブレンドを含む。他の適切なガラスは、混合アルカリ土類アルミノケイ酸塩(例えば、BSAS)、希土類元素をドープしたアルカリ土類アルミノケイ酸塩、又はB2O3もしくはTiO2改質アルカリ土類アルミノケイ酸塩を含む。
【0061】
現在の例では、CaO-Al2O3-SiO2及びMgO-Al2O3-SiO2ファミリーの共晶配合物が、事前に反応した酸化物混合物の形でアルミナコーティングに追加されている。Al2O3粉末に対して適切な比率でガラス相形成剤の混合物を水溶液中で混合した。
【0062】
ガラス相形成剤前駆体(表5)を合成するために、共晶CAS及びMAS組成物(最終処方の個々の酸化物に基づく)は、水中の硝酸カルシウム又は硝酸マグネシウム、コロイド状シリカ(SiO
2)、及びベーマイト(AlOOH)から融合され、次いで150℃で乾燥され、そして粉末を形成するために粉砕される。次いで、前駆体粉末は、酸化物を予備反応させるために、1000℃で焼成され、そして粉末の表面積を8乃至12m
2/gに減らされた。
【表5】
【0063】
次に、ガラス相形成剤粉末は、表6に示すように、水性スラリー中でアルミナ及び適切なポリマー添加剤(分散剤、可塑剤、及び結合剤)とブレンドされた。市販のアルミナ及び合成CASもしくはMAS、又はその他のガラス形成剤はさまざまな比率で混合される。水性スラリーを表6に示すが、有機ベースの溶媒システムもまた使用され得る。
【0064】
コーティング塗布プロセスは、優先的にディップコーティングプロセスを介して行われるが、スプレー堆積プロセス及び当業者に知られている他のコーティングプロセスを介しても行われる得る。コーティングの厚さはこれらのプロセスによって制御され、20乃至80μmを超えて変化され得る。コーティングされたペレットは、空気中、1000乃至1500℃、優先的には1200乃至1400℃の温度で熱処理される。密閉コーティングされたペレットの断面SEM顕微鏡写真を
図4に示す。
【表6】
【0065】
次のセクションでより詳細に説明するように、触媒活性材料は、複合コアの熱処理(すなわち、焼成)の前又は後のいずれかで、上記の方法で製造されたSiC/Al-Siコアに適用することができる。得られるコア/シェル触媒は、少なくとも2つの異なる層と機能で構成されている。第1層は、反応容器内の半径方向又は軸方向の熱伝達を改善するように機能する、高い熱伝導率と高い全垂直放射率のSiCコアで構成されている。オプションの第3層は、下にあるSiCコアへの腐食水蒸気のアクセスを最小限にするために、そしてそれにより有用な触媒寿命を延ばすために機能するアルミナの保護層又はバリア層である。この任意の層は、コア中の粒子の周りに形成されるアルミナに加えて(又はその代わりに)下にあるSiCを完全に不動態化するために望ましい場合がある。この任意の第3のバリア層は、優先的に、理論値の80乃至100%の密度を持つアルミナの連続した高密度層からなる。この任意の層は、アルミニウムのコーティングを(例えば、スラリーとして)適用し、続いて酸素環境(例えば、周囲空気)で熱処理して、アルミニウムをアルミナの高密度コーティングに転化することによって形成することができる。第2層は、触媒活性材料の外層である。いくつかの実施形態では、この第2の層は、2つのサブ層:不活性であるが多孔質の高表面積支持体、及び所望の反応を触媒するように、多孔質の高表面積支持体内に配置された触媒活性金属、から構成される。
【0066】
いくつかの実施形態では、第1の層は、50乃至50,000ミクロン、好ましい範囲は、200から15,000ミクロンの平均直径であるの平均ペレット直径によって定義される。第3のゾーンは、理論値の80%を超える密度を有する0.3乃至50ミクロンの範囲の平均厚さで定義される。第2のゾーン又は活性触媒コーティング層は、5ミクロン乃至200ミクロンの平均厚さの範囲、好ましくは10乃至100ミクロンの厚さの範囲により定義される。
【0067】
触媒支持体材料のコーティングプロセス
多くの工業プロセスの性質上、粉末触媒をペレット化された型に置き換える必要がある。その際、取り扱い、投与、正確な測定などの粉末に関連する問題が回避される。SMRなどの一部のプロセスでは、関連するプロセスの条件、すなわち高圧、水蒸気、及び流動条件、並びにそれに伴う小さな粉末床を通る流れの過度の、したがって不経済な圧力降下のために、粉末触媒の使用が不可能である。これらの条件下で、粉末触媒はさらに、反応器の下流に吹き付けられ、及び生成物の流れに吹き込まれる傾向があり、これは望ましくない。
【0068】
工業プロセスでの粉末の使用に関連する問題は、粉末をペレット化し、圧力降下を減ら
し、取り扱いと使いやすさを大幅に向上させることによって回避される。とりわけ、SMR、触媒的部分酸化、乾式改質などの工業プロセスは、反応器中でペレット化触媒を使用する。たとえば、SMRでは、活性金属(Ni)が粒状の高表面積アルミナに含浸される。
【0069】
本開示において、触媒は、保護外部コーティング(例えば、高密度アルミナ又はBSAS)を備えた予備焼結されたアルファ及びベータ炭化ケイ素ペレット、又はSiC/Al2O3(Siを添加)複合材料のいずれかから構成される高熱伝導率及び放射率支持材料(すなわち、コア)を含む。粉末は、最初にドライプレス成形又は押出成形のいずれかによってペレット化され、次に酸素環境で熱処理される。その後、ペレットは触媒活性層でコーティングされ、それによりコア/シェル触媒を提供する。コーティング方法及びオプションは、本明細書でさらに説明される。
【0070】
コアSiCを高水蒸気及び高温条件下での酸化から保護するために、いくつかの方法を採用することができる。第一に、SiCは、プレス成形時に、アルミニウムが塑性変形してSiC粒子の周りを流れ、その後の酸化熱処理中にSiC粒子の周りに酸化物相を形成するAl-Si粉末など、保護に役立つ金属と混合できる。第二に、バリウムストロンチウムアルミノシリケート(BSAS)の混合物をSiC粉末に添加し、ペレットにドライプレス成形する前に造粒することができる。その後、ペレットは空気中で1000℃以上1500℃までの温度で熱処理される。この処理中に、BSASは反応して、溶融し、SiC粒子の周りを流れて、SiC粒子をコーティングする、ガラス状の複合材料を形成する。BSASには優れた保護特性がある。第三に、BSAS(又は高密度アルミナなどの別の保護層)は、コア材料の焼成前又は焼成後に、ペレット化されたSiC(純粋な又はSiC/Al
2O
3複合材料として)にコーティングできる。このコーティングを1000℃乃至1500℃で熱処理すると、コア材料上にBSASの保護コーティングが形成される。BSASコーティングは、コアが酸化から保護されることを保証する。コアを保護するための最後の2つ方法の例が
図2に示される。
【0071】
本開示では、本発明の高熱伝導率材料は、(1)市販の粒状のSiC材料は、BSASなどの保護外層でコーティングでき、(2)BSASは、市販のSiCに添加し、熱処理前に造粒することができ、(3)AlとSiの混合物は、市販のSiC粉末に混合し、造粒し、ペレット化(又はその他の方法で形成)して、その後熱処理することができる、などの前述の様々なオプションで処理される。これらのオプションでは、得られたペレットは、触媒活性材料又は触媒活性材料の支持層(すなわち、界面層)のいずれかの外層でさらにコーティングされ、コアシェル触媒の形成をもたらす。外層は、触媒支持体(すなわち、コア)が熱処理された後、又は熱処理の前(すなわち、“グリーン”コア材料に適用される)のいずれかに適用することができる。いずれの場合においても、堆積された外層は、通常、堆積された外層がコア支持材料に付着することを可能にするために、様々な温度で熱処理される。堆積された層のサイズは様々で、平均層厚は10μm乃至200μmである。様々な触媒用途のために触媒金属が含浸されているのはこの層である(触媒活性材料がコアに堆積した外層に組み込まれていない限り)。
【0072】
いくつかの実施形態では、外層は、選択された材料を含むスラリーから、熱処理されていない(すなわち、まだグリーンである)造粒された高熱伝導性触媒支持体材料に堆積される。 他の実施形態では、外層の堆積は、すでに熱処理されたコアに対して行われる。これらの両方の場合において、堆積された外層は、600℃乃至1500℃、又は850℃乃至1450℃の範囲の様々な温度で熱処理される。
【0073】
本開示の触媒の外層は、スプレーコーティング又はディップコーティングを含む様々な方法でSiC/Al-Si複合コアに適用することができる。スプレーコーティングでは
、外層の材料が有機又は水性スラリーとしてペレットにスプレーされる。ディップコーティングでは、粒状粒子は、外層の材料を含む有機又は水性スラリーに浸漬される。本発明の触媒支持体コアの例は、
図5のSEM画像に示されている。ここで、Ni含有触媒活性層(Cとして示されている)の外層は、アルミナ(B)の界面層の介在とともに、SiC/Al
2O
3複合コア(A)上に堆積されている。
【0074】
上記のように、本明細書に記載の触媒は、SiC/Al-Si固体コア上に外層を物理的に堆積させることによって調製されるコアシェルの種類のものである。この外側のシェルは、続いて触媒活性材料が含浸される界面層、又はすでにその中に組み込まれている触媒活性材料が堆積された層(例えば、酸化物多孔質触媒相)であり得る。
【0075】
一実施形態では、プレス成形されたペレットは、金属又は酸化物の形態のいずれかの二次材料を含む有機又は水性スラリーでコーティングされる。スラリーは、既知の遷移金属と金属酸化物触媒支持体材料で構成されている。一実施形態では、スラリーは、ポリオールプロセスによって合成されたNi粒子(又は他のPGM粒子)のナノスケールスラリーを含む。コーティング後、固体コーティングが表面に保持されるように、スラリーを乾燥させる。スラリーベースの触媒コーティングでは、スラリーの形成に使用されるバインダー及び他の炭素質ベースの材料を酸化するために焼成工程が一般的である。触媒の焼成工程はまた、触媒コーティング層を表面に結合するように作用する。材料は大きく2つの種類:(1)担持触媒粉末、及び(2)触媒支持体粉末、に分類される。前者は、すでに活性触媒を含む触媒支持体粉末を指し、後者は、活性金属を含まないが、複合コーティングが形成された後に活性触媒金属を含浸させた支持体粉末を指す。活性金属がプレス成形されたペレットに添加又はコーティングされ得ることなしに、活性触媒層は、高表面積支持体全体に配置された活性金属を含む完全な触媒の何として又は高表面積支持体のみに、プレス成形されたペレットに加えられるか又はコーティングされ得る。後者の場合、活性金属は、二次工程で、ペレット上にすでにコーティングされている多孔質支持層に含浸される。
【0076】
コーティングスラリーは、例えば、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、又はα-テルピネオールなどであるが、これらに限定されない有機溶媒に所望の粉末材料を添加することによって調製することができる。粉末材料は、以下の非網羅的なリスト:アルミニウム-シリコン、ジルコニア-セリアドープアルミナ、アルミナ、ジルコニアドープセリア、アルミナ-シリカ混合物、ガンマアルミナ、アルファアルミナ、マグネシウム促進アルミナ、カルシウム促進アルミナ、ナトリウム促進ジルコニウム-酸化セリウム、酸化セリウム、チタニア促進シリカなど、から選択することができる。これらの材料は、スラリーに組み込まれた触媒活性材料を支持するか、又は熱処理後に触媒活性材料を含浸させることができるコア上にコーティングを形成する。上記の酸化物は、分散ナノクラスター、スポット、ドットなどの形でその中に配置された以下の触媒活性金属:ニッケル、白金、ロジウム、ルテニウム、コバルト、レニウム、イリジウムなど、の有無にかかわらず適用することができる。コークス形成の促進又は抑制を果たすことが知られている元素を任意に追加することができる。
【0077】
乾燥したままのコーティングは、温度をゆっくりと目標温度まで上げ、かつ、そこで少なくとも約1時間保持されることによってペレット上で焼成される。触媒の焼成温度は、約300℃乃至約800℃の範囲であり得る。焼成プロセスの酸素環境(例えば、周囲空気)は、触媒スラリーの形成に使用される結合剤の燃焼をもたらすであろう。触媒の焼成工程の後、触媒コーティング層は、下にある理論的密度の60%以上のSiCコアに融合され、そして、触媒コーティング層は多孔性を保持し、且つ、有機結合剤をほとんど含まない。
【0078】
適用されたコーティングが触媒活性材料を含まなかった場合、コアシェル触媒を製造するための最後の工程は、この層に活性触媒金属イオンを浸透させる(すなわち、含浸させる)ことである。対象の金属イオンは、好ましくは水であるが有機物でもよい媒体に溶解する。ペレットは、イオンが多孔質の外層に含侵する媒体に浸される。例えば、約5分乃至約4時間の範囲の規定された時間の後、金属イオンが浸透した支持材料は、溶液から排出され、30乃至60分又はそれ以上の期間、例えば、120℃で乾燥される。最後に、支持材料は、例えば、結合剤(例えば、残留有機物)を除去するために、様々な目標温度で空気中で焼成される。
【0079】
発明の触媒構造及びその耐酸化性によって定義されるその支持体
炭化ケイ素(SiC)及びSiCベースの複合材料は、用途が水蒸気メタン改質を含むがこれに限定されない多くの化学反応に典型的な酸化環境及び高温への曝露を伴う場合、保護コーティングが必要である。SiCは、これらの条件下で水蒸気中で同時に酸化と揮発を起こす。SiCは、高温で酸素にさらされると、
SiC + H2O (g) → SiO2 + CO (g) + 3H2 (g)
を経由して酸化する。
【0080】
SiCの酸化は、材料のコアへの酸素の物質移動によって制限される。したがって、酸化は不均一になり、材料のコアに向かって遅くなる。SiCの望ましくない酸化は、高温での乾燥供給混合物と比較して、水の存在下で増強されることもまた見い出された。この酸化は、望ましくないSiO2の形成に有利になるように速度を変える、水へのSiO2の顕著な溶解度が原因である。水の存在下で、SiCの揮発の背後にある反応は次のとおりです。
SiO2+ H2O → Si(OH)4 (g)
【0081】
触媒化学反応中のSiC触媒支持体の根底にある酸化は、触媒コーティングの下のベース層が弱くなる可能性があり、その結果、弱いベース層の上にコーティングされた触媒が破砕又は剥離により失われる可能性があるため、特に問題がある。触媒の喪失は、化学反応器の運転中の触媒の失活として現れ、それが効率を低下させる。さらに、破砕により、充填床反応器内に微粉が導入され、一部のガス経路が遮断され、圧力損失が増加し、プロセス又は反応効率が低下する可能性がある。
【0082】
本明細書で前述したように、本開示の実施形態による触媒支持体は、SiCをAlと(及び任意でSi、特にAl-Si合金を使用することによって)予備混合し、高密度ペレットにプレス成形し、次いで、さらに酸素環境中で高温で加熱して溶融することによって製造され得る。得られた材料(SiC/Al2O3)は、従来の多孔質SiCと比較して密度が高く、優れた耐酸化性を備えている。ペレットにプレス成形されたSiCとアルミナの得られた複合材料におけるSiCの酸化挙動を研究する実験は、高温の空気と水蒸気の雰囲気で容易に酸化する素のSiCとは異なり、以下に示すような条件での質量増加が少ないことからわかるように、酸化とその後の揮発に対して高い耐性を持つ複合材料を明らかにする。
【0083】
酸化及び揮発に対する層1及び2を有するペレットの耐性は、空気中の25%水蒸気の環境で、900℃の温度で材料を加熱することによって試験された。水蒸気中で900℃で試験された材料は、エージングテストを実行する前に、最初に処理されるか又は1250℃の温度で1時間熱処理された。この試験の1250℃までの加熱速度は3℃/分で、冷却速度は5℃/分であった。同様に、1050℃乃至1450℃までの様々な温度で処理された材料(コーティングされた又はコーティングされていない)の酸化挙動が、フォーミングガス(3%水素、残り窒素)中の50%水蒸気の環境で研究された。これらの反応は、様々な期間にわたって研究されてきた。
図6A及び
図6Bは、これらの研究からの
サンプル結果を示す写真であり、及び
図7は、研究中のサンプルの質量増加のプロットである。
図6Bの写真では、900℃で空気環境中25%水蒸気中で44時間後、材料の目に見える変化はない(質量増加及び色の変化もない)。対照的に、同じ条件下での市販のSiCペレット(
図6A)は、
図6Aの保護されていないSiCペレットの白色によって見られるように、完全に酸化されている。
図7は、工業用メタン改質触媒に必要な水蒸気を含む高温環境で使用した場合に、時間の経過とともに大幅な質量増加がどのように発生するか、及びSiCを保護することの重要性を示している。
【0084】
質量増加をさらに定量化するために、この試験の対象となるペレットを計量し、最初に150℃の温度で乾燥させた。乾燥したペレットをアルミナセラミックボートに積み込み、1インチのニッケル-インコネルチューブのホットゾーンに滑り込ませる。フォーミングガス(N2中3%H2)の流れがペレット上を通過し、チューブは3℃/分の温度で900℃に加熱される。炉の温度が300℃を超えると、水(HPLCポンプを使用してポンプで送られる)がチューブに導入さる。水は500℃に維持された気化ゾーンを通過し、水を水蒸気に変える。水蒸気分圧が全ガス状化合物の50%であるように水が導入される。試験時間は、炉が900℃に達したときに始まる。時限試験の終わりに、炉は5℃/分で冷却される。炉の温度が約300℃に達すると、水はオフになる。炉が実質的に100℃未満に冷却されたときにペレットを降ろし、それらの質量を直ちに記録する。本発明のSiC及びアルミナの複合ペレットの累積質量増加は、300時間にわたって1%未満の質量増加であり、より好ましくは、保護された本発明のペレットは、フォーミングガス中の50%水蒸気の混合物中900℃で試験した場合、300時間にわたって0.1%未満の質量増加を有する。同様の結果は、触媒粒子(すなわち、触媒活性層でコーティングされたコア)の試験から得られるであろう。
【0085】
本明細書で前述したように、プレス成形されたペレットは、最初に、SiC及びアルミニウム粒子の混合物を使用して形成される。アルミニウムはペレット内に分散し、高圧プレス操作でSiC粒子の周囲を塑性変形する。粒子は、高圧ペレット化プレス成形を使用して作成されたペレットを高密度化及び成形する前に、アルミニウム粒子(0.1ミクロン乃至50ミクロン)と混合される、実質的にミクロンサイズのSiC粒子(0.1ミクロン乃至50ミクロン)によって規定される。SiCとアルミニウムで構成されるペレットが最初の熱処理プロセスを受けると、アルミニウムは酸素(空気、酸素、及び/又は水蒸気の形で)と優先的に反応して、ペレットのSiC粒子の露出された又はガス拡散到達可能な(固体拡散を除く)表面の周囲に酸化アルミニウムで構成される保護薄片を形成する。保護薄片の最も好ましい形態は、アルファ-アルミナ相である。一実施形態では、保護薄片は、アルミナ相の組み合わせを含む。アルミナの相は、熱処理条件、主に温度の選択によって制御される。約900℃を超えると、アルファアルミナが優先され、低温で形成された酸化物はさらに実質的に高密度のアルファアルミナ相に転化される。いくつかの実施形態では、保護薄片は、アルファアルミナで構成され、且つ、約0.3乃至3ミクロンの範囲の平均厚さを有する。保護アルミナ薄片の形成は、2乃至20時間、900乃至1000℃で焼成することなどにより、850℃を超える高温で生じる。
【0086】
内部のプレス成形されたSiC粒子を保護する実質的に高密度なアルミナ層の形成は、SiC粒子の酸化又は劣化を低減し、触媒の寿命を延ばす。得られた触媒コア材料は、300時間で1%未満の質量増加を示し、より好ましくは、保護された本発明のペレットは、フォーミングガス中50%水蒸気の混合物中で900℃で試験した場合、300時間で0.1%未満の質量増加を示す。同様の結果は、触媒粒子(すなわち、触媒活性層でコーティングされたコア)の試験から得られるであろう。
【0087】
保護アルミナバリアの形成後及びその後の活性触媒のコーティング後に作成された結果として生じる触媒は、メタン水蒸気改質反応の実施中の稼働時間の100乃至1000時
間の間に1%未満の活性損失を示す。触媒は、基礎となる高熱伝導率SiCコアの酸化腐食に対する保護内部バリアにより、交換前に少なくとも2年の触媒寿命が期待される。2年間の寿命の間、触媒の性能を改善するためにその場での再生サイクルが必要になる場合があるが、触媒は依然として操作と水素の生成に効果的である。触媒の操作条件は、20バール、少なくとも3の水蒸気対炭素比、少なくとも2000hr-1のGHSV、及び少なくとも850℃のチューブ壁温度であり、ここでメタン転化率は50%を超え、及び又は、少なくとも50℃よりも近い平衡アプローチ温度を有する。
【0088】
別の実施形態では、本開示による触媒は、水蒸気メタン改質チューブの延長された寿命と一致するであろう。チューブの寿命が延びるにつれて、チューブの交換に対応するメンテナンスとプラントのダウンタイムは、触媒の寿命と触媒交換のサイクルと一致する。最終的な結果として、稼働時間が増加したメタン水蒸気改質プラントが稼働する。本発明の触媒を使用した一実施形態では、メタン改質プラントの稼働時間は、0.95より長く、より好ましくは0.98より長く、最も好ましい実施形態では、プラントの稼働時間は、0.99を超える。約0.99を超える稼働時間は、少なくとも約2年間の運転サイクルで水素を生成しない場合の1週間のターンアラウンドタイム又はダウンタイムに相当する。1週間のターンアラウンドタイム中に、反応菅とそこに収容されている本発明の触媒の両方を交換して、メタン水蒸気改質プラントの(操業因子又はプラントが製品を製造している時間の割合によって定義される)望ましい製造性又は稼働時間を最大化する。例えば、本開示の触媒を使用して、1日あたり少なくとも10MMの標準立方フィートの水素を生成する商業的水素プラントは、12ヶ月間連続して運転され、ここでは、48時間未満続く中断された触媒再生サイクルの使用が継続的に含まれるが、プラントの完全な停止(チューブの交換に必要となる場合)は含まれない。
【0089】
開示された触媒による改善された選択的酸化反応
選択的又は部分酸化反応は、少量のモル堆積の酸素(純粋な酸素、空気、又は不活性ガスを用いたある程度の希釈物として添加)を、気相又は液相に存在し得る炭化水素反応物と組み合わせる。酸素は、固体触媒上で反応物の炭化水素と反応して、高価値の生成物を優先的に生成する。ほんのわずかの酸素が反応物及び/又は所望の生成物と結合し得、望ましくない深い完全酸化又は燃焼生成物を形成する。これらの反応は、所望の部分的又は選択的酸化反応に対して発熱性であり、反応エネルギーは、酸素分子が完全燃焼生成物を形成するために放出される熱よりも小さい。直並列反応のいずれかから熱が放出されるときに温度が上昇すると、望ましくない深部酸化反応への反応速度が増加する。したがって、標的又は所望の部分的又は選択的酸化生成物に対してより高い選択性を生み出すために、これらの反応中の触媒の温度上昇を低減することが有利である。
【0090】
選択的酸化反応の例は、市販のVPO(バナジウム-リン-酸素)触媒上でのn-ブタンからの無水マレイン酸の生成である。ホフマン及びトゥーレク(2017)に記載されているように、気固反応メカニズムは直並列であり、深部酸化生成物を、目的の生成物である無水マレイン酸の生成と並行に及び直列に形成され得る。選択性は反応器の温度に非常に敏感であり、そして触媒粒子床を介した熱除去は効率的な製造のための重要なパラメーターである。
【0091】
ホフマン及びトゥーレクは、4800hr-1のGHSV、420℃の反応温度、1.4%のn-ブタンの初期濃度に関して、1.5mm及び3mmの触媒床の厚さについての性能を比較している。1.5mmの反応直径(マイクロチャネルスリット又はチャンバー内に充填されたVPO触媒粒子として試験)及び約400ミクロンの平均触媒粒子直径では、無水マレイン酸への選択性は、約60%のn-ブタン転化率で約65%であった。約95%のより高いn-ブタン転化率で、無水マレイン酸の選択性は約55%に低下する。転化率の上昇につれて選択性の低下は、深い酸化反応経路に有利な触媒床内の分圧の変化
の結果である。
【0092】
同じ触媒粒子サイズ及び反応条件で3mmのより大きなチャネルスリット又はギャップ又は直径では、選択性は約95%の転化率で約45%に低下するが、1.5mmのスリットでの等しい転化率では選択制は55%であった。1.5mmスリットと比較してより大きな3mmスリットに対する等しい転化率及びGHSVでのより低い選択性は、3mm反応器ギャップ内に充填された触媒粒子床内の温度上昇の結果である。
【0093】
測定された反応器温度は、1.5mmスリット反応器では実質的に等温であった。3mmスリット反応器は、1.4体積%のn-ブタン供給濃度を有するこの事例について、3mm反応器の熱伝達距離にわたる約10℃のホットスポット及び温度勾配を実験的に示した。4.5体積%のより高いn-ブタン供給濃度について、ホットスポットは3mm充填床層スリット反応器において15℃に上昇する。この種のホットスポット形成及び選択的酸化反応に対する生成物の選択性の低下は一般的である。GHSVは通常、局所的な発熱速度を低下させ、及び良好な選択性を維持するために減少する。
【0094】
一実施形態では、本開示のSiCベースの触媒の使用は、同等のチューブ直径、供給組成、温度、圧力、触媒組成及び平均触媒粒子サイズに対して同等の選択性を維持しながら、約0.1乃至10%のGHSVの増加を可能にする。
【0095】
本開示の触媒は、固定床又は粒子状触媒に対してより高い有効熱伝導率を可能にする。測定された有効熱伝導率の範囲に関して選択的酸化反応に適用される場合、所望の部分的又は選択的酸化反応に対する選択性の予想される増加は、等しいWHSV、原料組成、温度、圧力及び活性触媒組成で、約0.1%乃至約10%高くなる。WHSV(毎時重量空間速度)は、1時間あたりの原料の重量を、開示された触媒のSiCコアの周りにコーティングされた活性層又はシェルに含まれる触媒の重量で割ったものとして定義される。
【0096】
別の実施形態では、本開示の触媒は、選択的液相酸化反応に適用することができる。液相反応は通常、とても長い滞留時間、及びとても低い触媒のWHSVで実施される。液相反応媒体中の反応物の質量拡散率は、気相質量拡散率よりも約3桁低く、したがって、本開示の触媒の卵殻(すなわち、コアシェル)形態は、液相選択的酸化反応中の効果的な触媒使用のための利点を提供する。液相酸化も高い発熱性であり、及び一部の反応は爆発に近い条件で操作する可能性がある。安全な操作、及び目的の選択的酸化生成物に対する高い選択性を維持するには、熱除去が不可欠である。本開示の触媒は、そのより高い有効熱伝導率のために、従来の固定床ペレットよりも効果的に熱を除去するであろう。同じWHSV、供給濃度、温度、圧力、及び触媒組成で操作した場合、高値の選択的酸化生成物への選択性は、従来の固定床触媒よりも約0.5乃至15パーセント増加すると予想される。固定床粒子状触媒上での液相選択的酸化の温度は大抵、目的の生成物選択性を最大化しながら、発熱と熱ホットスポットを最小限にするために、低いWHSVで実行することにより制御される。WHSVは非常に低いため、液相選択的酸化反応に関して、選択性は大抵非常に高い。本開示の触媒の使用は、生成物の選択性に悪影響を与えることなく、反応WHSVを増加させることができることが期待される。一実施形態では、液相選択的酸化反応の製造性のWHSVは、同じ選択性を維持しながら、1.2倍に増加するであろう。代替の実施形態において、WHSV及び反応製造性は、同様の炭化水素及び酸化剤の供給速度、希釈剤組成、温度、及び圧力で操作される場合、同等の組成の触媒に対して同じ選択性を維持しながら、1.05乃至1.3に増加するであろう。
【0097】
ローディングプロセスや反応器の変更なしにオンサイトで充填できるSiC担持触媒を含む触媒
水蒸気メタン改質(SMR)は、水素を生成するために工業的に使用されており、高い
吸熱性プロセス(ΔHr=-206kJ/mol)である。このプロセスは、高温及び高圧でこの反応に関する熱力学的平衡限界の結果として、高いメタン転化率を保証するために、高圧(最大40バール)及び高温(950℃の反応温度又は1050℃のチューブ温度に達する)で操作される。
【0098】
高温を維持し、且つ、強力な吸熱反応を推進するために必要なエネルギーを供給するために、活性触媒を含む一連の平行反応チューブの外側の周りに熱が供給される。いくつかの技術が、反応器を加熱するために設計されている。吸熱反応に対して熱を供給するための方法には、対流熱伝達、放射熱伝達、及び直接燃焼又はバーナーが含まれる。小型改質装置はまた、熱伝達を強化し、且つ、メタン改質から工業用水素製造のサイズ及び費用を削減するための開発の活発な分野である。ほとんどの工業用メタン改質装置は、統合された天然ガスバーナーから熱を供給する。反応器は、バーナーを収容するボックス型の放射セクション、及び放射セクションを出る送気ガスからの廃熱を回収することを目的とする対流セクションを含む。
【0099】
水蒸気メタン改質で使用される触媒は、通常、高表面積の支持体、主に高表面積の多孔質アルミナ上に堆積されたNiで作られている。コバルトや貴金属などの代替金属も高い活性を示すが、コストが原因で広く採用されてなかった。ニッケルの表面積は触媒活性を制御する主な要因であるが、水素の全体的な製造性は、触媒活性ではなく、主に熱伝達によって制限される。
【0100】
工業用改質装置で使用するために、典型的なNi/Al2O3触媒は、長さが約10 cm未満(通常は長さ1乃至5cm)、及び直径が10cm未満(通常は直径0.5乃至3cm)の円筒形ペレットに成形される。Ni粒子との最大メタン接触を保証し、且つ、圧力損失の増加の可能性を減らすために、放射状の穴が円筒形のペレット全体に形成される。これらの触媒ペレットは、典型的には、直径が約0.1m、及び長さが最大約10メートルである反応チューブに充填される。
【0101】
工業用SMR反応器チューブへの触媒ペレットの充填は簡単なプロセスではない。典型的な10mのチューブ状反応器は上から触媒が充填されており、そしてペレットは重力下で落下する。本質的に、ペレットは、高い固定した高さからの充填中に転倒するため、大きな衝撃を受ける。企業は、この機械的衝撃を最小限に抑えることを目的とした充填方法を設計した。 これらの方法には、(1)ペレットが徐々に充填され、最大自由落下距離が最小になるようにするスーパーサックと添付のソックの使用、(2)独自のユニデンス(Unidense)装置を使用して触媒ペレットを充填するユニデンス法、及び(3)他の振動技術を使用して、触媒ペレットへの機械的応力を最小限にしながら、チューブの長さに沿って段階的に触媒充填を高密度化できることが含まれる。工業用メタン改質プラントを構成する多くの平行チューブ間の圧力降下の不均一性を最小限にするために、高密度の充填が好ましい。流れの少ないこれらのチューブは、外部バーナーから提供される熱を利用できなくなり、次に、金属チューブの壁にホットスポットを生じるので、チューブ間の流れの偏在は、性能と触媒の寿命に影響を与える。ホットスポットは、反応器チューブの寿命を縮めるように機能する。最終的には、衝突、摩擦、摩耗による触媒の破損を減らし、そして流動の偏在を最小限にするためのより高密度の充填が、触媒に要求されかつ好まれる。
【0102】
本開示の触媒は、有利な熱特性を有するだけでなく、自由流動性であるように設計され、したがって、既存の装置を変更することなく、又は既存の触媒充填及び充填高密度化ツールを変更することなく、現在のSMR反応器チューブで利用することができる。本開示の触媒は、元の又は交換用チューブの設置後に現場で充填することができる。代替の実施形態では、本開示の触媒は、別の施設で充填され、工場のターンアラウンド中に交換用反
応チューブと共に出荷され得る。この実施形態は、現場での特殊な触媒充填装置の必要性を最小限にし、特殊な施設からの触媒充填装置の利用度を高くすることを可能にする。
【0103】
本開示の触媒の自由流動性の性質を考えると、それはコンフォーマル充填特性に従うであろう。チューブ交換の頻度よりも高い頻度で触媒を交換する必要がある場合、触媒はチューブ変形を避けてより簡単に充填することができる。高温高圧で操作される工業用メタン改質チューブは、機械的クリープのために操作中に時間の経過とともに変形する。もはや完全に対称ではない可能性があるチューブは、本開示の触媒のコンフォーマル且つ自由流動性の性質のために、依然として比較的容易に再装填することができる。本開示の触媒のコンフォーマル充填属性は、工業用改質チューブの耐用年数が終了する前に触媒の交換を可能にすることによって、又は新しい反応器チューブと同時に交換することを可能にして、プラント操作の全体的なコストを削減する。
【0104】
本開示の触媒は、優れた機械的特性を有する高密度化された(理論密度の60%以上)SiCコアから作られている。SiCベースの触媒ペレットの圧壊強度と耐振動性は、従来の多孔質アルミナペレットの圧壊強度と耐振動性よりも向上している。開示された触媒は、触媒充填プロセス後の亀裂形成、触媒破壊、及び微粉の形成を低減することにより、触媒充填後の予想に近い初期性能及びより長い触媒寿命を提供する。
【0105】
開示された触媒支持体材料は、それらが工業用改質チューブで使用される典型的な充填プロセスにどのように耐えるかを特定することを目的とした力学的研究に供されてきた。これらの力学的研究は、標準のASTM法を使用して開発されており、ペレットを粉砕するのにどれだけの力が必要かを研究するために、半径方向充填下にペレットを置くことを含む半径方向粉砕試験を含む。表7は、市販の触媒と比較した、本開示支持体の触媒コアの機械的特性を要約している。結果は、材料が優位性が有ること、及び現在の反応器の充填方法に特別な変更を加える必要がないことを示している。
【表7】
【0106】
開示された触媒支持体の破砕強度は、市販の触媒を少なくとも2倍、及び一実施形態では2乃至5倍上回る。開示された触媒の破砕強度は、50N/mmを超え、及び50乃至150N/mmの範囲を有し、ここで、市販の改質触媒の破砕強度は44N/mmである。開示された及び市販の触媒の破砕強度は、規定されたASTM国際試験プロトコル(ASTM D6175-03(2013))に従って実施された。
【0107】
表7中、“Gen1”は、BSASでコーティングされた市販の多孔質SiC触媒支持体である。多孔質SiC触媒支持体は十分に高密度ではない(すなわち、理論密度の60%未満)。“Gen2及び3”はSiC/BSASを含む複合コアであり、そして“Gen4”及び“Gen5”は処理中にわずかに異なる量の潤滑剤が添加されたSiC/Al2O3を含む複合コアである。
【0108】
フィッシャートロプシュ反応用触媒
フィッシャートロプシュ合成(FTS)(以下の式1及び2を参照)は、石炭、炭層ガス、及びバイオマスを含む非石油炭素源を液体燃料及び化学物質に変換する方法です。これらの供給源をFTSを介して燃料や化学物質に変換する前に、水蒸気改質又はガス化などの技術を通じて合成ガス(CO及びH2)としても知られる合成ガスを製造する。2つのカテゴリーの製品:ガソリン、ディーゼル、及び軽質オレフィンなどの非酸素化生成物、並びにメタノール、エタノール及び混合された高級アルコールなどの酸化炭化水素、がFTSから得られる。
(2n+1) H2+ nCO = CnH2n + 2+nH2O (式1)
2nH2+ nCO = CnH2n + nH2O (式2)
【0109】
合成ガスを介して非石油炭素源を変換するFTSの役割により、原油埋蔵量の減少と液体燃料の世界的な需要の急速な増加により、近年、FTSは再び大きな関心を集めている。
【0110】
FTSの成功にとって重要なのは、合成ガスから製品への変換に積極的な役割を果たす触媒である。より高い活性、選択性、及び安定性を備えた触媒は、FTS研究における現在の研究の主な推進力である。FTSに使用される典型的な活性金属は、Fe、Co、Ruである。通常、これらの金属は、とりわけ、Al2O3、SiO2、TiO2などの支持体上に堆積される。FTSは、周囲に熱を放出する発熱反応である。その結果、触媒表面の過度の熱がホットスポットにつながり、触媒の性能(活性と選択性)を損なう可能性がある。効果的にするには、この熱は触媒の表面からより速く分散されなければならない。したがって、反応表面からチューブの外側に熱を除去することができる触媒支持体システムが非常に望ましい。したがって、触媒が活性で、選択的で、安定であることは別として、反応表面から熱を効率的に除去し、したがってホットスポットの発生を防ぐその能力は、それをより効率的な触媒にする。効率の向上は、活性又は選択性の向上を導き得る。
【0111】
本開示の触媒支持体(すなわち、コア)(高有効熱伝導率支持体材料)は、FTS触媒の改善された支持体を提供する。現在のFTS支持体の低い熱伝導率と比較して高い熱伝導率は、反応表面からの熱の除去を強化する。このことは、熱ホットスポットの回避、及びこれにより効率的なFTS触媒を導びく。
【0112】
フィッシャートロプシュ反応は、合成原油を生成する鎖形成反応を可能にするために、高圧及び高温でコバルト又は鉄ベースの触媒上で一酸化炭素と水素(合成ガス)を組み合わせる。生成物混合物は、C1(メタンガス)からC100及びそれ以降(固体ワックス)までの炭化水素のブレンドである。その後、合成原油は、異なる生成物混合物:ガソリン、ディーゼル、ジェット燃料、及びワックスを作成するために、精製及び品質改良される。
【0113】
望ましくない軽質ガス、主にメタンの量を最小限に抑えるために、できるだけ多くの合成ガスを5炭素原子を超える炭素画分に変換することが望ましい。高い炭素効率が望まれ、連鎖伝播、アルファによって特徴付けられる。アルファはアンダーソン-シュルツ-フローリー分布の連鎖成長パラメーターであり(以下の式3を参照)、ここで、F
nはn個の炭素原子を持つ炭化水素の質量分率である(例えば、オクタン、C
8H
18に関してはn=8)。
【化1】
【0114】
図8A乃至Dは、0.8乃至0.99の範囲のアルファに関する炭素数に対するn番目
の炭化水素の質量分率を示す。アルファが増加すると、より重い炭化水素の質量分率が大幅に増加する。アルファが1の値に近づくと、結果として得られる炭化水素生成物は、実質的に固体のワックスである非常に長鎖の炭化水素で構成される。実際のシステムでは、アルファ値0.95が非常に優れており、メタンスリップ又は5モル%未満の選択性で生成される軽質ガスの量を最小限にする。0.8未満のアルファ値は適切とは見なされず、10モル%を超えるメタンスリップを表す。軽質ガス(炭素数5未満)の組成は、従来のアンダーソン-シュルツ-フローリー分布によって予測された重量分率を逸脱(超過)する可能性があることに注意する。
【0115】
鎖形成反応(以下の式4)は低温で促進され、一方高温は軽質ガス、主にメタンの生成(以下の式5)に有利に働く。フィッシャートロプシュ反応は非常に発熱性を有し、熱暴走を回避し、所望の生成物への選択性を制御するために、操作中に化学反応器から熱を除去する必要がある。
CO + 2 H2 = (-CH2-) + H2O ΔHr_298K = -152 kJ/mol (式4)
CO + 3 H2 = CH4 + H2O ΔHr_298K = -206 kJ/mol (式5)
【0116】
鎖形成反応は、メタン形成よりもわずかに発熱が少なく、それにより触媒内のホットスポットは、負のフィードバックループで不要なメタン形成をさらに強化する傾向がある。場合によっては、熱暴走が発生する可能性があり、不十分な熱除去及び高い内部温度は、メタン生成反応の高い割合を促進させる。
【0117】
固定触媒床の設計は、コバルトベースの触媒では一般的である。典型的な動作条件は190℃乃至240℃の範囲であり、圧力は10乃至40バールの範囲である。反応チューブは通常、水がチューブの周り及びチューブの間を流れるときに水蒸気発生によって冷却され、触媒で満たされた各チューブの端で反応エネルギーを除去する。触媒床又は粒子内の温度が10℃以上上昇すると、メタン生成のモル選択性が5%以上増加し、アルファが0.05以上減少する。触媒床内の発熱又はホットスポットを10℃未満、より好ましくは5℃未満に最小化することが望ましい。
【0118】
触媒のホットスポットを減らすための1つのオプションは、粒子状又は固定床の触媒を収容するチューブの直径を小さくすることである。約1乃至2.5インチの実際のチューブ直径は、約0.5乃至0.75インチに縮小できるが、これはプロセス全体の経済性に悪影響を及ぼす。所定の容量又は生成量を達成するためのチューブの数が多いほど、金属が増え(コストが高くなり)、且つ、より大きな容器内でより多くのチューブをマニホールド化するために複雑さが増す。反応チューブの直径を減少させることなく、固定床触媒内のホットスポットを減少させることが望ましい。
【0119】
本開示の触媒は、ホットスポットを積極的に低減し、及びフィッシャートロプシュ触媒で満たされた反応器により良い反応性能を提供する2つの特徴を有する。最初の利点は、固定床内の有効熱伝導率が高いことである。改善された半径方向の熱伝達は、より多くの発熱を取り除き、触媒床内のホットスポットを減らす。改善された軸方向及び半径方向の熱伝達は、大きな温度勾配を減少又は平滑化し、ホットスポットの全体的な大きさを減少させる。これにより、ホットスポットが低くなると、反応アルファが増加し、不要なメタンの量が減少する。生成されたワックスの価値が高く、及び現在の市場の推進力に応じて、ワックスを水素化分解して貴重なジェット燃料又は異なる燃料ブレンドにすることができるため、より高い反応アルファが好ましい。
【0120】
開示されたSiCベースのコアの上の薄い触媒層によって作成されたフィッシャートロプシュ触媒は、同等の条件下で操作された場合、従来のフィッシャートロプシュ触媒と比較して2℃乃至8℃減少する発熱又はホットスポットをもたらすと予想される。結果とし
て生じるメタンのモル選択性は、同様の条件下で操作された場合、対応する従来の触媒から2%以上減少し、おそらく2乃至5%低くなる。チューブの直径が約0.75乃至2.5インチ、GHSVが約500乃至5000hr-1、開始温度がコバルトベース触媒の場合約200乃至240℃、鉄ベースの触媒の場合は約300乃至350℃、圧力が約10乃至40bara、及び水素と一酸化炭素の供給比が約1.9乃至2.5の場合、生成物アルファは、少なくとも0.02高く、0.02乃至0.08高い範囲である。
【0121】
フィッシャートロプシュ反応のための開示された触媒の第2の有利な特徴は、水素対一酸化炭素比の局所制御である。反応方程式から、2に近い合成ガス供給比(H2/CO比)は、望ましい鎖形成反応に有利に働くが、一方3に近い合成ガス比は、望ましくないメタン形成に有利に働く。触媒の細孔内では、水素は一酸化炭素よりもはるかに容易に、そして素早く内部の活性触媒部位に拡散する。一酸化炭素に対する水素の比率が3に近づくにつれて、触媒内でのメタン生成が促進される。触媒粒子内でのメタン生成の増加は、2つの負の属性がある-望ましくないメタンがより形成され、及び目的の鎖形成反応から離れた反応にさらにシフトするように働く、粒子内で放出される熱が増え、これによりよりさらに多くのメタンが形成される。
【0122】
活性触媒が多孔質触媒ペレットの外側の周りの薄いリング又はシェルに含浸されている、卵殻型触媒の使用は、フィッシャートロプシュの先行技術に記載されている。卵殻触媒は、局所合成ガス比が2より大きく、典型的には約2.5乃至3より大きい活性触媒サイトの数を減らすように作用する。
【0123】
本開示の触媒構造は、多孔質コアではなく高密度化(理論密度の60%以上)触媒コアを使用し、したがって、触媒ペレットの中心は、未転化の水素で満たすことができず、また形成された液体又はワックス生成物の貯蔵庫のままであることができない。触媒粒子の内部にある液体又はワックスの内部貯蔵庫は、触媒の再生をより困難にする。触媒粒子の多孔質コアに残っている未転化の水素は、卵殻触媒の内縁に逆拡散する可能性があり、それによって一酸化炭素に対する水素の局所比が増加し、次に望ましくないメタン選択性が増加する。
【0124】
本明細書に開示された触媒は、固体コアのために触媒粒子表面の外部からのみ拡散する水素及び一酸化炭素を有し、そして拡散距離は、高密度ペレットの外部の触媒コーティング内で短く、すなわち10乃至100ミクロンに保たれる。同様の条件下で操作した場合、所望の鎖形成反応への選択性は開示された触媒で増加し、及びアルファ値は従来の触媒ペレットよりも0.02乃至0.08高くなり、またメタン選択性は従来の触媒よりも2乃至5%低くなると予想される。より低いメタン選択性とより高いアルファの予想される性能の向上は、フィッシャートロプシュプロセスの全体的なプロセス経済性の大幅な改善を表す。
【0125】
本開示に従って開示されたフィッシャートロプシュ触媒は、従来のガス液化(gas to liquids)工場で使用することができる。メタン又は天然ガスは、固定床フィッシャートロプシュ反応器に導入する前に、温度を下げ且つ一部の水素を除去する(合成ガス比を2対3に近づけるために)ためのプロセス工程を経る前に、合成ガスを生成するように改質された水蒸気である。開示されたフィッシャートロプシュ触媒は、廃棄物又はバイオマス原料を使用するガス化プロセスから形成されるバイオガス又はバイオ由来合成ガスの使用を含む、非伝統的なガス液化工場でも使用できる。合成ガス生成プロセスは、開示された触媒を利用するフィッシャートロプシュプロセスの前に一酸化炭素及び水素合成ガス供給混合物を形成するための部分酸化、自己熱改質又は従来の改質を含み得る。
【0126】
ベンゼン、トルエン及びキシレン(BTX)製造用触媒
ベンゼン、トルエン及びキシレン(一般に“BTX”と呼ばれる)は重要な石油化学化合物であり、世界で最も豊富に製造されている化学物質の1つである。BTXは、ベンゼン、トルエン、及び/又はキシレンを含む生成物混合物によって定義される。BTX化学物質は、自動車製品、繊維、プラスチック、溶剤、及びその他の多くの一般的な工業製品の製造に不可欠な原料である。BTXは主に、石油から精製されたナフサ、特に原油の蒸留から得られたナフサの吸熱触媒改質によって製造される。BTX化学物質を製造するためのバイオベースのプロセスは開発中であるが、熱制限製造速度及びコールドスポットによって悪化する強力な触媒失活を含む、従来のナフサ改質で見られるのと同様の課題に直面している。本開示に従って製造された触媒は、ナフサ原料を使用する従来のBTX生成だけでなく、バイオベースのプロセスに使用するのにも有効である。
【0127】
例として、ナフサからBTXを製造するための典型的な触媒改質システムは、直列に作動する複数の反応器(例えば、3又は4)を含む。触媒反応は吸熱反応であるため、通常、ガス混合物を加熱(及び再加熱)するために、最初の反応器の上流及び反応器間にヒーターが設けられる。電気ヒーターはまた、吸熱反応に必要な追加のエネルギーを供給するために反応チューブに沿って提供される。反応器には通常、塩素化Al2O3上に堆積したPt製の触媒が充填されている。ベース触媒は、触媒の寿命を延ばし、失活を減らすさまざまな要素を追加することによって、長年にわたって変更されてきた。反応は、550℃までの温度と40バールまでの圧力水準で実施される。
【0128】
触媒改質反応器で起こる様々な反応がある。BTXの製造では、パラフィンの芳香族化合物への脱水素環化及びパラフィンの芳香族化は、BTX化合物の形成を導く。これらの反応は吸熱反応であり、及び熱が外部から触媒に供給されるときに熱を消費することを特徴とする。このため、反応器のチューブ壁の外側においてヒーターは、反応を促進するための反応器の壁を横切る十分な熱流束を維持するために、高い発熱率を維持する必要がある。熱はまた、反応器の間に配置されたガス-ガス熱交換器を使用して一時反応器段階からの冷却された流出ガス混合物に加えられ、連続した次の反応基に導入する前に反応物を予熱する。多孔質アルミナ触媒ペレットの熱伝導特性は低く、したがって、半径方向の熱伝達からの熱伝達効率は、現在の触媒技術によって制限されている。
【0129】
高い有効熱伝導率を有する本開示の触媒コアは、BTXを製造するためのナフサ改質触媒としての使用に有利である。開示された触媒支持体技術の使用は、反応器チューブ壁から反応器半径を横切る活性触媒部位への改善された熱伝達をもたらし、したがって、より高いBTX製造性をもたらすであろう。
【0130】
ナフタレンを触媒改質してBTXを形成するための半再生反応器設計で使用される固定床反応器は、通常、連続的かつ安定した製造を維持するために追加の反応器床(例えば、3つの初期の反応器と再生中に使用されるスペア)を含む。この反応はコークスが形成されやすく、6乃至24か月ごとにそれぞれの固定床に再生サイクルが必要である。再生サイクルの間に炭素が蓄積するにつれて、性能はゆっくりと低下する。触媒は、交換が必要になる前に3乃至4回しか再生できない。
【0131】
本開示の開示された触媒は、チューブ壁から触媒内で発生する吸熱反応への半径方向の熱付加を改善するであろう。反応器により多くの熱が加えられると、コールドスポットを減らすことによってBTXの製造性を高めることができます。反応器内のコールドスポット(より高い温度勾配)の減少はまた、炭素形成を含む不活性化の速度を減少させる。より低い失活速度は、反応器再生サイクル間の製造能力を増加させ、再生サイクル間の時間を増加させ、それにより、総触媒寿命を延長する。ツラガ及びラマナタンは、BTXへのナフサ改質の製造性又は最高の触媒活性は733-798K(460-525℃)の温度範囲内であり、失活は755-773K(482-500℃)の温度範囲で増加すると報
告しています。したがって、より高い有効熱伝導率を有する本開示の開示された触媒は、より小さなコールドスポットをもたすであろうし、したがってより低い失活速度をもたらすであろう。
【0132】
反応器半径全体で500℃を超える温度を維持することは、本開示の高有効熱伝導率開示触媒を使用により、失活速度を低下させ、且つ、可能にすることができる。一実施形態では、本開示の触媒は、ナフサ改質プラントの簡略化された建設を可能にすることができる。既存のナフサ改質プラントは、容量を増やすために改造することができ、開示された触媒の使用に基づく本発明のプロセスは、3つ又は4つではなく2つの固定床反応器に基づくことができる。第1の一次固定床反応器は、製造性を維持し、コークス化を含む失活を最小限に抑えるために、開示された触媒によって内部触媒温度勾配を低減することを可能になるように改善された半径方向熱添加で運転する。反応器の運転は、2つ目の固定床反応器で製造能力を維持しながら、1つの固定床反応器の再生を可能にするために2つの反応器間で切り替えることができる。一実施形態では、4反応器床ナフサ改質プラントは、2つの2反応器ナフサプラントとして改造することができ、それにより、BTXの全体的なプラント製造能力を増加させることができる。
【0133】
BTXへのナフサ改質の他の主要な種類は、触媒の一部が運転中に反応器床から除去され、元の触媒床の上部に戻る前に再生反応器に流れる連続触媒改質器である。この種のプロセスの場合、本開示の触媒の自由流動性は、その改善された有効熱伝導率とともに、失活を低減し、且つ、再生サイクル間の時間を増加させるように作用する。
【0134】
複数の種類のナフサ改質装置の例は、先行技術に記載されており、且つ、製造者又は支持体触媒供給者(アクセンス、クリテリオン キャタリスト カンパニー、エクソンモバイル、インディアンペトロケミカルズ コーポレーション、アイエムピー(インスティチュート メキシカノ デル ペトロレオ)及びユーオーピー)によって使用される、連続触媒改質反応器(CCR)又は連続循環プロセスを含む。製造者又は支持体触媒供給者によって使用されるナフサ改質装置用の半再生反応器の例は(アクセンス、クリテリオン キャタリスト カンパニー、エクソン モバイル(パワーフォーミングプロセス)、ビーピー(ウルトラフォーミングプロセス)、シェブロン(レニフォーミングプロセス)、ビーエーエスエフ(エンゲルハルトによって開発されたマグナフォーミングプロセス)、エアー プロダクト アンド ケミカルズ(ホウドリフォーミング プロセス)、インディアン ペトロケミカルズ コーポレーション、アイエムピー(インスティチュート メキシカノ デル ペトロレオ)、及びユーオーピー)を含む。
【0135】
BTXは、原油からではなくバイオマスからも製造できる。アネロテック社が開発中の1つのプロセスでは、バイオマス由来の高速熱分解油を使用して、単段触媒流動床反応器でゼオライト触媒上にBTXを製造する。触媒のスリップストリームは継続的に再生される。ヴィレント社はまた、バイオマス原料からジェット燃料及びガソリンを共同製造するBTXを製造するためのバイオフォーミングプロセスも開発した。他の研究者[5]は、バイオ-BTXを製造するために、粗グリセロールを含むバイオ原料の製造プロセスを開発している。反応は吸熱性のままであり、そして本開示の触媒によって利用可能になるように改善された熱添加は効率を改善するであろう。バイオ-BTXの製造は、触媒を覆い、製造効率を制限する炭素又は固体コークスの共同製造による課題が残っている。
【0136】
本開示の触媒の使用は、触媒組成、供給WHSV(1時間あたりのグラム触媒あたりのグラム原料)、及び同等の原料組成によって定義される従来の触媒と比較して、触媒再生間隔を1乃至12ヶ月延長できることが想定される。
【0137】
より長いチューブ寿命を提供できるSiC担持触媒を含む触媒
本明細書に記載の開示された触媒システムによって作成される高熱伝導性触媒支持体は、強力な吸熱反応(メタンの水蒸気改質又はメタンの乾式又はCO2改質など)のために、大幅なエネルギー削減を可能にする。開示された触媒はまた、壁の温度を下げ、冶金の簡素化又はチューブの寿命の延長を可能にする。あるいは及びさらに、そのような触媒は、反応器の製造能力又はスループットを増加させることができる。
【0138】
水蒸気メタン改質において確立された問題は、反応転化及びメタンからの水素生成の選択性に関する基本的な熱力学的制限を克服するために、高い操作温度(800乃至950℃)と高い操作圧力(最大約40気圧)が必要であることである。これらの条件はまた、圧力スイング吸着又はフィッシャートロプシュ合成などの他の反応器による下流の合成ガス精製を可能にするために必要である。熱を吸熱反応に導くためには、従来の粒子状又は固定床の触媒を収容する金属壁を、外部バーナーによって生成される非常に高い温度で操作する必要がある。チューブの外面近くでの燃焼は、強い吸熱反応からのエネルギー消費需要に一致するようにチューブ内及び粒子状触媒を通して十分なエネルギーを駆動するために必要とされる高い壁温度を生じさせる。
【0139】
吸熱性の高いメタン改質反応は下記の式6に示されている。高度な吸熱性を有する乾式改質反応は式7に示されている。並行して発生し、温度の関数として熱力学的極限に従って完全に可逆的である水性ガスシフト反応は式8に示されている。メタン反応の燃焼は吸熱反応にエネルギーを提供し、式9に示されている。
CH4+ H2O = CO + 3 H2 ΔHr_0 = 206 kJ/mol (式6)
CH4+ CO2 = 2 CO + 2 H2 ΔHr_0 = 247 kJ/mol (式7)
CO + H2O = CO2 + H2 ΔHr_0 = -41 kJ/mol (式8)
CH4+ 2O2 = CO2 + 2 H2O ΔHr_0 = -803 kJ/mol (式9)
【0140】
高い内圧と相まって高い壁温度は、反応器チューブに途方もない熱機械的応力を発生させる。非常に高価な高クロム及び高ニッケル合金は、操作の設計要件を満たすために遠心鋳造される。しかし、これらのチューブでさえ、熱と圧力の組み合わせによって負担がかかり、粒の成長、析出、及び粒界のボイド形成(微細構造の粗大化による)が加速される。チューブの動作条件は、これらの高価なコンポーネントの実用的な寿命を制限する冶金学的クリープ体制に完全に存在する。チューブ寿命が産業用で1年程度になることは珍しくない。
【0141】
チューブの故障は、ラーソン-ミラーの関係(Ref API 530)を通じて、操作温度に大きく依存する。チューブ寿命はチューブの絶対動作温度に非常に敏感であるため、設計を大幅に超えるチューブ壁温度での動作は、チューブの故障数を急速に増加させる可能性があある。チューブ金属温度の20℃の増加は、チューブの寿命を50%以上短くする可能性がある(参照、ボウマーサ、ワールド アカデミー オブ サイエンス,エンジニアリング アンド テクノロジー インターナショナル ジャーナル オブ ケミカル アンド モレキュラー エンジニアリング、第4巻、第11号、2010年)。
【0142】
本明細書に記載されるように、高熱伝導率支持体材料から構成される触媒及び触媒支持体は、触媒粒子床の有効熱伝導率を改善する。開示された触媒システムにより触媒床の有効熱伝導率が増加するにつれて、同等の性能を達成するために必要な壁温度が低下する。より多くの熱がチューブ壁から離れ、触媒床と反応ガスに引き込まれる。この効果により、反応器バーナーによって生成される必要な熱が減少し、その結果、最大運転温度が大幅に低下すると同時に、燃料消費量も削減される。より低い燃料供給速度は、水素製造のための炭素効率を改善し、ひいては製造コストを削減する。金属反応器壁の運転温度を下げることにより、チューブの寿命を大幅に延ばすことができ、その結果、チューブのメンテナンスが少なくなり、プラントの稼働率が高くなり、反応基運転中の交換間隔が長くなる
。開示された触媒を使用することにより、従来の改質触媒で運転した場合の約12ヶ月の既存のチューブの寿命よりも、チューブの寿命を3乃至18ヶ月延ばすことができると予想される。開示された高有効熱伝導率触媒システムで運転された場合の水蒸気メタン改質プラントの予想されるチューブの耐用年数は、15乃至30ヶ月の範囲である。
【0143】
さらに、より低い動作温度は、システム設計において他の利点を提供し、より薄い壁のチューブ、より安価な合金のチューブ、又はより一般的な製造プロセスを可能にし、これも資本コストの削減に寄与するであろう。
【0144】
金属壁温度を下げることができるSiC担持触媒を含む触媒
本明細書に記載されるように、高熱伝導率支持体(すなわち、コア)から構成される触媒及び触媒支持体は、従来の材料と同様の形状及び床充填密度を維持する場合でさえ、充填床における改善された熱伝達を提供する。有効床熱伝導率は、本明細書で後述する“開示された触媒を使用する水蒸気メタン改質のための壁温度の低下及び水素生成の増加”と題する実施例に記載の実験手順及び装置を使用して実験的に決定された。その例に記載されているように、開示された触媒システムを使用する場合の予想壁温度は、同等の水素生成速度を提供しながら、従来のメタン改質触媒の必要な壁温度と比較して10乃至30℃低くなり得る。
【0145】
材料の熱伝導率と床の伝導率の関係は、いくつかの非自明な非線形関係の関数である。
【化2】
ここで、Tはペレットとガス温度であり、Pはガス圧であり、ρ
pは触媒ペレットの密度であり、φ
pはペレット多孔率であり、k
pは触媒ペレットの熱伝導率であり、ε
n、pは触媒ペレット表面の、全垂直放射率であり、d
pはペレットの直径であり、h
pはペレットの高さであり、d
tubeは反応器床の直径であり、Uは表層ガス速度(ダルシー)であり、k
gはボイドガスの熱伝導率であり、ε
bは床多孔率を意味し、R
eはd
pに対する表層ガスのレイノルズ数であり、P
eはd
pに対する表層ガスのペクレ数である。
【0146】
非常に複雑であるが、これらの関係はコア構成要素に分解できる。
k
effective= k
p,o + k
convective + k
radiation
ここで、k
p、oは、多孔性と粒界相互作用の影響を含む静止ペレット伝導率である。k
convectiveは、対流効果、熱分散、乱流伝導、及びその他のガス、多孔質床内のペレット相互作用の結果である。k
radiationは、ペレットの表面の放射率とペレットの温度に直接関係している。同じペレットと反応器の形状の場合、対流による影響はほぼ同じである。放射効果は材料の放射率の変化から逸脱するが、比較の理由からほとんど無視できる。さらに、調査した材料の場合、表面放射率は10乃至15%以内である。したがって、伝導率の増加は静止ペレットの伝導率に直接関連している。これは、本明細書でさらに関連する文章に記載されているように
図11により明らかである。広範囲の温度にわたって、全有効半径方向伝導率は、静止ペレット伝導率であるk
r、oと同じ値によって一貫して分離される。
【0147】
代表的な形状の静止放射床伝導率の計算は、簡略化されたモデル、数値シミュレーション、及び実験方法を使用して実行された。静止充填床のペレット多孔率と温度の影響は
図9に示される。熱伝導率の低下は、多い孔率が40%に達するまでペレットの多孔率によって引き起こされる。この多孔度レベルでは、内部ペレットの熱伝導の損失は、ガスの伝導とペレットの表面の放射率によって上書きされる。このモデルでは、放射率に対する高多孔質の表面効果は無視された。多孔率と密度率に1を加える。したがって、材料の組成、多孔性、粒界、及び表面放射率は、床の伝導率を制御するための重要な手段である。
【0148】
したがって、従来の触媒の代わりに高熱伝導率材料を使用することによる触媒の熱伝導率を高めることにより(すなわち、多孔質Ni-Al
2O
3複合材料を、SiCを含む高密度化支持体上の触媒コーティングで置き換えることによって)、熱分散と圧力乱流伝導の影響に起因して、高温でのメタン改質反応を表す2000乃至5000GHSVの予想されるシステムフローで約1.5乃至3.5へのさらなる増加をともなって(
図10、
図11及び表8を参照)、床の熱伝導能力は停滞状態で約4倍改善される。
【表8】
【0149】
有効半径方向熱伝導率の増加は、高温反応器チューブの壁から触媒床及び反応ガスに熱をより効率的に伝達し、吸熱反応をより効率的に駆動する。反応を完了するために必要な熱は変化しないが、ピーク温度が下がると熱損失が減少し、燃料と酸素(又は空気)の供給速度の形でエネルギー入力を減らすことができる。
【0150】
チューブ壁と触媒粒子床の中心との間の温度勾配が減少し、これにより、チューブ壁温度を低下させて、等量の水素を生成することができる。あるいは、チューブ壁は、従来の触媒と対応して同様のチューブ寿命で同じ温度に維持することができ、同時に、水素のスループット又は製造性を、従来の触媒と比較して5乃至40%の範囲で増加させることができる。チューブの寿命を大幅に延ばすことができ、壁の薄いチューブ、より安価な合金を使用したチューブ、又はより一般的な製造プロセスを使用でき、これらはすべて、システムの大幅な資本コスト削減を実現するであろう。
【0151】
本開示の触媒を用いたSMRの改善を実証する例
本発明の触媒を使用する水蒸気メタン改質のための壁温度の低下及び水素生成の増加
水蒸気メタン改質(SMR)、又は改質は、水素を生成するための重要な工業反応である。水素は、原油を商品燃料にアップグレードするための製油所での適用、金属加工、脂質の水素化、及びその他の多くの多様な分野で一般的に使用されている。水素は、メタン(天然ガスの主成分)に水蒸気を加え、ニッケル系触媒上で高温高圧で反応させることで生成される。SMR反応は非常に吸熱性であり、水素生成のために反応を促進するためにかなりの量のエネルギー(熱など)を追加する必要がある。
CH4+ H2O = CO + 3 H2 (ΔHr298K = 206 kJ/mol)
CO + H2O = CO2 + H2 (ΔHr298K = -41 kJ/mol)
【0152】
工業用メタン改質装置は、触媒ペレット又は触媒粒子で満たされたチューブの並列配列(通常の直径は100cm)の外側で天然ガスを燃焼させるためのバーナー技術を利用する。発熱燃焼反応によって放出された熱又はエネルギーは、チューブ壁を通って伝導し、その後、充填床又は固定床反応器の中及びそれを通って伝導する。触媒粒子を介したこの半径方向の熱伝導は、吸熱改質反応を促進する。エネルギーはまた、ガス対流:ガスは、チューブ壁の内面に接触したときに厚くなり、次に、ガスが触媒粒子の周りの曲がりくねった経路を流れるときに熱を拡散する、を介して追加及び分散される。
【0153】
本開示の本発明のより高い有効熱伝導率触媒を使用して固定床を通る熱伝達を改善する
ことは、より多くのエネルギーを改質反応に駆動し、したがって同等の性能のためにより低い壁温度を必要とする。改質チューブのピーク壁温度を下げることは、寿命を延ばし、且つ、故障率を下げる作用をし、水素プラントの稼働率が上がる。ラオらの2016年の報告によると、壁の温度が20℃低下すると、予想されるチューブの寿命が2倍になるとしている。高ニッケル合金SMRチューブの交換費用とそれに関連するプラントのダウンタイムにより、水素製造の資本コストと運用コストが増加する。必要な燃料が少なくて済むため、産業用バーナー内の壁の温度が低くなると、運用コストも削減される。
【0154】
等しい壁温度で、本開示の本発明のより高い有効熱伝導率触媒の使用は、従来の市販のSMR触媒と比較して、等しい反応器体積あたりより多くの水素が生成されるので、反応器全体の製造性を高める。
【0155】
本明細書で上述したように、本開示の触媒は、アルミナ又は/及び高密度アルミナ、BSAS又は他の保護材料の外部コーティングの内部マトリックスで不動態化され、及びメタン改質用の触媒活性金属(例えば、Ni)を備えた高表面積触媒支持体の効果的な層でコーティングされた高熱伝導率SiCの中心コアに依存する。
【0156】
本発明の触媒の有効熱伝導率を測定するためにデータが収集され、及び従来のメタン改質触媒と比較される。具体的には、データは、GHSV(hr-1)の範囲下で500℃及び800℃で収集された。停滞した条件下では、本発明の触媒の有効熱伝導率は、従来のSMR触媒の約5倍である(800℃で1.0W/m・Kに対して4.8W/m・K)。GHSVが増加すると(流量が増えると)、熱分散と対流熱伝達により、触媒の全有効熱伝導率がさらに増加する。
【0157】
図10は、温度の関数として、活性触媒層がある場合とない場合の両方で、市販のSMR触媒と本発明の触媒との有効熱伝導率の実験データの比較を提供する。GHSVが約1970hr
-1、温度が800℃の場合、本発明の触媒の全有効熱伝導率は13.1W/m・Kであり、従来の改質触媒は9.6W/m・Kであり、本発明の触媒に起因して有効熱伝導率の約36%までの増加である。有効熱伝導率のこれらのそれぞれの値は、従来の工業用改質触媒と比較した本発明の触媒システムの反応器性能の評価に使用される。触媒支持体コーティング層及びその活性金属の添加は、本発明の触媒システム全体の有効熱伝導率にほとんど違いをもたらさなかった。
図11は、500℃及び800℃の停滞条件下での市販のSMR触媒と本発明の触媒の有効熱伝導率の実験データの比較を示す。
【0158】
発明のサポート材料の高い熱伝導特性を支持するモデリング結果
図11(市販の触媒(四角)と比較した本発明の触媒(丸))に示すように、本発明の触媒支持体は、市販のアルミナベースの水蒸気メタン改質触媒と比較して優れたペレット熱伝導率を有することが実験的に示されている。本発明の触媒ペレットの熱伝導率(k
s:本発明の触媒の場合)は、500℃の温度で6.3W/m・Kから900℃で4.5W/m・Kまで変化するが、市販のSMR触媒(k
s:市販)の熱伝導率は、温度領域で1.0W/m・Kでほとんど変化しないままである。
【0159】
これらの実験的に決定された値により、
図11に示す修正ツェナー、バウアー、及びシュルンダー(ZBS)モデルを使用して、停滞した充填床の熱特性を決定できる(k
r,o:HP、本発明の触媒の実線及びk
r,o:Com、市販品の破線)。本発明の触媒は、市販の触媒に対して一貫した1.25乃至2.00W/m・Kの充填床熱伝導率の利点を維持します。
【0160】
比較のために市販の幾何学的及び反応器の運転条件を使用して、流動条件下での本発明の触媒の有効な半径方向熱伝導率特性もまた、市販の材料のものよりも強化されている。
図10は、市販及び発明の触媒の充填床熱伝導率のプロットを示す。ガスフロー条件1970hr
-1(空塔速度0.52m/s)、水蒸気対炭素(S/C)比2.7、入口ガス温度580℃、圧力30.65bar(a)、並びに直径152.4mm(外側、内側127mm)及び長さ10.0メートルの反応器の下、市販のSMR触媒と比較して、本発明の触媒を使用する有効半径方向熱伝導率は35%以上の向上がある。
【0161】
本発明の触媒の増強された熱伝導率は、チューブ壁温度などの他の反応器特性に影響を与える。
図12及び
図13は、33.17kW/m
2の平均熱流束を適用した場合の反応器外壁温度と反応器内温度対軸方向距離のプロットを示す。固定反応器の熱流束に関して、本発明の触媒による床伝導率の向上は、
1.13℃の上昇したチューブ壁温度、
2.減少した平衡距離、即ち市販のSMR触媒の9.0mと比較して、4.0メートル(本発明の触媒を使用)
を導く。
【0162】
文献は、チューブ壁温度が20℃低下すると、反応チューブの寿命が2倍になることを示唆する。本発明の触媒は、市販のSMR触媒と比べて13℃のチューブ壁温度の利点を提供し、これは市販のSMR触媒と比較してチューブの寿命を65%延長するであろう。
【0163】
商業運転から得られたチューブ壁温度プロファイルを本発明の触媒固定床に適合させると、1970hr
-1で0.6体積%のより低いメタンスリップをもたらす。8.0体積%のメタンスリップを導く市販の触媒のチューブ壁熱プロファイルは、本発明の触媒を代わりに使用した場合に7.4体積%のメタンスリップをもたらし(
図14)、本発明の触媒によって導入された優れた特性を確認する。
【0164】
図15に示されているデータは、一定のチューブ壁温度プロファイルで、反応物のガス時空間速度(GHSV)を増加させると、本発明の触媒がスループットの増加を導くことを示する。本発明の触媒の使用は、GHSVが3110h
-1増加した後にのみ、8.0体積%のメタンスリップをもたらす。GHSVのこの増加は、市販の触媒に比べて36%の増加を表す。同じ壁温度及びスリップに対して、本発明の触媒は33%多くの熱を吸収する。
【0165】
表9は、市販のSMR技術と比較して、本発明の触媒を使用することによって提供される追加の強化について纏める。
【表9】
【0166】
触媒利用により定義されるコアシェルSMR触媒
メタンの水蒸気改質で使用される主な触媒は、アルミナ上に堆積したNi金属(Ni/Al2O3)である。現在の工業用触媒は、溶液中のNiイオンを多孔質アルミナに含浸させることによって、又は関連するプロセスによって調製される。典型的な工業用触媒は、最大4つ(又はそれ以上)の内部穴を備えた、およそ0.5×0.5インチ(L×OD)の寸法の円筒形ペレットである。この触媒中のNiの組成は、約10%乃至20質量%の間のどこかにある(平均は約12質量%である)。触媒はまた、Niと比較して少量の他の元素を含んでいる。これは、外殻又は内殻を持たない単一ペレット触媒であるが、Niはペレット構造全体に分散している。この円筒形ペレットの一般的な重量は2.9グラムであるが、使用するペレットのサイズによって異なる。約12%の平均値及びシリンダーの上記の重量を使用すると、Niの量はペレットあたり平均約0.35グラムである。ただし、質量と熱伝達の制限により、ペレットあたりのNiのこの全重量は活性ではない。
【0167】
コアシェル材料は、別の材料が堆積されて外殻を形成するコア材料で構成される。これらの材料は通常、特定の目的を達成するように設計される。コアシェル材料の設計にはさまざまな目的がある。シェルを形成する1つの理由は、2つの材料を組み合わせて、同じ材料内に2つの異なる特性を作成することであり、別の理由は、特定の設計と形状によってもたらされる材料の特性を利用すること、及び最後に個々の材料が有していない特性のまったく新しいセットを生成することである。たとえば、Fe3O4/SiO2コアシェ
ル材料では、磁化率などのコアの特性は、SiO2の固有の発光光学特性を利用しながら磁気分離を望むシステムの特性である可能性がある。コアとシェルの特性は、最高の相乗効果が実現されるように設計できる。コアシェル材料は、ナノテクノロジー、触媒作用、光学、電子工学、医学、触媒作用、材料、バイオテクノロジー、エネルギー貯蔵など、科学のほぼすべての分野で研究の機会を切り開いてきた。
【0168】
コアシェル材料の大部分は、ナノスケール又はマイクロスケールのレベルで合成されている。これらの構造を作成するための合成プロセスは、化学的又は物理的方法が含まれる。化学法は、化学合成又は陽イオン交換プロセスが含まれる。化学合成は、最初にコア材料の合成、次にコアの上でのシェルの成長を含む。陽イオン交換は、コアを合成すること、それに続く溶液中のイオンと格子元素の陽イオン交換を介してコア自体からシェルを生成することに依存する。物理的方法はほとんどなく、報告されている方法の大部分は、基質へのガス状成分の堆積を含む。改質用途向けに、Ni/SiO2、Ni/Al2O3、Ni/CeO2、及びNi/TiO2触媒が設計され、及びそれらの活性は酢酸の改質で研究されている。研究された触媒の中で、Ni/Al2O3は、コアの小さくて狭いNiナノ粒子サイズに起因する最高の活性を示した。コアシェルNi/SiO2触媒はまた、バイオガスの改質にも使用されている。
【0169】
本開示の本発明の触媒は、複合固体コア上への酸化物多孔質触媒相の物理的堆積によって調製されたコアシェル構造を持つ。いくつかの実施形態では、コアは、SiC及びアルミナの保護マトリックスを含む。触媒活性シェルは、例えば、水性又は有機媒体からの選択された金属又は金属酸化物のスプレー堆積を介して堆積させることができる。代替の実施形態では、触媒シェル又はコーティングは、スプレーコーティング又は堆積に加えて、当技術分野で知られている他の手段によって堆積することができる。
【0170】
典型的なプロセスにおいて、本開示のプレス成形されたペレットは、スラリー中の活性触媒材料の有無にかかわらず、触媒支持体粉末のスラリーでコーティングされる。スラリーが活性触媒材料を含まない場合、触媒支持層は、コーティングが形成された後に、活性触媒材料で後で含浸される。
【0171】
コーティングスラリーは、これらに限定されないが、エチルセルロース、及びα-テルピネオールなどの有機媒体中に粉末材料を添加することによって調製される。ペレットコア上に活性触媒を支持するための粉末材料は、以下の非網羅的なリストから選択され得る:アルミニウム-シリコン、ジルコニア-セリアドープアルミナ、アルミナ、ジルコニアドープセリア、アルミナ-シリカ混合物、ガンマアルミナ、アルファアルミナ、マグネシウム促進アルミナ、カルシウム促進アルミナ、ナトリウム促進ジルコニウム-酸化セリウム、酸化セリウム、チタニア促進シリカなど。上記の酸化物は、1種又はそれ以上の下記の金属(又は他の触媒活性材料)の有無にかかわらず適用することができる:とりわけ、ニッケル、白金、ロジウム、ルテニウム、コバルト、レニウム、イリジウム。コークス形成の役割又は抑制を促進する働きが知られている元素を任意に追加し得る。
【0172】
実験室規模では、プレス成形されたままの(グリーンの)触媒ペレットは、計量され、そしてステンレス鋼のストレーナーに置かれる。コーティングスラリーは、手動で堆積するためにスラリースプレーシステムに接続された特製のガラス容器に移される。多孔質外層のコーティングは、ペレットに上記のスラリーを手動でスプレーすることによって手動で塗布される。ペレットは、均一なコーティングの為にストレーナー上で常に攪拌される。次に、コーティングされたペレットは70℃乃至120℃の温度で30乃至60分間乾燥させる。乾燥後、最終重量は、コーティングの形態の多孔質材料がどれだけペレットに堆積したかを決定するために、測定される。未焼成のコーティングされたペレットは、温度をゆっくりと目標温度まで上げて焼成し、そして少なくとも約1時間そこに保持される
。アウターコーティングを塗布する別の方法は、ディップコーティングによるものである。活性触媒層の焼成温度は、約300℃乃至約800℃の範囲であり得る。
【0173】
コアシェルの最後の工程として、活性触媒を含まない支持体材料シェルのみを含む本発明の触媒材料は、活性触媒金属イオンでこの層を浸透させることである。目的の金属イオンは、好ましくは水だが有機物でもよい溶媒に溶解される。金属イオンが多孔質層に含侵するように、ペレットは媒体に浸漬される。所望の充填のために十分な時間が経過した後、金属イオンを浸透させた支持材料は溶液から排出され、そして70℃乃至120℃(例えば、30乃至60分間、又は時にはそれ以上)で乾燥された。最後に、コーティングされ且つ含浸されたペレットは空気中で焼成される。
【0174】
水蒸気改質の意図された用途では、高熱伝導率のコアを多孔質の外層(シェル又は卵殻とも呼ばれる)でコーティングするこのアプローチは、前述のメタン水蒸気改質の現在の慣行と比較して独特である。いくつかの実施形態では、シェルは、約10ミクロンから約200ミクロン、又は約50乃至約100ミクロンの範囲の制御可能な厚さを有する。50ミクロンの厚さを達成するために必要な材料の量は、触媒のグラムごとに約0.05グラムである。従来の水蒸気改質触媒を開示された触媒に置き換え、開示された触媒の各ペレットの重量が典型的な工業用SMR触媒と同じであると仮定すると(例えば、2.9グラム)、このペレット上の50ミクロンのシェルは、外層シェルを形成するために約0.145グラムの材料を利用する。すでに形成された触媒に約12%のNi活性金属を堆積させること、又は約12%の目標Ni重量をシェルに含浸させることは、触媒のペレットあたり約0.02グラムのNiを追加する。これは、ペレットあたり約94%のNi金属重量の絶対的な減少を表すか、又は約80乃至95%の減少の範囲を表す。反応に質量又は熱伝達の制限がない場合、触媒金属の絶対量の94%の減少は、全体的な反応速度又は製造性を低下させる。しかし、従来のメタン改質ペレットは質量と熱伝達によって強く制限されるため、Niのごく一部(10%以下のオーダー)が従来の改質触媒ペレットの全体的な反応速度に効果的に寄与する。
【0175】
外層の多孔性はまた重要であり、設計原理として研究されてきた。スラリー中への多孔性保持要素の追加は、多孔性が改善された層が得られる。多孔性の増加は、触媒作用における本発明の材料の適用において重要であり、また、コーティング層内の反応物拡散を増加させるように作用し、それにより、そこに含まれる活性触媒の効果的な使用をさらに高める。外層の多孔性の改善を導く添加剤には、とりわけ、炭酸ランタン、炭酸マグネシウム、黒鉛状炭素が含まれ得る。
図5は、コア上に堆積された外層を含む、本開示に係る触媒の断面SEM画像を示す。左の画像は変更されていない外層を示し、一方右の画像は外層の多孔性を高めるために組成を変更した効果を示す。
【0176】
本開示の本発明の触媒ペレットでは、絶対ベースでの活性ニッケルの量が減少しているが、本開示の卵殻コーティングに関連する有効係数は、従来のメタン改質ペレットの有効係数よりも著しく高い。はるかに高い有効係数により、本発明の触媒の正味の活性は、触媒活性材料の絶対質量が減少したとしても、従来の触媒に匹敵するであろう。一実施形態では、本発明の触媒から構成される固定床反応器の体積活性は、従来のメタン改質触媒の活性の80%以内である。代替の実施形態では、反応器堆積ベースでの本発明の触媒の活性は、従来のメタン改質触媒に匹敵するであろう。好ましい実施形態では、本発明の触媒は、従来のメタン改質触媒の体積活性の約1.0乃至1.3倍の範囲の体積活性を有するであろう。
【0177】
反応は、触媒ペレットの内部で起こり、そして質量移動及び熱移動の両方によって制限される。吸熱反応がペレット内で進行すると、ペレットは冷たくなり、この熱力学的に制限された反応の正味の触媒活性が低下する。冷たいペレットの奥深くに熱を伝達すること
を必要とするよりも、触媒シェルコーティング中に熱を効果的に運びつつ同時に活性金属触媒の効果の高い使用を可能にするために、メタン水蒸気改質反応のために卵殻層に触媒を有することは、好ましい。
【0178】
古典的な有効係数分析は、本開示に従う触媒の有効性を評価するために実施され、ここで有効係数とチーレ数との間の関係は当技術分野で知られている。従来のメタン水蒸気改質反応の有効係数は約1乃至10%であると報告されている。すなわち、90%を超える活性触媒金属は、従来のメタン改質ペレットにおける所望のメタン水蒸気改質反応には効果がない。
【0179】
従来のSMR触媒の有効係数(実際の反応速度又は見かけの反応速度と固有の反応速度の比)は、従来の触媒ペレット内の質量拡散の制限及び不十分な内部熱伝達のために低くなっている。触媒ペレットの内部体積は、反応が進むにつれて冷却され、質量移動の制限を超えて見かけの反応速度がさらに遅くなる。アドリスは、メタン消費量に対する商業的有効係数が~0.008であると報告している。ラオはまた、市販の水蒸気メタン改質装置の有効係数0.1を報告しており、ここで、有効係数は、内部ペレットの質量移動抵抗を減らすために内部ペレット孔の使用やその他の形状変更使用に起因して増加している。
【0180】
チーレ数(Φ)を以下の式10に示す。有効係数(ε)を以下の式11に示す。
【化3】
式中、Rはペレットの半径又は触媒コーティング内の質量移動の拡散距離を表す。反応速度定数はk1である。有効拡散係数(D
eff)は、多孔質触媒内のガス拡散を屈曲係数で割ったものであり、これは、典型的にはほとんどの触媒システムでは約3である。式11に示されている有効係数の分析式は、1次反応の場合であるが、この式は、ゼロから2次の速度式に対してロバストであり、適度に機能することが文献で簡単に示されている。
【0181】
約20bara及び約850℃で操作されるメタン改質反応の場合、分子拡散係数は、質量拡散のチャプマン-エンスコッグ理論を使用して計算でき、水(水蒸気)で約0.143cm2/秒、メタンで約0.495cm2/秒である。分子の平均自由行程が、拡散が発生する細孔径の3倍以内にある場合、分子拡散は崩壊する。反応条件下での水蒸気とメタンの平均自由行程は、それぞれ0.03及び0.01ミクロンである。約0.1ミクロン未満の細孔径を有する触媒の場合、分子拡散よりもクヌーセン拡散が、触媒細孔内の物質移動の主要な状態と見なされる。両方の反応物のクヌーセン拡散係数は約0.05cm2/秒であるか、又は分子拡散よりも約2乃至3倍遅い。
【0182】
本開示による触媒のSEM写真及びその製造方法に示されるように、触媒コーティング層内の空隙(すなわち、細孔)は約1ミクロンより大きく、そして拡散はその中の分子メカニズムによって容易に起こる。本発明の触媒の有効係数を検討するために、最も遅い反応物(水蒸気)の拡散係数が、分子拡散状態で使用され、0.143cm2/秒の推定値である。
【0183】
従来のメタン改質触媒ペレットは、所望の形状を形成するように圧縮されており、そして反応物の領域はクヌーセン領域であると考えられている。従来のメタン改質ペレットを介した気相反応物の拡散係数は約0.05cm2/秒である。
【0184】
屈曲の影響を追加する場合、例えば、反応物がその中に配置された活性触媒部位に到達するための触媒層又はペレットを通る、物質移動のための遠回りの経路であり、直線拡散経路ではない場合、本発明の触媒の実際の又は有効な拡散係数は、0.0477cm2/秒と推定され、及び市販のSMR触媒についての有効拡散係数は0.0167cm2/秒と推定される。
【0185】
設計されたより大きな細孔を有する本開示の本発明の触媒のために選択された触媒コーティングを使用することにより、触媒の厚さを通る反応物の拡散は、従来のメタン改質ペレットに見られるようなより遅いクヌーセン拡散ではなく、主により有利な分子で起こる。
【0186】
k1の値又は反応速度定数(sec
-1の単位)は、2005年のホアンの反応速度論を使用して約34.3sec
-1と推定されている。チーレ数方程式の有効距離又はRは、本開示の触媒について評価され、従来のSMR触媒と比較される。表10は、約200ミクロンまでのコーティング厚さを有する本開示の触媒の有効係数を計算する。すべての場合において、有効係数は、実際の反応速度がメタン水蒸気改質の固有の反応速度に非常に近いことを示すように非常に高い。有効係数は、200ミクロンのコーティングで約0.98、50ミクロンのコーティング厚で約0.999である。したがって、本発明の触媒に関する有効係数は、メタン水蒸気改質反応について約0.90より大きく、好ましい実施形態では約0.95より大きく、最も好ましい実施形態では約0.99乃至0.9999である。
【表10】
【0187】
従来のメタン水蒸気改質装置と同じ計算方法と条件を使用して、計算された有効係数は、触媒ペレットサイズの実際の範囲にわたって表11に示される。文献で示唆されているように、従来の触媒有効係数は非常に低い。1/2インチの触媒ペレット(内部穴なし)の場合、有効係数は約0.051である。約1/4インチの有効拡散距離の場合、従来のメタン改質触媒の有効係数は約0.1である。直径が約1mmのような非常に小さな触媒ペレットでも、有効係数は約0.5にしか上昇しない。直径約1mmのこれらの非常に小さなペレットは、全長反応器内で非常に高い圧力降下を示し、商業的には考慮されない。
【表11】
【0188】
したがって、本明細書に記載の触媒は、従来のメタン水蒸気改質触媒よりも著しく高い有効係数を提供する。本発明の触媒は、約0.9よりも大きい有効係数を有するが、一方市販のメタン改質触媒は、約0.1乃至約0.2未満の有効係数で作動する。つまり、本発明の触媒は、従来のメタン水蒸気改質ペレットの有効係数よりも9乃至10倍大きい有効係数を有する。活性ニッケル(又は他の金属)部位の量は、従来のメタン水蒸気改質触媒と同じ又は同様の体積反応器活性を維持しながら、本発明の触媒では9乃至10の同様の係数により、体積あたり減らすことができる。
【0189】
性能によって定義されるコアシェルSMR触媒
水素の工業製造は、天然ガスの主成分である水蒸気メタン改質(SMR)によって実現される。水蒸気改質では、メタンは触媒の存在下で高温の水蒸気と反応して水素と一酸化炭素を生成する。生成されたCOはさらに水蒸気と反応して、より多くの水素と二酸化炭素を生成する。
CH4+ H2O = CO + 3 H2 (ΔHr298K = +206 kJ/mol) (1)
CO + H2O = CO2 + H2 (ΔHr298K = -41 kJ/mol) (2)
以下の全体的な反応を提供する。
CH4 + 2 H2O = CO2 + 4 H2 (ΔHr298K = +165 kJ/mol) (3)
この反応は特定の触媒によって触媒される。触媒の不存在下、反応には非常に高い温度が必要とされる。メタンの水蒸気改質は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)などの金属によって触媒される。NiはSMR用に最も広く使用されている触媒である。
【0190】
本開示の触媒コアの実施形態は、SiC/Al2O3の高熱伝導率複合体を含む。これらの材料は混合され、ペレットにプレス成形され、オプションで次の工程でコーティングされ、次に酸素環境(例えば、周囲空気)で焼成される。次に、高い熱特性を有することが確認された得られた材料は、SMR活性金属イオンを含浸させるか、又は活性金属含有スラリーでコーティングして焼成される。含浸された金属又はコーティングされた触媒のスラリーは、上記のSMR活性金属から引用される。これらの金属は、次の非排他的リストから抽出されたさまざまな支持体上で支持されている:とりわけ、アルミニウム-シリコン、ジルコニア-セリアドープアルミナ、アルミナ、ジルコニアドープセリア、アルミナ-シリカ混合物、ガンマアルミナ、アルファアルミナ、マグネシウム促進アルミナ、カルシウム促進アルミナ、ナトリウム促進酸化ジルコニウム-セリウム、酸化セリウム、チタニア促進シリカ。
【0191】
コーティングされた触媒は、例えば0.9よりも大きい高い有効係数で操作するが、一
方従来の改質ペレットは、典型的には約0.2未満、及びいくつかの実施形態では約0.05乃至約0.1の低い有効係数で操作する。ニッケルの正味の質量が減少したコーティングされた触媒の正味の活性は、本発明の支持体材料のはるかに高い有効係数に起因して、全体にニッケルが分散された従来のペレットと同様のままである。
【0192】
SMRは、反応が進むにつれてモルの増加を有する体積が拡大する吸熱平衡制御反応である。これは、反応が意味のある水素生成のレベルに進むためには、特に圧力が上昇するにつれて、温度を上昇させる必要があることを意味する。
図16は、温度が上昇すると、単調増加関数で転化が増加することを示す。圧力が上がると転化は低下する。工業用反応器は、850℃乃至950℃の温度と20乃至40baraの圧力で作動する。下流の処理条件、例えばコストとリスクの高い水素圧縮を回避すると同時に、平衡制約を克服するための高い転化を実現することを満たすために、高圧条件が必要である。80%を超えるメタン転化率を保つには、触媒床の平均温度を高く保つ必要がある(約20バールで約850℃超過)。また、SMRの平衡性に起因して、活性に対する触媒性能の比較は、1bara及び低温で有意に行われ、ここで、反応速度は高圧及び高温よりも大きな役割を果たす。
【0193】
SiCコアの周りに外部コーティング(すなわち、シェル)として堆積されたSMR触媒を用いた、本開示の本発明の触媒支持体材料に関する触媒の性能は、実験室及びパイロットプラント規模の両方での反応試験で実験的に評価された。実験室では、反応は、特定の量のペレットを高温の1/2インチインコネルNi合金チューブに充填することによって実行された。熱は、電気加熱炉を使用して実験室で供給された。実験室規模の試験の反応条件を表12に示す。記録された温度は、触媒床の外側のチューブ表面温度である。反応器に入る前に、メタンは500℃に維持された気化チャンバー内で気化した水蒸気と接触する。
【表12】
【0194】
触媒でコーティングされたペレットは、両端が不活性アルミナ媒体で支持された1インチのニッケル-インコネルチューブ反応器に計量され、充填される。反応物の入口側は、出口側よりも実質的により多くの不活性物質を含む。反応器は電気加熱炉に入れられる。還元ガス(水素又は水素と窒素の混合物)の流れは、反応器中に導入され、3℃/分で650℃に加熱され、ここで還元は最低2時間行われる。反応は、100sccmの純水素の流れを流すことにより、続いて水を流すことによって開始される。水は加熱ゾーンを通過して気化し、水蒸気になる。さらに15分後、メタンが導入され、さらに15分後、水素が除去される。水蒸気対メタンの含有量は3に制御され、そして反応の進行は、650℃乃至850℃の温度範囲を通してガスクロマトグラフィー(GC)を使用して監視される。850℃では、触媒の寿命性能はGCを使用した周期サンプリングで監視される。メタンの100%転化は、GCでメタン信号を検出できない場合に実現されるが、メタンシグナルが校正されたGCにより1%で記録された場合、活性の損失に起因する1%の低下
でさえも実現される。
【0195】
試験された触媒は、本開示の本発明の高熱伝導率コア上にSMR触媒をコーティングすることによって調製されている。同様に、多孔質支持材料は本発明の触媒コア上にコーティングされ、その後、SMR活性金属が多孔質支持層上に含浸された。例えば、触媒Aは、開示された触媒支持体10グラム上に、セリア-ジルコニア支持体上に担持された1.5%の貴金属を含有する触媒0.21gをスプレーすることによって調製された。本研究では、10.2グラムの触媒A(又は約7.5cm3)が反応器に充填された。触媒Bは、20グラムの開示されたコア上に堆積された0.8グラムの外層に、外層の36.5%のNiに対応する0.46グラムのNi金属に転化されるNi2+イオンを浸透させることによって調製された。さらに、Mg2+イオン(0.05グラムのMgOに換算)がこの外層に追加された。この例では、17.3グラムの触媒B(又は約15cm3)が反応器に充填された。これらの触媒は25乃至100μmの範囲の任意のコーティングの厚さを有する。
【0196】
図17は、上記の触媒の低圧試験のグラフ結果を示す。これらの触媒はすべて、試験した温度と条件で平衡転化を示す。例えば、平衡性能は、3000乃至9000hr
-1の空間速度で達成された。これらの触媒は、
図18に示すように、さまざまな空間速度で試験されている。
【0197】
工業的には、SMRによる商業的水素製造は、約2,000乃至3,000hr
-1の空間速度で実現される。これらの材料のいくつかの寿命活性は、劣化、炭素形成、圧力上昇、又は金属粉塵の証拠なしで600時間の期間評価されている。触媒の寿命を
図19に示す。これらの結果は、本発明の触媒支持体材料に担持された触媒が、触媒スラリーとして堆積された、又は事前に堆積された多孔質コーティングに含浸された改質触媒の外層を支持でき、かつ、少なくとも600時間、高い活性を維持できることを、表す。
【0198】
図18に示すように、触媒A(1.5%PGMコーティング触媒)は、650℃、1bara、3:1水蒸気:炭素、並びに3,000hr
-1のGHSV及び1.5hr
-1のWHSVで平衡に100%近づくことを示す。触媒B(1.5%PGM浸透触媒)は、3,000hr
-1のGHSV及び0.1hr
-1のWHSVで平衡に92%近づくことを示す。
【0199】
触媒A(1.5%PGM触媒)は、9000hr-1のGHSV及び1,787,000hr-1のWHSV、並びに温度850℃で平衡に95%を超えて近づくことを示すが、同じ条件下での触媒Bは平衡に90を超えて近づく。
【0200】
本開示のSiCベースの触媒支持体コアによって提供される(1)より低いOPEX反応器コスト及び(2)より高い製造性
SMRは、工業用水素製造の主なルートであり、且つ、平衡制御された高度な吸熱反応である。工業的には、SMR反応器は高温(850乃至950℃)及び高圧条件(20乃至40バール)で運転される。高い操作圧力は通常、下流プロセスからの圧力要件の結果であり、且つ、熱力学的制限を克服し、高いメタン転化(>70%)を達成するために、高い温度が要求される。
【0201】
SMR反応は、典型的には、反応器ボックス内に配置された固定床チューブ状反応器内に密に充填された、そうでなければ緩い粒子の床として配置された触媒上で実行される。チューブは、熱を提供するためにそれらの間に天然ガスバーナーが散在している状態で、互いに一定の距離で配列に配置される。バーナーからの熱(1100℃以上の温度)は、反応器のチューブ壁と固定床を通って、水蒸気によるメタンの吸熱改質が行われる触媒サ
イトの表面に放射される。反応の吸熱性は、触媒表面の温度が継続的に低下することを意味し、コールドスポットにつながる可能性がある。吸熱反応の結果としての熱の低下は、反応器の壁からの熱流束の増加によって打ち消される。熱流束の増加は、バーナーのエネルギー需要を増加させる。この増加した有用性の影響は、天然ガスの使用量と運用コストを増加させる。
【0202】
本開示の触媒は、現在のSMR触媒と比較して高い熱伝導特性を有することが示される(
図20を参照)。表13は、従来の充填床の有効熱伝導率及び壁温度の影響を示す本発明の充填床に関して、20bara供給圧力での性能比較を示す。本開示の本発明の触媒及び市販のSMR触媒材料の熱伝導率が反応器性能予測モデルで使用される場合(本明細書で前述したように)、この結果は、市販の触媒と比較して、同様のメタン転化/水素収率に関して13℃減少の代表的な場合で、最大30℃までチューブ壁温度の低下を導く本発明材料の熱伝導率の増加を示す。この現象(純粋に熱伝導率の増加による)は、いくつかの利点があり、そのうちの2つは次のとおりである。
【表13】
【0203】
第一に、チューブ壁温度が低下せず、しかし設定された一定温度に維持される場合、本発明の触媒支持体材料は、より高い出口温度及びより高いメタン転化/水素収率量をもたらす。この向上した性能は、ベースライン転化(同様の条件での市販の触媒の転化)を低下させることなく、供給流量を増加させるためのマージンである。増加した供給流量は製造性の向上を導き、プラント容量が限られている水素製造者にとって魅力的である。
【0204】
第二に、本発明の材料の使用の結果として反応器チューブ出口温度の上昇は、反応器チューブ壁温度が同様のマージンで低下し、且つ、メタン転化を失うことなく反応器チューブを横切る元の熱流束を依然として維持できることを示唆する。30℃のチューブ壁温度の低下は、天然ガスバーナーの温度が125℃も低下した結果である。バーナーの温度を下げて燃焼させることで、消費される天然ガスが少なくなるという効果があり、したがって、天然ガスバーナー燃料に関連する運用費用(OPEX)が削減される。バーナー温度が1100℃になるまで30℃低下する。
【0205】
本開示による触媒の主な利点は、本明細書の詳細な説明に基づいて要約されている。
【0206】
市販のSMR触媒と比較して、同等のGHSV、温度、圧力、及び供給組成で5乃至30℃のチューブ壁金属温度の低下
【0207】
温度、圧力、供給組成が等しい市販のSMR触媒と比較して、等しい転化で増加した供
給流速、及びそれに対応する水素製造量の1乃至30%の増加
【0208】
水素製造の低い運用コストは、低いチューブ壁温度に起因する。ゾロテックによって報告されたように、チューブ壁温度の30乃至50F(16乃至28℃)の低下は、1.5乃至2.5BTU/scfの燃料節約をもたらし、これは、1億SCFD改質装置について200,000$乃至350,000$の年間OPEX節約額に相当する。本開示の触媒は、同様のプラント設計における従来のメタン改質触媒と比較した場合、SMR OPEXを少なくとも2.5BTU/scf及び1乃至約3BTU/scfの範囲で低減するであろう。
【0209】
本開示の触媒で可能になるように、コンフォーマル触媒充填と組み合わせて使用される30℃の低減されたチューブ壁温度は、既存の反応器チューブ又は既存のチューブ及びプラント設計内での触媒統合を容易にする。この技術は、既存のプラントチューブや反応器の設計に統合することが難しい構造化触媒とは異なる。2015年にクマーらは、チューブ壁温度の20℃低下は、チューブの寿命を50%増加させると報告している。彼らはまた、プラントOPEXのエネルギー費用部分の1%の削減が、1億SCFD水素プラントで年間600,000ドルの節約をもたらすと報告している。チューブ壁温度における30℃低下は、水素製造のエネルギー費用を約0.25乃至約1%削減する。
【0210】
2003年にロストラップ-ニールセン及びセヘステッドは、水蒸気の輸出がない場合、SMRからの水素製造のエネルギー消費量は300BTU/scfであると報告している。それにより、チューブ壁温度の低下は、開示された触媒を使用するメタン改質からの水素の製造について、OPEXを最大約1%又は約0.1乃至約1%の範囲で低下させる。廃熱回収を含むメタン改質プラントの全熱効率は約95%である。運用コストの約1%の削減は、水素製造にとって重要であり、チューブ交換、並びに例えばメンテナンス及びチューブ交換サイクルなどのチューブのターンアラウンド中の関連するプラントのダウンタイムのための費用の削減に加えて、さらなる節約となる。
【0211】
ジョン ジンク コムバスチョン ハンドブックに記載されているように、高温高圧で動作するSMRチューブは、クリープ領域にあり、材料特性の機械的限界に近づいている。チューブの故障は、安全上の問題かプラントでの火災を引き起こし得、稼働時間の短縮にもつながり得る。本開示の触媒は、より低い壁温度を可能にし、したがって、チューブの亀裂、破裂、及びプラントの停止を低減するために、性能の機械的限界から遠ざけたチューブ壁の動作温度で稼働する。本開示の触媒は、チューブの寿命を3乃至12ヶ月延長することができ、またチューブの破裂及びプラント火災の発生を少なくして、プラントを安全に運転することを可能にすることができる。
【0212】
固体負荷、熱伝導率、及び放射率の変化を通じた、SiCを含む触媒及び触媒コアによる、有効な充填床伝導率の向上。
本明細書で前述したように、本開示の触媒及び触媒コア(すなわち、触媒支持体)は、充填床における改善された熱伝達を提供する高熱伝導率のSiC/Al2O3複合材料から構成される。さらに、これらの触媒及び触媒コアは、従来の市販の触媒と比較して、より高い全垂直放射率を提供し、したがって、高温環境で動作するときの充填床における改善された熱伝達を提供する。触媒と触媒コアの伝導率と放射率による改善された有効充填床熱伝導率は、従来の触媒と同様の形状と床充填密度を維持している場合でも、実現される。
【0213】
有効床熱伝導率は、本明細書で前述した実験手順及び装置を使用して実験的に決定された。前述のように、本開示の触媒システムを使用する場合の予想される反応チューブ壁温度は、同等の水素製造速度を提供しながら、従来のメタン改質触媒を使用する場合の必要
な壁温度と比較して10乃至30℃減少させることができる。
【0214】
個々の幾何学的特性と床特性から有効充填床熱伝導率を計算するための1つの基準は、ZBS(ツェナー、バウアー、及びシュルンダー)モデルでである。ZBSモデルは、触媒ペレットと流体媒体で構成される代表的な円筒形ユニットセルを含み、他のペレットと固体/流体領域間の幾何学的相互作用を考慮している。該モデルは、ガス分子の平均自由行程に基づいて変化する、流体とペレット固体の伝導率、ペレット固体の放射率、充填床の多孔度(つまり、空隙率)(幾何学的効果)、形状補正、変形パラメーター、圧力、及びガス動力学に基づいて有効伝導率を調整する。
【0215】
本明細書の前述した例では、ペレットの熱伝導率の増加の影響は単独で調査された。低温では、放射熱伝達の影響は最小限に抑えられるか、取るに足らないものになる。しかし、水蒸気メタン改質及びその他の触媒反応中に利用される温度では、放射熱伝達が主要な手段である。温度の3乗でスケーリングするため、放射が主要な役割を果たす。ZBSモデルは、放射率と伝導率の影響を解決できる。
【0216】
測定及び計算されたパラメータを使用して、有効な充填床の熱伝導率が、全垂直放射率、及びペレットの熱伝導率のさまざまな範囲に対して決定された。“本発明の触媒を使用する水蒸気メタン改質のための壁温度の低下及び水素生成の増加”と題された上記の例で論じられた実験測定に対応する固定充填床形状が使用された。充填床モデルは、800℃の固定温度、窒素ガス中で0.40の床多孔度を有する周囲圧力で保持された。
【0217】
全垂直放射率の効果は、低いペレットの熱伝導率で指数関数的に変化し、高いペレットの伝導率で直線的に変化する。参考として、本開示の触媒コア及び市販の触媒について測定及び計算されたパラメータが提供される。本開示の新規コアは、そのペレット熱伝導率の改善ならびにその増加した全垂直放射率によって、その強化された有効充填床熱伝導率を達成する。しかし、いずれかのパラメータの増加は、両方とも全体的な有効伝導率を増加させる。
【0218】
本開示の触媒の一実施形態では、SiCベースのコア(例えば、保護アルミナマトリックス中のSiC)は、そこから生成される触媒の放射率を高めるために、多孔質アルミナの薄い半透明の被覆でコーティングされる。高温でのSiCの全垂直放射率は非常に高いが、他の種類のコーティング、ドーパント、又は卑金属の使用すると増加する可能性がある。これらの卑金属は通常、軽度から重度に酸化され、鉄、鋼、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、ニクロムなどが含まれるが、これらに限定されない。SiCだけが、放射率を上げるために使用できるセラミックではない。他のセラミックは、炭化物コーティング、酸化鉄、窒化ケイ素、ジルコニア、MgO、ZrCなどを含む。さらに、高放射率ガラスが使用され得る。BSASはまた、支持体の放射率を高めるために使用でき、同時に、コアであるSiC材料をその環境から保護することもできる(本明細書でさらに説明される)。ケイ酸アルミニウム、ホウケイ酸塩、バイコール(Vycor)、パイレックス(Pyrex)、さまざまな炭化物材料、Zr/Fe/Cr酸化物で安定化されたCaO、カーボンランダム、及び安定化されていないジルコニアなどの、他のガラス、ベース、又はセラミックコーティングが使用され得る。
【0219】
したがって、従来の触媒の代わりに高い熱伝導率及び高い全垂直放射率材料を使用することによって触媒の熱伝導率を高めることにより(すなわち、多孔質Ni-Al
2O
3複合体触媒をSiCを含む高密度コア上の触媒コーティングを含むもので置き換えること)、床の熱伝達能力が停滞状態で約5倍改善され、また熱分散及び圧力の乱流伝導の影響に起因して、高温でのメタン改質反応の代表として、2000乃至5000GHSV(
図10及び11参照)の予測されるシステムフローで、約1.5乃至3.5の一定のオフセッ
ト改良により改善される。
【0220】
有効半径方向熱伝導率の増加は、高温反応器チューブの壁から触媒床及び反応ガスに熱をより効率的に伝達し、それによって吸熱反応をより効率的に推進する。反応を完了するために必要な熱は変化しないが、ピーク温度が下がるために熱損失が減少し、燃料及び酸素(又は空気)の供給速度の形でエネルギー投入を減らすことができる。
【0221】
チューブ壁と触媒粒子床の中心との間の温度勾配が減少し、これにより、チューブ壁温度を低下させて、等量の水素を生成することを可能にする。あるいは、チューブ壁は、従来の触媒と対応して同様のチューブ寿命で同じ温度に維持することができ、同時に、従来の触媒と比較して5乃至30%の範囲で水素のスループット又は製造性を増加させることができる。チューブ寿命は大幅に向上させることができ、壁の薄いチューブ、より安価な合金又はより従来型の製造プロセスを使用したチューブが使用され得、これらはすべて、システムの大幅な資本費用削減を達成する。
【0222】
本開示による触媒コア(すなわち、触媒支持体)及び触媒の様々な実施形態は、本開示の触媒を使用することができる反応の様々な種類と分類を有するように、上記で詳細に説明されてきた。しかし、構成要素、特徴及び構成、ならびに触媒コア及び触媒を製造する方法、ならびにそれらを使用する方法は、本明細書に記載の特定の実施形態に限定されないことが理解される。
【0223】
例として、本明細書に記載のコアを用いた様々な触媒コア及び触媒のいずれかは、アセチル化、付加反応、アルキル化、脱アルキル化、水素化脱アルキル化、還元的アルキル化、アミノ化、芳香族化、アリール化、自己熱改質、カルボニル化、脱カルボニル化、還元的カルボニル化、カルボキシル化、還元的カルボキシル化、還元的カップリング、縮合、分解、水素化分解、環化、シクロオリゴマー化、脱ハロゲン化、二量化、エポキシ化、エステル化、フィッシャー・トロプシュ反応、ハロゲン化、ハロゲン化水素化、相同化、水和、脱水、水素化、脱水素化、水素化カルボニル化、ヒドロホルミル化、水素化分解、ヒドロメタル化、水素化ケイ化、加水分解、水素化処理、水素化脱硫/水素化脱窒素(HDS/HDN)、異性化、メタン化、メタノール合成、メチル化、脱メチル化、メタセシス、ニトロ化、酸化、部分酸化、重合、還元、水蒸気及び二酸化炭素の改質、スルホン化、テロメリゼーション、エステル交換、三量化、水性ガスシフト(WGS)、及び逆水性ガスシフト(RWGS)を含むが、これらに限定されない多種多様な触媒反応及びプロセスの何れかに使用することができる。