(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ノイズフィルタ
(51)【国際特許分類】
H02M 1/12 20060101AFI20241002BHJP
H03H 7/09 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
H02M1/12
H03H7/09 A
(21)【出願番号】P 2021024212
(22)【出願日】2021-02-18
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 崇
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 聖也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 篤弘
(72)【発明者】
【氏名】野村 勝也
(72)【発明者】
【氏名】水野 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】杉田 昌行
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-135271(JP,A)
【文献】特開2005-204438(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110310801(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/12
H03H 7/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相電源から発生するコモンモードノイズを抑制するノイズフィルタであって、
第1入力端子と第1出力端子とを接続している第1導電線と、
第2入力端子と第2出力端子とを接続している第2導電線と、
第3入力端子と第3出力端子とを接続している第3導電線と、
前記第1導電線、前記第2導電線および前記第3導電線の周囲の少なくとも一部を取り囲んでいる磁性体と、
基板と、
を備えており、
前記第1導電線、前記第2導電線および前記第3導電線の各々が備える長手方向軸が互いに平行であるとともに同一平面内に位置している特定領域が存在しており、
前記基板および前記磁性体は、前記特定領域内に配置されており、
前記基板は、
渦巻き状の第1分岐線であって、一端が前記第1導電線に接続されており、他端が第1コンデンサを介してグラウンドに接続している前記第1分岐線と、
渦巻き状の第2分岐線であって、一端が前記第2導電線に接続されており、他端が第2コンデンサを介してグラウンドに接続している前記第2分岐線と、
渦巻き状の第3分岐線であって、一端が前記第3導電線に接続されており、他端が第3コンデンサを介してグラウンドに接続している前記第3分岐線と、
を備えており、
前記磁性体は、
前記第1分岐線の中心を通り前記基板を貫通している第1ピラー部分と、
前記第2分岐線の中心を通り前記基板を貫通している第2ピラー部分と、
前記第3分岐線の中心を通り前記基板を貫通している第3ピラー部分と、
前記基板の第1面側において前記第1導電線、前記第2導電線および前記第3導電線の周囲を一体に取り囲んでいる第1環状部であって、前記第1ピラー部分、前記第2ピラー部分および前記第3ピラー部分の前記基板の第1面側の端部に接続している前記第1環状部と、
前記基板の第2面側において前記第1導電線、前記第2導電線および前記第3導電線の周囲を一体に取り囲んでいる第2環状部であって、前記第1ピラー部分、前記第2ピラー部分および前記第3ピラー部分の前記基板の第2面側の端部に接続している前記第2環状部と、
を備えている、ノイズフィルタ。
【請求項2】
前記特定領域内に配置されている前記第1導電線、前記第2導電線および前記第3導電線は、板状形状である、請求項1に記載のノイズフィルタ。
【請求項3】
前記基板は、前記第1導電線、前記第2導電線および前記第3導電線の側面に配置されており、
前記第1導電線、前記第2導電線および前記第3導電線は、前記基板を貫通していない、請求項1または2に記載のノイズフィルタ。
【請求項4】
前記第1環状部および前記第2環状部は、
前記第1ピラー部分と前記第2ピラー部分とを接続する第1部分と、
前記第2ピラー部分と前記第3ピラー部分とを接続する第2部分と、
前記第3ピラー部分と前記第1ピラー部分とを接続する第3部分と、
を備えており、
前記第3部分の長さは、前記第1部分および前記第2部分の長さよりも長く、
前記第3部分の長手方向に垂直な断面の面積は、前記第1部分および前記第2部分の長手方向に垂直な断面の面積よりも大きい、請求項1~3の何れか1項に記載のノイズフィルタ。
【請求項5】
前記第1ピラー部分、前記第2ピラー部分および前記第3ピラー部分の各々が備える長手方向軸が、互いに平行であるとともに同一平面内に位置している、請求項4に記載のノイズフィルタ。
【請求項6】
前記第1環状部および前記第2環状部は、前記第1ピラー部分、前記第2ピラー部分および前記第3ピラー部分を備えた第1構造体と、前記第1部分に対向している第2構造体とに分割されており、
前記第1構造体と前記第2構造体とを互いに固定する固定部材をさらに備える、請求項4または5に記載のノイズフィルタ。
【請求項7】
前記第1環状部と前記第2環状部との間に配置され、前記第1導電線の周囲を取り囲んでいる第1電流センサと、
前記第1環状部と前記第2環状部との間に配置され、前記第2導電線の周囲を取り囲んでいる第2電流センサと、
前記第1環状部と前記第2環状部との間に配置され、前記第3導電線の周囲を取り囲んでいる第3電流センサと、
をさらに備える、請求項1~6の何れか1項に記載のノイズフィルタ。
【請求項8】
前記第1入力端子、第2入力端子および第3入力端子の各々には、3相電源回路から出力される3相交流電力が供給され、
前記第1分岐線の他端、前記第2分岐線の他端および前記第3分岐線の他端は、前記3相電源回路の正側の直流電源線、または、前記3相電源回路の負側の直流電源線、または、前記正側の直流電源線と前記負側の直流電源線との間をコンデンサで分圧した中間電位部にグラウンドしている、請求項1~7の何れか1項に記載のノイズフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、ノイズフィルタに関する。特に、3相電源から発生するコモンモードノイズを抑制するノイズフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている3相ノイズフィルタは、コモンモード電流抽出回路を備えている。コモンモード電流抽出回路は、電源ラインから分岐した分岐線に配置された、3個の単相リアクトルとコンデンサを備えている。3個の単相リアクトルの各々の巻線は、三相の中の任意の2つの相の組み合わせに属する2つの巻線が直列に接続されて3個の巻線対を形成している。コモンモード電流に対して鉄心の磁束を打ち消しあうことで、各単相リアクトルは、コモンモード電流に対してインダクタンスを示さないようになっている。コモンモード電流抽出回路は、コモンモードに対しては低インピーダンスを、ノーマルモードに対しては高インピーダンスを示す。そのため、コモンモード電流のみをバイパスし、信号であるノーマルモード電流は負荷に伝えるというモード選択的な動作が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、3個の単相リアクトルは、三相の中の任意の2つの相の組み合わせにより構成されている。構造が複雑であり、分岐線の配線パターンが長くなってしまう結果、分岐線のコモンモードに対する寄生インダクタンスが大きくなってしまい、コモンモードノイズのフィルタ性能が悪化してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示するノイズフィルタの一実施形態は、3相電源から発生するコモンモードノイズを抑制するノイズフィルタである。ノイズフィルタは、第1入力端子と第1出力端子とを接続している第1導電線を備える。ノイズフィルタは、第2入力端子と第2出力端子とを接続している第2導電線を備える。ノイズフィルタは、第3入力端子と第3出力端子とを接続している第3導電線を備える。ノイズフィルタは、第1導電線、前記第2導電線および第3導電線の周囲の少なくとも一部を取り囲んでいる磁性体を備える。ノイズフィルタは、基板を備える。第1導電線、第2導電線および第3導電線の各々が備える長手方向軸が互いに平行であるとともに同一平面内に位置している特定領域が存在している。基板および磁性体は、特定領域内に配置されている。基板は、渦巻き状の第1分岐線であって、一端が第1導電線に接続されており、他端が第1コンデンサを介してグラウンドに接続している第1分岐線を備える。基板は、渦巻き状の第2分岐線であって、一端が第2導電線に接続されており、他端が第2コンデンサを介してグラウンドに接続している第2分岐線を備える。基板は、渦巻き状の第3分岐線であって、一端が第3導電線に接続されており、他端が第3コンデンサを介してグラウンドに接続している第3分岐線を備える。磁性体は、第1分岐線の中心を通り基板を貫通している第1ピラー部分を備える。磁性体は、第2分岐線の中心を通り基板を貫通している第2ピラー部分を備える。磁性体は、第3分岐線の中心を通り基板を貫通している第3ピラー部分を備える。磁性体は、基板の第1面側において第1導電線、第2導電線および第3導電線の周囲を一体に取り囲んでいる第1環状部であって、第1ピラー部分、第2ピラー部分および第3ピラー部分の基板の第1面側の端部に接続している第1環状部を備える。磁性体は、基板の第2面側において第1導電線、第2導電線および第3導電線の周囲を一体に取り囲んでいる第2環状部であって、第1ピラー部分、第2ピラー部分および第3ピラー部分の基板の第2面側の端部に接続している第2環状部を備える。
【0006】
上記実施形態のノイズフィルタでは、第1~第3導電線の周囲に磁性体を配設するとともに、第1~第3分岐線を有する基板を備える。第1~第3分岐線のコモンモード電流に対する寄生インダクタンスを減ずることができる。分岐線に複雑な構造を配置する必要がないため、分岐線の寄生インダクタンスの増大を抑制することができる。これらの効果により、コモンモードノイズのフィルタ性能を向上させることができる。
【0007】
特定領域内に配置されている第1導電線、第2導電線および第3導電線は、板状形状であってもよい。効果の詳細は、実施例で説明する。
【0008】
基板は、第1導電線、第2導電線および第3導電線の側面に配置されていてもよい。第1導電線、第2導電線および第3導電線は、基板を貫通していなくてもよい。効果の詳細は、実施例で説明する。
【0009】
第1環状部および第2環状部は、第1ピラー部分と第2ピラー部分とを接続する第1部分を備えていてもよい。第1環状部および第2環状部は、第2ピラー部分と第3ピラー部分とを接続する第2部分を備えていてもよい。第1環状部および第2環状部は、第3ピラー部分と第1ピラー部分とを接続する第3部分を備えていてもよい。第3部分の長さは、第1部分および第2部分の長さよりも長くてもよい。第3部分の長手方向に垂直な断面の面積は、第1部分および第2部分の長手方向に垂直な断面の面積よりも大きくてもよい。効果の詳細は、実施例で説明する。
【0010】
第1ピラー部分、第2ピラー部分および第3ピラー部分の各々が備える長手方向軸が、互いに平行であるとともに同一平面内に位置していてもよい。効果の詳細は、実施例で説明する。
【0011】
第1環状部および第2環状部は、第1ピラー部分、第2ピラー部分および第3ピラー部分を備えた第1構造体と、第1部分に対向している第2構造体とに分割されていてもよい。第1構造体と第2構造体とを互いに固定する固定部材をさらに備えていてもよい。
【0012】
ノイズフィルタは、第1環状部と第2環状部との間に配置され、第1導電線の周囲を取り囲んでいる第1電流センサを備えていてもよい。ノイズフィルタは、第1環状部と第2環状部との間に配置され、第2導電線の周囲を取り囲んでいる第2電流センサを備えていてもよい。ノイズフィルタは、第1環状部と第2環状部との間に配置され、第3導電線の周囲を取り囲んでいる第3電流センサを備えていてもよい。
【0013】
第1入力端子、第2入力端子および第3入力端子の各々には、3相電源回路から出力される3相交流電力が供給されてもよい。第1分岐線の他端、第2分岐線の他端および第3分岐線の他端は、3相電源回路の正側の直流電源線、または、3相電源回路の負側の直流電源線、または、正側の直流電源線と負側の直流電源線との間をコンデンサで分圧した中間電位部にグラウンドしていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1のノイズフィルタ1の斜視図である。
【
図2】実施例1のノイズフィルタ1の分解斜視図である。
【
図6】第2種の磁路MC21~MC23を示す図である。
【
図7】第3種の磁路MC31およびMC32を示す図である。
【
図8】ノイズフィルタ1のコモンモードに対する等価回路(その1)である。
【
図9】ノイズフィルタ1のコモンモードに対する等価回路(その2)である。
【
図10】ノイズフィルタ1のコモンモード電流の経路を示す図である。
【
図11】ノイズフィルタ1のノーマルモード電流の経路を示す図である。
【
図12】ノイズフィルタ1のノーマルモードに対する等価回路である。
【
図13】ノイズフィルタ1のコモンモード電流の経路を示す図である。
【
図14】ノイズフィルタ1のノーマルモード電流の経路を示す図である。
【
図15】ノイズフィルタ1のノーマルモードに対する等価回路である。
【
図16】ノイズフィルタ1を3相電源回路70に接続した状態を示す等価回路である。
【
図17】ノイズフィルタ1を3相電源回路70に接続した状態を示す等価回路の比較例である。
【
図18】ノイズフィルタ1を3相電源回路70に接続した状態を示す等価回路の変形例である。
【
図19】実施例2のノイズフィルタ101の一部斜視図である。
【
図20】実施例3のノイズフィルタ201の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
以下、本明細書が開示する技術が適用されたノイズフィルタについて説明する。なお、以下で参照する各図において、実質的に機能が共通する構成要素については共通の符号を付し、その説明を省略することがある。
【0016】
<ノイズフィルタの構成>
図1にノイズフィルタ1の斜視図、
図2にその分解斜視図、
図3に基板50を裏面から見た斜視図を示す。ノイズフィルタ1は、3相電源から発生するコモンモードノイズを抑制する3相フィルタである。ノイズフィルタ1は、第1導電線11~第3導電線13、磁性体30、基板50を備えている。
【0017】
第1導電線11~第3導電線13は、平板状に成形された金属のバスバーで構成されている。第1導電線11は、第1入力端子IN1と第1出力端子OUT1とを接続している。第2導電線12は、第2入力端子IN2と第2出力端子OUT2とを接続している。第3導電線13は、第3入力端子IN3と第3出力端子OUT3とを接続している。第1入力端子IN1~第3入力端子IN3は、ノイズ源となる電力変換器(不図示)に接続されている。本実施例では、第1入力端子IN1~第3入力端子IN3には、不図示の3相電源回路から出力される3相交流電力が供給される。第1出力端子OUT1~第3出力端子OUT3は、モータ等の負荷(不図示)に接続されている。
図1および
図2では、第1導電線11~第3導電線13の各々が備える長手方向軸LA1~LA3が互いに平行であるとともに同一平面内に位置している。換言すると、導電線の長手方向軸の方向からみたときに、第1導電線11~第3導電線13が直線状に整列している。第1導電線11~第3導電線13がこのように整列している領域を、特定領域SAと定義する。
【0018】
第1導電線11は、第1分岐部11j、第1入力側導電線11A、第1出力側導電線11B、を備える。第1分岐部11jは、第1入力端子IN1と第1出力端子OUT1との間に配置されている。第1分岐部11jは、第1導電線11に溶接された金属のフランジ部である。第1分岐部11jは、締結部41(例:ボルト、ナット)を介して、基板50の第1分岐電極51tに接続されている。第1入力側導電線11Aは、第1入力端子IN1と第1分岐部11jとの間を延びている導電線である。第1出力側導電線11Bは、第1分岐部11jと第1出力端子OUT1との間を延びている導電線である。
【0019】
同様にして、第2導電線12は、第2分岐部12j、第2入力側導電線12A、第2出力側導電線12B、を備える。また第3導電線13は、第3分岐部13j、第3入力側導電線13A、第3出力側導電線13B、を備える。これらの構成は、第1導電線11が備える構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0020】
基板50は、特定領域SA内において、第1導電線11、第2導電線12および第3導電線13の側面に配置されている。第1導電線11~第3導電線13は、基板50を貫通していない。基板50は、第1分岐電極51t~第3分岐電極53t、孔部51h~53h、第1分岐線11C~第3分岐線13C、第1コンデンサ21~第3コンデンサ23、グラウンド電極50g、を備えている。第1分岐電極51t~第3分岐電極53tの各々は、締結部41~43を介して、第1分岐部11j~第3分岐部13jに電気的に接続されている。
【0021】
基板50の表面に配置されている第1分岐線11Cは、基板50の上方(+z方向)からみたときに、第1分岐電極51tを起点として孔部51hの周囲を反時計回りに略一周している。第1分岐線11Cの端部11Ceは、ビア配線(不図示)を介して基板50の裏面側に延びている(
図3参照)。基板50の裏面に配置されている第1分岐線11Cは、端部11Ceを起点として孔部51hの周囲を反時計回りに略一周している。第1分岐線11Cの終端部は、第1コンデンサ21を介してグラウンド電極50gへ接続している。グラウンド電極50gは、後述するグラウンド部GNDに接続される。すなわち第1分岐線11Cは、コイルパターンを形成している。なお、第2分岐線12Cおよび第3分岐線13Cの構造は、第1分岐線11Cと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0022】
磁性体30は、特定領域SA内において、第1導電線11~第3導電線13の周囲の少なくとも一部を取り囲んでいる部材である。磁性体30は、下側磁性体30Bと上側磁性体30Aとを組み合わせて構成されている。磁性体30は、Mn-Zn、Ni-Zn等の材料を焼結したフェライト等を成形した磁性プレートである。
【0023】
上側磁性体30Aは、第1ピラー部分30Ap1~第3ピラー部分30Ap3、および、第1環状部30Arを備えている。第1環状部30Arは、第1ピラー部分30Ap1~第3ピラー部分30Ap3の上端部を互いに接続している。第1環状部30Arは、+z方向からみたときの上面視において、略長方形のリング形状を有している。第1環状部30Arは、第1入力側導電線11A~第3入力側導電線13Aの周囲を取り囲んでいる。
【0024】
同様にして、下側磁性体30Bは、第1ピラー部分30Bp1~第3ピラー部分30Bp3、および、第2環状部30Brを備えている。第2環状部30Brは、第1ピラー部分30Bp1~第3ピラー部分30Bp3の下端部を互いに接続している。第2環状部30Brは、上面視において、略長方形のリング形状を有している。第2環状部30Brは、第1出力側導電線11B~第3出力側導電線13Bの周囲を取り囲んでいる。
【0025】
第1ピラー部分30Ap1~第3ピラー部分30Ap3の各々が備える長手方向軸は、互いに平行であるとともに同一平面内に位置している。また、第1ピラー部分30Bp1~第3ピラー部分30Bp3の各々が備える長手方向軸は、互いに平行であるとともに同一平面内に位置している。第1ピラー部分30Bp1~第3ピラー部分30Bp3の各々は、基板50の孔部51h~53hを介して、第1ピラー部分30Ap1~第3ピラー部分30Ap3に接続している。すなわち、第1ピラー部分30Bp1~第3ピラー部分30Bp3の各々は、第1分岐線11C~第3分岐線13Cの中心を通って、基板50を垂直に貫通している。
【0026】
図4に、磁性体30の拡大斜視図を示す。第1環状部30Arは、第1部分30Ar1~第3部分30Ar3を備えている。第1部分30Ar1は、第1ピラー部分30Ap1と第2ピラー部分30Ap2とを接続する部分である。第2部分30Ar2は、第2ピラー部分30Ap2と第3ピラー部分30Ap3とを接続する部分である。第3部分30Ar3は、第3ピラー部分30Ap3と第1ピラー部分30Ap1とを接続する部分である。
【0027】
図1および
図2に示すように、第1導電線11~第3導電線13が直線状に整列しているため、長手方向軸からみたとき(すなわちz方向からみたとき)の各導電線の配置が非対称である。そのため、磁性体30の磁路長も非対称となる。すなわち、第1部分30Ar1~第3部分30Ar3の各々の周方向の長さを、磁路長ML1~磁路長ML3と定義する。磁路長ML1およびML2は、互いに等しい。一方、磁路長ML3は、磁路長ML1およびML2に比して長い。
【0028】
第1環状部30Arの-y方向側の長辺(すなわち、第1部分30Ar1および第2部分30Ar2を含んでいる長辺)の幅をW1とする。第1環状部30Arの+y方向側の長辺(すなわち、第3部分30Ar3で形成されている長辺)の幅をW2とする。幅W2は幅W1よりも大きい。また第1環状部30Arの高さH1は、全周に亘って一定である。従って、第3部分30Ar3の断面積CS3は、第1部分30Ar1の断面積CS1および第2部分30Ar2の断面積CS2よりも大きい。
【0029】
なお、第2環状部30Brは、上述した第1環状部30Arの構造をxy平面に対して対称にした構造を有している。よって詳細な説明は省略する。
【0030】
第1ピラー部分30Ap1と30Bp1との間には、ギャップG1が形成されている。第2ピラー部分30Ap2と30Bp2との間には、ギャップG2が形成されている。第3ピラー部分30Ap3と30Bp3との間には、ギャップG3が形成されている。これらのギャップG1~G3の距離等を調整することにより、第1入力側導電線11A~第3入力側導電線13Aと第1出力側導電線11B~第3出力側導電線13Bとのの間に生じる相互インダクタンスを調整することができる。
【0031】
<ノイズフィルタ1の3つの機能>
図5~
図7に示すように、磁性体30は、3種類の磁路を備えている。この3種類の磁路によって、以下の3つの機能が実現できる。
図5に示す第1種の磁路MC1は、第1入力側導電線11A~第3入力側導電線13Aと第1出力側導電線11B~第3出力側導電線13Bとを磁気結合させる磁路である。これにより、第1分岐線211C~第3分岐線213Cのコモンモード電流に対する寄生インダクタンスを減少させることができる。第1の機能として、ノーマルモード電流を選択的に負荷に伝えるという、モード選択ノイズフィルタが実現できる。
【0032】
図6に示す第2種の磁路MC21~MC23は、第1分岐線11C~第3分岐線13Cのノーマルモード電流に対して強め合う磁束が流れる磁路である。第2の機能として、第1分岐線211C~第3分岐線213Cにノーマルモードチョークコイルを配置することができる。
【0033】
図7に示す第3種の磁路MC31およびMC32は、3本の第1入力側導電線11A~第3入力側導電線13Aおよび3本の第1出力側導電線11B~第3出力側導電線13Bをそれぞれ取り囲んでいる。第3の機能として、主電流配線のコモンモードインピーダンスを高めることで、主電流配線にコモンモードチョークコイルを配置することができる。各機能について、以下に説明する。
【0034】
<第1の機能(モード選択ノイズフィルタ)>
ノイズフィルタ1のコモンモードに対する等価回路を
図8および
図9に示す。第1入力側導電線11A~第3入力側導電線13Aの各々には、その配線パターンに起因したインダクタンスL
11A~L
13Aが存在している。第1出力側導電線11B~第3出力側導電線13Bの各々にも、その配線パターンに起因したインダクタンスL
11B~L
13Bが存在している。第1分岐線11C~第3分岐線13Cには、その配線パターンに起因したインダクタンスと第1コンデンサ21~第3コンデンサ23の等価直列インダクタンス(ESL:Equivalent Series Inductance)の合計である、インダクタンスL
11C~L
13Cが存在している。
【0035】
図10に示すように、コモンモード電流に対しては、3線ですべて同じ向きにu相、v相、w相の電流UI、VI、WIが流れる。磁性体30には、同じ向きの磁束UF、VF、WFが発生して強め合う。この磁束は、第1入力側導電線11A~第3入力側導電線13Aと第1出力側導電線11B~第3出力側導電線13Bの磁気結合を強める。第1入力側導電線11A~第3入力側導電線13Aの一部と、第1出力側導電線11B~第3出力側導電線13Bの一部とが正の磁気結合をし、これらの間に正の相互インダクタンスM
1~M
3が生じる(
図8参照)。そして第1分岐線11C~第3分岐線13Cに負の相互インダクタンスが発生し、寄生インダクタンスが低減される(
図9参照)。すなわち、正の相互インダクタンスM
1~M
3の各々は、第1分岐線11C~第3分岐線13CのインダクタンスL
11C~L
13Cから減算される。
【0036】
一方、ノーマルモード電流は、3線の電流の和が0になるように流れる。ここでは例として、対称な3相交流を用いて説明する。対称な3相交流では、3相の第1導電線11~第3導電線13を120°ごとに位相がずれた状態で流れる。そして、導電線の周辺に発生する磁束は、重ねた3線に流れる電流を足し合わせたものに比例する。従って、ノーマルモードでの導電線の周辺の磁束は、位相にかかわらず0となる。
【0037】
例えば、電流の振幅を1とすると、ある位相θでの電流UIはsinθ、電流VIはsin(θ-120°)、電流WIはsin(θ-240°)、となる。θ=90°の各相の電流が入力された場合、ノーマルモード電流の流れは
図11に示すようになる。電流VIおよびWIの向きは、電流UIと逆向きになる。また電流VIおよびWIの大きさは、電流UIの半分となる。よって磁束VFおよびWFの向きが磁束UFと逆向きになり、互いに打ち消し合うため、第1入力側導電線11A~第3入力側導電線13Aと第1出力側導電線11B~第3出力側導電線13Bとの磁気結合は小さくなる。なお
図11では、大きな電流UIおよび磁束UFを実線で記載し、小さな電流VI、WIおよび磁束VF、WFを点線で記載している。上記の関係は、θがどんな値でも成り立つ。相互インダクタンスが発生しないため、
図12の等価回路に示すように、ノーマルモード電流に対しては、第1分岐線11C~第3分岐線13CのインダクタンスL
11C~L
13Cの低減効果はほとんどなくなる。なお
図12では、後述のノーマルモードチョークコイルは省略している。
【0038】
磁性体30が備える磁路MC1(
図5)により、第1分岐線11C~第3分岐線13Cの寄生インダクタンスを、コモンモード電流に対して減少させることができる。第1分岐線11C~第3分岐線13Cを、コモンモードに対しては低インピーダンスを示し、ノーマルモードに対しては高インピーダンスを示すように構成することができる。不要成分であるコモンモード電流のみをグラウンドへバイパスし、必要成分であるノーマルモード電流を選択的に負荷(すなわち第1出力端子OUT1~第3出力端子OUT3)に伝えるという、モード選択的な動作が可能となる。すなわち、コモンモード電流に対してのみ、高周波でのフィルタ性能を向上させることができる。
【0039】
<第2の機能(ノーマルモードチョークコイル)>
図13に、コモンモード電流の流れ方を示す。磁路MC21(
図6参照)が形成される領域において、第1分岐線11Cおよび第2分岐線12Cには、コモンモードの電流UIおよびVIが互いに逆向きに流れる。同様に、磁路MC22が形成される領域において、第2分岐線12Cおよび第3分岐線13Cには、コモンモードの電流VIおよびWIが互いに逆向きに流れる。同様に、磁路MC23が形成される領域において、第3分岐線13Cおよび第1分岐線11Cには、コモンモードの電流WIおよびUIが互いに逆向きに流れる。従って磁束を打ち消し合うため、コモンモード電流に対してはほとんどインダクタンスを示さない。その結果、コモンモードにおける等価回路は、前述した
図9と同様になる。すなわちコモンモード電流に対しては、第1分岐線11C~第3分岐線13Cにインダクタンスは追加されない。
【0040】
一方、ノーマルモード電流の流れを
図14に示す。
図14では、θ=90°の各相の電流が入力された場合を示している。磁路MC21が形成される領域において、第1分岐線11Cおよび第2分岐線12Cにはノーマルモードの電流UIおよびVIが同方向に流れる。また磁路MC23が形成される領域において、第3分岐線13Cおよび第1分岐線11Cにはノーマルモードの電流WIおよびUIが同方向に流れる。磁路MC21および磁路MC23が形成される領域では、磁束が強め合うため、インダクタンスが増加する。
【0041】
図15に、ノーマルモードにおける等価回路を示す。ノーマルモードチョークコイルによって、第1分岐線11C~第3分岐線13CにインダクタンスL
NMが追加されている。これにより、ノーマルモード電流に対しては、第1分岐線11C~第3分岐線13Cは高インピーダンスとなる。
【0042】
以上より、磁性体30が備える磁路MC21~MC23(
図6)により、第1分岐線11C~第3分岐線13Cへのノーマルモード電流の流入を抑制するノーマルモードチョークコイルを形成することができる。
【0043】
なお、入力側導電線11Aを流れる電流UIの値と出力側導電線11Bを流れる電流UIの値とは異なる。電流UIが第1分岐線11Cで分流するためである(キルヒホッフの電流則)。これは、電流VIおよびWIについても同様である。例えば、電流VIが第2入力端子IN2から第2出力端子OUT2へ流れる場合(
図13)、および、電流VIが第2出力端子OUT2から第2入力端子IN2へ流れる場合(
図14)において、第2入力側導電線12Aを流れる電流VIの値は、第2出力側導電線12Bおよび第2分岐線12Cを流れる電流VIの値の合計と等しくなる。しかしこれらの電流値の差の影響は小さいため、本明細書では無視している。
【0044】
<第3の機能(コモンモードチョークコイル)>
第3の機能を説明する。第1環状部30Arは、第1入力側導電線11A~第3入力側導電線13Aの周囲を取り囲んでいる。コモンモードでは、第1入力側導電線11A~第3入力側導電線13Aのすべてで、同じ向きにu相、v相、w相の電流UI、VI、WIが流れる。従って磁路MC31(
図7参照)を通る磁束が強め合うため、第1入力側導電線11A~第3入力側導電線13Aのインダクタンスがコモンモードに対して高インピーダンスとなる。同様にして、第2環状部30Brは、第1出力側導電線11B~第3出力側導電線13Bの周囲を取り囲んでいる。磁路MC32を通る磁束が強め合うため、第1出力側導電線11B~第3出力側導電線13Bのインダクタンスがコモンモードに対して高インピーダンスとなる。以上より、磁性体30が備える磁路MC31およびMC32により、コモンモード電流の第1出力端子OUT1~第3出力端子OUT3への伝達を抑制する、コモンモードチョークコイルを形成することが可能となる。
【0045】
<効果>
モータ駆動用インバータとモータとを一つの筐体に収めた、モータ・インバータ一体化構造が知られている。この構造では、インバータの3相出力端子とモータの3相入力端子との接続配線が短くなるとともに、筐体内に余分な空間が少なくなるため、3相配線へのフィルタ搭載条件が厳しくなる。本明細書の技術では、上述した第1~第3の機能を有する高性能なノイズフィルタ1を、1つの磁性体30によって実現することができるため、ノイズフィルタ1を小型化することが可能となる。ノイズフィルタ1の搭載性を向上させることができるため、モータ・インバータ一体化構造への搭載が可能となる。例えば
図1に示すように、ノイズフィルタ1を含んだ第1導電線11~第3導電線13を一体形成しておき、第1入力端子IN1~第3入力端子IN3をインバータの3相出力端子にねじ止めまたは溶接するとともに、第1出力端子OUT1~第3出力端子OUT3をモータの3相入力端子にねじ止めまたは溶接してもよい。
【0046】
本明細書の技術では、磁性体30は、直線状に整列している第1導電線11~第3導電線13の周囲に配置可能な形状を有している。これにより、ノイズフィルタ1を薄型化できるため、搭載性を向上させることが可能となる。
【0047】
図4に示すように、第3部分30Ar3の磁路長ML3は、第1部分30Ar1の磁路長ML1および第2部分30Ar2の磁路長ML2に比して長い。そこで本明細書の技術では、第3部分30Ar3の断面積CS3を、第1部分30Ar1の断面積CS1および第2部分30Ar2の断面積CS2よりも大きくしている。これにより、第3部分30Ar3の磁気抵抗を第1部分30Ar1および第2部分30Ar2と同等にすることができる。また同様に、第3部分30Br3の断面積を第1部分30Br1の断面積および第2部分30Br2の断面積よりも大きくすることで、第3部分30Br3の磁気抵抗を第1部分30Br1および第2部分30Br2と同等にすることができる。よって磁束の流れを3相に対して均一にでき、磁気結合の対称性を保つことができる。3相の各導電線のインピーダンスの誤差を小さくすることができるため、3相インバータの特定の動作時にフィルタ効果が悪化してしまう事態を防止することができる。
【0048】
<グラウンド部GNDの例>
図16を用いて、グラウンド電極50gが接続されるグラウンド部GNDの一態様を説明する。
図16は、本実施形態のノイズフィルタ1を3相電源回路70に接続した状態を示す、等価回路である。なお
図16では、第1種の磁路MC1(
図5)で実現されるモード選択ノイズフィルタを、第1フィルタF1として示している。第2種の磁路MC21~MC23(
図6)で実現されるノーマルモードチョークコイルで構成されるノイズフィルタを、第2フィルタF2として示している。第3種の磁路MC31およびMC32(
図7)で実現されるコモンモードチョークコイルで構成されるノイズフィルタを、第3フィルタF3として示している。
【0049】
3相電源回路70は、直流電源71、ブリッジ部72、正側直流電源線73p、負側直流電源線73m、グラウンド線74、を備えている。正側直流電源線73pは、直流電源71の正極とブリッジ部72の上側アームとを接続する電源線である。負側直流電源線73mは、直流電源71の負極とブリッジ部72の下側アームとを接続する電源線である。グラウンド線74は、ノイズフィルタ1のグラウンド電極50gと正側直流電源線73pとを接続している。すなわち、グラウンド電極50gと正側直流電源線73pとの接続ノードが、グラウンド部GNDに相当する。
【0050】
図17の比較例を用いて、効果を説明する。
図17は、ノイズフィルタ1のグラウンド電極50gを、3相電源回路70の金属筐体75に接続した状態を示している。
図17では、金属筐体75を導電線で示している。
図17の比較例では、グラウンド電極50gは、寄生容量PCを経由して、正側直流電源線73pおよび負側直流電源線73mに接続される。そして寄生容量PCは、容量値が小さい。これは、寄生容量PCは、ブリッジ部72とその冷却器との間の絶縁体によって構成されるためである。すると、
図17の比較例では、コモンモード電流が流れにくくなってしまう。そこで
図16の本実施形態に示すように、グラウンド電極50gを3相電源回路70の正側直流電源線73pに直接接続することで、コモンモード電流をより流しやすくすることができる。ノイズフィルタ1の効果をより高めることが可能となる。
【0051】
なお、グラウンド電極50gを負側直流電源線73mに接続しても、同様の効果が得られる。また、
図18に示すように、正側直流電源線73pと負側直流電源線73mとの間を、コンデンサC1およびC2を介して接続してもよい。コンデンサC1およびC2の容量値は、互いに異なっていてもよい。コンデンサC1およびC2は、ノイズ電流を妨げない程度の容量値とすればよい。例えば寄生容量PCの容量値が10nF以下の場合には、コンデンサC1およびC2の容量値は1μF以上としてもよい。そしてグラウンド線74の一端を、コンデンサC1とC2との接続経路上に接続してもよい。すなわち、コンデンサC1およびC2で分圧された中間電位部が、グラウンド部GNDに相当する。この構成によっても、同様の効果が得られる。
【実施例2】
【0052】
実施例2のノイズフィルタ101は、実施例1のノイズフィルタ1(
図1~
図4)に対して、電流センサ161~163を追加するとともに、電流センサに対応した基板150を備えた形態である。実施例1のノイズフィルタ1と同様の部位には同一符号を付すことで、説明を省略する。
図19に、実施例2のノイズフィルタ101における、電流センサ161~163および基板150の斜視図を示す。なお
図19では、第1導電線11~第3導電線13、上側磁性体30A、下側磁性体30Bの記載を省略している。
【0053】
電流センサ161~163は、集磁コアを有する貫通型の電流センサである。電流センサ161~163は、z軸方向に貫通しているコア開口部161h~163hを備えている。電流センサ161~163は、上面および下面、内周および外周の全体が絶縁体(例:樹脂)で覆われている。基板150は、孔部151h~153hを備えている。電流センサ161~163の上面は、コア開口部161h~163hの中心と孔部151h~153hの中心とが一致するように、基板150の裏面に接触している。
【0054】
第1出力側導電線11B~第3出力側導電線13B(不図示)は、基板150の上方側(+z方向側)から孔部151h~153hおよびコア開口部161h~163hを貫通するように配置される。換言すると、電流センサ161~163は、第1出力側導電線11B~第3出力側導電線13Bの周囲を取り囲むように配置される。また電流センサ161~163は、不図示の配線によって基板150に接続される。そして基板150に配置されたコネクタ(不図示)から電流の瞬時値信号が取り出され、インバータ等のコントローラへ伝送される。
【0055】
上側磁性体30Aおよび下側磁性体30B(不図示)が、基板150および電流センサ161~163を挟み込むように配置される。これにより電流センサ161~163は、磁性体30の第1環状部30Arと第2環状部30Brとの間に配置される。電流センサ161~163は絶縁体で覆われているため、第1環状部30Arおよび第2環状部30Brに接触しても問題ない。
【0056】
<効果>
電流センサ161~163を一体化したノイズフィルタ101を形成することができる。電流センサの搭載性を高めることが可能となる。
【0057】
第1環状部30Arと第2環状部30Brとによって電流センサ161~163を挟み込むことにより、電流センサ161~163をスペーサとして機能させることができる。第1環状部30Arと第2環状部30Brとの距離を一定に維持できるため、ノイズフィルタ101の信頼性を高めることが可能となる。
【実施例3】
【0058】
実施例3のノイズフィルタ201は、実施例1のノイズフィルタ1(
図1~
図4)を分割することで、第1導電線11~第3導電線13に後付け可能にしたものである。実施例1のノイズフィルタ1と同様の部位には同一符号を付すことで、説明を省略する。
【0059】
図20に、実施例3のノイズフィルタ201の分解斜視図を示す。第1環状部230Arは、第1構造体230Ar1と第2構造体230Ar2に分割されている。第1構造体230Ar1と第2構造体230Ar2とは、第1導電線11~第3導電線13を挟んで互いに対向するように分割されている。第1構造体230Ar1は、第1ピラー部分230Ap1~第3ピラー部分230Ap3を備えている。同様にして、第2環状部230Brは、第1構造体230Br1と第2構造体230Br2に分割されている。第1構造体230Br1は、第1ピラー部分230Bp1~第3ピラー部分230Bp3を備えている。
【0060】
基板50の第1分岐電極51t~第3分岐電極53tには、第1分岐部211j~第3分岐部213jが接続されている。第1分岐部211j~第3分岐部213jは、導体のフランジ部である。第1構造体230Br1の第1ピラー部分30Bp1~第3ピラー部分30Bp3は、基板50の孔部51h~53hを貫通している。第1ピラー部分30Bp1~第3ピラー部分30Bp3の各々が、第1ピラー部分30Ap1~第3ピラー部分30Ap3に接続している。これにより、第1構造体230Ar1とBr1と基板50とは、合体している。これらの合体した構造が不図示の第1の保持部材(例:樹脂ケース)に格納されることによって、合体している状態が維持されてもよい。また第2構造体230Ar2および230Br2は、不図示の第2の保持部材(例:樹脂ケース)に格納されることによって、両者間の位置関係が適切に維持されてもよい。
【0061】
ノイズフィルタ201を導電線に組み付ける工程を説明する。第1に、
図20に示すように、第1導電線11~第3導電線13の+y方向側に、第1構造体230Ar1、基板50、第1構造体230Br1が合体している構造を配置する。また、第1導電線11~第3導電線13の-y方向に、第2構造体230Ar2および230Br2を配置する。第2に、第1環状部230Arおよび第2環状部230Brが形成されるように、両者を合体させる。第3に、合体した状態を維持するように、ノイズフィルタ201を固定する。固定方法は様々であってよい。例えば、第1の保持部材と第2の保持部材に形成された係合部材(例:爪と爪孔)を互いに嵌め合うことで、固定してもよい。これにより、ワンタッチでノイズフィルタ201を固定することができる。第4に、ねじ等の締結部241~243によって、第1分岐部211j~第3分岐部213jの各々を、第1導電線11~第3導電線13に電気的に接続する。
【0062】
<効果>
ノイズフィルタ201を第1導電線11~第3導電線13に後付けすることが可能となる。ノイズフィルタ201の組付け工程を簡略化することが可能となる。
【0063】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【0064】
<変形例>
第1ピラー部分30Ap1~第3ピラー部分30Ap3、および、第1ピラー部分30Bp1~第3ピラー部分30Bp3の配置形態は、
図4に示す形態に限られない。例えば
図21に示す磁性体330のように、第1ピラー部分30Ap1および30Bp1を、第1環状部30Arおよび第2環状部30Brの-x方向の短辺に移動させてもよい。また第3ピラー部分30Ap3および30Bp3を、第1環状部30Arおよび第2環状部30Brの+x方向の短辺に移動させてもよい。これにより、磁路長ML3aと磁路長ML1aおよびML2aとの差を縮小することができるため、磁束の流れを3相に対して均一にすることが可能となる。
【0065】
第1分岐部11j~第3分岐部13jのフランジ形状の形成方法は様々であってよい。例えば、第1導電線11~第3導電線13の一部に切り込みを入れて折り曲げることで、フランジ形状を形成してもよい。
【0066】
第3部分30Ar3や30Br3の磁気抵抗を低くする態様は、
図4に示すように幅を広げる形態に限られない。例えば、第3部分30Ar3や30Br3のz方向の高さを、第1部分30Ar1および30Br1や、第2部分30Ar2および30Br2のz方向高さよりも高くしてもよい。
【0067】
第1分岐線11C~第3分岐線13Cでコイルパターンを形成する態様は、様々であって良い。例えば、基板50を多層構造とし、基板50の内部にコイルパターンを形成してもよい。これにより、基板50の裏面に第1分岐線11C~第3分岐線13Cが露出しない。よって、第2実施例の電流センサ161~163の配線が、第1分岐線11C~第3分岐線13Cに干渉することを防止できる。
【0068】
磁性体30の形状は、入力側導電線と出力側導電線とを一括で囲う形状であれば、どのような形状であってもよい。
【0069】
第1および第2の保持部材は、固定部材の一例である。
【符号の説明】
【0070】
1、101、201:ノイズフィルタ 11:第1導電線 11A:第1入力側導電線 11B:第1出力側導電線 11C:第1分岐線 12:第2導電線 12A:第2入力側導電線 12B:第2出力側導電線 12C:第2分岐線 13:第3導電線 13A:第3入力側導電線 13B:第3出力側導電線 13C:第3分岐線 21:第1コンデンサ 22:第2コンデンサ 23:第3コンデンサ 30:磁性体 30Ar:第1環状部 30Br:第2環状部 30Ap1、30Bp1:第1ピラー部分 30Ap2、30Bp2:第2ピラー部分 30Ap3、30Bp3:第3ピラー部分 50:基板