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  • 特許-材料予熱装置及び、射出装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】材料予熱装置及び、射出装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/72 20060101AFI20241002BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B29C45/72
B29C45/17
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021052373
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149987
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】清家 幸治
(72)【発明者】
【氏名】石田 浩修
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-297226(JP,A)
【文献】特開2019-072959(JP,A)
【文献】特開2017-030189(JP,A)
【文献】特開2016-026919(JP,A)
【文献】特開2002-355817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料の予熱を行い、当該成形材料を射出装置に供給する材料予熱装置であって、
熱風の供給により成形材料を流動層にしながら加熱する流動層加熱器を複数個備え
複数個の流動層加熱器のうちの二個の流動層加熱器を相互に連結し、それらの一方の流動層加熱器から他方の流動層加熱器へ成形材料を送る直列連結通路を備える材料予熱装置。
【請求項2】
前記直列連結通路により相互に連結された前記二個の流動層加熱器のうち、少なくとも、射出装置への成形材料の供給方向の上流側に位置する流動層加熱器が、当該流動層加熱器への成形材料の投入に用いる材料投入口を有する請求項に記載の材料予熱装置。
【請求項3】
複数個の流動層加熱器のうち、少なくとも二個の流動層加熱器のそれぞれから射出装置に向けて成形材料を送って供給する並列供給通路を備える請求項1又は2に記載の材料予熱装置。
【請求項4】
成形材料の予熱を行い、当該成形材料を射出装置に供給する材料予熱装置であって、
熱風の供給により成形材料を流動層にしながら加熱する流動層加熱器を複数個備え、
複数個の流動層加熱器のうち、少なくとも二個の流動層加熱器のそれぞれから射出装置に向けて成形材料を送って供給する並列供給通路を備える材料予熱装置。
【請求項5】
前記並列供給通路が、
当該並列供給通路に接続された前記少なくとも二個の流動層加熱器のそれぞれにつながる少なくとも二本の分岐通路部分と、
分岐通路部分が合流し、射出装置に至る合流通路部分と
を有する請求項3又は4に記載の材料予熱装置。
【請求項6】
前記並列供給通路に接続された前記少なくとも二個の流動層加熱器のそれぞれが、当該流動層加熱器への成形材料の投入に用いる材料投入口を有する請求項3~5のいずれか一項に記載の材料予熱装置。
【請求項7】
複数個の各流動層加熱器が成形材料の出口に、前記熱風を通すとともに前記出口で成形材料を通過させ又は当該通過を停止するべく開閉する通気性開閉部材を有する請求項1~6のいずれか一項に記載の材料予熱装置。
【請求項8】
成形材料の予熱を行い、当該成形材料を射出装置に供給する材料予熱装置であって、
熱風の供給により成形材料を流動層にしながら加熱する流動層加熱器を複数個備え、
複数個の各流動層加熱器が成形材料の出口に、前記熱風を通すとともに前記出口で成形材料を通過させ又は当該通過を停止するべく開閉する通気性開閉部材を有する材料予熱装置。
【請求項9】
流動層加熱器に供給する熱風を発生させる熱風発生機を備える請求項1~のいずれか一項に記載の材料予熱装置。
【請求項10】
成形材料を溶融するシリンダを備え、シリンダで溶融された成形材料を金型装置に射出する射出装置であって、
請求項1~のいずれか一項に記載の材料予熱装置を備える射出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、成形材料を射出装置に供給するに先立ち、成形材料の予熱を行う材料予熱装置及び、射出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機で成形品を製造するに当たり、成形材料を射出成形機の射出装置に供給する前に加熱するものとしては、特許文献1~3等に記載されたような乾燥機がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-167840号公報
【文献】特表2012-521904号公報
【文献】特開2016-26919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、たとえばペットボトルのキャップ等の成形品を製造するに際し、射出成形機は、樹脂ペレットその他の成形材料を溶融しつつ金型装置内に注入して成形品を得るまでの一連の工程を、比較的短いサイクルで繰返し行うハイサイクル成形で使用されることがある。このような場合、射出成形機には高い生産能力が要求される。
【0005】
射出成形機による成形のサイクルの短縮は、射出装置のシリンダ内に配置されたスクリュの回転数を増大させて成形材料の可塑化を短期間のうちに終了させ、シリンダ先端部への成形材料の蓄積に要する時間を短くすることにより実現することができる。
【0006】
一方、スクリュを高速回転させると、成形材料はシリンダの内部で、シリンダの周囲に設けられたヒーターによる加熱が十分になされずに、シリンダの先端部側に急速に送られる。ヒーターの加熱温度を高くしたとしても、シリンダの内部での成形材料の滞留時間が短いことから、成形材料の加熱が不十分になり得る。この場合、シリンダの先端部から金型装置に射出される溶融状態の成形材料に、未溶融の成形材料が含まれることがある。成形品への未溶融の成形材料の混入は、その成形品の外観不良や強度の低下等の不具合の発生を招く。
【0007】
これに対処するには、成形材料を射出装置に供給する前に予め加熱することが考えられる。なお、特許文献1~3に記載されているような成形材料の乾燥を目的とする一般的な乾燥機では、各成形材料の温度が、上記のハイサイクル成形で求められるほど迅速かつ十分に上昇しないことがある。
【0008】
ここで、射出装置への供給前の成形材料の予熱のため、熱風の供給によって成形材料を浮遊させて流動層にする加熱器を設計すれば、当該加熱器で各成形材料が比較的短時間のうちに有効に昇温することが期待される。但し、そのような加熱器であっても、射出装置への成形材料の供給量ないし供給速度や、加熱器に熱風を供給する機器の送風能力その他の条件を考慮すると、単一の加熱器では、各成形材料の速やかな昇温を実現することが困難であると推測される。
【0009】
この発明は、上述したような問題を解決することを課題とするものであり、その目的は、射出装置に供給する前の成形材料の予熱を有効に行うことができる材料予熱装置及び、射出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決することができる一の材料予熱装置は、成形材料の予熱を行い、当該成形材料を射出装置に供給するものであって、熱風の供給により成形材料を流動層にしながら加熱する流動層加熱器を複数個備えるものである。
【0011】
また、一の射出装置は、成形材料を溶融するシリンダを備え、シリンダで溶融された成形材料を金型装置に射出するものであって、上記の材料予熱装置を備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
上記の材料予熱装置によれば、射出装置に供給する前の成形材料の予熱を有効に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の一の実施形態の材料予熱装置を、射出装置とともに示す断面図である。
図2図1の材料予熱装置の拡大断面図である。
図3】他の実施形態の材料予熱装置を示す断面図である。
図4】さらに他の実施形態の材料予熱装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照しながら、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
この発明の一の実施形態の材料予熱装置21は、図1に例示するような射出装置1に取り付けられ、射出装置1に供給する前の成形材料の予熱を行うものである。射出成形機の一部を構成する射出装置1は、材料予熱装置21から供給された成形材料を溶融させ、該成形材料を図示しない金型装置に射出する。図示の射出装置1は、当該射出装置1を前進・後退させる移動装置のスライドベース101上に配置されており、内部で成形材料を溶融させるシリンダ11や、シリンダ11の内部で回転駆動されて成形材料を可塑化するスクリュ12、シリンダ11の周囲に設けられてシリンダ11の内部の成形材料を加熱するヒーター13等を備えるが、この射出装置1の詳細な構造については後述する。
【0015】
(材料予熱装置)
材料予熱装置21は、スクリュ12の回転軸線方向(図1の左右方向)で、シリンダ11の成形材料を射出する先端部14とは逆側の後端部に取り付けられる。より詳細には、この材料予熱装置21は、シリンダ11上にて、図2に示すように、シリンダ11の後端部で周方向の一部に設けられた貫通孔状の供給口11aに接続されており、当該供給口11aに、実質的に球状もしくは円柱状その他の形状の樹脂ペレット等の成形材料Mmを供給するものである。
【0016】
この実施形態の材料予熱装置21は、内部で熱風の供給により成形材料Mmを流動層にしつつ加熱する二個の流動層加熱器22、23を備える。各流動層加熱器22、23では、空気その他の加熱気体による熱風は多くの場合、その内部に収容された成形材料Mmの下方側から当該内部に供給される。それにより、成形材料Mmの少なくとも一部は、図示のように、下方側からの熱風により舞い上がって浮遊し、流動層を形成する。このとき、流動層加熱器22、23内で浮遊状態の成形材料Mmは、堆積状態のときに比して熱風との接触面積が増大するので、熱風によって効果的に昇温する。その結果として、流動層加熱器22、23によれば、成形材料Mmを比較的短時間のうちに十分に加熱することができる。
【0017】
他方、ハイサイクル成形等で射出装置1に供給する成形材料Mmの個数ないし量や供給速度その他の条件によっては、一回当たりの予熱で、ある程度多くの成形材料Mmを加熱することが必要になる。この場合、多数個の各成形材料Mmを流動層にて迅速に所定の温度まで昇温させるには、成形材料Mmに送る熱風の流量を多くする必要があるが、そのような流量の熱風を発生させ得る高い性能の熱風発生機を射出成形機で用いることは、現実的ではない場合がある。
【0018】
これに対し、この実施形態では、材料予熱装置21が、流動層加熱器22、23を複数個、たとえば二個備えるものとする。このようにして予熱対象の成形材料Mmを複数個の流動層加熱器22、23で小分けにし、それぞれの流動層加熱器22、23にて流動層にして加熱すれば、比較的多くの成形材料Mmの予熱を迅速かつ有効に行うことができる。それにより、熱風発生機の能力をそれほど高めることなしに、ハイサイクル成形に対応することも可能になる。
【0019】
なお、図示の実施形態では、各流動層加熱器22、23は一例として、射出装置1への成形材料Mmの供給方向の下流側(図2では下方側)に位置する先端筒部22a、23aと、先端筒部22a、23aと連結された小径側の端部を含み、内外形がともに円錐台状等のテーパ状であるテーパ部22b、23bと、テーパ部22b、23bの大径側の端部に連結された筒状本体部22c、23cと、筒状本体部22c、23cのテーパ部22b、23b側とは逆側(図2では上方側)の端部に設けられて、当該端部から内周側に延びる環状部22d、23dとを有する容器状のものとしている。但し、流動層加熱器は、内部で成形材料を流動層にしながら加熱できるものであれば、その具体的な形状その他の構成については特に問わない。また、この実施形態では、二個の流動層加熱器22、23はほぼ同様の形状及び寸法を有するが、複数個の流動層加熱器のうちの少なくとも一個を、他の流動層加熱器と異なる形状及び/又は寸法にしてもよい。
【0020】
複数個の流動層加熱器22、23の配置に関し、図2に示す材料予熱装置21では、二個の流動層加熱器22、23を実質的に鉛直方向の上下に並べて直列に配置し、それらの流動層加熱器22、23の相互を連結する直列連結通路24を設けている。この例では、直列連結通路24は、鉛直方向の上方側(成形材料Mmの供給方向の上流側)に位置する流動層加熱器23の先端筒部23aの内側に区画される。先端筒部23aは、成形材料Mmの供給方向とほぼ一致する鉛直方向に沿って延びて、鉛直方向の下方側(成形材料Mmの供給方向の下流側)に位置する流動層加熱器22の環状部22dに接続されている。
【0021】
図2に示す実施形態のように、材料予熱装置21が、流動層加熱器22、23の相互を連結する直列連結通路24を備えるときは、下流側の流動層加熱器22で成形材料Mmを加熱する際に、上流側の流動層加熱器23でも成形材料Mmを加熱することができる。そして、下流側の流動層加熱器22で加熱された成形材料Mmが射出装置1に供給された後、上流側の流動層加熱器23で加熱された成形材料Mmは、直列連結通路24を経て下流側の流動層加熱器22に送られ、続いて下流側の流動層加熱器22で加熱される。このような二段階等の複数段階での加熱により、成形材料Mmは、射出装置1に供給される直前の流動層加熱器22で所定の温度に昇温されやすくなる。流動層加熱器22、23による複数段階の加熱を実現するため、この実施形態の材料予熱装置21は、具体的には次に述べる構成を有する。
【0022】
図2に示す材料予熱装置21の各流動層加熱器22、23では、成形材料Mmの出口としての先端筒部22a、23aに、図示しない駆動源により駆動されて該出口で成形材料Mmを通過させ又は当該通過を停止するべく開閉する通気性開閉部材25a、25bを設けている。通気性開閉部材25a、25bを閉じると、後述するように各流動層加熱器22、23に当該出口側から供給される熱風は、通気性開閉部材25a、25bを通過できる一方で、成形材料Mmは、通気性開閉部材25a、25bを通過できずに通気性開閉部材25a、25b上で保持される。かかる通気性開閉部材25a、25bとして具体的には、金属製の板材にプレス加工等で複数個の貫通穴を形成したパンチングメタルや、正面視で正方形その他の多角形等の網目を有する網状部材等が挙げられる。
【0023】
また、この材料予熱装置21は、下流側の流動層加熱器22の出口を、射出装置1の供給口11aに接続する射出装置1向けの材料供給通路26と、熱風発生機27と材料供給通路26とを接続する熱風送り流路27aと、上流側の流動層加熱器23の環状部23dと熱風発生機27とを接続する熱風戻り流路27bとを備える。材料供給通路26の途中で、熱風送り流路27aとの接続箇所よりも成形材料Mmの供給方向の下流側には、そこを開閉するべく駆動される熱風遮断部材28が設けられている。図示は省略するが、熱風送り流路27aにも開閉駆動の熱風遮断部材を設けることができ、この熱風遮断部材を閉じると、熱風発生機27から流動層加熱器22への熱風の流れが遮断される。材料予熱装置21は、多くの場合、流動層加熱器22、23に供給する熱風を発生させる熱風発生機27をさらに有するが、材料予熱装置21は熱風発生機27を有しないこともあり、また熱風の供給源は熱風発生機27に限らない。
【0024】
そしてまた、図示の材料予熱装置21のように、上流側の流動層加熱器23は、たとえば環状部23dに設けられて流動層加熱器23への成形材料Mmの投入に用いられる材料投入口23eを有することが好ましい。材料投入口23eには、開閉駆動される熱風遮断部材23fを設けることができる。上流側の流動層加熱器23が材料投入口23eを有するものであれば、その材料投入口23eから流動層加熱器23及び直列連結通路24を経て、下流側の流動層加熱器22に成形材料Mmを投入することができる。それ故に、下流側の流動層加熱器22に材料投入口を設けることは必ずしも必要ではないが、この材料予熱装置21では、下流側の流動層加熱器22にも、開閉駆動される熱風遮断部材22f付きの材料投入口22eを設けている。
【0025】
上述したような構成を有する材料予熱装置21では、通気性開閉部材25bを開くとともに通気性開閉部材25aを閉じた状態で、熱風遮断部材23fを開き、材料投入口23eから下流側の流動層加熱器22に成形材料Mmを投入し、その後、通気性開閉部材25bを閉じて、材料投入口23eから上流側の流動層加熱器23に成形材料Mmを投入する。あるいは、材料投入口22eも使用する場合は、通気性開閉部材25a及び25bを両方とも閉じた状態で、熱風遮断部材22f及び23fを開き、材料投入口22e及び23eのそれぞれから、各流動層加熱器22及び23に成形材料Mmを投入する。
【0026】
流動層加熱器22及び23内の成形材料Mmを加熱するには、通気性開閉部材25a及び25bを閉じた状態で、熱風遮断部材22f及び23f並びに28を閉じて、熱風発生機27から流動層加熱器22及び23に熱風を供給する。このとき、熱風発生機27で発生した熱風は、図2に矢印で示すように、熱風送り流路27aから材料供給通路26に至るところ、熱風遮断部材28で遮断されている射出装置1側ではなく、通過可能な通気性開閉部材25aを通って下流側の流動層加熱器22に流れる。そして、熱風は、下流側の流動層加熱器22で、成形材料Mmを浮遊させて流動層に形成しつつ加熱し、直列連結通路24で通気性開閉部材25bを通過して上流側の流動層加熱器23に流れる。上流側の流動層加熱器23でも、熱風による同様の成形材料Mmの流動層加熱が行われる。上流側の流動層加熱器23を経た熱風は、熱風戻り流路27bを通って熱風発生機27に戻る。
【0027】
このような熱風の流れにより、下流側の流動層加熱器22で成形材料Mmを所定の時間で十分に加熱し、成形材料Mmの予熱が終了すると、熱風発生機27を停止させ、通気性開閉部材25a及び熱風遮断部材28を開く。これにより、流動層加熱器22内の成形材料Mmは自重により落下し、供給口11aからシリンダ11の内部に投入される。その後、通気性開閉部材25aを閉じるとともに通気性開閉部材25bを開くことで、上流側の流動層加熱器23内の成形材料Mmが、直列連結通路24を通って下流側の流動層加熱器22に送られる。さらにその後、通気性開閉部材25bを閉じるとともに熱風遮断部材23fを開いて、材料投入口23eから上流側の流動層加熱器23に成形材料Mmを投入する。
【0028】
しかる後は、熱風遮断部材22f及び23f並びに28を閉じて、上述した熱風の供給による流動層加熱器22及び23での成形材料Mmの加熱を行い、このような成形材料Mmの加熱と射出装置1への供給が繰り返される。
【0029】
図示は省略するが、三個以上の流動層加熱器を直列に並べて配置することもできる。直列に配置された流動層加熱器の互いに隣り合うもの同士の間にはそれぞれ、直列連結通路が設けられる。材料予熱装置は、直列に配置された流動層加熱器の他、次に述べるような並列に配置された流動層加熱器等の、直列に配置されない流動層加熱器を含むものであってもよい。
【0030】
図3に、他の実施形態の材料予熱装置121を示す。この材料予熱装置121は、複数個の流動層加熱器122、123が並列に配置されていることを除いて、図2に示す材料予熱装置21とほぼ同様の構成を有するものである。すなわち、図3の材料予熱装置121では、二個の流動層加熱器122、123が、鉛直方向に対して傾斜ないし直交する方向、典型的には水平方向に並んで配置されている。そして、それらの流動層加熱器122、123と射出装置1との間には、流動層加熱器122及び123のそれぞれから射出装置1に向けて成形材料Mmを送って供給する並列供給通路126が設けられている。
【0031】
並列供給通路126は、より詳細には、その並列供給通路126に接続された流動層加熱器122、123のそれぞれの各先端筒部122a、123aにつながる二本の分岐通路部分126a、126bと、それらの分岐通路部分126a、126bが合流して射出装置1の供給口11aに至る合流通路部分126cとを有するものである。図示は省略するが、三個以上の流動層加熱器を並列配置で設けることも可能であり、この場合、分岐通路部分は、それらの流動層加熱器の個数に応じた三本以上とすることができる。
【0032】
ここでは、流動層加熱器122、123を並列に配置したことに伴い、並列供給通路126に接続された各流動層加熱器122、123が、それぞれの流動層加熱器122、123への成形材料Mmの投入に用いる熱風遮断部材122f、123f付きの材料投入口122e、123eを有する。
【0033】
また、熱風発生機127から各流動層加熱器122、123に熱風を送るため、熱風発生機127と該熱風発生機127の近くに位置する流動層加熱器123側の分岐通路部分126bとを接続する熱風送り流路127aに加えて、当該分岐通路部分126bと熱風発生機127から離れて位置する流動層加熱器122側の分岐通路部分126aとを接続する延長送り流路127cを設けている。分岐通路部分126bの、熱風送り流路127aとの接続箇所よりも成形材料Mmの供給方向の下流側、及び、分岐通路部分126aの、延長送り流路127cとの接続箇所よりも成形材料Mmの供給方向の下流側には、それぞれ熱風遮断部材128b、128aが配置される。図示は省略するが、熱風送り流路127a及び/又は延長送り流路127cには、熱風発生機127から流動層加熱器122ないし123への熱風の流れを遮断することが可能な熱風遮断部材を設けてもよい。
【0034】
なお、図3に例示する材料予熱装置121では、熱風発生機127の近くに位置する流動層加熱器123及び、熱風発生機127から離れて位置する流動層加熱器122を設けているが、複数個の流動層加熱器は、熱風発生機からほぼ等しい位置に設けてもよい。この場合、熱風発生機からの熱風送り流路を、二股以上に分岐させて各流動層加熱器に接続させることができる。図3に示す例でも、延長送り流路127cに代えて、各流動層加熱器122、123に接続されるように分岐した熱風送り流路を設けることも可能である。
【0035】
そしてまた、熱風戻り流路127bは、各流動層加熱器122、123での成形材料Mmの加熱後の熱風をそれぞれ熱風発生機127に戻すため、各流動層加熱器122、123に接続された枝管流路部分127d、127eと、それらの枝管流路部分127d、127eが連結されるとともに熱風発生機127に接続された主管流路部分127fとを含んで構成されている。
【0036】
図3の材料予熱装置121では、通気性開閉部材125a、125bを閉じた状態で、材料投入口122e、123eから流動層加熱器122、123にそれぞれ成形材料Mmが投入される。流動層加熱器122、123内の成形材料Mmの加熱時には、すべての熱風遮断部材122f、123f、128a及び128bを閉じて、熱風発生機127から流動層加熱器122、123に熱風を供給する。この際に、熱風発生機127からの熱風は、図3に矢印で示すように、熱風送り流路127a及び延長送り流路127cを介して各流動層加熱器122、123に送られる。各流動層加熱器122、123での成形材料Mmの加熱に使用された熱風は、熱風戻り流路127bの枝管流路部分127d、127e及び主管流路部分127fを通って、熱風発生機127に戻る。
【0037】
流動層加熱器122、123で加熱された成形材料Mmは、熱風発生機127を停止した後、通気性開閉部材125a、125b及び熱風遮断部材128a、128bを開くことにより、並列供給通路126の分岐通路部分126a、126b及び合流通路部分126cから射出装置1に供給することができる。
【0038】
ここで、この材料予熱装置121では、複数個の流動層加熱器122、123のそれぞれから交互に、加熱後の成形材料Mmを射出装置1に供給することができる。たとえば、一方の流動層加熱器122で成形材料Mmの加熱が終了したとき、その流動層加熱器122内の成形材料Mmを射出装置1に供給する。次いで、通気性開閉部材125aを閉じて、材料投入口122eから一方の流動層加熱器122に成形材料Mmを投入し、上述した熱風による成形材料Mmの加熱を行う。このとき、他方の流動層加熱器123に残っている成形材料Mmも、熱風により再度加熱される。その後、他方の流動層加熱器123での加熱が終了すると、次は一方の流動層加熱器122に成形材料Mmを残したままとし、他方の流動層加熱器123の成形材料Mmを射出装置1に供給する。このようにして、並列に配置した複数個の流動層加熱器122、123のそれぞれから成形材料Mmを交互に射出装置1に供給すれば、各流動層加熱器122、123で成形材料Mmが複数回にわたって熱風で加熱されるので、所定の高温の成形材料Mmを射出装置1に早い周期で供給することが可能になる。
【0039】
あるいは、熱風による成形材料Mmの加熱後、通気性開閉部材125a、125b及び熱風遮断部材128a、128bの全てをほぼ同時に開いて、複数個の流動層加熱器122、123内のそれぞれの成形材料Mmを一度に射出装置1に供給することもできる。このことは、射出装置1にて一回の溶融及び射出で多量の成形材料Mmが消費される場合に、当該射出装置1に一斉に供給する比較的多数個の成形材料Mmを各流動層加熱器122、123で小分けにして十分に加熱できるので有利である。
【0040】
図4に示すさらに他の実施形態の材料予熱装置221は、図3の流動層加熱器122、123のように並列に配置した流動層加熱器222、223のそれぞれの、成形材料Mmの供給方向の上流側に、直列連結通路224a、224bを介して流動層加熱器229、230をそれぞれ直列に連結したものである。その他の構成については、先述した材料予熱装置121と実質的に同様であり、再度の説明は省略する。
【0041】
この材料予熱装置221では、各流動層加熱器222、223、229及び230に、熱風遮断部材222f、223f、229f、230f付きの材料投入口222e、223e、229e、230eを設けている。なお、成形材料Mmの供給方向の上流側の流動層加熱器229及び230が材料投入口229e及び230eを有するものであれば、成形材料Mmの供給方向の下流側の流動層加熱器222、223にも成形材料Mmを投入することができるので、下流側の流動層加熱器222、223の材料投入口222e、223eは省略してもよい。
【0042】
流動層加熱器222、223、229、230内の成形材料Mmは、ここでは図示しない熱風発生機で発生させた熱風で加熱することができる。ここで、直列連結通路224a、224bで直列に連結した流動層加熱器222と流動層加熱器229及び、流動層加熱器223と流動層加熱器230にはそれぞれ、熱風発生機からの熱風が、図4に矢印で示すように、熱風送り流路227aないし延長送り流路227cを経て送られる。上流側の流動層加熱器229及び流動層加熱器230をそれぞれ通過した熱風は、熱風戻り流路227bの各枝管流路部分227d、227eから主管流路部分227fに至り、熱風発生機に戻される。
【0043】
下流側の流動層加熱器222及び223での加熱後の成形材料Mmは、交互に又は一斉に射出装置1に供給することができる。この際には、通気性開閉部材225a、225b及び熱風遮断部材228a、228bを開くことで、成形材料Mmは流動層加熱器222及び223から落下し、並列供給通路226の分岐通路部分226aもしくは226b及び合流通路部分226cを通って、射出装置1に到達する。下流側の流動層加熱器222、223から射出装置1に成形材料Mmが供給された後、通気性開閉部材225a、225bを閉じるとともに、通気性開閉部材225c、225dを開くことにより、上流側の流動層加熱器229、230である程度加熱された成形材料Mmが、下流側の流動層加熱器222、223に入り、その後の熱風供給時に下流側の流動層加熱器222、223で再度加熱される。したがって、この材料予熱装置221では、成形材料Mmの迅速な加熱と短い周期での供給をさらに有効に行うことができる。
【0044】
なお必要に応じて、材料予熱装置と射出装置1との間に、コンプレッサ等からの圧縮気体の導入により成形材料Mmを吸引するとともに圧送する材料圧送機を設けることができる。このことは、たとえば、材料予熱装置を射出装置1のシリンダ11の供給口11aの直上ではなくシリンダ11の周囲に配置した場合等において、成形材料をその自重によって材料予熱装置から射出装置1に供給することができないとき等に有効である。材料圧送機に代えて、ベルトコンベヤ等の材料搬送機を用いてもよい。また、直列に連結された流動層加熱器がある場合、それらを連結する直列連結通路に、上記のような材料圧送機等を設けることもできる。
【0045】
(射出装置)
上述したような材料予熱装置21等を適用することができる射出装置1は、図1に例示するように、主として、材料予熱装置21から供給された成形材料を内部で溶融させるシリンダ11と、シリンダ11の内部で回転駆動されて成形材料を可塑化するスクリュ12と、スクリュ12の回転軸線方向の後方側(図1の右側)に配置された計量モータ31と、計量モータ31のさらに後方側に配置された射出モータ41とを備える。
【0046】
シリンダ11の周囲には、シリンダ11の内部に供給された成形材料を加熱するヒーター13が配置されている。シリンダ11は回転軸線方向の先端側(図1の左側)に内外径が小さくなる先端部14を有し、その先端部14の周囲にもヒーター13が配置される。また、シリンダ11は回転軸線方向の後端側には、貫通孔状の供給口11aが設けられており、そこに先述の材料予熱装置21が取り付けられている。
【0047】
計量モータ31及び射出モータ41はそれぞれ、スライドベース101上に立てた姿勢で互いに間隔をおいて配置された二枚のモータ支持プレート32、42のそれぞれの回転軸線方向の後方側の背面に固定されている。スクリュ12は、計量モータ31により回転駆動されるとともに、射出モータ41により進退駆動される。二枚のモータ支持プレート32、42は、計量モータ31を隔てた上方側及び下方側の複数箇所でロッド51、52により互いに連結されている。
【0048】
計量モータ31は、主に、ロータ33と、ロータ33の周囲に配置されたステータ34と、ロータ33及びステータ34の周囲を取り囲み、内表面にステータ34が設けられたステータフレーム35とを含む。計量モータ31のロータ33はその回転軸線方向の各端部で、ステータフレーム35の内側に軸受33aにより支持されている。また、このロータ33は、計量スプライン軸36の周囲にスプライン結合されており、この計量スプライン軸36は、スクリュ12が取り付けられたスクリュ取付部37に連結されている。なお、計量スプライン軸36の外周面の回転軸線方向の後端部には、ロータ33の内周面に設けられたキー溝に対応する一個以上のキー36aが形成されている。これにより、計量モータ31からスクリュ12に回転駆動力が伝達されて、スクリュ12を回転させることができる。
【0049】
射出モータ41は、主に、ロータ43と、ロータ43の周囲に配置されたステータ44と、ロータ43及びステータ44の周囲を取り囲んで設けられて、内表面にステータ44が設けられたステータフレーム45とを有するものである。ロータ43はその回転軸線方向の各端部で、ステータフレーム45の内側に軸受43aにより支持されている。射出モータ41は、ロータ43が駆動軸に接続されている。この駆動軸は、より詳細には、円筒状のロータ43の内周側に設けた溝部43bでスプライン結合された射出スプライン軸46と、射出スプライン軸46に連結されたねじ軸48と、計量スプライン軸36の内側に軸受49を介して回転自在に取り付けられた回転軸50とを有する。ねじ軸48に螺合するねじナット47は、後述する圧力検出器38を介してモータ支持プレート42に取り付
けられる。この構造により、射出モータ41による回転駆動力が、スクリュ12の回転軸線方向の直線駆動力に変換されて、スクリュ12に伝達される。
【0050】
なお、射出モータ41のステータフレーム45とモータ支持プレート42との間には、圧力検出器38を配置している。この圧力検出器38はモータ支持プレート42及びねじナット47のそれぞれに取り付けられて、射出モータ41からスクリュ12への駆動力の伝達経路で当該圧力検出器38に作用する荷重を検出する。圧力検出器38とステータフレーム45との間には、筒状部分39を介在させて設けている。また、回転軸線方向で上記の駆動軸とは反対側に位置する射出モータ41のステータフレーム45の後端面には、ロータ43と軸部45bで連結されてロータ43の回転を検出するエンコーダ45aが設けられている。
【0051】
このような射出装置1を備える射出成形機による成形過程の一例を述べると、前回の成形過程の後半に既にシリンダ11の内部に成形材料が所定の量で計量されて配置された状態で、図示しない金型装置を閉じて型締状態とする型締工程を行う。次いで、スクリュ12の前進により成形材料を金型装置内に向けて射出し、成形材料を金型装置内のキャビティに充填する充填工程と、スクリュ12をさらに前進させてシリンダ11の先端部14の内部にある成形材料を所定の圧力に保持する保圧工程とを順次に行う。
【0052】
そしてその後、金型装置内に充填された成形材料を冷却させて硬化させ、成形品を得る冷却工程を行う。この際に、材料予熱装置21からシリンダ11内に別途供給した成形材料を、ヒーター13による加熱下でスクリュ12の回転によりシリンダ11の先端部14に向けて送りながら溶融させ、所定の量の成形材料を先端部14に配置する計量工程が行われる。
【0053】
ここにおいて、この実施形態では、シリンダ11内に供給される成形材料が、材料予熱装置21により既に適切な温度に加熱されている。それ故に、スクリュ12を高速で回転させ、成形材料を短時間のうちにシリンダ11の先端部14に送ったとしても、成形材料を十分に可塑化することができる。これにより、計量に要する時間が短くなり、成形サイクルの短縮化を実現することができる。
【0054】
なおその後は、金型装置を開いて型開状態とし、エジェクタ装置等により金型装置から成形品を取り出す取出工程を行う。
【符号の説明】
【0055】
1 射出装置
11 シリンダ
11a 供給口
12 スクリュ
13 ヒーター
14 先端部
21、121、221 材料予熱装置
22、23、122、123、222、223、229、230 流動層加熱器
22a、23a、122a、123a、222a、223a、229a、230a 先端筒部
22b、23b、122b、123b、222b、223b、229b、230b テーパ部
22c、23c、122c、123c、222c、223c、229c、230c 筒状本体部
22d、23d、122d、123d、222d、223d、229d、230d 環状部
22e、23e、122e、123e、222e、223e、229e、230e 材料投入口
22f、23f、28、122f、123f、128a、128b、222f、223f、 229f、230f、228a、228b 熱風遮断部材
24、224a、224b 直列連結通路
25a、25b、125a、125b、225a、225b、225c、225d 通気性開閉部材
26 材料供給通路
126、226 並列供給通路
126a、126b、226a、226b 分岐通路部分
126c、226c 合流通路部分
27、127 熱風発生機
27a、127a、227a 熱風送り流路
27b、127b、227b 熱風戻り流路
127c、227c 延長送り流路
127d、127e、227d、227e 枝管流路部分
127f、227f 主管流路部分
31 計量モータ
32 モータ支持プレート
33 ロータ
33a 軸受
34 ステータ
35 ステータフレーム
36 計量スプライン軸
36a キー
37 スクリュ取付部
38 圧力検出器
39 筒状部分
41 射出モータ
42 モータ支持プレート
43 ロータ
43a 軸受
43b 溝部
44 ステータ
45 ステータフレーム
45a エンコーダ
45b 軸部
46 射出スプライン軸
47 ねじナット
48 ねじ軸
49 軸受
50 回転軸
51 ロッド
52 ロッド
101 スライドベース
Mm 成形材料
図1
図2
図3
図4