(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ブリスター包装容器
(51)【国際特許分類】
B65D 75/36 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
B65D75/36
(21)【出願番号】P 2021108518
(22)【出願日】2021-06-30
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川上 正樹
(72)【発明者】
【氏名】田上 徹
(72)【発明者】
【氏名】定家 恵実
(72)【発明者】
【氏名】原 浩喜
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-066443(JP,A)
【文献】特開2020-66444(JP,A)
【文献】特開2019-073296(JP,A)
【文献】特開2009-107649(JP,A)
【文献】特開2008-68876(JP,A)
【文献】特開2000-177774(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0145567(US,A1)
【文献】中国特許第105764809(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 75/32-75/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーム状に膨出し、毛束構造が設けられたヘッド部、ネック部およびハンドル部が先端側から後端側に順次設けられた歯ブラシを収容する収容部を有する透明樹脂製の容器本体と、
前記収容部の開口側を閉鎖する板体と、を備えるブリスター包装容器であって、
前記収容部は、前記板体との間に前記歯ブラシを収容した前記容器本体が、前記ヘッド部が上側となる向きで吊り下げられたときに、前記ハンドル部の後端側端部に当接する当接部を有し、前記ハンドル部の前記後端側端部を収容する端部収容部を備え、
前記当接部は、後端側に向かうに従って前記板体に接近する向きに傾く接面部と、前記接面部と接線連続して繋がり、前記容器本体と前記板体との間に設けられて前記板体と略平行な前記容器本体の基板部から前記接面部に向かって前記板体側に凸となるように湾曲して立ち上がる立ち上がり部と、を有し、
前記接面部は、前記ハンドル部の長手方向と直交する仮想面S1に対する交差角度θ1が5度以上20度以下の仮想線L1と接し、
前記立ち上がり部は、前記基板部を通る前記板体と略平行な仮想線L2から前記接面部側に延びて、前記ハンドル部の長手方向と直交する仮想面S2に対する交差角度θ2が20度以上50度以下の仮想線L3と前記仮想線L2上で接すると共に、前記ハンドル部と直交する方向の高さh2が、前記端部収容部の厚み方向における上端部と前記仮想線L2との間の高さh1の20%以上60%以下の高さを有する、ブリスター包装容器。
【請求項2】
前記接面部は、前記後端側に凸の湾曲形状を有する湾曲部と、前記湾曲部と前記板体側に凸となるように湾曲して立ち上がる前記立ち上がり部との間で略直線状に延在する直線部と、で構成され、前記立ち上がり部と前記直線部とが接線連続して繋がるように構成される、請求項1記載のブリスター包装容器。
【請求項3】
前記接面部は、前記後端側に凸の湾曲形状を有する湾曲部のみで構成され、前記板体側に凸となるように湾曲して立ち上がる前記立ち上がり部と接線連続して繋がるように構成される、請求項1記載のブリスター包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリスター包装容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、歯ブラシを収容する包装容器として、歯ブラシが収容されるブリスター部分(収容部)がドーム状に膨出している容器本体と、収容部の開口部分を閉鎖する板体(台紙)と、を有するブリスター包装容器が知られている。
【0003】
この種のブリスター包装容器では、輸送中の落下や、店頭で金具などに吊り下げられた状態から取り外す際に誤って落としてしまうなどの事態により、落下衝撃を受けることがある。その際、収容部の底部は、歯ブラシにおけるハンドル部の後端部を介して落下衝撃を受けて亀裂を生じさせることが懸念されている。
【0004】
本出願人は、このような落下衝撃による収容部底部(端部収容部)に生じ得る亀裂を防止するため、下記特許文献1に開示されるブリスター包装容器を開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される容器は、容器落下時に歯ブラシの後端側端部と接触する当接部の面積を増加させ、当接部に加わる単位面積あたりの落下衝撃を板体に逃がすことにより、当接部に加わる衝撃を和らげている。これにより、特許文献1の容器は、不意の落下により受ける容器後端部への衝撃によって亀裂の発生を防止する効果を奏している。
【0007】
しかし、特許文献1の容器は、落下時における当接部への衝撃の一部を板体に逃がす構造を有しているため、収容部と板体との接合強度によっては、板体が収容部から剥離する虞があり、改善の余地がある。
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、具体的には、落下時の衝撃による容器本体の収容部底部の亀裂の発生を抑制しつつ、容器本体と板体との剥離を防止することができるブリスター包装容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態に係るブリスター包装容器は、ドーム状に膨出し、毛束構造が設けられたヘッド部、ネック部およびハンドル部が先端側から後端側に順次設けられた歯ブラシを収容する収容部を有する透明樹脂製の容器本体と、前記収容部の開口側を閉鎖する板体と、を備えるブリスター包装容器であって、前記収容部は、前記板体との間に前記歯ブラシを収容した前記容器本体が、前記ヘッド部が上側となる向きで吊り下げられたときに、前記ハンドル部の後端側端部に当接する当接部を有し、前記当接部は、後端側に向かうに従って前記板体に接近する向きに傾く接面部と、前記接面部と接線連続して繋がり、前記容器本体と前記板体との間に設けられて前記板体と略平行な前記容器本体の基板部から前記接面部に向かって前記板体側に凸となるように湾曲して立ち上がる立ち上がり部と、を有し、前記接面部は、前記ハンドル部の長手方向と直交する仮想面S1に対する交差角度θ1が5度以上20度以下の仮想線L1と接し、前記立ち上がり部は、前記基板部を通る前記板体と略平行な仮想線L2から前記接面部側に延びて、前記ハンドル部の長手方向と直交する仮想面S2に対する交差角度θ2が20度以上50度以下の仮想線L3と前記仮想線L2上で接すると共に、前記ハンドル部と直交する方向の高さh2が、前記端部収容部の厚み方向における上端部と前記仮想線L2との間の高さh1の20%以上60%以下の高さを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、不意の落下により落下衝撃を受けたとしても容器本体、特に端部収容部に対する亀裂の発生が抑制され、かつ容器本体からの板体の剥がれが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係るブリスター包装容器の分解斜視図である。
【
図3】同容器の端部収容部近傍の概略端面図である。
【
図4】同容器の端部収容部近傍の概略正面図である。
【
図5】変形例のブリスター包装容器の端部収容部近傍の概略端面図である。
【
図6A】実施例1のブリスター包装容器の概略側面図である。
【
図6B】実施例2のブリスター包装容器の概略側面図である。
【
図6C】実施例3のブリスター包装容器の概略側面図である。
【
図6D】実施例4のブリスター包装容器の概略側面図である。
【
図7A】比較例1のブリスター包装容器の概略側面図である。
【
図7B】比較例2のブリスター包装容器の概略側面図である。
【
図7C】比較例3のブリスター包装容器の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、実施例および運用技術などは全て本発明の範囲、要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0013】
さらに、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状などについて、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0014】
本実施形態では、ブリスター包装容器1(以下、単に「容器1」とも称する)の長手方向に沿う方向を「X方向」とし、X方向と直交する方向(すなわち、容器1の長手方向を直交する短手方向に沿う方向)を「Y方向」と称し、X方向およびY方向と交差する方向を「Z方向」と称する。したがって、例えば
図2において、X方向は、容器1の長手方向に沿う左右方向と一致し、Y方向は、容器1の短手方向に沿う手前・奥行き方向と一致し、Z方向は、容器1の高さ方向(厚さ方向)と一致する。また、「正面視」とは、Z方向において容器本体10を真上から見ること(すなわち、容器本体10側から板体20を見た状態)を意味し、「側面視」とは、Y方向において容器本体10を真横から見ること(すなわち、容器本体10の短手方向側から見た状態)を意味する。
【0015】
また、本実施形態において、容器1や歯ブラシ100の「先端」とは、例えば
図2の左側(すなわち、歯ブラシ100のヘッド部101側)であり、「後端」とは、例えば
図2の右側(すなわち、歯ブラシ100のハンドル部103側)である。
【0016】
なお、以下の説明において、「第1」、「第2」のような序数詞を付して説明する場合は、特に言及しない限り、便宜上用いるものであって何らかの順序を規定するものではない。
【0017】
図1または
図2に示すように、本実施形態に係るブリスター包装容器1は、収容物となる歯ブラシ100を収容する収容部11を備える容器本体10と、収容部11の開口側を閉鎖して容器本体10内の歯ブラシ100の収容状態を維持するための板体20と、を有する。
【0018】
ここで、容器1に収容される歯ブラシ100について説明する。なお、以下で説明する歯ブラシ100の構成は一例であって、歯ブラシ100の形状や構成を限定するものではない。
【0019】
歯ブラシ100は、概説すると、先端側に設けられ毛束を有する毛束構造104が設けられたヘッド部101と、ヘッド部101の後端側に設けられたネック部102と、ネック部102の後端側に設けられた主把持部103aおよび主把持部103aから基端側に延設される補助把持部103bとを有するハンドル部103と、で構成される。歯ブラシ100は、
図1に示すように、先端側から順にヘッド部101、ネック部102、ハンドル部103の主把持部103a、およびハンドル部103の補助把持部103bが一体に接続される。
【0020】
容器本体10は、歯ブラシ100を収容する収容部11と、正面視略矩形状の基板部12と、基板部12の外周端縁から全周に亘りZ方向に沿って下方に延びる側壁部13と、側壁部13の端部から外側に張り出すフランジ部14と、で構成される。基板部12とフランジ部14は、X-Y平面と略平行である。
【0021】
容器本体10の構成材料としては、例えばポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などが挙げられ、特に透明性に優れるポリエステル系樹脂のポリエチレンテレフタレート樹脂が好適に用いることができる。
【0022】
収容部11は、基板部12の端部からZ方向に沿って板体20側からドーム状に膨出する形状をなし、板体20と対向する側が開口している。収容部11は、開口する側から歯ブラシ100を収容する。歯ブラシ100は、収容する際、ヘッド部101の毛束構造104の先端(毛束の先端)が収容部11の内面と対向する姿勢で収容部11に収容される。
【0023】
収容部11は、ヘッド部101を収容するヘッド収容部31と、ネック部102を収容するネック収容部32と、ハンドル部103の後端側端部105を除いた領域を収容するハンドル収容部33と、ハンドル部103の後端側端部105を収容する端部収容部34と、を有している。
【0024】
ヘッド収容部31は、
図2に示すように、収容部11と板体20との間に歯ブラシ100が収容されたときに、その内面と毛束構造104の先端とがZ方向で離隔する高さを有する。ヘッド収容部31は、正面視におけるヘッド部101の外形輪郭よりも若干大きな外形輪郭で形成されている。ヘッド収容部31は、正面視において、ヘッド部101の基端側と当接する基端当接部を有する。基端当接部は、板体20との間に歯ブラシ100を収容した容器本体10を、ヘッド部101が上側となる向き(すなわち、X方向が鉛直方向となりヘッド部101側が上側となる向き)で吊り下げた際、ヘッド部101の基端側と当接する。
【0025】
ネック収容部32は、収容部11と板体20との間に歯ブラシ100が収容されたときに、その内面の少なくとも一部とネック部102との間がZ方向で離隔する高さを有する。
【0026】
収容部11と板体20との間に歯ブラシ100を収容したとき、側面視におけるネック部102とネック収容部32とのZ方向の間隙寸法は、毛束構造104の先端とヘッド収容部31とのZ方向の間隙寸法よりも小さく設定されている。また、収容部11と板体20との間に歯ブラシ100を収容したとき、正面視におけるネック部102とネック収容部32とのY方向の間隙寸法は、正面視におけるヘッド部101とヘッド収容部31とのY方向の間隙寸法よりも小さく設定されている。これにより、容器1は、ネック収容部32に対するネック部102のZ方向への移動およびY方向への移動が規制される。そのため、歯ブラシ100は、ヘッド部101がZ方向またはY方向に移動して毛束構造104がヘッド収容部31の内面と当接して変形するなどの不具合を抑制することができる。
【0027】
ハンドル収容部33は、ネック部102の後端側の一部と、ハンドル部103における後端側端部105を除いた領域と、を収容する。ハンドル収容部33のY方向の幅は、基板部12のY方向の幅と略同等である。
【0028】
図3は、容器1の端部収容部34の近傍を拡大した部分拡大図である。
図4は、容器1の端部収容部34の近傍を収容部11側から正面視した部分正面図である。
【0029】
図3または
図4に示すように、端部収容部34は、歯ブラシ100の後端側端部105を保持してハンドル部103の収容時の姿勢を保持する保持部341と、後端側端部105とX方向で当接する当接部342と、を有している。
【0030】
保持部341は、後端側端部105とZ方向で対向して配置され後端側端部105を上方から保持可能な第1保持部341aと、後端側端部105のY方向両側(後端側端部105の幅方向)に対向して配置され後端側端部105の両側部をY方向から保持可能な第2保持部341bと、を有している。保持部341は、第1保持部341aで歯ブラシ100を上方から保持(Z方向に沿って板体20側に保持)しつつ、第2保持部341bで歯ブラシ100を側方から保持(Y方向に沿って両側から保持)する。これにより、歯ブラシ100は、保持部341および板体20によりハンドル部103の後端側が保持され、収容部11内において一定の姿勢を保つことができる。
【0031】
図3に示すように、第1保持部341aは、X-Y平面と略平行に配置される。第1保持部341aと後端側端部105とのZ方向の間隙寸法は、ハンドル収容部33とハンドル部103とのZ方向の間隙寸法よりも小さい。また、第1保持部341aと後端側端部105とのZ方向の間隙寸法は、ネック部102とネック収容部32とのZ方向の間隙寸法と同等である。したがって、歯ブラシ100は、先端側においてネック部102がネック収容部32に小さな隙間でZ方向に保持され、後端側において後端側端部105が第1保持部341aに小さな隙間でZ方向に保持される。そのため、歯ブラシ100は、Z方向に位置決めされ、X方向に延在した状態で収容部11に収容される。
【0032】
第2保持部341bは、X-Z平面と略平行に後端側端部105をY方向から挟むように対をなして配置される。第2保持部341bのそれぞれと後端側端部105とのY方向の間隙寸法は、ハンドル収容部33とハンドル部103とのY方向の間隙寸法よりも小さい。また、第2保持部341bと後端側端部105とのY方向の間隙寸法は、ネック部102とネック収容部32とのY方向の間隙寸法と同等である。したがって、歯ブラシ100は、先端側においてネック部102がネック収容部32に小さな隙間でY方向に保持され、後端側において後端側端部105が第2保持部341bに小さな隙間でY方向に保持される。そのため、歯ブラシ100は、Y方向に位置決めされ、X方向に延在した状態で収容部11に収容される。
【0033】
当接部342は、第1保持部341aの後端から基板部12に向かって後端側に延在する。当接部342は、第1保持部341aの後端から板体20に向かって延在し後端側端部105と当接する接面部342aと、板体20側に凸となるように所定曲率で湾曲して基板部12から第1保持部341aの側に向かって立ち上がる立ち上がり部342bと、で構成される。
【0034】
接面部342aは、第1保持部341aの後端と、立ち上がり部342bの第1保持部341a側の端部との間に配置され、第1保持部341aと立ち上がり部342bと接線連続して繋がる。接面部342aは、後端側に向かうに従って板体20に接近する向きに傾いている。本実施形態では、接面部342aは、第1保持部341aの後端部から板体20に向かって所定曲率で湾曲して端部収容部34の後端側に凸となる湾曲部342aaと、この湾曲部342aaと立ち上がり部342bとの間で略直線状に延在する直線部342abと、で構成される。接面部342aは、直線部342abの領域が、第1保持部341aの後端部から後端側に向かうにつれて板体20に接近する方向に傾斜する略平面を形成する。
【0035】
接面部342aは、側面視(側端面視)において、ハンドル部103の長手方向と直交するY-Z平面と平行な面(仮想面S1)に対する交差角度θ1が5度以上20度以下の仮想線L1と接する。本実施形態において、仮想線L1は、接面部342aの直線部342abと接する。接面部342aの傾斜角度は、仮想線L1によって規定される。したがって、接面部342aの傾斜角度は、仮想面S1に対する仮想線L1の交差角度θ1に相当する。
【0036】
接面部342aは、傾斜角度が5度を下回ると、成形時の抜き勾配が小さ過ぎて金型から抜け難くなることによる成形不良が起こり得る。また、接面部342aは、傾斜角度が20度を上回ると、落下衝撃を板体20側に逃げる衝撃力が大きくなり、収容部11と板体20との接合強度によっては、容器本体10(特に、端部収容部34)から板体20が剥がれる虞がある。これに対し、接面部342aは、傾斜角度を5度以上20度以下の範囲に設定することにより、成形性を確保しつつ、容器本体10と板体20との剥がれを防止する効果を奏することができる。
【0037】
立ち上がり部342bは、板体20側に凸となるように基板部12から接面部342aに向かって所定曲率で湾曲しながら立ち上がる形状を有し、接面部342aと接線連続して繋がる。立ち上がり部342bは、側面視(側端面視)において、基板部12を通って板体20と略平行な仮想線L2から接面部342a側に延びて、ハンドル部103の長手方向と直交する仮想面S2に対する交差角度θ2が20度以上50度以下の仮想線L3と前記仮想線L2上で接する。ここで、仮想線L2は、基板部12の高さ位置と同じであって、側壁部13の+Z側の端部を通りつつ板体20と略平行に歯ブラシ100の先端に向かって延びる線である。仮想線L3は、立ち上がり部342bの湾曲部分と前記仮想線L2上で接する。立ち上がり部342bの傾斜角度は、仮想線L3によって規定される。したがって、立ち上がり部342bの傾斜角度は、仮想面S2に対する仮想線L3の交差角度θ2に相当する。
【0038】
立ち上がり部342bは、傾斜角度が20度を下回ると、クッション性が低くなり落下衝撃を受け止めることができず亀裂発生の原因となり得る。また、立ち上がり部342bは、傾斜角度が50度を上回ると、端部収容部34の長手方向に不必要に長くなり、容器1のサイズが大きくなって容器製造時のコストが嵩むという問題が生じ得る。これに対し、立ち上がり部342bは、傾斜角度を20度以上50度以下の範囲に設定することにより、落下衝撃を受け止める適度なクッション性が保持されると共に、容器1の収容部11が不必要に長くならず、製造コストが嵩むこともない。
【0039】
また、立ち上がり部342bは、ハンドル部103を直交する方向の高さh2が、端部収容部34の厚み方向における上端部(すなわち、端部収容部34の+Z方向端部と同じ高さに位置する第1保持部341a)と、基板部12を通って板体20と略平行な仮想線L2との間の高さh1を「1」としたときに、20%以上60%以下の高さ(0.2以上0.6以下)となる。ここで、立ち上がり部342bの高さh2が20%未満では、湾曲部分が短すぎてクッション性が小さくなってしまい、高さh2が60%を超えると、湾曲部分のRが大きくなり過ぎて(直線に近しくなる)クッション性が小さくなってしまうという問題が生じ得る。すなわち、立ち上がり部342bは、クッション性を発揮するためには、20%以上60%以下の高さに設定するのが好ましい。
【0040】
このように、当接部342は、「ハンドル部103の長手方向と直交するY-Z平面と平行な仮想面S1に対する交差角度θ1が5度以上20度以下の仮想線L1と接する接面部342a」と、「基板部12を通って板体20と略平行な仮想線L2から接面部342a側に延びて、ハンドル部103の長手方向と直交するY-Z平面と平行な仮想面S2に対する交差角度θ2が20度以上50度以下の仮想線L3と前記仮想線L2上で接し、かつハンドル部103と直交する方向の高さh2が、端部収容部34の厚み方向における上端部と仮想線L2との間の高さh1の20%以上60%以下の高さを有する立ち上がり部342b」と、で構成される。これにより、容器1は、不意の落下により落下衝撃を受けたとしても端部収容部34に対する亀裂の発生が抑制され、かつ容器本体10からの板体20の剥がれが抑制される。
【0041】
当接部342は、収容部11と板体20との間に歯ブラシ100を収容した容器本体10が、ヘッド部101が上側となる向き(すなわち、X方向が鉛直方向でヘッド部101側が上側となる向き)で吊り下げられたとき、少なくとも一部が後端側端部105と当接する。すなわち、本実施形態の容器1は、ヘッド部101が上側となる向きで吊り下げられたときに、ヘッド収容部31の基端当接部がヘッド部101の後端側(すなわち下側)から当接すると共に、当接部342の接面部342aが後端側端部105に後端側(すなわち下側)から当接する。
【0042】
板体20は、容器本体10と略同一の外形輪郭を有している。板体20は、容器本体10のフランジ部14と溶着、接着などによって固定(接合)される。板体20の構成材料は特には限定されないが、例えば各種の樹脂製シートや紙材をシート基材とするシートを用いることができる。シート基材が紙材である場合、例えば、紙のみからなる厚紙や、紙製シートに各種樹脂をコーティングまたは樹脂製シートや蒸着シートを張り合わせた合成紙などが一例として挙げられる。
【0043】
[変形例]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下に示すように、使用環境などに応じて適宜変更して実施することもできる。なお、以下に説明する変形例は、上述した実施形態と同一の機能を有する構成要件について同一の符号を付して詳細な説明を省略する。また、変形例において、特に言及しない構成、部材などについては、上述した実施形態と同様のものとしてよい。
【0044】
上述した本実施形態に係るブリスター包装容器1において、接面部342aは、第1保持部341aの後端部から板体20に向かって所定曲率で端部収容部34の後端側に凸となる湾曲する湾曲部342aaと、この湾曲部342aaと立ち上がり部342bとの間で略直線状に延在する直線部342abと、を有する構成であった。
【0045】
これに対し、変形例のブリスター包装容器1Aの接面部342aは、
図5に示すように、湾曲部342aaのみで構成し、接面部342aと立ち上がり部342bが接線連続して繋がる構成となる。上述した実施形態に係る容器1と変形例に係る容器1Aとは、当接部342の構成が相違する。したがって、変形例の容器1Aの当接部342は、ハンドル部103の後端側に凸の湾曲形状を有する接面部342aと、板体20側に凸の湾曲形状を有する立ち上がり部342bとで構成される。
【0046】
また、変形例の容器1Aにおいて、接面部342aは、
図5に示すように、上述した実施形態と同様、ハンドル部103の長手方向と直交するY-Z平面と平行な仮想面Sに対する交差角度θ1が5度以上20度以下の仮想線L1と接する。なお、立ち上がり部342bの傾斜角度および立ち上がり部342bの高さh2については、上述した実施形態と同様である。
【0047】
このように、変形例の容器1Aは、当接部342の構成が上述した実施形態と異なるが、上述した容器1と同様の効果を奏する。すなわち、変形例の容器1は、不意の落下により落下衝撃を受けたとしても端部収容部34に対する亀裂の発生が抑制され、かつ容器本体10からの板体20の剥がれが抑制される。
【0048】
[作用効果]
以上説明したように、本実施形態に係る容器1は、ドーム状に膨出し、毛束構造104が設けられたヘッド部101、ネック部102およびハンドル部103が先端側から後端側に順次設けられた歯ブラシ100を収容する収容部11を有する透明樹脂製の容器本体10と、収容部11の開口側を閉鎖する板体20と、を備えるブリスター包装容器1である。このブリスター包装容器1において、収容部11は、板体20との間に歯ブラシ100を収容した容器本体10が、ヘッド部101が上側となる向きで吊り下げられたときに、ハンドル部103の後端側端部105に当接する当接部342を有する。当接部342は、後端側に向かうに従って板体20に接近する向きに傾く接面部342aと、接面部342aと接線連続して繋がり、容器本体10と板体20との間に設けられて板体20と略平行な容器本体10の基板部12から接面部342aに向かって板体20側に凸となるように湾曲して立ち上がる立ち上がり部342bと、を有する。接面部342aは、ハンドル部103の長手方向と直交する仮想面Sに対する交差角度θ1が5度以上20度以下の仮想線L1と接する。立ち上がり部342bは、基板部12を通って板体20と略平行な仮想線L2から接面部342a側に延びて、ハンドル部103の長手方向と直交する仮想面S2に対する交差角度θ2が20度以上50度以下の仮想線L3と前記仮想線L2上で接すると共に、ハンドル部103と直交する方向の高さh2が、端部収容部34の厚み方向における上端部と仮想線L2との間の高さh1の20%以上60%以下の高さを有する。
【0049】
また、接面部342aは、後端側に凸の湾曲形状を有する湾曲部342aaと、湾曲部342aaと立ち上がり部342bとの間で略直線状に延在する直線部342abと、で構成され、立ち上がり部342bと直線部342abとが接線連続して繋がるように構成されてもよい。
【0050】
また、接面部342aは、後端側に凸の湾曲形状を有する湾曲部342aaのみで構成され、立ち上がり部342bと接線連続して繋がるように構成されてもよい。
【0051】
このような構成により、容器1は、不意の落下により落下衝撃を受けたとしても端部収容部34に対する亀裂の発生が抑制され、かつ容器本体10からの板体20の剥がれが抑制される。また、接面部342aは、交差角度θ1に相当する傾斜角度を5度以上20度以下の範囲に設定することにより、容器本体10と板体20との剥がれを防止する効果を奏することができる。また、立ち上がり部342bは、交差角度θ2に相当する傾斜角度を20度以上50度以下の範囲に設定することにより、落下衝撃を受け止める適度なクッション性が保持されるため、落下衝撃による亀裂の発生を防止すると共に、容器1の不必要に長くならず、製造コストが嵩むこともない。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。
【0053】
表1は、本実施形態に係るブリスター包装容器(実施例1~実施例4)と従来品を含む比較対象(比較例1~比較例3)となるブリスター包装容器の評価試験を行った結果を示す。
【0054】
【0055】
[試験概要]
評価試験では、有限要素法解析ソフトウェア(ANSYS社製のLS-DYNA)を用いて落下衝撃時に生じる応力(板体に生じる応力および端部収容部に生じる応力)をシミュレーションした。
【0056】
評価試験において、「板体の剥がれ難さ」は、板体が受ける最大応力に基づき評価し、該応力が130MPa以下であれば板体の容器本体からの剥離が防止されると評価した。また、「端部収容部の亀裂発生し難さ」は、端部収容部が受ける最大応力に基づき評価し、該応力が160MPa以下であれば端部収容部に亀裂が発生し難いと評価した。
【0057】
また、実施例1、比較例1については、容器6個入りの内装箱10箱を充填したダンボールを5℃の低温環境下で24時間放置後、20cmの高さから正位(
図2におけるX方向が鉛直方向でヘッド部101側が上側となる姿勢)で2回落下させた際の板体の剥がれの発生した容器数を測定する落下試験を実施した。
【0058】
<サンプルについて>
実施例1~実施例4、比較例1~比較例3の各サンプルは、下記表1に基づく仕様(交差角度θ1、交差角度θ2、高さh2)に基づき作製した。
図6A~
図6Dには、実施例1~実施例4の各サンプルの端部収容部近傍の概略側面図が示されており、
図7A~
図7Cには、比較例1~比較例3の各サンプルの端部収容部近傍の概略側面図が示されている。
【0059】
図6Aに示す実施例1は、立ち上がり部の傾斜角度を「25度」、接面部の傾斜角度を「8度」、立ち上がり部の高さh2を「0.4」とした。
図6Bに示す実施例2は、立ち上がり部の傾斜角度を「20度」、接面部の傾斜角度を「5度」、立ち上がり部の高さh2を「0.4」とした。
図6Cに示す実施例3は、立ち上がり部の傾斜角度を「50度」、接面部の傾斜角度を「20度」、立ち上がり部の高さh2を「0.2」とした。
図6Dに示す実施例4は、立ち上がり部の傾斜角度を「35度」、接面部の傾斜角度を「8度」、立ち上がり部の高さh2を「0.6」とした。また、
図7Aに示す比較例1は、立ち上がり部の傾斜角度を「35度」、接面部の傾斜角度を「35度」、立ち上がり部の高さh2を「0」とした。
図7Bに示す比較例2は、立ち上がり部の傾斜角度を「5度」、接面部の傾斜角度を「5度」、立ち上がり部の高さh2を「0」とした。
図7Cに示す比較例3は、立ち上がり部の傾斜角度を「90度」、接面部の傾斜角度を「5度」、立ち上がり部の高さh2を「0.1」とした。また、実施例1の接面部は、湾曲部のみで構成され、実施例2~実施例4の接面部は、湾曲部と直線部で構成される。
【0060】
なお、下記表1において、「接面部の傾斜角度」は、仮想面S1に対する仮想線L1の交差角度θ1に相当し、「立ち上がり部の傾斜角度」は、仮想面S2に対する仮想線L3の交差角度θ2に相当する。また、「立ち上がり部の高さ」は、歯ブラシのハンドル部と直交する方向の高さであって端部収容部34の厚み方向における上端部と仮想線L2との間の高さh1を「1」としたときの相対値を示している。
【0061】
[結果]
表1に示すように、実施例1~実施例4は、「接面部342aが、ハンドル部103の長手方向と直交する仮想面Sに対する交差角度θ1が5度以上20度以下の仮想線L1と接すること(条件1)」、および「立ち上がり部342bが、ハンドル部103の長手方向と直交する仮想面S2に対する交差角度θ2が20度以上50度以下の仮想線L3と前記仮想線L2上で接し、かつハンドル部103と直交する方向の高さh2が、端部収容部34の厚み方向における上端部と仮想線L2との間の高さh1の20%以上60%以下の高さを有すること(条件2)」、を満たしている。そのため、実施例1~実施例4は、板体が受ける最大応力が130MPaを下回り、かつ端部収容部が受ける最大応力が160MPaを下回った。これに対し、比較例1は、条件1を満たしておらず、板体が受ける最大応力が130MPaを上回った。また、比較例2と比較例3は、共に条件2を満たしておらず、端部収容部が受ける最大応力が160MPaを上回った。
【0062】
また、表1に示すように、実施例1は、落下試験の際に全ての容器(0/60)で板体の剥がれは確認されなかった。その一方、比較例1は、半数の容器(30/60)で板体の剥がれが確認された。
【0063】
以上のことから、ブリスター包装容器は、上記条件1、条件2を満たすことにより、落下時に容器本体から板体が剥離するのを抑制しつつ、落下衝撃による端部収容部の亀裂の発生を抑制できると言える。
【符号の説明】
【0064】
1、1A ブリスター包装容器、
10 容器本体、
11 収容部、
12 基板部、
13 側壁部、
14 フランジ部、
20 板体、
31 ヘッド収容部、
32 ネック収容部、
33 ハンドル収容部、
34 端部収容部、
100 歯ブラシ、
101 ヘッド部、
102 ネック部、
103 ハンドル部(103a 主把持部、103b 補助把持部)、
104 毛束構造、
105 後端側端部、
341 保持部(341a 第1保持部、341b 第2保持部)、
342 当接部(342a 接面部(342aa 湾曲部、342ab 直線部)、342b 立ち上がり部)、
L1、L2 仮想線、
S1、S2 仮想面。