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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】熱交換装置及び改質器
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/08 20060101AFI20241002BHJP
   F28D 9/00 20060101ALI20241002BHJP
   F28F 9/00 20060101ALI20241002BHJP
   F28F 21/04 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
F28F3/08 301Z
F28D9/00
F28F9/00 321
F28F21/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021016745
(22)【出願日】2021-02-04
(65)【公開番号】P2022119538
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】古賀 祥啓
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-174013(JP,A)
【文献】特開2017-170384(JP,A)
【文献】特開2016-138554(JP,A)
【文献】国際公開第2009/118814(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/00-99/00
F28D 1/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の第1流通路となる多数のセルが隔壁を隔てて長手方向に並設された第1のハニカム構造体と、流体の第2流通路となる多数のセルが隔壁を隔てて長手方向に並設された第2のハニカム構造体とが、前記第1流通路と前記第2流通路とが交差するように組み合わされてなる熱交換器と、
前記熱交換器を収容する金属ケーシングと、
前記熱交換器と前記金属ケーシングとの間に配設される保持マットと、からなる熱交換装置であって、
前記熱交換器は、両端面に前記第1流通路が開口し、外周面に前記第2流通路が開口する略円柱形状であり、
前記保持マットは、前記熱交換器の前記外周面に沿って、前記外周面に開口する前記第2流通路の一部を覆わないように配設されており、
前記熱交換器の前記外周面のうち、前記第1のハニカム構造体の表面の全部は、コート層で覆われており、
前記熱交換器の前記外周面のうち、前記第2のハニカム構造体の表面は、前記第2流通路が前記保持マットに覆われておらず前記熱交換器の前記外周面に開口している開口領域と、前記開口領域に対して前記熱交換器の前記両端面側にそれぞれ設けられ、前記第2流通路が前記保持マットにより覆われた封口領域とを有し、
前記開口領域と前記封口領域の合計面積に対する、前記開口領域の面積の占める割合は、72~93%である、ことを特徴とする熱交換装置。
【請求項2】
前記保持マットの厚みが、3~5mmである、請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項3】
前記第1のハニカム構造体の両側に前記第2のハニカム構造体が配置されている、請求項1又は2に記載の熱交換装置。
【請求項4】
前記第1のハニカム構造体を構成するセルの隔壁に触媒が担持されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱交換装置。
【請求項5】
前記第1流通路の開口面積の合計に対する、前記第2流通路の開口面積の合計の割合(第2流通路の開口面積の合計/第1流通路の開口面積の合計)が、1.25~2である、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱交換装置。
【請求項6】
前記第1のハニカム構造体及び前記第2のハニカム構造体は、いずれも、炭化ケイ素とシリコンとからなる、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱交換装置。
【請求項7】
前記第1のハニカム構造体及び前記第2のハニカム構造体は、それぞれ、セラミック製のハニカムセグメントが複数個、接着層を介して結合されてなる、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱交換装置。
【請求項8】
前記接着層は、炭化ケイ素とシリコンとからなる請求項7に記載の熱交換装置。
【請求項9】
前記熱交換器の体積は、1.2~3.2リットルである請求項1~8のいずれか1項に記載の熱交換装置。
【請求項10】
前記熱交換器は、前記第1のハニカム構造体と、前記第2のハニカム構造体とが、それぞれ交互に配置されてなり、3層の前記第1のハニカム構造体と4層の前記第2のハニカム構造体とを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の熱交換装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の熱交換装置を備えた改質器であって、
前記第2のハニカム構造体には、内燃機関より排出され、主排気管を流通する排ガスが通過するように構成され、前記第1のハニカム構造体には、隔壁に改質用の触媒が担持され、前記主排気管より分岐した排ガス再循環配管に流入した排ガスが通過するように構成されていることを特徴とする改質器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換装置及び改質器に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の燃料を改質して燃費を改善する技術として、特許文献1には、以下のような技術が開示されている。すなわち、内燃機関の排気通路から排出ガスの一部をEGR(排ガス再循環)ガスとして吸気通路へ還流させ、このEGR通路の途中に、改質用燃料を噴射する改質用燃料噴射弁と改質用燃料を改質する燃料改質触媒とを配置する。そして、改質用燃料噴射弁により噴射された改質用燃料とEGRガス中の水分(水蒸気)等を燃料改質触媒で改質反応させて水素(H)や一酸化炭素(CO)を生成させることで、改質用燃料を改質して燃焼性の高い改質ガスを生成し、その改質ガスを内燃機関の吸気通路に供給している。また、燃料改質触媒の温度と改質ガス量とに基づいて設定された制御領域内となるように改質用燃料の噴射量を制御することで、燃料改質触媒の劣化を抑制して改質性能の向上を図っている。
【0003】
上記燃料改質触媒では、水蒸気と炭化水素とが改質器で反応する際に、排ガスの熱を奪うため、燃料改質触媒を、排気管を流れる排ガスと熱交換することができる構成とし、排ガスから熱を供給し、改質反応を促進させている。
【0004】
特許文献1には、上記燃料改質触媒の具体的な材料や構成等は記載されていないが、改質器での反応を促進させるためには、600℃以上の温度が必要となり、燃料改質触媒を構成する材料として600℃以上の温度に耐え、かつ、熱交換機能を有する改質触媒が必要となる。
【0005】
特許文献2には、流路を有する第1の層と第2の層とを互いに交差する方向に積み重ね、焼成したモノリシックセラミック構造を有する熱交換器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-166591号公報
【文献】特開平7-151478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された改質方法では、排ガス環境から受ける圧力が高いため、熱交換器を高いキャニング圧で保持する必要があった。引用文献2に記載された熱交換器を引用文献1に記載された方法に採用するにあたっては、設置場所や配管の取り回し等の関係から、角柱形状ではなく、円柱形状の熱交換器が求められることがあった。しかし、引用文献2に記載された熱交換器を円柱形状に変形させて引用文献1に記載された方法に採用すると、高いキャニング圧によって熱交換器が破損してしまうという問題や、熱交換器が破損しないようなキャニング圧に設定した場合には、排ガスの圧力により熱交換器の位置がずれてしまうという問題が生じた。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされた発明であり、破損及び位置ズレが起こりにくい熱交換装置及び該熱交換装置を備えた改質器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の熱交換装置は、流体の第1流通路となる多数のセルが隔壁を隔てて長手方向に並設された第1のハニカム構造体と、流体の第2流通路となる多数のセルが隔壁を隔てて長手方向に並設された第2のハニカム構造体とが、上記第1流通路と上記第2流通路とが交差するように組み合わされてなる熱交換器と、上記熱交換器を収容する金属ケーシングと、上記熱交換器と上記金属ケーシングとの間に配設される保持マットと、からなる熱交換装置であって、上記熱交換器は、両端面に上記第1流通路が開口し、外周面に上記第2流通路が開口する略円柱形状であり、上記保持マットは、上記熱交換器の上記外周面に沿って、上記外周面に開口する上記第2流通路の一部を覆わないように配設されており、上記熱交換器の上記外周面のうち、上記第1のハニカム構造体の表面の全部は、コート層で覆われており、上記熱交換器の上記外周面のうち、上記第2のハニカム構造体の表面は、上記第2流通路が上記保持マットに覆われておらず上記熱交換器の上記外周面に開口している開口領域と、上記開口領域に対して上記熱交換器の上記両端面側にそれぞれ設けられ、上記第2流通路が上記保持マットにより覆われた封口領域とを有し、上記開口領域と上記封口領域の合計面積に対する、上記開口領域の面積の占める割合は、72~93%である、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の熱交換装置によれば、熱交換器が、上記第1流通路と上記第2流通路とが交差するように組み合わされているため、熱交換性能が高くなるとともに、熱交換を行う2種類の流体を異なる方向からスムーズに流通させることができる。
【0011】
さらに、本発明の熱交換装置は、熱交換器の外周面のうち、第1のハニカム構造体の表面の全部がコート層で覆われており、第2のハニカム構造体の表面のうちの一部が、第2流通路が保持マットにより覆われた封口領域となっている。
コート層で覆われた部分は、コート層で覆われていない部分と比べて機械的強度が高い。キャニングの圧力を加える部位として、機械的強度が高いコート層で覆われた部分と、第2のハニカム構造体の両端側に設けた封口領域を利用している。
そのため、キャニング圧を高めた場合であっても、熱交換器が破損しにくく、ズレを防ぐことができる。
【0012】
さらに、本発明の熱交換装置では、第2流通路の一部が、保持マットにより覆われている。保持マットにより覆われた第2流通路では、流体の流通が阻害されるため、流体の流通による温度変化が緩慢となり、熱を貯めるマス(熱容量)として機能する。そのため、第2のハニカム構造体に流入する排ガスの温度が低下した場合であっても高温を維持することができ、入口部での改質性を高めることができる。
【0013】
本発明の熱交換装置では、開口領域と封口領域の合計面積に対する開口領域の面積の占める割合が、72~93%となっている。そのため、平常時に第1のハニカム構造体との熱交換に用いられる第2流通路(開口領域)の割合と、排ガスの温度が低下した際に熱容量として機能する第2流通路(封口領域)の割合のバランスが良好であり、平常時の熱交換効率を充分に確保しつつ、排ガスの温度が低下した場合における入口部での改質性を高めることができる。
【0014】
本発明の熱交換装置では、上記保持マットの厚みが、3~5mmであることが望ましい。
【0015】
本発明の熱交換装置において、上記保持マットの厚みが3~5mmであると、熱交換装置の体積をそれほど大きくすることなく、熱交換器を安定的に保持することができる。
上記保持マットの厚みが3mm未満であると、熱交換器を安定的に保持することができず、保持マットが破損してしまうことがある。一方、上記保持マットの厚みが5mmを超える場合、熱交換装置の体積が大きくなりすぎてしまう場合がある。
【0016】
本発明の熱交換装置では、上記第1のハニカム構造体の両側に上記第2のハニカム構造体が配置されていることが望ましい。
【0017】
本発明の熱交換装置において、上記第1のハニカム構造体の両側に上記第2のハニカム構造体が配置されていると、両側の第2のハニカム構造体から熱を伝搬させることができ、上記第1のハニカム構造体に良好に熱を供給することができる。
【0018】
本発明の熱交換装置では、上記第1のハニカム構造体を構成するセルの隔壁に触媒が担持されていることが望ましい。
【0019】
本発明の熱交換装置において、上記第1のハニカム構造体を構成するセルの隔壁に触媒が担持されていると、上記第1のハニカム構造体の内部で改質反応を行うことができ、上記第2のハニカム構造体に流入した排ガスから熱の供給を受けることにより、改質触媒としての機能を充分に発揮させることができる。
【0020】
本発明の熱交換装置では、上記第1流通路の開口面積の合計に対する、上記第2流通路の開口面積の合計の割合(第2流通路の開口面積の合計/第1流通路の開口面積の合計)が、1.25~2であることが望ましい。
【0021】
本発明の熱交換装置において、上記第1流通路の開口面積の合計に対する、上記第2流通路の開口面積の合計の割合(第2流通路の開口面積の合計/第1流通路の開口面積の合計)が、1.25~2であると、第1のハニカム構造体の内部で生じる改質反応と、第2のハニカム構造体から第1のハニカム構造体に伝搬する熱量のバランスが良好となる。
上記割合が1.25未満であると、第2のハニカム構造体から第1のハニカム構造体に伝搬する熱量が相対的に減少して、改質反応が起こりにくくなる場合がある。一方、上記割合が2を超える場合には、第2流通路の開口面積が大きいことを意味し、相対的に封口領域が小さくなる。そのため、キャニング圧を充分にかけることができなくなり、使用中に熱交換器がずれることがある。
【0022】
本発明の熱交換装置では、上記第1のハニカム構造体及び上記第2のハニカム構造体は、いずれも、炭化ケイ素とシリコンとからなることが望ましい。
【0023】
本発明の熱交換装置において、上記第1のハニカム構造体及び上記第2のハニカム構造体が、いずれも、炭化ケイ素とシリコンとからなると、熱伝導性、耐熱性に優れるため、良好な熱交換機能を有し、大きな温度差が発生した場合であっても、破壊等がさらに発生しにくい。さらに、改質されたガスに含まれる水素に対して腐食しにくい。
【0024】
本発明の熱交換装置において、上記第1のハニカム構造体及び上記第2のハニカム構造体は、それぞれ、セラミック製のハニカムセグメントが複数個、接着層を介して結合されてなることが望ましい。
【0025】
本発明の熱交換装置において、第1のハニカム構造体及び第2のハニカム構造体が、それぞれ、セラミック製のハニカムセグメントが複数個、接着層を介して結合した構造であると、1個のハニカムセグメントの大きさを小さくすることができ、かつ、接着層が緩衝材となるため、熱交換器全体に大きな温度差が発生した場合であっても、破損等が発生しにくい。
【0026】
本発明の熱交換装置では、上記接着層は、炭化ケイ素とシリコンとからなることが望ましい。
【0027】
本発明の熱交換装置において、接着層が炭化ケイ素とシリコンとからなると、熱伝導性に優れ、第1のハニカム構造体と第2のハニカム構造体との間の熱交換性能をさらに向上させることができる。
【0028】
本発明の熱交換装置では、上記熱交換器の体積は、1.2~3.2リットルであることが望ましい。
【0029】
本発明の熱交換装置において、上記熱交換器の体積が、1.2~3.2リットルであると、熱交換器が適切な体積を有しているので、車両等に搭載し易く、熱交換装置としての効果を充分に発揮することができる。
上記熱交換器の体積が、1.2リットル未満であると、熱交換器の体積が小さすぎ、充分な量の触媒を担持することが難しくなり、一方、熱交換器の体積が、3.2リットルを超えると、熱交換装置の容量が大きくなるため、車両に搭載することが難しくなる。
【0030】
本発明の熱交換装置では、上記熱交換器は、上記第1のハニカム構造体と、上記第2のハニカム構造体とが、それぞれ交互に配置されてなり、3層の上記第1のハニカム構造体と、4層の上記第2のハニカム構造体とを含むことが望ましい。
【0031】
本発明の熱交換装置において、上記熱交換器が、第1のハニカム構造体と第2のハニカム構造体とがそれぞれ交互に配置されてなり、3層の第1のハニカム構造体と、4層の第2のハニカム構造体を含むと、第2のハニカム構造体と第1のハニカム構造体との接触面積が大きく、効率よく熱交換を行うことができる。
【0032】
本発明の改質器は、上記構成の熱交換装置を備えた改質器であって、上記第2のハニカム構造体には、内燃機関より排出され、主排気管を流通する排ガスが通過するように構成され、上記第1のハニカム構造体には、隔壁に改質用の触媒が担持され、上記主排気管より分岐した排ガス再循環配管に流入した排ガスが通過するように構成されていることを特徴とする。
【0033】
本発明の改質器が上記のように構成されていると、第2のハニカム構造体から第1のハニカム構造体に排ガスの熱を良好に供給することができ、内燃機関の燃料を改質して燃費を改善する改質器としての性能を良好に発揮させることができる。
また、本発明の改質器において、熱交換器と金属ケーシングの間には保持マットが配設されているため、熱交換器が高温になっても、コート層に破損が発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る熱交換装置を構成する熱交換器を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示した熱交換器のII-II線断面図である。
図3図3は、図1に示す熱交換器を金属ケーシングに収納する際に用いられる保持マットを模式的に示した斜視図である。
図4図4は、図3に示す保持マットを図1に示す熱交換器に巻き付ける巻き付け方法を模式的に示す説明図である。
図5図5は、本発明の第1の実施形態に係る熱交換装置の一例を模式的に示す斜視図である。
図6図6は、図1に示した熱交換器を製造するためのハニカム集合体の一例を模式的に示す斜視図である。
図7図7は、本発明の第2の実施形態に係る熱交換装置を構成する熱交換器を模式的に示す斜視図である。
図8図8は、図7に示した熱交換器のVIII-VIII線断面図である。
図9図9は、本発明の改質器を備えた燃料改質ガソリンエンジンシステムを模式的に示す説明図である。
【0035】
(発明の詳細な説明)
本発明の熱交換装置について説明する。
本発明の熱交換装置は、流体の第1流通路となる多数のセルが隔壁を隔てて長手方向に並設された第1のハニカム構造体と、流体の第2流通路となる多数のセルが隔壁を隔てて長手方向に並設された第2のハニカム構造体とが、上記第1流通路と上記第2流通路とが交差するように組み合わされてなる熱交換器と、上記熱交換器を収容する金属ケーシングと、上記熱交換器と上記金属ケーシングとの間に配設される保持マットと、からなる熱交換装置であって、上記熱交換器は、両端面に上記第1流通路が開口し、外周面に上記第2流通路が開口する略円柱形状であり、上記保持マットは、上記熱交換器の上記外周面に沿って、上記外周面に開口する上記第2流通路の一部を覆わないように配設されており、上記熱交換器の上記外周面のうち、上記第1のハニカム構造体の表面の全部は、コート層で覆われており、上記熱交換器の上記外周面のうち、上記第2のハニカム構造体の表面は、上記第2流通路が上記保持マットに覆われておらず上記熱交換器の上記外周面に開口している開口領域と、上記開口領域に対して上記熱交換器の上記両端面側にそれぞれ設けられ、上記第2流通路が上記保持マットにより覆われた封口領域とを有し、上記開口領域と上記封口領域の合計面積に対する、上記開口領域の面積の占める割合は、72~93%である、ことを特徴とする。
【0036】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る熱交換装置を構成する熱交換器を模式的に示す斜視図であり、図2は、図1に示した熱交換器のII-II線断面図である。
図1及び図2に示すように、熱交換器100は、流体の第1流通路となる多数の第1のセル13が第1の隔壁12を隔てて長手方向に併設された第1のハニカム構造体10と、流体の第2流通路となる多数の第2のセル23が第2の隔壁22を隔てて長手方向に併設された第2のハニカム構造体20とが、第1流通路(第1のセル13)と第2流通路(第2のセル23)とが交差するように組み合わされてなる略円柱形状の熱交換器100である。
なお、第1のハニカム構造体と第2のハニカム構造体とを特に区別しない場合、単にハニカム構造体ともいう。ハニカム構造体と同様に、第1のセルと第2のセル、及び、第1の隔壁と第2の隔壁とを特に区別しない場合、単にセル、及び、隔壁ともいう。
【0037】
図1及び図2において、第1のハニカム構造体10を構成する第1のセル13の延びる方向は、上下方向(図1及び図2中、矢印zで示す方向)である。第2のハニカム構造体20を構成する第2のセル23の延びる方向は、水平方向(図1中、矢印yで示す方向)である。第1のハニカム構造体10と第2のハニカム構造体20において、互いの流通路は交差しているので、2種類の流体(特にガス)を流通させ易く、熱交換を効率的に行うことができる。
【0038】
図1及び図2に示す熱交換器100は、第1のハニカム構造体10と第2のハニカム構造体20とが、接着層19を介してそれぞれ交互に配置されており、3層の第1のハニカム構造体10と4層の第2のハニカム構造体20とを含んでいる。なお、図1及び図2に示す熱交換器100では、1個の第1のハニカムセグメント11が1層の第1のハニカム構造体10を構成しているが、2個以上の第1のハニカムセグメント11が接着層を介して接着されることにより1層の第1のハニカム構造体10を構成していてもよい。従って、本発明では、第2のハニカム構造体20に挟まれた1個又は2個以上の第1のハニカムセグメント11の集合体を1層の第1のハニカム構造体10と数えることとする。なお、第1のハニカムセグメントは、第1のハニカム構造体と同じ構造を有する部材である。
【0039】
本発明の熱交換装置において、熱交換の対象となる流体は、水、エチレングリコール等の有機溶剤、液化ガス等の液体であっても、気体(ガス)であってもよいが、ガスが望ましく、排気ガスがより望ましい。
なお、本明細書において、「本発明の熱交換装置」と記載している場合は、上記している第1の実施形態に係る熱交換装置、後述する第2の実施形態に係る熱交換装置等、本発明の全ての実施形態に係る熱交換装置を構成する部材、上記熱交換装置に関連する部材等に共通する特性、条件等を記載しているものとする。
【0040】
図1及び図2に示す熱交換器100では、1層の第2のハニカム構造体20は、2個の第2のハニカムセグメント21が接着層18を介して接着されることにより構成されている。
第2のハニカム構造体20の数え方は、第1のハニカム構造体10の数え方と同様であり、第1のハニカム構造体10に挟まれた1個又は2個以上の第2のハニカムセグメント21の集合体を1層の第2のハニカム構造体20ということとする。ただし、第2のハニカム構造体20は、最も外側に位置する場合もあり、その場合は、最も外側の1個又は2個以上の第2のハニカムセグメント21の集合体も1層の第2のハニカム構造体20である。
なお、第1のハニカムセグメントと第2のハニカムセグメントとを特に区別しない場合、単にハニカムセグメントともいう。
【0041】
本発明の熱交換装置を構成する第1のハニカム構造体及び第2のハニカム構造体は、それぞれ、1個のセラミック製のハニカムセグメントで構成されていてもよいし、セラミック製のハニカムセグメントが複数個、接着層を介して結合されていてもよい。
【0042】
第1のハニカム構造体及び第2のハニカム構造体を構成するハニカムセグメントの数は、それぞれ同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0043】
本発明の熱交換装置においては、第1のハニカム構造体の両側に第2のハニカム構造体が配置されていることが望ましい。
第1のハニカム構造体の両側に第2のハニカム構造体が配置されていると、両側の第2のハニカム構造体から熱を伝搬させることができ、第1のハニカム構造体に良好に熱を供給することができる。
【0044】
本発明の熱交換装置の第一の実施形態では、熱交換器は、第1のハニカム構造体と第2のハニカム構造体とがそれぞれ交互に配置されてなり、3層の第1のハニカム構造体と4層の第2のハニカム構造体を含むことが望ましい。
熱交換器が、第1のハニカム構造体と第2のハニカム構造体とがそれぞれ交互に配置されており、3層の第1のハニカム構造体と、4層の第2のハニカム構造体を含むと、第2のハニカム構造体と第1のハニカム構造体との接触面積が大きく、効率よく熱交換を行うことができる。
【0045】
図1及び図2に示す略円柱形状の熱交換器100では、両端面に第1のハニカム構造体10の第1流通路となる第1のセル13が開口し、外周面に第2のハニカム構造体20の第2流通路となる第2のセル23が開口している。
外周面の一部はコート層32で被覆されている。コート層32は、外周面を構成する第1のハニカム構造体10の表面の全部を覆うコート層32aと、外周面を構成する第2のハニカム構造体20の表面の一部を覆うコート層32bと、を有している。
コート層32で覆われた部分は、コート層で覆われていない部分と比べて機械的強度が高い。そのため、コート層32で覆われた部分を、キャニングの圧力を加える部位として利用することができる。
【0046】
また、外周面を構成する第1のハニカム構造体10の表面の全部は、コート層32aで被覆されているため、第1流通路となる第1のセル13を流れる流体と、第2流通路となる第2のセル23を流れる流体とが混ざることを防止することができる。
なお、外周面を構成する第2のハニカム構造体20の表面は、その一部がコート層32で覆われていてもよく、覆われていなくてもよい。
【0047】
外周面を構成する第1のハニカム構造体10の表面の全部はコート層32aで被覆されているため、第1流通路となる第1のセル13を流れる流体と、第2流通路となる第2のセル23を流れる流体とが混ざることを防止することができる。
【0048】
コート層の厚さは特に限定されないが、0.1~0.5mmであることが望ましい。
コート層の厚さが0.1mm未満であると、コート層が薄すぎるため、キャニング時の圧力でコート層が破損する場合がある。一方、コート層の厚さが0.5mmを超えると、コート層が厚すぎて、コート層の最表面とハニカム構造体と接する部分とでの温度差によって破損が発生する場合がある。
【0049】
本発明の熱交換装置においてハニカム構造体又はこれらの構成部材であるハニカムセグメントの材料は、特に限定されるものではなく、例えば、コージェライト、アルミナ、シリカ、ムライト等の酸化物系セラミック、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物系セラミック、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物系セラミック等や、これらのセラミックと金属との複合材料等が挙げられる。これらのなかでは、炭化ケイ素の複合材料が望ましく、シリコンと炭化ケイ素とからなる複合材料が特に望ましい。
【0050】
シリコンと炭化ケイ素とからなる複合材料の具体的な構成は特に限定されるものではないが、炭化ケイ素粒子の隙間にシリコンが入り込み、独立した炭化ケイ素粒子が周囲に存在するシリコンにより接着された態様のシリコンと炭化ケイ素の複合材料が望ましい。
このような態様のシリコンと炭化ケイ素とからなる複合材料は、後述するように、ハニカム成形体の脱脂体に溶融状態のシリコンを接触させることにより製造することができる。
開気孔を有する多孔質の炭化ケイ素焼結体の開気孔にシリコンが充填されたものであってもよい。
【0051】
溶融状態のシリコンと炭化ケイ素とを接触させる際、複数のハニカム成形体の脱脂体が炭化ケイ素を含む接着層となる層を介してお互いに密着した状態で溶融シリコンと接触させることにより、炭化ケイ素とシリコンとからなる接着層も形成され、複数のハニカム構造体(又はハニカムセグメント)が炭化ケイ素とシリコンとからなる接着層で結合された熱交換器とすることができる。
【0052】
ハニカム構造体(又はハニカムセグメント)同士を結合させる接着層の材料は、特に限定されるものではないが、ハニカム構造体(又はハニカムセグメント)と同様、炭化ケイ素粒子の隙間にシリコンが入り込んだ状態の複合材料が望ましい。このような複合材料は、後述するように、炭化ケイ素を含む原料ペーストを、ハニカム成形体同士を接着させるために側壁に塗布し、ハニカム成形体同士を接着させた後乾燥させ、これらを溶融状態のシリコンと接触させることにより作製することができる。
【0053】
ハニカム構造体(又はハニカムセグメント)同士を結合させる接着層の厚さは、特に限定されるものではないが、0.5~2.0mmであることが望ましい。
【0054】
コート層の材料は、特に限定されるものではないが、ハニカム構造体(又はハニカムセグメント)及び接着層と同様、炭化ケイ素粒子の隙間にシリコンが入り込んだ状態の複合材料が望ましい。
このような複合材料は、後述するように、炭化ケイ素を含む原料ペーストを円柱状のハニカム乾燥体の外周面のうち、第1のハニカム構造体となる部分に塗布した後乾燥させ、これらを溶融状態のシリコンと接触させることにより作製することができる。
【0055】
本発明の熱交換装置において、第1のハニカム構造体及び第2のハニカム構造体の隔壁の厚さは、それぞれ、均一であることが望ましい。具体的には、触媒を担持する第1のハニカム構造体の隔壁の厚さは、0.08~0.30mmであることが望ましく、0.10~0.20mmであることがより望ましい。第1のハニカム構造体の隔壁の厚さが薄いので、表面積が大きくなり、より多量の触媒を担持することが可能となる。
【0056】
第2のハニカム構造体の隔壁の厚さは、0.10~0.40mmであることが望ましく、0.15~0.30mmであることがより望ましい。第2のハニカム構造体の隔壁の厚さが厚いので、熱容量が大きくなり、多量の熱を第1のハニカム構造体に供給することができる。
【0057】
第1のハニカム構造体及び第2のハニカム構造体の隔壁の厚さが上記のように設定されていると、より多量に触媒が担持可能となり、改質効率が高くなるとともに、第2のハニカム構造体から第1のハニカム構造体により多量の熱を供給することができるため、触媒の活性をより高くすることができる。
【0058】
本発明の熱交換装置において、ハニカム構造体を構成するセルの形状としては、例えば、端面が矩形状であり、全体が四角柱状であることが望ましいが、三角柱状や六角柱状であってもよい。
セルの形状はそれぞれ異なっていてもよいが、全て同じであることが望ましい。すなわち、ハニカム構造体の長手方向に垂直な断面において、隔壁に囲まれたセルのサイズが同じであることが望ましい。容易に製造することができるからである。
【0059】
本発明の熱交換装置において、第1のハニカム構造体のセルの長手方向に垂直な断面におけるセル密度(第1のセル密度)は、46~124個/cm(300~800個/inch)であることが望ましく、62~93個/cm(400~600個/inch)がより望ましい。第1のセル密度が上記範囲であると、第1のハニカム構造体の表面積が大きくなり、多量の触媒を担持することができるからである。
また、第2のハニカム構造体のセルの長手方向に垂直な断面におけるセル密度(第2のセル密度)は、16~78個/cm(100~500個/inch)であることが望ましく、31~62個/cm(200~400個/inch)であることがより望ましい。第2のセル密度が上記範囲であると、第2のハニカム構造体の熱容量が大きくなり、多量の熱を第1のハニカム構造体に供給することができる。
【0060】
本発明の熱交換装置では、第1流通路の開口面積の合計に対する、第2流通路の開口面積の合計の割合(第2流通路の開口面積の合計/第1流通路の開口面積の合計)が、1.25~2であることが望ましい。
第1流通路の開口面積の合計に対する、第2流通路の開口面積の合計の割合(第2流通路の開口面積の合計/第1流通路の開口面積の合計)が、1.25~2であると、第1のハニカム構造体の内部で生じる改質反応と、第2のハニカム構造体から第1のハニカム構造体に伝搬する熱量のバランスが良好となる。
上記割合が1.25未満であると、第2のハニカム構造体から第1のハニカム構造体に伝搬する熱量が相対的に減少して、改質反応が起こりにくくなる場合がある。一方、上記割合が2を超える場合には、第2流通路の開口面積が大きいことを意味し、相対的に封口領域が小さくなる。そのため、キャニング圧を充分にかけることができなくなり、使用中に熱交換器がずれることがある。
【0061】
本発明の熱交換装置において、第1のハニカム構造体を構成する第1のセルには、触媒が担持されていることが望ましく、燃料改質触媒が担持されていることがより望ましい。
触媒としては、Co、Ni、Rh、Pt、Pdが望ましく、Rhがより望ましい。
触媒は、担体に担持された状態で、第1のハニカム構造体を構成する第1のセルに担持されていてもよい。担体に担持された触媒としては、Rh/ZrO、Rh/CoOが望ましい。担体は、シリカ、アルミナ等の他のセラミックであってもよい。
【0062】
本発明の第1の実施形態に係る熱交換装置では、熱交換器の体積は、1.2~3.2リットルであることが望ましい。
熱交換器の体積が、1.2~3.2リットルであると、熱交換器が適切な体積を有しているので、車両等に搭載し易く、熱交換装置としての効果を充分に発揮することができる。
熱交換器の体積が、1.2リットル未満であると、熱交換器の体積が小さすぎ、充分な量の触媒を担持することが難しくなり、一方、熱交換器の体積が、3.2リットルを超えると、熱交換装置の容量が大きくなるため、車両に搭載することが難しくなる。
【0063】
続いて、本発明の熱交換装置を構成する金属ケーシングについて説明する。
金属ケーシングは、熱交換器を収容するための金属製の容器であり、その形状は、熱交換器の形状に応じて適宜選択することができる。
ケーシングは、例えばSUS等の金属からなる。
【0064】
金属ケーシングの形状は、特に限定されないが、熱交換器の外周面の開口領域を覆わないよう、開口部が設けられていることが望ましい。
【0065】
続いて、本発明の熱交換装置を構成する保持マットについて説明する。
保持マットは、セラミック繊維からなり、熱交換器と金属ケーシングとの間に配設される。
【0066】
保持マットとしては、ニードルパンチング処理されたニードルマットや、湿式による抄造法で得られたマット等を使用することができる。
【0067】
保持マットを構成するセラミック繊維は、平均繊維径が3~50μmであることが望ましく、平均繊維長が100~100000μmであることがより望ましい。
また、保持マットを構成するセラミック繊維は、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ-シリカ繊維、ムライト繊維、ガラス繊維及び生体溶解性繊維から選択される少なくとも1種を含むことが望ましい。
保持マットを構成するセラミック繊維が上記形状及び材質であると、保持マットの面圧を充分に向上させることができ、改質器において熱交換器を安定的に保持することができる。
【0068】
また、保持マットには、有機バインダや無機バインダが含まれていてもよい。
有機バインダとしては、ゴム系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
無機バインダとしては、アルミナゾル、シリカゾル、エアロゲル、ヒュームドシリカ、チタン粒子等が挙げられる。
【0069】
保持マットの厚みは、3~5mmであることが望ましい。
保持マットの厚みが3~5mmであると、熱交換装置の体積をそれほど大きくすることなく、熱交換器を安定的に保持することができる。
保持マットの厚みが3mm未満であると、熱交換器を安定的に保持することができず、保持マットが破損してしまうことがある。一方、保持マットの厚みが5mmを超える場合、熱交換装置の体積が大きくなりすぎてしまう場合がある。
【0070】
図3は、図1に示す熱交換器を金属ケーシングに収納する際に用いられる保持マットを模式的に示した斜視図であり、図4は、図3に示す保持マットを、図1に示す熱交換器に巻き付ける巻き付け方法を模式的に示す説明図であり、図5は、本発明の第1の実施形態に係る熱交換装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【0071】
図3に示すように、保持マット50は、マット51の両端部に凸部51a及び凹部51bを有するとともに、熱交換器100に巻き付けた際に流体入口及び流体出口である第2のセル23が露出するように、マット開口部51c、51d、51e、51f、51g、51hが形成されている。
図4に示すように、熱交換器100に保持マット50を巻き付けると、マット開口部51c、51d、51e、51f、51g、51hを介して流体入口及び流体出口である第2のセル23が露出する。
【0072】
図4に示すように、保持マット50は、熱交換器100の外周面のうち、第1のハニカム構造体10の表面の全てを覆っている。一方、熱交換器100の外周面を構成する第2のハニカム構造体20の表面は、第2流通路が保持マット50により覆われておらず、熱交換器100の外周面に開口している開口領域A1(図4中、一点鎖線で示す領域)と、開口領域A1に対して熱交換器100の両端面側にそれぞれ設けられ、第2流通路が保持マット50により覆われた封口領域A2、A3(図4中、破線で示す領域)を有している。
なお、図4においては、保持マット50の表面に開口領域A1、封口領域A2、A3を図示しているが、これは、保持マット50を熱交換器100に巻きつけた際に、開口領域A1、封口領域A2、A3となる領域の位置を示すものであり、実際の開口領域A1、封口領域A2、A3は、熱交換器100の外周面に存在する。
【0073】
図4に示すように保持マット50を熱交換器100に巻き付けて金属ケーシング60に収容すると、図5に示す熱交換装置70が得られる。
図5に示す熱交換装置70は、熱交換器100と、熱交換器100を収容する金属ケーシング60と、熱交換器100と金属ケーシング60との間に配設される保持マット50と、からなる。
金属ケーシング60の表面には、保持マット50が有する開口部51c、51d、51e、51f、51g、51hに対応する開口部60c、60d、60e、60f、60g、60hが形成されている(ただし、開口部60d、60eは図示していない)。
従って、熱交換装置70においても、開口領域A1は金属ケーシング60に覆われておらず露出している。そのため、図4で説明した、開口領域A1、封口領域A2、A3の面積は、熱交換装置70においても維持される。
【0074】
本発明の熱交換装置において、開口領域A1と、封口領域A2、A3の合計面積に対する、開口領域A1の面積の占める割合は、72~93%であり、72~83%であることが望ましい。
上記割合が72~93%であると、平常時に第1のハニカム構造体との熱交換に用いられる第2流通路(開口領域)の割合と、排ガスの温度が低下した際に熱容量として機能する第2流通路(封口領域)の割合のバランスが良好であり、平常時の熱交換効率を充分に確保しつつ、排ガスの温度が低下した場合における入口部での改質性を高めることができる。
上記割合が72~83%であると、平常時に第1のハニカム構造体との熱交換に用いられる第2流通路(開口領域)の割合と、排ガスの温度が低下した際に熱容量として機能する第2流通路(封口領域)の割合のバランスが特に良好であり、平常時の熱交換効率をさらに確保しつつ、排ガスの温度が低下した場合における入口部での改質性をさらに高めることができる。
【0075】
上記割合が72%未満であると、平常時に第1のハニカム構造体との熱交換に用いられる第2流通路(開口領域)の割合が少なすぎて、平常時の熱交換効率が低下してしまう。一方、上記割合が93%を超えると、排ガスの温度が低下した際に熱容量として機能する第2流通路(封口領域)の割合が少なすぎて、排ガスの温度が低下した際に入口部での改質性が低下する。さらに、キャニングの際に第2のハニカム構造体を保持する面積が狭すぎて、熱交換器が破損してしまうことがある。
なお、封口領域は、開口領域に対して熱交換器の両端面側にそれぞれ設けられる領域である。従って、図1に示す熱交換器100において、コート層32bが形成されている領域は、図4に示すように保持マット50により覆われているが、開口領域に対して熱交換器の両端面側に位置しないので、当該領域は封口領域の面積に含まないものとする。
【0076】
開口領域の面積と封口領域の面積の合計に対する開口領域の面積の割合は、熱交換器と金属ケーシングの間に配設される保持マットの形状により決定される。従って、保持マットの形状(特に開口部の形状及び位置)を調整することによって、上記割合を調整することができる。
【0077】
[熱交換器の製造方法]
次に、本発明の熱交換装置を製造する方法について説明する。
本発明の熱交換装置を製造する際には、まず、以下に示す工程を経て、第1のハニカム構造体及び第2のハニカム構造体を含んで構成される熱交換器を製造する。続いて、製造された熱交換器に保持マットを巻きつけて、金属ケーシングに収容することで、熱交換装置とする。
以下では、上記ハニカム構造体を構成する材料として、炭化ケイ素及びシリコンを使用した場合について説明するが、ハニカム構造体を構成する材料は、上記材料に限られない。
【0078】
熱交換器は、例えば、炭化ケイ素粉末、有機バインダ等を含む原料ペーストを成形することにより、複数のセルが隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を作製する成形工程と、上記成形工程により成形されたハニカム成形体を乾燥する乾燥工程と、上記乾燥工程により乾燥された第1のハニカム構造体となるハニカム成形体と第2のハニカム構造体となるハニカム成形体同士を、接着層となる接着層用ペーストを介して接着させ、ハニカム成形体の集合体(ハニカム集合体)を作製するハニカム集合体作製工程と、上記ハニカム集合体を略円柱形状に加工する柱状体作製工程と、略円柱形状に加工された柱状体の外周部分の一部にコート層となるコート層用ペーストを塗布し、コート層用ペースト層を形成するコート層用ペースト塗布工程と、コート層用ペーストの塗布が行われた柱状体を脱脂し、さらに高温に加熱し、脱脂体に溶融シリコンを含浸させることにより、炭化ケイ素とシリコンの複合材料からなるハニカム構造体と接着層とコート層とから構成される熱交換器を製造する脱脂・含浸・接着工程とを行うことにより製造することができる。
【0079】
(成形工程)
成形工程では、まず、炭化ケイ素粉末、有機バインダ等を混合して原料ペーストを調製する。
原料ペーストには、さらに造孔剤、成形助剤、水等の分散媒等が含まれていてもよい。
【0080】
有機バインダとしては、特に限定されないが、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0081】
造孔剤としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、コークス、デンプン等が挙げられる。造孔剤とは、ハニカム構造体(又はハニカムセグメント)を製造する際、ハニカム構造体(又はハニカムセグメント)の内部に気孔を導入するために用いられるものをいう。
【0082】
成形助剤としては、特に限定されないが、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0083】
分散媒としては、特に限定されないが、水、ベンゼン等の有機溶媒、メタノール等のアルコール等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0084】
原料ペーストを調製する際には、混合混練することが望ましく、ミキサー、アトライタ等を用いて混合してもよく、ニーダー等を用いて混練してもよい。
【0085】
成形工程では、上記原料ペーストを押出成形することにより、複数のセルが隔壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を得る。
ハニカム成形体の形状は特に限定されるものではないが、角柱形状が望ましく、四角柱形状がさらに望ましい。また、第1のハニカム構造体(又は第1のハニカムセグメント)となるハニカム成形体と第2のハニカム構造体(又は第2のハニカムセグメント)となるハニカム成形体とは、隔壁の厚さやセル密度が異なることが望ましいので、それに合致するような形状のハニカム成形体をそれぞれ作製する必要がある。
【0086】
ハニカム成形体の端面が矩形からなる場合、長い方の辺の長さが20~120mmであることが望ましい。
【0087】
(乾燥工程)
続いて、ハニカム成形体を乾燥してハニカム乾燥体を得る乾燥工程を行う。
乾燥工程では、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等の乾燥機を用いて、ハニカム成形体を乾燥してハニカム乾燥体を作製する。
この工程により、第1のハニカム構造体(又は第1のハニカムセグメント)用のハニカム乾燥体と第2のハニカム構造体(又は第2のハニカムセグメント)用のハニカム乾燥体が作製される。
【0088】
(ハニカム集合体作製工程)
この工程では、原料ペーストとほぼ同じ組成の接着層用ペーストを用い、ハニカム乾燥体を、接着層用ペーストを介して接着させ、ハニカム乾燥体の集合体(ハニカム集合体)を作製する。
この際、脱脂・含浸・接着工程を経ることにより、これまで説明した熱交換器の構成となるように上記した形状の異なる2種類のハニカム乾燥体、すなわち、第1のハニカム構造体(又は第1のハニカムセグメント)用のハニカム乾燥体と第2のハニカム構造体(又は第2のハニカムセグメント)用のハニカム乾燥体同士を組み合わせて接着する。
【0089】
図6は、図1に示した熱交換器を製造するためのハニカム集合体の一例を模式的に示す斜視図である。
図6に示すハニカム乾燥体の集合体90は、第1のハニカム構造体10と、第2のハニカム構造体20とが交互に積層され、接着層19を介して接合されてなる、角柱形状のハニカム集合体90である。ハニカム集合体90は、3層の第1のハニカム構造体10と、4層の第2のハニカム構造体20を有している。1層の第1のハニカム構造体10は、1個の第1のハニカムセグメント11からなる。1層の第2のハニカム構造体20は、2個の第2のハニカムセグメント21が接着層18を介して接合されてなる。
【0090】
(柱状体作製工程)
この工程では、角柱形状の上記ハニカム集合体に対し、ダイヤモンドカッター等の切削工具を用いて切削加工を施し、外周面に、第2のハニカム構造体の第2流通路が開口する円柱形状に加工する。
【0091】
(コート層用ペースト塗布工程)
柱状体の外周面を構成する第1のハニカム構造体の表面の全てにコート層用ペーストを塗布し、乾燥固化することによりコート層となる層を形成することができる。
コート層用ペーストとしては、原料ペーストとほぼ同じ組成のものが挙げられる。
なお、後述する脱脂・含浸・接着工程の後に、コート層用ペースト塗布工程を行い、コート層用ペーストを乾燥、加熱固化することによりコート層を形成してもよい。
【0092】
(脱脂・含浸・接着工程)
この工程では、円柱形状に加工され、コート層となる層が形成されたハニカム集合体に対し、脱脂工程を行った後、引き続き、含浸・接着工程を行う。
従って、この工程においては、上面が開口しているセラミック製の容器の底面にシリコン(金属ケイ素)を配置し、容器の内部に多孔質のセラミックからなる支持具を介してハニカム集合体を配置し、脱脂工程を行った後、含浸・接着工程を行う。
【0093】
脱脂工程では、乾燥工程により乾燥されたハニカム乾燥体の集合体を400~1400℃の温度で加熱し、ハニカム乾燥体に含まれる有機分を焼失させる。脱脂温度は、400~600℃がより望ましい。雰囲気は、酸素を含む雰囲気が望ましい。
【0094】
続いて、含浸・接着工程を行う。すなわち、脱脂工程を終了した脱脂体を1420~2000℃の温度で加熱し、炭化ケイ素とシリコンの複合材料とする。加熱温度は、1420~1600℃がより望ましい。雰囲気は、不活性ガス雰囲気が望ましい。
上記温度で加熱することにより溶融したシリコン(金属ケイ素)が毛細管現象により多孔質の支持具を通じて脱脂体の隔壁を構成する炭化ケイ素の粒子の隙間に入り込み、その隙間にシリコンが含浸される。
【0095】
また、溶融したシリコンは、接着層用ペーストの脱脂体及びコート層用ペーストの脱脂体の間にも入り込み、脱脂体に含まれる炭化ケイ素と複合材を形成する。接着層用ペーストの脱脂体は接着層となってハニカム構造体(又はハニカムセグメント)同士をしっかりと接着する。コート層用ペーストの脱脂体は、外周部分を被覆するコート層となる。
【0096】
含浸・接着工程の温度が上記の温度範囲であると、得られる熱交換器は、その構成成分である炭化ケイ素の殆どが焼結されず、炭化ケイ素粒子とシリコンとがそれぞれ独立して存在する未焼結のハニカム構造体となる。すなわち、ハニカム構造体(又はハニカムセグメント)を構成する隔壁は、独立した炭化ケイ素粒子が周囲に存在するシリコンにより接着された状態のシリコンと炭化ケイ素との複合材料から構成されている。この未焼結のハニカム構造体は、ヤング率が高く、変形し難い特性を有しており、熱交換器として有用である。
【0097】
また、上記工程を経ることにより、流体の第1流通路となる多数のセルが隔壁を隔てて長手方向に並設された第1のハニカム構造体と、流体の第2流通路となる多数のセルが隔壁を隔てて長手方向に並設された第2のハニカム構造体とが、第1流通路と第2流通路とが交差するように組み合わされてなる熱交換器を作製することができる。
【0098】
本発明の熱交換装置の製造方法では、それぞれのハニカム乾燥体を脱脂する脱脂工程を行った後、通常の焼成工程を行って多孔質の炭化ケイ素の焼結体からなるハニカム焼成体を製造し、その後、ハニカム焼成体同士を接着させる接着工程、円周形状に加工する加工工程、シリコンを含浸させる含浸・接着工程、コート層を形成する工程、封口領域を形成する工程等を行ってもよい。
【0099】
(触媒担持工程)
本発明の熱交換装置は、熱交換器に燃料改質触媒等の触媒を担持することにより、燃料改質触媒として使用することができる。
上記熱交換器にロジウム等の貴金属からなる燃料改質触媒等の触媒を担持する方法としては、例えば、貴金属粒子もしくは錯体を含む溶液にハニカム構造体を浸漬した後、引き上げて加熱する方法等が挙げられる。
【0100】
続いて、得られた熱交換器に保持マットを巻きつけて、金属ケーシング内に収容する。
この時、熱交換器の外周面のうち、第2のハニカム構造体の表面に、第2流通路が保持マットにより覆われておらず熱交換器の外周面に開口している開口領域と、開口領域に対して熱交換器の両端面側にそれぞれ設けられ、上記第2流通路が保持マットにより覆われた封口領域とを有し、かつ、開口領域と封口領域の合計面積に対する、開口領域の占める割合が72~93%となるように、保持マットの形状を選択する。
熱交換器に保持マットを巻き付ける際に、熱交換器の第2流通路が熱交換器の外周面に開口している位置と保持マットのマット開口部の位置を合わせて巻付体を作製し、当該巻付体を金属ケーシングに押し込んで、固定することにより、改質器が得られる。
【0101】
本発明の第2の実施形態に係る熱交換装置を構成する熱交換器の一例について、図7及び図8を参照しながら説明する。
図7は、本発明の第2の実施形態に係る熱交換装置を構成する熱交換器を模式的に示す斜視図であり、図8は、図7に示した熱交換器のVIII-VIII線断面図である。
【0102】
図7及び図8に示すように、本発明の第2の実施形態に係る熱交換装置を構成する熱交換器200は、流体の第1流通路となる多数の第1のセル113が第1の隔壁112を隔てて長手方向に並設されたセラミック製の第1のハニカム構造体110と、流体の第2流通路となる多数の第2のセル123が第2の隔壁122を隔てて長手方向に並設されたセラミック製の第2のハニカム構造体120とが、第1流通路(第1のセル113)と第2流通路(第2のセル123)とが交差するように組み合わされてなる柱状の熱交換器200である。
【0103】
図7及び図8において、第1のハニカム構造体110を構成する第1のセル113の延びる方向は、上下方向(図7及び図8中、矢印zで示す方向)である。第2のハニカム構造体120を構成する第2のセル123の延びる方向は、水平方向(図7中、矢印yで示す方向)である。第1のハニカム構造体110と第2のハニカム構造体120において、お互いの流通路は交差しているので、2種類の流体(特にガス)を流通させ易く、熱交換を効率的に行うことができる。
【0104】
本発明の第2の実施形態に係る熱交換装置を構成する熱交換器200では、第1のハニカム構造体110の両側に接着層119を介して第2のハニカム構造体120が配置されている。
本発明の第2の実施形態に係る熱交換装置を構成する熱交換器の場合と同様に、1層の第1のハニカム構造体110及び1層の第2のハニカム構造体120は、それぞれ、2個以上のハニカムセグメントが接着層を介して接着されることにより構成されていてもよい。
【0105】
図7及び図8に示す熱交換器200では、両端面に第1のハニカム構造体110の第1流通路となる第1のセル113が開口し、外周面に第2のハニカム構造体120の第2流通路となる第2のセル123が開口している。
外周面はコート層132で被覆されている。コート層132は、外周面を構成する第1のハニカム構造体10の表面の全部を覆うコート層132aを有している。
コート層132で覆われた部分は、コート層で覆われていない部分と比べて機械的強度が高い。そのため、コート層132で覆われた部分を、キャニングの圧力を加える部位として利用することができる。
【0106】
また、外周面を構成する第1のハニカム構造体110の表面の全部は、コート層132で被覆されているため、第1流通路となる第1のセル113を流れる流体と、第2流通路となる第2のセル123を流れる流体とが混ざることを防止することができる。
【0107】
本発明の第2の実施形態に係る熱交換装置を構成する熱交換器の体積は、1.2~3.2リットルであることが望ましい。
本発明の第2の実施形態に係る熱交換装置を構成する熱交換器の体積が、1.2~3.2リットルであると、熱交換器が適切な体積を有しているので、車両等に搭載し易く、熱交換装置としての効果を充分に発揮することができる。
本発明の第2の実施形態に係る熱交換装置を構成する熱交換器の体積が、1.2リットル未満であると、熱交換器の体積が小さすぎ、充分な量の触媒を担持することが難しくなり、一方、本発明の第2の実施形態に係る熱交換装置を構成する熱交換器の体積が、3.2リットルを超えると、熱交換装置の容量が大きくなるため、車両に搭載することが難しくなる。
【0108】
本発明の第2の実施形態に係る熱交換装置を構成する熱交換器を構成するハニカム構造体の材料、担持される触媒の種類、上記熱交換器のその他の構成は、第1の実施形態に係る熱交換装置を構成する熱交換器を構成するハニカム構造体の構成と同様である。また、本発明の第2の実施形態に係る熱交換装置の製造方法も本発明の第1の実施形態に係る熱交換装置の製造方法と同様であるので、その説明は、省略することとする。
【0109】
また、本発明の第1の実施形態に係る熱交換装置を構成する熱交換器では、3層の上記第1のハニカム構造体と4層の上記第2のハニカム構造体とが、それぞれ交互に配置されており、本発明の第2の実施形態に係る熱交換装置を構成する熱交換器では、第1のハニカム構造体の両側に第2のハニカム構造体が配置されているが、本発明の熱交換装置を構成する熱交換器は、これらの実施形態に限定されるものではなく、流体の第1流通路となる多数のセルが隔壁を隔てて長手方向に並設された第1のハニカム構造体と、流体の第2流通路となる多数のセルが隔壁を隔てて長手方向に並設された第2のハニカム構造体とが、上記第1流通路が延びる方向と上記第2流通路が延びる方向とが交差するように組み合わされておれば、組み合わせの数は限定されないが、第1のハニカム構造体と第2のハニカム構造体とがそれぞれ交互に配置されていることが望ましい。
【0110】
本発明の改質器は、本発明の熱交換装置を備えた改質器であって、上記第2のハニカム構造体には、内燃機関より排出され、主排気管を流通する排ガスが通過するように構成され、上記第1のハニカム構造体には、隔壁に改質用の触媒が担持され、上記主排気管より分岐した排ガス再循環配管に流入した排ガスが通過するように構成されていることを特徴とする。
【0111】
本発明の改質器が上記のように構成されていると、第2のハニカム構造体から第1のハニカム構造体に排ガスの熱を良好に供給することができ、内燃機関の燃料を改質して燃費を改善する改質器としての性能を良好に発揮させることができる。
【0112】
図9は、本発明の改質器を備えた燃料改質ガソリンエンジンシステムを模式的に示す説明図である。
この燃料改質ガソリンエンジンシステム300では、ガソリンエンジン41から排出される排気ガスを通過させる排気管42の途中で排気管が主排気管43と排ガス再循環配管44(以下、EGR管という)とに分岐し、EGR管44の途中に燃料改質触媒として機能する熱交換装置70を収納した改質器80が配置されている。図9に示すように、この改質器80には、主排気管43も接続されており、主排気管43を流れるガスは、保持マット50のマット開口部51c、51d、51e、51f、51g、51h及び熱交換器100の流体入口及び流体出口であるマット開口部を介して第2のハニカム構造体のセルに導入、排出され、一方、EGR管44を流れるガスは、熱交換器100を構成する第1のハニカム構造体のセルを通過し、熱交換がなされる。なお、図中、45は、自動弁であり、状況に応じて適宜、開閉する。
【0113】
EGR管44における改質器80の入口には、改質用燃料噴射装置46が配置されており、この改質用燃料噴射装置46より改質用燃料が噴射される。一方、ガソリンエンジン41の吸入用配管49には、ポート式燃料噴射装置48が配置されており、吸入時にエンジン用の燃料が噴射される。
【0114】
改質器80では、改質用燃料噴射装置46より噴射された燃料は、排ガス中の水蒸気とガソリン燃料の主成分である炭化水素とが熱交換器100に担持された燃料改質触媒により活性化されて反応し、水素と一酸化炭素とメタンに変わる。このような組成の水素を含む気体は、エンジンの吸入空気と混ざるとともに、ポート式燃料噴射装置48より噴射された燃料とも混ざり、混合気となってガソリンエンジン41の内部に入り、ガソリンエンジン41の内部で燃焼される。混合気に混じった水素は、燃焼速度を速めることができ、ガソリンエンジン41の燃焼効率を高めることができる。
【0115】
改質器80内の第1のハニカム構造体では、上記した燃料改質触媒の存在下での吸熱反応により熱を奪われるが、本発明の熱交換装置では、第2のハニカム構造体から第1のハニカム構造体に排ガスの熱を良好に供給することができ、温度低下が抑制され、内燃機関(ガソリンエンジン)の燃料を改質して燃費を改善する改質触媒としての性能を良好に発揮させることができる。さらに、熱交換器が炭化ケイ素とシリコンからなる場合、改質されたガスに含まれる水素に対して腐食されにくい。
【0116】
(実施例)
以下、本発明の実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0117】
(実施例1)
平均粒子径22μmを有する炭化ケイ素の粗粉末56.3重量%と、平均粒子径0.5μmの炭化ケイ素の微粉末24.1重量%とを混合し、得られた混合物に対して、有機バインダ(メチルセルロース)4.4重量%、潤滑剤(日油社製 ユニルーブ)0.8重量%、グリセリン0.8重量%、オレイン酸2.2重量%、および、水11.4重量%を加えて混練して原料ペーストを得た。
【0118】
この後、第1のハニカム構造体を構成するハニカムセグメントを製造するための金型、及び、第2のハニカム構造体を構成するハニカム成形体を製造するための金型を用い、原料ペーストの押出成形を行い、ハニカム成形体を作製した。
【0119】
上記工程により作製された第1のハニカム構造体を構成するハニカムセグメント用のハニカム成形体は、端面の形状に関し、14.6mm×105.4mmの長方形で、その長さは、140mm、セル密度は、47個/cm(300個/inch)、隔壁の厚さは、0.25mmであった。また、上記工程により作製された第2のハニカム構造体を構成するハニカムセグメント用のハニカム成形体は、端面の形状に関し、14.6×70mmの長方形で、その長さは、105mm、セル密度は、47個/cm(300個/inch)、隔壁の厚さは、0.25mmであった。
【0120】
次いで、マイクロ波乾燥機を用いて上記生のハニカム成形体を乾燥させることにより、ハニカム成形体の乾燥体を作製した。
【0121】
得られた第1のハニカム構造体を構成するハニカムセグメント用のハニカム乾燥体と第2のハニカム構造体を構成するハニカムセグメント用のハニカム乾燥体とを用い、原料ペーストを接着材として、製造工程を終えたハニカム乾燥体の集合体(ハニカム集合体)が図6に示す構成となるようにハニカム乾燥体を組み合わせた。接着層の厚みはそれぞれ1mmに設定した。第1のハニカム構造体は1個の第1のハニカムセグメントで構成されており、第2のハニカム構造体は2個の第2のハニカムセグメントで構成されていた。
ハニカム乾燥体の寸法は、第2のハニカム構造体の第2流通路が露出する面の形状が、横108.2mm、縦140mmで、奥行きが105mmの略直方体形状であった。
【0122】
得られたハニカム乾燥体の集合体をその両端面が第1のハニカム構造体の端面になるように、直径が105mm、長さが140mmの円柱状に外形加工した。さらに、円柱状のハニカム集合体の外周面を構成する第1のハニカム構造体の表面の全て、及び、第2のハニカム構造体の表面の一部に、コート層用ペーストを塗布し、乾燥固化させた。
【0123】
底面に金属ケイ素(シリコン)を載置したセラミック製の容器に、支持具を介してコート層が形成されたハニカム乾燥体の集合体を載置し、加熱炉に搬入し、大気雰囲気下、400℃で脱脂する脱脂工程を行った後、加熱炉内をアルゴンガスで置換し、1450℃、1時間の加熱条件下、含浸接着工程を行い、図1に示す構成の熱交換器を得た。
【0124】
得られた図1に示す構成の熱交換器において、外形は直径105mm、長さ140mmであり、第1及び第2のハニカム構造体を構成するハニカムセグメントのセル密度は、いずれも47個/cm(300個/inch)、隔壁の厚さは、いずれも0.25mmである。
第1のハニカム構造体は1個の第1のハニカムセグメントより構成されており、第2のハニカム構造体は2個の第2のハニカムセグメントが端面を介して接着層で接着されることにより構成されていた。また、第1のハニカム構造体を構成する第1のハニカムセグメントの流路(第1流通路となるセル)と第2のハニカム構造体を構成する第2のハニカムセグメントの流路(第2流通路となるセル)とがお互いに交差するように配置されていた。
【0125】
マットを、図3に示すような凹部及び凸部並びに開口部を有する形状に切断して、保持マットを作製した。
得られた保持マットを図1に示す構成の熱交換器に巻きつけた状態で、保持マットと同様の開口部を有し、内径が、熱交換器の直径よりわずかに大きい円筒形の金属ケーシングに収容し、実施例1に係る熱交換装置を得た。収容後のマットの厚みは4mmであった。なお、実施例1に係る熱交換装置における、開口領域と封口領域の合計面積に対する、開口面積の占める割合は、90%であった。
【0126】
(実施例2、比較例1~2)
保持マットに形成された開口部の形状を変更することで、開口領域と封口領域の合計面積に対する、開口領域の面積の占める割合を表1に示す数値に変更した他は、実施例1と同様の手順で実施例2、比較例1~2に係る熱交換装置を製造した。
【0127】
(評価)
[キャニング性の評価]
熱交換器に保持マットを巻いて金属ケーシングに収容する際の、熱交換器の破損の有無を確認し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
ただし、保持マットの厚さ、坪量はすべて同じとした。
[評価]
○:キャニング後の熱交換器にクラック等の破損が生じていない。
×:キャニング後の熱交換器にクラック等の破損が生じている。
【0128】
[熱交換試験及び保持安定性の測定]
第2のハニカム構造体を構成するセルに800℃のガスを流量50g/秒で流し、第1のハニカム構造体を構成するセルに500℃のガスを流量15g/秒で流す操作を10分間行い、10分後に第1のハニカム構造体から流出するガスの温度を測定し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
また、この操作の前後で保持マット及び/又は熱交換器の位置がずれていないかを確認した。結果を表1に示す。
[熱交換効率の評価]
○:第1のハニカム構造体から流出するガスの温度が600℃以上である。
×:第1のハニカム構造体から流出するガスの温度が600℃未満である。
[保持安定性の評価]
○:保持マット及び熱交換器に位置ズレがみられない。
×:保持マット及び/又は熱交換器に位置ズレがみられる。
【0129】
【表1】
【0130】
表1に示すように、実施例1及び実施例2に係る熱交換装置では、第2のハニカム構造体を構成するセルに流入するガスの温度が低下した場合であっても、第1のハニカム構造体から流出するガスの温度を600℃以上に維持できた。
比較例1に係る熱交換装置は、キャニング時に破損してしまった。これは、第2のハニカム構造体が保持マットと接する領域(封口領域)が、実施例1及び実施例2と比較して狭いため、封口領域に過度の圧力が加わり破損に至ったと考えられる。なお、比較例1に係る熱交換器がキャニング時に破損しないように、保持マットの坪量を調整した場合には、熱交換試験において、熱交換器に位置ズレが生じ、保持安定性が充分ではないことがわかった。
比較例2に係る熱交換装置は、平常時の熱交換において、第1のハニカム構造体から流出するガスの温度が600℃未満となってしまった。これは、封口領域の割合が多すぎたため、平常時の熱交換効率が低下したことによると考えられる。
【符号の説明】
【0131】
10、110 第1のハニカム構造体
11、111 第1のハニカムセグメント
12、112 第1の隔壁
13、113 第1のセル(第1流通路)
18、19、119 接着層
20、120 第2のハニカム構造体
21、121 第2のハニカムセグメント
22、122 第2の隔壁
23、123 第2のセル(第2流通路)
32、32a、32b、132、132a、132b コート層
41 ガソリンエンジン
42 排気管
43 主排気管
44 排ガス再循環配管(EGR管)
45 自動弁
46 改質用燃料噴射装置
48 ポート式燃料噴射装置
49 吸入用配管
50 保持マット
51 マット
51a 凸部
51b 凹部
51c、51d、51e、51f、51g、51h 開口部
60 金属ケーシング
60c、60d、60e、60f、60g、60h 開口部
70 熱交換装置
80 改質器
90 ハニカム乾燥体の集合体
100、200 熱交換器
300 ガソリンエンジンシステム
A1 開口領域
A2、A3 封口領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9