(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】線状体敷設方法及び線状体敷設構造
(51)【国際特許分類】
E21F 17/02 20060101AFI20241002BHJP
E21D 11/10 20060101ALI20241002BHJP
E21D 15/00 20060101ALI20241002BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
E21F17/02
E21D11/10 D
E21D15/00
G01L5/00 Z
(21)【出願番号】P 2021103378
(22)【出願日】2021-06-22
【審査請求日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2020110388
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 紗季
(72)【発明者】
【氏名】石井 雅子
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-372409(JP,A)
【文献】特開2005-215154(JP,A)
【文献】特開2003-049440(JP,A)
【文献】特開2016-132961(JP,A)
【文献】特開2020-041856(JP,A)
【文献】特開2003-014509(JP,A)
【文献】特開平10-062212(JP,A)
【文献】特開平04-216425(JP,A)
【文献】特開2002-048675(JP,A)
【文献】特開2001-059797(JP,A)
【文献】特開2001-133229(JP,A)
【文献】特開2000-097737(JP,A)
【文献】特開2008-175562(JP,A)
【文献】特開2019-112785(JP,A)
【文献】特開2007-113991(JP,A)
【文献】特開2003-247814(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101713691(CN,A)
【文献】特開平09-042912(JP,A)
【文献】特開2008-231738(JP,A)
【文献】特開2008-231740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21F 17/02
E21D 11/00-23/26
G01L 1/00-25/00
G01B 11/00-11/30
G01C 1/00- 1/14
G01C 5/00-15/14
G01D 18/00-21/02
G02B 6/00- 6/54
H02G 1/00- 1/10
H02G 9/00- 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルを構築する際に上下半掘削面に沿って線状体を敷設する線状体敷設方法であって、
ガイド部が設けられた鋼製支保工を前記上下半掘削面に沿って建て込む工程と、
前記ガイド部に前記線状体を掛ける工程と、を備え
、
前記ガイド部は、前記トンネルの掘進方向に沿って前記鋼製支保工から延出しており、前記鋼製支保工の周方向に沿って複数設けられる、
線状体敷設方法。
【請求項2】
トンネルを構築する際に上下半掘削面に沿って線状体を敷設する線状体敷設方法であって、
鋼製支保工を前記上下半掘削面に沿って建て込む工程と、
ガイド部が設けられた連結部材により、前記トンネルの掘進方向に所定の間隔をあけて建て込まれた前記鋼製支保工を連結する工程と、
前記ガイド部に前記線状体を掛ける工程と、を備える、
線状体敷設方法。
【請求項3】
トンネルを構築する際にインバート掘削面に沿って線状体を敷設する線状体敷設方法であって、
ガイド部が設けられた鋼製支保工を前記インバート掘削面に沿って建て込む工程と、
前記ガイド部に前記線状体を掛ける工程と、を備え
、
前記ガイド部は、前記トンネルの掘進方向に沿って前記鋼製支保工から延出しており、前記鋼製支保工の周方向に沿って複数設けられる、
線状体敷設方法。
【請求項4】
前記トンネルの掘進方向に所定の間隔をあけて建て込まれた前記鋼製支保工間にコンクリートを吹き付ける工程をさらに備え、
前記線状体は、吹き付けられた前記コンクリートの厚さ内に位置するように、前記ガイド部により保持される、
請求項1から3の何れか1つに記載の線状体敷設方法。
【請求項5】
トンネルを構築する際にインバート掘削面に沿って線状体を敷設する線状体敷設方法であって、
ガイド部が設けられた支持部材を前記インバート掘削面に立設する工程と、
前記ガイド部に前記線状体を掛ける工程と、
前記インバート掘削面にコンクリートを吹き付ける工程と、を備え
、
前記支持部材に対する前記ガイド部の取付位置は調整自在であり、
前記線状体は、吹き付けられた前記コンクリートの厚さ内に位置するように、前記ガイド部により保持される、
線状体敷設方法。
【請求項6】
前記ガイド部は、前記線状体が通されるガイド孔を有する、
請求項1から5の何れか1つに記載の線状体敷設方法。
【請求項7】
トンネルを構築する際に上下半掘削面に沿って線状体を敷設するための線状体敷設構造であって、
前記上下半掘削面に沿って建て込まれる鋼製支保工と、
前記鋼製支保工に設けられるガイド部と、
前記ガイド部に掛けられる前記線状体と、を備え
、
前記ガイド部は、前記トンネルの掘進方向に沿って前記鋼製支保工から延出しており、前記鋼製支保工の周方向に沿って複数設けられる、
線状体敷設構造。
【請求項8】
トンネルを構築する際に上下半掘削面に沿って線状体を敷設するための線状体敷設構造であって、
前記上下半掘削面に沿って建て込まれる鋼製支保工と、
前記トンネルの掘進方向に所定の間隔をあけて建て込まれた前記鋼製支保工を連結する連結部材と、
前記連結部材に設けられるガイド部と、
前記ガイド部に掛けられる前記線状体と、を備える、
線状体敷設構造。
【請求項9】
トンネルを構築する際にインバート掘削面に沿って線状体を敷設するための線状体敷設構造であって、
前記インバート掘削面に沿って建て込まれる鋼製支保工と、
前記鋼製支保工に設けられるガイド部と、
前記ガイド部に掛けられる前記線状体と、を備え
、
前記ガイド部は、前記トンネルの掘進方向に沿って前記鋼製支保工から延出しており、前記鋼製支保工の周方向に沿って複数設けられる、
線状体敷設構造。
【請求項10】
トンネルを構築する際にインバート掘削面に沿って線状体を敷設するための線状体敷設構造であって、
前記インバート掘削面に立設される支持部材と、
前記支持部材に設けられるガイド部と、
前記ガイド部に掛けられる前記線状体と、を備え
、
前記支持部材に対する前記ガイド部の取付位置は調整自在であり、
前記線状体は、前記インバート掘削面に吹き付けられたコンクリートの厚さ内に位置するように、前記ガイド部により保持される、
線状体敷設構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内への線状体敷設方法及び線状体敷設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トンネルを構築する際に掘削面に吹き付けられる吹き付けコンクリート内の応力を測定するための線状体として光ファイバケーブルを掘削面に沿って敷設する方法が開示されている。特許文献1に開示された方法では、光ファイバケーブルは、掘削面に沿って設けられた金網にフックを介して括り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の敷設方法では、コンクリートを支保部材として金網に吹き付ける際に、吹付圧によってフックが外れたり光ファイバケーブルが外れたりしないように、これらを金網に対して確実に括り付けておく必要がある。光ファイバケーブルを金網に強固に括り付けるには、手間がかかり作業時間が長くなってしまうが、光ファイバケーブルを敷設する作業は、切羽近傍での作業で、危険が伴うため、作業時間をできるだけ短くすることが望まれる。
【0005】
本発明は、線状体を効率よく掘削面に沿って敷設することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トンネルを構築する際に上下半掘削面に沿って線状体を敷設する線状体敷設方法であって、ガイド部が設けられた鋼製支保工を上下半掘削面に沿って建て込む工程と、ガイド部に線状体を掛ける工程と、を備え、ガイド部は、トンネルの掘進方向に沿って鋼製支保工から延出しており、鋼製支保工の周方向に沿って複数設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、線状体を効率よく掘削面に沿って敷設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る線状体敷設構造の概要を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る線状体敷設構造を掘進方向を向いて見た正面図である。
【
図3】
図2のA-A線に沿う断面を示す断面図である。
【
図4】
図2のB-B線に沿う断面を拡大して示す拡大断面図である。
【
図5】
図4のC-C線に沿う断面を示す断面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る線状体敷設構造においてトンネル内へ敷設される線状体の敷設パターンを示す図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る線状体敷設構造の掘進方向に沿う断面を示す断面図である。
【
図8】
図7のD-D線に沿う断面を示す断面図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係る線状体敷設構造の第1変形例を示す図であり、
図4に相当する断面を示す断面図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係る線状体敷設構造の第2変形例を示す図であり、
図4に相当する断面を示す断面図である。
【
図11】本発明の第1実施形態に係る線状体敷設構造の第3変形例を示す図であり、
図4に相当する断面を示す断面図である。
【
図12】本発明の第1実施形態に係る線状体敷設方法の別の方法を説明するための図である。
【
図13】本発明の第3実施形態に係る線状体敷設構造を掘進方向を向いて見た正面図である。
【
図14】本発明の第3実施形態に係る線状体敷設構造においてトンネル内へ敷設される線状体の敷設パターンを示す図である。
【
図15】本発明の第3実施形態に係る線状体敷設構造の変形例を示す図であり、
図13に相当する図である。
【
図17】トンネル内へ敷設される線状体の別の敷設パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る線状体敷設方法及び線状体敷設構造について説明する。
【0010】
<第1実施形態>
図1~5を参照して、第1実施形態に係る線状体敷設方法及び線状体敷設構造100について説明する。
図1は、線状体敷設構造100を斜め上方から見た概要図であり、
図2は、線状体敷設構造100を
図1に示す掘進方向に沿って切羽面5に向かって見たときの正面図であり、
図3は、
図2のA-A線に沿う断面を示した断面図であり、
図4は、
図2のB-B線に沿う断面を拡大して示した拡大断面図であり、
図5は、
図4のC-C線に沿う断面を示した断面図である。
【0011】
NATM工法等により掘削される山岳トンネルを構築する際に、掘削坑の内壁面に吹き付けられる吹き付けコンクリートは、トンネルを掘削中の地山の変化の影響を受けやすい。このため、吹き付けコンクリート内に光ファイバケーブル等の線状体を敷設しておき、この線状体の歪みを計測することにより地山の状態の変化を逐次把握することが可能である。例えば、線状体が光ファイバケーブルである場合、入射されたパルス光を僅かに後方に散乱させるという光ファイバケーブルの性質を利用し、散乱光の周波数等を計測することで、計測された値から歪みや応力、温度を演算することができる。地山の状態を逐次把握することは、支保工部材の構造を安全性、経済性の観点から最適化するためにも重要である。
【0012】
線状体敷設構造100は、このように地山の状態の変化を逐次把握するために敷設される光ファイバケーブル等の線状体を掘削坑内の適切な位置に敷設するために用いられる。
【0013】
線状体敷設構造100は、
図1~3に示すように、アーチ状に掘削された上下半掘削面1(掘削面)に沿って建て込まれる鋼製支保工10と、鋼製支保工10に設けられる複数のガイド部20と、ガイド部20に掛けられる線状体としての光ファイバケーブル30と、を備える。なお、
図2及び
図3では、光ファイバケーブル30の図示を省略している。また、
図3では、鋼製支保工10よりも先に掘削坑内に建て込まれた鋼製支保工の図示を省略している。
【0014】
鋼製支保工10は、
図4に示すように、一対のフランジ部11aと、一対のフランジ部11aに挟まれたウェブ部11bと、を有するH形鋼材により形成された部材であり、
図2に示すように、上下半掘削面1の周方向に沿って湾曲したアーチ状に形成される。なお、「周方向」とは、略円弧状に掘削された上下半掘削面1に沿う方向を意味するが、上下半掘削面1は、正確に円弧状に形成されるものではないため、鋼製支保工10は、実際には上下半掘削面1に概ね沿った形状となる。
【0015】
鋼製支保工10は、
図1及び
図2に示すように、一対の支保工材11を掘削坑の天端部において結合することにより掘削坑内に建て込まれる。掘削坑内に鋼製支保工10を建て込む作業は、予め設定された所定距離、例えば1m、掘削坑が掘り進められる毎に行われる。つまり、鋼製支保工10は、掘進方向に所定の間隔をあけて複数建て込まれる。
【0016】
一対の支保工材11は、
図2に示すように、掘進方向に沿って切羽面5に向かって見たときにほぼ左右対称に形成されており、掘削坑の天端部から底面に向かって上下半掘削面1に沿った円弧状にそれぞれ一体的に形成される。また、各支保工材11の天端部側の端部には、結合フランジ部12が設けられており、一対の支保工材11は、この結合フランジ部12を介して互いに結合される。なお、各支保工材11は、一体的に形成されている必要はなく、例えば、弧状に形成された複数のH形鋼材を上下半掘削面1の周方向において結合することによって構成されていてもよい。
【0017】
ガイド部20は、
図4及び
図5に示すように、L字状に折り曲げられた鋼板であり、支保工材11に図示しないネジ等の締結部材を介して固定される固定部22と、固定部22に対して直交する方向に延びる延出部21と、を有する。延出部21には、光ファイバケーブル30が通されるガイド孔としての貫通孔23が複数形成される。なお、ガイド部20は、鋼製に限定されず、プラスチック製であってもよい。
【0018】
上記形状のガイド部20は、鋼製支保工10の周方向に沿って略等間隔で複数設けられており、鋼製支保工10が上下半掘削面1に沿って建て込まれた状態において、延出部21が掘進方向に沿って切羽面5とは反対側に向かって延びるように支保工材11に取り付けられている。つまり、ガイド部20の固定部22は、支保工材11のウェブ部11bの切羽面5とは反対側の面に固定される。なお、支保工材11へのガイド部20の固定は、ネジ等の締結部材に代えて、溶接や接着剤によるものであってもよいし、支保工材11またはガイド部20に設けられた磁石の吸着力によるものであってもよい。
【0019】
光ファイバケーブル30は、光ファイバと、光ファイバを覆うように形成された保護部材と、からなるケーブルである。光ファイバケーブル30は、ガイド部20に形成された貫通孔23に通され各ガイド部20に掛けられることによって、
図1に示すように、ガイド部20間に架け渡され、鋼製支保工10に沿って敷設された状態、すなわち、上下半掘削面1の周方向に沿って敷設された状態となる。
【0020】
敷設された光ファイバケーブル30の両端部は、光ファイバケーブル30を用いて後述の二次吹付コンクリート3内の応力や歪み、温度の分布を測定する図示しない測定装置に接続される。なお、光ファイバケーブル30は、歪み計測用のケーブルと温度計測用のケーブルとのように複数本設けられてもよく、ガイド部20の延出部21には、敷設される光ファイバケーブル30の本数に十分対応可能な数の貫通孔23が形成される。なお、ガイド部20間に架け渡される線状体は、光ファイバケーブル30に限定されず、例えば、歪みや温度を計測可能な複数のセンサ部が線状に連なって設けられたものであってもよい。
【0021】
次に、上記構成の線状体敷設構造100により光ファイバケーブル30を敷設する方法について、
図1~4を参照して説明する。
【0022】
発破により掘削抗が掘り進められ、掘削装置等により仕上掘削が行われた上下半掘削面1には、
図4に示すように、支保部材として一次吹付コンクリート2が吹き付けられる。そして、一次吹付コンクリート2が吹き付けられることにより比較的滑らかとなった第1表面2aに沿って、ガイド部20が設けられた部材として上記構成の鋼製支保工10が建て込まれる(建込工程)。
【0023】
具体的には、鋼製支保工10は、一対の支保工材11の結合フランジ部12を掘削坑の天端部において図示しないボルトを介して結合することにより掘削坑内に建て込まれる。そして、建て込まれた鋼製支保工10は、図示しない連結部材によって、先に建て込まれていた図示しない鋼製支保工、すなわち、掘進方向において鋼製支保工10よりも切羽面5から離れた位置に建て込まれた鋼製支保工と掘進方向において連結される。
【0024】
次に、建て込まれた鋼製支保工10の各ガイド部20に光ファイバケーブル30が掛けられる(掛け工程)。具体的には、まず、
図2において左側の支保工材11の最も下方に設けられたガイド部20の貫通孔23に光ファイバケーブル30を通し、続いて、その隣に設けられるガイド部20の貫通孔23に光ファイバケーブル30を通す。このように隣に設けられるガイド部20の貫通孔23に光ファイバケーブル30を通すことを順次繰り返し行うことで、光ファイバケーブル30は、鋼製支保工10に設けられたすべてのガイド部20の貫通孔23に通された状態、すなわち、各ガイド部20に光ファイバケーブル30が掛けられ、ガイド部20間に光ファイバケーブル30が架け渡された状態となる。これにより光ファイバケーブル30は、上下半掘削面1の周方向に沿って敷設された状態となる。
【0025】
続いて、第1表面2aに支保部材として二次吹付コンクリート3が、ガイド部20により保持された光ファイバケーブル30を埋設するように吹き付けられる(吹付工程)。具体的には、図示しないコンクリート吹付機により、鋼製支保工10と先に建て込まれていた鋼製支保工との間に形成される空間を埋めるように二次吹付コンクリート3が吹き付けられる。
【0026】
二次吹付コンクリート3の吹付厚さT、すなわち、第1表面2aから二次吹付コンクリート3が吹き付けられることにより形成される第2表面3aまでの厚さは、例えば、支保工材11のフランジ部11aを覆う程度の厚さに設定される。なお、吹付厚さTは、支保工材11のフランジ部11aが部分的に露出される程度であってもよい。
【0027】
なお、光ファイバケーブル30が通される貫通孔23が形成されたガイド部20の延出部21は、上述のように、掘進方向に沿って鋼製支保工10から先に建て込まれていた鋼製支保工に向かって延びている。つまり、ガイド部20間に架け渡された光ファイバケーブル30は、掘進方向において、鋼製支保工10と先に建て込まれていた鋼製支保工との間に敷設される。このため、光ファイバケーブル30は、鋼製支保工10と先に建て込まれていた鋼製支保工との間に吹き付けられた二次吹付コンクリート3内に、上下半掘削面1の周方向に沿った状態で埋設されることになる。
【0028】
この後、必要に応じて二次吹付コンクリート3が吹き付けられた範囲内において図示しないロックボルトが地山に対して放射方向に打ち込まれることで上下半掘削面1に支保工を設置する工程が終了する。
【0029】
このように上下半掘削面1への支保工の設置が完了すると、続いて、インバートの施工が行われる。
【0030】
インバートの施工では、まず、インバートストラット14を設置するために、上述の鋼製支保工10の下方の地山を掘削し、インバート掘削面6を形成する。
【0031】
インバートストラット14は、鋼製支保工10と同様に、H形鋼材により形成された部材であり、
図2に示すように、インバート掘削面6の周方向に沿って湾曲したアーチ状に形成される。
【0032】
インバートストラット14は、一対のインバートストラット材15の結合フランジ部16をインバート掘削面6の下端部において図示しないボルトを介して結合することにより、鋼製支保工10の下端部を結合するようにして掘削坑内に建て込まれる。これにより、掘削によって露出した上下半掘削面1及びインバート掘削面6は環状に閉合される。
【0033】
続いて、インバート掘削面6には、建て込まれたインバートストラット14が埋もれる程度に吹付コンクリート7が吹き付けられる。吹付コンクリート7の表面には、
図2に示すように、インバートコンクリート8が最終的に打設されることになるが、掘削作業を進めるために作業車両が通行することとなる吹付コンクリート7の表面は、
図3に示すように、一旦、埋め戻し土9によって埋め戻される。
【0034】
そして、掘削抗が掘り進められると、埋め戻し土9が掘削除去され、吹付コンクリート7の表面には、図示しない型枠を用いてインバートコンクリート8が打設される。インバートコンクリート8及び二次吹付コンクリート3が安定した段階で、第2表面3aには、
図4に示すように、図示しない型枠を用いて覆工コンクリート4が打設される。
【0035】
なお、上下半掘削面1については、いわゆる全断面工法により上半と下半とを同時に掘削してもよいし、ベンチカット工法により下半に先行して上半を掘削するようにしてもよい。なお、上半と下半とに分けて上下半掘削面1を形成する場合には、鋼製支保工10を上半側と下半側とに分割して構成してもよい。また、地山が安定していれば、インバートの支保部材としてインバートストラット14を設けることなく、吹付コンクリート7及びインバートコンクリート8を支保部材としてもよい。
【0036】
ここで、吹付厚さT内における光ファイバケーブル30の位置が、部分的に第1表面2aに寄り過ぎていたり、または、第2表面3aに寄り過ぎていたりすると、上下半掘削面1から光ファイバケーブル30までの距離がばらついてしまう。このように上下半掘削面1と光ファイバケーブル30との間隔が周方向において異なってしまうと、掘削中の地山の変化に応じて変化する二次吹付コンクリート3内の周方向における応力分布を精度よく測定することができず、結果として、トンネルを掘削中の地山の状態の変化を正確に把握することが困難となる。
【0037】
そこで、本実施形態では、光ファイバケーブル30を二次吹付コンクリート3の吹付厚さT内の所定の位置に敷設させるために、光ファイバケーブル30が挿通する貫通孔23の位置が、二次吹付コンクリート3の吹付厚さT内の所定位置に位置するように、支保工材11に対して各ガイド部20を固定している。
【0038】
具体的には、
図4に示すように、ガイド部20は、支保工材11の各フランジ部11aの端面から貫通孔23の中心までの距離Lが同じ大きさとなるように、つまり、貫通孔23の中心が一対のフランジ部11a間の略中央に位置するように、支保工材11に対して取り付けられている。
【0039】
ガイド部20をこのように支保工材11に取り付けておくことにより、貫通孔23に通された光ファイバケーブル30を二次吹付コンクリート3の吹付厚さT内の略中央の所定位置に敷設することが可能となる。なお、所定位置は、吹付厚さT内の略中央に限定されず、例えば、第1表面2a寄りであってもよく、この場合、貫通孔23は、延出部21の第1表面2a寄りの部分に形成される。
【0040】
このように、光ファイバケーブル30を二次吹付コンクリート3の吹付厚さT内の所定位置に敷設することによって、上下半掘削面1と光ファイバケーブル30との間隔が周方向においてほぼ一定となり、トンネルを掘削中の地山の変化に応じて変化する二次吹付コンクリート3内の周方向における応力分布を精度よく測定することができる。この結果、掘削中の地山の状態の変化を逐次正確に把握することが可能となり、地山の状態の変化に応じて、二次吹付コンクリート3の吹付厚さTを厚くしたり、ロックボルトの本数を増やしたりすることによって支保工部材の構造を最適化することができる。
【0041】
また、各鋼製支保工10に敷設された光ファイバケーブル30は、
図6に示すように、トンネルの軸方向において連続して敷設されていてもよい。
図6は、上下半掘削面1に沿って敷設された光ファイバケーブル30の敷設パターンを、天端を中心として平面上に展開して示した展開図である。
【0042】
このように上下半掘削面1の周方向に沿うとともにトンネルの軸方向に所定の間隔で光ファイバケーブル30を敷設することにより、トンネルの軸方向における二次吹付コンクリート3の応力の変化状況についても把握することが可能となる。これにより、覆工コンクリート4の打設を開始するタイミングを二次吹付コンクリート3の応力変化の収束状況に応じて設定することや、覆工コンクリート4に用いられるコンクリートの強度を二次吹付コンクリート3の応力状態、すなわち、地山の状態に基づいて設定することができる。
【0043】
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0044】
上述の線状体敷設方法では、貫通孔23を有するガイド部20が周方向に沿って複数設けられた鋼製支保工10を上下半掘削面1に沿って建て込む工程と、貫通孔23に光ファイバケーブル30を通してガイド部20に光ファイバケーブル30を掛け、ガイド部20間に光ファイバケーブル30を架け渡す工程と、によって、光ファイバケーブル30は、トンネルを構築する際に上下半掘削面1の周方向に沿って敷設される。
【0045】
このように上述の線状体敷設方法では、光ファイバケーブル30を鋼製支保工10に設けられたガイド部20に掛けるだけで、上下半掘削面1に沿って光ファイバケーブル30を効率よく敷設することが可能であり、切羽面5近傍での光ファイバケーブル30の敷設作業に要する時間を短くすることができる。
【0046】
また、光ファイバケーブル30を貫通孔23に通すことによりガイド部20に掛けた状態としておけば、光ファイバケーブル30に二次吹付コンクリート3が吹き付けられる際に、吹付圧によって光ファイバケーブル30がガイド部20から外れてしまうことを防止することができる。
【0047】
<第2実施形態>
次に、
図7及び
図8を参照して、本発明の第2実施形態に係る線状体敷設方法及び線状体敷設構造200について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を主に説明し、第1実施形態で説明した構成と同一の構成又は相当する構成については、その説明を省略する。
【0048】
第2実施形態に係る線状体敷設構造200では、光ファイバケーブル30が掛けられるガイド部120が、トンネルの掘進方向に所定の間隔をあけて建て込まれた鋼製支保工110A,110Bを連結する連結部材としてのタイロッド115に設けられている点で上記第1実施形態に係る線状体敷設構造100と相違する。
【0049】
線状体敷設構造200は、
図7及び
図8に示すように、掘進方向に所定の間隔をあけて建て込まれた鋼製支保工110A,110Bと、2つの鋼製支保工110A,110Bを掘進方向において連結する連結部材としての複数のタイロッド115と、各タイロッド115に設けられるガイド部120と、ガイド部120に掛けられる線状体としての光ファイバケーブル30と、を備える。
図7は、掘進方向に沿う線状体敷設構造200の断面であって、
図8のE-E線に沿う断面を示した断面図であり、
図8は、
図7のD-D線に沿って切羽面5に向かって見た線状体敷設構造200の断面を示した断面図である。なお、
図7では、光ファイバケーブル30の図示を省略している。また、
図7では、鋼製支保工110A,110Bよりも先に掘削坑内に建て込まれた鋼製支保工、連結部材及びガイド部の図示を省略している。
【0050】
各鋼製支保工110A,110Bの構成は、上記第1実施形態の鋼製支保工10と同様であるため、その説明を省略する。
【0051】
タイロッド115は、掘進方向に所定の間隔をあけて建て込まれた2つの鋼製支保工110A,110Bを掘進方向において連結する棒状部材であり、
図8に示すように、鋼製支保工110A,110Bの周方向に沿って略等間隔で複数設けられる。タイロッド115は、一端が一方の鋼製支保工110Aのウェブ部11bに図示しない締結部材を介して結合され、他端が他方の鋼製支保工110Bのウェブ部11bに図示しない締結部材を介して結合されることにより、掘進方向に所定の間隔で配置された2つの鋼製支保工110A,110Bを連結する。
【0052】
なお、連結部材は、タイロッド115に限定されず、例えば、一端が一方の鋼製支保工110Aのフランジ部11aに設けられた鞘管に挿入され、他端が他方の鋼製支保工110Bのフランジ部11aに設けられた鞘管に挿入されるように両端部が折り曲げられた棒状部材であってもよいし、掘進方向において対向して配置される各鋼製支保工110A,110Bから掘進方向に沿って延出して形成された延出部材であって、重なり合う部分で結合されるように形成された延出部材であってもよい。
【0053】
ガイド部120は、光ファイバケーブル30が通されるガイド孔としての貫通孔121が複数形成された板状部材であり、各タイロッド115に溶接固定される。このため、ガイド部20は、タイロッド115と同様に、鋼製支保工110A,110Bの周方向に沿って略等間隔で複数設けられることになる。
【0054】
このようにタイロッド115に設けられたガイド部120の貫通孔121に、光ファイバケーブル30が通されて各ガイド部120に掛けられることによって、
図8に示すように、光ファイバケーブル30は、ガイド部120間に架け渡され、鋼製支保工110A,110Bに沿って敷設された状態、すなわち、上下半掘削面1の周方向に沿って敷設された状態となる。
【0055】
敷設された光ファイバケーブル30の両端部は、上記第1実施形態と同様に、光ファイバケーブル30を用いて二次吹付コンクリート内の応力や歪み、温度の分布を測定する図示しない測定装置に接続される。
【0056】
次に、上記構成の線状体敷設構造200により光ファイバケーブル30を敷設する方法について、
図7及び
図8を参照して説明する。
【0057】
発破により掘削抗が掘り進められ、掘削装置等により仕上掘削が行われた上下半掘削面1には、上記第1実施形態と同様に、支保部材として一次吹付コンクリートが吹き付けられ、一次吹付コンクリートの表面に沿って、鋼製支保工110Aが建て込まれる(建込工程)。
【0058】
そして、建て込まれ鋼製支保工110Aは、複数のタイロッド115によって、掘進方向において鋼製支保工110Aよりも切羽面5から離れた位置に先に建て込まれていた鋼製支保工110Bと掘進方向において連結される(連結工程)。つまり、この工程では、ガイド部120が設けられた部材として、複数のタイロッド115が、上下半掘削面1の内周面に沿って据え付けられる。
【0059】
次に、各タイロッド115に設けられたガイド部120の貫通孔121に光ファイバケーブル30を順次通すことにより、各ガイド部120に光ファイバケーブル30が掛けられ、ガイド部120間に光ファイバケーブル30が架け渡された状態となる(掛け工程)。これにより光ファイバケーブル30は、
図8に示すように、上下半掘削面1の周方向に沿って敷設された状態となる。
【0060】
続いて、2つの鋼製支保工110A,110B間に形成される空間、すなわち、タイロッド115及びガイド部120が配置される空間を埋めるように支保部材として二次吹付コンクリートが図示しないコンクリート吹付機により吹き付けられる(吹付工程)。
【0061】
これにより、タイロッド115に設けられたガイド部120により保持された光ファイバケーブル30は、上下半掘削面1に沿って敷設された状態において、二次吹付コンクリート内に埋設される。
【0062】
この後、必要に応じて二次吹付コンクリートが吹き付けられた範囲内において図示しないロックボルトが地山に対して放射方向に打ち込まれることで支保工を設置する工程が終了する。そして、上記第1実施形態と同様に、掘削抗がさらに掘り進められ、図示しないインバートコンクリート及び二次吹付コンクリートが安定した段階で、二次吹付コンクリートの表面には、図示しない型枠を用いて覆工コンクリートが打設される。
【0063】
なお、本実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、光ファイバケーブル30を二次吹付コンクリートの吹付厚さ内の所定位置に敷設するために、ガイド部120は、貫通孔121が一対のフランジ部11a間に位置するように、タイロッド115に対して取り付けられている。
【0064】
このため、本実施形態においても、上下半掘削面1と光ファイバケーブル30との間隔が周方向においてほぼ一定となり、トンネルを掘削中の地山の変化に応じて変化する二次吹付コンクリート内の周方向における応力分布を精度よく測定することができる。この結果、掘削中の地山の状態の変化を逐次正確に把握することが可能となり、地山の状態の変化に応じて、二次吹付コンクリートの吹付厚さを厚くしたり、ロックボルトの本数を増やしたりすることによって支保工部材の構造を最適化することができる。
【0065】
以上の第2実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0066】
上述の線状体敷設方法では、鋼製支保工110Aを上下半掘削面1に沿って建て込む工程と、貫通孔121を有するガイド部120が設けられた複数のタイロッド115によって、トンネルの掘進方向に所定の間隔をあけて建て込まれた2つの鋼製支保工110A,110Bを連結する工程と、貫通孔121に光ファイバケーブル30を通してガイド部120に光ファイバケーブル30を掛け、ガイド部120間に光ファイバケーブル30を架け渡す工程と、によって、光ファイバケーブル30は、トンネルを構築する際に上下半掘削面1の周方向に沿って敷設される。
【0067】
このように上述の線状体敷設方法では、鋼製支保工110A,110Bを連結するタイロッド115に設けられたガイド部120に光ファイバケーブル30を掛けるだけで、上下半掘削面1に沿って光ファイバケーブル30を効率よく敷設することが可能であり、切羽面5近傍での光ファイバケーブル30の敷設作業に要する時間を短くすることができる。
【0068】
また、光ファイバケーブル30を貫通孔121に通すことによりガイド部120に掛けた状態としておけば、光ファイバケーブル30に二次吹付コンクリート3が吹き付けられる際に、吹付圧によって光ファイバケーブル30がガイド部120から外れてしまうことを防止することができる。
【0069】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の各実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0070】
上記第1実施形態では、光ファイバケーブル30が掛けられるガイド部20は、貫通孔23により光ファイバケーブル30を保持している。これに代えて、
図9に示す第1変形例のように、ガイド部20は、上下半掘削面1側から切り欠いて形成された切欠部24により光ファイバケーブル30を保持してもよい。このように光ファイバケーブル30が掛けられる部分を孔ではなく切り欠きとすることで、光ファイバケーブル30を孔に順次通す作業と比較し、光ファイバケーブル30を各ガイド部20の切欠部24に引っ掛けることで容易にガイド部20間に架け渡すことができる。なお、
図9は、
図4に相当する断面を示している。
【0071】
また、上記第1実施形態では、光ファイバケーブル30は、二次吹付コンクリート3内に埋設されている。これに代えて、または、これに加えて、
図10に示す第2変形例や
図11に示す第3変形例のように、光ファイバケーブル30は、覆工コンクリート4内に埋設されてもよい。なお、
図10及び
図11は、それぞれ
図4に相当する断面を示している。
【0072】
図10に示す第2変形例では、ガイド部20に、延出部21から径方向内側の覆工コンクリート4が打設される領域に向かって延びる第2延出部25が設けられ、この第2延出部25には、光ファイバケーブル30が通されるガイド孔としての貫通孔26が形成される。
【0073】
つまり、第2変形例では、延出部21に形成された貫通孔23に通され各ガイド部20に掛けられた光ファイバケーブル30は、二次吹付コンクリート3内に埋設される領域において上下半掘削面1の周方向に沿って敷設される一方、第2延出部25に形成された貫通孔26に通され各ガイド部20に掛けられた光ファイバケーブル30は、覆工コンクリート4内に埋設される領域において上下半掘削面1の周方向に沿って敷設される。
【0074】
したがって、二次吹付コンクリート3内の周方向における応力分布を測定することによって、上記第1実施形態と同様の効果が得られるとともに、覆工コンクリート4内の周方向における応力分布を測定することによって、周方向における覆工コンクリート4の状態の変化を把握することができる。
【0075】
また、
図11に示す第3変形例では、ガイド部20に、延出部21から径方向内側の覆工コンクリート4が打設される領域に向かって延び、固定部22と平行となるように折り曲げられた第3延出部27が設けられ、この第3延出部27には、光ファイバケーブル30が通されるガイド孔としての貫通孔28が形成される。
【0076】
つまり、第3変形例では、延出部21に形成された貫通孔23に通され各ガイド部20に掛けられた光ファイバケーブル30は、二次吹付コンクリート3内に埋設される領域において上下半掘削面1の周方向に沿って敷設される一方、第3延出部27に形成された貫通孔28に通されガイド部20に掛けられた光ファイバケーブル30は、掘進方向に所定の間隔をあけて建て込まれた別の鋼製支保工のガイド部20の貫通孔28にさらに通されることによって、覆工コンクリート4内に埋設される領域において上下半掘削面1の掘進方向に沿って、すなわち、トンネルの軸方向に沿って敷設される。
【0077】
したがって、二次吹付コンクリート3内の周方向における応力分布を測定することによって、上記第1実施形態と同様の効果が得られるとともに、覆工コンクリート4内の掘進方向における応力分布を測定することによって、トンネルの軸方向における覆工コンクリート4の状態の変化を把握することができる。
【0078】
なお、上記第2実施形態においても、上記第2変形例や第3変形例のように、ガイド部120に、覆工コンクリート4が打設される領域に向かって延びる延出部を設けることによって、覆工コンクリート4内に光ファイバケーブル30を敷設できるようにしてもよい。
【0079】
また、上記第1実施形態では、掛け工程において、光ファイバケーブル30をガイド部20の貫通孔23に順次通すことにより、鋼製支保工10の各ガイド部20に光ファイバケーブル30が掛けられる。各ガイド部20に光ファイバケーブル30を掛ける方法としては、この方法に代えて、
図12に示す方法で行われてもよい。なお、
図12は、
図2と同様に、線状体敷設構造100を掘進方向に沿って切羽面5に向かって見たときの正面図である。
【0080】
図12に示す方法では、鋼製支保工10を建て込む建込工程において一対の支保工材11の結合フランジ部12を結合する際、この作業とともに、結合フランジ部12の周辺において、各支保工材11のガイド部20の貫通孔23に通された通線ワイヤ40の一端40a同士を、接続部材41を介して接続する作業が行われる。
【0081】
通線ワイヤ40は、光ファイバケーブル30をガイド部20に引き込むために設けられた鋼製ワイヤであり、鋼製支保工10が建て込まれる前に、各支保工材11のガイド部20の貫通孔23に予め通されている。
【0082】
続いて、一方の通線ワイヤ40の他端40b(
図12において左側の支保工材11に設けられた通線ワイヤ40の他端40b)に、接続部材42を介して光ファイバケーブル30が接続される。
【0083】
このように2本の通線ワイヤ40と光ファイバケーブル30とが1本に接続された状態で、他方の通線ワイヤ40の他端40b(
図12において右側の支保工材11に設けられた通線ワイヤ40の他端40b)を引っ張ることにより、通線ワイヤ40と入れ替わるようにして光ファイバケーブル30が各ガイド部20の貫通孔23に通された状態、すなわち、各ガイド部20に光ファイバケーブル30が掛けられ、ガイド部20間に光ファイバケーブル30が架け渡された状態となる(掛け工程)。これにより光ファイバケーブル30は、上下半掘削面1の周方向に沿って敷設された状態となる。
【0084】
このように、各ガイド部20に光ファイバケーブル30を掛ける際に通線ワイヤ40を用いることで、さらに効率よく光ファイバケーブル30を上下半掘削面1に沿って敷設することが可能であり、切羽面5近傍での光ファイバケーブル30の敷設作業に要する時間を短くすることができる。
【0085】
<第3実施形態>
次に、
図13を参照して、本発明の第3実施形態に係る線状体敷設方法及び線状体敷設構造300について説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を主に説明し、第1実施形態で説明した構成と同一の構成又は相当する構成については、その説明を省略する。
【0086】
第3実施形態に係る線状体敷設構造300では、光ファイバケーブル30が掛けられるガイド部220が、インバート掘削面6に沿って建て込まれるインバートストラット14(鋼製支保工)に設けられている点で上記第1実施形態に係る線状体敷設構造100と相違する。
【0087】
線状体敷設構造300は、
図13に示すように、アーチ状に下方に掘削されたインバート掘削面6(掘削面)に沿って建て込まれるインバートストラット14と、インバートストラット14に設けられる複数のガイド部220と、ガイド部220に掛けられる線状体としての光ファイバケーブル30と、を備える。なお、
図13は、
図2に相当する断面を示す図であり、この図では、光ファイバケーブル30の図示を省略している。
【0088】
上述のように、インバートストラット14は、鋼製支保工10と同様に、H形鋼材により形成された部材であり、
図13に示すように、インバート掘削面6の周方向に沿って湾曲したアーチ状に形成される。
【0089】
インバートストラット14は、一対のインバートストラット材15の結合フランジ部16をインバート掘削面6の下端部において図示しないボルトを介して結合することにより、鋼製支保工10の下端部を結合するようにして掘削坑内に建て込まれる。つまり、インバートストラット14は、掘進方向において鋼製支保工10と同じ間隔で建て込まれる。
【0090】
ガイド部220は、上記第1実施形態のガイド部20と同じ形状である。このため、その説明を省略する。
【0091】
ガイド部220は、インバートストラット14の周方向に沿って略等間隔で複数設けられており、インバートストラット14がインバート掘削面6に沿って建て込まれた状態において、延出部が掘進方向に沿って切羽面とは反対側に向かって延びるようにインバートストラット材15に取り付けられている。
【0092】
光ファイバケーブル30は、ガイド部220に形成された図示しない貫通孔に通され各ガイド部220に掛けられることによって、ガイド部220間に架け渡され、インバートストラット14に沿って敷設された状態、すなわち、インバート掘削面6の周方向に沿って敷設された状態となる。敷設された光ファイバケーブル30の両端部は、光ファイバケーブル30を用いて吹付コンクリート7内の応力や歪み、温度の分布を測定する図示しない測定装置に接続される。
【0093】
次に、上記構成の線状体敷設構造300により光ファイバケーブル30を敷設する方法について説明する。
【0094】
上記構成の線状体敷設構造300による光ファイバケーブル30の敷設は、上下半掘削面1への鋼製支保工10の設置が完了した後に行われるインバート施工工程において行われる。
【0095】
インバート施工工程では、まず、インバートストラット14を設置するために、鋼製支保工10の下方の地山を掘削し、インバート掘削面6が形成される。
【0096】
そして、インバート掘削面6に沿って、ガイド部220が設けられた部材として上記構成のインバートストラット14が建て込まれる。具体的には、インバートストラット14は、一対のインバートストラット材15の結合フランジ部16をインバート掘削面6の下端部において図示しないボルトを介して結合することにより、鋼製支保工10の下端部を結合するようにして掘削坑内に建て込まれる(建込工程)。
【0097】
次に、建て込まれたインバートストラット14の各ガイド部220の図示しない貫通孔に光ファイバケーブル30を順次通すことによって、各ガイド部220に光ファイバケーブル30が掛けられる(掛け工程)。これにより光ファイバケーブル30は、インバートストラット14に設けられたすべてのガイド部220の貫通孔に通された状態、すなわち、各ガイド部220に光ファイバケーブル30が掛けられ、ガイド部220間に光ファイバケーブル30が架け渡された状態となる。このようにして光ファイバケーブル30は、インバート掘削面6の周方向に沿って敷設される。
【0098】
続いて、インバート部の支保部材として吹付コンクリート7が、ガイド部220により保持された光ファイバケーブル30を埋設するように吹き付けられる(吹付工程)。具体的には、図示しないコンクリート吹付機により、インバート掘削面6に対してインバートストラット14が埋もれる程度に吹付コンクリート7が吹き付けられる。これにより光ファイバケーブル30は、吹き付けられた吹付コンクリート7内に、インバート掘削面6の周方向に沿った状態で埋設されることになる。
【0099】
ここで、ガイド部220は、光ファイバケーブル30が通される貫通孔の中心がインバートストラット14の径方向における幅の略中央に位置するように、インバートストラット材15に対して取り付けられている。
【0100】
ガイド部220をこのようにインバートストラット材15に取り付けておくことにより、貫通孔に通された光ファイバケーブル30を吹付コンクリート7の吹付厚さ内の所定の位置に敷設することが可能となる。
【0101】
このように、光ファイバケーブル30を吹付コンクリート7の吹付厚さ内の所定の位置に敷設することによって、インバート掘削面6と光ファイバケーブル30との間隔が周方向においてほぼ一定となり、トンネルを掘削中の地山の変化に応じて変化する吹付コンクリート7内の周方向における応力分布を精度よく測定することができる。さらに、吹付コンクリート7の表面を埋め戻し土9によって埋め戻す際に生じる変位や吹付コンクリート7の表面から埋め戻し土9を除去する際に生じる変位に応じて変化する吹付コンクリート7内の応力分布についても精度よく測定することができる。
【0102】
また、
図14に示すように、各インバートストラット14に敷設された光ファイバケーブル30はトンネルの軸方向において連続して敷設されていてもよい。
図14は、インバート掘削面6に沿って敷設された光ファイバケーブル30の敷設パターンを、インバート部の下端を中心として平面上に展開して示した展開図である。
【0103】
このようにインバート掘削面6の周方向に沿うとともにトンネルの軸方向に所定の間隔で光ファイバケーブル30を敷設することにより、トンネルの軸方向における吹付コンクリート7の応力の変化状況についても把握することが可能となる。これにより、インバートコンクリート8の打設を開始するタイミングを吹付コンクリート7の応力変化の収束状況に応じて設定することや、インバートコンクリート8に用いられるコンクリートの強度やインバート掘削面6の掘削半径の大きさを、吹付コンクリート7の応力状態、すなわち、地山の状態に基づいて設定することができる。
【0104】
以上の第3実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0105】
上述の線状体敷設方法では、貫通孔を有するガイド部220が周方向に沿って複数設けられたインバートストラット14をインバート掘削面6に沿って建て込む工程と、貫通孔に光ファイバケーブル30を通してガイド部220に光ファイバケーブル30を掛け、ガイド部220間に光ファイバケーブル30を架け渡す工程と、によって、光ファイバケーブル30は、トンネルを構築する際にインバート掘削面6の周方向に沿って敷設される。
【0106】
このように上述の線状体敷設方法では、光ファイバケーブル30をインバートストラット14に設けられたガイド部220に掛けるだけで、インバート掘削面6に沿って光ファイバケーブル30を効率よく敷設することが可能であり、切羽面5近傍での光ファイバケーブル30の敷設作業に要する時間を短くすることができる。
【0107】
また、光ファイバケーブル30を貫通孔に通すことによりガイド部220に掛けた状態としておけば、光ファイバケーブル30に吹付コンクリート7が吹き付けられる際に、吹付圧によって光ファイバケーブル30がガイド部220から外れてしまうことを防止することができる。
【0108】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の各実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0109】
上記第3実施形態では、光ファイバケーブル30は、インバートストラット14に設けられたガイド部220に掛けられている。これに代えて、インバートストラット14が支保部材として設けられない場合には、
図15及び
図16に示すように、インバート掘削面6にガイド部225が設けられた支持部材224を複数立設し、このガイド部225に光ファイバケーブル30を掛けるようにしてもよい。なお、
図15は、
図13に相当する断面を示す図であり、
図16は、
図15のF-F線に沿う断面を示す図である。
【0110】
図15に示すように、この変形例では、ガイド部225が設けられた部材として、複数の支持部材224が、インバート掘削面6の周方向に沿って設けられている。支持部材224は、鉄筋等の棒状部材である。
【0111】
ガイド部225は、支持部材224が挿通する挿通孔226aが貫通して形成された固定部226と、光ファイバケーブル30が通されるガイド孔としての貫通孔227a(ガイド孔)が貫通して形成された平板部227と、を有する。固定部226と平板部227とは、挿通孔226aの軸方向と貫通孔227aの軸方向とが直交するように一体的に形成されている。
【0112】
また、固定部226には、挿通孔226aの内周面において一端が開口する雌ネジ孔226bが形成されており、雌ネジ孔226bには、ネジ部の先端が支持部材224に当接することによって、ガイド部225を支持部材224に対して固定することが可能な固定ネジ228が取り付けられている。つまり、支持部材224に対するガイド部225の取付位置を調整自在な構成となっている。
【0113】
次に、ガイド部225が取り付けられた支持部材224を用いて光ファイバケーブル30を敷設する方法について説明する。
【0114】
この場合も光ファイバケーブル30の敷設は、上記第3実施形態と同様に、上下半掘削面1への鋼製支保工10の設置が完了した後に行われるインバート施工工程において行われる。
【0115】
インバート施工工程では、まず、支保部材として、吹付コンクリート7を吹き付けるために、鋼製支保工10の下方の地山を掘削し、インバート掘削面6が形成される。
【0116】
そして、インバート掘削面6に沿って、ガイド部225が設けられた部材として複数の支持部材224が所定の間隔をあけて立設される。具体的には、支持部材224の一端側が地中に差し込まれる。
【0117】
続いて、光ファイバケーブル30を吹付コンクリート7内の所定の位置に敷設させるために、光ファイバケーブル30が挿通する貫通孔227aが、吹付コンクリート7の吹付厚さ内の所定位置に位置するように、支持部材224に対するガイド部225の位置を調整する。
【0118】
ガイド部225の位置の調整は、例えば、トータルステーションやレーザー墨出し器によって、設計上の吹付コンクリート7の吹付高さをレーザー等により表示した状態で行われ、想定される吹付コンクリート7の表面と貫通孔227aの中心位置との間の距離が予め設定された所定の距離L1となるように、支持部材224に対するガイド部225の位置が調整される。
【0119】
ガイド部225の位置が決まった段階で固定ネジ228が締め付けられ、支持部材224に対してガイド部225が固定される。
【0120】
なお、ガイド部225の位置の調整は、このような方法に限定されず、例えば、支持部材224の上端面から貫通孔227aの中心位置までの距離を予め設定された所定の距離L1としておき、支持部材224の上端面をレーザー等により表示されたラインに合わせるように支持部材224を地中へ打ち込むことによって行われてもよい。
【0121】
次に、位置の調整が完了した各ガイド部225の貫通孔227aに光ファイバケーブル30を順次通すことによって、各ガイド部225に光ファイバケーブル30が掛けられる。これにより光ファイバケーブル30は、各支持部材224に設けられたすべてのガイド部225の貫通孔227aに通された状態、すなわち、各ガイド部225に光ファイバケーブル30が掛けられ、ガイド部225間に光ファイバケーブル30が架け渡された状態となる。このようにして光ファイバケーブル30は、インバート掘削面6の周方向に沿って敷設される。
【0122】
続いて、インバート部の支保部材として吹付コンクリート7が、ガイド部225により保持された光ファイバケーブル30を埋設するように吹き付けられる。具体的には、図示しないコンクリート吹付機により、インバート掘削面6に対して所定の厚さの吹付コンクリート7が吹き付けられる。これにより光ファイバケーブル30は、吹き付けられた吹付コンクリート7内に、インバート掘削面6の周方向に沿った状態で埋設されることになる。
【0123】
上述のように、光ファイバケーブル30が通される貫通孔227aの位置は、光ファイバケーブル30が吹付コンクリート7の吹付厚さ内の所定の位置に敷設されるように調整されていることから、この変形例においても、上記第3実施形態と同様に、光ファイバケーブル30を吹付コンクリート7の吹付厚さ内の所定の位置に敷設することによって、インバート掘削面6と光ファイバケーブル30との間隔が周方向においてほぼ一定となり、トンネルを掘削中の地山の変化に応じて変化する吹付コンクリート7内の周方向における応力分布を精度よく測定することができる。
【0124】
なお、この変形例では、光ファイバケーブル30が通される貫通孔227aが平板部227に形成されているが、光ファイバケーブル30が通される孔は、部材に形成された貫通孔に限定されず、例えば、樹脂製または金属製の結束バンドをリング状にすることによって形成された孔を光ファイバケーブル30が通される孔として利用してもよい。
【0125】
この場合、リング状に形成された結束バンドを、結束線を介して支持部材224に括り付ける位置を適宜調整することによって、光ファイバケーブル30が通される孔の位置を所定の位置とすることが可能である。
【0126】
また、上記第1実施形態では、
図6に示すように、光ファイバケーブル30を、上下半掘削面1の周方向に沿って敷設することを説明し、上記第3実施形態では、
図14に示すように、光ファイバケーブル30を、インバート掘削面6の周方向に沿って敷設することを説明したが、これらは何れか一方のみが実施されるものではなく、同じトンネルに対して、両方が実施されてもよい。
【0127】
このように両方を実施した場合、上下半掘削面1の周方向に沿った応力分布及びインバート掘削面6の周方向に沿った応力分布、すなわち、トンネルの所定の断面における全周の応力分布を、トンネルの軸方向に沿って所定の間隔で測定することが可能となる。このため、地山やトンネル内の変化を逐次検出することが可能となり、トンネルの維持管理が容易となる。
【0128】
なお、地山やトンネル内の変化を検出するためには、単にトンネルの軸方向に沿って光ファイバケーブルを這わせることも考えられるが、例えば、大きく方向が曲がるカーブ部分では、内周側に設けられた光ファイバケーブルの長さと外周側に設けられた光ファイバケーブルの長さとが異なるため、同じ変位が生じてもそれぞれ検出感度が異なるため、地山やトンネル内の変化状態を正確に検出することは難しい。
【0129】
これに対して、上述のように、トンネルの全周における応力分布をトンネルの軸方向に所定の間隔で測定することによって、トンネルの所定距離毎の各断面における変化状況を正確に把握することが可能となる。このため、地山やトンネル内の変化の大きさや変化が生じた場所を正確に検出することができる。
【0130】
また、上下半掘削面1側とインバート掘削面6側とを別々の光ファイバケーブルによって計測することに代えて、
図17に示すように、上下半掘削面1の周方向に沿って敷設される光ファイバケーブル30aと、インバート掘削面6の周方向に沿って敷設される光ファイバケーブル30bと、を単一の光ファイバケーブル30とし、上下半掘削面1側とインバート掘削面6側とを連続的にトンネルの軸方向に所定の間隔で計測可能な構成としてもよい。
【0131】
このようにトンネル内に敷設される光ファイバケーブル30を1本とすることによって、複数の応力検知センサを配置する場合と比較し、敷設が容易となり、必要な計測システムも大幅に簡素化されるため、計測システムの導入及び運用コストを低減させることができる。また、測定箇所が点状ではなく連続した線状となることから、計測漏れが生じにくくなり、結果として、計測精度を向上させることができる。
【0132】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0133】
100,200,300・・・線状体敷設構造
1・・・上下半掘削面(掘削面)
3・・・二次吹付コンクリート
5・・・切羽面
6・・・インバート掘削面(掘削面)
7・・・吹付コンクリート
10,110A,110B・・・鋼製支保工
14・・・インバートストラット(鋼製支保工)
20,120,220,225・・・ガイド部
23,26,28,121,227a・・・貫通孔(ガイド孔)
30,30a,30b・・・光ファイバケーブル(線状体)
40・・・通線ワイヤ
115・・・タイロッド(連結部材)
224・・・支持部材