(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】吐出容器
(51)【国際特許分類】
A45D 33/02 20060101AFI20241002BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
A45D33/02
B65D83/00 J
(21)【出願番号】P 2021107305
(22)【出願日】2021-06-29
【審査請求日】2024-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】前田 信也
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-154769(JP,A)
【文献】特開2017-178437(JP,A)
【文献】実開昭47-020070(JP,U)
【文献】特開2016-113196(JP,A)
【文献】実開平03-123879(JP,U)
【文献】特開2016-159912(JP,A)
【文献】特開2013-249096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/02
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容される容器本体と、
前記内容物を吐出するためのスリットが形成された頂板を有し、前記容器本体の口部を当該頂板により閉塞するスリット弁部と、
前記頂板に設けられ、当該頂板の表面から前記容器本体とは反対の側に突出する凸部と、
を備え、
前記凸部が前記容器本体側に押し込まれると前記スリットが開く
ように構成され、
前記スリット弁部は、前記頂板の周囲を取り囲み、当該頂板と共に所定容積の計量空間を区画する周壁部を有し、
前記凸部の先端は当該計量空間の外側に配置されることを特徴とする吐出容器。
【請求項2】
内容物が収容される容器本体と、
前記内容物を吐出するためのスリットが形成された頂板を有し、前記容器本体の口部を当該頂板により閉塞するスリット弁部と、
前記頂板に設けられ、当該頂板の表面から前記容器本体とは反対の側に突出する凸部と、
を備え、
前記凸部が前記容器本体側に押し込まれると前記スリットが開く
ように構成され、
前記頂板の裏面には、前記容器本体側に突出する棒状の攪拌部を有することを特徴とする吐出容器。
【請求項3】
前記スリット弁部は、前記頂板の周囲を取り囲み、当該頂板と共に所定容積の計量空間を区画する周壁部を有し、
前記凸部の先端は当該計量空間の外側に配置される、
請求項2に記載の吐出容器。
【請求項4】
前記頂板の裏面に対向配置され、前記スリットが開いたときに前記内容物が前記容器本体側へ移動することを抑制する抑壁面を備える請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の吐出容器。
【請求項5】
前記容器本体は、前記口部に連設された拡径部を有し、
前記拡径部に収容されて、前記スリット弁部の前記容器本体側への移動を抑制するスリット弁抑えを備える請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の吐出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体に収容した粉体等の内容物を口部から吐出させる吐出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フェイスパウダー、ベビーパウダー等の粉体化粧料を収容する容器として、例えば、特許文献1に開示のパウダー容器が知られている。特許文献1に開示のパウダー容器は複数の孔が設けられた中蓋を備え、中蓋上にパフ等の塗布具を載置するようされている。使用時はパフ等を中蓋に載置した状態で、容器を反転させることで、パフ等に粉体化粧料を付着させることができる。中蓋を設けることでパフ等に対する粉体化粧料の付着量が多くなり過ぎないようにすることができる。
【0003】
また、特許文献2には、長尺な筒状に形成された容器本体に粉体化粧料を収容し、パフ等の塗布具を保持したキャップを容器本体に着脱可能に装着させた粉体化粧用容器が開示されている。特許文献2に開示の粉体化粧用容器においても中蓋を設けることで、パフ等に粉体化粧料が付着しすぎないようにしている。また、特許文献2に開示の粉体化粧料容器は特許文献1に開示のパウダー容器と比較すると外径が小さくコンパクトであるため、携行性に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-141111号公報
【文献】特開2003-319821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の容器はいずれもパフ等の塗布具を用いる必要がある。パフ等の塗布具は直接肌に接触するため、パフ等を清潔に保つには定期的にパフ等を洗う必要がある。パフ等を用いず指等で粉体化粧料を塗布することができると便利だが、特許文献1及び特許文献2に記載の容器では指等に適量の粉体化粧料を付着させることは困難である。また、容器本体内に指等を挿入して、指等に粉体化粧料を付着させることは衛生面から避けることが好ましい。
【0006】
一方、ベビーパウダー等の粉体化粧料の一部は、複数の孔を有する中蓋を容器本体の口部に設けた容器に収容されることがある。この場合、塗布具は不要であるが、粉体化粧料の吐出量や吐出範囲を制御することは困難であり、広い範囲に粉体化粧料が吐出され、周囲に粉体化粧料が飛び散ることがある。そのため、指の腹等に少量の粉体化粧料を付着させ、指等により粉体化粧料を所定の位置に塗布する指塗りといった使用形態で用いることは困難である。
【0007】
そこで、本発明の課題は、粉体化粧料等の内容物を適量吐出することができ、塗布具等を用いずに内容物を塗布することのできる吐出容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る吐出容器は、内容物が収容される容器本体と、前記内容物を吐出するためのスリットが形成された頂板を有し、前記容器本体の口部を当該頂板により閉塞するスリット弁部と、前記頂板に設けられ、当該頂板の表面から前記容器本体とは反対の側に突出する凸部と、を備え、前記凸部が前記容器本体側に押し込まれると前記スリットが開くように構成され、前記スリット弁部は、前記頂板の周囲を取り囲み、当該頂板と共に所定容積の計量空間を区画する周壁部を有し、前記凸部の先端は当該計量空間の外側に配置されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る吐出容器は、内容物が収容される容器本体と、前記内容物を吐出するためのスリットが形成された頂板を有し、前記容器本体の口部を当該頂板により閉塞するスリット弁部と、前記頂板に設けられ、当該頂板の表面から前記容器本体とは反対の側に突出する凸部と、を備え、前記凸部が前記容器本体側に押し込まれると前記スリットが開くように構成され、前記頂板の裏面には、前記容器本体側に突出する棒状の攪拌部を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る吐出容器において、前記スリット弁部は、前記頂板の周囲を取り囲み、当該頂板と共に所定容積の計量空間を区画する周壁部を有し、前記凸部の先端は当該計量空間の外側に配置されることが好ましい。
【0011】
本発明に係る吐出容器において、前記頂板の裏面に対向配置され、前記スリットが開いたときに前記内容物が前記容器本体側へ移動することを抑制する抑壁面を備えることが好ましい。
【0012】
本発明に係る吐出容器において、前記容器本体は、前記口部に連設された拡径部を有し、前記拡径部に収容されて、前記スリット弁部の前記容器本体側への移動を抑制するスリット弁抑えを備えることが好ましい。
ことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る吐出容器によれば、容器本体の口部をスリット弁部を構成する頂板により閉塞し、頂板に設けられた凸部を容器本体側に押し込むことで、頂板に形成されたスリットが開くように構成されている。そのため、例えば、指の腹等を口部に当てて、凸部を容器本体側に押し込むことで、粉体化粧料等の内容物を指の腹等に適量吐出させることができる。従って、従来のようにパフ等の塗布具を用いることなく、指の腹等を用いて、粉体化粧料等の内容物を所望の箇所に塗布することができる。また、指等を容器本体の内側に挿入せず、使用分のみ指等に付着させることができるため、内容物を衛生的に維持することができる。さらに、パフ等の塗布具を収容しないため、当該吐出容器全体をコンパクトに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一例の実施形態の吐出容器の一部断面図である。
【
図2】
図1の吐出容器の各部の構成を説明するための図であり、(a)は容器本体の口部近傍を示す部分断面図であり、(b)はスリット弁部を示す図であり、(a)はスリット弁抑えを示す図である。
【
図3】
図4の(a)、(c)の状態、及び、
図4の(b)の状態に対応するスリット弁部の断面を表す図(a)と、平面図(b)である。
【
図4】
図1の吐出容器を使用する際のスリット弁部の動作を説明するための図であり、(a)は指の腹を口部に当てた状態を示し、(b)は指の腹で凸部を押圧した状態を示し、(c)押圧を解除した後の状態を示す図である。
【
図5】
図1の吐出容器とは異なる形態を表す図であり、(a)は攪拌部を備えたスリット弁部を表す断面図であり、(b)はスリット片及び凸部の数が異なるスリット弁部を表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明に係る吐出容器の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態の吐出容器100の断面図である。なお、容器本体10の中心軸Oの方向を軸方向と称し、吐出容器100を
図1に示す正立姿勢に配置したときに容器本体10に対してオーバーキャップ20が設けられる側の向きを「上」、容器本体10の底部側の向きを「下」と称するものとする。ここで「上」、「下」は相対的な位置関係を示すものであることは勿論である。
【0016】
本実施の形態の吐出容器100は、
図1に示すように、粉体P等の内容物を収容する容器本体10と、容器本体10の口部11及び頸部14を覆うオーバーキャップ20とを備えている。口部11の内側にはスリット弁部30が設けられている。当該吐出容器では、オーバーキャップ20を取り外し、容器本体10を倒立姿勢にして口部11の向きを軸方向下方にする(
図4参照)。そして、口部11に指の腹等を押しつけることで、スリット弁部30に設けられたスリットSが開き、所定量の内容物を外部に吐出させることができるように構成されている。
【0017】
本実施の形態では容器本体10に内容物として粉体P(
図2(a)、
図4参照)を収容する。粉体Pは、例えば、化粧料(例えば、ベビーパウダー、ファンデーション、フェイスパウダー、チーク、ハイライト等の粉体化粧料等)、薬剤(外傷薬等)が挙げられる。但し、
図2(a)、
図4では図示の都合上、粉体Pを実際の粒径よりも大きな粒径を有する粒子として示したが、粉体Pの粒径(体積平均粒径D
50)は、例えば、0.5μm以上1mm以下程度であることが好ましい。また、粉体Pは粒径に限らず、各種形状であってもよいのは勿論である。さらに、本発明に係る吐出容器において、内容物は粉体Pに限らず、粒径が1mmを超える粒状体、或いは、液体、ゲル又はクリーム等の流動体等であってもよいし、粉体P又は粒状体を含む流動体であってもよい。また、内容物は化粧料、薬剤以外のものであってもよく、内容物の種類は特に限定されるものではない。
【0018】
以下、
図1~
図3を参照しながら各部の構成を具体的に説明する。
図1に示す正立姿勢において、容器本体10は、軸方向下方から上方へ向かって順に、略円筒状に形成された胴部12、肩部13、頸部14、連設部15を備えている。口部11は連設部15を介して頸部14と連設されている。口部11より頸部14は拡径されている。この連設部15は本発明にいう拡径部に相当する。また、頸部14に対して胴部12はやや拡径されており、肩部13により頸部14と胴部12とが連設されている。肩部13にはオーバーキャップ20の下端が当接されている。また、胴部12の底部開口は底部キャップ16により閉塞されており、頸部14には径方向外側に突出する係止凸部17が設けられている。
【0019】
オーバーキャップ20は有天筒状に形成されている。天面21の内面には軸方向において下方に環状に突出する内環壁部22が設けられている。オーバーキャップ20が容器本体10に装着されたとき、内環壁部22は口部11を構成する周壁の上方に位置する。また、オーバーキャップ20の周壁23の内周面には、上記係止凸部17に対応する位置に係止凹部24が設けられている。係止凸部17に係止凹部24とが係合することで、オーバーキャップ20が頸部14に脱着可能に装着される。
【0020】
口部11にはスリット弁部30及びスリット弁抑え40が設けられている。まず、
図2及び
図3を参照してスリット弁部30について説明する。
図2(a)は容器本体10を倒立姿勢にしたときの、口部11の近傍を示す断面図である。
図2(a)には内容物としての粉体Pを模式的に表している。
図2(b)はスリット弁部30の平面図である。
図2(b)は、スリット弁部30を口部11に装着したときに口部11側の面となる面(以下、上面)を示している。
図2(b)に示すように、本実施の形態ではスリット弁部30は、平面視において口部11の口径よりも小径の円形に形成されており、4つのスリットS(S
1~S
4)が形成された頂板31を備えている。頂板31はこのスリットS(S
1~S
4)により中心角が約90度の扇形状の4枚のスリット片に分割されている。
図2(a)に示すように頂板31は断面視において容器本体10側に凹形状である。
【0021】
また、
図2(a)、(b)に示すように各スリットS(S
1~S
4)は閉じられており、スリットSが閉じた状態で口部11が頂板31により閉塞される。各スリット片には、その上面に軸方向上方に突出する凸部32がそれぞれ設けられている。すなわち、頂板31には、容器本体10とは反対側に突出する凸部32が複数設けられている。
【0022】
図3(a)、(b)に示すように、この凸部32を容器本体10側に押し込むと、各スリット片も容器本体10側に移動し、スリットS(S
1~S
4)が開き、凸部32に対して負荷された力が解除されると各スリット片が元の位置に戻り、スリットS(S
1~S
4)は閉じる。なお、
図3(a)、(b)において、図面に向かって左側に示す図はスリットS(S
1~S
4)が閉じた状態を示し、右側に示す図はスリットS(S
1~S
4)が開いた状態を示している。スリットS(S
1~S
4)が開くと、容器本体10に収容された粉体Pを口部11の外側に吐出させることができる。なお、スリット弁部30は、上記頂板31及び凸部32を含め、全体がシリコンやゴム等の弾性変形が容易な材料(エラストマー等)により構成される。
【0023】
図3を参照して、スリット弁部30のその他の構成を説明する。
図3(a)に示すように、スリット弁部30は、口部11の内径と略同径の外径を有する装着筒33を備えている。装着筒33の軸方向上下にはそれぞれ径方向外側に突出するフランジ部34、35が設けられている。以下、容器本体10の側に配置されるフランジ部34を本体側フランジ部34、口部11の側に配置されるフランジ部35を口部側フランジ部35と称する。上記頂板31は、装着筒33の内側であって、本体側フランジ部34と口部側フランジ部35との間であって、口部側フランジ部35寄りの位置に配置されている。装着筒33は、頂板31よりも口部側フランジ部35側は肉厚に形成されており、口部側フランジ部35側の周壁部36は頂板31の周囲を取り囲み、頂板31と共に所定容積の計量空間Rを区画している。上記凸部32は、この計量空間R内に配置され、凸部32の先端は口部側フランジ部35の上面35aの外側、
図1に示す正立姿勢において口部側フランジ部35の上面35aの上方に位置する。
【0024】
次に、
図2(a)及び(c)を参照してスリット弁抑え40について説明する。スリット弁抑え40は、抑壁面41と、抑壁面41に連結される連結片42と、連結片42に連結される弁抑部43とを備えている。スリット弁抑え40は、頸部14及び連設部15内に収容されており、スリット弁部30の容器本体10側に位置し、スリット弁部30の凸部32が容器本体10側に押し込まれたとき、スリット弁部30の容器本体10側への移動を抑制する機能を有する。
【0025】
抑壁面41は、
図2(a)に示すように、スリット弁部30の頂板31の裏面に対向配置される。頂板31よりも小さい面積の円板状を呈する。抑壁面41は凸部32が容器本体10側に押し込まれたときに、スリット片により押し上げられた粉体Pが容器本体10の側へ移動することを抑制する機能を有する。
【0026】
本実施の形態では連結片42は長尺な板状に形成されている。
図2(c)に示すように、連結片42は抑壁面41の外周縁に対して放射状に等間隔に3つ配置されている。各連結片42の間は空隙となっている。粉体Pはこの各連結片42の間の空隙を通過して、口部11の側に移動することができるようになっている。スリット弁抑え40をこのように構成し、スリット弁抑え40を通過して粉体Pを口部11から吐出させることにより、スリット弁抑え40はスリット弁40の移動を抑制する弁抑えとしての機能だけでなく、粉ふるいのように、粉体Pをほぐして粉体Pの流動性を向上し、粉体Pの粉詰まりを防ぐ機能も発揮させることができる。なお、当該機能の詳細については後述する。
【0027】
弁抑部43は、頸部14の内周面に沿って設けられる立壁面43aと、立壁面43aの一端に連設される斜面壁43bとを備えている。立壁面43aには径方向外側に突出する係止爪部43cが設けられている。頸部14の内周面には、この係止爪部43cに対応する位置に径方向内側に突出する係止爪部18が設けられている。弁抑部43は頸部14の内周面に圧接されると共に、これらの係止爪部43c、18が互いに係り合うことでスリット弁抑え40が頸部14内の所定の位置に位置決めされて固定される。
【0028】
斜面壁43bは、
図2(a)に示すように、立壁面43aと、連結片42とに連結される。容器本体10を倒立姿勢にしたとき、容器本体10内に収容された粉体Pは斜面壁43bにより、容器本体10の胴部12の内径よりも縮径された口部11に案内される。
【0029】
次に、
図3及び
図4を参照しながら、本実施の形態の吐出容器100の使用方法について説明する。オーバーキャップ20を取り外して、容器本体10を倒立姿勢にすると、
図4(a)に示す状態となる。
図4(a)に示すように粉体Pは自重により落下し、上記のように抑壁面41や連結片42にぶつかりながら、連結片42の間の空隙を通過して、スリット弁部30の装着筒33内に移動する。そのため、装着筒33内に移動した粉体Pに粉体圧の影響により粉詰まりが発生するのを抑制することができる。さらに、粉体Pの流動性が低下している場合やだまが生じている場合、スリット弁抑え40を通過させることで粒子間の付着や凝集を解除して粉体Pをほぐすことができる。そのため、粉体Pは細かい粒子にほぐされて流動性が良好な状態で装着筒33内に移動する。
【0030】
この状態で指の腹等を凸部32の先端に当接させて、
図4(b)に示すように指の腹等により凸部32を容器本体10側に押し込むと、凸部32と共に頂板31の各スリット片が容器本体10側に移動し、上述のとおり、スリットS(S
1~S
4)が開く。このとき、
図3(a)、(b)において向かって右側に示すように頂板31の略中央に開口が形成される。当該開口を介して、容器本体10の口部11から粉体Pが指の腹等の上に移動する。指の腹等により計量空間Rの開口は閉塞される。そのため、計量空間R内には所定量以上の粉体Pが容器本体10側から移動することはできない。
【0031】
そして、
図4(c)に示すように、指の腹等を口部11から離間すると、凸部32に対する押圧が解除され、弾性復元力により頂板31及び凸部32が元の位置に戻り、スリットS(S
1~S
4)は閉鎖する。その状態が
図3(a)、(b)において向かって左側に示す状態である。その結果、所定量の粉体Pが指の腹等に付着する。そして、指の腹等に付着した粉体Pを肌等の所望の位置に塗布することができる。
【0032】
以上説明した上記実施の形態の吐出容器100によれば、容器本体10の口部11をスリット弁部30を構成する頂板31により閉塞し、頂板31に設けられた凸部32を容器本体10側に押し込むことで、頂板31に形成されたスリットS(S
1~S
4)が開くように構成されている。そのため、
図4に示したように指の腹等をスリット弁部30の口部側フランジ部35の上面35aを介して口部11に当てて、凸部32を容器本体10側に押し込むことで、粉体化粧料等の粉体Pを指の腹等に適量吐出させることができる。従って、従来のようにパフ等の塗布具を用いることなく、指の腹等を用いて、粉体Pを所望の箇所に塗布することができる。また、指等を容器本体10の内側に挿入せず、使用分のみ指等に付着させることができるため、内容物を衛生的に維持することができる。さらに、パフ等の塗布具を収容しないため、当該吐出容器100全体をコンパクトに構成することができる。
【0033】
また、上記実施の形態の吐出容器100では、スリット弁抑え40により、スリット弁部30の凸部32が容器本体10側に押し込まれたとき、スリット弁部30の容器本体10側への移動が抑制されているため、凸部32を容器本体10側に強く押し込んでもスリット弁部30が容器本体10内に陥没しないようにすることができる。
【0034】
さらに、上記実施の形態の吐出容器100ではスリット弁抑え40は抑壁面41を備えるため、スリット片が凸部32と共に容器本体10側に移動したときに、スリット片と共に容器本体10側に移動する粉体Pを抑壁面41により口部11側に押し戻すことができ、粉体Pを良好に吐出させることができる。
【0035】
そして、上記実施の形態の吐出容器100ではスリット弁抑え40が連結片42を備えているため、容器本体10を正立姿勢から倒立姿勢に変位させたときに、連結片42及び抑壁面41が設けられた箇所を通過して、連結片42の間の空隙から粉体Pを口部11側に移動させることで、スリット弁抑え40を「粉ふるい」のように機能させ、粉体Pの粉詰まりを防いで粉体Pを細かい粒子の状態で良好に吐出させることができる。より詳細に説明すると、粉体Pを吐出する際に、粉体Pを胴部12から内径の小さい口部11(装着筒33)内に移動させたときに、粉体圧によりブリッジやラットホールなどの現象が生じて粉詰まりが発生する場合がある。しかしながら、上記実施の形態の吐出容器100では上記スリット弁抑え40を介して、胴部12側から口部11側へ粉体Pを移動させるため、粒子間の凝集や付着を解除することができ、さらに抑壁面41もあるため装着筒33内の粉体Pが粉体圧がかかりすぎないようにすることができる。そのため、このような粉詰まりが発生するのを抑制することができる。また、使用しなかった期間に容器本体10内で粉体Pが粉体圧や、摩擦、或いは湿度の影響を受けて、粒子同士が凝集付着してだまが生じたり流動性が著しく低下する場合などがある。このような場合も、粉体Pを吐出させる際にスリット弁抑え40を通過させることで粉体Pをほぐして流動性を改善することができる。流動性の低下等が著しい場合などは、容器本体10を軸方向上下に複数回振るなどすることで、だまを小さくするとともに粉体Pの流動性を向上させることができる。そのため、上記実施の形態の吐出容器100によれば長期間にわたって粉体Pの固化なども防止することができ、粉体Pを良好に吐出させることができる。一方、スリット弁抑え40にこのような抑壁面41や連結片42を設けず、胴部12から直接口部11(装着筒33)側に粉体Pを移動させた場合、粉体Pの流動性が良好であっても上記のような粉詰まりが発生する場合がある。また、粉体Pの流動性が低下している場合やだまができている場合などに粉体PをスリットSを介して外部に吐出させることが困難になる。
【0036】
さらに、スリット弁抑え40は、抑壁面41及び連結片42が一体に構成されているため、部品点数及び組立工数を削減することができる。
【0037】
以上説明した上記実施の形態の吐出容器100は本発明の一態様に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、
図5(a)に示すように、上記スリット弁部30に代えて、頂板31の凸部32が設けられた面の裏面に、容器本体10側に突出する棒状の攪拌部58を設けたスリット弁部50を用いてもよい。なお、
図5(a)において、上記実施の形態と同様の構成については同じ符号を付している。
図5(a)に示すスリット弁部50を用いることで、凸部32が容器本体10側に押し込まれた際に、
図5(a)に向かって右側に示すように、攪拌部58もスリット片と共に弧を描くように移動する。その際に、スリット弁部30の装着筒33内の粉体P(
図5において図示略)が攪拌されてほぐされる。そのため、粉体Pが塊状になったときに、上記連結片42と攪拌部58とにより、より良好にほぐすことができる。
【0038】
さらに、上記実施の形態では、頂板31にスリットSを十字状に形成するものとしたが、スリットSの数や、スリットSの設け方等は特に限定されるものではない。例えば、
図5(b)に示すスリット弁部60のように、略円形の頂板31に対して中心角が約120度の扇形状のスリット片が形成されるように3本のスリットS(S
1~S
3)を設け、各スリット片に対して上記実施の形態と同様に凸部32を設けてもよい。なお、
図5(b)においても、上記実施の形態と同様の構成については同一の符号を付している。
【符号の説明】
【0039】
10 :容器本体
11 :口部
12 :胴部
13 :肩部
14 :頸部
15 :連設部
16 :底部キャップ
17 :係止凸部
18 :係止爪部
20 :オーバーキャップ
21 :天面
22 :内環壁部
23 :周壁
24 :係止凹部
30 :スリット弁部
31 :頂板
32 :凸部
33 :装着筒
34 :フランジ部(本体側フランジ部)
35 :フランジ部(口部側フランジ部)
35a:上面
36 :周壁部
41 :抑壁面
42 :連結片
43 :弁抑部
43a:立壁面
43b:斜面壁
43c:係止爪部
50 :スリット弁部
58 :攪拌部
60 :スリット弁部
100:吐出容器
O :中心軸
P :粉体
R :計量空間
S(S1~S4):スリット