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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ショーケース
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/00 20060101AFI20241002BHJP
   F25D 17/06 20060101ALI20241002BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
F25D23/00 302M
F25D17/06 311
F25D11/00 101C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021013758
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022117193
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000239585
【氏名又は名称】フクシマガリレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】松村 里歩
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-274020(JP,A)
【文献】特開昭59-100378(JP,A)
【文献】特開2001-275799(JP,A)
【文献】特開2007-155144(JP,A)
【文献】実開平06-081455(JP,U)
【文献】実開平03-031277(JP,U)
【文献】実開昭49-069935(JP,U)
【文献】特開2006-214612(JP,A)
【文献】実開昭55-059277(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/00
F25D 17/06
F25D 11/00
F25D 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面開口を有し、上壁(3)と下壁(4)と左右の側壁(5・5)と後壁(6)とで形成される断熱箱体からなるケース本体(2)と、
前記ケース本体(2)で画成される庫内(7)に配された、前記上壁(3)、前記下壁(4)、および前記後壁(6)に正対する断面コ字状の区画壁(8)と、
前記区画壁(8)により前記庫内(7)に区画された前面開口に臨む陳列室(9)と、
前記ケース本体(2)と前記区画壁(8)との間に形成され、前記下壁(4)と前記区画壁(8)を構成するデッキパン(14)との間の下循環通路(16)と、前記後壁(6)と前記区画壁(8)を構成する区画板(13)の縦壁との間の後循環通路(17)と、前記上壁(3)と前記区画壁(8)を構成する区画板(13)の横壁との間の上循環通路(18)とで構成される循環通路(10)と、
前記後循環通路(17)に設置された蒸発器(27)と、
前記上循環通路(18)の前端の前記循環通路(10)の下流端に形成されて、前記蒸発器(27)による熱交換後の冷気が吹出される吹出口(20)と、
前記下循環通路(16)の前端の前記循環通路(10)の上流端に形成され、前記陳列室(9)内を冷却した冷気が吸込まれる吸込口(19)と、
前記下循環通路(16)に設置された、前記庫内(7)で冷気の循環流を生起する循環ファン(28)と、
次亜塩素酸を含む除菌用水を生成する除菌用水生成器(34)と、
前記下壁(4)の底面(29)上に配され、前記除菌用水生成器(34)から供給される除菌用水を貯留する貯留皿(35)と、
前記下壁(4)の前記貯留皿(35)よりも前方に設けられた排水孔(30)と、
を備え、
前記下壁(4)の底面(29)は前記排水孔(30)に向かって下り傾斜され、前記除菌用水生成器(34)から供給される前記除菌用水の一部が前記貯留皿(35)から排出されて、当該除菌用水が当該底面(29)および当該排水孔(30)へ流下されるように構成され、
前記貯留皿(35)は、前記蒸発器(27)よりも前記循環通路(10)の上流側に配されるとともに、前記循環ファン(28)よりも当該循環通路(10)の下流側に配されており、当該循環ファン(28)から送出される前記冷気の送出方向が、前記貯留皿(35)の上面に向かって指向していることを特徴とするショーケース。
【請求項2】
前記貯留皿(35)が、前記デッキパン(14)の後端下方、且つ前記後循環通路(17)の下方から外れた位置に配されている請求項1に記載のショーケース。
【請求項3】
前記貯留皿(35)は、左右方向に長い皿状に形成され、その前壁(41)または後壁(42)に、前記除菌用水を排出するための排水部(44)が設けられており、
前記排水部(44)が、前記前壁(41)または前記後壁(42)の左右方向にわたって、複数個設けられている請求項1に記載のショーケース。
【請求項4】
前記貯留皿(35)に供給された除菌用水を貫通状の孔からなる前記排水部(44)からオーバーフローさせることにより、前記除菌用水の一部が前記貯留皿(35)から排出される請求項3に記載のショーケース。
【請求項5】
前記除菌用水生成器(34)が、前記ケース本体(2)の外部に配されている請求項1から4のいずれかひとつに記載のショーケース。
【請求項6】
前記除菌用水生成器(34)で生成された前記除菌用水を前記貯留皿(35)へ供給する供給管(48)を備えており、
前記供給管(48)に、制御部(53)で開閉が制御され、前記貯留皿(35)への前記除菌用水の供給を制御する開閉弁(52)が設けられており、
前記制御部(53)が、前記開閉弁(52)を所定の時間開放して前記貯留皿(35)へ前記除菌用水を供給する供給動作と、当該開閉弁(52)を所定の時間閉塞して当該貯留皿(35)への当該除菌用水の供給を停止する停止動作とを繰り返して、当該貯留皿(35)へ当該除菌用水を供給するように構成されている請求項1から5のいずれかひとつに記載のショーケース。
【請求項7】
前記供給管(48)は、一端が前記除菌用水生成器(34)に接続される主給管(49)と、当該主給管(49)から分岐される複数の分岐給管(50)とを備え、各当該分岐給管(50)はそれぞれ異なる前記ケース本体(2)に設けられた前記貯留皿(35)に接続されており、
各前記分岐給管(50)に、前記貯留皿(35)への除菌用水の供給を制御する前記開閉弁(52)がそれぞれ設けられている請求項6に記載のショーケース。
【請求項8】
前記制御部(53)が、複数の前記開閉弁(52)のうちいずれかひとつのみが開状態となるように前記開閉弁(52)の制御を行うように構成されている請求項7に記載のショーケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次亜塩素酸(HClO)を含む除菌用水を用いる除菌装置を備えるショーケースに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の除菌装置は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1の貯蔵庫では、デッキパンと断熱壁との間にダクトが形成されており、該ダクトに除菌装置が設置されている。除菌装置は、前後面にそれぞれ吸込口と吹出口とが形成される箱形のケースを備えており、該ケースの内部に、プレフィルタと気液接触部材とが設けられている。気液接触部材はフィルタ部材からなり、その上方に多数の散水孔を備える電解水供給管が配され、下方に気液接触部材から滴下する電解水を受け止める水受皿が配される。水受皿には給水タンク支持皿が一体に設けられており、同支持皿内に塩素イオンを含む水道水を供給する給水タンクと循環ポンプとが配されている。循環ポンプと電解水供給管とは配管で接続されており、該配管の中途部に電解槽が設けられている。殺菌装置の運転を開始すると循環ポンプが駆動され、給水タンク支持皿に溜まっている水道水が電解槽に供給される。電解槽では、塩素イオンを含む水道水が電気分解されて次亜塩素酸を含む電解水(除菌用水)が生成され、この電解水は電解水供給管から気液接触部材に滴下される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-155144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の貯蔵庫に係る除菌装置では、電解水が染み込んだ気液接触部材にダクトを送給される冷気を通過させることにより、冷気中に浮遊する菌(ウイルス)を電解水中の次亜塩素酸で不活化(除菌)し、臭気も電解水中の次亜塩素酸で脱臭することができる。また、気液接触部材に冷気が接触する際に電解水が蒸散することにより、次亜塩素酸を含む水蒸気が冷気中に放散されるので、放散された次亜塩素酸を含む水蒸気が接触する貯蔵室およびダクトの壁面に付着の菌等が除菌される。しかし、貯蔵庫においては、ドレン水の流路、具体的には庫内の底面や排水孔に菌等が繁殖しやすく、特許文献1の貯蔵庫に係る除菌装置では、冷気中に放散された次亜塩素酸を含む水蒸気が底面や排水孔に接触することによって除菌されるだけであるので、ドレン水の流路を十分に除菌することができず、貯蔵庫の衛生を維持することは困難である。
【0005】
本発明は、冷気中および庫内の壁面等の除菌を行いながら、菌が繁殖しやすいドレン水の流路の除菌を的確に行うことができるショーケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るショーケースは、前面開口を有し、上壁3と下壁4と左右の側壁5・5と後壁6とで形成される断熱箱体からなるケース本体2と、ケース本体2で画成される庫内7に配された、上壁3、下壁4、および後壁6に正対する断面コ字状の区画壁8と、区画壁8により庫内7に区画された前面開口に臨む陳列室9と、ケース本体2と区画壁8との間に形成され、下壁4と区画壁8を構成するデッキパン14との間の下循環通路16と、後壁6と区画壁8を構成する区画板13の縦壁との間の後循環通路17と、上壁3と区画壁8を構成する区画板13の横壁との間の上循環通路18とで構成される循環通路10と、後循環通路17に設置された蒸発器27と、上循環通路18の前端の循環通路10の下流端に形成されて、蒸発器27による熱交換後の冷気が吹出される吹出口20と、下循環通路16の前端の循環通路10の上流端に形成され、陳列室9内を冷却した冷気が吸込まれる吸込口19と、下循環通路16に設置された、庫内7で冷気の循環流を生起する循環ファン28と、次亜塩素酸を含む除菌用水を生成する除菌用水生成器34と、下壁4の底面29上に配され、除菌用水生成器34から供給される除菌用水を貯留する貯留皿35と、下壁4の貯留皿35よりも前方に設けられた排水孔30とを備えている。下壁4の底面29は排水孔30に向かって下り傾斜され、除菌用水生成器34から供給される除菌用水の一部が貯留皿35から排出されて、除菌用水が底面29および排水孔30へ流下されるように構成されている。貯留皿35は、蒸発器27よりも循環通路10の上流側に配されるとともに、循環ファン28よりも循環通路10の下流側に配されており、循環ファン28から送出される冷気の送出方向が、貯留皿35の上面に向かって指向している。
【0007】
貯留皿35は、デッキパン14の後端下方、且つ後循環通路17の下方から外れた位置に配されている。
【0008】
貯留皿35は、左右方向に長い皿状に形成され、その前壁41または後壁42に、除菌用水を排出するための排水部44が設けられている。排水部44が、前壁41または後壁42の左右方向にわたって、複数個設けられている。
【0009】
貯留皿35に供給された除菌用水を貫通状の孔からなる排水部4からオーバーフローさせることにより、除菌用水の一部が貯留皿35から排出される。
【0010】
除菌用水生成器34は、ケース本体2の外部に配されている。
【0011】
除菌用水生成器34で生成された除菌用水を貯留皿35へ供給する供給管48を備えている。供給管48に、制御部53で開閉が制御され、貯留皿35への除菌用水の供給を制御する開閉弁52が設けられている。制御部53は、開閉弁52を所定の時間開放して貯留皿35へ除菌用水を供給する供給動作と、開閉弁52を所定の時間閉塞して貯留皿35への除菌用水の供給を停止する停止動作とを繰り返して、貯留皿35へ除菌用水を供給するように構成されている。
【0012】
供給管48は、一端が除菌用水生成器34に接続される主給管49と、該主給管49から分岐される複数の分岐給管50とを備え、各分岐給管50はそれぞれ異なるケース本体2に設けられた貯留皿35に接続されている。各分岐給管50に、貯留皿35への除菌用水の供給を制御する開閉弁52がそれぞれ設けられている。
【0013】
制御部53は、複数の開閉弁52のうちいずれかひとつのみが開状態となるように開閉弁52の制御を行うように構成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る貯蔵庫の除菌装置のように、除菌用水生成器34から供給される除菌用水の一部が貯留皿35から排出されて、除菌用水が底面29および排水孔30へ流下されるように構成すると、底面29に排出された除菌用水で底面29に付着の菌等を洗浄および除菌し、さらに排水孔30に至った除菌用水で排水孔30に付着の菌等を洗浄および除菌することができる。また、除菌用水を貯留皿35から排出させて底面29に散布することで、冷気と除菌用水との接触機会を大幅に増やすことができるので、貯留皿35の除菌用水が蒸散することに加え、底面29に散布された除菌用水が蒸散する。これにより、より多くの除菌用水を蒸散させて、次亜塩素酸を含む水蒸気を冷気中に大量に放散することができるので、冷気中や庫内7の壁面等に付着の菌等を十分に除菌することができる。以上のように、本発明の除菌装置33によれば、冷気中および庫内の壁面等の除菌を十分に行いながら、菌が繁殖しやすいドレン水の流路の除菌を的確に行うことが可能となる。なお、排水孔30に装着のストレーナや下流側に接続された排水トラップなどがあれば、これらストレーナや排水トラップも除菌用水で洗浄および除菌できる。また、洗浄および除菌を行うことで排水孔30等における菌の繁殖に伴うスライムや異臭の発生を防止できる。
【0015】
下壁4の前側または後側の一方に排水孔30が配され、他方に貯留皿35が配されている形態によれば、貯留皿35から排出され底面29を流下する除菌用水の流下距離を大きくできるので、冷気との接触機会をさらに増やして、除菌用水の蒸散をより促進させることができる。加えて、左右方向に長い皿状の貯留皿35の前後壁41・42の一方に、左右方向にわたって、複数個の排水部44が設けられていると、底面29のさらに広い領域を洗浄および除菌することが可能となり、また、除菌用水の蒸散を促進させることもできる。
【0016】
貯留皿35に供給された除菌用水を貫通状の孔からなる排水部44からオーバーフローさせることにより、除菌用水の一部が貯留皿35から排出されるようにしていると、貯留皿35が貯留できる量以上の除菌用水を除菌用水生成器34から供給するだけで、除菌用水の一部が貯留皿35から排出されるので、除菌用水を排出させるためのバルブ等の部材を別途設ける必要がない分、除菌装置33の構成を簡素化できる。
【0017】
底面29を形成する貯蔵庫本体2の下壁4と、庫内7を区画する区画壁8との間の循環通路10に、循環ファン28が設置されており、循環ファン28から送出される冷気の送出方向が、貯留皿35の上面に向かって指向していると、貯留皿35に貯留された除菌用水に冷気を積極的に送出して、貯留皿35における除菌用水の蒸散をより促進させることができる。
【0018】
除菌用水生成器34が、貯蔵庫1の外部に配されていると、庫内7の底面29に貯留皿35を設置し、貯留皿35と貯蔵庫1の外部に設置した除菌用水生成器34とを接続するだけで既設の貯蔵庫1に対して除菌装置33を低コストで後付けすることができる。また、除菌用水生成器34を内蔵することによる貯蔵庫1の大型化を回避することができる。
【0019】
除菌用水生成器34で生成された除菌用水を貯留皿35へ供給する供給管48に、制御部53で開閉が制御され、貯留皿35への除菌用水の供給を制御する開閉弁52が設けられており、制御部53が、開閉弁52を所定の時間開放して貯留皿35へ除菌用水を供給する供給動作と、開閉弁52を所定の時間閉塞して貯留皿35への除菌用水の供給を停止する停止動作とを繰り返して、貯留皿35へ除菌用水を供給するように構成することができる。これによれば、底面29、および排水孔30の洗浄および除菌を周期的に行って、除菌用水の消費を抑えつつ、ドレン水の流路を衛生的な状態に維持できる。また、周期的により多くの除菌用水を蒸散させて冷気中や庫内7の壁面等の除菌を十分に行うことができる。なお、除菌用水の供給が停止されている間は、貯留皿35に貯留されている除菌用水が蒸散して次亜塩素酸を含む水蒸気が冷気中に放散されるので、冷気中および庫内7の壁面等の除菌は継続されている。
【0020】
供給管48は、一端が除菌用水生成器34に接続される主給管49と、該主給管49から分岐される複数の分岐給管50とを備え、各分岐給管50はそれぞれ異なる貯蔵庫1に設けられた貯留皿35に接続されており、各分岐給管50に、貯留皿35への除菌用水の供給を制御する開閉弁52がそれぞれ設けられている形態を採ることができる。これによれば、複数台の貯蔵庫1に対して除菌用水生成器34を1台設ければよいので、スーパーマーケット等のように複数台の貯蔵庫1を設置する店舗における除菌装置33の設置コストを大幅に減少させることができる。
【0021】
制御部53が、複数の開閉弁52のうちいずれかひとつのみが開状態となるように開閉弁52の制御を行うように構成されていると、1台の除菌用水生成器34で複数台の貯蔵庫1に除菌用水を供給する場合でも、1台の貯蔵庫1に必要な除菌用水を生成する能力を備える除菌用水生成器34を設置すればよいので、除菌用水の生成能力を抑えることができる分、除菌用水生成器34のイニシャルコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係るショーケースを示す概念図である。
図2】庫内の底面を示す横断平面図である。
図3】貯留皿の斜視図である。
図4】貯留皿と循環ファンの位置関係を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施例) 図1から図4に、本発明に係るショーケースの実施例を示す。本実施例における前後、左右、上下とは、図1および図2に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。図1においてショーケース(貯蔵庫)1は、前面開口を有する断熱箱体からなるケース本体(貯蔵庫本体)2を備えており、該ケース本体2は、上下壁3・4と左右の側壁5・5と後壁6とで形成されている。
【0024】
ケース本体2の内部、すなわち上下、左右、後の壁2~5で囲まれる空間が庫内7として画成されており、該庫内7は、上壁3、下壁4、および後壁6に正対する断面コ字状の区画壁8で、前面開口に臨む陳列室9と、ケース本体2と区画壁8との間に形成される循環通路10とに区画されている。区画壁8は、上壁3および後壁6に正対する断面逆L字状の区画板13と、下壁4に正対するデッキパン14とで構成されており、区画板13がケース本体2に一体に固定されているのに対し、デッキパン14はケース本体2に対して着脱自在に支持されている。陳列室9には上下多段状に商品陳列棚15が設置されており、該商品陳列棚15は区画板13の縦壁で支持されている。
【0025】
循環通路10は、陳列室9の上下と後とを囲むコ字状の通路であり、下壁4と区画壁8を構成するデッキパン14との間の下循環通路16と、後壁6と区画壁8を構成する区画板13の縦壁との間の後循環通路17と、上壁3と区画壁8を構成する区画板13の横壁との間の上循環通路18とで構成される。下循環通路16の上流端(前端)は冷気の吸込口19とされ、上循環通路18の下流端(前端)は熱交換後の冷気の吹出口20とされている。
【0026】
ケース本体2の下部には機械室23が設けられており、該機械室23の内部に冷凍機器を構成する圧縮機24、凝縮器25、凝縮器ファン26などが設置されている。また、これら機器(圧縮機24、凝縮器25、凝縮器ファン26)とともに冷凍機器を構成する蒸発器27は、循環通路10の後循環通路17に設置されている。
【0027】
循環通路10の下循環通路16には、庫内7で冷気の循環流を生起する、3個の循環ファン28が左右方向に並べて設置されている。循環ファン28を駆動すると、陳列室9の冷気が吸込口19から下循環通路16へと取り込まれ、循環ファン28で循環通路10を圧送される冷気は、後循環通路17に設置された蒸発器27において熱交換され、熱交換後の冷気は吹出口20から陳列室9へと吹出される。吹出口20から吹き出され吸込口19へと吸い込まれる冷気は、陳列室9内を冷却しつつ、陳列室9の前面にエアカーテンを形成する。
【0028】
ケース本体2の下壁4の中央より前側には、下壁4の上面で構成される庫内7の底面29を流下するドレン水を庫外に排出するための排水孔30が設けられている。ドレン水のほとんどは、蒸発器27に付着した霜を融解除去した際の融解水である。底面29は、排水孔30部分を最下位とする側面視で逆へ字状に形成されている。これにより、底面29の全体は排水孔30へ向かって下り傾斜されており、底面29で受け止められたドレン水は、排水孔30へ向かって流下し、同孔30から庫外に排出される。
【0029】
冷気中や庫内7の壁面等を除菌するために、ショーケース1には除菌装置33が設けられている。除菌装置33は、次亜塩素酸を含む除菌用水を生成する除菌用水生成器34と、該除菌用水生成器34から供給される除菌用水を貯留する貯留皿35とを備えている。除菌用水生成器34は、入口配管36から供給される水道水に自動的に塩化ナトリウム(塩)が添加されて塩水が生成され、この塩水を電気分解することによって、次亜塩素酸を含む除菌用水(電解水)を得るものである。生成された除菌用水は出口配管37から排出される。除菌用水生成器34への水道水への供給は水道水圧により行われるようになっており、除菌用水生成器34から除菌用水が排出されると自動的に水道水が供給されて除菌用水が生成されるように構成されている。本実施例の除菌用水生成器34は、ショーケース1の外部に配されており、複数台のショーケース1に対して除菌用水を供給するように構成されている。
【0030】
図2および図3に示すように貯留皿35は、左右方向に長い四角皿状に形成されており、左右に長い長方形状の底壁40と、底壁40の前後左右縁からそれぞれ上向きに立設される前後壁41・42および左右の側壁43・43とを備えている。貯留皿35の左右方向の長さ寸法は、下循環通路16の左右方向の長さ寸法より僅かに小さく設定することが好ましい。前壁41には、除菌用水生成器34から供給された除菌用水を貯留皿35から排出するための排水部44が設けられている。排水部44は貫通状の丸孔からなり、前壁41の左右方向にわたって複数個設けられている。底壁40から丸孔からなる排水部44の下縁までの高さ寸法は、全ての排水部44で略一致するように設定されている。貯留皿35に貯留された除菌用水は、蒸散して次亜塩素酸を含む水蒸気となり、冷気とともに庫内7(陳列室9および循環通路10)を循環するので、当該水蒸気が接触した庫内7の壁面等は次亜塩素酸で除菌される。
【0031】
底壁40の下面には、左右方向に等間隔を置いて支持脚45が固定されており、底壁40が庫内7の底面29から浮き離れるようにして、底面29と底壁40との間にドレン水が溜まるのを防止している。支持脚45は、角パイプ状の条材からなる。次亜塩素酸を含む除菌用水を貯留することで貯留皿35が腐食するのを防止するため、貯留皿35を構成する各部材はポリ塩化ビニルで形成されている。なお、貯留皿35はポリ塩化ビニルに限らず、酸やアルカリに対する耐性に優れる素材で構成すればよい。また、ステンレス板材の表面にポリ塩化ビニルなどの酸やアルカリに対する耐性に優れる素材がコーティングされたものであってもよい。
【0032】
庫内7の底面29上において、ケース本体2の下壁4の中央より後側に貯留皿35が設置されている。具体的には、デッキパン14の後端下方かつ後循環通路17の下方から外れた位置に配して、貯留皿35を可能な限り底面29の後方に配しながら、蒸発器27の融解水が貯留皿35に入らないようにしている。また、貯留皿35は先に説明した循環ファン28の下方に設置されており、同ファン28が送出する冷気の送出方向は貯留皿35の上面に向かって指向している。
【0033】
図1に示すように、除菌用水生成器34と貯留皿35とは供給管48で接続されており、供給管48は、一端が除菌用水生成器34に接続される主給管49と、該主給管49から分岐される複数の分岐給管50とを備えている。各分岐給管50は、それぞれ異なるショーケース1に設けられた貯留皿35に接続されており、その先端は、貯留皿35の左側の側壁43に固定されたL字状の給水管51に連結される。分岐給管50のそれぞれには開閉弁52が設けられており、該開閉弁52を開閉することで貯留皿35に対する除菌用水の供給が制御される。
【0034】
各開閉弁52は、制御部53で開閉が制御されている。制御部53は、各開閉弁52を所定の時間開放して貯留皿35へ除菌用水を供給する供給動作と、開閉弁52を所定の時間閉塞して貯留皿35への除菌用水の供給を停止する停止動作とを繰り返して、貯留皿35に対する除菌用水の供給を行う。供給動作における開閉弁52の開放時間は、貯留皿35の容量を超える除菌用水を供給できる時間に設定される。このように、貯留皿35の容量を超える除菌用水を供給すると、容量を超えた除菌用水は排水部44からオーバーフローして貯留皿35から排出され、底面29上に散布される。そして、オーバーフローした除菌用水は、底面29の傾斜で排水孔30へ向かって流下し、同孔30から庫外に排出される。このとき、底面29および排水孔30は除菌用水で洗い流され、除菌用水に含まれる次亜塩素酸で除菌される。
【0035】
次亜塩素酸を含む除菌用水が流下することで底面29および排水孔30が腐食するのを防止するため、下壁4の上側面および排水孔30はポリ塩化ビニルで形成されている。なお、下壁4の上側面および排水孔30はポリ塩化ビニルに限らず、酸やアルカリに対する耐性に優れる素材で構成すればよい。また、ステンレス板材の表面にポリ塩化ビニルなどの酸やアルカリに対する耐性に優れる素材がコーティングされたものであってもよい。
【0036】
制御部53は、複数の開閉弁52のうちいずれかひとつのみが開状態となるように開閉弁52の制御を行って、供給動作と停止動作とを繰り返している。例えば、1台の除菌用水生成器34が6台のショーケース1の貯留皿35に除菌用水を供給しており、貯留皿35が空の状態から3分間の除菌用水の供給で、排水部44から除菌用水がオーバーフローする場合、供給動作の時間を5分とし、停止動作の時間を25分とする。これによれば、開閉弁52の供給動作が順に切換るように各開閉弁52の開閉を制御すれば、複数の開閉弁52のうちいずれかひとつのみが開状態となるように開閉弁52を制御できる。なお、停止動作の時間は、循環ファン28が駆動されている状態で、貯留皿35に貯留されている除菌用水が空になるまでの時間より短く設定することが好ましい。これにより、常時除菌用水の蒸散が継続され、冷気中および庫内7の除菌は継続される。
【0037】
以上のように、本実施例に係るショーケースの除菌装置においては、除菌用水生成器34から供給される除菌用水の一部を貯留皿35から排出させて、除菌用水が底面29および排水孔30へ流下されるように構成したので、底面29に排出された除菌用水で底面29に付着の菌等を洗浄および除菌し、さらに排水孔30に至った除菌用水で排水孔30に付着の菌等を洗浄および除菌することができる。また、除菌用水を貯留皿35から排出させて底面29に散布することで、冷気と除菌用水との接触機会を大幅に増やすことができるので、貯留皿35の除菌用水が蒸散することに加え、底面29に散布された除菌用水が蒸散する。これにより、より多くの除菌用水を蒸散させて、次亜塩素酸を含む水蒸気を冷気中に大量に放散することができるので、冷気中や庫内7の壁面等に付着の菌等を十分に除菌することができる。したがって、本実施例の除菌装置33によれば、冷気中および庫内の壁面等の除菌を十分に行いながら、菌が繁殖しやすいドレン水の流路の除菌を的確に行うことが可能となる。なお、排水孔30に装着のストレーナや下流側に接続された排水トラップなどがあれば、これらストレーナや排水トラップも除菌用水で洗浄および除菌できる。また、洗浄および除菌を行うことで排水孔30等における菌の繁殖に伴うスライムや異臭の発生を防止できる。
【0038】
下壁4の前側に排水孔30を配し、後側に貯留皿35を配した形態によれば、貯留皿35から排出され底面29を流下する除菌用水の流下距離を大きくできるので、冷気との接触機会をさらに増やして、除菌用水の蒸散をより促進させることができる。加えて、左右方向に長い皿状の貯留皿35の前後壁41・42の一方に、左右方向にわたって、複数個の排水部44を設けたので、底面29のさらに広い領域を洗浄および除菌することが可能となり、また、除菌用水の蒸散を促進させることもできる。
【0039】
貯留皿35に供給された除菌用水を貫通状の孔からなる排水部44からオーバーフローさせることにより、除菌用水の一部を貯留皿35から排出するようにしたので、貯留皿35が貯留できる量以上の除菌用水を除菌用水生成器34から供給するだけで、除菌用水の一部が貯留皿35から排出される。これにより、除菌用水を排出させるためのバルブ等の部材を別途設ける必要がない分、除菌装置33の構成を簡素化できる。
【0040】
底面29を形成するショーケース本体2の下壁4と、庫内7を区画する区画壁8との間の循環通路10に循環ファン28を設置し、循環ファン28から送出される冷気の送出方向を、貯留皿35の上面に向かって指向するようにしたので、貯留皿35に貯留された除菌用水に冷気を積極的に送出して、貯留皿35における除菌用水の蒸散をより促進させることができる。
【0041】
除菌用水生成器34を、ショーケース1の外部に配したので、庫内7の底面29に貯留皿35を設置し、貯留皿35とショーケース1の外部に設置した除菌用水生成器34とを接続するだけで既設のショーケース1に対して除菌装置33を低コストで後付けすることができる。また、除菌用水生成器34を内蔵することによるショーケース1の大型化を回避することができる。
【0042】
除菌用水生成器34で生成された除菌用水を貯留皿35へ供給する供給管48に、制御部53で開閉が制御され、貯留皿35への除菌用水の供給を制御する開閉弁52を設け、制御部53を、開閉弁52を所定の時間開放して貯留皿35へ除菌用水を供給する供給動作と、開閉弁52を所定の時間閉塞して貯留皿35への除菌用水の供給を停止する停止動作とを繰り返して、貯留皿35へ除菌用水を供給するように構成した。これによれば、底面29、および排水孔30の洗浄および除菌を周期的に行って、除菌用水の消費を抑えつつ、ドレン水の流路を衛生的な状態に維持できる。また、周期的により多くの除菌用水を蒸散させて冷気中や庫内7の壁面等の除菌を十分に行うことができる。なお、除菌用水の供給が停止されている間は、貯留皿35に貯留されている除菌用水が蒸散して次亜塩素酸を含む水蒸気が冷気中に放散されるので、冷気中および庫内7の壁面等の除菌は継続されている。
【0043】
供給管48は、一端が除菌用水生成器34に接続される主給管49と、該主給管49から分岐される複数の分岐給管50とを備え、各分岐給管50はそれぞれ異なるショーケース1に設けられた貯留皿35に接続されており、各分岐給管50に、貯留皿35への除菌用水の供給を制御する開閉弁52をそれぞれ設けるようにした。これによれば、複数台のショーケース1に対して除菌用水生成器34を1台設ければよいので、スーパーマーケット等のように複数台のショーケース1を設置する店舗における除菌装置33の設置コストを大幅に減少させることができる。
【0044】
制御部53を、複数の開閉弁52のうちいずれかひとつのみが開状態となるように開閉弁52の制御を行うように構成したので、1台の除菌用水生成器34で複数台のショーケース1に除菌用水を供給する場合でも、1台のショーケース1に必要な除菌用水を生成する能力を備える除菌用水生成器34を設置すればよいので、除菌用水の生成能力を抑えることができる分、除菌用水生成器34のイニシャルコストを低減できる。
【0045】
留皿35は、複数に分割して左右に並べるように配することができる。除菌用水生成器34は、電解式以外に、水道水に塩素を含んだ液体、例えば塩素系漂白剤を自動的に混入する形態の除菌用水生成器であってもよい。除菌装置33を1台のショーケース1に対して設置する場合には、ショーケース1の外部に除菌用水生成器34を設ける必要はなく、機械室23の内部に除菌用水生成器34を設けることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 貯蔵庫(ショーケース)
2 貯蔵庫本体(ケース本体)
4 下壁
7 庫内
8 区画壁
9 陳列室
10 循環通路
28 循環ファン
29 底面
30 排水孔
34 除菌用水生成器
35 貯留皿
41 前壁
42 後壁
44 排水部
48 供給管
49 主給管
50 分岐給管
52 開閉弁
53 制御部
図1
図2
図3
図4