(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/508 20060101AFI20241002BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20241002BHJP
F16F 9/348 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
F16F9/508
F16F9/32 L
F16F9/348
(21)【出願番号】P 2021119293
(22)【出願日】2021-07-20
【審査請求日】2024-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】安井 剛
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-202745(JP,A)
【文献】特開平10-47412(JP,A)
【文献】特開平8-177932(JP,A)
【文献】特開2015-137677(JP,A)
【文献】特開2009-299768(JP,A)
【文献】特開2004-239286(JP,A)
【文献】国際公開第2018/054601(WO,A1)
【文献】特開2018-76920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/32 - 9/348
F16F 9/508
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を備え、外周を自由端として撓みが許容される環状弁体と、
環状で外径が前記環状弁体の外径よりも小径であって、前記環状弁体に積層されて前記環状弁体の自由端の撓みの支点となる間座と、
前記環状弁体の間座側に軸方向で対向して前記環状弁体が撓んで当接すると前記環状弁体の撓みを規制するバルブストッパとを備え、
前記バルブストッパは、
環状であって軸方向の肉厚が前記間座の肉厚よりも薄く、前記間座の外周に配置されるリングと、
環状であって外径が前記リングの外径よりも大径であって、前記間座に積層される積層環状板とを含む
ことを特徴とするバルブ。
【請求項2】
弾性を備え、内周を自由端として撓みが許容される環状弁体と、
環状で内径が前記環状弁体の内径よりも大径であって、前記環状弁体に積層されて前記環状弁体の自由端の撓みの支点となる間座と、
前記環状弁体の間座側に軸方向で対向して前記環状弁体が撓んで当接すると前記環状弁体の撓みを規制するバルブストッパとを備え、
前記バルブストッパは、
環状であって軸方向の肉厚が前記間座の肉厚よりも薄く、前記間座の内周に配置されるリングと、
環状であって内径が前記リングの内径よりも小径であって、前記間座に積層される積層環状板とを含む
ことを特徴とするバルブ。
【請求項3】
前記積層環状板は、外径が異なり反間座側に向かうと段階的に外径が漸増するように積層される複数の環状板を含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載のバルブ。
【請求項4】
前記リングは、前記積層環状板の前記間座に当接する前記環状板に固定される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項5】
前記リングは、前記間座の外周に嵌合されて径方向に位置決めされる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項6】
環状であって、前記環状弁体の自由端との間に環状隙間を開けて対向する環状対向部を備え、
前記間座と前記バルブストッパは、前記環状弁体の軸方向の両側にそれぞれ設けられる
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項7】
アウターチューブと、前記アウターチューブ内に移動可能に挿入されるロッドとを有して伸縮可能な緩衝器本体と、
前記緩衝器本体内に設けられた二つの作動室を連通する減衰通路と、
前記減衰通路に設けられた請求項1から6のいずれか一項に記載のバルブとを備えた
ことを特徴とする緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バルブは、例えば、緩衝器の伸縮時に生じる液体の流れに抵抗を与えて減衰力を発生するのに利用されている。また、そのようなバルブの中には、内周と外周の一方をバルブケースに固定される固定端、他方を軸方向の両側へ動ける自由端とする環状の弁体と、弁体の自由端の外周または内周に対向して液体の通過を許容する隙間を形成する環状対向部とを備えたものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
このように構成されたバルブによれば、緩衝器の伸縮速度(ピストン速度)が低く、弁体が撓まない速度領域では、弁体の自由端の外周または内周にできる隙間が狭い状態に維持される。他方、緩衝器のピストン速度が上昇して弁体の自由端側の端部が撓むと、その自由端の外周または内周にできる隙間が広くなる。
【0004】
よって、前述のバルブを減衰力の発生に利用した緩衝器では、伸縮速度が低速よりも低い微低速域では減衰係数を高くして減衰力を伸縮速度に比例させて速やかに立ち上げ、低速域では減衰係数を微低速域よりも小さくでき、車両に乗心地の向上に適した減衰力特性を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のバルブでは、弁体の軸方向の両側にそれぞれバルブストッパを備えており、弁体が撓んだ際に弁体を支持して弁体の過剰な撓みを規制して弁体に大きな応力が作用するのを防止している。
【0007】
バルブストッパは、肉厚が極薄い小径の間座を介して弁体に積層されており、外径の異なる二つのストッパ部材を備えて構成されている。ストッパ部材のうち弁体側に配置される弁体側ストッパ部材における外径は、反弁体側に配置される反弁体側ストッパ部材における外径よりも小さい。よって、弁体が撓んだ際に、弁体は、間座の外縁、弁体側ストッパ部材の外縁および反弁体側ストッパ部材の外縁に当接して弁体の断面が緩やかな円弧状を描く姿勢で支持されて、それ以上の弁体の撓みが規制される。
【0008】
これに対して、特開平2-76937号公報に開示されたバルブでは、
図9に示すように、肉厚が厚い間座800で環状弁体801の内周を固定しており、環状弁体801の撓みを規制するバルブストッパ802の外径も一定となっている。この特開平2-76937号公報に開示されたバルブによると、圧力を受けて環状弁体801が撓んだ際に環状弁体801の径方向の中間部分が何ら支持されない。そのため、圧力によって環状弁体801は、うねるように変形して、間座800で支持されていない部分で急激に湾曲して中間部分から外周がバルブストッパ802に当接するため、過大な応力が負荷されてしまう。このように、従来のバルブでは、弁体が径の異なる間座およびストッパ部によって支持されるので、弁体の断面がうねるような変形が阻止されるため、弁体に作用する応力を低減して弁体の耐久性を向上できる。
【0009】
従来のバルブでは、環状弁体のうねり変形の防止のため、前述したように、肉厚が極薄い間座を必要としているが、バルブを組み立てる際に、間座が収められている箱から間座を取り出す際に間座同士が張り付いてしまってバルブに必要な枚数の間座を取り出すことが難しく、従来のバルブの組立は作業者に対して大きな負担を強いている。
【0010】
また、間座を極薄くすると、間座が専用品となってしまい、他のバルブへ利用できなくなって流通量が減少して高価になることから、バルブの製造コストが嵩んでしまう。
【0011】
そこで、本発明は、安価で組立性の良好なバルブおよび緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明のバルブは、弾性を備えて外周を自由端として撓みが許容される環状弁体と、環状で外径が環状弁体の外径よりも小径であって環状弁体に積層されて環状弁体の自由端の撓みの支点となる間座と、環状弁体の間座側に軸方向で対向して環状弁体が撓んで当接すると環状弁体の撓みを規制するバルブストッパとを備え、バルブストッパは、環状であって軸方向の肉厚が間座の肉厚よりも薄く、間座の外周に配置されるリングと、環状であって外径がリングの外径よりも大径であって、間座に積層される積層環状板とを含むことを特徴とする。
【0013】
また、上記課題を解決するため、本発明の他のバルブは、弾性を備えて内周を自由端として撓みが許容される環状弁体と、環状で内径が環状弁体の内径よりも大径であって環状弁体に積層されて環状弁体の自由端の撓みの支点となる間座と、環状弁体の間座側に軸方向で対向して環状弁体が撓んで当接すると環状弁体の撓みを規制するバルブストッパとを備え、バルブストッパは、環状であって軸方向の肉厚が間座の肉厚よりも薄く、間座の内周に配置されるリングと、環状であって内径がリングの内径よりも小径であって、間座に積層される積層環状板とを含むことを特徴とする。
【0014】
このように構成されたバルブによれば、バルブストッパが間座の外縁を支点として弓なりに撓む環状弁体における撓み量が少ない間座の至近を間座の肉厚よりも薄い肉厚を持つリングで支持し、撓み量が多くなる環状弁体の外周側については反間座側に向かうと段階的に外径が漸増する積層環状板で支持するので、環状弁体のうねり変形を防止するために特殊な極薄肉の間座を用いる必要がなくなる。
【0015】
また、バルブにおける積層環状板は、外径が異なり反間座側に向かうと段階的に外径が漸増するように積層される複数の環状板を含んでいると、リング以外にも複数の支持点を設けて、支持点間に大きな間隔を開けずにすむため、環状弁体の内周から外周までを満遍なく支持して環状弁体のうねり変形を効果的に防止でき耐久性を効果的に向上できるとともに、過剰板の積層枚数によって支持点数を簡単に変更できる。
【0016】
さらに、バルブにおけるリングは、積層環状板の間座に当接する環状板に固定されてもよく、このように構成されたバルブによれば、リングを予め環状板に固定して組み立てることができるので、バルブの組立性が向上するとともに、リングを狙い通りの位置に位置決めできるので、撓んだ環状弁体を理想的な位置で支持でき環状弁体の応力を効果的に軽減できる。
【0017】
また、バルブにおけるリングは、間座の外周に嵌合されて径方向に位置決めされてもよく、このように構成されたバルブによれば、リングを環状板に固定する加工が不要となり加工工数を削減できるとともに、リングの環状板からの脱落によって環状弁体の支持位置が変化するといった心配がない。
【0018】
さらに、バルブは、環状であって環状弁体の自由端との間に環状隙間を開けて対向する環状対向部を備え、間座とバルブストッパが環状弁体の軸方向の両側にそれぞれ設けられてもよい。このように構成されたバルブによれば、緩衝器の伸縮速度が微低速域にある場合に減衰係数を非常に大きくして、伸縮速度の増加に対して大きく立ち上がる減衰力特性を緩衝器に発揮させて車両における乗心地を向上できる。また、このように構成されたバルブによれば、環状弁体の外径の大きさで環状隙間の開口面積の調整できるから、外径の異なる環状弁体の付け替えによって減衰力特性を容易に調整できる。
【0019】
そして、さらに、緩衝器は、アウターチューブと、アウターチューブ内に移動可能に挿入されるロッドとを有して伸縮可能な緩衝器本体と、緩衝器本体内に設けられた二つの作動室を連通する減衰通路と、減衰通路に設けられたバルブとを備えてもよい。このように構成された緩衝器では、安価となり組立性を向上できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のバルブおよび緩衝器によれば、安価で組立性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施の形態のバルブを備えた緩衝器の縦断面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態のバルブの断面図である。
【
図4】本発明の一実施の形態のバルブを備えた緩衝器の減衰力特性を示した図である。
【
図5】本発明の一実施の形態の第1変形例のバルブの断面図である。
【
図6】本発明の一実施の形態の第2変形例のバルブの断面図である。
【
図7】本発明の一実施の形態の第3変形例のバルブの断面図である。
【
図8】本発明の他の形態の形態のバルブの断面図である。
【
図9】従来技術におけるバルブの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。
図1および
図2に示すように、第1の実施の形態における緩衝器Dは、アウターチューブとしてのシリンダ1と、シリンダ1内に移動可能に挿入されるロッド2とを有して伸縮可能な緩衝器本体Aと、緩衝器本体A内に設けられる二つの作動室としての伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路DPと、減衰通路DPに設けられたバルブVとを備えている。そして、この緩衝器Dの場合、図示しない車両における車体と車軸との間に介装されて使用され、車体および車輪の振動を抑制する。
【0023】
以下、緩衝器Dの各部について詳細に説明する。
図1に示すように、緩衝器本体Aは、アウターチューブとしての有底筒状のシリンダ1と、シリンダ1内に移動可能に挿入されるロッド2と、ロッド2に連結されてシリンダ1内に移動可能に挿入されるとともにシリンダ1内を作動室としての伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3とを備えている。
【0024】
そして、ロッド2の
図1中上端となる基端には、ブラケット(図示せず)が設けられており、ロッド2が図外の前記ブラケットを介して車体と車軸の一方に連結される。また、シリンダ1の底部1aにもブラケット(図示せず)が設けられており、シリンダ1が図外の前記ブラケットを介して車体と車軸の他方に連結される。
【0025】
このようにして緩衝器Dは車体と車軸との間に介装される。そして、車両が凹凸のある路面を走行する等して車輪が車体に対して上下に振動すると、ロッド2がシリンダ1に出入りして緩衝器Dが伸縮するとともに、ピストン3がシリンダ1内を上下(軸方向)に移動する。
【0026】
また、緩衝器本体Aは、シリンダ1の上端を塞ぐとともに、内周にロッド2が摺動自在に挿通される環状のロッドガイド10を備えている。よって、シリンダ1内は、密閉空間とされている。そして、そのシリンダ1内のピストン3から見てロッド2とは反対側に、フリーピストン11が摺動自在に挿入されている。
【0027】
シリンダ1内におけるフリーピストン11の上側には液室Lが形成され、下側にはガス室Gが形成されている。さらに、液室Lは、ピストン3でロッド2側の伸側室R1とピストン3側の圧側室R2とに区画されており、伸側室R1と圧側室R2には、それぞれ液体が充填されている。なお、緩衝器本体A内に充填される液体は、作動油や水、水溶液、その他の液体等とされてもよい。その一方、ガス室Gには、エア、または窒素ガス等の気体が圧縮された状態で封入されている。
【0028】
そして、緩衝器Dの伸長時にロッド2がシリンダ1から退出し、その退出したロッド2の体積分シリンダ内容積が増加すると、フリーピストン11がシリンダ1内を上側へ移動してガス室Gを拡大させる。反対に、緩衝器Dの収縮時にロッド2がシリンダ1内へ侵入し、その侵入したロッド2の体積分シリンダ内容積が減少すると、フリーピストン11がシリンダ1内を下側へ移動してガス室Gを縮小させる。
【0029】
なお、フリーピストン11に替えて、ブラダ、またはベローズ等を利用して液室Lとガス室Gとを仕切っていてもよく、この仕切となる可動隔壁の構成は適宜変更できる。
【0030】
さらに、本実施の形態では、緩衝器Dが片ロッド、単筒型の緩衝器であり、緩衝器Dの伸縮時にフリーピストン(可動隔壁)11でガス室Gを拡大または縮小させて、シリンダ1に出入りするロッド2の体積補償をする。しかし、この体積補償のための構成も適宜変更できる。
【0031】
たとえば、フリーピストン(可動隔壁)11とガス室Gとを廃し、シリンダ1の外周にアウターシェルを設けるとともに、シリンダ1とアウターシェルとの間に液体を貯留するリザーバを形成して、緩衝器を複筒型緩衝器とする場合、リザーバによってシリンダ1に出入りするロッド2の体積補償をしてもよい。なお、リザーバは、シリンダ1とは別置き型のタンク内に形成されていてもよい。また、緩衝器Dは、ロッド2の中央にピストン3が装着されてシリンダ1の両端からロッド2の端部がシリンダ1外に突出する両ロッド型の緩衝器として構成されてもよい。
【0032】
ロッド2は、先端側に設けた小径部2aと、小径部2aより
図2中上側の大径部2bとの境に設けられた段部2cと、小径部2aの先端外周に設けられた螺子部2dとを備えている。
【0033】
つづいて、ピストン3は、環状であってロッド2の小径部2aの外周に嵌合されており、ロッド2の螺子部2dに螺着されるピストンナット18によってロッド2に固定されている。より詳細には、ピストン3は、環状の本体部3aと、本体部3aの
図2中下端の外周に設けられた筒部3bと、本体部3aの同一円周上に設けられて本体部3aを軸方向に貫く複数の伸側ポート3cと、本体部3aの前記伸側ポート3cよりも外周側の同一円周上に設けられて本体部3aを軸方向に貫く複数の圧側ポート3dと、本体部3aの
図2中下端の伸側ポート3cと圧側ポート3dとの間に設けられて伸側ポート3cを取り囲む環状の伸側弁座3eと、本体部3aの
図2中上端に設けられて伸側ポート3cを避けて圧側ポート3dの開口のみをそれぞれ個別に取り囲む花弁型の圧側弁座3fとを備えて構成されている。
【0034】
戻って、ピストン3の
図2中下面には、ロッド2の小径部2aに内周側が固定されて伸側ポート3cを開閉する積層リーフバルブでなる伸側リーフバルブ4、伸側リーフバルブ4の撓みの支点の位置を設定する環状であって伸側リーフバルブ4より外径が小径な間座5が重ねられている。さらに、間座5の下方には、ロッド2の小径部2aに内周が固定される環状のバルブケース6、環状のスペーサ12、環状のバルブストッパ13、間座16、環状弁体14、間座17および環状のバルブストッパ15が重ねられる。
【0035】
また、ピストン3の
図2中上面には、ロッド2の小径部2aに内周側が固定されて圧側ポート3dを開閉する積層リーフバルブでなる圧側リーフバルブ7、圧側リーフバルブ7の撓みの支点の位置を設定する環状であって圧側リーフバルブ7より外径が小径な間座8およびストッパ9が重ねられている。
【0036】
これらのストッパ9、間座8、圧側リーフバルブ7、ピストン3、伸側リーフバルブ4、間座5、バルブケース6、スペーサ12、バルブストッパ13、間座16、環状弁体14、間座17およびバルブストッパ15は、順にロッド2の小径部2aの外周に組み付けられた後、ロッド2の先端の螺子部2dに螺着されるピストンナット18とロッド2の段部2cとで挟持されてロッド2に固定される。
【0037】
伸側リーフバルブ4は、複数の環状板を積層して構成された積層リーフバルブであって、内周が前述の通りロッド2に固定されてピストン3の
図2中下端に積層されてピストン3の伸側弁座3eに着座している。伸側リーフバルブ4を構成するリーフバルブのうち、
図2中で最上方に積層されて伸側弁座3eに着座するリーフバルブの外周には切欠オリフィス4aが設けられている。よって、伸側リーフバルブ4は、伸側弁座3eに着座した状態では伸側弁座3eにより取り囲まれている伸側ポート3cを切欠オリフィス4aのみを介して圧側室R2に連通させる。
【0038】
そして、伸側リーフバルブ4は、伸側ポート側面を正面とすると、伸側ポート3cを介して正面側に作用する伸側室R1の圧力と背面側に作用する圧側室R2との差圧が開弁圧に達すると外周を撓ませて伸側弁座3eから離間する。伸側リーフバルブ4は、伸側弁座3eから離間すると伸側弁座3eとの間に環状の隙間を形成し、当該隙間を介して伸側ポート3cを圧側室R2に連通させて伸側ポート3cを通過する液体の流れに抵抗を与える。本実施の形態の緩衝器Dでは、伸側リーフバルブ4は、緩衝器Dの伸長速度が高速域にある場合に開いて、伸側ポート3cを伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与える。また、伸側リーフバルブ4は、伸側ポート3cを伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定している。
【0039】
また、伸側リーフバルブ4の内周が当接する本体部3aの当接面より伸側弁座3eの方が
図2中下方へ突出していて、両者の高さに差(高低差)が設けられていて、伸側リーフバルブ4は、ピストン3に重ねられてロッド2の外周に内周側が固定されると前記高低差によって外周が撓む。このように伸側リーフバルブ4には、予め初期撓みが与えられて伸側弁座3eに自身が発揮する弾発力で自身を押し付けている。よって、伸側室R1と圧側室R2との差圧による伸側リーフバルブ4を撓ませる力が前述の弾発力による押し付け力に打ち勝つようになるまで伸側リーフバルブ4は開弁せず、この開弁時の差圧が伸側リーフバルブ4の開弁圧となる。よって、伸側リーフバルブ4の開弁圧は、伸側リーフバルブ4の撓み剛性と伸側リーフバルブ4に与える初期撓み量によって調整できる。
【0040】
他方の圧側リーフバルブ7は、複数の環状板を積層して構成された積層リーフバルブであって、内周が前述の通りロッド2に固定されてピストン3の
図2中上端に積層されてピストン3の圧側弁座3fに着座している。圧側リーフバルブ7は、圧側弁座3fに着座した状態では圧側弁座3fにより取り囲まれている圧側ポート3dのみを閉塞するが、伸側ポート3cの入口については閉塞しない。そして、圧側リーフバルブ7は、圧側ポート側面を正面とすると、圧側ポート3dを介して正面側に作用する圧側室R2の圧力と背面側に作用する伸側室R1との差圧が開弁圧となる第一差圧に達すると外周を撓ませて圧側弁座3fから離間して圧側ポート3dを開放し、圧側ポート3dを通過する液体の流れに抵抗を与える。本実施の形態の緩衝器Dでは、圧側リーフバルブ7は、緩衝器Dの伸長速度が高速域にある場合に開いて、圧側ポート3dを圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れに抵抗を与える。また、圧側リーフバルブ7は、圧側ポート3dを圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定している。なお、圧側リーフバルブ7の開弁圧は、伸側リーフバルブ4と同様に、圧側リーフバルブ7の撓み剛性と圧側リーフバルブ7に与える初期撓み量によって調整できる。なお、伸側リーフバルブ4における切欠オリフィス4aに代えて、或いは、切欠オリフィス4aに加えて、圧側リーフバルブ7を構成する積層リーフバルブのうち圧側弁座3fに着座するリーフバルブの外周に切欠オリフィスを設けてもよいし、圧側弁座3fに切欠或いは打刻によって形成されるオリフィスを設けてもよい。
【0041】
なお、伸側リーフバルブ4および圧側リーフバルブ7は、複数枚の環状板を積層して構成される積層リーフバルブとされているが、環状板の積層枚数は緩衝器Dに発生させた減衰力に応じて任意に変更でき、1枚の環状板のみで構成されるリーフバルブとされてもよい。また、伸側リーフバルブ4および圧側リーフバルブ7は、リーフバルブ或いは積層リーフバルブ以外の構成のバルブとされてもよいが、薄い環状板を用いたリーフバルブ或いは積層リーフバルブとされることで緩衝器Dのピストン部の全長が長くならず緩衝器Dのストローク長を確保しやすくなるという利点を享受できる。
【0042】
また、伸側リーフバルブ4および圧側リーフバルブ7は、間座5,8によって内周が支持されていて、間座5,8によって支持されていない外周側の撓みが許容される。よって、間座5,8の外径の設定によって、伸側リーフバルブ4および圧側リーフバルブ7の撓みの支点の位置を変更できる。なお、間座5、8は、複数枚の環状のワッシャで構成されてもよい。
【0043】
ストッパ9は、圧側リーフバルブ7が大きく撓んだ際に圧側リーフバルブ7の外周に当接して圧側リーフバルブ7のそれ以上の撓みを規制して圧側リーフバルブ7を保護する。
【0044】
つづいて、バルブVは、ロッド2の小径部2aの外周に内周が固定される環状弁体14と、環状弁体14の軸方向の両側にそれぞれ積層される間座16,17と、環状弁体14に対して軸方向で対向するバルブストッパ13,15と、バルブケース6の筒状のケース部6bの内周に周方向に沿って設けられた環状突起で形成される環状対向部6cとを備えている。
【0045】
バルブケース6は、環状であってピストン3の筒部3bの内周に嵌合する環状の嵌合部6aと、嵌合部6aの下端外周部から下方へ突出する筒状のケース部6bと、ケース部6bの内周に周方向に沿って設けられた内周側に突出する環状突起で形成された環状対向部6cとを備えている。そして、嵌合部6aと筒部3bとの間がシール50で塞がれており、嵌合部6aには、ケース部6bの内周側に開口して嵌合部6aを軸方向に貫通するサブポート6dが形成されている。また、ケース部6bの内方には、ロッド2の小径部2aの外周に内周が装着される環状のバルブストッパ13,15、間座16,17および環状の環状弁体14とが収容されている。
【0046】
バルブケース6の嵌合部6aをピストン3の筒部3b内に嵌合すると、バルブケース6とピストン3との間に形成される空間Cは、伸側ポート3cおよび圧側ポート3dとを介して伸側室R1に連通され、サブポート6dを介して圧側室R2に連通される。よって、サブポート6dおよび前記空間Cは、伸側ポート3cおよび圧側ポート3dとともに減衰通路DPを形成している。
【0047】
本実施の形態の環状弁体14は、
図3に示すように、環状であって弾性を備え、内周側がロッド2の小径部2aに固定されて固定端とされ外周側を自由端として撓みが許容されている。なお、環状弁体14は、複数枚のリーフバルブを積層して構成されてもよく、環状弁体14を構成するリーフバルフの枚数は、緩衝器Dで得たい減衰力に応じて任意に設定でき、単数であっても複数であってもよい。
【0048】
そして環状弁体14は、外周面がバルブケース6に設けた環状対向部6cの内周面に対向する位置に位置決めされてロッド2の小径部2aに固定される。また、本実施の形態では環状弁体14は、内周が小径の間座16,17によって挟持されている。間座16,17は、外径が環状弁体14の外径よりも小さく、内径が環状弁体14の内径と等しい環状板であり、環状弁体14はその内周部を間座16,17で挟まれた状態でロッド2の小径部2aに固定されている。よって、環状弁体14は、間座16,17の外周縁を支点として外周側が
図2中上下方向へ弾性変形して撓むことができる。なお、間座16,17は、図示したところでは、それぞれ1枚の環状板で構成されているが、複数枚の環状板で構成されてもよい。
【0049】
つづいて、
図3中で環状弁体14の上方側に配置されるバルブストッパ13は、環状であって軸方向の肉厚が間座16の肉厚よりも薄く、間座16の外周に配置されるリング131と、環状であって外径がリング131の外径よりも大径であって間座16に外径が異なり反間座側に向かうと段階的に外径が漸増するように積層される複数の環状板132a,132b,132cとを有する積層環状板132とを備えている。
【0050】
リング131は、間座16の外径よりも大きな内径と、環状弁体14の外径よりも小さな外径を持ち、軸方向の肉厚が間座16の軸方向の肉厚より薄く、積層環状板132の間座16に当接する最も環状弁体14に近い環状板132aに溶接或いは接着によって固定されている。
【0051】
積層環状板132は、環状弁体14および間座16の内径と等しい内径と、リング131の外径よりも大きく、かつ、互いに異なる外径とを備えた環状板132a,132b,132cを間座16の反環状弁体側に外径が小径なものから順に積層して構成されている。よって、環状板132a,132b,132cを積層して形成された積層環状板132の外周形状は、リング131の外径よりも大径であって、反間座側に向かうと段階的に漸増するように変化する形状となっている。また、リング131の外径よりも環状板132aの外径の方が大径となっており、バルブストッパ13の全体では、リング131の外径が最小径となっており、反間座側へ向かうほど段階的に外径が大きくなる外周形状となっている。
【0052】
そして、このように構成されたリング131および積層環状板132で構成されたバルブストッパ13を間座16に積層すると、間座16の外周にリング131が同心に配置される。リング131の肉厚は間座16の肉厚よりも薄いため、リング131と環状弁体14とは、環状の狭い隙間を介して対向する。また、積層環状板132は、環状弁体14に対して外周に向けて段階的に間隔が広くなる環状隙間を介して対向する。
【0053】
よって、環状弁体14は、
図3中破線で示すように、下面に作用する圧力を受けて自由端である外周側を上方へ撓ませて変形すると、やがてバルブストッパ13のリング131の外周、各環状板132a,132b,132cの各外周に当接してバルブストッパ13によって背面側から支持されてそれ以上の撓みが規制される。
【0054】
なお、
図3の破線で示すように、環状弁体14が間座16の外縁を支点として円弧状に撓んだ際に、バルブストッパ13におけるリング131の下端外周、環状板132aの下端外周、環状板132bの下端外周および環状板132cの下端外周のそれぞれが丁度環状弁体14に接するように、リング131、環状板132a,132b,132cの肉厚と外径とが設定されている。
【0055】
つづいて、
図3中で環状弁体14の下方側に配置されるバルブストッパ15は、環状であって軸方向の肉厚が間座17の肉厚よりも薄く、間座17の外周に配置されるリング151と、環状であって外径がリング151の外径よりも大径であって間座17に外径が異なり反間座側に向かうと段階的に外径が漸増するように積層される複数の環状板152a,152b,152cとを有する積層環状板152とを備えている。
【0056】
リング151は、間座17の外径よりも大きな内径と、環状弁体14の外径よりも小さな外径を持ち、軸方向の肉厚が間座16の軸方向の肉厚より薄く、積層環状板152の間座17に当接する最も環状弁体14に近い環状板152aに溶接或いは接着によって固定されている。なお、リング151は、環状であれば、円環形状以外にもC形状とされてもよい。
【0057】
積層環状板152は、環状弁体14および間座17の内径と等しい内径と、リング151の外径よりも大きく、かつ、互いに異なる外径とを備えた環状板152a,152b,152cを間座17の反環状弁体側に外径が小径なものから順に積層して構成されている。よって、環状板152a,152b,152cを積層して形成された積層環状板152の外周形状は、リング151の外径よりも大径であって、反間座側に向かうと段階的に漸増するように変化する形状となっている。また、リング151の外径よりも環状板152aの外径の方が大径となっており、バルブストッパ15の全体では、リング151の外径が最小径となっており、反間座側へ向かうほど段階的に外径が大きくなる外周形状となっている。
【0058】
そして、このように構成されたリング151および積層環状板152で構成されたバルブストッパ15を間座17に積層すると、間座17の外周にリング151が同心に配置される。リング151の肉厚は間座17の肉厚よりも薄いため、リング151と環状弁体14とは、環状の狭い隙間を介して対向する。また、積層環状板152は、環状弁体14に対して外周に向けて段階的に間隔が広くなる環状隙間を介して対向する。
【0059】
よって、環状弁体14は、上面に作用する圧力を受けて自由端である外周側を下方へ撓ませて変形すると、やがてバルブストッパ15のリング151の外周、各環状板152a,152b,152cの各外周に当接してバルブストッパ15によって背面側から支持されてそれ以上の撓みが規制される。
【0060】
なお、環状弁体14が間座17の外縁を支点として円弧状に撓んだ際に、バルブストッパ15におけるリング151の上端外周、環状板152aの上端外周、環状板152bの上端外周および環状板152cの上端外周のそれぞれが丁度環状弁体14に接するように、リング151、環状板152a,152b,152cの肉厚と外径とが設定されている。
【0061】
このように、積層環状板132(152)における環状板132a,132b,132c(152a,152b,152c)は、リング131(151)とともに環状弁体側の外周縁で環状弁体14を支持する支持点W,X,Y,Zを形成している。そして、
図3に示すように、環状弁体14をバルブストッパ13(15)で支持した状態において、環状弁体14の内周から外周までを複数の支持点で支持できるので、環状弁体14をうねらせずに断面が円弧状の緩やかな弓なりに撓んだ状態に維持できる。
図3から理解できるように、環状弁体14が間座16(17)の外縁を支点として弓なりに撓む場合、間座16(17)の至近では撓み量が少なく、環状弁体14の外周へ向かうほど撓み量が多くなる。よって、環状弁体14をうねることなく弓なりに撓んだ状態に維持するためには、間座16(17)の至近では間座16(17)の支持位置よりも軸方向でわずかに低い位置に支持点Wを設ける必要がある。本実施の形態のバルブVでは、間座16,17に軸方向の肉厚が極薄い特殊な間座を利用せずとも、間座16,17の肉厚よりも少し薄いリング131,151を間座16,17の外周に配置することで環状弁体14の撓み量が少ない間座16,17の至近の支持点Wを設けることができる。
【0062】
また、環状弁体14の外周側では撓み量が多くなるので、積層環状板132(152)の各環状板132a,132b,132c(152a,152b,152c)の肉厚を薄くせずとも、環状弁体14を支持してうねり変形を阻止できる。環状弁体14の外周側では撓み量が多くなり、各環状板132a,132b,132c(152a,152b,152c)の肉厚は一定であるため、環状弁体14の外周側での支持点の間隔が狭くなっているのが
図3から理解できる。つまり、本実施の形態のバルブVでは、各環状板132a,132b,132c(152a,152b,152c)の肉厚は一定であるため、積層環状板132(152)のうち、環状弁体14から離れれば離れるほど、隣り合う環状板の外径差が小さくなる関係となっているが、各環状板132a,132b,132c(152a,152b,152c)の肉厚を互いに異なるものとする場合、支持点の間隔を任意に調整できる。さらに、積層環状板132(152)における環状板の積層枚数の変更によって、環状弁体14を支持する支持点の数を簡単に変更できる。
【0063】
このように、本実施の形態のバルブVでは、積層環状板132(152)は、3枚の環状板132a,132b,132c(152a,152b,152c)によって構成されているが、環状板の枚数は環状弁体14が撓んだ際に環状弁体14の断面形状を円弧状となるように支持できる限りにおいて任意に変更できる。よって、環状弁体14の支持点の数が2つでよい場合、リング131(151)と間座16(17)に積層される積層環状板をリング131(151)の外径よりも大きな1枚の環状板で構成してもよい。ただし、リング131(151)を含めて4つ以上の支持点で環状弁体14を支持するようにすると、バルブストッパ13(15)の径方向において支持点間の間隔が広くなりすぎず、環状弁体14を安定的に支持できる。支持点間の間隔が広くなりすぎると、支持点と支持点との間で環状弁体14が圧力を受けてうねってバルブストッパ13(15)側に凸となるように変形してしまい、環状弁体14に過大な応力が作用するので、このような変形を阻止できるように支持点の間隔を設定すればよい。また、リング131,151は、それぞれ、環状板132a,152aに取り付けられているが、環状弁体14に取り付けられていてもよい。このようにしても、環状弁体14が撓んでリング131,151が環状板132a,152aに当接してバルブストッパ13,15に支持されると、リング131,151の外周が環状弁体14を支持する支持点となるので、環状弁体14が撓んだ際に環状弁体14をうねることなく弓なりに撓んだ状態に維持できる。さらに、積層環状板132(152)は、複数の外径が異なる環状板132a,132b,132c(152a,152b,152c)で構成される代わりに、反間座側に向かうと段階的に外径が漸増する1枚の環状板で構成されてもよい。
【0064】
そして、バルブケース6、バルブストッパ13、間座16、環状弁体14、間座17およびバルブストッパ15は、順番に、伸側リーフバルブ4の
図2中下方に積層されてロッド2の小径部2aの外周に組み付けられた後、ロッド2の螺子部2dに螺着されるピストンナット18によってロッド2に固定される。すると、
図3に示すように、環状弁体14は、内周が固定された状態で外周面を環状対向部6cの内周面に正対させて、環状対向部6cとの間に所定の環状隙間Pをあけて対向する。なお、ピストンナット18は、バルブストッパ15の積層環状板152における最大の外径を持つ環状板152cに一体とされて、積層環状板152の一部として機能してもよい。
【0065】
そして、緩衝器Dが伸縮せず停止した状態では、環状弁体14が撓まず、
図3に示す取付初期の状態に保たれる。このように、環状弁体14が撓んでいない状態では、
図3に示すように、環状弁体14は、外周面を環状対向部6cの内周面に正対させて、環状対向部6cとの間に所定の環状隙間Pをあけて対向する。そして、本実施の形態の緩衝器Dでは、正対する環状弁体14と環状対向部6cとの間にできる環状隙間Pは非常に狭く、その環状隙間Pの開口面積は、前述の切欠オリフィス4aの開口面積よりも小さい。
【0066】
他方、緩衝器Dが動き出す(伸縮する)と、環状弁体14は撓み、環状弁体14の撓み量は伸縮速度の増加に応じて大きくなる。そして、緩衝器Dの伸長速度が動き出しのような伸縮速度が0(ゼロ)に近い場合、環状弁体14の撓み量が非常に小さく、微低速域から低速域の間で環状弁体14が環状対向部6cの内周面から対向し得なくなる程度に撓んで環状弁体14は開弁する。さらに、緩衝器Dの伸長速度が低速域、または高速域にある場合には、環状弁体14の外周部が間座17の外周縁を撓みの支点にして下側へと大きく撓む。反対に、緩衝器Dの収縮速度が低速域、または高速域にある場合には、環状弁体14の外周部が間座16の外周縁を撓みの支点にして上側へと大きく撓む。環状弁体14が撓んで環状対向部6cから離間して開弁する際の伸側室R1と圧側室R2の差圧、つまり、環状弁体14の開弁圧は、伸側リーフバルブ4および圧側リーフバルブ7の開弁圧より低く、伸縮速度が低速域にある場合環状弁体14は前述の通り開弁するが、伸側リーフバルブ4および圧側リーフバルブ7は開弁せず、液体は切欠オリフィス4aを介して伸側室R1と圧側室R2とを行き来する。
【0067】
なお、環状弁体14が環状対向部6cの内周面に正対した状態で環状隙間Pが略0になるようにすれば、緩衝器Dの動き出して直ぐに伸側室R1と圧側室R2とに差圧が生じるため、緩衝器Dの伸縮の切り換わりにおいて緩衝器Dが速やかに減衰力を発生できる。
【0068】
このように、環状弁体14の外周部が上下に撓む低速域、及び高速域では、上下にずれた環状弁体14と環状対向部6cとの間にできる環状隙間の開口面積が、切欠オリフィス4aの開口面積よりも大きくなる。
【0069】
また、緩衝器Dの収縮時において、環状弁体14の上側に位置するバルブストッパ13は、減衰通路DPを流れる液体の流量が多くなって環状弁体14が大きく撓むと環状弁体14の
図3中上端面に当接して、環状弁体14の
図3中上面に当接してこれを支えて環状弁体14の
図3中上方側への撓みを抑制して環状弁体14を保護する。また、バルブストッパ13における各環状板132a,132b,132cは、外周に切欠132a1,132b1,132c1を備えている。切欠132a1,132b1,132c1は、バルブストッパ13に環状弁体14が当接しても環状弁体14とバルブストッパ13とで区画される空隙を外方へ連通させて当該空隙が閉鎖空間となるのを防止している。この切欠132a1,132b1,132c1の設置により、バルブストッパ13に環状弁体14が当接しても環状弁体14がバルブストッパ13に吸着するのが防止される。よって、環状弁体14がバルブストッパ13に当接してから閉弁側へ動作した際において環状弁体14の閉じ遅れが阻止される。
【0070】
さらに、緩衝器Dの伸長時において、環状弁体14の下側に位置するバルブストッパ15は、減衰通路DPを流れる液体の流量が多くなって環状弁体14が大きく撓むと環状弁体14の
図3中下端面に当接して、環状弁体14の
図3中下面に当接してこれを支えて環状弁体14の
図3中下方側への撓みを抑制して環状弁体14を保護する。また、バルブストッパ15における各環状板152a,152b,152cは、外周に切欠152a1,152b1,152c1を備えている。切欠152a1,152b1,152c1は、バルブストッパ15に環状弁体14が当接しても環状弁体14とバルブストッパ15とで区画される空隙を外方へ連通させて当該空隙が閉鎖空間となるのを防止している。この切欠152a1,152b1,152c1の設置により、バルブストッパ15に環状弁体14が当接しても環状弁体14がバルブストッパ15に吸着するのが防止される。よって、環状弁体14がバルブストッパ15に当接してから閉弁側へ動作した際において環状弁体14の閉じ遅れが阻止される。
【0071】
そして、前述したように、液体が、減衰通路DPを伸側室R1から圧側室R2へ向かう際には、伸側リーフバルブ4とバルブVにおける環状弁体14を通過し、減衰通路DPを圧側室R2から伸側室R1へ向かう際には、圧側リーフバルブ7とバルブVにおける環状弁体14を通過する。このように、バルブVは、減衰通路DPに直列に設けられている。
【0072】
以下、本実施の形態に係る緩衝器Dの作動について説明する。緩衝器Dの伸長時には、ピストン3がシリンダ1内を上方へ移動して伸側室R1を圧縮する。緩衝器Dの伸長速度が微低速域にあって0に近い場合、伸側室R1の圧力が上昇するものの圧側室R2の圧力との差圧が伸側リーフバルブ4の開弁圧に達しないため、伸側リーフバルブ4は開弁せず伸側ポート3cを閉塞したまま維持する。圧側リーフバルブ7は、伸側室R1の圧力を背面側から受けて圧側ポート3dを閉塞する。緩衝器Dの伸長速度が微低速域にあって0に近い場合、伸側室R1の圧力が上昇するものの圧側室R2の圧力との差圧が環状弁体14の開弁圧に達しないため環状弁体14は撓んでも外周面を環状対向部6cの内周の軸方向幅の範囲に対向させて閉弁状態となって環状弁体14と環状対向部6cとの間の環状隙間Pの流路面積を極小さく維持する。さらに、緩衝器Dの伸長速度が増加して微低速域から低速域にまで変化する間に、伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力との差圧が環状弁体14の開弁圧を超えるので、環状弁体14は、外周を環状対向部6cの内周の軸方向幅の範囲から
図3中下方へ外れるようにして撓んで開弁し、環状弁体14と環状対向部6cとの間の環状隙間Pの流路面積を大きくする。
【0073】
そして、液体は、切欠オリフィス4a、伸側ポート3c、空間C、サブポート6dおよび環状隙間Pを通過して伸側室R1から圧側室R2へ移動する。液体は、このように減衰通路DPを通過する際に、切欠オリフィス4aおよび環状隙間Pを通過するが微低速域における開弁状態の環状弁体14における環状隙間Pの流路面積は切欠オリフィス4aの流路面積よりも小さい。そのため、緩衝器Dの伸長速度が微低速域にある場合、緩衝器Dは、主として環状弁体14が液体に与える抵抗によって伸長を妨げる減衰力を発生する。したがって、緩衝器Dの伸長速度が微低速域にある場合の緩衝器Dの伸側の減衰力特性(緩衝器Dの伸長速度に対する減衰力の特性)は、
図4に示したように、伸長速度が0近傍では減衰係数が非常に大きく立ち上がった後、環状弁体14の開弁によって減衰係数が小さくなる特性となる。
【0074】
緩衝器Dの伸長速度が微低速域を超えて低速域にある場合、伸側室R1の圧力が上昇するものの圧側室R2の圧力との差圧が伸側リーフバルブ4の開弁圧に達しないため、伸側リーフバルブ4は未だ開弁せず伸側ポート3cを閉塞したまま維持する。圧側リーフバルブ7は、伸側室R1の圧力を背面側から受けて圧側ポート3dを閉塞する。緩衝器Dの伸長速度が低速域にある場合、伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力との差圧が環状弁体14の開弁圧を超えるので環状弁体14は、外周を環状対向部6cの内周の軸方向幅の範囲から
図3中下方へ外れるようにして撓んで開弁し、環状弁体14と環状対向部6cとの間の環状隙間Pの流路面積を大きくする。よって、この場合も液体は、切欠オリフィス4a、伸側ポート3c、空間C、サブポート6dおよび環状隙間Pを通過して伸側室R1から圧側室R2へ移動するが、環状隙間Pの流路面積が切欠オリフィス4aの流路面積よりも大きくなる。よって、緩衝器Dの伸長速度が低速域にある場合、緩衝器Dは、主として切欠オリフィス4aが液体に与える抵抗によって伸長を妨げる減衰力を発生する。したがって、緩衝器Dの伸長速度が微低速域にある場合の緩衝器Dの伸側の減衰力特性は、
図4に示したように、オリフィス特有の緩衝器Dの伸長速度の2乗に比例する特性となるが、前記伸長速度が微低速域にある場合に比較して減衰係数が小さくなる特性となる。
【0075】
さらに、緩衝器Dの伸長速度が低速域を超えて高速域にある場合、伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力との差圧が伸側リーフバルブ4の開弁圧に達して、伸側リーフバルブ4が撓んで開弁して伸側ポート3cを開放する。圧側リーフバルブ7は、伸側室R1の圧力を背面側から受けて圧側ポート3dを閉塞する。緩衝器Dの伸長速度が高速域にある場合、伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力との差圧が環状弁体14の開弁圧を超えているので環状弁体14が開弁して環状弁体14と環状対向部6cとの間の環状隙間Pの流路面積が大きくなる。液体は、伸側リーフバルブ4と伸側弁座3eとの間、伸側ポート3c、空間C、サブポート6dおよび環状隙間Pを通過して伸側室R1から圧側室R2へ移動する。緩衝器Dの伸長速度が高速域にある場合、伸側室R1から圧側室R2へ移動する液体の流量が多くなるので、環状弁体14が大きく撓んで環状隙間Pにおける流路面積よりも伸側リーフバルブ4と伸側弁座3eとの間の隙間における流路面積の方が小さくなる。よって、緩衝器Dの伸長速度が高速域にある場合、緩衝器Dは、主として伸側リーフバルブ4が液体に与える抵抗によって伸長を妨げる減衰力を発生する。したがって、緩衝器Dの伸長速度が高速域にある場合の緩衝器Dの伸側の減衰力特性は、
図4に示したように、伸側リーフバルブ4の特有の緩衝器Dの伸長速度に比例するような特性となるが、前記伸長速度が低速域にある場合に比較して減衰係数がさらに小さくなる特性となる。
【0076】
また、環状弁体14は、大きく撓んでバルブストッパ15に当接して、バルブストッパ15に背面側から支持されて撓みが抑制される。バルブストッパ15は、リング151の外周および積層環状板152における各環状板152a,152b,152cの外周を支持点として環状弁体14の
図3中下面に当接させる。バルブストッパ15の複数の支持点は、側方から見て同一円弧上に配置されているため、バルブストッパ15の各支持点によって支持された環状弁体14は、断面円弧状の弓なりに変形した状態に支えられて、うねるような変形も生じずにその状態に維持される。
【0077】
つづいて、緩衝器Dの収縮時には、ピストン3がシリンダ1内を下方へ移動して圧側室R2を圧縮する。緩衝器Dの収縮速度が微低速域にあって0に近い場合、圧側室R2の圧力が上昇するものの伸側室R1の圧力との差圧が圧側リーフバルブ7の開弁圧に達しないため、圧側リーフバルブ7は開弁せず圧側ポート3dを閉塞したまま維持する。伸側リーフバルブ4は、圧側室R2の圧力を背面側から受けて伸側ポート3cを閉塞する。緩衝器Dの収縮速度が微低速域にあって0に近い場合、圧側室R2の圧力が上昇するものの伸側室R1の圧力との差圧が環状弁体14の開弁圧に達しないため環状弁体14は撓んでも外周面を環状対向部6cの内周の軸方向幅の範囲に対向させて閉弁状態となって環状弁体14と環状対向部6cとの間の環状隙間Pの流路面積を極小さく維持する。
【0078】
さらに、緩衝器Dの収縮速度が増加して微低速域から低速域にまで変化する間に、圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力との差圧が環状弁体14の開弁圧を超えるので、環状弁体14は、外周を環状対向部6cの内周の軸方向幅の範囲から
図3中上方へ外れるようにして撓んで開弁し、環状弁体14と環状対向部6cとの間の環状隙間Pの流路面積を大きくする。
【0079】
そして、液体は、環状隙間P、サブポート6d、空間C、伸側ポート3cおよび切欠オリフィス4aを通過して圧側室R2から伸側室R1へ移動する。液体は、このように減衰通路DPを通過する際に、切欠オリフィス4aおよび環状隙間Pを通過するが微低速域における開弁状態の環状弁体14における環状隙間Pの流路面積は切欠オリフィス4aの流路面積よりも小さい。そのため、緩衝器Dの収縮速度が微低速域にある場合、緩衝器Dは、主として環状弁体14が液体に与える抵抗によって収縮を妨げる減衰力を発生する。したがって、緩衝器Dの収縮速度が微低速域にある場合の緩衝器Dの圧側の減衰力特性は、
図4に示したように、減衰係数が非常に大きく立ち上がった後、サブバルブ14の開弁によって減衰係数が小さくなる特性となる。
【0080】
緩衝器Dの収縮速度が微低速域を超えて低速域にある場合、圧側室R2の圧力が上昇するものの伸側室R1の圧力との差圧が圧側リーフバルブ7の開弁圧である第一差圧に達しないため、圧側リーフバルブ7は未だ開弁せず圧側ポート3dを閉塞したまま維持する。伸側リーフバルブ4は、圧側室R2の圧力を背面側から受けて伸側ポート3cを閉塞する。緩衝器Dの収縮速度が低速域にある場合、圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力との差圧が環状弁体14の開弁圧を超えるので環状弁体14は、外周を環状対向部6cの内周の軸方向幅の範囲から
図3中上方へ外れるようにして撓んで開弁し、環状弁体14と環状対向部6cとの間の環状隙間Pの流路面積を大きくする。よって、この場合も液体は、環状隙間P、サブポート6d、空間C、伸側ポート3cおよび切欠オリフィス4aを通過して圧側室R2から伸側室R1へ移動するが、環状隙間Pの流路面積が切欠オリフィス4aの流路面積よりも大きくなる。よって、緩衝器Dの収縮速度が低速域にある場合、緩衝器Dは、主として切欠オリフィス4aが液体に与える抵抗によって収縮を妨げる減衰力を発生する。したがって、緩衝器Dの収縮速度が低速域にある場合の緩衝器Dの圧側の減衰力特性は、
図4に示したように、オリフィス特有の緩衝器Dの収縮速度の2乗に比例する特性となるが、前記収縮速度が微低速域にある場合に比較して減衰係数が小さくなる特性となる。
【0081】
さらに、緩衝器Dの収縮速度が低速域を超えて高速域にある場合、圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力との差圧が圧側リーフバルブ7の開弁圧である第一差圧に達して、圧側リーフバルブ7が撓んで開弁して圧側ポート3dを開放する。伸側リーフバルブ4は、圧側室R2の圧力を背面側から受けて伸側ポート3cを閉塞する。緩衝器Dの収縮速度が中高速域にある場合、圧側室R2の圧力と伸側室R1の圧力との差圧が環状弁体14の開弁圧を超えているので環状弁体14が開弁して環状弁体14と環状対向部6cとの間の環状隙間Pの流路面積が大きくなる。液体は、環状隙間P、サブポート6d、空間C、圧側ポート3dおよび圧側リーフバルブ7と圧側弁座3fとの間を通過して圧側室R2から伸側室R1へ移動する。緩衝器Dの収縮速度が高速域にある場合、圧側室R2から伸側室R1へ移動する液体の流量が多くなるので環状弁体14が大きく撓んで環状隙間Pにおける流路面積よりも圧側リーフバルブ7と圧側弁座3fとの間の隙間における流路面積の方が小さくなる。よって、緩衝器Dの収縮速度が高速域にある場合、緩衝器Dは、主として圧側リーフバルブ7が液体に与える抵抗によって収縮を妨げる減衰力を発生する。したがって、緩衝器Dの収縮速度が高速域にある場合の緩衝器Dの圧側の減衰力特性は、
図4に示したように、圧側リーフバルブ7の特有の緩衝器Dの収縮速度に比例するような特性となるが、前記収縮速度が低速域にある場合に比較して減衰係数がさらに小さくなる特性となる。
【0082】
また、環状弁体14は、大きく撓んでバルブストッパ13に当接して、バルブストッパ13に背面側から支持されて撓みが抑制される。バルブストッパ13は、リング131の外周および積層環状板132における各環状板132a,132b,132cの外周を支持点として環状弁体14の
図3中上面に当接させる。バルブストッパ13の複数の支持点は、側方から見て同一円弧上に配置されているため、バルブストッパ13の各支持点W,X,Y,Zによって支持された環状弁体14は、断面円弧状の弓なりに変形した状態に支えられて、うねるような変形も生じずにその状態に維持される。
【0083】
本実施の形態のバルブVおよび緩衝器Dは、以上の通り作動する。そして、本実施の形態のバルブVは、弾性を備えて外周を自由端として撓みが許容される環状弁体14と、環状で外径が環状弁体14の外径よりも小径であって環状弁体14に積層されて前記環状弁体14の自由端の撓みの支点となる間座16,17と、環状弁体14の間座16,17側に軸方向で対向して環状弁体14が撓んで当接すると環状弁体14の撓みを規制するバルブストッパ13,15とを備え、バルブストッパ13,15は、環状であって軸方向の肉厚が間座16,17の肉厚よりも薄く、間座16,17の外周に配置されるリング131,151と、環状であって外径がリング131,151の外径よりも大径であって、間座16,17に積層される積層環状板132,152とを備えて構成されている。
【0084】
このように構成された本実施の形態のバルブVでは、バルブストッパ13(15)が間座16(17)の外縁を支点として弓なりに撓む環状弁体14における撓み量が少ない間座16(17)の至近を間座16,17の肉厚よりも薄い肉厚を持つリング131(151)で支持し、撓み量が多くなる環状弁体14の外周側については積層環状板132(152)で支持するので、環状弁体14をうねり変形させることなく環状弁体14の撓みを規制できる。よって、本実施の形態のバルブVによれば、環状弁体14のうねり変形を防止するために、特殊な極薄肉の間座を用いる必要がなくなるので、バルブVの組立時の作業員の作業負担を軽減できるとともに、安価な間座16(17)の利用が可能であるので、バルブVが安価となるとともにバルブVの組立性も良好となる。また、バルブVにおける環状弁体14のうねり変形が防止されるので、環状弁体14の耐久性を向上できる。
【0085】
さらに、本実施の形態のバルブVでは、積層環状板132(152)は、外径が異なり反間座側に向かうと段階的に外径が漸増するように積層される複数の環状板132a,132b,132c(152a,152b,152c)とを含んで構成されている。このように構成されたバルブVによれば、リング131(151)以外にも環状板132a,132b,132c(152a,152b,152c)で環状弁体14を支持する複数の支持点を設けて、支持点間に大きな間隔を開けずにすむため、環状弁体14の内周から外周までを満遍なく支持して環状弁体14のうねり変形を効果的に防止でき耐久性を効果的に向上できるとともに、環状板132a,132b,132c(152a,152b,152c)の積層枚数によって支持点数を簡単に変更できる。
【0086】
本実施の形態のバルブVでは、環状弁体14と、環状弁体14の自由端との間に環状隙間Pを介して対向する環状対向部6cとを備え、環状弁体14の軸方向の両側にそれぞれ間座16,17とバルブストッパ13,15を備えている。このように構成されたバルブVによれば、緩衝器Dの伸縮速度が微低速域にある場合に減衰係数を非常に大きくして、伸縮速度の増加に対して大きく立ち上がる減衰力特性を緩衝器Dに発揮させて車両における乗心地を向上できる。また、このように構成されたバルブVによれば、環状弁体14の外径の大きさで環状隙間Pの開口面積の調整できるから、外径の異なる環状弁体14の付け替えによって減衰力特性を容易に調整できる。
【0087】
なお、本実施の形態のバルブVは、環状弁体14と環状対向部6cとを備えて、減衰通路DPを伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れおよび圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れの双方の流れに応じて撓んで液体に流れに対して抵抗を与える。これに代えて、
図5に示すように、一実施の形態の第1変形例のバルブV1は、環状弁体14と、ポート20aとポート20aの出口端を取り囲む弁座20bとを備えたバルブディスク20とを備えて、内周をバルブディスク20に不動として固定端として外周を自由端とする環状弁体14を弁座20bに離着座させてポート20aを開閉する構成を採用してもよい。このように、開弁時において環状弁体14がポート20a側から圧力を受けて自由端である外周をバルブディスク20から離間する方向にのみ撓む構造のバルブV1では、環状弁体14の反バルブディスク側のみに間座16とバルブストッパ13とを設けて環状弁体14の撓みを規制すればよい。よって、緩衝器Dのピストン3に積層される伸側および圧側のリーフバルブ4,7を環状弁体として、リーフバルブ4,7の反ピストン側に間座16,17をそれぞれ積層するとともに、間座16,17の反リーフバルブ側にそれぞれバルブストッパ13,15を設けて、バルブストッパ13,15で撓んだリーフバルブ4,7を弓なりに変形した状態で支持するようにしてもよい。
【0088】
また、環状弁体14は、
図6に示した一実施の形態の第2変形例のバルブV2のように、複数のリーフバルブ14a,14b,14cを積層して構成されてもよい。環状弁体14を構成するリーフバルブ14a,14b,14cのうち中央のリーフバルブ14aの外径が最も大きく、リーフバルブ14bの上下に配置されたリーフバルブ14a,14cの外径はともに等しくなっている。
図6に示すように、リーフバルブ14aのみならずリーフバルブ14b,14cの先端もバルブストッパ21,22に当接するので、これを考慮してバルブストッパ21,22における積層環状板212,222の環状板の積層枚数を調整している。具体的には、バルブストッパ21(22)は、間座16(17)の外周に配置されるとともに外径がリーフバルブ14a(14c)の外径より小径のリング211(221)と、外径が異なり反間座側へ向かうと段階的に外径が漸減されるように積層される2枚の環状板212a,212b(222a,222b)とを備えている。このように構成されたバルブV2では、環状弁体14が撓むと、バルブストッパ21(22)におけるリング211(221)の外周、環状板212a(222a)におけるリーフバルブ14a(14c)に当接する部位、環状板212a(222a)の外周および環状板212b(222b)の4つの支持点で環状弁体14を支持して環状弁体14のうねり変形を阻止できる。このように、環状弁体14が複数枚のリーフバルブ14a,14b,14cで構成される場合、バルブストッパ21(21)は、環状弁体14が弓なりに撓んだ際に環状弁体14の内周から外周にかけて複数の支持点で環状弁体14を支持できるように環状弁体14のリーフバルブ14a,14b,14cの外径、肉厚に応じて積層環状板212,222における環状板の積層枚数等を調整すればよい。
【0089】
さらに、本実施の形態のバルブVでは、積層環状板132(152)は、少なくとも3枚以上の環状板132a,132b,132c(152a,152b,152c)を含んでいるので、リング131(151)を含めて4つ以上の支持点を設けて、支持点間に大きな間隔を開けずにすむため、環状弁体14の内周から外周までを満遍なく支持して環状弁体14のうねり変形を効果的に防止でき耐久性を効果的に向上できる。
【0090】
また、本実施の形態のバルブVでは、リング131(151)が積層環状板132(152)の間座16(17)に当接する環状板132a(152a)に固定されている。このように構成されたバルブVによれば、リング131(151)を予め環状板132a(152a)に固定して組み立てることができるので、バルブVの組立性が向上するとともに、リング131(151)を狙い通りの位置に位置決めできるので、撓んだ環状弁体14を理想的な位置で支持でき環状弁体14の応力を効果的に軽減できる。
【0091】
なお、本実施の形態のバルブVでは、リング131(151)が環状板132a(152a)に固定されているが、これに代えて、
図6に示したバルブV2のように、リング211(221)が間座16(17)の外周に嵌合されて径方向に位置決めされてもよい。このように構成されたバルブVによれば、リング211(221)が間座16(17)によって位置決めされているため、リング211(221)を環状板212a(222a)に溶接或いは接着する加工が不要となり加工工数を削減できるとともに、リング211(221)の環状板212a(222a)からの脱落によって環状弁体14の支持位置が変化するといった心配がない。
【0092】
また、本実施の形態の緩衝器Dは、シリンダ(アウターチューブ)1と、シリンダ(アウターチューブ)1内に移動可能に挿入されるロッド2とを有して伸縮可能な緩衝器本体Aと、緩衝器本体A内に設けられた二つの作動室(伸側室R1および圧側室R2)を連通する減衰通路DPと、減衰通路DPに設けられたバルブVとを備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、バルブVが安価となるとともに組立性も向上するため、緩衝器自体も安価となるとともに組立性も良好となる。
【0093】
なお、本実施の形態のバルブVでは、環状弁体14は、内周固定で外周側の撓みが許容されており、外周の環状対向部6cに対向している構造となっているが、
図7に示したバルブV3のような構造を採用してもよい。一実施の形態の第3変形例のバルブV3は、
図7に示すように、弾性を備えて内周を自由端として撓みが許容される内径が異なる3枚にリーフバルブ31a,31b,31cを備えた環状弁体30と、環状で内径が環状弁体30の内径よりも大径であって環状弁体30に積層されて環状弁体30の自由端の撓みの支点となる間座31,33と、環状弁体30の間座側に軸方向で対向して環状弁体30が撓んで当接すると環状弁体30の撓みを規制するバルブストッパ32,34とを備え、バルブストッパ32(34)は、環状であって軸方向の肉厚が間座31(33)の肉厚よりも薄く、間座31(33)の内周に配置されるリング321(341)と、環状であって内径がリング321(341)の内径よりも小径であって、間座31(33)に内径が異なり反間座側に向かうと段階的に内径が漸減するように積層される複数の環状板322a,322b(342a,342b)とを有する積層環状板322(342)とを含んで構成されてもよい。
積層環状板322(342)は、内径が異なる2つの環状板322a,322b(342a,342b)とで構成されており、内径が大きなものから順に間座31に積層されて構成されている。また、リング321(341)は、肉厚が間座31(33)の肉厚よりも薄く、間座31(33)の内周に嵌合されており、内径が最も大きな環状板322a(342a)の内径よりも小さい。
【0094】
このように構成されても、環状弁体30の自由端である内周側が間座31(33)の内周縁を支点として撓んでも、リング321(341)の外周、積層環状板322(342)の各環状板322a,322b(342a,342b)の内周が環状弁体30の支持点となって撓んだ環状弁体30をうねり変形させずに弓なりに撓んだ状態で支持できる。よって、このように構成されたバルブV3によれば、バルブVと同様に、環状弁体30のうねり変形を防止でき、特殊な極薄肉の間座を用いる必要がなくなるので、バルブV3の組立時の作業員の作業負担を軽減できるとともに、安価な間座31の利用が可能であるので、バルブV3が安価となるとともにバルブVの組立性も良好となる。また、バルブV3における環状弁体30のうねり変形が防止されるので、環状弁体30の耐久性を向上できる。
【0095】
また、
図1に示したところでは、二つの作動室を伸側室R1と圧側室R2としているが、図示はしないが、複筒型の緩衝器の場合、圧側室とリザーバとを作動室として、これら圧側室とリザーバとを仕切る仕切部材に圧側室とリザーバとを連通する減衰通路を設けて、当該減衰通路にバルブVを設けてもよい。
【0096】
さらに、本実施の形態のバルブVは、緩衝器Dの減衰通路DPにリーフバルブ4,7に直列に設けられているが、並列に設けられもよいし、単独で設けられてもよい。また、本実施の形態のバルブVは、環状弁体と環状弁体の撓みを規制するバルブストッパとを備えたバルブに適用可能であるので、減衰バルブ以外にも、たとえば、環状弁体を利用したチェックバルブやリリーフバルブ等といったバルブにも適用可能であるのは当然である。
【0097】
また、
図8に示した他のバルブのように、リーフバルブ4(7)、間座16(17)およびバルブストッパ13(15)をロッド2の小径部2aの外周に軸方向へ移動可能に装着して、ピストン3に対して軸方向に遠近可能に積層するとともに、バルブストッパ13(15)の反リーフバルブ側にリーフバルブ4(7)、間座16(17)およびバルブストッパ13(15)をピストン3に向けて付勢するばね40を設けてもよい。このように他のバルブでは、リーフバルブ4(7)に対して正面から非常に高圧が作用し、ばね40が縮んでリーフバルブ4(7)、間座16(17)およびバルブストッパ13(15)の全体がピストン3から浮き上がっても、バルブストッパ13(15)によってリーフバルブ4(7)のうねり変形が防止されるのでリーフバルブ4(7)の耐久性を向上できる。よって、環状弁体は、外周を自由端とする場合は自由端である外周の撓みが許容されていれば内周がロッド2等の他の部材によって不動に固定されていなくともよく、内周を自由端とする場合は自由端である内周の撓みが許容されていれば外周が他の部材によって不動に固定されていなくともよい。
【0098】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0099】
1・・・シリンダ(アウターチューブ)、2・・・ロッド、6c・・・環状対向部、13,15、21,22,32,34・・・バルブストッパ、14,30・・・環状弁体、16,17,31,33・・・間座、131,151,211,221,321・・・リング、132,152,212,222,322・・・積層環状板、132a,132b,132c,152a,152b,152c,212a,212b,222a,222b,322a,322b,342a,342b・・・環状板、A・・・緩衝器本体、D・・・緩衝器、DP・・・減衰通路、R1・・・伸側室(作動室)、R2・・・圧側室(作動室)、V,V1,V2,V3・・・バルブ