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特許7564714注射針カバーおよびその注射器カバーを備えた注射器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】注射針カバーおよびその注射器カバーを備えた注射器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
A61M5/32 510D
A61M5/32 500
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021002448
(22)【出願日】2021-01-08
(65)【公開番号】P2022107472
(43)【公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005511
【氏名又は名称】ぺんてる株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591039540
【氏名又は名称】前田産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127579
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 泰弘
(74)【代理人】
【識別番号】100203301
【弁理士】
【氏名又は名称】都築 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】米田 晶
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 実可子
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 雄亮
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-508657(JP,A)
【文献】特表2009-513301(JP,A)
【文献】特開2002-219171(JP,A)
【文献】特開2003-199751(JP,A)
【文献】特表2018-517485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射器に固定するための筒状本体と、筒状本体に可動に連結された近位腕部と、近位腕部に可動に連結された遠位腕部とを備え、
前記遠位腕部が、近位腕部と遠位腕部とを伸ばした状態で、注射針遠位端を格納するための前記遠位腕部の遠位端にある注射針遠位端格納溝部を備え、
前記近位腕部が、前記遠位腕部内に格納可能であり、
前記近位腕部が遠位腕部内に格納された状態、及び注射器カバー全体が小さくたたまれた状態で、前記近位腕部の背面の一部が、前記筒状本体に接触る、注射器カバー。
【請求項2】
前記筒状本体が、注射器に固定するための爪部を備えた、請求項1に記載の注射器カバー。
【請求項3】
前記遠位腕部の遠端に設置された注射針遠位端格納溝部が、前記遠位腕部の長手方向に対して垂直方向の遠端形状を基準に、外側よりも内側が狭い部分を有する、請求項1または2に記載の注射器カバー。
【請求項4】
前記近位腕部が、近位腕部と遠位腕部とを伸ばした状態で、近位腕部の遠位腕部側端部に注射針を固定するための注射針近位端側固定部を備えた、請求項1から3のいずれかに記載の注射器カバー。
【請求項5】
前記近位腕部が遠位腕部内に格納された状態、及び注射器カバー全体が小さくたたまれた状態で、
前記近位腕部が、筒状本体に接触る筒状本体接触部と、筒状本体の脚部を固定る脚部固定部とを備えた、請求項1から4のいずれかに記載の注射器カバー。
【請求項6】
前記近位腕部が遠位腕部内に格納された状態、及び注射器カバー全体が小さくたたまれた状態で、
前記遠位腕部の底部が、筒状本体の先端部に接触る、請求項1から5のいずれかに記載の注射器カバー。
【請求項7】
前記遠位腕部の内側面および前記近位腕部の外側面の少なくとも一方に、隆起部を備え
前記近位腕部と前記遠位腕部との開閉動作に応じて、前記隆起部が、前記隆起部を備えた前記遠位腕部の内側面および前記近位腕部の外側面の少なくとも一方の反対側の、前記遠位腕部の内側面または前記近位腕部の外側面に接触する、請求項1から6のいずれかに記載の注射器カバー。
【請求項8】
前記筒状本体が、近位腕部接触突起部を備え、
前記近位腕部が、背面端部を備え、
前記近位腕部が前記筒状本体に対して動く際に、前記近位腕部に対して一定以上の外力が働くと、前記近位腕部に備えられた背面端部が、前記筒状本体に備えられた近位腕部接触突起部を乗り越える、請求項1から7のいずれかに記載の注射器カバー。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の注射器カバーを備えた、注射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射針カバーおよびその注射器カバーを備えた注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
医療処置に使用された後の注射器を廃棄する際には、注射器に設置された使用済みの注射針を安全に扱うことが求められる。使用済みの注射針が医療従事者、運送業者、廃棄処分業者等に接触すると、疾病に感染する医療事故が発生する可能性がある。
この医療事故を防ぐために、注射器を安全に扱うための様々な注射針カバーが提案されている。
【0003】
第一の先行技術として、開閉可能な注射針格納部を備えた注射針カバーが開示されている。
この第一の先行技術によれば、注射器本体と注射針とを備えた注射器に対して、注射針を注射器本体に接続するための注射針接続部近位端に、ヒンジにより開閉可能な一対の注射針格納部が設置されている。
第一の先行技術の場合、注射針格納部を開いて注射器を使用する。この注射器を使用した後は、一対の注射針格納部を閉じて、注射針を注射針格納部に格納することができる(特許文献1)。
【0004】
第二の先行技術として、注射針の長手方向にスライドできる注射針遠位端保護部を備えた注射針カバーが開示されている。
この第二の先行技術によれば、注射器本体と注射針とを備えた注射器に対して、注射針カバーが注射器本体に着脱可能に設置される。
注射器カバーは注射針遠位端保護部を備えていて、注射器カバーを注射器本体に対して注射針の遠位端方向に移動できる。
注射針遠位端保護部を注射針の遠位端より外側に移動させた後に、注射針遠位端保護部を注射針の遠位端側に引き戻して、注射針の遠位端を注射針遠位端保護部に格納できる(特許文献2)。
【0005】
また第三の先行技術として、中空の遠位端キャップが注射針の長手方向に沿って前後に動く注射針カバーが開示されている。
この第三の先行技術によれば、注射器本体と注射針とを備えた注射器に対して注射針カバーが設置される。
【0006】
注射針カバーは、注射針の注射器本体に設置されるニードルハブと、ニードルハブと可動に連結された近位カバー部分と、近位カバー部分と可動に連結された中央ヒンジと、中央ヒンジと可動に連結された遠位カバー部分と、遠位カバー部分と可動に連結された中空の遠位端キャップとを備える。
【0007】
中空の遠位端キャップは内部を注射針が挿通していて、注射針の長手方向に沿って前後に移動することができる。
中央ヒンジは近位カバー部分と遠位カバー部分の両方を可動に連結している。また中央ヒンジ、近位カバー部分および遠位カバー部分のそれぞれの関係は、中央ヒンジが三角形の頂点に対応し、近位カバー部分と遠位カバー部分のそれぞれが三角形の頂点に連結される二つの斜辺に対応する関係となる。
【0008】
中央ヒンジが注射針の長手方向を基準として垂直方向に注射針から離れる方向に動く。
この動きに伴い、中央ヒンジが三角形の頂点に対応するように動き、近位カバー部分と遠位カバー部分のそれぞれが三角形の頂点に連結される二つの斜辺に対応するように動く。
中央ヒンジが注射針から垂直方向に注射針から離れる方向に動くと、近位カバー部分と遠位カバー部分とにより形成される角度が鈍角から鋭角に変化する。そして遠位カバーに可動に連結された中空の遠位端キャップが注射針に沿って注射器本体側に引き寄せられる。
【0009】
逆に中央ヒンジが注射針の長手方向を基準として垂直方向に注射針に近く方向に動いて近位カバー部分と遠位カバー部分とが互いに一直線に近づくように動くと、中空の遠位端キャップが注射針に沿って注射器本体側とは反対側に押し出される。
近位カバー部分と遠位カバー部分とが形成する角度が最大となった時点で、中空の遠位端キャップが注射針の遠位端を覆う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許公報第5011479号
【文献】米国特許公報第5092461号
【文献】米国特許公報第9662455号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで注射針カバーを注射器に取り付ける工程は、通常工場内で自動で行われる。
工場に設置されたベルトコンベアや回転テーブルにより大量に運ばれてくる注射針カバーと注射器とを、それぞれ注射器に設置された注射針の長手方向と同一方向に整えた後に、注射針カバーと注射器とが作業用ロボット等により自動で連結される。
【0012】
ところが第一の先行技術の場合の様に注射針カバーに可動部分があると、ベルトコンベアや回転テーブルにより注射針カバーが運ばれてくる際に注射針カバーがその向きを頻繁に変える。注射針カバーの向きが常時変化するから、注射針カバーと注射器との連結前に、注射針カバーと注射器との方向を整える作業が困難となる。このため大量生産の効率が落ちる問題がある。
【0013】
また先に説明した第二の先行技術の場合は、注射針カバーを引き戻す際に注射針が変形・破損する可能性がある。
同様に第三の先行技術の場合も、注射針の長手方向を基準として、垂直方向の力が注射針にかかるため、やはり注射針が変形・破損する可能性がある。
【0014】
これらの先行技術の様に、注射器カバーの可動部分が注射針の長手方向に沿って移動できる注射器カバーの場合、注射針の遠位端側が可動部分で覆われていても注射針の遠位端側が人体に接触すれば可動部分が注射針の近位端側に移動できる。この結果、注射針の遠位端が直接人体に接触する場合も想定される。
注射針の遠位端が人体に接触しない様に可動部分に注射針の遠位端を覆う部材を追加しても、この遠位端を覆う部材が注射針の前後方向に移動可能なら注射針が変形・破損する可能性がある。
加えて注射器カバーの可動部分がばね等の弾性体で注射針の近位端側に戻りにくい構造の場合でも、ばねの反発力を超えて注射針の遠位端側が人体に接触すると、注射針の遠位端が直接人体に接触する可能性がある。
またばねを使う構造の場合、勢い良く可動部分が注射針の遠位端側に突き出た場合、使用後の注射針の内容液が周囲に飛散する可能性もある。
【0015】
特に注射針の遠位端を覆う可動部分を備えた注射器カバーの場合、可動部分を直接指で持って注射針の遠位端まで移動させる構造の注射器カバーでは、指が注射針の遠位端に接近するため、注射針の遠位端が人体に接触する可能性がある。
【0016】
本発明の目的は、大量生産に適した、より安全な注射針カバーおよびその注射針カバーを備えた注射器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らが上記課題を解決するために鋭意検討した結果、
(1)筒状本体と、筒状本体に可動に連結された近位腕部と、近位腕部に可動に連結された遠位腕部とを備え、前記遠位腕部が、遠位端に注射針遠位端格納溝部を備え、前記近位腕部を遠位腕部内に格納できる注射針カバー
および
(2)その注射カバーを備えた注射器
が、本発明の目的に適うことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち本発明は、
[1]注射器に固定するための筒状本体と、筒状本体に可動に連結された近位腕部と、近位腕部に可動に連結された遠位腕部とを備え、
前記遠位腕部が、近位腕部と遠位腕部とを伸ばした状態で、注射針遠位端を格納するための前記遠位腕部の遠位端にある注射針遠位端格納溝部を備え、
前記近位腕部が、前記遠位腕部内に格納可能であり、
前記近位腕部が遠位腕部内に格納された状態、及び注射器カバー全体が小さくたたまれた状態で、前記近位腕部の背面の一部が、前記筒状本体に接触る、注射器カバーを提供するものである。
【0019】
また本発明の一つは、
[2]前記筒状本体が、注射器に固定するための爪部を備えた、上記[1]に記載の注射器カバーを提供するものである。
【0020】
また本発明の一つは、
[3]前記遠位腕部の遠位端に設置された注射針遠位端格納溝部が、前記遠位腕部の長手方向に対して垂直方向の遠位端形状を基準に、外側よりも内側が狭い部分を有する、上記[1]または[2]に記載の注射器カバーを提供するものである。
【0021】
また本発明の一つは、
[4]前記近位腕部が、近位腕部と遠位腕部とを伸ばした状態で、近位腕部の遠位腕部側端部に注射針を固定するための注射針近位端側固定部を備えた、上記[1]から[3]のいずれかに記載の注射器カバーを提供するものである。
【0022】
また本発明の一つは、
[5]前記近位腕部が遠位腕部内に格納された状態、及び注射器カバー全体が小さくたたまれた状態で、
前記近位腕部が、筒状本体に接触る筒状本体接触部と、筒状本体の脚部を固定る脚部固定部とを備えた、上記[1]から[4]のいずれかに記載の注射器カバーを提供するものである。
【0023】
また本発明の一つは、
[6]前記近位腕部が遠位腕部内に格納された状態、及び注射器カバー全体が小さくたたまれた状態で、
前記遠位腕部の底部が、筒状本体の先端部に接触る、上記[1]から[5]のいずれかに記載の注射器カバーを提供するものである。
【0024】
また本発明の一つは、
[7]前記遠位腕部の内側面および前記近位腕部の外側面の少なくとも一方に、隆起部を備え
前記近位腕部と前記遠位腕部との開閉動作に応じて、前記隆起部が、前記隆起部を備えた前記遠位腕部の内側面および前記近位腕部の外側面の少なくとも一方の反対側の、前記遠位腕部の内側面または前記近位腕部の外側面に接触する、上記[1]から[6]のいずれかに記載の注射器カバーを提供するものである。



【0025】
また本発明の一つは、
[8]前記筒状本体が、近位腕部接触突起部を備え、
前記近位腕部が、背面端部を備え、
前記近位腕部が前記筒状本体に対して動く際に、前記近位腕部に対して一定以上の外力が働くと、前記近位腕部に備えられた背面端部が、前記筒状本体に備えられた近位腕部接触突起部を乗り越える、上記[1]から[7]のいずれかに記載の注射器カバーを提供するものである。
【0026】
また本発明は、
[9]上記[1]から[8]のいずれかに記載の注射器カバーを備えた、注射器を提供するものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明の注射器カバーは、近位腕部を遠位腕部内に格納した状態で、近位腕部の背面の一部が筒状本体に接触できる。このため注射器カバー全体を小さくたたむことができ、注射器の操作性に優れる。
また本発明の注射器カバーは小さくたたまれた状態を維持できるから、量産性に優れる。
【0028】
また本発明の注射器カバーは、近位腕部の背面の一部が筒状本体に接触できる。
注射器カバー全体が小さくたたまれた状態で、遠位腕部に対して筒状本体方向に外力が加わった場合でも、背面の一部は筒状本体に接触していて外力が分散される。外力が分散される結果、筒状本体と近位腕部との可動連結部が、梃子の原理により、破損することを防止できる。
【0029】
一方、遠位腕部は近位腕部を内部に格納できるので、遠位腕部が近位腕部を覆う外部部材としての機能を持つ。遠位腕部は近位腕部よりも形状が大きくなり、操作性に優れる。
また遠位腕部と近位腕部が接触する場合、遠位腕部の内側で接触するから、遠位腕部と近位腕部との接触により生じる傷、擦れ跡等が遠位腕部の外側に付かない。遠位腕部の手に触れる部分に消毒等の操作に影響する微細な傷等が生じないため、注射器カバーの手に触れる部分を清潔な状態に維持できる。
【0030】
また注射器の使用を終えて、注射器に備えられた注射針を注射器カバーに格納する場合には、近位腕部と遠位腕部とを伸ばした状態に変化させて、前記遠位腕部の遠位端にある注射針遠位端格納溝部に注射針遠位端が格納される。
注射針遠位端は、注射針遠位端格納溝部に格納されるから、注射針遠位端側に誤って触れた場合でも、注射針遠位端は注射針遠位端格納溝部を超えて外部に出ることがない。使用済みの注射器の注射針が医療従事者、運送業者、廃棄処分業者等に接触して、疾病に感染する医療事故を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明の実施形態1に使用する、筒状本体10の模式斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態1に使用する、近位腕部30の模式斜視図である。
図3図3は、本発明の実施形態1に使用する、遠位腕部50の模式斜視図である。
図4図4は、本発明の実施形態1に使用する、遠位腕部50の模式斜視図である。
図5図5は、遠位腕部50を遠位端60側から観察した状態を示す模式図である。
図6図6は、注射器カバー100がたたまれている状態を示す模式図である。
図7図7は、本発明の実施形態2に係る注射器カバー100が注射器500に取り付けられた状態を示す模式図である。
図8】本発明の実施形態2に係る注射器500に設置された注射器カバー100の動作について説明するための模式図である。
図9】本発明の実施形態2に係る注射器500に設置された注射器カバー100の動作について説明するための模式図である。
図10】本発明の実施形態2に係る注射器500に設置された注射器カバー100の動作について説明するための模式図である。
図11】本発明の実施形態2に係る注射器500に設置された注射器カバー100の動作について説明するための模式図である。
図12図12は、本発明の実施形態3に係る注射器カバー200に使用される遠位腕部を示す模式斜視図である。
図13図13は、本発明の実施形態4に係る注射器カバー300の筒状本体11と、近位腕部31との相互関係を説明するための部分拡大模式図である。
図14図14は、本発明の実施形態4に係る注射器カバー300の筒状本体11と、近位腕部31との相互関係を説明するための部分拡大模式図である。
図15図15は、本発明の実施形態5に使用する、筒状本体1の模式図である。
図16図16は、本発明の実施形態5に使用する、近位腕部3の模式斜視図である。
図17図17は、本発明の実施形態5に使用する、近位腕部3の模式斜視図である。
図18図18は、本発明の実施形態5に使用する、遠位腕部5の模式斜視図である。
図19図19は、本発明の実施形態5に係る注射器カバー400の筒状本体1、近位腕部3および遠位腕部5との相互関係を説明するための模式図である。
図20図20は、本発明の実施形態5に係る注射器カバー400の筒状本体1、近位腕部3および遠位腕部5との相互の動作関係を説明するための模式図である。
図21図21は、本発明の実施形態5に係る注射器カバー400の筒状本体1、近位腕部3および遠位腕部5との相互の動作関係を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に発明の実施形態に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
【0033】
[発明の実施形態1]
図面に基づいて本発明の実施形態1に係る注射器カバー100について説明する。
図1は、本発明の実施形態1に使用する、筒状本体10の模式斜視図である。
また図2は、本発明の実施形態1に使用する、近位腕部30の模式斜視図である。
また図3および図4は、それぞれ本発明の実施形態1に使用する、遠位腕部50の模式斜視図である。
【0034】
最初に本発明の実施形態1に使用する筒状本体10について説明する。
筒状本体10は、注射器(図示せず)を挿通させるための挿通孔12が設けられている。図1では、挿通孔12は筒状本体10を貫いている。
また筒状本体10は、注射器に固定させるための脚部14が設けられている。
この脚部14の設置数に限定はないが、注射器に安定して注射器カバーを設置するために、脚部14の数は3~10個の範囲が好ましく、3~6個の範囲であればより好ましい。
図1に示す筒状本体10では、合計4個の脚部14が筒状本体10に設置されている。
【0035】
前記脚部14の端部には、筒状本体10の挿通孔12の内側に向かって、固定爪部14aが設置されている。
注射器カバー100を注射器に設置した際、この固定爪部14aを注射器に掛けることができる。固定爪部14aがあれば、注射器カバー100が注射器から外れることをより確実に防ぐことができる。
【0036】
また筒状本体10は、近位腕部30(図2を参照)と可動に連結するための近位腕部連結部16を備えている。
近位腕部連結部16は、近位腕部30に設置された筒状本体連結軸32(図2を参照)を格納するための近位腕部連結軸格納部18を備えている。
近位腕部連結軸格納部18は、開放端20を備えていて、この開放端20から、近位腕部30に設置された筒状本体連結軸32を近位腕部連結軸格納部18に格納できる。
近位腕部30に設置された筒状本体連結軸32が、近位腕部連結軸格納部18に設置される際には、開放端20が変形して開放端20の大きさが、近位腕部30に設置された筒状本体連結軸32の最大径と同じか、またはその最大径よりも大きくなる。そして近位腕部連結軸格納部18の内部に、近位腕部30に設置された筒状本体連結軸32を設置できる。
【0037】
近位腕部30に設置された筒状本体連結軸32が、近位腕部連結軸格納部18に格納された後は、開放端20の大きさが、近位腕部30に設置された筒状本体連結軸32の最大径よりも小さくなる。
これにより、近位腕部30が筒状本体10から脱落することを防止できる。
【0038】
また近位腕部連結軸格納部18は、近位腕部30に設置された筒状本体連結軸32が自在に動くことのできる形状を有している。
その形状は、近位腕部30に設置された筒状本体連結軸32の形状に対応して適宜採用される。本発明の実施形態1の場合では、近位腕部30に設置された筒状本体連結軸32の形状が円柱状(図2参照)である。この円柱状に対応して、近位腕部連結部16の形状は、円柱の外面に対応したC字形状である。
【0039】
近位腕部30に設置された筒状本体連結軸32の断面形状と近位腕部30の近位腕部連結軸格納部18の内面形状を調節して、両者の接触の程度を調整することにより、近位腕部30の筒状本体10に対する摩擦が強ければ近位腕部30は容易には動かなくなる。逆に近位腕部30の筒状本体10に対する摩擦が弱ければ近位腕部30は容易に動く。
この様に両者の接触の程度を調整して、本発明の実施形態1に係る注射器カバー100の製造の際に、近位腕部30が筒状本体10から意図せず離れることを防止でき、一定形状を保つことができる。
この関係は以下の実施形態の場合でも同様である。
【0040】
次に本発明の実施形態1に使用する近位腕部30について説明する。
図2に示す通り、近位腕部30は、筒状本体連結軸32、側面34、背面36、遠位腕部連結部38および背面端部46を備える。
【0041】
筒状本体連結軸32は、円柱形状であり、側面34の内側面34a,34aに接続している。この筒状本体連結軸32が、筒状本体10の近位腕部連結部16に備えられた近位腕部連結軸格納部18に格納される。
図2に示される近位腕部30に設置された筒状本体連結軸32は、図1に示される筒状本体10の近位腕部連結部16に備えられた近位腕部連結軸格納部18内で自由に回転できる。このため筒状本体10と近位腕部30とを可動に連結できる。
【0042】
近位腕部30の対向する側面34,34は、背面36と接続している。
また側面34の外側面34b,34bは、図3および図4に示す遠位腕部50の内部に格納できる。
【0043】
また近位腕部30は、遠位腕部50(図3および図4を参照)と可動に連結するための遠位腕部連結部38を備えている。
遠位腕部連結部38は、遠位腕部50に設置された近位腕部連結軸52(図3および図4を参照)を格納するための遠位腕部連結軸格納部40を備えている。
遠位腕部連結軸格納部40は、開放端42を備えていて、この開放端42から、遠位腕部50に設置された近位腕部連結軸52を遠位腕部連結軸格納部40に格納できる。
遠位腕部50に設置された近位腕部連結軸52が、遠位腕部連結軸格納部40に設置される際には、開放端42が変形して開放端42の大きさが、遠位腕部50に設置された近位腕部連結軸52の最大径と同じか、またはその最大径よりも大きくなる。そして遠位腕部連結軸格納部40の内部に遠位腕部50に設置された近位腕部連結軸52を設置できる。
【0044】
遠位腕部50に設置された近位腕部連結軸52が、遠位腕部連結軸格納部40に格納された後は、開放端42の大きさが、遠位腕部50に設置された近位腕部連結軸52の最大径よりも小さくなる。
これにより、遠位腕部50が近位腕部30から脱落することを防止できる。
【0045】
また遠位腕部連結軸格納部40は、遠位腕部50に設置された近位腕部連結軸52が自在に動くことのできる形状を有している。
その形状は、遠位腕部50に設置された近位腕部連結軸52の形状に対応して自由に採用される。本発明の実施形態1の場合では、遠位腕部50に設置された近位腕部連結軸52の形状が円柱状(図3および図4参照)である。この円柱状に対応して、遠位腕部連結軸格納部40の形状は、円柱の外面に対応したC字形状である。
【0046】
遠位腕部50に設置された近位腕部連結軸52の断面形状と近位腕部30の遠位腕部連結軸格納部40の内面形状を調節して、両者の接触の程度を調整することにより、遠位腕部50の近位腕部30に対する摩擦が強ければ遠位腕部50は容易には動かなくなる。逆に遠位腕部50の近位腕部30に対する摩擦が弱ければ遠位腕部50は容易に動く。
この様に両者の接触の程度を調整して、本発明の実施形態1に係る注射器カバー100の製造の際に、遠位腕部50が近位腕部30から意図せず離れることを防止でき、一定形状を保つことができる。
この関係は以下の実施形態の場合でも同様である。
【0047】
次に本発明の実施形態1に使用する遠位腕部50について説明する。
図3および図4に示される通り、遠位腕部50は、近位腕部連結軸52、側面54、背面56および注射針遠位端格納溝部58を備える。
【0048】
近位腕部連結軸52は、円柱形状であり、側面54の内側面54a,54aに接続している。この近位腕部連結軸52が、近位腕部30の遠位腕部連結部38に備えられた遠位腕部連結軸格納部40に格納される。
図3および図4に示される遠位腕部50に設置された近位腕部連結軸52は、図2に示される近位腕部30の遠位腕部連結部38に備えられた近位腕部連結軸格納部40内で自由に回転できる。このため近位腕部と遠位腕部50とを可動に連結できる。
【0049】
遠位腕部50の対向する側面54,54は、背面56と接続している。
また側面54の内側面54a,54aは、近位腕部30を内部に格納できる。
【0050】
遠位腕部50は、図3および図4のそれぞれの上側に対応する遠位腕部50の遠位端60に注射針遠位端格納溝部58を備える。
この注射針遠位端格納溝部58は、対向する突起板62,62により形成されている。
【0051】
図5は、遠位腕部50を遠位端60側から観察した状態を示す模式図である。
図5に示されるように、遠位腕部50の長手方向に対して垂直方向の遠位端60の形状を基準に、外側よりも内側が狭い。なお、内側とは遠位腕部50の背面56側を意味し、外側とはその反対側を意味する。
本発明の実施形態1の場合では、遠位腕部50の遠位端60の形状はY字状である。
遠位腕部50の遠位端60は、外側よりも内側が狭いから、遠位腕部50を注射針に接触させた際に、円滑に注射針を注射針遠位端格納溝部58に格納できる。
【0052】
図6は、近位腕部30が遠位腕部50の内部に格納されて、注射器カバー100がたたまれた状態を示す模式図である。
図6に示されるように、本発明の実施形態1に係る注射器カバー100は、近位腕部30が遠位腕部50の内部に格納されている。この際、近位腕部30の外側面34bと、遠位腕部50の内側面54aは、意図せず近位腕部30と遠位腕部50とが開くことを防止できることから、それぞれの少なくとも一部が接触していることが好ましい。
【0053】
また近位腕部30は、背面36に背面の一部である背面突起部44を備える。
図6に示すように、注射器カバー100がたたまれた状態では、背面突起部44は、筒状本体10に接触している。
遠位腕部50の側面54も筒状本体10に接触している。
【0054】
近位腕部30に設置された筒状本体連結軸32と、筒状本体10に設置された近位腕部連結軸格納部18とにより形成される可動部70は、遠位腕部50の側面54と筒状本体10との接触部72よりも近位側にある。
すなわち、近位腕部30に設置された筒状本体連結軸32と、筒状本体10に設置された近位腕部連結軸格納部18とにより形成される可動部70は、図6を基準にして、近位腕部50の側面54と筒状本体10との接触部72よりも下にある。
この場合、近位腕部30と遠位腕部50とが互いに摩擦力等により互いに動かない状態を保っている間は、接触部72が、筒状本体連結軸32を中心とする可動部70の回転運動を妨げる。
筒状本体連結軸32を中心とする可動部70の回転運動が妨げられるから、注射器カバー100は、たたまれた状態を維持することができる。
【0055】
逆に、近位腕部30と遠位腕部50とを引き離す方向に外力が加わると、近位腕部30と遠位腕部50とが互いに動かない状態を保つことのできる摩擦力等をその外力が超えた時点で、近位腕部30と遠位腕部50との固定状態が解除されて、近位腕部30と遠位腕部50とが動く。
【0056】
一方、遠位腕部50の背面56側から筒状本体10側に外力が加わった場合、もし近位腕部30が背面36に背面突起部44を備えていないと、近位腕部30に設置された筒状本体連結軸32と、筒状本体10に設置された近位腕部連結軸格納部18とにより形成される可動部70に、その外力が加わる。
この場合、梃子の原理により可動部70が破損する可能性がある。
本発明の実施形態1に係る注射器カバー100の場合は、近位腕部30が背面36に背面突起部44を備えているので、遠位腕部50の背面56側から筒状本体10側に外力が加わった場合でも、その外力が背面突起部44にも分散される。これにより可動部70の破損を防止できる。
【0057】
[発明の実施形態2]
次に本発明の実施形態2に係る注射器カバーを備えた注射器500について説明する。
図7は、本発明の実施形態2に係る注射器カバー100が注射器500に取り付けられた状態を示す模式図である。
注射器500は、注射針510、注射器本体520、遠位端筒部530およびプランジャーロッド540を備える。
注射器500に備えられたプランジャーロッド540は、フランジ550と可撓性封止部材560を備えていて、注射器本体520の内部と可撓性封止部材560との間に薬剤の水溶液等の液剤を内部に保持できる。
注射器500のフランジ550を注射針510の方向へ押すと、注射器本体520の内部に保持された液剤を注射針510の遠位端から外部に排出することができる。
【0058】
図7に示されるように、注射針510には保護キャップ580が設置されている。この保護キャップは遠位端に蓋を有する中空の円筒形状の合成樹脂製であり、注射針510を覆うように着脱自在に設置されている。
注射器500の長手方向に、注射針510の遠位端側から注射器カバー100を注射器本体520に設置することができる。
注射器500は、注射器本体520に遠位端筒部530を備える。この遠位端筒部530は注射器500よりも大きい外径を有していて、注射器本体520と遠位端筒部530との間に段差570が存在する。
この段差570に注射器カバー100の脚部14の端部に、内側に向かって設置された固定爪部14aが係る。
この固定爪部14aにより、注射器500から注射器カバー100が脱落することを確実に防止することができる。
保護キャップ580を外せば、注射器カバー100を備えた注射器500を用いて、例えば、患者に薬剤を注射等できる。
【0059】
図8図11は、それぞれ本発明の実施形態2に係る注射器500に設置された注射器カバー100の動作について説明するための模式図である。
近位腕部30は、遠位腕部50内に格納できる。
近位腕部30の外側面は、前記遠位腕部の内側面の少なくとも一部と接触できることが好ましい。
例えば、注射器カバー100の遠位腕部50に対して指で押す等の外力が加わった場合でも、それぞれ互いに接触している近位腕部30の外側面34b,34bと、遠位腕部50の内側面54a,54aとの間に生じる摩擦力を超えるまでは接触状態が維持される。
【0060】
一方、例えば、それぞれ互いに接触している近位腕部30の外側面34b,34bと、遠位腕部50の内側面54a,54aとの摩擦力を超える外力が加わると、両者の接触状態は解除される。この結果、近位腕部30と遠位腕部50は遠位方向へと動く。
【0061】
注射針510に沿って、遠位腕部50の遠位端60に注射針遠位端格納溝部58を遠位方向に移動させることができる。
遠位腕部50の遠位端60に設置された注射針遠位端格納溝部58は、注射針510の方向に向かって開放されている。注射針510に沿って、遠位腕部50が移動する際には、遠位腕部50が注射針510を固定する部分は存在しないから、遠位腕部50が移動する際に誤って注射針510を破損することを防ぐことができる。
【0062】
図10および図11に示されるように、近位腕部30と遠位腕部50とが伸びた状態で、注射針510を遠位腕部50の遠位端60側に設置された注射針遠位端格納溝部58の内部に格納することができる。
注射針510は外部に露出しないから、使用済みの注射器500に備えられた注射針510が医療従事者、運送業者、廃棄処分業者等に接触することが防止される。
【0063】
[発明の実施形態3]
次に本発明の実施形態1に係る注射器カバー100の変形例である、注射器カバー200について説明する。
注射器カバー200は、実施形態1に係る注射器カバー100と比較して、使用する遠位腕部が変更されている。
以下に変更点について説明する。
図12は、本発明の実施形態3に係る注射器カバー200に使用される遠位腕部を示す模式斜視図である。
遠位腕部51の内側面54a,54aのそれぞれに直方体形状の隆起部55,55が、遠位腕部51の長手方向に対して垂直方向に設置されている。
これらの隆起部55,55の形状については、近位腕部31と遠位腕部51との開閉動作に応じて適宜設定されるものであり、限定はない。隆起部55,55を高くしたり、遠位腕部51の内側面54a,54aに平行な面積を増大させたりすると、近位腕部30と遠位腕部51との間に働く摩擦力が大きくなるため、近位腕部30と遠位腕部51を開閉するために、より大きな外力を要する。
逆に隆起部55,55を低くしたり、遠位腕部51の内側面54a,54aに平行な面積を減少させたりすると、近位腕部30と遠位腕部51との間に働く摩擦力が小さくなるため、近位腕部30と遠位腕部51を開閉するために、より少ない外力で足りる。
【0064】
遠位腕部51に対して隆起部55,55を設置することにより、近位腕部30と遠位腕部51との開閉に必要な外力を調整できる。
【0065】
図12では、遠位腕部51の内側面54a,54aのそれぞれに直方体形状の隆起部55,55を設けたが、本発明の他の実施形態の場合も同様である。例えば、先の実施形態1に係る注射器カバー100の近位腕部30の外側面34b,34bに隆起部を設けることもできる。
なお隆起部55,55は、近位腕部の外側面または遠位腕部の内側面の少なくとも一方に設置することが好ましい。
【0066】
注射器カバー200を先に説明した実施形態2の注射器500に設置することにより、注射器カバー200を備えた注射器が得られる。この関係は下記の実施形態の場合も同様である。
【0067】
[発明の実施形態4]
次に本発明の実施形態1に係る注射器カバー100の変形例である、注射器カバー300について説明する。
図13および図14は、本発明の実施形態4に係る注射器カバー300の筒状本体11と、近位腕部31との相互関係を説明するための部分拡大模式図である。
注射器カバー300の筒状本体11に設置された近位腕部連結部17には近位腕部接触突起部22が備えられている。一方、近位腕部31の背面37に、背面端部46が備えられている。
背面端部46は、背面37のうち、筒状本体連結軸32に近い側の端部にある。
上記以外の構成は、先に説明した注射器カバー100の場合と同様である。
【0068】
注射器カバー300の近位腕部31が図13および図14の上側方向に押し上げられると、近位腕部31は筒状本体連結軸32を中心に、反時計回りに回転する。
回転前は、筒状本体11の近位腕部接触突起部22と、近位腕部31の背面37にある背面端部46とは、互いに接触していない。
【0069】
さらに近位腕部31が筒状本体連結軸32を中心に回転すると、筒状本体11の近位腕部接触突起部22と、近位腕部31の背面37にある背面端部46とが互いに接触する。
近位腕部31に一定以上の外力が働くと、近位腕部接触突起部22および背面端部46の少なくとも一方が変形し、背面端部46が近位腕部接触突起部22を乗り越える。
図13および図14は、背面端部46が近位腕部接触突起部22を乗り越える前と乗り越えた後の状態をそれぞれ図示したものである。
【0070】
背面端部46が近位腕部接触突起部22を乗り越えた後は、近位腕部31の背面端部46が近位腕部接触突起部22に接触するため、近位腕部31が筒状本体連結軸32を中心に、時計回りに回転することを妨げる。
近位腕部31の回転が妨げられるから、注射器カバー300が注射器に設置された場合は、近位腕部31および遠位腕部50は注射器の注射針に沿って伸びた状態を維持することができる。
また予期しない外力が注射器カバーに作用した場合でも、注射針が外部に露出することを防ぐことができる。
【0071】
[発明の実施形態5]
次に本発明の実施形態1に係る注射器カバー100の変形例である、注射器カバー400について説明する。
図15は、本発明の実施形態5に使用する、筒状本体1の模式図である。
また図16および図17は、それぞれ本発明の実施形態5に使用する、近位腕部3の模式斜視図である。
図18は、本発明の実施形態5に使用する、遠位腕部5の模式斜視図である。
図19は、本発明の実施形態5に係る注射器カバー400の筒状本体1、近位腕部3および遠位腕部5との相互関係を説明するための模式図である。
図20および図21は、本発明の実施形態5に係る注射器カバー400の筒状本体1、近位腕部3および遠位腕部5との相互の動作関係を説明するための模式図である。
以下に本発明の実施形態1に係る注射器カバー100との相違点を中心に本発明の実施形態5に係る注射器カバー400について説明する。
【0072】
図15に例示されるように、筒状本体1には開口部19が設置されている。開口部19は近位腕部連結部16を貫通してもよいし、貫通せず、内部に隔壁があってもよい。この関係は近位腕部3および遠位腕部5の場合も同様である。本発明の実施形態5に係る注射器カバー400の場合は、内部に隔壁が設けられている。開口部19は近位腕部連結部16の反対側にも対称的に設けられている。
開口部19は、例えば、本発明の実施形態5に係る注射器カバー400を生産するときに、カメラ等により筒状本体1の向きを自動で認識し、組み立て前の位置を整えるための識別情報等に使用することができる。
【0073】
図16および図17に例示されるように、近位腕部3の遠位腕部側端部49には略J字形状の注射針近位端側固定部48が設置されていて、注射針を注射針近位端側固定部48に掛けて、注射針を遠位腕部5の内部に固定することができる。
また遠位腕部5の背面には平行に複数の突起部24が設置されていて、遠位腕部5を注射針に沿って指で簡単に移動させることができる。
【0074】
近位腕部3の側面34,34の内側34a,34aにはそれぞれ筒状本体1の脚部14を固定するための突起部80,80が設置されている。また近位腕部3には開口部39が設置されていて、例えば、本発明の実施形態5に係る注射器カバー400を生産するときに、カメラ等により近位腕部3の向きを自動で認識し、組み立て前の位置を整えるための識別情報等に使用することができる。
【0075】
図18に例示されるように、遠位腕部5の注射針遠位端格納溝部58は、遠位腕部5の内部に注射針を内部に格納した際に、注射針の先端を覆うように格納できる。突起版62,62により、注射針の先端が注射針遠位端格納溝部58内部に円滑に格納できる。
遠位腕部5には開口部64,66が設置されていて、例えば、本発明の実施形態5に係る注射器カバー400を生産するときに、カメラ等により遠位腕部5の向きを自動で認識し、組み立て前の位置を整えるための識別情報等に使用することができる。
【0076】
図19に例示されるように筒状本体1から近位腕部3および遠位腕部5を注射器針の先端方向に移動させると、注射針を遠位腕部5の内部に格納できる。注射針は外部に露出しないので、使用済みの注射針が誤って医療関係者等に刺さる等の事故を未然に防ぐことができる。
【0077】
図20は、筒状本体1側に近位腕部3および遠位腕部5を引き付けて、注射器(図示せず)を使用できる状態にあることを例示している。
近位腕部3の背面の一部である筒状本体接触部82が筒状本体1に接触している。遠位腕部5を筒状本体1側に押しても、近位腕部3および遠位腕部5は図20の状態で止まり、筒状本体1側に移動しないので、筒状本体連結軸32を支点とした梃子の原理により本発明の実施形態5に係る注射器カバー400が破損することを防止できる。
【0078】
また筒状本体1の脚部14を固定するために近位腕部3に設置された脚部固定部84の突起部80が脚部14を両側から筒状本体1の脚部14を挟んで固定する。これにより、例えば、本発明の実施形態5に係る注射器カバー400を生産するときに、ベルトコンベアー等で注射器カバー400を移送中に近位腕部3の開閉により注射器カバー400の向きが変わることを防止でき、円滑に大量生産することができる。
【0079】
図21は、筒状本体1側から近位腕部3および遠位腕部5を注射針先端側に伸ばし、注射針510を遠位腕部5の内部に格納した状態を例示している。図21では注射器のうち注射針510の部分のみを図示し、それ以外の注射器の部分は図示していない。
注射針510は近位腕部3の遠位腕部側端部49(図16参照)に設置された注射針近位端側固定部48と、遠位腕部5の注射針遠位端格納溝部58の二点により支持されている。注射針510は筒状本体1側、注射針近位端側固定部48および注射針遠位端格納溝部58の合計三点により固定されている。これにより注射器カバー400を振った程度では遠位腕部5から注射針510が露出せず、使用済みの注射針が誤って医療関係者等に刺さる等の事故を未然に防ぐことができる。
【0080】
注射針近位端側固定部48の位置を注射針510の近位端側に近づけて設置することにより、予期しない外力が注射器カバー400に作用した場合でも、注射針510が変形して略J字形状の注射針近位端側固定部48をすり抜けて外部に露出することを防止できる。また梃子の原理で注射針510の近位端が作用点、略J字形状の注射針近位端側固定部48と注射針510との接点が力点の関係になるので、作用点と力点とを近接させて作用点に働く力を減少できる。
【0081】
略J字形状の注射針近位端側固定部48と注射針510との接点の位置は、注射針510の遠位端と近位端の長さを基準として、注射針510の近位端側から1/2の範囲にあることが好ましく、注射針510の近位端側から1/3の範囲にあればより好ましく、注射針510の近位端側から1/4の範囲にあればさらに好ましい。
【0082】
本発明の注射器カバー400の場合は、予期しない外力が注射器カバー400に作用した場合でも、注射針510の破損を防止できる。
【0083】
また図21に例示される本発明の実施形態5に係る注射器カバー400の状態から、さらに図21の場合で遠位腕部5を左方向、すなわち、遠位腕部5により注射針510を格納する方向に指等で押した場合、遠位腕部5の底部が筒状本体1の先端部13に接触する。
遠位腕部5の底部が筒状本体1の先端部13に接触する結果、遠位腕部5は筒状本体1の先端部13に接触した状態から、さらに左側に前屈することができない。
例えば、指で強く遠位腕部5を押したり、注射器カバー400を装着した注射器の使用後に注射器カバー400を装着した注射器を破棄した等の際に、注射器カバー400の遠位腕部5が他の廃棄物等に押されたりした場合でも、遠位腕部5が前屈して注射針510が折れたり、注射針510が曲がって遠位腕部5の外部に露出したりすることを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明に係る注射器カバーおよびそれを備えた注射器は、病院等の医療の現場に加え、実験、研究用の用途にも広く応用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1,10,11 筒状本体
12 挿通孔
13 先端部
14 脚部
14a 固定爪部
16,17 近位腕部連結部
18 近位腕部連結軸格納部
19,39,64,66 開口部
20,42 開放端
22 近位腕部接触突起部
3,30,31 近位腕部
32 筒状本体連結軸
34,54 側面
34a,54a 内側面
34b 外側面
36,37,56 背面
38 遠位腕部連結部
40 遠位腕部連結軸格納部
44 背面突起部
46 背面端部
5,50,51 遠位腕部
52 近位腕部連結軸
55 隆起部
58 注射針遠位端格納溝部
60 遠位端
62 突起板
68 底部
70 可動部
72 接触部
80 突起部
82 筒状本体接触部
84 脚部固定部
100,200,300,400 注射器カバー
500 注射器
510 注射針
520 注射器本体
530 遠位端筒部
540 プランジャーロッド
550 フランジ
560 可撓性封止部材
580 保護キャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21