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特許7564725異常検知装置、異常検知方法、異常検知プログラム、およびベースモデル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】異常検知装置、異常検知方法、異常検知プログラム、およびベースモデル
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20241002BHJP
   F27D 21/02 20060101ALI20241002BHJP
   F27D 21/04 20060101ALI20241002BHJP
   G06V 20/52 20220101ALI20241002BHJP
【FI】
G06T7/00 610C
F27D21/02
F27D21/04
G06V20/52
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021018199
(22)【出願日】2021-02-08
(65)【公開番号】P2022121058
(43)【公開日】2022-08-19
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】眞野 文宏
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 圭
【審査官】岡本 俊威
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-207089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
F27D 21/00-21/04
G06V 20/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物処理施設の所定の部位を撮影する撮像装置と、
前記撮像装置が撮影した撮影画像の各画素の画像データを輝度変換して輝度データを生成する輝度データ生成部と、
所定の単位期間中に撮影された複数の前記撮影画像毎に生成された前記輝度データを一組の輝度データ群として、時系列メディアンフィルタを用いてノイズ除去することにより、それぞれの前記輝度データ群毎に強調データを生成するノイズ除去部と、
前記強調データを複数の局所領域に分割し、それぞれの前記局所領域毎に特徴量を算出する特徴量算出部と、
所定の学習期間中に生成された複数の前記強調データ毎に算出された複数の前記特徴量が前記局所領域と対応付けられた学習用入力データを生成する学習用入力データ生成部と、
前記撮像装置により撮影された複数の前記撮影画像に対応する一組の前記輝度データ群に基づいて算出された前記特徴量が前記局所領域と対応付けられた検知用入力データを生成する検知用入力データ生成部と、
それぞれの前記局所領域における、前記学習用入力データに係る前記特徴量に対する前記検知用入力データに係る前記特徴量の異常度が所定のしきい値以上である場合に前記部位に異常が検知されたと判定する異常判定部とを備える異常検知装置。
【請求項2】
前記単位期間および前記学習期間は、検出される前記異常の内容に応じて設定される請求項1に記載の異常検知装置。
【請求項3】
前記異常度は、前記学習用入力データに係る前記特徴量と前記検知用入力データに係る前記特徴量とのマハラノビス距離として求められる請求項1または2に記載の異常検知装置。
【請求項4】
前記特徴量は、それぞれの前記局所領域をマトリクス状に縦横それぞれ等分に分割することにより複数個のブロックに分割し、それぞれの前記ブロックに対して複数方向に隣接する前記ブロックの輝度との差異量および前記ブロック間の方向の関係を輝度勾配として求め、分割された複数個の前記ブロック毎の前記輝度勾配を単位ベクトル化したものである請求項1から3のいずれか一項に記載の異常検知装置。
【請求項5】
検知される前記異常は前記部位に堆積物が堆積される状態である請求項1から4のいずれか一項に記載の異常検知装置。
【請求項6】
廃棄物処理施設の所定の部位を、所定の学習期間内の異なる所定の単位期間それぞれにおいて複数回撮影して、複数の学習用画像を取得する、学習用画像取得工程と、
それぞれの前記学習用画像の各画素の画像データを輝度変換して、それぞれの前記学習用画像と対応する複数の学習用輝度データを生成する、学習用輝度データ生成工程と、
それぞれの前記単位期間内に撮影された前記学習用画像に対応する複数の前記学習用輝度データを一組の輝度データ群として、時系列メディアンフィルタを用いてノイズ除去することにより、複数組の前記輝度データ群から複数の学習用強調データを生成する、学習用強調データ生成工程と、
それぞれの前記学習用強調データを複数の局所領域に分割し、それぞれの前記局所領域毎に学習用特徴量を算出して、前記局所領域と前記学習用特徴量とが対応付けられた学習用入力データを前記学習用強調データ毎に生成する、学習用入力データ生成工程と、
前記部位を複数の検知用画像として撮影する、検知用画像取得工程と、
それぞれの前記検知用画像の各画素の画像データを輝度変換して、複数の検知用輝度データを生成する、検知用輝度データ生成工程と、
時系列メディアンフィルタを用いてノイズ除去することにより、複数の前記検知用輝度データから検知用強調データを生成する、検知用強調データ生成工程と、
前記検知用強調データを前記局所領域に分割し、それぞれの前記局所領域毎に検知用特徴量を算出して、前記局所領域と前記検知用特徴量とが対応付けられた検知用入力データを生成する、検知用入力データ生成工程と、
それぞれの前記局所領域における、前記学習用特徴量に対する前記検知用特徴量の異常度が所定のしきい値以上である場合に前記部位に異常が検知されたと判定する、異常判定工程とを備える異常検知方法。
【請求項7】
複数の前記学習用入力データを解析して、前記局所領域毎の前記学習用特徴量の平均および分散共分散行列が求められたベースモデルを生成する、ベースモデル生成工程をさらに備え、
前記ベースモデルが、前記検知用入力データが入力されると、前記学習用特徴量に対する前記検知用特徴量の前記異常度を求め、前記異常度に基づいて前記異常を検知する構成のモデルである請求項6に記載の異常検知方法。
【請求項8】
廃棄物処理施設の所定の部位が、所定の学習期間内の異なる所定の単位期間それぞれにおいて複数回撮影された、複数の学習用画像を取得する、学習用画像取得機能と、
それぞれの前記学習用画像の各画素の画像データを輝度変換して、それぞれの前記学習用画像と対応する複数の学習用輝度データを生成する、学習用輝度データ取得機能と、
それぞれの前記単位期間内に撮影された前記学習用画像に対応する複数の前記学習用輝度データを一組の輝度データ群として、時系列メディアンフィルタを用いてノイズ除去することにより、複数組の前記輝度データ群から複数の学習用強調データを生成する、学習用強調データ生成機能と、
それぞれの前記学習用強調データを複数の局所領域に分割し、それぞれの前記局所領域毎に学習用特徴量を算出して、前記局所領域と前記学習用特徴量とが対応付けられた学習用入力データを前記学習用強調データ毎に生成する、学習用入力データ生成機能と、
前記部位が撮影された複数の検知用画像を取得する、検知用画像取得機能と、
前記部位が撮影された複数の検知用画像の各画素の画像データを輝度変換して、複数の検知用輝度データを生成する、検知用輝度データ生成機能と、
時系列メディアンフィルタを用いてノイズ除去することにより、複数の前記検知用輝度データから検知用強調データを生成する、検知用強調データ生成機能と、
前記検知用強調データを前記局所領域に分割し、それぞれの前記局所領域毎に検知用特徴量を算出して、前記局所領域と前記検知用特徴量とが対応付けられた検知用入力データを生成する、検知用入力データ生成機能と、
それぞれの前記局所領域における、前記学習用特徴量に対する前記検知用特徴量の異常度が所定のしきい値以上である場合に前記部位に異常が検知されたと判定する、異常判定機能とをコンピュータに実行させる異常検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理施設に生じた異常を検知する異常検知装置、異常検知方法、異常検知プログラム、および異常検知に用いられるベースモデルに関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物を処理する廃棄物処理施設は、安定して適切に廃棄物を処理させるために、施設に異常が生じた場合に、異常を検知する構成とされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、配管内を撮影し、監視員が撮影画像を確認することにより、配管内に原料が詰まる異常が発生しているか否かを常時監視する燃焼装置が開示される。
【0004】
また、特許文献2には、ごみ貯留用容器内を撮影し、画像データからごみの表面高さであるごみレベルを判断し、ごみレベルの変化を時系列で確認することにより、ごみ貯留用容器内のごみレベルが一定に保たれているか否かを検出するごみ焼却炉が開示される。
【0005】
また、特許文献3には、配管に振動センサ設け、振動センサの検出値から配管の詰まりを検知するごみ焼却炉が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-75226号公報
【文献】特開2014-10091号公報
【文献】特開2011-102785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された異常の検知手段では、常時人が監視する必要があり、異常を検知するために手間がかかる。また、画像を用いて異常を検知する場合、配管等の検知対象部位における壁等の背景が湿気等により変色した場合、画像の変化を検出することが困難となり、異常の検知が困難になる場合がある。特に、自動的に、画像から異常を検知する場合、背景の変色により検知精度に大きな影響を与える場合がある。
【0008】
また、ごみ焼却施設には様々な種類の異常が生じるのに対し、特許文献2に開示された異常の検知手段は、ごみの量が一定に保たれているか否かを検出することにより異常を検知する構成であるため、ごみの貯留量の異常を検知するための手段に特化され、様々な種類の異常を検知することに応用することが困難であり、汎用性が低い。
【0009】
同様に、特許文献3に開示された異常の検知手段は、配管の詰まりにより配管の振動が変化することを利用して異常を検知する構成であるため、様々な種類の異常を検知することに応用することが困難であり、汎用性が低い。
【0010】
このように、ごみ焼却施設には様々な種類の異常が生じ、現状では、異常の内容に対応したアルゴリズムで異常が検出されており、汎用性の高いアルゴリズムで異常を検知することが求められている。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するために、手間をかけずに、汎用性高く、かつ、精度良く異常を検知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る異常検知装置は、廃棄物処理施設の所定の部位を撮影する撮像装置と、前記撮像装置が撮影した撮影画像の各画素の画像データを輝度変換して輝度データを生成する輝度データ生成部と、所定の単位期間中に撮影された複数の前記撮影画像毎に生成された前記輝度データを一組の輝度データ群として、時系列メディアンフィルタを用いてノイズ除去することにより、それぞれの前記輝度データ群毎に強調データを生成するノイズ除去部と、前記強調データを複数の局所領域に分割し、それぞれの前記局所領域毎に特徴量を算出する特徴量算出部と、所定の学習期間中に生成された複数の前記強調データ毎に算出された複数の前記特徴量が前記局所領域と対応付けられた学習用入力データを生成する学習用入力データ生成部と、前記撮像装置により撮影された複数の前記撮影画像に対応する一組の前記輝度データ群に基づいて算出された前記特徴量が前記局所領域と対応付けられた検知用入力データを生成する検知用入力データ生成部と、それぞれの前記局所領域における、前記学習用入力データに係る前記特徴量に対する前記検知用入力データに係る前記特徴量の異常度が所定のしきい値以上である場合に前記部位に異常が検知されたと判定する異常判定部とを備える。
【0013】
本発明の一実施形態に係る異常検知方法は、廃棄物処理施設の所定の部位を、所定の学習期間内の異なる所定の単位期間それぞれにおいて複数回撮影して、複数の学習用画像を取得する、学習用画像取得工程と、それぞれの前記学習用画像の各画素の画像データを輝度変換して、それぞれの前記学習用画像と対応する複数の学習用輝度データを生成する、学習用輝度データ生成工程と、それぞれの前記単位期間内に撮影された前記学習用画像に対応する複数の前記学習用輝度データを一組の輝度データ群として、時系列メディアンフィルタを用いてノイズ除去することにより、複数組の前記輝度データ群から複数の学習用強調データを生成する、学習用強調データ生成工程と、それぞれの前記学習用強調データを複数の局所領域に分割し、それぞれの前記局所領域毎に学習用特徴量を算出して、前記局所領域と前記学習用特徴量とが対応付けられた学習用入力データを前記学習用強調データ毎に生成する、学習用入力データ生成工程と、前記部位を複数の検知用画像として撮影する、検知用画像取得工程と、それぞれの前記検知用画像の各画素の画像データを輝度変換して、複数の検知用輝度データを生成する、検知用輝度データ生成工程と、時系列メディアンフィルタを用いてノイズ除去することにより、複数の前記検知用輝度データから検知用強調データを生成する、検知用強調データ生成工程と、前記検知用強調データを前記局所領域に分割し、それぞれの前記局所領域毎に検知用特徴量を算出して、前記局所領域と前記検知用特徴量とが対応付けられた検知用入力データを生成する、検知用入力データ生成工程と、それぞれの前記局所領域における、前記学習用特徴量に対する前記検知用特徴量の異常度が所定のしきい値以上である場合に前記部位に異常が検知されたと判定する、異常判定工程とを備える。
【0014】
本発明の一実施形態に係る異常検知プログラムは、廃棄物処理施設の所定の部位が、所定の学習期間内の異なる所定の単位期間それぞれにおいて複数回撮影された、複数の学習用画像を取得する、学習用画像取得機能と、それぞれの前記学習用画像の各画素の画像データを輝度変換して、それぞれの前記学習用画像と対応する複数の学習用輝度データを生成する、学習用輝度データ取得機能と、それぞれの前記単位期間内に撮影された前記学習用画像に対応する複数の前記学習用輝度データを一組の輝度データ群として、時系列メディアンフィルタを用いてノイズ除去することにより、複数組の前記輝度データ群から複数の学習用強調データを生成する、学習用強調データ生成機能と、それぞれの前記学習用強調データを複数の局所領域に分割し、それぞれの前記局所領域毎に学習用特徴量を算出して、前記局所領域と前記学習用特徴量とが対応付けられた学習用入力データを前記学習用強調データ毎に生成する、学習用入力データ生成機能と、前記部位が撮影された複数の検知用画像を取得する、検知用画像取得機能と、前記部位が撮影された複数の検知用画像の各画素の画像データを輝度変換して、複数の検知用輝度データを生成する、検知用輝度データ生成機能と、時系列メディアンフィルタを用いてノイズ除去することにより、複数の前記検知用輝度データから検知用強調データを生成する、検知用強調データ生成機能と、前記検知用強調データを前記局所領域に分割し、それぞれの前記局所領域毎に検知用特徴量を算出して、前記局所領域と前記検知用特徴量とが対応付けられた検知用入力データを生成する、検知用入力データ生成機能と、それぞれの前記局所領域における、前記学習用特徴量に対する前記検知用特徴量の異常度が所定のしきい値以上である場合に前記部位に異常が検知されたと判定する、異常判定機能とをコンピュータに実行させる。
【0015】
本発明の一実施形態に係るベースモデルは、廃棄物処理施設の所定の部位が、所定の学習期間内の異なる所定の単位期間のそれぞれにおいて撮影された複数の学習用画像の各画素の画像データを輝度変換して、それぞれの前記学習用画像と対応する複数の学習用輝度データを生成し、前記単位期間内に撮影された複数の前記学習用画像に対応する複数の前記学習用輝度データを一組の輝度データ群として、時系列メディアンフィルタを用いてノイズ除去することにより、複数組の前記輝度データ群から複数の学習用強調データを生成し、それぞれの前記学習用強調データを複数の局所領域に分割し、それぞれの前記局所領域毎に学習用特徴量を算出して、前記局所領域と前記学習用特徴量とが対応付けられることにより前記学習用強調データ毎に生成された複数の学習用入力データを解析して、前記局所領域毎の前記学習用特徴量の平均および分散共分散行列が求められる。
【0016】
以上のような構成によると、堆積物による閉塞異常を検知する際のノイズ除去に適した時系列メディアンフィルタを用いて学習用入力データのノイズ除去を行うことにより、種々の部位における堆積物による閉塞異常について、汎用性高く、かつ、高精度に異常検知を行うことができる。
【0017】
さらに、学習用入力データに係る複数の特徴量と、検知用入力データに係る特徴量との異常度を用いて異常検知を行うことにより、学習用入力データに係る特徴量のばらつきも考慮され、より精度良く異常を検知することができる。
【0018】
また、前記単位期間および前記学習期間は、検出される前記異常の内容に応じて設定されることが好ましい。
【0019】
このような構成により、異常の内容に応じて、撮影画像の取得タイミングをパラメータとして設定することができるため、より汎用性高く、異常を検知することができる。
【0020】
また、前記異常度は、前記学習用入力データに係る前記特徴量と前記検知用入力データに係る前記特徴量とのマハラノビス距離として求められても良い。
【0021】
このような構成により、異常度が適切に求められ、より精度良く異常を検知することができる。
【0022】
また、前記特徴量は、それぞれの前記局所領域をマトリクス状に縦横それぞれ等分に分割することにより複数個のブロックに分割し、それぞれの前記ブロックに対して複数方向に隣接する前記ブロックの輝度との差異量および前記ブロック間の方向の関係を輝度勾配として求め、分割された複数個の前記ブロック毎の前記輝度勾配を単位ベクトル化したものであっても良い。
【0023】
このような構成により、異常が生じた場合の特徴量を強調する態様で特徴量を抽出することができ、より精度良く異常を検知することができる。
【0024】
また、検知される前記異常は前記部位に堆積物が堆積される状態であっても良い。
【0025】
時系列メディアンフィルタを用いてノイズ除去を行うと、撮影画像のうちの背景画像等の変色箇所を除去することができる。そのため、変色箇所を堆積物と誤検知することが抑制され、より精度良く異常を検知することができる。
【0026】
また、異常検知の際には、複数の前記学習用入力データを解析して、前記局所領域毎の前記学習用特徴量の平均および分散共分散行列が求められたベースモデルを生成する、ベースモデル生成工程をさらに備え、前記ベースモデルが、前記検知用入力データが入力されると、前記学習用特徴量に対する前記検知用特徴量の前記異常度を求め、前記異常度に基づいて前記異常を検知する構成のモデルであっても良い。
【0027】
このような構成により、より容易に、異常を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】ごみ焼却施設の構成を例示する図である。
図2】異常検知の概略を説明する図である。
図3】異常検知装置の機能ブロックの構成例を示す図である。
図4】異常検知を行うフローを例示する図である。
図5】輝度データ群のノイズ除去を行う例を説明する図である。
図6】特徴量の算出例を説明する図である。
図7】スラグ磨砕機の供給口における閉塞異常の検知結果を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔ごみ焼却施設〕
図1に示すように、ごみ焼却施設1は、ガス化炉2と、旋回流溶融炉3と、ボイラ4と、蒸気タービン発電機5と、エコノマイザ6と、バグフィルタ7と、煙突8とを備える。
【0030】
ガス化炉2は、下部領域に砂層10を備え、砂層10に押し込み空気を導入することにより、流動する砂を用いて砂層10上に投入された廃棄物等のごみをガス化する。
【0031】
旋回流溶融炉3は、ガス化されたごみを旋回させながら空気と反応させることで、ごみを溶融スラグに高温溶融させる。つまり、ごみは、高温溶融により焼却されて、ごみの溶融固化物である溶融スラグが排出される。
【0032】
ボイラ4は、旋回流溶融炉3と連結されて設けられ、旋回流溶融炉3が排出する排ガスの熱を利用して蒸気を発生させる。
【0033】
蒸気タービン発電機5は、ボイラ4が発生させた蒸気が供給され、蒸気によってタービンを回して発電を行う。
【0034】
エコノマイザ6は、ボイラ4から排出された排ガスの熱をボイラ4の給水に熱回収する。ボイラ4に供給される給水が加熱されることにより、ボイラ効率が向上される。
【0035】
バグフィルタ7は、エコノマイザ6を介してボイラ4から排出された排ガスの煤じんをろ過捕集する。これにより、バグフィルタ7は煙突8から排出される排ガスを清浄化する。排ガスには、バグフィルタ7に導入される直前に活性炭が吹き込まれる。活性炭を添加することにより、排ガスから、ダイオキシン等が活性炭に吸着されて除去される。活性炭は、バグフィルタ7の直前に貯留され、切り出し部15で所定量が切り出されて排ガスに吹き付けられる。
【0036】
旋回流溶融炉3から排出された溶融スラグは、粉砕されて再利用される。具体的には、旋回流溶融炉3から排出された溶融スラグは固化されて貯留槽11に貯留された後、貯留槽11の下方に設けられるスラグ磨砕機12で粉砕される。
【0037】
また、ガス化炉2の砂層10に残留した資源を含む残留物は、ガス化炉2の下方に貯留された後に排出されて、スクリュー式の排出装置13で搬送される。搬送された残留物は、鉄やアルミニウム等の資源と不純物とに分離される。鉄やアルミニウム等の資源は、砂分離スクリーン14で砂を分離した後回収され、再利用される。
【0038】
〔異常検知の概略〕
ごみ焼却施設1は、上述のように様々な装置が組み合わされて構成されており、いずれかの装置に異常が生じると適切な処理ができない。そのため、本実施形態では、共通のアルゴリズムでありながら、異常の内容に応じた検知方法・検知装置で異常の検知が行われる。以下、本実施形態に係る異常検知のアルゴリズムについて、図1を参照しながら図2を用いて説明する。
【0039】
本実施形態に係る異常検知は、まず、所定の部位が連続的に撮影され、連続して撮影された複数の撮影画像20からなる複数の画像群に分けられる。それぞれの画像群は、特定のフィルタを用いてノイズ除去が行われ、画像群毎に、検出すべき異常に対応した強調データ21が生成される。フィルタは、検出すべき異常の内容に応じて、複数種類のフィルタの中から選択される。
【0040】
次に、それぞれの強調データ21が局所領域54(図6参照)に分割され、局所領域毎に学習用特徴量22が算出される。
【0041】
異常検知を行う際にも、その部位が連続的に撮影され、複数の撮影画像20に対して前出のフィルタと同じフィルタを用いてノイズ除去が行われて強調データ21が生成され、局所領域54毎に検知用特徴量24が算出される。
【0042】
そして、それぞれの局所領域54において、検知用特徴量24の学習用特徴量22に対する異常度が算出される。最後に、いずれかの局所領域54において、異常度が所定のしきい値以上である場合、その部位に異常が検出されたと判定される。
【0043】
このように、共通のアルゴリズムを用いながら、ノイズ除去において用いられるフィルタを検出すべき異常に対応して選択することにより、異常に応じた個別の検出アルゴリズムを用いることなく、所定の異常を検知することができる。そのため、手間をかけずに、汎用性高く、かつ、精度良く異常を検知することができる。
【0044】
〔第1実施形態〕
〔異常検知の具体例〕
次に、第1実施形態として、図1図2を参照しながら、図3図7を用いて、異常検知の具体的な構成例について説明する。
【0045】
図3に示すように、異常検知装置は、ごみ焼却施設1の所定の部位を撮影する撮像装置27と、この部位に所定の異常が発生したことを検知する異常検知部28とを備える。
【0046】
異常検知部28は、制御部31と、画像取得部32と、記憶部33と、輝度データ生成部35と、ノイズ除去部36と、特徴量算出部37と、学習用入力データ生成部39と、検知用入力データ生成部42と、異常判定部43とを備える。
【0047】
制御部31は、異常検知部28の各機能ブロックの動作を制御する。制御部31は、CPU等のプロセッサを備える。記憶部33は、各種のデータやプログラムを格納する。画像取得部32は、撮像装置27が撮影した撮影画像20を取得する。
【0048】
輝度データ生成部35は、撮影画像20の各画素52の画像データを輝度変換して輝度データを生成する。ノイズ除去部36は、所定のフィルタを用いてノイズ除去を行い、時系列的に撮影された複数の画像データに係る複数の輝度データから、強調データ21を生成する。
【0049】
特徴量算出部37は、強調データ21をマトリクス状の局所領域54に分割し、後述するように、局所領域54毎に特徴量を算出する。
【0050】
学習用入力データ生成部39は、局所領域54と学習用に算出された学習用特徴量22とを対応付けて、学習用入力データ58を生成する。
【0051】
検知用入力データ生成部42は、局所領域54と検知用に算出された検知用特徴量24とを対応付けて、検知用入力データ59を生成する。
【0052】
異常判定部43は、各局所領域54について、学習用入力データ58における学習用特徴量22と検知用入力データ59における検知用特徴量24との異常度を算出する。そして、異常判定部43は、算出した異常度を所定のしきい値と比較し、いずれかの局所領域54にて、異常度がしきい値以上である場合、画像が撮影された部位に異常が検出されたと判定する。
【0053】
なお、異常検知部28は、ベースモデル生成部41をさらに備えても良い。ベースモデル生成部41は、複数の学習用入力データ58を解析してベースモデル23を生成する。ベースモデル23は、検知用入力データ59が入力されることにより、各局所領域54において、学習用特徴量22と検知用入力データ59における検知用特徴量24との異常度を算出し、しきい値を用いて画像が撮影された部位の異常の有無を判定するように構成されたモデルである。ベースモデル23が生成される場合、異常判定部43は、ベースモデル23に検知用入力データ59を入力して異常判定を行う。
【0054】
また、異常検知部28の機能ブロックは上記構成に限らず、2以上の機能ブロックの一部または全部が統合されても良く、いずれかの機能ブロックがさらに細分化されても良い。また、一部の機能ブロックが異常検知部28から独立して構成されても良い。
【0055】
また、異常検知部28の機能の一部または全部は、ハードウェアに限らず、ソフトウェアで構成されても良い。ソフトウェアに係るプログラムは、記憶部33等に記憶され、制御部31等が内蔵するプロセッサにより実行される。異常検知部28の機能の一部または全部は、任意の方法で実施されても良い。
【0056】
以下、貯留槽11からスラグが供給される、スラグ磨砕機12の上部の供給口にスラグが堆積して供給口が閉塞される異常を検知する場合を例に、異常検知装置の動作・異常検知方法・異常検知プログラムの処理を説明する。なお、以下で説明では、異常検知方法およびその機能をコンピュータに実行させる異常検知プログラムは、図3で説明した異常検知装置により処理される構成を例に説明するが、任意の装置構成により処理されても良く、例えば、ベースモデル23を用いない構成とされても良い。
【0057】
まず、学習用入力データ58を生成するために、撮像装置27は、スラグ磨砕機12の上部の供給口の内部を撮影する。撮影は、所定の学習期間(学習データの長さ)中の異なる複数の単位期間(フィルタの単位)内に行われ、それぞれの単位期間中に複数の学習用画像46が取得される。また、それぞれの単位期間中に撮影された複数の学習用画像46を一組の学習用画像群として、複数組の学習用画像群が生成される(図4のステップ#1)。
【0058】
具体的には、撮像装置27は、30時間にわたる学習期間(学習データの長さ)中に、継続してスラグ磨砕機12の上部の供給口の内部を撮影する。撮影は、1時間の長さの単位期間中に3600回行われ、学習期間中に複数の単位期間が設けられる。撮影された複数の学習用画像46のうち、1時間(フィルタ単位)の間に撮影された3600枚の学習用画像46を一組の学習用画像群として、複数組の学習用画像群が生成される。学習期間中に30組の単位期間が設けられる場合、合計で108000枚の学習用画像46が撮影され、1つの単位期間中に撮影された3600枚の学習用画像46を一組の学習用画像群として、三十組の学習用画像群が生成される。なお、学習期間中の単位期間は、連続して設けられても良いが、所定の間隔を空けて設けられても良い。画像取得部32は、撮像装置27が撮影した複数の学習用画像46を学習用画像群毎に記憶部33に格納する。
【0059】
次に、輝度データ生成部35は、それぞれの学習用画像46の各画素52の画像データを輝度変換し、学習用輝度データ48を生成する。学習用輝度データ48は、各画素52の輝度値が表されたデータである(図4のステップ#2)。輝度データ生成部35は、生成した学習用輝度データ48から、学習用画像群に対応する輝度データ群50を生成する(図4のステップ#3)。輝度データ生成部35は、生成した学習用輝度データ48および輝度データ群50を記憶部33に格納する。
【0060】
次に、ノイズ除去部36は、輝度データ群50毎に、複数の学習用輝度データ48に対して、時系列メディアンフィルタを用いてノイズ除去を行い、学習用強調データ51を生成する(図4のステップ#4)。
【0061】
具体的には、図5に示すように、まず、ノイズ除去部36は、一つの輝度データ群50を構成する3600枚の学習用輝度データ48から、それぞれの画素52における、3600個の輝度値を取得する。次に、ノイズ除去部36は、3600個の輝度値の中間値、つまり、1800番目または1801番目に大きな輝度値をその画素52の輝度値とする。ノイズ除去部36は、この処理を、全ての画素52に対して行い、各画素52に輝度値の中間値が対応付けられた学習用強調データ51を生成する。学習用強調データ51は、それぞれの輝度データ群50に対して一つずつ生成され、30組の学習用強調データ51が生成される。ノイズ除去部36は、生成された学習用強調データ51を記憶部33に格納する。
【0062】
次に、特徴量算出部37は、それぞれの学習用強調データ51からSIFT(Scale-Invariant Feature Transform)特徴量を算出して学習用特徴量22とする(図4のステップ#5)。
【0063】
具体的には、図6に示すように、特徴量算出部37は、まず、直径15画素の領域を1つの局所領域54として、学習用強調データ51をマトリクス状に並ぶ複数の局所領域54に分割する。次に、特徴量算出部37は、一つの局所領域54を4分割し、16個のブロック55に分割する。次に、特徴量算出部37は、各ブロック55の輝度を、各ブロック55を構成する画素52の面積で案分して算出する。次に、特徴量算出部37は、各ブロック55について、対象となるブロック55をB0とし、ブロックB0に隣接する8つのブロックB1~ブロックB8を想定する。ブロックB1~ブロックB8は、それぞれ、ブロックB0に対して0°の方向のブロックB1、45°の方向のブロックB2、90°の方向のブロックB3、135°の方向のブロックB4、180°の方向のブロックB5、225°の方向のブロックB6、270°の方向のブロックB7、315°の方向のブロックB8である。
【0064】
次に、特徴量算出部37は、ブロックB0の輝度に対するブロックB1~ブロックB8の輝度の差分(差異量)を輝度勾配として算出する。そして、特徴量算出部37は、各局所領域54について、16個のブロック55に対する、8つの方向に関連付けられた輝度勾配をSIFT特徴量の128次元ベクトル(特徴量ベクトル)とし、128次元の特徴量ベクトルの長さを単位ベクトルに変換し、学習用特徴量22として算出する。なお、SIFT特徴量の算出は、任意の方法で行うことができる。例えば、OpenCV等の画像認識ライブラリのSIFT関数を用いてSIFT特徴量が算出されても良い。
【0065】
次に、学習用入力データ生成部39は、学習用強調データ51毎に、局所領域54の位置と、それぞれの局所領域54の学習用特徴量22とを対応付けて、学習用入力データ58を生成する。学習用入力データ生成部39は、生成した複数の学習用入力データ58を記憶部33に格納する(図4のステップ#6)。
【0066】
次に、ベースモデル生成部41は、複数の学習用入力データ58から、各局所領域54の学習用特徴量22を解析し、各局所領域54の学習用特徴量22に関するベースモデル23を生成する。具体的には、ベースモデル23は、各局所領域54における学習用特徴量22の分散共分散行列と平均がモデル化されたものである。ベースモデル23は、学習用特徴量22の分散共分散行列と平均を示すモデルとして生成されても良いが、さらに、検知用のデータ(後述の検知用入力データ59)が入力されることにより、異常の有無を判定する構成とされても良い。
【0067】
ベースモデル23が生成された後、例えば、最後の学習用画像46が撮影されてから所定の時間が経過した後に、撮像装置27は、スラグ磨砕機12の上部の供給口の内部を複数の検知用画像47として撮影し、検知用画像47を記憶部33に格納する。例えば、最後の学習用画像46が撮影されてから所定の時間が経過した後に、1時間の期間(フィルタの単位)内に3600枚の検知用画像47が撮影される(図4のステップ#7)。次に、輝度データ生成部35は、それぞれの検知用画像47を輝度変換して検知用輝度データ49を生成し、検知用輝度データ49を記憶部33に格納する(図4のステップ#8)。次に、ノイズ除去部36は、複数の検知用輝度データ49を、時系列メディアンフィルタを用いてノイズ除去し、検知用強調データ57を生成する。ノイズ除去部36は、生成された検知用強調データ57を記憶部33に格納する(図4のステップ#9)。次に、特徴量算出部37は、学習用特徴量22と同様の方法で、検知用強調データ57に対して、検知用特徴量24を算出する(図4のステップ#10)。次に、検知用入力データ生成部42は、検知用強調データ57に対して、局所領域54の位置と、それぞれの局所領域54の検知用特徴量24とを対応付けて、検知用入力データ59を生成する。検知用入力データ生成部42は、生成した検知用入力データ59を記憶部33に格納する(図4のステップ#11)。
【0068】
そして、異常判定部43は、検知用入力データ59とベースモデル23とに基づいて、スラグ磨砕機12の上部の供給口に異常が生じているか否かを判定する(図4のステップ#12)。
【0069】
具体的には、異常判定部43は、各局所領域54について、学習用入力データ58における学習用特徴量22に対する、検知用入力データ59における検知用特徴量24の異常度を算出する。例えば、異常度は、学習用入力データ58における学習用特徴量22と検知用入力データ59における検知用特徴量24とのマハラノビス距離として算出される。より具体的には、学習用入力データ58における各局所領域54の学習用特徴量22の平均ベクトルと分散共分散行列とが求められ、局所領域54毎に、検知用入力データ59における検知用特徴量24とのマハラノビス距離が求められる。局所領域54をj(1,2,・・・)、局所領域jの検知用特徴量24をy、学習用入力データ58の局所領域jの学習用特徴量22の平均ベクトルをμ、学習用入力データ58の局所領域jの学習用特徴量22の分散共分散行列をΣとすると、局所領域jにおけるマハラノビス距離a(j)は、
【数1】
となる。
【0070】
次に、異常判定部43は、算出したマハラノビス距離を所定のしきい値と比較する。しきい値は、例えば、100または120である。そして、異常判定部43は、いずれかの局所領域54にて、例えば、マハラノビス距離が100以上である場合、スラグ磨砕機12の上部の供給口に異常が検出されたと判定する。
【0071】
なお、ベースモデル23は、ある時間帯において撮影された学習用画像46を用いて生成され、以後、そのベースモデル23が継続的に使用されても良いが、ベースモデル23は、異常判定中または異常判定が行われない期間において、随時に撮影された、異常が検知されなかった学習用画像46を用いて更新されても良い。
【0072】
さらに、異常が検知されると、所定の報知が行われる構成としても良い。報知は、報知部62により制御される。報知部62は、図示しない表示部に、異常が検出された箇所と異常が生じた旨を表示させる。または、報知部62は、ランプまたはスピーカで異常が生じた旨を報知させても良い。また、報知部62は、異常が検知されると、異常度に対応するしきい値に応じて作成された異常度マップに基づいて、対処方法を提示する構成とされても良い。
【0073】
上述のように、固化されたスラグは、スラグ磨砕機12の上部の供給口からスラグ磨砕機12に供給される。そのため、スラグ磨砕機12の供給口にはスラグが堆積され、スラグ磨砕機12の供給口が閉塞する場合があり、この閉塞状態が異常として検知される。
【0074】
異常の検知に用いるベースモデル23は、スラグ磨砕機12の供給口にはスラグが堆積されていない、あるいはスラグの堆積が問題にならないほど少ない状態の、スラグ磨砕機12の供給口の撮影画像(学習用画像46)の学習用特徴量22がモデル化される。異常の検知は、ベースモデル23を用い、学習用画像46の学習用特徴量22と検知用画像47の検知用特徴量24とが、局所領域54毎に比較されることにより行われる。
【0075】
ここで、撮影領域における供給口等の壁面が水分や汚れ等により変色する場合がある。学習用画像46の撮影時と、検知用画像47の撮影時とで、壁の色が変化していると、壁の変色部分を異常と誤判定する場合がある。そのため、ベースモデル23の生成に用いられる学習用強調データ51の生成の際には、壁の変色が正常なものとなるように、時系列メディアンフィルタを用いてノイズ除去が行われる。さらに、スラグ磨砕機12の供給口にスラグが堆積するという異常内容と壁の変色態様に応じて、学習用画像46の撮影におけるフィルタ単位や学習データの長さ等のパラメータを最適化させ、フィルタの単位を1時間とし、学習データの長さを30時間として、学習用画像46が撮影される。また、学習用画像46を撮影してから検知用画像47を撮影するまでの間隔は任意の時間でも良いが、例えば、10時間に設定される。
【0076】
図7は閉塞異常の原因となる堆積物の検知結果を示す写真であり、図7(a)はしきい値が100の場合の堆積物の検知結果を示す写真、図7(b)はしきい値が120の場合の堆積物の検知結果を示す写真である。検知結果を示す写真において、堆積物として検知された画素は破線で囲まれている。なお、報知部62は、図7に示すような写真を表示させる構成としても良い。
【0077】
このように、スラグ磨砕機12の供給口において、堆積物が徐々に堆積して閉塞に至る異常を検知するために、フィルタとして最適な時系列メディアンフィルタを用いてノイズ除去を行い、フィルタ単位や学習データの長さ等のパラメータを最適化して学習用画像46が撮影されることにより、堆積物を検知するのに最適化されたベースモデル23を生成することができる。その結果、手間をかけずに、精度良く異常を検知することができる。
【0078】
また、検知用画像47を撮影する際の、フィルタ単位や学習データの長さ等のパラメータは任意であり、ノイズ除去に用いるフィルタ、およびノイズ除去の要否は任意であるが、学習用入力データ58の生成と同様に、ノイズ除去を行うことにより、より精度良く異常を検知することができる。
【0079】
また、異常の有無を判定する際には、ベースモデル23に含まれる、局所領域54毎の学習用特徴量22に対して、検知用特徴量24がどの程度離れているか(異常度)が検証される。複数組の学習用画像46が撮影され、複数の学習用特徴量22と検知用特徴量24とが比較されることにより、学習用特徴量22のばらつきを考慮して異常の検知が行われるため、精度良く異常を検知することができる。また、学習用特徴量22の平均および分散共分散行列が考慮されることにより、より精度良く異常を検知することができる。特に、異常度の検証にマハラノビス距離を用いることにより、より精度良く異常を検知することができる。
【0080】
〔第2実施形態〕
第1実施形態に示すように、堆積物により閉塞が発生する異常を検知する際には、時系列メディアンフィルタを用いてノイズ除去を行うことが好適である。さらに、異常の内容に応じて適切なフィルタを用いてノイズ除去を行うこともできる。例えば、流動物(流体)の流れ(流動)が滞る流動異常を検知する場合、流動物を強調されるようにノイズ除去が行われる時系列ミニマムフィルタが用いられる。
【0081】
例えば、バグフィルタ7の直前に活性炭を供給する切り出し部15において、切り出し部15を流動する活性炭が減少する等の流動異常を検知する異常検知において、時系列ミニマムフィルタを用いたノイズ除去が行われても良い。切り出し部15では、一般的に活性炭が常時流動しているため、活性炭を強調するようにノイズ除去処理が行われると、学習用入力データ58における切り出し部15の内部に対応する局所領域54は、一様に活性炭で満たされた状態に対応する特徴量となる。これに対して、活性炭の流動に異常が生じた状態の検知用入力データ59における切り出し部15の内部に対応する局所領域54は、活性炭に対応する特徴量と異なる特徴量となる。そのため、活性炭の流動異常が、容易かつ精度良く検知される。
【0082】
また、時系列ミニマムフィルタを用いてノイズ除去を行う場合も、異常の内容と環境に応じて、フィルタ単位、学習データの長さ等のパラメータやしきい値等の種々の条件が最適化される。切り出し部15における流動異常を検知する際には、例えば、フィルタ単位が30秒、学習データの長さが10分、異常判定の際のしきい値が20に設定され、学習用画像46を撮影してから検知用画像47を撮影するまでの間隔が150秒に設定される。以下、図1図2を参照しながら、図3図6を用いて、具体的な構成例について説明する。なお、図3に示す異常検知装置の構成は、第一実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0083】
まず、学習用入力データ58を生成するために、撮像装置27は、活性炭を供給する切り出し部15の内部を撮影する。撮影は、所定の学習期間(学習データの長さ)中の異なる複数の単位期間(フィルタの単位)内に行われ、それぞれの単位期間中に複数の学習用画像46が取得される。また、それぞれの単位期間中に撮影された複数の学習用画像46を一組の学習用画像群として、複数組の学習用画像群が生成される(図4のステップ#1)。
【0084】
具体的には、撮像装置27は、10分にわたる学習期間(学習データの長さ)中に、継続して切り出し部15の内部を撮影する。撮影は、30秒の長さの単位期間中に300回行われ、学習期間中に複数の単位期間が設けられる。撮影された複数の学習用画像46のうち、30秒(フィルタ単位)の間に撮影された300枚の学習用画像46を一組の学習用画像群として、複数組の学習用画像群が生成される。学習期間中に20個の単位期間が設けられる場合、合計で20枚の学習用画像46が撮影され、1つの単位期間中に撮影された300枚の学習用画像46を一組の学習用画像群として、二十組の学習用画像群が生成される。なお、学習期間中の単位期間は、連続して設けられても良いが、所定の間隔を空けて設けられても良い。画像取得部32は、撮像装置27が撮影した複数の学習用画像46を学習用画像群毎に記憶部33に格納する。
【0085】
次に、輝度データ生成部35は、それぞれの学習用画像46の各画素52の画像データを輝度変換し、学習用輝度データ48を生成する。学習用輝度データ48は、各画素52の輝度値が表されたデータである(図4のステップ#2)。輝度データ生成部35は、生成した学習用輝度データ48から、学習用画像群に対応する輝度データ群50を生成する(図4のステップ#3)。輝度データ生成部35は、生成した学習用輝度データ48および輝度データ群50を記憶部33に格納する。
【0086】
次に、ノイズ除去部36は、輝度データ群50毎に、複数の学習用輝度データ48に対して、時系列ミニマムフィルタを用いてノイズ除去を行い、学習用強調データ51を生成する(図4のステップ#4)。
【0087】
具体的には、図5に示すように、まず、ノイズ除去部36は、一つの輝度データ群50を構成する300枚の学習用輝度データ48から、それぞれの画素52における、300個の輝度値を取得する。次に、ノイズ除去部36は、300個の輝度値の最小値をその画素52の輝度値とする。ノイズ除去部36は、この処理を、全ての画素52に対して行い、各画素52に輝度値の最小値が対応付けられた学習用強調データ51を生成する。学習用強調データ51は、それぞれの輝度データ群50に対して一つずつ生成され、二十組の学習用強調データ51が生成される。ノイズ除去部36は、生成された学習用強調データ51を記憶部33に格納する。
【0088】
次に、特徴量算出部37は、それぞれの学習用強調データ51からSIFT(Scale-Invariant Feature Transform)特徴量を算出して学習用特徴量22とする(図4のステップ#5)。
【0089】
具体的には、図6に示すように、特徴量算出部37は、まず、直径15画素の領域を1つの局所領域54として、学習用強調データ51をマトリクス状に並ぶ複数の局所領域54に分割する。次に、特徴量算出部37は、一つの局所領域54を4分割し、16個のブロック55に分割する。次に、特徴量算出部37は、各ブロック55の輝度を、各ブロック55を構成する画素52の面積で案分して算出する。次に、特徴量算出部37は、各ブロック55について、対象となるブロック55をB0とし、ブロックB0に隣接する8つのブロックB1~ブロックB8を想定する。ブロックB1~ブロックB8は、それぞれ、ブロックB0に対して0°の方向のブロックB1、45°の方向のブロックB2、90°の方向のブロックB3、135°の方向のブロックB4、180°の方向のブロックB5、225°の方向のブロックB6、270°の方向のブロックB7、315°の方向のブロックB8である。
【0090】
次に、特徴量算出部37は、ブロックB0の輝度に対するブロックB1~ブロックB8の輝度の差分(差異量)を輝度勾配として算出する。そして、特徴量算出部37は、各局所領域54について、16個のブロック55に対する、8つの方向に関連付けられた輝度勾配をSIFT特徴量の128次元ベクトル(特徴量ベクトル)とし、128次元の特徴量ベクトルの長さを単位ベクトルに変換し、学習用特徴量22として算出する。なお、SIFT特徴量の算出は、任意の方法で行うことができる。例えば、OpenCV等の画像認識ライブラリのSIFT関数を用いてSIFT特徴量が算出されても良い。
【0091】
次に、学習用入力データ生成部39は、学習用強調データ51毎に、局所領域54の位置と、それぞれの局所領域54の学習用特徴量22とを対応付けて、学習用入力データ58を生成する。学習用入力データ生成部39は、生成した複数の学習用入力データ58を記憶部33に格納する(図4のステップ#6)。
【0092】
次に、ベースモデル生成部41は、複数の学習用入力データ58から、各局所領域54の学習用特徴量22を解析し、各局所領域54の学習用特徴量22に関するベースモデル23を生成する。具体的には、ベースモデル23は、各局所領域54における学習用特徴量22の分散共分散行列と平均がモデル化されたものである。ベースモデル23は、学習用特徴量22の分散共分散行列と平均を示すモデルとして生成されても良いが、さらに、検知用のデータ(後述の検知用入力データ59)が入力されることにより、異常の有無を判定する構成とされても良い。
【0093】
ベースモデル23が生成された後、例えば、最後の学習用画像46が撮影されてから所定の時間が経過した後に、撮像装置27は、切り出し部15の内部を複数の検知用画像47として撮影し、検知用画像47を記憶部33に格納する。例えば、最後の学習用画像46が撮影されてから所定の時間が経過した後に、30秒の期間(フィルタの単位)内に300枚の検知用画像47が撮影される(図4のステップ#7)。次に、輝度データ生成部35は、それぞれの検知用画像47を輝度変換して検知用輝度データ49を生成し、検知用輝度データ49を記憶部33に格納する(図4のステップ#8)。次に、ノイズ除去部36は、複数の検知用輝度データ49を、時系列ミニマムフィルタを用いてノイズ除去し、検知用強調データ57を生成する。ノイズ除去部36は、生成された検知用強調データ57を記憶部33に格納する(図4のステップ#9)。次に、特徴量算出部37は、学習用特徴量22と同様の方法で、検知用強調データ57に対して、検知用特徴量24を算出する(図4のステップ#10)。次に、検知用入力データ生成部42は、検知用強調データ57に対して、局所領域54の位置と、それぞれの局所領域54の検知用特徴量24とを対応付けて、検知用入力データ59を生成する。検知用入力データ生成部42は、生成した検知用入力データ59を記憶部33に格納する(図4のステップ#11)。
【0094】
そして、異常判定部43は、検知用入力データ59とベースモデル23とに基づいて、切り出し部15に異常が生じているか否かを判定する(図4のステップ#12)。
【0095】
具体的には、異常判定部43は、各局所領域54について、学習用入力データ58における学習用特徴量22に対する、検知用入力データ59における検知用特徴量24の異常度を算出する。例えば、異常度は、学習用入力データ58における学習用特徴量22と検知用入力データ59における検知用特徴量24とのマハラノビス距離として算出される。具体的には、学習用入力データ58における各局所領域54の学習用特徴量22の平均ベクトルと分散共分散行列とが求められ、局所領域54毎に、検知用入力データ59における検知用特徴量24とのマハラノビス距離が求められる。局所領域54をj(1,2,・・・)、局所領域jの検知用特徴量24をy、学習用入力データ58の局所領域jの学習用特徴量22の平均ベクトルをμ、学習用入力データ58の局所領域jの学習用特徴量22の分散共分散行列をΣとすると、局所領域jにおけるマハラノビス距離a(j)は、
【数1】
となる。
【0096】
次に、異常判定部43は、算出したマハラノビス距離を所定のしきい値と比較する。しきい値は、例えば、20である。そして、異常判定部43は、いずれかの局所領域54にて、マハラノビス距離が20以上である場合、切り出し部15に異常が検出されたと判定する。
【0097】
なお、ベースモデル23は、ある時間帯において撮影された学習用画像46を用いて生成され、以後、そのベースモデル23が継続的に使用されても良いが、ベースモデル23は、異常判定中または異常判定が行われない期間において、随時に撮影された、異常が検知されなかった学習用画像46を用いて更新されても良い。
【0098】
さらに、異常が検知されると、所定の報知が行われる構成としても良い。報知は、報知部62により制御される。報知部62は、図示しない表示部に、異常が検出された箇所と異常が生じた旨を表示させる。または、報知部62は、ランプまたはスピーカで異常が生じた旨を報知させても良い。また、報知部62は、異常が検知されると、異常度に対応するしきい値に応じて作成された異常度マップに基づいて、対処方法を提示する構成とされても良い。
【0099】
上述のように、切り出し部15を流動する活性炭の流れが滞る場合があり、この流動異常が異常として検知される。
【0100】
異常の検知に用いるベースモデル23は、切り出し部15を流動する活性炭の流れが正常である状態の、切り出し部15の撮影画像(学習用画像46)の学習用特徴量22がモデル化される。異常の検知は、ベースモデル23を用い、学習用画像46の学習用特徴量22と検知用画像47の検知用特徴量24とが、局所領域54毎に比較されることにより行われる。
【0101】
ここで、撮影画像20に流動物がモヤとして撮像される。流動物であるモヤのみを抽出するために、ベースモデル23の生成に用いられる学習用強調データ51の生成の際には、流動物を強調するように、時系列ミニマムフィルタを用いてノイズ除去が行われる。さらに、切り出し部15に生じる流動異常内容とモヤ等の誤認しやすい状況の発生態様に応じて、学習用画像46の撮影におけるフィルタ単位や学習データの長さ等のパラメータを最適化させ、フィルタの単位を30秒とし、学習データの長さを10分として、学習用画像46が撮影される。また、学習用画像46を撮影してから検知用画像47を撮影するまでの間隔は任意の時間でも良いが、例えば、150秒に設定される。
【0102】
また、検知用画像47を撮影する際の、フィルタ単位や学習データの長さ等のパラメータは任意であり、ノイズ除去に用いるフィルタ、およびノイズ除去の要否は任意であるが、学習用入力データ58の生成と同様に、ノイズ除去を行うことにより、より精度良く異常を検知することができる。
【0103】
また、異常の有無を判定する際には、ベースモデル23に含まれる、局所領域54毎の学習用特徴量22に対して、検知用特徴量24がどの程度離れているか(異常度)が検証される。複数組の学習用画像46が撮影され、複数の学習用特徴量22と検知用特徴量24とが比較されることにより、学習用特徴量22のばらつきを考慮して異常の検知が行われるため、精度良く異常を検知することができる。特に、異常度の検証にマハラノビス距離を用いることにより、より精度良く異常を検知することができる。
【0104】
〔別実施形態〕
(1)第1実施形態では、スラグ磨砕機12の供給口における異常の検知を例に説明したが、このような異常検知は、ごみ焼却施設1における、種々の部位の異常の検知に対して適用することができる。
【0105】
その際、フィルタの選択の他に、フィルタ単位、学習データの長さ等のパラメータやしきい値等の種々の条件が、検知対象となる異常の内容や壁の変色等の除去対象の態様に応じて設定される。これにより、異常内容や環境に応じて精度良く異常を検知することができると共に、同じアルゴリズムで異常検知を行いながらパラメータ等を調整することにより、手間なく、汎用性を向上させることができる。
【0106】
第1実施形態に係る異常検知は、例えば、ガス化炉2の下方に貯留された残留物を搬送・排出する排出装置13に、残留物が堆積して、排出装置13を閉塞する異常の検知に用いることもできる。また、第1実施形態に係る異常検知は、砂分離スクリーン14に異物が堆積して砂分離スクリーン14を閉塞する異常の検知に用いることもできる。
【0107】
排出装置13の閉塞異常を検知する際には、例えば、フィルタ単位が3秒、学習データの長さが60秒で1秒間に25枚の撮影画像20が撮影されて、異常判定の際のしきい値が35に設定され、学習用画像46を撮影してから検知用画像47を撮影するまでの間隔が15秒に設定される。なお、撮像位置は排出装置13下流に位置する図示しない不燃物貯留槽の出口部である。
【0108】
砂分離スクリーン14の閉塞異常を検知する際には、例えば、フィルタ単位が3分、学習データの長さが30分で1秒間に5枚の撮影画像20が撮影されて、異常判定の際のしきい値が15に設定され、学習用画像46を撮影してから検知用画像47を撮影するまでの間隔が6分に設定される。
【0109】
(2)学習用特徴量22と検知用特徴量24との異常度は、マハラノビス距離を用いて算出することに限定されず、異常の内容等に応じて、ユークリッド距離等の種々のベクトルを用いた類似度算出方法で算出されても良い。また、特徴量も、SIFT特徴量に限定されず、任意の手法で算出されても良い。
【0110】
(3)上述のように、ノイズ除去に用いられるフィルタは、堆積物による閉塞異常を検知する際には時系列メディアンフィルタが用いられ、流動物の流動異常を検知する際には時系列ミニマムフィルタが用いられるが、その他の異常内容に応じて、異なるフィルタが用いられても良い。これにより、より汎用性が高く、異常を検知することができる。
【0111】
(4)上述のように、ノイズ除去の際には、異常の内容に応じて異なるフィルタが使用されるが、異常検知部28は、あらかじめ複数のフィルタを備え、ノイズ除去の際に使用するフィルタを選択できる構成とされても良い。これにより、異常検知装置は、さらに種々の部位に対する種々の異常を検知でき、さらに汎用性が高くなる。
【0112】
例えば、異常検知装置は、フィルタ選択部63をさらに備え、フィルタ選択部63にて選択されたフィルタを用いてノイズ除去を行う構成とすることができる。
【0113】
さらに、異常検知装置は、パラメータ設定部64を備えても良い。パラメータは、異常の内容等に応じて最適化される。異常検知装置は、パラメータ設定部64を通じて任意のパラメータを設定できる構成とすることにより、より好ましくは、フィルタの選択とパラメータの設定を行うことができる構成とすることにより、新たに必要になった異常検知にも容易に対応することができ、より汎用性高く、異常の検知を行うことができる。
【0114】
なお、異常検知方法および異常検知プログラムにおいても、フィルタの選択およびパラメータの設定を行うことができる構成としても良い。
【0115】
(5)また、局所領域54のサイズも、直径15画素に限らず、検知すべき異常の内容や検出対象の大きさ等に応じて最適化される。例えば、排出装置13の閉塞異常を検知する際には、直径15画素が1つの局所領域54とされ、砂分離スクリーン14の閉塞異常を検知する際には、直径30画素が1つの局所領域54とされ、活性炭の流動異常を検知する際には、直径15画素が1つの局所領域54とされる。これにより、精度良く異常が検知される。
【0116】
(6)局所領域54を16分割する構成に限らず、局所領域54は、任意の数のブロック55に分割されても良い。また、輝度勾配を求める隣接するブロック55の数、すなわち隣接するブロック55の方向は8方向に限らず、4方向等、任意の数の方向のブロック55に対する輝度勾配が求められても良い。
【0117】
その結果、上記例では、16分割されたブロック55のそれぞれに対して、8方向分の輝度勾配が求められて、16×8で128次元の特徴量ベクトルから特徴量が算出されたが、分割されるブロック55の数と輝度勾配が求められる方向の数とで決まる次元数の特徴量ベクトルから特徴量が算出されても良い。
【0118】
分割されるブロック55の数と、輝度勾配が求められる方向の数とは、異常の内容等に応じて最適される。そのため、種々の異常が精度良く検知される。
【0119】
(7)ごみ焼却施設1は、図1に例示する流動床式ガス化溶融炉に限らず、種々の焼却施設に対して、上記異常検知を適用することができる。例えば、ストーカ式焼却炉や流動床式ガス化燃焼炉等に適用することができる。
【0120】
ストーカ式焼却炉では、ストーカ炉から排出されるじん灰や主灰の排出経路において、時系列メディアンフィルタを用いてノイズ除去を行うことにより、じん灰や主灰が堆積することによる閉塞異常を検知することができる。また、エコノマイザやバグフィルタから排出される飛灰の排出経路や、活性炭を供給する切り出し部において、時系列ミニマムフィルタを用いてノイズ除去を行うことにより、飛灰や活性炭の流動異常を検知することができる。
【0121】
また、流動床式ガス化燃焼炉では、排出装置13において、時系列メディアンフィルタを用いてノイズ除去を行うことにより、残留物が堆積することによる閉塞異常を検知することができる。また、エコノマイザやバグフィルタから排出される飛灰の排出経路や、活性炭を供給する切り出し部において、時系列ミニマムフィルタを用いてノイズ除去を行うことにより、飛灰や活性炭の流動異常を検知することができる。
【0122】
また、流動床式ガス化溶融炉でも、上記以外に、エコノマイザやバグフィルタから排出される飛灰の排出経路において、時系列ミニマムフィルタを用いてノイズ除去を行うことにより、飛灰や活性炭の流動異常を検知することができる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、流動床式ガス化溶融炉、ストーカ式焼却炉、流動床式ガス化燃焼炉等の廃棄物処理施設の、種々の部位における種々の異常検知に適用することができる。
【符号の説明】
【0124】
1 ごみ焼却施設
20 撮影画像
21 強調データ
22 学習用特徴量
23 ベースモデル
24 検知用特徴量
27 撮像装置
35 輝度データ生成部
36 ノイズ除去部
37 特徴量算出部
39 学習用入力データ生成部
41 ベースモデル生成部
42 検知用入力データ生成部
43 異常判定部
46 学習用画像
47 検知用画像
48 学習用輝度データ
49 検知用輝度データ
50 輝度データ群
51 学習用強調データ
52 画素
54 局所領域
55 ブロック
57 検知用強調データ
58 学習用入力データ
59 検知用入力データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7