(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】発光素子及び発光素子用の蓋部材
(51)【国際特許分類】
H01L 33/60 20100101AFI20241002BHJP
C30B 29/18 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
H01L33/60
C30B29/18
(21)【出願番号】P 2021105651
(22)【出願日】2021-06-25
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 啓之
(72)【発明者】
【氏名】菊池 賢一
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-114578(JP,A)
【文献】特開2007-201392(JP,A)
【文献】特開2017-147406(JP,A)
【文献】特開2013-046071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00
H01L 33/48-33/64
C30B 1/00
C30B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部と、前記発光部を実装する容器と、前記容器に接合され前記発光部が発する光を透過する窓部材も兼ねる蓋部材と、を具える発光素子において、
前記容器を、平板状の基板で構成し、
前記蓋部材を、内側面に水晶由来の結晶面で構成した複数の反射面を有した水晶製の枠部と、前記反射面に設けた反射膜と、前記枠部の前記発光部とは反対面に接合された水晶製の天板部と、により構成してあり、
前記枠部を、内側面にATカットの水晶片に由来して生じた結晶面から成る複数の反射面を有した、ATカットの水晶片で構成したことを特徴とする発光素子。
【請求項2】
発光部と、前記発光部を実装する容器と、前記容器に接合され前記発光部が発する光を透過する窓部材も兼ねる蓋部材と、を具える発光素子において、
前記容器を、平板状の基板で構成し、
前記蓋部材を、内側面に水晶由来の結晶面で構成した複数の反射面を有した水晶製の枠部と、前記反射面に設けた反射膜と、前記枠部の前記発光部とは反対面に接合された水晶製の天板部と、により構成してあり、
前記枠部を、内側面にZカットの水晶片に由来して生じた結晶面から成る複数の反射面を有した、Zカットの水晶片で構成したことを特徴とする発光素子。
【請求項3】
前記枠部と前記天板部とは、水晶同士の直接接合によって接合してあることを特徴とする請求項
1又は2に記載の発光素子。
【請求項4】
発光部を実装する容器に接合されて使用される蓋部材において、
前記蓋部材を、内側面に水晶由来の結晶面で構成した複数の反射面を有した水晶製の枠部と、前記反射面に設けた反射膜と、前記枠部の前記発光部とは反対面で前記枠部に接続された水晶製の天板部と、により構成してあり、
前記枠部を、内側面にATカットの水晶片に由来して生じた結晶面から成る複数の反射面を有した、ATカットの水晶片で構成したことを特徴とする蓋部材。
【請求項5】
発光部を実装する容器に接合されて使用される蓋部材において、
前記蓋部材を、内側面に水晶由来の結晶面で構成した複数の反射面を有した水晶製の枠部と、前記反射面に設けた反射膜と、前記枠部の前記発光部とは反対面で前記枠部に接続された水晶製の天板部と、により構成してあり、
前記枠部を、内側面にZカットの水晶片に由来して生じた結晶面から成る複数の反射面を有した、Zカットの水晶片で構成したことを特徴とする蓋部材。
【請求項6】
前記枠部と前記天板部とは、水晶同士の直接接合によって接合してあることを特徴とする請求項
4又は5に記載の蓋部材。
以 上
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子、特に深紫外光を発する発光素子、及び、この発光素子用の蓋部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、深紫外光を発する発光素子が注目されている。深紫外光が、水や空気等の媒体を殺菌する能力を有するため、医療分野、食品加工分野等での殺菌手段として期待できるからである。
深紫外光を発する発光素子の一例が、特許文献1に開示されている。この発光素子は、容器と、発光部と、蓋部材とを具えている。容器は、発光部で生じる熱を放熱し易いものが好ましい。特許文献1には、容器を、アルミナ(Al2O3)や窒化アルミニウム(AlN)等を含むセラミック製材料で構成できることが記載されている(特許文献1の例えば段落29)。発光部は、深紫外光を発する発光ダイオード、例えば窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系半導体材料で構成できることが記載されている(特許文献1の例えば段落25)。蓋部材は、深紫外光の透過率に優れる材料、例えばガラス、石英、水晶、サファイア等で構成できることが記載されている。
【0003】
深紫外光を発する発光素子の他の例が、特許文献2に開示されている。特許文献2には、蓋部材は、石英ガラス、サファイア、MgO、MgF2、CaF2、合成ヒューズドシリカ等で構成できることが記載されている(特許文献2の段落26)。また、蓋部材に反射面を設けることが記載されている(特許文献2の
図6、段落36)。反射面を設けることで、深紫外光の発光素子外部への取出し効率、を高められるという(特許文献2の段落36)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-37581号公報
【文献】特開2018-125368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、蓋部材として水晶を用い得ることが記載されている。特許文献2には、深紫外光を外部に取り出す効率を高めるため、蓋部材に反射面を設けることが記載されている。しかしながら、これら特許文献には、水晶が持つ性質や蓋部材の製造の容易さまでを考慮した水晶製の蓋部材の具体的な構成は、記載も示唆もされていない。
また、特許文献1及び特許文献2いずれも、容器は、発光部を収容する凹部を有し、凹部周辺が土手部となっている構造のものである。凹部を有する容器の場合、容器を製造するコストが高くなり易いという問題点がある。
この出願は上記の点に鑑みなされたものであり、従って、本発明の目的は、発光素子、特に深紫外光を発する発光素子であって、光取出し効率のさらなる改善可能性を有し、かつ、製造の容易さの可能性を有した発光素子と、この発光素子用の蓋部材と、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的の達成を図るため、この出願の発光素子の発明によれば、発光部と、前記発光部を実装する容器と、前記容器に接合されていて前記発光部が発する光を透過する窓部材も兼ねる蓋部材と、を具える発光素子において、
前記容器を、平板状の基板で構成し、
前記蓋部材を、内側面に水晶由来の結晶面で構成した複数の反射面を有した水晶製の枠部と、前記反射面に設けた反射膜と、前記枠部の前記発光部とは反対面に接合された水晶製の天板部と、により構成してあることを特徴とする。
【0007】
この発光素子の発明を実施するに当たり、前記枠部を、内側面にATカットの水晶片に由来して生じた結晶面から成る複数の反射面を有した、ATカットの水晶片で構成することが好ましい。ATカットの水晶片は、ATカット水晶振動子の製造で大量に使用されているため、コストメリットが高く、かつ、枠部を形成する工法も周知の工法を利用できるからである。
なお、枠部としてATカットの水晶片を用いる場合、前記反射面はATカットの水晶片の片面から当該水晶片の一部を選択的にフッ酸系のエッチャントによってエッチングすることで形成できる。その場合、エッチングが済むと、エッチングで生じた開口部の側面に、天板部との成す角度で表して、33±2度の反射面、60±2度の反射面を含む複数の反射面を構成できる。なお、上記の33±2度の反射面と60±2度の反射面とが合成された反射面を含んでも良い。ここで、±2度という範囲は、主に、ATカットの水晶片の水晶原石からの切り出し角度により変わる。以下のZカットの水晶片の場合において同じ。
【0008】
この発光素子の発明を実施するに当たり、前記枠部を、内側面にZカットの水晶片に由来して生じた結晶面から成る複数の反射面を有した、Zカットの水晶片で構成することが好ましい。Zカットの水晶片は、音叉型の水晶振動子の製造で大量に使用されているため、コストメリットが高く、かつ、枠部を形成する工法も周知の工法を利用できるからである。
なお、枠部としてZカットの水晶片を用いる場合、前記反射面はZカットの水晶片の片面から当該水晶片の一部を選択的にフッ酸系のエッチャントによってエッチングすることで形成できる。その場合、エッチングが済むと、エッチングで生じた開口部の側面に、天板部との成す角度で表して、23±2度の反射面と35±2度の反射面を含む複数の反射面を形成できる。なお、上記の23±2度の反射面と35±2度の反射面とが合成された反射面を含んでも良い。
【0009】
この発光素子の発明を実施するに当たり、前記枠部と前記天板部とは、水晶同士を直接接合させて接合することが好ましい。直接接合であると、枠部と天板部との接合を信頼性良くかつ簡易に行えるからである。
【0010】
また、この出願の発光素子用の蓋部材の発明によれば、発光部を収容する容器に接合されて使用される蓋部材において、
前記蓋部材を、内側面に水晶由来の結晶面で構成した複数の反射面を有した水晶製の枠部と、前記反射面に設けた反射膜と、前記枠部の前記発光部とは反対面で前記枠部に接続された水晶製の天板部と、により構成してあることを特徴とする。
【0011】
この蓋部材の発明を実施するに当たり、前記枠部を、ATカットの水晶片であって内側面にATカットの水晶片に由来する結晶面から成る複数の反射面を有したATカットの水晶片で構成することが好ましい。又は、前記枠部を、内側面にZカットの水晶片に由来して生じた結晶面から成る複数の反射面を有した、Zカットの水晶片で構成することが好ましい。上記の発光素子の発明にて説明した理由からである。
【発明の効果】
【0012】
この出願の発光素子及び蓋部材の各発明によれば、蓋部材を、所定の枠部、反射膜及び天板部で構成してある。ここで、枠部の側面の水晶に由来する結晶面は、水晶板をフッ酸系のエッチャントを用いたウエットエッチングによってエッチングすることによって、再現良く、かつ、特段の難しい工程を実施せずとも、形成できる。しかも、反射面は、水晶の結晶面に由来する面であるから、鏡面に近い面となるので、反射率に優れる反射面を実現できる。また、天板部も水晶板によって構成しているので、天板部の深紫外線の透過も確保できる。これらのことから、本発明によれば、深紫外光の反射効率に優れた反射面を有した蓋部材を、再現性良く、かつ、簡易に形成できる。従って、光取出し効率のさらなる改善可能性を有し、かつ、製造の容易さの可能性を有した発光素子及び当該発光素子用の蓋部材を提供できる。
然も、容器として平板状の容器を用いているため、凹部を有する容器を用いる場合に比べ、容器の製造が容易かつコストを低減できるため、この点でも、製造容易かつ安価な発光素子を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1(A)及び(B)は、実施形態の発光素子10を説明するための図である。
【
図2】
図2(A)及び(B)は、実施形態の発光素子10の製造方法の一例を説明するための製造工程図である。
【
図3】
図3(A)及び(B)は、実施形態の発光素子10の製造方法の一例を説明するための、
図2に続く製造工程図である。
【
図4】
図4(A)及び(B)は、実施形態の発光素子10の製造方法の一例を説明するための、
図3に続く製造工程図である。
【
図5】
図5(A)及び(B)は、実施形態の発光素子10の製造方法の一例を説明するための、
図4に続く製造工程図である。
【
図6】
図6(A)、(B)、(C)それぞれは、他の実施形態の発光素子40、50、60を説明するための、
図1(A)に対応する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態について説明する。なお、説明に用いる各図はこれら発明を理解できる程度に概略的に示してあるにすぎない。また、説明に用いる各図において、同様な構成成分については同一の番号を付して示し、その説明を省略する場合もある。また、以下の実施形態中で述べる形状、材質、製法例等はこの発明の範囲内の好適例に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0015】
1. 発光素子の実施形態
図1は、実施形態の発光素子10を説明するための図であり、特に
図1(A)は、発光素子10の平面図、
図1(B)は、
図1(A)中のP-P線に沿った発光素子10の断面図である。
実施形態の発光素子10は、発光部11と、容器13と、蓋部材15と、を具えている。
発光部11は、深紫外光を発する発光ダイオードで構成でき、例えば窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系半導体材料等、従来公知の種々のもので構成できる。発光部11は、1個又は複数個の深紫外用の発光ダイオードを有するものである。
【0016】
容器13は、平板状の容器で構成してある。具体的には、容器13は、平板状の基板13aと、実装パッド13bと、外部接続端子13cと、封止用メタルパターン13dと、を具えている。
基板13aは、発光部11で生じる熱の放熱を図るためアルミナ(Al2O3)や窒化アルミニウム(AlN)等を含むセラミック製材料で構成した平板状の基板で構成してある。平板状の基板11aを用いているため、凹部を有した容器を用いる場合に比べ、容器の作製が容易でありかつコスト低減が図れる。基板13aの厚みや平面的な大きさは、発光素子10の仕様に応じて決めることが出来る。
【0017】
実装パッド13bは、発光部11を、基板13aに実装するものであり、基板13aの第1の面に設けてある。外部接続端子13cは、発光素子10を、任意の電子機器(図示せず)に接続するためのもので、基板13aの、第1の面とは反対面である第2の面に設けてある。実装パッド13bと外部接続端子13cとは、図示しないビア配線又はキャスタレーション配線等によって、電気的に接続してある。これら実装パッド13b、外部接続端子は、周知のメタライズ技術や焼結技術によって形成できる。
封止用メタルパターン13dは、基板13aと蓋部材15とを接合するためのものであり、基板13aの所定の領域に設けてあり、例えば周知のメタライズパタンで構成できる。
【0018】
蓋部材15は、水晶製の枠部15aと、枠部15aの側面に設けた水晶由来の反射面15bと、反射面15bに設けた反射膜15cと、封止用メタルパターン15dと、天板部15eと、を具えている。
水晶製の枠部15aは、典型的には、内側面にATカットの水晶片に由来して生じた結晶面から成る複数の反射面15bを有した、ATカットの水晶片で構成するか、又は、内側面にZカットの水晶片に由来して生じた結晶面から成る複数の反射面15bを有した、Zカットの水晶片で構成するのが良い。
水晶製の枠部15aの厚さや、枠で囲われた開口の大きさは、発光素子10の仕様に応じて決めることが出来る。また、
図1(A)の図示例では、反射面15bの数を、4面としているが、反射面15bの数は、これに限られず、任意とできる(詳細は
図6を参照して説明する)。なお、反射面15bと天板部15eとの成す角度は、水晶由来のものであるが、用いる水晶片のカットに応じて、すなわち、用いる水晶片がATカットの水晶片の場合、又は、Zカットの水晶片の場合、又は他のカットの場合等に応じて、変わる。ATカットの水晶片の場合、又は、Zカットの水晶片の場合の反射面の典型例は、課題を解決するための手段の項にて説明した通りである。
【0019】
反射膜15cは、任意好適な膜で構成できる。典型的には反射膜15cは、任意好適な金属膜や、場合によっては無機材料の膜で構成できる。反射膜を金属膜で構成する場合は、これに限られないが、反射膜15cは例えばアルミニウム膜で構成できる。
封止用メタルパターン15dは、基板13a側の封止用メタルパターン13dと協働して、蓋部材15を基板13aと接合するためのものであり、これに限られないが、例えばロー材、例えば金錫合金等によって構成できる。
天板部15eは、水晶製の平板で構成してある。水晶製の平板としては、例えばATカットの水晶片又はZカットの水晶片を用いるのが好適である。熱膨張係数の整合性を考慮して、枠部15a用の水晶片と天板部15e用の水晶片とは、同一カットの水晶片を用いることが好ましい。なお、天板部15eの厚さは、発光素子の仕様に応じて決めることが出来る。
【0020】
上記した基板13aの実装パッド13bに、発光部11を、発光部11に設けた図示しない端子の位置で、ハンダ等の接合材17によって、実装してある。そして、発光部11を実装した基板13aに、蓋部材15が、封止用メタルパターン13d、15dを介して接合してある。
なお、容器13及び蓋部材15によって形成される空間の雰囲気は、窒素雰囲気、又は窒素を所定量含む大気雰囲気であることが好ましい。
【0021】
実施形態の発光素子10では、発光部11が発した深紫外光は、蓋部材15の水晶製の天板部15eを通過して発光素子10の外部に出力できる。しかも、この発光素子10の場合、枠部15aの内側面に、水晶由来の反射面15b及びこの反射面上に形成した反射膜15cを具えているので、発光部11が発した深紫外光のうち横方向に進む光も、反射膜15cによって反射されて天板部15eの方向に向かう。従って、反射膜が無い場合に比べて、天板部15eを経由する深紫外光の量を増やすことができる。しかも、反射面15bは水晶由来の結晶面であるから、再現性が良い平滑面となるため、反射率が高い反射面になる。
【0022】
2. 製造方法の一例の説明
次に、本発明の発光素子の理解を深めるため、より詳細には、本発明の特に蓋部材15の理解を深めるため、主として蓋部材15の製法例を説明する、この説明を
図2~
図5を参照して行う。なお、本発明の蓋部材15は、単品での製造も可能であるが、ウエハ工法によって製造する方が好ましいので、以下の説明ではウエハ工法による例を説明する。
先ず、蓋部材15を形成するための水晶ウエハ15Wを用意する。水晶ウエハ15Wは、例えばATカットの水晶ウエハ、又はZカットの水晶ウエハである(
図2(A))。この水晶ウエハ15Wの一方の面の全面に、耐ウエットエッチング性のマスク21を形成する(
図2(A))。また、水晶ウエハ15Wの他方の面に枠部15a(
図1参照)となる部分は覆い、それ以外は開口部23aとされた、耐ウエットエッチング性のマスク23を形成する(
図2(A))。なお、耐ウエットエッチング性のマスク21、23は、例えばクロム膜と金膜との積層膜で構成できる。
【0023】
耐エットエッチング性のマスク21,23の形成が済んだ水晶ウエハ15wを、フッ酸系のエッチャント25を入れた容器27中に所定時間浸漬する(
図2(B))。この処理において、エッチャントによる浸食が、開口部23aから水晶ウエハ15Wに及ぶので、水晶ウエハ15Wの一部に、浸食部15xが生じる(
図2(B))。所定のエッチングが済むと、水晶ウエハ15Wの開口部23aの側面に水晶に由来する結晶面から成る反射面15bを形成できる(
図3(A))。
【0024】
反射面15bの形成が済んだ水晶ウエハ15Wに対し、周知の成膜技術及びフォトリソグラフィ技術を用いて、反射膜15c及び封止用メタルパターン15dを形成する(
図3(B))。
【0025】
次に、反射膜15c等の形成が済んだ水晶ウエハ15Wの、封止用メタルパターン15dを形成していない面に、天板部形成用の水晶ウエハ15eWを載せる(
図4(A))。そして、これら水晶ウエハ15W及び水晶ウエハ15eWを加圧しながら、所定の温度に加熱して、両ウエハを直接接合する(
図4(B)。詳細は省略するが、この処理では、水晶のSi基と処理雰囲気中の水酸基との作用で、両ウエハは直接接合される。ただし、直接接合ではなく、他の手段、例えば低融点ガラスを介したりする手段によって、両ウエハを接合しても良い。
接合したウエハを、例えばダイシングソー30を用いて所定ピッチでマトリクス状に切断することで、個々の蓋部材15を得ることが出来る(
図4(B))。
【0026】
一方、発光部11を実装した容器13を別途に用意する(
図5(A))。そして、この容器13に、上記のように製造した蓋部材15を重ね、所定雰囲気、例えば窒素雰囲気にて、封止用メタルパターン13d、15dを利用して、容器13と蓋部材15とを接合して、所望の発光素子10を得る(
図5(A))。
なお、ここでは、個片状の容器と個片状の蓋部材とを封止する例を述べたが、
図5(B)に示したように、多数の容器が形成されたウエハと多数の蓋部材が形成されたウエハとを用いて、ウエハレベルプロセスによって、発光素子を製造し、その後、ダイシングソー等によって、個々の発光素子を得ても良い。
【0027】
3. 他の実施形態
本発明の発光素子及び蓋部材は、以下のような他の実施形態であっても良い。
先ず、
図6(A)に示した発光素子40の場合は、反射面15bの平面的な形状が不規則な例である。また、
図6(B)に示した発光素子50の場合は、反射面15bの数が5以上の多数としてある例である。
図6(A)、(B)に示したような反射面は、水晶ウエハ15Wに形成する耐ウエットエッチング性のマスク23(
図2(A)参照)の平面形状を工夫することによって、例えばマスク23の平面形状が円形、又は楕円形又は五角形以上の多角形形にすることによって、形成できる。
また、
図6(C)に示した発光素子60は、枠部15aで囲われる領域に多数の発光部11を具えている例である。多数の発光部11を具えた大出力の発光素子に対しても、本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0028】
10:実施形態の発光素子、 11:発光部
13:容器、 13a:基板、
13b:実装パッド、 13c:外部接続端子
13d:封止用メタルパターン
15:蓋部材、 15a:水晶製の枠部
15b:反射面、 15c:反射膜
15d:封止用メタルパターン、 15e:水晶製の天板部
40,50,60:他の実施形態の発光素子