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特許7564796アクチュエータ及びケーブルアセンブリー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】アクチュエータ及びケーブルアセンブリー
(51)【国際特許分類】
   B63H 11/11 20060101AFI20241002BHJP
   B63B 34/10 20200101ALI20241002BHJP
【FI】
B63H11/11
B63B34/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021162146
(22)【出願日】2021-09-30
(65)【公開番号】P2023051462
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田原 貴行
(72)【発明者】
【氏名】中森 元基
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-169399(JP,A)
【文献】特開2019-199128(JP,A)
【文献】中国実用新案第212448016(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 11/11
B63B 34/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
噴出する水流の方向を変更する水流方向変更部から延伸して前記筐体の内部に挿入されるケーブルに接続される回転部材を有し、前記水流方向変更部を操作する操作信号に基づき前記回転部材をモータの力で回転させることにより、前記ケーブルを進退移動させるケーブル駆動部と、を備え
前記水流方向変更部は、水上バイクの水平方向に対する傾斜角度を変更するトリムと、前記水上バイクの進行方向を前進と後進との間で変更するリバースバケットとを有し、
前記ケーブルは、前記トリムから延伸して前記筐体の内部に挿入される第1ケーブルと、前記リバースバケットから延伸して、前記第1ケーブルと一定距離離れて前記第1ケーブルと同じ側から前記筐体の内部に挿入される第2ケーブルとを有し、
前記ケーブル駆動部は、前記第1ケーブルを進退移動させる第1駆動部と、前記第2ケーブルを進退移動させる第2駆動部とを有し、
前記第1駆動部は、前記筐体の内部において、前記第1ケーブルと前記第2ケーブルの間の領域であって、前記第2駆動部よりも前記第1ケーブル及び前記第2ケーブルが前記筐体に挿入される側に配置される、
アクチュエータ。
【請求項2】
前記ケーブル駆動部は、前記領域に配置され、前記第1駆動部及び前記第2駆動部をそれぞれ回転させる制御部を、さらに備え、
前記第1駆動部は、前記制御部と前記第2駆動部との間に設けられる、請求項に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記筐体は、前記第1ケーブル及び前記第2ケーブルの延伸方向に沿った長さが、前記延伸方向と直交する方向に沿った長さよりも長い略直方体の形状を有し、
前記第1駆動部及び前記第2駆動部は、前記延伸方向に沿って配列されている、請求項又はに記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記ケーブル駆動部は、前記モータの回転を前記回転部材に伝達する遊星歯車機構を、さらに備える、請求項1からの何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記遊星歯車機構は、前記モータの回転を入力する入力ギアと、前記入力ギアの周囲に互いに離れて配列され、前記入力ギアの回転が伝達される複数の遊星ギアとを有し、
前記回転部材は、前記複数の遊星ギアを囲むように環状に形成されて、前記複数の遊星ギアのそれぞれと噛み合う内歯を有する環状部を有する、
請求項に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記ケーブルは、前記筐体の内部から外部に延伸するアウターケーシングと、前記水流方向変更部から延伸して前記アウターケーシングを介して前記筐体の内部に挿通されるインナーケーブルと、前記インナーケーブルの先端を前記回転部材に接続する接続部材とを有する、請求項1からの何れか一項に記載のアクチュエータを備えたケーブルアセンブリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ及びケーブルアセンブリーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水上バイクの船体に設けられているリバースバケットを駆動する技術が開示されている。特許文献1に開示されている水上バイクは、支軸を中心にして回転可能に配置されている操作レバーと、操作レバーに接続されているケーブルと、ケーブルに接続され支持ボルトを中心にして回転可能に配置されているレバーと、レバーによって回転するリバースバケットとを備えている。
【0003】
操作レバーが操作された場合、操作力は、操作レバーによって増幅された後、ケーブルを介してレバーに伝達され、レバーによってさらに増幅された上でリバースバケットに伝達される。このように、操作力を利用してリバースバケットを手動で回転駆動することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-98949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている従来技術は、操作力を増幅するために複数の機械的倍力機構を利用しているため、当該機構が動作可能なスペースを確保しなければならず、船体の設計の自由度を向上させたいという要望に対応することができないという課題があった。
【0006】
本発明の目的は、船体の設計の自由度を向上させることができるアクチュエータ及びケーブルアセンブリーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアクチュエータは、筐体と、噴出する水流の方向を変更する水流方向変更部から延伸して前記筐体の内部に挿入されるケーブルに接続される回転部材を有し、前記水流方向変更部を操作する操作信号に基づき前記回転部材をモータの力で回転させることにより、前記ケーブルを進退移動させるケーブル駆動部と、を備え
前記水流方向変更部は、水上バイクの水平方向に対する傾斜角度を変更するトリムと、前記水上バイクの進行方向を前進と後進との間で変更するリバースバケットとを有し、
前記ケーブルは、前記トリムから延伸して前記筐体の内部に挿入される第1ケーブルと、前記リバースバケットから延伸して、前記第1ケーブルと一定距離離れて前記第1ケーブルと同じ側から前記筐体の内部に挿入される第2ケーブルとを有し、
前記ケーブル駆動部は、前記第1ケーブルを進退移動させる第1駆動部と、前記第2ケーブルを進退移動させる第2駆動部とを有し、
前記第1駆動部は、前記筐体の内部において、前記第1ケーブルと前記第2ケーブルの間の領域であって、前記第2駆動部よりも前記第1ケーブル及び前記第2ケーブルが前記筐体に挿入される側に配置される。
【0008】
本発明のケーブルアセンブリーは、前記ケーブルが前記筐体の内部から外部に延伸するアウターケーシングと、前記水流方向変更部から延伸して前記アウターケーシングを介して前記筐体の内部に挿通されるインナーケーブルと、前記インナーケーブルの先端を前記回転部材に接続する接続部材とを有し、上記のアクチュエータを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、船体の設計の自由度を向上させることができるアクチュエータ及びケーブルアセンブリーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る水上バイク100の構成例を示す図
図2】ノズル33が噴出する水流の方向を変更する前のトリム34の状態を示す図
図3】ノズル33が噴出する水流の方向を変更した後のトリム34の状態を示す図
図4】船体1が前進するときのリバースバケット35の状態を示す図
図5】船体1が後退するときのリバースバケット35の状態を示す図
図6】アクチュエータ10の外観図
図7】アクチュエータ10の内観図
図8】第1ケーブル駆動部11の外観図
図9】第2ケーブル駆動部12の外観図
図10】第2駆動部12cの分解斜視図
図11】第2駆動部12cの分解斜視図
図12】第2駆動部12cの分解斜視図
図13】ECU13の構成例を示す図
図14】第1駆動部11cの配置位置を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(水上バイク100)
図1は本発明の実施の形態に係る水上バイク100の構成例を示す図である。水上バイク100は、船体1、原動機2、推進機構3、及びケーブルアセンブリー200を備えている。
【0013】
(原動機2)
原動機2は、推進機構3を駆動するモータ、内燃機関などである。原動機2は、船体1の内部に設けられているドライブシャフト4を介して、推進機構3に接続されている。
【0014】
(推進機構3)
推進機構3は、原動機2の回転力によって、船体1の周囲の水を吸引し、吸引した水を噴射することによって、船体1を推進させるための推進力を発生する機構である。
【0015】
(ドライブシャフト4)
ドライブシャフト4は、推進機構3から延伸しているインペラシャフト31に接続されている。インペラシャフト31は、原動機2の回転力をインペラに伝達するためのシャフトである。
【0016】
(ケーブルアセンブリー200)
ケーブルアセンブリー200は、アクチュエータ10、第1ケーブル11a及び第2ケーブル12aを備えている。ケーブルアセンブリー200は、推進機構3が備えている水流方向変更部の角度を調整するための装置である。
【0017】
(アクチュエータ10)
アクチュエータ10は、第1ケーブル11a及び第2ケーブル12aを介して、水流方向変更部に接続されている。第1ケーブル11a及び第2ケーブル12aは、水流方向変更部の角度を調整するための進退移動部材である。なお、アクチュエータ10、第1ケーブル11a、第2ケーブル12a及び水流方向変更部のそれぞれの詳細は後述する。
【0018】
次に図2図3図4及び図5を参照して推進機構3の構成例を説明する。図2はノズル33が噴出する水流の方向を変更する前のトリム34の状態を示す図、図3はノズル33が噴出する水流の方向を変更した後のトリム34の状態を示す図、図4は船体1が前進するときのリバースバケット35の状態を示す図、図5は船体1が後退するときのリバースバケット35の状態を示す図である。
【0019】
推進機構3は、インペラシャフト31、インペラ32、ノズル33、トリム34、及びリバースバケット35を備えている。
【0020】
(インペラシャフト31)
インペラシャフト31はインペラ32に接続されている。インペラ32は、インペラシャフト31とともに回転することによって水を吸引し、吸引した水をノズル33から噴出する動翼である。
【0021】
(ノズル33)
ノズル33は、インペラ32が回転することで吸引された水を特定の方向に噴出する排水口である。
【0022】
(トリム34)
トリム34は、船体1の水平方向に対する傾斜角度を変更するために、ノズル33が噴出する水流の方向を変更する水流方向変更部の一例である。トリム34は、ノズル33の後方に配置されている。
【0023】
トリム34には、図1に示すアクチュエータ10から伸びている第1ケーブル11aが接続されている。第1ケーブル11aが進退移動することにより、トリム34は、ノズル33から噴出する水流の方向を転換するように動作する。
【0024】
例えば、第1ケーブル11aがトリム34に向かって前進した場合、図2に示すようにトリム34の吹き出し口が下側に傾くため、ノズル33から噴出する水流WFは、斜め下方向に流れる。
【0025】
第1ケーブル11aがトリム34から図1に示すアクチュエータ10に向かって後退した場合、図3に示すようにトリム34の吹き出し口が上側に傾くため、ノズル33から噴出する水流WFは、斜め上方向に流れる。
【0026】
(リバースバケット35)
リバースバケット35は、トリム34から噴出する水流WFの方向を変更する水流方向変更部の一例である。リバースバケット35は、船体1の船首からトリム34を見て、トリム34の後方に配置されている。
【0027】
リバースバケット35には、図1に示すアクチュエータ10から伸びている第2ケーブル12aが接続されている。第2ケーブル12aが進退移動することにより、第2ケーブル12aに接続されているリバースバケット35は、トリム34から噴出する水流WFの方向を転換するように動作する。
【0028】
例えば、第2ケーブル12aがリバースバケット35から図1に示すアクチュエータ10に向かって後退した場合、図4に示すように、リバースバケット35はトリム34の吹き出し口を開放するように回転する。
【0029】
この場合、トリム34から噴出する水流WFは、船体1の後方に向かって流れる。これにより船体1を前進させることができる。
【0030】
この状態から、第2ケーブル12aがリバースバケット35に向かって前進した場合、図5に示すように、リバースバケット35は、トリム34の吹き出し口を塞ぐように回転する。
【0031】
この場合、トリム34から噴出する水流WFは、船体1の斜め前方に向かって流れる。これにより、船体1を後退させることができる。
【0032】
次に図6及び図7を参照して、トリム34及びリバースバケット35を駆動するアクチュエータ10の構成例を説明する。図6はアクチュエータ10の外観図、図7はアクチュエータ10の内観図である。
【0033】
(アクチュエータ10)
アクチュエータ10は、ECU(Electronic Control Unit)13と、筐体14と、筐体14の開口部を閉塞する蓋15と、シール部材16と、ケーブル駆動部140とを備えている。
【0034】
アクチュエータ10は、操作信号に基づき回転部材をモータの力で回転させることにより、ケーブルを進退移動させる。操作信号は、不図示のトリム操作部から送信されるトリム操作信号、不図示のノズル操作部から送信されるノズル操作信号などを含む。
【0035】
トリム操作部は、図4に示すトリム34の角度を調整するための人が操作するスイッチである。ノズル操作部は、図4に示すリバースバケット35の角度を、前進シフト位置、後退シフト位置などに設定するためのスイッチである。
【0036】
(筐体14)
筐体14は、ECU13及びケーブル駆動部140を収納する。筐体14は、ケーブル駆動部140に接続されている第1ケーブル11a及び第2ケーブル12aのそれぞれの延伸方向D1の長さが、延伸方向D1と直交する方向D2の長さよりも長い略直方体の形状を有する。
【0037】
筐体14の短辺部141には、ケーブル導入部14a、ケーブル導入部14b及び配線導入部14cが設けられている。
【0038】
ケーブル導入部14aは、第1ケーブル11aを筐体14に導入する導入孔と、シール構造とを有する。当該シール構造は、当該導入孔と第1ケーブル11aとの間の隙間を介して筐体の外部から筐体14の内部に水が浸入することを防ぐ。
【0039】
ケーブル導入部14bは、第2ケーブル12aを筐体14に導入する導入孔と、シール構造とを有する。当該シール構造は、当該導入孔と第2ケーブル12aとの間の隙間を介して筐体の外部から筐体14の内部に水が浸入することを防ぐ。
【0040】
配線導入部14cは、ECU13に接続されるケーブル群13aを筐体14に導入する導入孔と、当該導入孔とケーブル群13aとの間の隙間を介して筐体の外部から筐体14の内部に水が浸入することを防ぐシール構造とを有する。
【0041】
ケーブル群13aは、ECU13及びモータに電力を供給する配線、前述した操作信号が伝送される配線などを含む。
【0042】
(蓋15)
蓋15は、筐体14の開口部を閉塞するように、筐体14に固定される。蓋15の筐体14への固定には締結部材17が利用される。
【0043】
(シール部材16)
シール部材16は、筐体14の内部空間を封止する部材である。シール部材16は、耐水性、耐熱性、及び耐薬品性に優れた弾性材料、例えばシリコンゴムで構成されている。シール部材16は、筐体14の開口部を形成する縁部に設けられている。
【0044】
蓋15が筐体14にネジ止めされることにより、シール部材16が圧縮されて、筐体14と蓋15との間の隙間が狭くなる。これにより筐体14の内部空間が封止される。
【0045】
(第1ケーブル11a)
第1ケーブル11aは、アウターケーシング11a1と、トリム34から延伸してアウターケーシング11a1を介して筐体14の内部に挿通されるインナーケーブル11a2と、インナーケーブル11a2の先端を回転部材11mに接続する接続部材11a3とを有する。
【0046】
アウターケーシング11a1は、ケーブル導入部14aから筐体14の外部に向かって一定距離延伸するとともに、ケーブル導入部14aから筐体14の内部に向かって一定距離延伸する中空部材である。なお、本実施形態では、アウターケーシング11a1は、ケーブル導入部14aから筐体14の内部に向かって一定距離延伸する中空部材と、ケーブル導入部14aから筐体14の外部に向かって一定距離延伸する可撓性の中空部材とにより構成される。
【0047】
アウターケーシング11a1は、インナーケーブル11a2の延伸方向における一定領域を保持しながら、インナーケーブル11a2を筐体14の内部から外部へ案内し、又は筐体14の外部から内部へ案内する。これにより、インナーケーブル11a2を所定の経路で配策することができる。
【0048】
アウターケーシング11a1の両端部には、インナーケーブル11a2とアウターケーシング11a1との間の隙間を埋めるキャップ部材が設けられている。
【0049】
インナーケーブル11a2は、鋼線を螺旋状に巻いて形成した線材の表面に樹脂をコーティングした可とう性を有するケーブルである。本実施の形態では、インナーケーブル11a2本体の先端に中実のロッド部材が接続され、ロッド部材の先端側に接続部材11a3が接続され、インナーケーブル11a2本体がアウターケーシング11a1の内部に配置され、ロッド部材がアウターケーシング11a1から露出するように配置されている。
【0050】
接続部材11a3は、インナーケーブル11a2に連結される連結部と、ロックピンが挿入される係合孔とを一体に形成した部材である。ロックピンは金属製の柱状部材である。係合孔にロックピンが挿入されることにより、インナーケーブル11a2は、ロックピンを介して回転部材11mに接続される。
【0051】
(第2ケーブル12a)
第2ケーブル12aは、アウターケーシング12a1と、リバースバケット35から延伸してアウターケーシング12a1を介して筐体14の内部に挿通されるインナーケーブル12a2と、インナーケーブル12a2の先端を回転部材12mに接続する接続部材12a3とを有する。
【0052】
アウターケーシング12a1は、ケーブル導入部14bから筐体14の外部に向かって一定距離延伸するとともに、ケーブル導入部14bから筐体14の内部に向かって一定距離延伸する中空部材である。なお、本実施形態では、アウターケーシング12a1は、ケーブル導入部14bから筐体14の内部に向かって一定距離延伸する中空部材と、ケーブル導入部14bから筐体14の外部に向かって一定距離延伸する可撓性の中空部材とにより構成される。
【0053】
アウターケーシング12a1は、インナーケーブル12a2の延伸方向における一定領域を保持しながら、インナーケーブル12a2を筐体14の内部から外部へ案内し、又は筐体14の外部から内部へ案内する。これにより、インナーケーブル12a2を所定の経路で配策することができる。
【0054】
アウターケーシング12a1の両端部には、インナーケーブル12a2とアウターケーシング12a1との間の隙間を埋めるキャップ部材が設けられている。
【0055】
インナーケーブル12a2は、インナーケーブル11a2と同様に、鋼線を螺旋状に巻いて形成した線材の表面に樹脂をコーティングした可とう性を有するケーブルである。本実施の形態では、インナーケーブル12a2本体の先端に中実のロッド部材が接続され、ロッド部材の先端側に接続部材12a3が接続され、インナーケーブル12a2本体がアウターケーシング12a1の内部に配置され、ロッド部材がアウターケーシング12a1から露出するように配置されている。
【0056】
接続部材12a3は、インナーケーブル12a2に連結される連結部と、ロックピンが挿入される係合孔とを一体に形成した部材である。係合孔にロックピンが挿入されることにより、インナーケーブル12a2は、ロックピンを介して回転部材12mに接続される。
【0057】
(ケーブル駆動部140)
ケーブル駆動部140は、第1ケーブル11aを進退移動させる第1ケーブル駆動部11と、第2ケーブル12aを進退移動させる第2ケーブル駆動部12と、第1ケーブル駆動部11及び第2ケーブル駆動部12を制御するECU13とを備えている。
【0058】
次に図8を参照して第1ケーブル駆動部11の構成を具体的に説明する。図8は第1ケーブル駆動部11の外観図である。
【0059】
(第1ケーブル駆動部11)
第1ケーブル駆動部11は、第1ケーブル11aを駆動する動力源である第1モータ11bと、第1モータ11bの回転運動を第1ケーブル11aに伝達することで第1ケーブル11aを駆動する第1駆動部11cとを備えている。
【0060】
第1駆動部11cは回転部材11mを備えている。回転部材11mには第1ケーブル11aが接続されている。回転部材11mが回転することによって、第1モータ11bの回転運動を、第1ケーブル11aが直線移動する直線運動に変換される。
【0061】
回転部材11mは、回転部材11mの回転方向におけるニュートラルポジションPを中心にして、第1回転方向CDに回転し、又は、第1回転方向とは反対側の第2回転方向CCDに回転する。第1回転方向CDは、回転部材11mを時計回り方向に回転させる方向である。
【0062】
ニュートラルポジションPは、回転部材11mがアップポジションPからダウンポジションPまで回転するときの中間位置である。
【0063】
アップポジションPは、図4に示されるトリム34の吹き出し口が斜め上方に向かうように、トリム34の角度を所定角度に設定する位置である。
【0064】
アップポジションPは、例えば、前述したトリム操作部に設けられているボタンが押された場合に設定される回転部材11mの回転方向における基準位置である。
【0065】
また、アップポジションPは、例えば図1に示される船体1へアクチュエータ10を組み付けるために、船体1の組み立て工場に向けてアクチュエータ10を出荷するときに設定される回転位置である。
【0066】
ダウンポジションPは、図4に示されるトリム34の吹き出し口が斜め下方に向かうように、トリム34の角度を所定角度に設定する位置である。
【0067】
回転部材11mがニュートラルポジションPから第1回転方向CDにアップポジションPまで回転したときの回転角度θは、回転部材11mがニュートラルポジションPから第2回転方向CCDにダウンポジションPまで回転したときの回転角度θと等しい。なお、回転部材11mのニュートラルポジションPは、ノズル33から噴出する水流WFが、トリム34の吹き出し口から略水平に流出される角度であれば、回転部材11mがアップポジションPからダウンポジションPまで回転するときの中間位置でなくてもよい。
【0068】
次に図9を参照して第2ケーブル駆動部12の構成例を説明する。図9は第2ケーブル駆動部12の外観図である。
【0069】
(第2ケーブル駆動部12)
第2ケーブル駆動部12は、第2ケーブル12aを駆動する動力源である第2モータ12bと、第2モータ12bの回転運動を第2ケーブル12aに伝達することで第2ケーブル12aを駆動する第2駆動部12cとを備えている。
【0070】
第2駆動部12cは回転部材12mを備えている。回転部材12mには第2ケーブル12aが接続されている。回転部材12mが回転することによって、第2モータ12bの回転運動を、第2ケーブル12aが直線移動する直線運動に変換される。
【0071】
回転部材12mは、回転部材12mの回転方向におけるニュートラルポジションPから、第1回転方向CDに回転し、又は、第1回転方向CDとは反対側の第2回転方向CCDに回転する。第1回転方向CDは、回転部材12mを時計回り方向に回転させる方向である。
【0072】
ニュートラルポジションPは、回転部材12mがリバースポジションPからフォワードポジションPまで回転するときの中間位置である。ニュートラルポジションPにおいては、リバースバケット35は中間位置に位置するため、船体1は停止又は微速で前進する。
【0073】
フォワードポジションPは、図4に示されるリバースバケット35がトリム34の吹き出し口を開放するように、リバースバケット35の角度を所定角度に設定する位置である。
【0074】
リバースポジションPは、図4に示されるリバースバケット35がトリム34の吹き出し口を塞ぐように、リバースバケット35の角度を所定角度に設定する位置である。
【0075】
リバースポジションPは、例えば、前述したバケット操作部に設けられているボタンが押された場合に設定される回転部材12mの回転方向における基準位置である。
【0076】
また、リバースポジションPは、例えば、図1に示される船体1へアクチュエータ10を組み付けるために、船体1の組み立て工場に向けてアクチュエータ10を出荷するときに設定される回転位置である。
【0077】
回転部材12mがニュートラルポジションPから第1回転方向CDにリバースポジションPまで回転したときの回転角度θは、回転部材12mがニュートラルポジションPから第2回転方向CCDにフォワードポジションPまで回転したときの回転角度θと等しい。なお、回転部材12mのニュートラルポジションPは、船体1が停止状態を維持でき、又は、船体1が微速で前進できるのであれば、回転部材12mがニュートラルポジションPから第1回転方向CDにリバースポジションPまで回転したときの回転角度の中間位置でなくてもよい。
【0078】
次に図10図11及び図12を参照して、図9に示す第2駆動部12cの構成を詳細に説明する。なお、図8に示す第1駆動部11cは第2駆動部12cと同様に構成されているため、以下では第2駆動部12cの構成に関して説明し、第1駆動部11cの構成の詳細に関しては説明を省略する。
【0079】
(第2駆動部12c)
図10図11、及び図12のそれぞれは、第2駆動部12cの分解斜視図である。第2駆動部12cは、ハウジング12d、回転ギア12e、ハウジング12f、締結部材12g、入力ギア12h、遊星ギア12i、キャリアプレート12j、支軸12k、回転部材12m、ブッシュ12l、及びサポートプレート12nを備えている。
【0080】
ハウジング12d、回転ギア12e、ハウジング12f、入力ギア12h、キャリアプレート12j、回転部材12m、ブッシュ12l及びサポートプレート12nは、この順で、同軸に配列されている。
【0081】
ハウジング12dは、第2モータ12bを固定するとともに、回転ギア12eを収納する。回転ギア12eは、第2モータ12bの回転を減速してその回転力を入力ギア12hに伝達するためのウォームギヤ、ウォームホイールなどを組み合わせた歯車である。
【0082】
回転ギア12eは、ハウジング12dからハウジング12fに向かって突き出る形状の歯車を有する。当該歯車は、ハウジング12fに収納されている入力ギア12hと噛み合う。
【0083】
入力ギア12hは、回転ギア12eの回転を減速してその回転力を複数の遊星ギア12iに伝達する歯車である。入力ギア12hは、ハウジング12fにおいて、回転ギア12eのハウジング12fに向かって突き出る形状の歯車と同軸に設けられている。
【0084】
図12に示すように、入力ギア12hの内周部には、内歯12h1が形成されている。内歯12h1は、図10に示す回転ギア12eと噛み合う歯車である。
【0085】
また入力ギア12hの外周部には、外歯12h2が形成されている。外歯12h2は、遊星ギア12iの一次ギア12i1と噛み合う歯車である。
【0086】
遊星ギア12iは、互いに外径が異なる一次ギア12i1及び二次ギア12i2を有する。一次ギア12i1及び二次ギア12i2は同軸に設けられている。
【0087】
一次ギア12i1は、その外径が二次ギア12i2の外径よりも小さい歯車である。一次ギア12i1は、入力ギア12hの外歯12h2と噛み合うとともに、図10に示すハウジング12fの内周部に形成されている内歯12f1と噛み合う。
【0088】
二次ギア12i2は、図11に示す環状部12m1の内歯12m4と噛み合う歯車である。環状部12m1は、回転部材12mの一部を構成しており、複数の遊星ギア12iを囲むように環状に形成されている。内歯12m4は、複数の遊星ギア12iのそれぞれと噛み合う歯車である。内歯12m4は、環状部12m1の内周部に形成されている。
【0089】
回転ギア12e、入力ギア12h、遊星ギア12i、内歯12f1、及び内歯12m4は、第2モータ12bの回転を回転部材12mに伝達する遊星歯車機構を構成している。
【0090】
外径が異なる一次ギア12i1及び二次ギア12i2を遊星ギア12iに設けることにより、減速比を大きくすることができるため、ハウジング12fのサイズが大きくなることを抑制しながら、回転部材12mの回転トルクを高めることができる。
【0091】
また回転部材12mの回転トルクを高めることができるため、高トルク型の特殊仕様のモータを用いることなく、第2ケーブル駆動部12を製造することができる。従って、第2ケーブル駆動部12の設計の自由度が向上するとともに、第2ケーブル駆動部12の製造コストを低減することができる。
【0092】
また、リバースバケット35に大きな外力が作用することで、回転部材12mに大きな引張力が採用した場合でも、外径が大きい二次ギア12i2に回転部材12mの内歯12m4が噛み合う構造を採用することで、遊星ギア12iの破損を抑制できる。従って、第2駆動部12cの耐久性が向上し、第2駆動部12cのメンテナンスコストの上昇を抑制でき、また第2駆動部12cの信頼性が大幅に向上する。
【0093】
環状部12m1の外周部にはアーム12m2が設けられている。アーム12m2は、環状部12m1の外周部から環状部12m1の半径方向に一定距離延伸している。
【0094】
アーム12m2の先端付近には挿入孔12m3が形成されている。挿入孔12m3には前述したロックピンが挿入される。
【0095】
環状部12m1とハウジング12fとの間には、キャリアプレート12jが設けられている。
【0096】
キャリアプレート12jのハウジング12fと対向する面には、複数の支軸12kが設けられている。複数の支軸12kは、キャリアプレート12jの周方向に、互いに一定距離隔てて配列されている。支軸12kは遊星ギア12iの中心に形成されている穴に挿入される。これにより、遊星ギア12iは支軸12kに回転可能に支持される。
【0097】
従って、入力ギア12hの回転に伴い、複数の遊星ギア12iがハウジング12fの内歯12f1上を移動した場合でも、複数の遊星ギア12iが互いに接触することを防止できる。
【0098】
なお、本実施の形態の形態に係る第2駆動部12cは、3つの遊星ギア12iを備えているが、遊星ギア12iの数は3つに限定されず、2つ以上であればよい。ただし、遊星ギア12iの数を3つ以上とした場合、回転部材12mを遊星ギア12iに対して安定して設置できる。また、複数の遊星ギア12iと回転部材12mの内歯12m4との接触面積が増加するため、回転部材12mの回転を安定させることができ、また、第2駆動部12cの機械的強度を向上させることができる。このため、遊星ギア12iの数は3つ以上が好ましい。
【0099】
また、複数の遊星ギア12iは、キャリアプレート12jの周方向に、互いに一定距離隔てて等間隔に配列されることが好ましい。この構成により、回転部材12mの回転をより安定させることができる。
【0100】
ブッシュ12lは、回転部材12mとサポートプレート12nとの間に設けられている環状の部材である。ブッシュ12lを設けることにより、回転部材12mの回転摺動抵抗を減少させることができる。従って、回転部材12mの摩耗が抑制されて、第2駆動部12cの耐久性が向上する。
【0101】
ブッシュ12lの中心には挿入軸12l1が形成されている。挿入軸12l1は、サポートプレート12n側が凸となり、回転部材12m側が凹となるよう構成されており、サポートプレート12n側に凸となる部分がサポートプレート12nに設けられた軸孔に挿入される。
【0102】
軸部12m5は、環状部12m1の中心に設けられており、ハウジング12f側に突出し、キャリアプレート12jに挿入される。軸部12m5の先端は入力ギア12hの端面に接続され、入力ギア12hの浮き上がりを防止する。軸部12m6は、環状部12m1の中心に設けられている。軸部12m6は、ブッシュ12l側に突出した形状を有しており、ブッシュ12lの回転部材12m側の凹となる部分に挿入されることにより、回転可能に支持されている。
【0103】
環状部12m1のハウジング12f側とは反対側の面には、サポートプレート12nがブッシュ12lを介して設けられている。サポートプレート12nは、回転部材12mを回転可能に支持しながら、ハウジング12fにネジ止めさせる。
【0104】
これにより、ハウジング12fに組み付けられた回転部材12mがハウジング12fから脱落することを防止しながら、回転部材12mの回転が許容される。ハウジング12fは、締結部材12gによりハウジング12dに対して固定される。
【0105】
このように構成されている第2ケーブル駆動部12では、第2モータ12bが回転すると、第2モータ12bの回転力が回転ギア12eから入力ギア12hに伝達されて、入力ギア12hが回転する。
【0106】
入力ギア12hが回転すると、遊星ギア12iがハウジング12fの内歯12f1上を回転しながら移動する。このとき、入力ギア12hの回転が遊星ギア12iで減速され、さらに遊星ギア12iの回転が、遊星ギア12iを構成する2種類の歯車によってさらに減速される。遊星ギア12iの回転力が環状部12m1に伝達されると、環状部12m1に接続されるアーム12m2が、環状部12m1を中心にして回転する。
【0107】
これにより、アーム12m2に接続されている第2ケーブル12aが進退移動して、第2ケーブル12aに接続されているリバースバケット35が動作する。
【0108】
次に図13を参照してECU13の構成例を説明する。図13はECU13の構成例を示す図である。
【0109】
(ECU13)
ECU13は、ケーブル駆動部140を制御するマイクロコンピュータである。ECU13は、CPU(Central Processing Unit)などで構成される制御部13Aと、メモリなどで構成される記憶部13Bを備えている。
【0110】
(制御部13A)
制御部13Aは、第1モータ制御部13A1、第2モータ制御部13A2、及び基準位置設定部13A3を備えている。
【0111】
(第1モータ制御部13A1)
第1モータ制御部13A1は、前述したトリム操作部から送信されるトリム操作信号に基づき、第1モータ11bの回転量を制御する。
【0112】
(第2モータ制御部13A2)
第2モータ制御部13A2は、前述したノズル操作部から送信されるノズル操作信号に基づき、第2モータ12bの回転量を制御する。
【0113】
(記憶部13B)
記憶部13Bは、図5に示される回転部材11mの回転方向におけるニュートラルポジションP、アップポジションP、及びダウンポジションPに関する情報を記憶する。
【0114】
また記憶部13Bは、図6に示される回転部材12mの回転方向におけるニュートラルポジションP、フォワードポジションP、及びリバースポジションPに関する情報を記憶する。
【0115】
(基準位置設定部13A3)
基準位置設定部13A3は、第1ケーブル11aが接続される前に、第1モータ11bの回転量に基づき、図8に示す第1ケーブル駆動部11の回転方向における基準位置であるアップポジションPを、所定の位置に設定する。基準位置設定部13A3は、記憶部13Bに保存されているアップポジションPに関する情報を、所定の位置に更新する。
【0116】
また、基準位置設定部13A3は、第2ケーブル12aが接続される前に、第2モータ12bの回転量に基づき、図9に示す第2ケーブル駆動部12の回転方向における基準位置であるリバースポジションPを、所定の位置に設定する。基準位置設定部13A3は、記憶部13Bに保存されているリバースポジションPに関する情報を、所定の位置に更新する。
【0117】
次に図14を参照して第1駆動部11cの配置位置に関して説明する。図14は第1駆動部11cの配置位置を説明するための図である。
【0118】
図14に示すように、第1駆動部11cは、筐体14の内部において、第1ケーブル11aと第2ケーブル12aの間の領域Aであって、第2駆動部12cよりも、第1ケーブル11a及び第2ケーブル12aが筐体14に挿入される側(筐体14の短辺部141側)に配置されている。
【0119】
このように構成することで、第1駆動部11cに接続されている第1ケーブル11aが第2駆動部12cに干渉することを防止するために、延伸方向D1において第1駆動部11cを第2駆動部12cから遠ざけて配置する必要がなくなる。また、延伸方向D1と直交する方向D2において第1駆動部11cを第2駆動部12cから遠ざけて配置する必要がなくなる。
【0120】
その結果、筐体14の内部において余分なスペースがなくなり、図1に示すアクチュエータ10を小型化でき、水上バイク100の船体1の設計の自由度が向上する。
【0121】
また図14に示すように、第1駆動部11cは、制御部を構成しているECU13と第2駆動部12cとの間に設けられる。
【0122】
このように構成することで、第2駆動部12cの回転部材12mがECU13に干渉することを避けるために、筐体14の内部に余分なスペースを設ける必要がなくなる。
【0123】
その結果、アクチュエータ10をより一層小型化でき、水上バイク100の船体1の設計の自由度がさらに向上する。
【0124】
また図14に示すように、延伸方向D1に沿った長さが延伸方向D1と直交する方向D2に沿った長さよりも長い略直方体の形状を有する筐体14において、第1駆動部11c及び第2駆動部12cは、第1ケーブル11a及び第2ケーブル12aの延伸方向D1に沿って配列されている。
【0125】
このように構成することで、延伸方向D1と直交する方向D2に沿って第1駆動部11c及び第2駆動部12cを配列した上で、第1駆動部11c又は第2駆動部12cと筐体14の短辺部141との間の領域に、ECU13を配置した場合に比べて、当該領域のスペースを省くことができる。
【0126】
その結果、アクチュエータ10をより一層小型化でき、水上バイク100の船体1の設計の自由度がさらに向上する。
【0127】
なお、本実施の形態に係る第1ケーブル11aは、アウターケーシング11a1を除き、インナーケーブル11a2及び接続部材11a3を備えるように構成してもよい。このように構成した場合でも、例えば、図2に示すトリム34の回転をアシストする付勢部材を用いることで、インナーケーブル11a2が前進したときに、当該付勢部材の復元力によってインナーケーブル11a2の撓みを抑制できるため、インナーケーブル11a2の進退移動が可能である。
【0128】
また本実施の形態に係る第2ケーブル12aは、アウターケーシング12a1を除き、インナーケーブル12a2及び接続部材12a3を備えるように構成してもよい。このように構成した場合でも、例えば、図2に示すリバースバケット35の回転をアシストする付勢部材を用いることで、インナーケーブル12a2が前進したときに、当該付勢部材の復元力によってインナーケーブル12a2の撓みを抑制できるため、インナーケーブル12a2の進退移動が可能である。
【0129】
また本実施の形態に係るケーブル駆動部140は、遊星歯車機構の代わりに、モータの回転を減速してその回転力を回転部材に伝達する他の歯車機構を備えてもよい。ただし、遊星歯車機構を備えることにより、ケーブル駆動部140のサイズに対して大きな減速比を得ることができる。このため、小型でありながら大きな回転トルクを発揮するケーブル駆動部140を製造可能である。
【0130】
以上に説明したように、本実施の形態に係るアクチュエータ10は、筐体14と、噴出する水流の方向を変更する水流方向変更部から延伸して筐体14の内部に挿入されるケーブルに接続される回転部材を有し、水流方向変更部を操作する操作信号に基づき回転部材をモータの力で回転させることにより、ケーブルを進退移動させるケーブル駆動部とを備えるように構成されている。
【0131】
この構成により、操作信号に基づき、ケーブルに接続される回転部材をモータによって回転させることができるため、複数の機械的倍力機構を利用することなく、ケーブルを進退移動させることができる。従って、複数の機械的倍力機構が動作可能なスペースを船体1に設ける必要がなくなり、船体1の設計の自由度が向上する。
【0132】
また、複数の機械的倍力機構が不要になるため、船体1の重量を低減できるとともに、船体1を構成する部品数が低減されることで船体1の製造コストを低減することができる。
【0133】
また、船体1を構成する部品数が低減されることにより、船体1の耐久性が向上し、船体1のメンテナンスコストの上昇を抑制でき、また船体1の信頼性が大幅に向上する。
【0134】
また、可とう性を有するケーブルが水流方向変更部に接続されているため、水流方向変更部から離れた位置にアクチュエータ10を設けることができる。従って、機器の設置スペースが制約される小型の船体1にアクチュエータ10を設ける場合でも、船体1内の空きスペースを有効利用することが可能である。
【0135】
例えば、可とう性を有するケーブルの代わりに、可とう性を有さないロッドを水流方向変更部に接続した場合、アクチュエータ10は水流方向変更部の近傍に配置される。この場合、水流方向変更部の近傍にアクチュエータを設置するためのスペースを確保しなければならず、船体1の設計の自由度が大幅に低下する。また、水流方向変更部の近傍は水が浸入し易い領域であるため、船体1又はアクチュエータ10への追加の防水対策が必要になり得る。
【0136】
これに対して可とう性を有するケーブルを利用することで、船体1又はアクチュエータ10への追加の防水対策が不要になり、船体1の製造コストを低減することができる。また、アクチュエータ10の配置位置の自由度が向上することにより、アクチュエータ10が浸水するリスクを低減できるため、アクチュエータ10のメンテナンスコストを大幅に低減できる。
【0137】
なお本実施の形態のアクチュエータ10では、回転部材12mの長さが回転部材11mの長さよりも長くなるように設定されている。この構成により、回転部材12mの回転半径が回転部材11mの回転半径よりも大きくなり、第2ケーブル12aの進退量を第1ケーブル11aの移動量よりも大きくすることができる。従って、リバースバケット35に向かって延伸している第2ケーブル12aの途中に、第2ケーブル12aの移動量を変更する機構を設けることなく、簡易な構成で、回転量がトリム34の回転量より大きいリバースバケット35を容易に駆動することができる。
【0138】
なお、例えば、以下のような態様も本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0139】
(1)アクチュエータは、筐体と、噴出する水流の方向を変更する水流方向変更部から延伸して前記筐体の内部に挿入されるケーブルに接続される回転部材を有し、前記水流方向変更部を操作する操作信号に基づき前記回転部材をモータの力で回転させることにより、前記ケーブルを進退移動させるケーブル駆動部と、を備える。
【0140】
(2)前記水流方向変更部は、水上バイクの水平方向に対する傾斜角度を変更するトリムと、前記水上バイクの進行方向を前進と後進との間で変更するリバースバケットとを有し、前記ケーブルは、前記トリムから延伸して前記筐体の内部に挿入される第1ケーブルと、前記リバースバケットから延伸して、前記第1ケーブルと一定距離離れて前記第1ケーブルと同じ側から前記筐体の内部に挿入される第2ケーブルとを有し、前記ケーブル駆動部は、前記第1ケーブルを進退移動させる第1駆動部と、前記第2ケーブルを進退移動させる第2駆動部とを有し、前記第1駆動部は、前記筐体の内部において、前記第1ケーブルと前記第2ケーブルの間の領域であって、前記第2駆動部よりも前記第1ケーブル及び前記第2ケーブルが前記筐体に挿入される側に配置される。
【0141】
(3)前記ケーブル駆動部は、前記領域に配置され、前記第1駆動部及び前記第2駆動部をそれぞれ回転させる制御部を、さらに備え、前記第1駆動部は、前記制御部と前記第2駆動部との間に設けられる。
【0142】
(4)前記筐体は、前記第1ケーブル及び前記第2ケーブルの延伸方向に沿った長さが、前記延伸方向と直交する方向に沿った長さよりも長い略直方体の形状を有し、前記第1駆動部及び前記第2駆動部は、前記延伸方向に沿って配列されている。
【0143】
(5)前記ケーブル駆動部は、前記モータの回転を前記回転部材に伝達する遊星歯車機構を、さらに備える。
【0144】
(6)前記遊星歯車機構は、前記モータの回転を入力する入力ギアと、前記入力ギアの周囲に互いに離れて配列され、前記入力ギアの回転が伝達される複数の遊星ギアとを有し、前記回転部材は、前記複数の遊星ギアを囲むように環状に形成されて、前記複数の遊星ギアのそれぞれと噛み合う内歯を有する環状部を有する。
【0145】
(7)前記ケーブルは、前記筐体の内部から外部に延伸するアウターケーシングと、前記水流方向変更部から延伸して前記アウターケーシングを介して前記筐体の内部に挿通されるインナーケーブルと、前記インナーケーブルの先端を前記回転部材に接続する接続部材とを有する。
【0146】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、本開示に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0147】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明に係るアクチュエータ及びケーブルアセンブリーは、船体の設計の自由度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0149】
1 船体
2 原動機
3 推進機構
4 ドライブシャフト
10 アクチュエータ
11 第1ケーブル駆動部
11a 第1ケーブル
11a1 アウターケーシング
11a2 インナーケーブル
11a3 接続部材
11b 第2ケーブル
11b 第1モータ
11c 第1駆動部
11m 回転部材
12 第2ケーブル駆動部
12a 第2ケーブル
12a1 アウターケーシング
12a2 インナーケーブル
12a3 接続部材
12b 第2モータ
12c 第2駆動部
12d ハウジング
12e 回転ギア
12f ハウジング
12f1 内歯
12g 締結部材
12h 入力ギア
12h1 内歯
12h2 外歯
12i 遊星ギア
12i1 一次ギア
12i2 二次ギア
12j キャリアプレート
12k 支軸
12l ブッシュ
12l1 挿入軸
12m 回転部材
12m1 環状部
12m2 アーム
12m3 挿入孔
12m4 内歯
12m5 軸部
12m6 軸部
12n サポートプレート
13 ECU
13a ケーブル群
13A 制御部
13A1 第1モータ制御部
13A2 第2モータ制御部
13A3 基準位置設定部
13B 記憶部
14 筐体
14a ケーブル導入部
14b ケーブル導入部
14c 配線導入部
15 蓋
16 シール部材
17 締結部材
31 インペラシャフト
32 インペラ
33 ノズル
34 トリム
35 リバースバケット
100 水上バイク
140 ケーブル駆動部
141 短辺部
200 ケーブルアセンブリー
A 領域
CCD 第2回転方向
CD 第1回転方向
D1 延伸方向
D2 方向
PD ダウンポジション
PF フォワードポジション
PN ニュートラルポジション
PR リバースポジション
PU アップポジション
WF 水流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14