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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】撮影処理装置、及び撮影処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/70 20170101AFI20241002BHJP
【FI】
G06T7/70 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021037687
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022137946
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【弁理士】
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】坂本 直弥
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 健司
(72)【発明者】
【氏名】三浦 崇広
(72)【発明者】
【氏名】相川 徹郎
【審査官】伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-047188(JP,A)
【文献】特開2018-185240(JP,A)
【文献】特開2020-008664(JP,A)
【文献】特開2004-120661(JP,A)
【文献】特開2020-144226(JP,A)
【文献】特開2018-128804(JP,A)
【文献】藤木淳,透視射影画像または球面カメラ画像からの3次元形状復元に向けて,電子情報通信学会技術研究報告,日本,社団法人電子情報通信学会,2005年09月15日,第105巻 第302号,pp.35~40
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 - 20/90
G06V 30/418
G06V 40/16
G06V 40/20
CSDB(日本国特許庁)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実空間内の対象物を撮像した球面画像を特定方向の平坦な要素画像に第1基準点に基づき変換する画像変換部と、
測定対象範囲となる3次元空間中における3次元座標を有する複数の特徴点を、測定基準点に対する前記特定方向の平坦な測定要素画像に、前記測定基準点を中心点として投影した各特徴点の前記測定要素画像に対する2次元座標群を1次特徴量として、前記3次元座標と関連付けて記録する特徴点記録部であって、複数の異なる位置の測定基準点に対してそれぞれ前記2次元座標群を1次特徴量として前記3次元座標と関連付けて記録した特徴点記録部と、
前記特定方向の要素画像に基づき得られた前記対象物における複数の第1特徴点それぞれの2次元座標群を2次特徴量として生成する特徴点生成部と、
前記特徴点生成部が生成した2次特徴量の座標群と、特徴点記録部に記録される1次特徴量の座標群を比較し、最も類似する1次特徴量を抽出し、前記2次特徴量の各特徴点と、前記1次特徴量の各特徴点とを対応させる特徴点比較部と、
前記2次特徴量の中の少なくとも2つの特徴点に対応する前記1次特徴量の特徴点の実空間の3次元座標を対応付け、前記少なくとも2つの特徴点と対応する3次元座標を有する少なくとも2つの点とをそれぞれ結ぶ投影線が一点に集中する位置を前記球面画像の撮影位置として推定する撮影位置推定部と、
を備える、撮影処理装置。
【請求項2】
前記撮影位置推定部が推定した複数の異なる時点の推定撮影位置を用いて推定した進路方向に基づき、障害物を検知する障害物検知部を、更に備える、請求項1に記載の撮影処理装置。
【請求項3】
複数の撮影位置推定部が推定した複数の推定撮影位置それぞれに対応する第1位置座標と、複数の推定撮影位置とに基づき、複数の第1特徴点のそれぞれの3次元座標を生成する3次元座標生成部を更に備える、請求項2に記載の撮影処理装置。
【請求項4】
前記撮影位置推定部が推定した複数の異なる時点の推定撮影位置における特定方向の平坦な要素画像を複数の小画像領域に分割し、相互に相関の高い小画像領域を選択する小領域比較部を、更に備え、
前記複数の第1特徴点のそれぞれは、互に相関の高い小画像領域の中から選択される、請求項3に記載の撮影処理装置。
【請求項5】
前記3次元座標生成部の生成したそれぞれの3次元座標を用いて3次元ボクセルデータを生成する3次元画像再構成処理部を更に備える、請求項4に記載の撮影処理装置。
【請求項6】
第1期間に生成された所定の空間内の3次元座標の3次元ボクセルデータと、前記第1期間と異なる第2期間に生成された前記所定の空間内の3次元座標の3次元ボクセルデータと、を用いて、前記所定の空間内の構造物の増減を抽出する3次元差分処理部を更に備える、請求項5に記載の撮影処理装置。
【請求項7】
前記3次元差分処理部は、新たに発生したボクセルデータには第1の所定値を割振り、消失したボクセルデータには前記第1の所定値と異なる第2の所定値を割振る、請求項6に記載の撮影処理装置。
【請求項8】
前記3次元差分処理部は、前記所定の空間内の3次元座標で示される点の密度に基づき、前記所定の空間内の構造物の増減を抽出する、請求項に記載の撮影処理装置。
【請求項9】
前記撮影位置推定部により推定された第1推定撮影位置から撮像された球面画像に基づく第1映像情報と、前記撮影位置推定部により推定された第2推定撮影位置から撮像された球面画像に基づく第2映像情報とを対応させ、変化があった領域を抽出する2次元画像処理部を、更に備える請求項1乃至4のいずれか一項に記載の撮影処理装置。
【請求項10】
実空間内の対象物を撮像した球面画像を特定方向の平坦な要素画像に第1基準点に基づき変換する画像変換工程と、
測定対象範囲となる3次元空間中における3次元座標を有する複数の特徴点を、測定基準点に対する前記特定方向の平坦な測定要素画像に、前記測定基準点を中心点として投影した各特徴点の前記測定要素画像に対する2次元座標群を1次特徴量として、前記3次元座標と関連付けて記録する特徴点記録工程であって、複数の異なる位置の測定基準点に対してそれぞれ前記2次元座標群を1次特徴量として前記3次元座標と関連付けて記録した特徴点記録工程と、
前記特定方向の要素画像に基づき得られた前記対象物における複数の第1特徴点それぞれの2次元座標群を2次特徴量として生成する特徴点生成工程と、
前記2次特徴量の座標群と、前記1次特徴量の座標群を比較し、最も類似する1次特徴量を抽出し、前記2次特徴量の各特徴点と、前記1次特徴量の各特徴点とを対応させる特徴点比較工程と、
前記2次特徴量の中の少なくとも2つの特徴点に対応する前記1次特徴量の特徴点の実空間の3次元座標を対応付け、前記少なくとも2つの特徴点と対応する3次元座標を有する少なくとも2つの点とをそれぞれ結ぶ投影線が一点に集中する位置を前記球面画像の撮影位置として推定する撮影位置推定工程と、
を備える、撮影処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、撮影処理装置、及び撮影処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントでは、プラントを安全に運転するために、膨大な機器の保守点検を定期的に点検員が巡視点検している。また点検員は、巡視中に機器異常なども合わせて目視で確認している。従来の保守点検は、一般に現場で点検員が確認した結果を手書き記録し、事務所で点検記録を作成すことなどが行われる。このように、人手による作業が多く、作業の省力化を図る取り組みが行われている。このような省力化を図る取り組みの多くは、モバイル端末を利用するサービスである。例えば点検員へ点検要領書を提示すると共に、点検員が目視確認したメータなどの数値をモバイル端末に入力することにより、手書き作業を除外し、点検結果をデジタル化するものである。
【0003】
また、機器異常などの記録とし、巡視中の点検員が持ったカメラの映像をドライブレコーダーのように記録して、後日、必要に応じて映像を確認できるシステムの検討も進められている。映像を確認する際、記録された映像が長時間であるため、撮影位置を特定した映像の確認や異常の可能性がある映像のみを確認することが望まれる。また、カメラに魚眼レンズなどを用いて一度に広範囲の球面画像を記録し、確認することが行われようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-045163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、位置測位方法として屋外であればGPSの利用が一般的であるが、発電プラントなどの屋内では電波が届かないためGPSの利用が難しいため、撮影位置の特定がより難しくなる。また、球面画像は湾曲しており、球面画像を用いた処理では、撮影位置の特定精度が低下する恐れがある。
【0006】
本発明の実施形態は、このような事情を考慮してなされたものであり、撮影画像を撮影した撮影位置を取得可能な撮影処理装置及び撮影処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る撮影処理装置は、変換部と、特徴点生成部と、撮影位置推定部と、を備える。変換部は、実空間内の対象物を撮像した球面画像を平坦な要素画像に第1基準点に基づき、変換する。特徴点生成部は、要素画像に基づき得られた対象物における複数の第1特徴点それぞれの第1位置座標を生成する。撮影位置推定部は、第1位置座標を用いて球面画像の撮影位置を推定する。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態によれば、撮影画像を撮影した撮影位置を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る撮影処理システム1の構成を示すブロック図。
図2】第1実施形態に係る撮影処理装置2の構成を示すブロック図。
図3】移動可能な範囲を2次元の地図情報として模式的に示す図。
図4】画像変換部の処理例を模式的に示す図。
図5】全天球パノラマ画像を平坦画像に変換する場合の概念図。
図6】全天球パノラマ画像と、各要素画像を示す図。
図7】予め登録されている3次元座標点と撮影位置との関係を模式的に示す図。
図8】歪みが低減した前画像と機器画像とを示す模式図。
図9】機器画像のなかの特徴点であるエッジの交点を示す模式図。
図10】撮影位置推定部の位置推定例を模式的に示す図。
図11】監視装置の構成例を示すブロック図。
図12】地図情報生成部が生成した地図情報を模式的に示す図。
図13】撮影処理装置の処理例を示すフローチャート。
図14】第1実施形態の変形例に係る撮影処理装置の処理例を示すフローチャート。
図15】第2実施形態に係る撮影処理装置の構成を示すブロック図。
図16】進行方向と障害物を模式的に示す図。
図17】第3実施形態に係る撮影処理装置の構成を示すブロック図。
図18】3次元画像処理部の詳細なブロック図。
図19】小領域比較部の処理例を模式的に示す図。
図20】3次元座標生成部の処理例を模式的に示す図。
図21】3次元画像再構成処理部の生成するボクセルデータの例を示す図。
図22】ボクセルデータと差分処理結果の例を示す図。
図23】差分情報を各要素画像に再投影した例を示す図。
図24】第4実施形態に係る撮影処理装置の構成を示すブロック図。
図25】2次元画像処理部の詳細なブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る撮影処理装置、及び撮影処理方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
(第1実施形態)
【0011】
図1は、第1実施形態に係る撮影処理システム1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、撮影処理システム1は、撮影処理装置2と、監視装置4とを備える。撮影処理装置2は、撮影位置を特定することが可能な装置であり、撮影位置及び撮影位置に関する映像情報などを監視装置4に、例えば無線通信により送信する。一方で、監視装置4は、撮影処理装置2から供給される情報に基づき、発電プラントなどの屋内における機器などを監視する装置である。撮影処理装置2と、監視装置4とは、電波障害のない位置に配置された中継器などを介して、無線通信により情報を相互に通信可能である。なお、本実施形態に係る撮影処理装置2と、監視装置4とは別体として構成しているがこれに限定されない。例えば、撮影処理装置2と、監視装置4とを一体的に構成し、可搬可能な撮影処理装置2としてもよい。
【0012】
図2は、第1実施形態に係る撮影処理装置2の構成を示すブロック図である。図2に示すように、撮影処理装置2は、撮影位置を特定することが可能であり、撮影部10と、モーションセンサ15と、記憶部20と、通信部25と、情報処理部30とを備えて構成される。なお、撮影処理装置2は、モーションセンサ15を設けずに構成してもよい。
【0013】
撮影部10は、例えば全方位カメラ(360度カメラ)であり、全天球パノラマ画像を球面画像として連続して、すなわち球面画像を動画として生成することが可能である。より具体的には、この撮影部10は、発電プラントの屋内における対象物の画像を含む全天球パノラマ画像を撮影する。また、撮影部10は、例えば、駆動機構を備えた移動部に設定され、この移動部の移動に応じて自動的に全天球パノラマ画像を撮影する。さらにまた、撮影部10は、全天球パノラマ画像を記憶部20及び情報処理部30に供給する。なお、本実施形態では、撮影処理装置2は、駆動機構を備えた移動部に設定されるが、これに限定されない。例えば、観察者である作業員などのヘルメットに撮影部10とモーションセンサ15とを設定する構成でもよい。この場合、記憶部20と、情報処理部30は、例えば監視装置4内に構成し、撮影部10、及びモーションセンサ15と、記憶部20、及び情報処理部30とは無線通信により情報通信を行ってもよい。
【0014】
モーションセンサ15は、例えば慣性センサ(3軸加速度センサと3軸角速度センサ)と3軸地磁気センサを組み合わせた9軸センサとなっている。このモーションセンサ15は、撮影部10に搭載され、この撮影部10が移動したときに生じる加速度を検出する。また、このモーションセンサ15により重力加速度の検出も行える。さらに、モーションセンサ15は、この撮影部10の姿勢が変化したときに生じる角速度を検出する。なお、地磁気により撮影部10の姿勢を把握することもできる。モーションセンサ15で検出された加速度の値と角速度の値は、情報処理部30に供給される。
【0015】
記憶部20は、例えばRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク等により実現される。この記憶部20は、特徴点記録部200と、映像記録部202と、撮影位置記録部204とを有する。特徴点記録部200には、特徴点群が記録されており、各特徴点に一次特徴量と位置情報が記録されてる。また、特徴点記録部200には、3Dレーザスキャナなどで計測した発電プラントの各構造物の3次元位置を示す点群データが記録されていてもよい。また、記憶部20は、情報処理部30が実行する各種の処理プログラムを記憶する。
【0016】
特徴点記録部200に記録する一次特徴点群の持つ座標系は、あらかじめスケールが調整されており、ミリメートルやメートル単位のスケールを持つ。また、原点および方位は発電プラント等の図面やCADデータに揃うよう調整してもよい。
【0017】
図3は、撮影処理装置2が発電プラント建屋内などの現場において移動可能な範囲を2次元の地図情報8として模式的に示す図である。上述のように、特徴点記録部200には、地図情報8における撮影位置別の一次特徴点群が一次特徴量として記録されてる。なお、一次特徴量の詳細は図7を用いて後述する。
【0018】
再び図2に示すように、映像記録部202には、撮影部10により撮像された全天球パノラマ画像、及び後述する前、後、左、右、上、下の各要素画像が記録される。
撮影位置記録部204には、情報処理部30が処理した撮影部10の撮影位置が、全天球パノラマ画像、各要素画像、及び撮影時間と関連付けて記録される。
【0019】
通信部25は、監視装置4などと無線通信を行うことが可能である。
情報処理部30は、全天球パノラマ画像を用いて、撮影部10の撮影位置を生成可能であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含んで構成される。すなわち、この情報処理部30は、CPUが記憶部20にお記憶される各種プログラムを実行することで、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて実現されるコンピュータで構成される。これにより、この情報処理部30は、姿勢情報取得部300と、画像変換部302と、特徴点生成部304と、特徴点比較部306と、撮影位置推定部308と、検証部310と、制御部312とを構成する。なお、姿勢情報取得部300と、画像変換部302と、特徴点生成部304と、特徴点比較部306と、撮影位置推定部308と、検証部310と、制御部312とを回路で構成してもよい。
【0020】
姿勢情報取得部300は、全天球パノラマ画像の撮影時における撮影部10の撮影方向及び姿勢を生成する。すなわち、姿勢情報取得部300は、モーションセンサ15から供給される角速度の値と加速度の値とを合わせて、撮影部10の姿勢を特定することで、全天球パノラマ画像の撮影時の撮影方向を生成する。例えば、姿勢情報取得部300は、全天球パノラマ画像の世界座標系における撮影開始角度を特定する。
【0021】
図4は、画像変換部302の処理例を模式的に示す図である。左図が全天球パノラマ画像P600を示し、右図が前、後、左、右、上、下の各要素画像G402にキューブマップ展開した平坦画像を示す。
【0022】
図4に示すように、画像変換部302は、姿勢情報取得部300の情報に基づき、前画像の中心部m30が真北方向に一致するように各要素画像に平面展開する。画像変換部302は、例えばエクイレクタングラー形式の全天球パノラマ画像をキューブマップ形式に変換する。これにより、360°の全天球パノラマ画像がキューブマップに展開される。また、画像変換部302は、全天球パノラマ画像P600と、各要素画像G402を関連付けて、撮影位置記録部204に記録する。
【0023】
図5は、エクイレクタングラー形式の全天球パノラマ画像P600をキューブマップ形式の平坦画像に変換する場合の概念図である。全天球パノラマ画像P600は、例えば半径rの球面p0上に撮像された画像である。このため全天球パノラマ画像P600の各画素S1は極座標で示すことが可能である。これにより、前、後、左、右、上、下の各要素画像q0の配置関係と、各画素S1の極座標が既知であるので、各要素画像G402に各画素S1を各画素S2として投影可能である。なお、点S3は、実空間上における画素S2の撮影対象点の例を示す。
【0024】
図6は、実際に撮像された全天球パノラマ画像P600と、前、後、左、右、上、下の各要素画像G402を示す図である。左図が全天球パノラマ画像P600を示し、右図が前、後、左、右、上、下の各要素画像G402にキューブマップ展開した平坦画像を示す。図6に示すように、画像変換部302の処理により、全天球パノラマ画像P600よりも歪みが低減した前、後、左、右、上、下の各要素画像G402が生成される。ここでは、全天球パノラマ画像を6面体の各平面に投影した場合について説明しているが、投影する平面は、6面以上の平面を持つ多面体とすることも可能である。また、全天球パノラマ画像の代わりに半球パノラマ画像とすることも可能である。この場合、6面体に投影する代わりに、前、左、右、上、下の各要素画像とすることで同じ処理が可能となる。
【0025】
図7は、予め登録されている発電プラント建屋内の一次特徴点の3次元座標点と全天球パノラマ画像P600の撮影位置との関係を模式的に示す図である。左図が、走行経路L600に沿って撮像された複数の全天球パノラマ画像p600を示し、右図が複数の全天球パノラマ画像p600の撮像位置と一次特徴点の3次元座標点とを示す特徴点図G600である。上述のように、一次特徴点の3次元座標点は、3Dレーザスキャナなどで計測した発電プラントの各構造物の3次元位置を示す点群データから生成されている。一次特徴点は、例えば周辺機器のエッジの交点などである。
【0026】
特徴点記録部200には、上述のように、2次元の地図情報8(図2参照)と関連付けられて生成された特徴点の2次元座標群が1次特徴量として記録されている。例えば特徴点図G600に示す特徴点を、基準方向を真北とする前、後、左、右、上、下の各要素画像に投影し、各特徴点の各要素画像に対する2次元座標群が1次特徴量として生成される。例えば、事前のコンピュータシュミレーションにより、特徴点図G600内の平面座標(x、y)毎に、基準方向を真北とする前、後、左、右、上、下の各要素画像面を仮想的に生成し、特徴点図G600に示す特徴点が各要素画像面に投影され、各特徴点の各要素画像面に対する2次元座標群が1次特徴量として生成される。これら1次特徴量が、平面座標(x、y)(図3参照)に関連付けられ、特徴点記録部200に記録されている。また、1次特徴量の2次元座標群には、特徴点図G600図7参照)に示す実空間の3次元座標が関連づけられている。
【0027】
図8は、画像変換部302の処理により生成された歪みが低減した前画像700qと機器画像702qとを示す模式図である。図9は、機器画像702q(図8参照)のなかの特徴点であるエッジの交点800を示す模式図である。
【0028】
図9に示すように、特徴点生成部304は、画像変換部302の処理により、生成された前、後、左、右、上、下の各要素画像から特徴点を抽出し、各特徴点の各要素画像に対する2次元座標群を2次特徴量として特徴点記録部200に記録する。
【0029】
全天球パノラマ画像から特徴点を抽出しようとすると、画像が湾曲しており、特徴点の抽出が安定化しなくなってしまう。また、仮に抽出できても特徴点の位置により湾曲した画像における空間解像度が異なり、画像間の特徴点の比較精度が低下してしまう。これに対して、画像変換部302が生成する2次特徴量として生成される特徴点の座標も、1次特徴量として生成される特徴点の座標も、いずれも平面に展開された前、後、左、右、上、下の各要素画像に対応させて生成される。このため、特徴点の抽出がより安定化する。また、湾曲が抑制された同じ基準平面に対して特徴点の座標を抽出できるので、画像間の座標のずれが均一化し、特徴点の比較がより高精度に可能となる。
【0030】
別の方法としてステレオカメラやレーザ(LiDAR)などの距離を測定可能なセンサを用いて、位置を特定する手法がある。ステレオカメラを用いる方法では、カメラで撮影される範囲が進行方向など一方向になるため、進行方向に特徴点となる構造物がない場合や障害物がある場合など、特徴点が時間的に連続して抽出できない場合は、位置の特定ができなくなる場合がある。また、ステレオをカメラは撮影範囲が狭く特性精度が低下する場合がある。
【0031】
これに対して、全天球パノラマ画像の場合は、進行方向だけでなく上下左右、後方の映像も取得できることから、特徴点を抽出できなくなる事象の発生が少なくなる。また、発電プラントなど屋内で使用する場合は、天井を連続して撮影できることから、安定して特徴点を抽出することが可能となる。
【0032】
ドローンなど屋内を3次元的に移動する機構の場合、周囲の構造物に状況を、3次元的に計測を行う3次元LiDARを搭載する機体が使用される。3次元LiDARはレーザを上下方向にスキャンしながら回転させる機構であり、搭載するには大型の期待が必要となる課題がある。すなわち、LiDARなどを使用する場合は、撮影装置以外にセンサを装備する必要がある。また、回転機構を有するものもあり構成が複雑になる課題がある。
【0033】
これに対して、本提案では、全天球映像を取得可能なカメラを搭載することで映像と位置の特定を行うことが可能となり。積載重量の点でもすぐれている。
【0034】
特徴点比較部306は、特徴点生成部304が生成した2次特徴量の座標群と、特徴点記録部200に記録される1次特徴量の座標群を比較し、最も類似する1次特徴量を抽出する。そして、特徴点比較部306は、特徴点生成部304が生成した2次特徴量のなかの少なくとも2点の特徴点の座標に対応する特徴点の座標を、1次特徴量の中から選択する。
【0035】
撮影位置推定部308は、特徴点比較部306の比較結果に基づき、全天球パノラマ画像が撮影された撮影位置を推定する。例えば、撮影位置推定部308は、特徴点比較部306が選択した最も類似する1次特徴量の位置を一次推定撮影位置とする。すなわち、この1次特徴量を演算する際に、前、後、左、右、上、下の各要素画像面のシミュレーション展開に用いた中心座標を一次推定撮影位置とする。
【0036】
さらに、撮影位置推定部308は、特徴点比較部306が選択した少なくとも2点の特徴点の座標と対応する1次特徴量中の特徴点の座標からより高精度に撮影位置の推定を行う。
【0037】
図10は、撮影位置推定部308の位置推定例を模式的に示す図である。図5及び図10を参照しつつ、撮影位置推定部105のより高精度な位置推定の処理例を説明する。
【0038】
図10に示すように、前画像700qにおける複数の特徴点S2には、特徴点比較部306の比較結果により、1次特徴量の特徴点が対応付けられている。1次特徴量の特徴点は2次元座標であるが、特徴点図G600図7参照)に示す実空間の3次元座標も関連づけられている。これにより、撮影位置推定部308は、複数の特徴点S2に対応する1次特徴量の特徴点の実空間の3次元座標を有する複数点S3を用いることにより、複数の特徴点S2に、実空間の3次元座標を有する複数点S3を対応付けることが可能となる。前画像700qにおける複数の特徴点S2は、実空間の3次元座標を有する複数点S3を、中心点g0として前画像700qに投影した図である。したがって、複数の特徴点S2と対応する3次元座標を有する複数点S3をそれぞれ結ぶ投影線が一点に集中する位置が撮影位置として推定される。このように、撮影位置推定部308は、複数の特徴点S2と対応する3次元座標を有する複数点S3をそれぞれ結ぶ投影線が一点に集中する位置を二次推定撮影位置として再推定する。そして、撮影位置推定部308は、一次推定撮影位置と、二次推定撮影位置を撮影位置記録204に撮影時刻、全天球パノラマ画像、及び各要素画像と関連付けて記録する。
【0039】
検証部310は、撮影位置推定部308の位置推定を検証する。そして、検証部310は、撮影位置推定部308の位置推定の妥当性がない場合には、通信部25からの推定結果の送信を行わない。一方で、撮影位置推定部308の位置推定の妥当性がある場合には、検証部310は、撮影位置推定部308の位置推定結果、撮影時刻、全天球パノラマ画像、及び各要素画像を通信部25に通信させる。例えば、検証部310は、前回の推定撮影位置と今回の推定撮影位置の距離差が、撮影処理装置2の移動速度に基づく距離と、例えば10パーセント以上ずれる場合に、位置推定の妥当性がないと検証する。
制御部312は、撮影処理装置2の各部を制御する。
【0040】
次に、監視装置4の構成例を説明する。図11は、監視装置4の構成例を示すブロック図である。監視装置4は、通信部400と、記憶部402と、特徴点生成部404と、地図情報生成部406と、操作部408と、表示装置410と、入力装置412を備える。監視装置4は、例えばCPUを有しており、記憶部402に記憶される処理プログラムを実行することにより、特徴点生成部404と、地図情報生成部406と、操作部408とを構成する。なお、特徴点生成部404と、地図情報生成部406と、操作部408とを、回路で構成してもよい。
【0041】
通信部400は、撮影処理装置2と通信を行う。
記憶部402は、例えばRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク等により実現される。この記憶部402は、撮影処理装置2から送信される情報を記憶する。記憶部402は、例えば、推定撮影位置と、撮影時刻、全天球パノラマ画像、及び各要素画像を関連付けて記憶する。
【0042】
特徴点生成部404は、上述した3Dレーザスキャナなどで計測した発電プラントの各構造物の3次元位置を示す点群データと、1次特徴量と、を生成する。また、特徴点生成部404は、3次元位置を示す点群データと、1次特徴量を記憶部402に記憶させるとともに、通信部400を介して1次特徴量を撮影処理装置2に送信する。
【0043】
地図情報生成部406は、撮影処理装置2から送信される撮影位置に基き、撮影処理装置2の移動経路を示す地図情報を生成する。また、地図情報生成部406は、生成した地図情報を表示装置410に表示させる。
【0044】
図12は、地図情報生成部406が生成した地図情報を模式的に示す図である。複数の点Z12が撮影処理装置2の推定撮影位置をそれぞれ示す。また、地図情報生成部406は、推定撮影位置点Z12を操作者に指示されると、推定撮影位置を示す地図情報8と、撮影時刻、全天球パノラマ画像、及び各要素画像とを並べて、表示装置410に表示させる。
【0045】
操作部408は、入力部412を介した監視者の入力情報に応じて、撮影処理装置2の駆動を制御可能である。なお、撮影処理装置2は、通常は自動運転されている。
【0046】
表示装置410は、例えば液晶モニタであり、上述したように、地図情報生成部406が生成した地図情報8、及び全天球パノラマ画像、及び各要素画像を並べて表示可能である。入力部412は、例えばマウス、キーボードなどにより構成される。
【0047】
図13は、撮影処理装置2の処理例を示すフローチャートである。先ず、撮影部10は、図示していない移動部にて移動しながら対象物となる建屋内などの現場の状況を撮影し、対象物の画像を含む天球パノラマ画像P600(図4参照)を記憶部20及び情報処理部30に出力する(ステップS100)。
【0048】
次に、画像変換部302は、姿勢情報取得部300の情報を用いて、基準方向に基づく各要素画像G402(図4参照)に全天球パノラマ画像P600(図4参照)を変換する(ステップS102)。
【0049】
次に、特徴点生成部304は、各要素画像G402から特徴点を抽出し、各特徴点の各要素画像G402に対する2次元座標群を2次特徴量として特徴点記録部200に記録する(ステップS104)。続けて、特徴点比較部306は、特徴点生成部304が生成した2次特徴量の座標群と、特徴点記録部200に記録される1次特徴量の座標群を比較し、最も類似する1次特徴量を抽出する(ステップS105)。
【0050】
そして、撮影位置推定部308は、特徴点比較部306の比較結果に基づき、全天球パノラマ画像か撮影された撮影位置を推定する(ステップS106)。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、特徴点生成部304が、全天球パノラマ画像を用いて生成された前、後、左、右、上、下の各要素画像に基づき2次特徴量を生成し、撮影位置推定部308が、2次特徴量に基づき、撮影位置を推定することとした。これにより、湾曲が抑制された各要素画像に対して特徴点の座標を抽出できるので、より高精度に撮影位置の推定が可能となる。
【0052】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態の変形例に係る撮影処理システム1は、撮影位置推定部308における推定処理に、前、後、左、右、上、下の各要素画像G402の中から選択した画像のみを用いて推定可能である点で、第1実施形態に係る撮影処理装置2と相違する。以下では、第1実施形態に係る撮影処理システム1と相違する点を説明する。
【0053】
図14は、第1実施形態の変形例に係る撮影処理装置2の処理例を示すフローチャートである。図14に示すように、画像変換部302は、撮影された全天球パノラマ画像P600、及び姿勢情報取得部300の情報に基づき、前画像(図4参照)の中心部m30が真北方向に一致するように、例えば前画像のみを展開する。そして、特徴点生成部304、特徴点比較部306、及び撮影位置推定部308は、前画像のみを用いて第1実施形態と同様の処理を行う(ステップS200)。なお、前画像に限定されず、前、後、左、右、上、下の各要素画像G402の中から5以下の要素画像を用いて処理を行ってもよい。すなわち、ステップS200では、撮影処理装置2の進行に応じて前画像のみを用いて、一回の撮影毎に位置推定が可能である。
【0054】
次に、制御部312は、撮影回数が所定回数、例えば10回に達したか否かを判定する(ステップS202)。制御部312は、所定回数に達していないと判定する場合(ステップS202のNO)、ステップS202からの撮影および撮影位置推定を繰り返す。この間、撮影処理装置2は、進行しており、撮影毎に位置推定が可能である。
【0055】
一方で、撮影回数が所定回数に達したと判定する場合(ステップS202のYES)、制御部312は、図13で示しように、前、後、左、右、上、下の各要素画像を用いた位置推定を行う(ステップS204)。
【0056】
そして、制御部312は、全体処理を終了するか否かを判定し(ステップS206)、終了しない場合(ステップS206のNO)、ステップS200からの処理を繰り返す。一方で、終了する場合(ステップS206のYES)、全体処理を終了する。
【0057】
以上説明したように、本実施形態によれば、撮影位置推定部308における推定処理に、前、後、左、右、上、下の各要素画像の中から選択した画像により撮影位置推定処理が可能であるので、撮影位置推定処理をより高速化することが可能となる。また、所定の周期で各要素画像を用いて撮影位置推定処理を行うので、所定周期でより高精度に撮影位置推定処理を行うことが可能となる。
【0058】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る撮影処理システム1は、撮影処理装置2の進路方向における障害物を更に検知可能である点で、第1実施形態の変形例1に係る撮影処理装置2と相違する。以下では、第1実施形態の変形例1に係る撮影処理装置2と相違する点を説明する。
【0059】
図15は、第2実施形態に係る撮影処理装置2の構成を示すブロック図である。図15に示すように、第2実施形態に係る撮影処理装置2は、障害物検知部314を更に備えて構成される。
【0060】
図16は、撮影処理装置2が撮影推定位置Z14に位置する場合の進行方向L14と障害物B16を模式的に示す図である。図16に示すように、障害物検知部314は、現在の撮影推定位置Z14からの進行方向L14を推定し、撮影方向に障害物B16がある場合に、障害物B16ありと検知する。
【0061】
より具体的には、障害物検知部314は、現在の撮影推定位置Z14及び現在の撮像時間に基づき、撮影位置記録部204から現在の撮像時間の直前の撮影位置Z13を含む撮影推定位置を取得する。次に、障害物検知部314は、例えば影推定位置Z14と直前の撮影位置Z13との座標の差分を用いて進行方向L14を推定する。続けて、障害物検知部314は、影推定位置Z14から進行方向L14の所定範囲、例えば10メートル以内且つ撮影処理装置2の鉛直方向の高さ以内に、予め登録されている発電プラント建屋内の特徴点の3次元座標点(図7参照)が存在するか否かを判定する。障害物検知部314は、特徴点の3次元座標点(図7参照)が存在すると判定する場合に、障害物B16があると検知する。そして、障害物検知部314は、制御部312を介して撮影処理装置2の移動方向を修正方向L16へ変更させる又は停止させる。また、障害物検知部314は、進行方向L14、修正方向L16及び障害物B16の座標を、通信部25を介して監視装置4に送信する。監視装置4は、進行方向L14、修正方向L16及び障害物B16の情報を表示装置410に地図情報とともに表示させる。これにより、観察者は、撮影処理装置2の進行環境をより容易に観察可能となる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態によれば、障害物検知部314が、現在の撮影推定位置Z14からの進行方向L14を推定し、撮影方向L14に障害物B16がある場合に、障害物B16ありと検知することとした。これにより、撮影処理装置2が障害物B16と接触する前に、障害物B16の回避制御を行うことが可能となる。
【0063】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る撮影処理システム1は、前、後、左、右、上、下の各要素画像を用いて3次元画像の再構成が可能である点で、第2実施形態に係る撮影処理システム1と相違する。以下では、第2実施形態に係る撮影処理システム1と相違する点を説明する。
【0064】
図17は、第3実施形態に係る撮影処理装置2の構成を示すブロック図である。図17に示すように、第3実施形態に係る撮影処理装置2は、3次元画像処理部316を更に備えて構成される。
【0065】
3次元画像処理部316は、特徴点生成部304で抽出した特徴点の3次元座標を生成し、特徴点が三次元に分布する3次元画像として再構成する。図18は、3次元画像処理部316の詳細なブロック図である。図18に示すように、3次元画像処理部316は、小領域比較部316a、3次元座標生成部316b、3次元画像再構成処理部316c、3次元差分処理部316d、映像処理部316e、及び3次元密度演算部316fを有する。
【0066】
図19は、小領域比較部316aの処理例を模式的に示す図である。図19に示すよう、異なる時点での推定撮影位置g0L、g0Rの前画像702q、704qを示している。小領域比較部316aは、前画像702qを複数の小画像領域80SLに分割する。図19では、小画像領域80SLは2つしか示していないが、小領域比較部316aは、前画像702qを複数の小画像領域80SLをマトリクス状に分割する。次に、小領域比較部316aは、前画像704qの複数の小画像領域80SLそれぞれに対して、最も相関値が高い複数の小画像領域80RLを抽出する。例えば、領域80Sを推定撮影位置g0Lから撮像した小画像領域80SLは、領域80Dを推定撮影位置g0Rから撮像した小画像領域80SRと最も相関値が高くなる。換言すると、小画像領域80SLに対して相関値が高い小画像領域80SRを抽出すると、同じ領域80Sを撮像している蓋然性が高くなる。このように、小領域比較部316aは、前画像702qを複数の小画像領域80SLに分割し、対応する前画像704qのなかから相関の高い小画像領域80SRを選択する。
【0067】
図20は、3次元座標生成部316bの処理例を模式的に示す図である。図20に示すよう、3次元座標生成部316bは、小領域比較部316aが抽出した相関の高い小画像領域80SL、及び小画像領域80SRの中から、対応する特徴点82L、82Rを求め、特徴点82L、82Rと推定撮影位置g0L、g0Rとをそれぞれ結ぶ投影線L82L,L82Rの交点を特徴点82L、82Rの3次元座標として、特徴点記録部200に記録する。なお、前画像702qを例にして説明したが、小領域比較部316a、及び3次元座標生成部316bは、各要素画像G402に対して同様の処理を行う。また、3次元座標生成部316bは、特徴点記録部200に特徴点82L、82Rの3次元座標を追加する。これにより、特徴点図G600図7参照)の中の特徴点を増加させることが可能となる。
【0068】
このような処理を推定撮影位置g0L毎に繰り返すことにより、撮影処理装置2の撮像毎に得られた各要素画像G402に基づく特徴点の3次元座標が新たに生成される。
【0069】
図21は、3次元画像再構成処理部316cの生成するボクセルデータ210Vの例を示す図である。3次元画像再構成処理部316cは、特徴点記録部200に記録される特徴点82L、82Rの3次元座標を用いて3次元ボクセルデータ210Vを生成する。3次元画像再構成処理部316cは、特徴点82L、82Rの3次元座標に対応するボクセルに所定値、例えば500を割振る。
【0070】
図22は、3次元画像再構成処理部316cの生成するボクセルデータ210a,bと、3次元差分処理部316d差分による処理結果であるボクセルデータ210cの例を示す図である。図22に示すように、ボクセルデータ210aは、2018年4月の期間に生成された特徴点82L、82Rの3次元再構成画像であり、ボクセルデータ210bは、2018年9月の期間に生成された特徴点82L、82Rの3次元再構成画像である。このように、3次元画像再構成処理部316cは、使用する特徴点82L、82Rの生成期間を制限することが可能である。
【0071】
図22に示すように、3次元差分処理部316dは、ボクセルデータ210aとボクセルデータ210bとの差分を生成する処理を行う。ボクセルデータ210cは、次元差分処理部316dの処理結果であり、ボクセルデータ210aとボクセルデータ210bとの差分を示す。四角の領域は、2018年4月の期間にはなかったが、2018年9月の期間には発生した特徴点の3次元領域を示す。一方で、丸の領域は、2018年4月の期間にはあったが、2018年9月の期間にはなくなった特徴点の3次元領域を示す。このように、3次元差分処理部316dは、異なる期間間での差分処理を行い、新たに発生したボクセルデータ210cには第1の所定値、例えば1000を割振り、消失したボクセルデータ210cには第2の所定値、例えば1500を割振る。
【0072】
映像処理部316eは、3次元差分処理部316dの処理結果を映像情報に変換する。例えば、映像処理部316eは、ボクセルデータ210c、ボクセルデータ210a、ボクセルデータ210bを関連付けて図22に示すような映像情報を生成する。そして、処理後の映像情報を、ボクセルデータ210c、ボクセルデータ210a、及びボクセルデータ210bと関連付けて監視装置4に送信する。これにより、監視装置4では、例えば図22に示す画像を表示装置410に表示可能となる。このため、監視者は、発電プラントなどの屋内における異常検知をより簡易に行うことが可能となる。
【0073】
図23は、3次元差分処理部316dの生成した差分情報を各要素画像に再投影した例を示す図である。四角の領域は、2018年4月の期間にはなかったが、2018年9月の期間には発生した特徴点の2次元領域を示す。一方で、丸の領域は、2018年4月の期間にはあったが、2018年9月の期間にはなくなった特徴点の2次元領域を示す。
【0074】
図23に示すように、映像処理部316eは、新たに発生した又は消失したボクセルデータ210cの3次元座標を各要素画像上の2次元座標に変換し、例えば所定の形状又は色で示す。映像処理部316eは、例えば、新たに発生した特徴点に対対応する領域を四角形で示す。或いは、映像処理部316eは、例えば、新たに発生した特徴点に対対応する領域を緑色で示してもよい。同様に、映像処理部316eは、例えば、消失した特徴点に対対応する領域を丸で示す。或いは、映像処理部316eは、例えば、消失した特徴点に対対応する領域を赤色で示してもよい。これにより、監視者は、発電プラントなどの屋内における機材の配置の変化など現場状況の変化を各要素画像により簡易に行うことが可能となる。
【0075】
3次元密度演算部316fは、ボクセルデータ210aとボクセルデータ210bとのノイズ低減処理を行うことが可能である。3次元差分処理部316dは、3次元密度演算部316eによりノイズ低減されたボクセルデータ210aとボクセルデータ210bとの差分処理を行うことが可能である。より具体的には、3次元密度演算部316fは、ボクセルデータ210aとボクセルデータ210bとに対して、所定範囲毎の3次元特徴点の密度を演算する。そして、3次元差分処理部316dは、3次元密度演算部316fが演算した密度に所定値以上の差がある場合に、新たに発生したボクセルデータ210cには第1の所定値を割振り、消失したボクセルデータ210cには第2の所定値を割振る。これにより、ノイズの影響を抑制できる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態によれば、3次元画像再構成処理部316cが期間別の特徴点のボクセルデータ210a、210bを生成する。そして、3次元差分処理部316dは、異なる期間間でのボクセルデータ210a、210bの差分処理を行い、新たに発生したボクセルデータ210cには第1の所定値を割振り、消失したボクセルデータ210cには第2の所定値を割振る。これにより、所定の期間内に生成した領域と、消失した領域を3次元的に把握可能となる。このため、監視者は、発電プラントなどの屋内における機材の配置の変化など現場状況の変化をより簡易に行うことが可能となる。
【0077】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る撮影処理システム1は、前、後、左、右、上、下の各要素画像を用いて、所定の期間内に生成した領域と、消失した領域を2次元の画像情報として生成し、生成した領域と、消失した領域とを3次元座標に変換可能である点で、第4実施形態に係る撮影処理システム1と相違する。以下では、第4実施形態に係る撮影処理システム1と相違する点を説明する。
【0078】
図24は、第4実施形態に係る撮影処理装置2の構成を示すブロック図である。図24に示すように、第4実施形態に係る撮影処理装置2は、2次元画像処理部318を更に備えて構成される。
【0079】
2次元画像処理部318は、前、後、左、右、上、下の各要素画像を用いて、所定の期間内に生成した領域と、消失した領域を2次元の画像情報として生成する。図25は、2次元画像処理部318の詳細なブロック図である。図25に示すように、2次元画像処理部318は、撮影位置比較部318a、補正画像生成部318b、及び差分画像表示処理部318cを有する。
【0080】
撮影位置比較部318aは、撮影位置推定部308により推定された撮影推定位置を比較する。より具体的には、現在の撮影推定位置と、撮影位置記録部204に記録される過去の所定期間内の撮影推定位置を比較し、現在の撮影推定位置に最も近接する過去の所定期間内の撮影推定位置を抽出する。
【0081】
補正画像生成部318bは、現在の撮影推定位置と、過去の所定期間内の撮影推定位置とに基づいて、映像記録部202に記録される各要素画像が重なるようにアフィン変換を行う。そして、補正画像生成部318bは、アフィン変換後の各要素画像を小領域比較部316a(図18参照)に供給する。
【0082】
小領域比較部316aは、各要素画像を小領域に分割し、対応する領域の類似度を算出し、類似度が所定値より低い小領域を、新たに発生した又は消失した小領域として抽出する。そして、小領域比較部316aは、類似度が所定値より低い小領域の2次元座標と、各撮影推定位置とを3次元座標生成部316b(図18参照)に供給する。図20に示すように、3次元座標生成部316bは、小領域の2次元座標と、各撮影推定位置とを用いて、小領域の3次元座標を生成する。また、小領域のみを3次元座標に変換するので、処理をより高速化可能である。
【0083】
差分画像表示処理部318cは、小領域の3次元座標を例えば3次元画像、例えば特徴点図G600図7参照)内に重畳させ、映像記録部202に記録すると共に、監視装置4に送信する。これにより、監視装置4では、3次元画像とともに、変化領域を表示装置410に表示可能となる。このため、監視者は、発電プラントなどの屋内における異常検知をより簡易に行うことが可能となる。
【0084】
また、差分画像表示処理部318cは、図23に示すように、新たに発生した又は消失した小領域の3次元座標を各要素画像上の2次元座標に変換し、例えば所定の形状又は色で示すことも可能である。
【0085】
以上説明したように、本実施形態によれば、撮影位置比較部318aが、現在の撮影推定位置に最も近接する過去の所定期間内の撮影推定位置を抽出し、小領域比較部316aが、各撮影推定位置の各要素画像を小領域に分割し、対応する領域の類似度を算出し、類似度が所定値より低い小領域を抽出する。そして、差分画像表示処理部318cが、似度が所定値より低い小領域の3次元座標を生成し、この小領域の3次元座標を例えば3次元画像内に重畳させる。これにより、3次元画像とともに、変化領域を表示装置410に表示可能となる。このため、監視者は、発電プラントなどの屋内における機材の配置の変化など現場状況の変化をより簡易により高速に行うことが可能となる。
【0086】
上述した実施形態で説明した撮影処理システム1の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、制御部の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD-ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク部やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0087】
また、撮影処理システム1の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0088】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な部、方法及びプログラムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した部、方法及びプログラムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0089】
1:撮影処理システム、2:撮影処理装置、4:監視装置、304:特徴点生成部、308:撮影位置推定部、314:障害物検知部、316c:3次元座標生成部、316d:3次元差分処理部、318:2次元画像処理部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25