(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】プラズマ切断トーチ
(51)【国際特許分類】
B23K 10/00 20060101AFI20241002BHJP
H05H 1/34 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B23K10/00 504
B23K10/00 501Z
H05H1/34
(21)【出願番号】P 2021049477
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】高田 主税
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-216950(JP,A)
【文献】実開平05-093665(JP,U)
【文献】特開2013-237095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 10/00
H05H 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トーチボディと、当該トーチボディを支持するハンドルと、を備え、
前記トーチボディは、第1軸線に沿って延びるトーチボディ第1部と、前記第1軸線と交差する第2軸線に沿って延びるトーチボディ第2部と、を有し、
前記トーチボディ第1部は、前記ハンドルにより前記第1軸線の周りに相対回動可能に支持されており、
前記ハンドルに対して前記トーチボディ第1部を任意の回動位置で固定する固定手段を備える、プラズマ切断トーチ。
【請求項2】
前記ハンドルは、作業者が握るためのグリップと、所定方向に延びるアダプタと、を含み、
前記アダプタは、長手方向において互いに反対側に位置するアダプタ第1部およびアダプタ第2部を有し、
前記アダプタ第1部は、外周部が前記グリップに覆われて当該グリップに支持されており、
前記トーチボディ第1部は、前記アダプタ第2部に相対回動可能に嵌合しており、
前記固定手段は、前記アダプタ第2部と前記トーチボディ第1部との相対回動を阻止可能である、請求項1に記載のプラズマ切断トーチ。
【請求項3】
前記アダプタ第2部は、内周部に形成されたアダプタ雌ねじ部を有し、
前記トーチボディ第1部は、外周部に形成され、前記アダプタ雌ねじ部に螺合するトーチボディ雄ねじ部を有する、請求項2に記載のプラズマ切断トーチ。
【請求項4】
前記アダプタ第2部は、外周部に形成されたアダプタ雄ねじ部を有し、
前記トーチボディ第1部は、前記トーチボディ雄ねじ部よりも前記トーチボディ第2部側に位置し、かつ前記トーチボディ雄ねじ部よりも径方向外方に張り出す大径部を有し、
前記固定手段は、締付けナットおよび調整部材を含み、
前記締付けナットは、前記アダプタ雄ねじ部に螺合される第1雌ねじ部を有し、
前記調整部材は、前記アダプタ第2部に外嵌されるとともに前記大径部と前記締付けナットとの間に配置されており、前記大径部と前記締付けナットの双方に当接し得る、請求項3に記載のプラズマ切断トーチ。
【請求項5】
前記調整部材は、内周部に形成され、前記アダプタ雄ねじ部に螺合される第2雌ねじ部を有する、請求項4に記載のプラズマ切断トーチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ切断トーチに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ切断において使用されるトーチは、一般に、トーチボディおよびこのトーチボディを支持するハンドルを備えて構成される。トーチボディは、基端側がハンドルに支持されており、たとえば先端側が屈曲した形状とされる。ハンドルは、作業者が手で握るための部分である。ハンドルには、切断の開始・停止の操作を行うためのトーチスイッチが設けられている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
プラズマ切断において、被加工物である母材の形状や作業環境に応じて、トーチボディとハンドルの相対位置を変更することが望まれる。特許文献1に記載されたプラズマ切断トーチは、トーチボディを保持する軸方向にスライド可能なハンドルを備えている。同文献のプラズマ切断トーチによれば、ハンドルを軸方向に沿ってスライドさせることでトーチボディ先端とハンドルの間の長さを調整することが可能である。
【0004】
その一方、母材の形状や作業環境によっては、作業者が握るためのハンドルに対し、トーチボディの先端が向く方向を変更したい場合がある。このようにトーチボディの先端が向く方向を変更したい場合、上記従来のプラズマ切断トーチでは、作業者がハンドルの握り方を本来とは異なる握り方に変えることである程度対応できる。しかしながら、このような作業では、作業性が悪く、トーチボディの先端が向く方向を大きく変更したい場合には対応できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、トーチボディの先端が向く方向を変更可能とし、作業性の向上を図ることが可能なプラズマ切断トーチを提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0008】
本発明によって提供されるプラズマ切断トーチは、トーチボディと、当該トーチボディを支持するハンドルと、を備え、前記トーチボディは、第1軸線に沿って延びるトーチボディ第1部と、前記第1軸線と交差する第2軸線に沿って延びるトーチボディ第2部と、を有し、前記トーチボディ第1部は、前記ハンドルにより前記第1軸線の周りに相対回動可能に支持されており、前記ハンドルに対して前記トーチボディ第1部を任意の回動位置で固定する固定手段を備える。
【0009】
好ましい実施の形態においては、前記ハンドルは、作業者が握るためのグリップと、所定方向に延びるアダプタと、を含み、前記アダプタは、長手方向において互いに反対側に位置するアダプタ第1部およびアダプタ第2部を有し、前記アダプタ第1部は、外周部が前記グリップに覆われて当該グリップに支持されており、前記トーチボディ第1部は、前記アダプタ第2部に相対回動可能に嵌合しており、前記固定手段は、前記アダプタ第2部と前記トーチボディ第1部との相対回動を阻止可能である。
【0010】
好ましい実施の形態においては、前記アダプタ第2部は、内周部に形成されたアダプタ雌ねじ部を有し、前記トーチボディ第1部は、外周部に形成され、前記アダプタ雌ねじ部に螺合するトーチボディ雄ねじ部を有する。
【0011】
好ましい実施の形態においては、前記アダプタ第2部は、外周部に形成されたアダプタ雄ねじ部を有し、前記トーチボディ第1部は、前記トーチボディ雄ねじ部よりも前記トーチボディ第2部側に位置し、かつ前記トーチボディ雄ねじ部よりも径方向外方に張り出す大径部を有し、前記固定手段は、締付けナットおよび調整部材を含み、前記締付けナットは、前記アダプタ雄ねじ部に螺合される第1雌ねじ部を有し、前記調整部材は、前記アダプタ第2部に外嵌されるとともに前記大径部と前記締付けナットとの間に配置されており、前記大径部と前記締付けナットの双方に当接し得る。
【0012】
好ましい実施の形態においては、内周部に形成され、前記アダプタ雄ねじ部に螺合される第2雌ねじ部を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るプラズマ切断トーチによれば、第1軸線と交差する第2軸線に沿って延びるトーチボディ第2部について、ハンドルに対して適宜所望の方向に変更することが可能である。プラズマ切断作業において、母材の形状や作業環境によって、作業者が握るハンドルに対してトーチボディの先端(トーチボディ第2部の先端部)が向く方向を変更したい場合がある。このような場合においても、本発明によれば、作業者がハンドルを適正な握り方で握りつつ、ハンドルに対してトーチボディの先端(トーチボディ第2部の先端部)を所望の方向に向かせることが可能であり、プラズマ切断の作業性の向上を図ることができる。
【0014】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るプラズマ切断トーチの第1実施形態を示す正面図である。
【
図2】
図1に示すプラズマ切断トーチをハンドルの前方側から見た図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿う拡大断面図である。
【
図5】ハンドルに対してトーチボディを回動させた状態を示す、
図4と同様の図である。
【
図6】ハンドルに対してトーチボディを回動させた状態を示す、
図2と同様の図である。
【
図7】第1実施形態に係るプラズマ切断トーチの変形例を示す、
図4と同様の部分拡大断面図である。
【
図8】第1実施形態に係るプラズマ切断トーチの他の変形例を示す、
図3と同様の断面図である。
【
図9】本発明に係るプラズマ切断トーチの第2実施形態を示す、
図3と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0017】
図1~
図6は、本発明に係るプラズマ切断トーチの第1実施形態を示す。本実施形態のプラズマ切断トーチA1は、トーチボディ1と、このトーチボディ1を支持するハンドル2と、締付けナット3、と、調整部材4と、を含んで構成される。
【0018】
トーチボディ1は、全体として筒状を呈しており、トーチボディ第1部11およびトーチボディ第2部12を有する。
【0019】
トーチボディ第1部11は、トーチボディ1の基端側に位置する部分であり、第1軸線O1に沿って延びる。トーチボディ第2部12は、トーチボディ1の先端側に位置する部分であり、第2軸線O2に沿って延びる。第2軸線O2は、第1軸線O1と交差している。このように、トーチボディ1は、互いに交差する第1軸線O1および第2軸線O2に延びるトーチボディ第1部11およびトーチボディ第2部12がつながっており、屈曲した形状とされている。
【0020】
トーチボディ第1部11は、トーチボディ雄ねじ部111および大径部112を有する。
図3、
図4に示すように、トーチボディ雄ねじ部111は、トーチボディ第1部11の基端側(図中右側)における外周部に形成されている。詳細は後述するが、このトーチボディ雄ねじ部111がハンドル2に螺合接続される。大径部112は、トーチボディ雄ねじ部111よりもトーチボディ第2部12側に位置する。大径部112は、トーチボディ雄ねじ部111よりも径方向外方に張り出す部分である。図示説明は省略するが、トーチボディ第1部11には、コネクタを介して、切断電流と作動ガスを供給するためのパワーケーブル(図示略)が接続される。
【0021】
詳細な図示説明は適宜省略するが、トーチボディ第2部12の先端側には、絶縁性の保護カバーおよび耐熱絶縁性のノズル(図示略)が取り付けられている。また、トーチボディ第2部12の内部には電極(図示略)が配置されており、この電極の先端を覆うチップ121が設けられている。チップ121の先端は露出しており、上記電極からのプラズマアークが絞られて、当該チップ121の先端から母材に向けて供給される。
【0022】
図1、
図3に示すように、ハンドル2は、全体として方向Xに延びる筒状を呈している。ハンドル2は、作業者がプラズマ切断を行う際の持ち手部分として機能するものである。本実施形態において、ハンドル2は、グリップ21およびアダプタ22を含む。
【0023】
グリップ21は、作業者が握るための部分である。グリップ21は、作業効率を向上させるために、たとえば人が握りやすい形状とされる。グリップ21は、複数の分割片からなり、これら分割片が組み合わされて全体として筒状のグリップ21が構成される。グリップ21において外表面に露出する部分は、たとえば合成樹脂などの絶縁性材料によって構成される。
【0024】
グリップ21の下部(
図1、
図3における下方)には、トーチスイッチ211が設けられている。トーチスイッチ211は、プラズマ切断の開始・停止の操作を行うものである。トーチスイッチ211は、作業者がグリップ21を握るときに人差し指を掛けやすい位置に設けられている。なお、
図3において、グリップ21の内部構造を適宜省略して簡略に表している。
【0025】
図3、
図4に示すように、アダプタ22は、方向Xに延びており、概略円筒状とされている。アダプタ22は、アダプタ第1部221およびアダプタ第2部222を有する。アダプタ第1部221およびアダプタ第2部222は、方向X(長手方向)において互いに反対側に位置する。アダプタ第1部221は、その大部分がグリップ21に覆われており、グリップ21により支持されている。
【0026】
アダプタ第2部222は、アダプタ第1部221につながっており、アダプタ第1部221と同一の軸線に沿って延びている。アダプタ第2部222は、グリップ21から露出している。アダプタ第2部222は、アダプタ雌ねじ部223およびアダプタ雄ねじ部224を有する。アダプタ雌ねじ部223は、アダプタ第2部222の内周部に形成されており、本実施形態ではアダプタ第2部222の長手方向における所定長さ範囲に形成されている。アダプタ雄ねじ部224は、アダプタ第2部222の外周部に形成されている。
【0027】
図4に示すように、上記アダプタ雌ねじ部223には、トーチボディ第1部11(トーチボディ1)のトーチボディ雄ねじ部111が螺合している。これにより、トーチボディ第1部11(トーチボディ1)は、アダプタ22に直接支持されている。上記構成により、トーチボディ第1部11(トーチボディ1)とアダプタ第2部222(アダプタ22、ハンドル2)とは、互いに螺合するトーチボディ雄ねじ部111およびアダプタ雌ねじ部223のねじ山に沿って、第1軸線O1の周りに相対回動可能である。
【0028】
図3、
図4に示すように、締付けナット3は、筒状を呈しており、アダプタ第2部222に装着されるものである。締付けナット3は、内周部に形成された第1雌ねじ部31を有する。第1雌ねじ部31は、アダプタ第2部222のアダプタ雄ねじ部224に螺合されている。このようにして、締付けナット3は、アダプタ第2部222に外嵌装着される。締付けナット3の外周部は、締付工具を使用するのに適した形状とされており、たとえば横断面六角形状ある。
【0029】
調整部材4は、筒状を呈しており、アダプタ第2部222に外嵌されている。調整部材4は、方向Xにおいて、トーチボディ第1部11の大径部112と、締付けナット3との間に配置されている。本実施形態において、調整部材4は、内周部に形成された第2雌ねじ部41を有する。第2雌ねじ部41は、アダプタ雄ねじ部224に螺合されている。調整部材4の外周部は、締付工具を使用するのに適した形状とされており、たとえば横断面六角形状ある。
【0030】
上記構成のプラズマ切断トーチA1において、
図4を参照して上述したように、アダプタ雌ねじ部223には、トーチボディ第1部11(トーチボディ1)のトーチボディ雄ねじ部111が第1軸線O1の周りに回動可能に螺合している。このようにトーチボディ雄ねじ部111がアダプタ雌ねじ部223に螺合した状態において、調整部材4(第2雌ねじ部41)をアダプタ雄ねじ部224に対して締め込む(
図4において、アダプタ第2部222に対して調整部材4が左側に移動するように回動させる)。そうすると、当該調整部材4をトーチボディ第1部11の大径部112に当接させることが可能である。また、調整部材4が大径部112に当接した状態において、締付けナット3(第1雌ねじ部31)をアダプタ雄ねじ部224に対して締め込む(
図4において、アダプタ第2部222に対して締付けナット3が左側に移動するように回動させる)。そうすると、当該締付けナット3を調整部材4に当接させることが可能である。このように、調整部材4および締付けナット3を順次締め付けることで、大径部112と締付けナット3との間に配置された調整部材4は、大径部112と締付けナット3の双方に当接し得る。
【0031】
調整部材4および締付けナット3を締め込んだ状態において、アダプタ雌ねじ部223(アダプタ第2部222)およびトーチボディ雄ねじ部111(トーチボディ第1部11)と、アダプタ雄ねじ部224(アダプタ第2部222)および第2雌ねじ部41(第2雌ねじ部41)と、アダプタ雄ねじ部224(アダプタ第2部222)および第1雌ねじ部31(締付けナット3)とが、それぞれ互いに締結される。このとき、アダプタ第2部222(アダプタ22、ハンドル2)とトーチボディ第1部11(トーチボディ1)との相対回動が防止され、アダプタ第2部222(アダプタ22、ハンドル2)に対して、トーチボディ第1部11(トーチボディ1)が固定される。本実施形態において、締付けナット3を締め込むことで各ねじ部の緩みが防止されており、締付けナット3は緩み止めナットとして機能する。
【0032】
図4に示した状態から締付けナット3を緩めると、各ねじ部の締結が緩み、トーチボディ第1部11(トーチボディ雄ねじ部111)とアダプタ第2部222(アダプタ雌ねじ部223)とが相対回動可能となる。この状態でトーチボディ第1部11(トーチボディ1)のトーチボディ雄ねじ部111をアダプタ第2部222のアダプタ雌ねじ部223から緩めるように、第1軸線O1の周りに回動させることが可能である。
図6は、
図2に示した状態から、アダプタ第2部222(アダプタ22、ハンドル2)に対してトーチボディ第1部11(トーチボディ1)を第1軸線O1の周りに回動させた状態を示す。ここで、
図6に示す場合は
図2に示す場合と比べて、第1軸線O1と交差する第2軸線O2に沿って延びるトーチボディ第2部12は、ハンドル2に対して異なる方向を向いている。
【0033】
図5は、トーチボディ1が
図6に示す姿勢をとるときの
図4と同様の断面図を表す。
図4と
図5とを対比すると理解されるように、
図5に示す態様は、
図4に示す場合よりも、アダプタ雌ねじ部223に対してトーチボディ雄ねじ部111が緩み方向に回動している。アダプタ雌ねじ部223(アダプタ第2部222)とトーチボディ雄ねじ部111(トーチボディ第1部11)とが
図5に示した位置関係をとるとき、調整部材4および締付けナット3を順次締め付ける。そうすると、大径部112と締付けナット3との間に配置された調整部材4は、大径部112と締付けナット3の双方に当接する。
【0034】
このように調整部材4および締付けナット3を締め込んだ状態において、アダプタ雌ねじ部223(アダプタ第2部222)およびトーチボディ雄ねじ部111(トーチボディ第1部11)と、アダプタ雄ねじ部224(アダプタ第2部222)および第2雌ねじ部41(第2雌ねじ部41)と、アダプタ雄ねじ部224(アダプタ第2部222)および第1雌ねじ部31(締付けナット3)とが、それぞれ互いに締結される。このとき、アダプタ第2部222(アダプタ22、ハンドル2)とトーチボディ第1部11(トーチボディ1)との相対回動が防止され、アダプタ第2部222(アダプタ22、ハンドル2)に対して、トーチボディ第1部11(トーチボディ1)が固定される。これにより、プラズマ切断トーチA1においては、トーチボディ第1部11(トーチボディ1)、アダプタ第2部222(アダプタ22)、締付けナット3および調整部材4の協働によって、アダプタ第2部222(アダプタ22、ハンドル2)に対してトーチボディ第1部11(トーチボディ1)を任意の回動位置で固定することが可能である。上記構成の締付けナット3および調整部材4は、本発明の固定手段の一例に相当する。
【0035】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0036】
本実施形態のプラズマ切断トーチA1において、第1軸線O1に沿って延びるトーチボディ第1部11は、アダプタ第2部222(アダプタ22、ハンドル2)により第1軸線O1の周りに相対回動可能に支持されている。プラズマ切断トーチA1は、アダプタ第2部222(アダプタ22、ハンドル2)に対してトーチボディ第1部11を任意の回動位置で固定する固定手段(締付けナット3および調整部材4)を具備する。
【0037】
このような構成によれば、第1軸線O1と交差する第2軸線O2に沿って延びるトーチボディ第2部12について、アダプタ第2部222(アダプタ22、ハンドル2)に対して適宜所望の方向に変更することが可能である。プラズマ切断作業において、母材の形状や作業環境によって、作業者が握るハンドル2に対してトーチボディ1の先端(トーチボディ第2部12の先端部)が向く方向を変更したい場合がある。このような場合においても、本実施形態によれば、作業者がグリップ21(ハンドル2)を適正な握り方で握りつつ、ハンドル2に対してトーチボディ1の先端(トーチボディ第2部12の先端部)を所望の方向に向かせることが可能であり、プラズマ切断の作業性の向上を図ることができる。
【0038】
本実施形態において、ハンドル2は、方向Xに延びるアダプタ22を含む。アダプタ22は、方向X(長手方向)において互いに反対側に位置するアダプタ第1部221およびアダプタ第2部222を有する。アダプタ第1部221は、外周部がグリップ21に覆われて当該グリップ21に支持されている。トーチボディ第1部11は、アダプタ第2部222に相対回動可能に嵌合(ねじ嵌合)しており、固定手段(締付けナット3および調整部材4)は、アダプタ第2部222とトーチボディ第1部11との相対回動を阻止可能である。このような構成によれば、相対回動可能なアダプタ第2部222およびトーチボディ第1部11と、固定手段としての締付けナット3および調整部材4とは、グリップ21から露出させることが可能である。この露出部分を操作することによって、トーチボディ1の先端(トーチボディ第2部12の先端部)が向く方向を容易に変更することができる。
【0039】
アダプタ第2部222は、内周部に形成されたアダプタ雌ねじ部223を有する。トーチボディ第1部11は外周部に形成されたトーチボディ雄ねじ部111を有し、当該トーチボディ雄ねじ部111は、アダプタ雌ねじ部223に螺合している。このような構成によれば、トーチボディ第1部11はアダプタ第2部222に相対回動可能にねじ嵌合しており、トーチボディ1の先端(トーチボディ第2部12の先端部)が向く方向を変更する際、きめ細かな角度調整を容易に行うことができる。
【0040】
アダプタ第2部222は、外周部に形成されたアダプタ雄ねじ部224を有する。トーチボディ第1部11は、トーチボディ雄ねじ部111よりも径方向外方に張り出す大径部112を有する。固定手段としての締付けナット3および調整部材4について、締付けナット3は、アダプタ雄ねじ部224に螺合される第1雌ねじ部31を有する。調整部材4は、アダプタ第2部222に外嵌されるとともに大径部112と締付けナット3との間に配置されており、大径部112と締付けナットの双方に当接し得る。このような構成によれば、締付けナット3を締め込んだ状態において、締付けナット3および調整部材4の協働によって、アダプタ第2部222(アダプタ22、ハンドル2)に対してトーチボディ第1部11(トーチボディ1)を任意の回動位置で固定することが可能である。上記構成の締付けナット3は、操作が容易であり、使い勝手が良い。
【0041】
本実施形態において、調整部材4は、内周部に形成された第2雌ねじ部41を有する。第2雌ねじ部41は、アダプタ第2部222のアダプタ雄ねじ部224に螺合される。このような構成によれば、調整部材4および締付けナット3を順次締め付けると、アダプタ雌ねじ部223(アダプタ第2部222)およびトーチボディ雄ねじ部111(トーチボディ第1部11)と、アダプタ雄ねじ部224(アダプタ第2部222)および第2雌ねじ部41(第2雌ねじ部41)と、アダプタ雄ねじ部224(アダプタ第2部222)および第1雌ねじ部31(締付けナット3)とが、それぞれ互いに締結される。したがって、トーチボディ第1部11(トーチボディ1)、アダプタ第2部222(アダプタ22)、締付けナット3および調整部材4の協働によって、アダプタ第2部222(アダプタ22、ハンドル2)に対してトーチボディ第1部11(トーチボディ1)を、より強固に固定することができる。
【0042】
図7は、上記第1実施形態に係るプラズマ切断トーチの変形例を示している。なお、
図7以降の図面において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。
【0043】
図7に示したプラズマ切断トーチA11においては、調整部材4の構成が上記実施形態と異なっている。プラズマ切断トーチA11において、調整部材4は、上記実施形態における第2雌ねじ部41を有しておらず、概略円筒状とされている。調整部材4は、小径部42および延出筒部43を有する。調整部材4は、主要部分がアダプタ第2部222に間隔を隔てて外嵌されている。小径部42は、他の部位よりも径方向内方に突出する部分であり、トーチボディ第1部11の大径部112に当接し得る。延出筒部43は、トーチボディ第1部11側に延出する筒状部分であり、大径部112に外嵌されている。
【0044】
図7に示した構成において、締付けナット3を締め付ける(アダプタ第2部222に対して締付けナット3が左側に移動するように回動させる)と、アダプタ雌ねじ部223(アダプタ第2部222)およびトーチボディ雄ねじ部111(トーチボディ第1部11)と、アダプタ雄ねじ部224(アダプタ第2部222)および第1雌ねじ部31(締付けナット3)とが、それぞれ互いに締結される。このとき、アダプタ第2部222(アダプタ22、ハンドル2)とトーチボディ第1部11(トーチボディ1)との相対回動が防止され、アダプタ第2部222(アダプタ22、ハンドル2)に対して、トーチボディ第1部11(トーチボディ1)が固定される。このような構成によれば、締付けナット3を締め込んだ状態において、締付けナット3および調整部材4の協働によって、アダプタ第2部222(アダプタ22、ハンドル2)に対してトーチボディ第1部11(トーチボディ1)を任意の回動位置で固定することが可能である。上記構成の締付けナット3は、操作が容易であり、使い勝手が良い。
【0045】
図8は、上記第1実施形態に係るプラズマ切断トーチの他の変形例を示している。
図8に示したプラズマ切断トーチA12においては、トーチボディ第1部11(トーチボディ1)のサイズが上記実施形態と比べて大きくされており、それに伴いアダプタ22の構成が上記実施形態と異なっている。本変形例において、アダプタ22のうち、アダプタ第1部221については上記実施形態と同じ構成で同じ直径サイズとされるが、アダプタ第2部222については、トーチボディ第1部11のサイズに対応させて、上記実施形態よりも直径サイズが大きくされている。締付けナット3および調整部材4の直径サイズについても、アダプタ第2部222の直径サイズに対応させて、上記実施形態よりも大きくされている。その一方、アダプタ第1部221は上記実施形態と同一の構成である。そのため、アダプタ第1部221の外周部を覆って当該アダプタ第1部221を支持するグリップ21についても、上記実施形態と同一の構成のものを使用することができる。このように、トーチボディ1のサイズが異なる場合においても、アダプタ22についてアダプタ第2部222のサイズがトーチボディ1に対応するものに交換することで、グリップ21については兼用することが可能で汎用性に優れる。
【0046】
図9は、本発明に係るプラズマ切断トーチの第2実施形態を示している。
図9に示したプラズマ切断トーチA2においては、トーチボディ第1部11およびアダプタ22の構成が上記第1実施形態と大きく異なる。また、上記第1実施形態の締付けナット3および調整部材4に代えて、ロック部材5を備えている。
【0047】
本実施形態において、トーチボディ第1部11は、ねじ軸113およびジョイント部114を備えている。本実施形態において、ねじ軸113は大径部112につながっており、上記実施形態のトーチボディ雄ねじ部111と同様の構成である。ジョイント部114は、ねじ軸113に接続される部材であり、方向Xにおいて大径部112よりもハンドル2側に位置する。ジョイント部114は、全体として筒状をなしており、ねじ穴115および接続部116を有する。ジョイント部114において、ねじ穴115は方向Xの一方側(
図9における左側)に位置し、接続部116は方向Xの他方側(
図9における右側)に位置する。ねじ穴115は、ねじ軸113と螺合しており、ねじ軸113およびジョイント部114が締結されている。接続部116は、複数のスリット116a、外周ねじ部116b、内周ねじ部116cおよびテーパー外周面116dを含む。複数のスリット116aは、接続部116の周方向に均等に分散配置しており、各々が接続部116の軸方向に延びる。本実施形態では、4つのスリット116aが接続部116の周方向において90°毎に配置される。外周ねじ部116bは接続部116の外周部に形成された雄ねじであり、内周ねじ部116cは接続部116の内周部に形成された雌ねじである。テーパー外周面116dは、接続部116においてハンドル2寄りの先端部に形成されている。テーパー外周面116dは、部分円錐状とされており、先端側(
図9における右側)に向かうにつれて外径寸法が小さくされている。
【0048】
アダプタ22は、アダプタ第1部221およびアダプタ第2部222を有する。アダプタ第2部222は、アダプタ第1部221よりも小径である。アダプタ第2部222の先端部(
図9における左端部)には、アダプタ外周ねじ部225が形成されている。アダプタ外周ねじ部225は、ジョイント部114(トーチボディ第1部11)の内周ねじ部116cに螺合している。これにより、ジョイント部114(トーチボディ第1部11、トーチボディ1)は、アダプタ22に支持されている。上記構成により、ジョイント部114(トーチボディ第1部11、トーチボディ1)とアダプタ第2部222(アダプタ22、ハンドル2)とは、互いに螺合する内周ねじ部116cおよびアダプタ外周ねじ部225のねじ山に沿って、第1軸線O1の周りに相対回動可能である。
【0049】
ロック部材5は、筒状を呈しており、ジョイント部114に装着されるものである。ロック部材5は、内周ねじ部51およびテーパー内周面52を有する。内周ねじ部51は、ジョイント部114(接続部116)の外周ねじ部116bに螺合されている。テーパー内周面52は、
図9における右側に向かうにつれて外径寸法が小となる部分円錐状であり、ジョイント部114(接続部116)のテーパー外周面116dと摺接可能である。このような構成によって、ロック部材5の内周ねじ部51を接続部116の外周ねじ部116bに締め付けることで、接続部116は、径方向内方に変位させられ、縮径可能である。接続部116が縮径させられると、ジョイント部114(トーチボディ第1部11)とアダプタ第2部222との相対回動が阻止される。ロック部材5の外周部は、締付工具を使用するのに適した形状とされており、たとえば横断面六角形状ある。
【0050】
本実施形態において、ロック部材5(内周ねじ部51)を緩めた状態では、ジョイント部114(トーチボディ第1部11)とアダプタ第2部222とが相対回動可能である。この状態でジョイント部114(トーチボディ第1部11)の内周ねじ部116cとアダプタ第2部222のアダプタ外周ねじ部225とを、ねじ山に沿って第1軸線O1の周りに回動させることが可能である。そして、第1軸線O1と交差する第2軸線O2に沿って延びるトーチボディ第2部12については、ハンドル2に対する方向を適宜異ならせることが可能である。上述のように、ロック部材5を締め付けると、ジョイント部114(トーチボディ第1部11)とアダプタ第2部222との相対回動が阻止される。これにより、プラズマ切断トーチA2においては、ロック部材5により、アダプタ第2部222(アダプタ22、ハンドル2)に対してジョイント部114(トーチボディ第1部11)を任意の回動位置で固定することが可能である。上記構成のロック部材5は、本発明の固定手段の一例に相当する。
【0051】
本実施形態のプラズマ切断トーチA2において、第1軸線O1に沿って延びるトーチボディ第1部11は、アダプタ第2部222(アダプタ22、ハンドル2)により第1軸線O1の周りに相対回動可能に支持されている。プラズマ切断トーチA2は、アダプタ第2部222(アダプタ22、ハンドル2)に対してトーチボディ第1部11を任意の回動位置で固定する固定手段(ロック部材5)を具備する。
【0052】
このような構成によれば、第1軸線O1と交差する第2軸線O2に沿って延びるトーチボディ第2部12について、アダプタ第2部222(アダプタ22、ハンドル2)に対して適宜所望の方向に変更することが可能である。プラズマ切断作業において、母材の形状や作業環境によって、作業者が握るハンドル2に対してトーチボディ1の先端(トーチボディ第2部12の先端部)が向く方向を変更したい場合がある。このような場合においても、本実施形態によれば、作業者がグリップ21(ハンドル2)を適正な握り方で握りつつ、ハンドル2に対してトーチボディ1の先端(トーチボディ第2部12の先端部)を所望の方向に向かせることが可能であり、プラズマ切断の作業性の向上を図ることができる。
【0053】
本実施形態において、ハンドル2は、方向Xに延びるアダプタ22を含む。アダプタ22は、方向X(長手方向)において互いに反対側に位置するアダプタ第1部221およびアダプタ第2部222を有する。アダプタ第1部221は、外周部がグリップ21に覆われて当該グリップ21に支持されている。トーチボディ第1部11(ジョイント部114の接続部116)とアダプタ第2部222とは、相対回動可能に嵌合(ねじ嵌合)しており、固定手段(ロック部材5)は、アダプタ第2部222とトーチボディ第1部11との相対回動を阻止可能である。このような構成によれば、相対回動可能なアダプタ第2部222およびトーチボディ第1部11と、固定手段としてのロック部材5とは、グリップ21から露出させることが可能である。この露出部分を操作することによって、トーチボディ1の先端(トーチボディ第2部12の先端部)が向く方向を容易に変更することができる。
【0054】
ジョイント部114(トーチボディ第1部11)は、内周ねじ部116cを有する。アダプタ第2部222はアダプタ外周ねじ部225を有し、アダプタ外周ねじ部225は内周ねじ部116cに螺合している。このような構成によれば、トーチボディ第1部11とアダプタ第2部222とは、相対回動可能にねじ嵌合しており、トーチボディ1の先端(トーチボディ第2部12の先端部)が向く方向を変更する際、きめ細かな角度調整を容易に行うことができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は上記した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる変更は、すべて本発明の範囲に包摂される。
【0056】
上記第1実施形態のプラズマ切断トーチA1において、トーチボディ第1部11の外周部に雄ねじ(トーチボディ雄ねじ部111)を設け、アダプタ第2部222の内周部に雌ねじ(アダプタ雌ねじ部223)を設けたが、本発明はこれに限定されない。トーチボディ第1部11とアダプタ第2部222のねじ嵌合の関係を入れ替えてもよい。たとえばトーチボディ第1部11の内周部に雌ねじを設け、かつアダプタ第2部222の外周部に当該雌ねじに螺合する雄ねじを設けて、トーチボディ第1部11とアダプタ第2部222とを相対回動可能にねじ嵌合してもよい。
【0057】
上記第2実施形態のプラズマ切断トーチA2において、トーチボディ第1部11側にジョイント部114を設けたが、本発明はこれに限定されず、トーチボディ第1部11とアダプタ第2部222のねじ嵌合の関係を入れ替えてもよい。たとえばアダプタ第2部222にジョイント部を設けてもよく、
図9に示したジョイント部114およびロック部材5に関して同図の左右を入れ替えた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0058】
A1,A11,A12,A2:プラズマ切断トーチ、1:トーチボディ、11:トーチボディ第1部、111:トーチボディ雄ねじ部、12:トーチボディ第2部、2:ハンドル、21:グリップ、22:アダプタ、221:アダプタ第1部、222:アダプタ第2部、223:アダプタ雌ねじ部、224:アダプタ雄ねじ部、3:締付けナット(固定手段)、31:第1雌ねじ部、4:調整部材(固定手段)、41:第2雌ねじ部、5:ロック部材(固定手段)、O1:第1軸線、O2:第2軸線、x:方向