(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/02 20060101AFI20241002BHJP
B29C 45/77 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B29C45/02
B29C45/77
(21)【出願番号】P 2021173526
(22)【出願日】2021-10-22
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】竹内 慎
(72)【発明者】
【氏名】岡本 良太
(72)【発明者】
【氏名】石川 侑扶
【審査官】浅野 弘一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-117021(JP,A)
【文献】特開2008-114393(JP,A)
【文献】特開2020-090010(JP,A)
【文献】特表2018-503546(JP,A)
【文献】特開2000-049179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/02
B29C 45/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料が収容されるポットが形成された下型と、
前記下型に対向して設けられ、前記ポットに対向する部分にカル部が形成された上型と、
前記ポットに収容された前記樹脂材料を移送可能なプランジャと、
前記上型のうち前記プランジャと対向する位置、又は、前記プランジャの先端部に設けられ、圧力に関する値を検出する第1センサと、
前記プランジャのうち、前記先端部とは異なる部分に設けられ、前記プランジャに加わる力に関する値を検出する第2センサと、
前記第1センサの検出値と前記第2センサの検出値を比較することで、前記プランジャの摺動抵抗を検出する制御部と、
を備える樹脂成形装置。
【請求項2】
前記第1センサは、複数設けられた前記プランジャに対応して複数設けられる、
請求項1に記載の樹脂成形装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1センサの検出値に基づいて、キュア時間を決定す
る、
請求項1又は請求項2に記載の樹脂成形装置。
【請求項4】
前記第2センサは、複数設けられた前記プランジャに対応して複数設けられる、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の樹脂成形装置を用いて成形対象物を樹脂成形する、
樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、キャビティの内部の樹脂圧力(キャビティ圧力)を測定する圧力センサが設けられた樹脂成形装置が開示されている。具体的には、特許文献1には、キャビティにおけるゲート付近と、ゲートから離れた位置に圧力センサを配置する構成が開示されている。圧力センサによって測定された樹脂圧力に基づいてトランスファ機構の動作を制御することで、樹脂圧力や樹脂の充填速度を調節することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1に記載の技術では、圧力センサがキャビティに設けられているため、樹脂材料がキャビティに到達するまでは樹脂圧力を測定することができず、樹脂圧力を詳細に測定することが困難である。樹脂圧力は、例えばトランスファ機構の制御やキュア時間の設定などに用いられるため、樹脂圧力をより詳細に把握することが可能な技術が求められている。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、樹脂圧力を詳細に把握することが可能な樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、この課題を解決するため、本発明に係る樹脂成形装置は、樹脂材料が収容されるポットが形成された下型と、前記下型に対向して設けられ、前記ポットに対向する部分にカル部が形成された上型と、前記ポットに収容された前記樹脂材料を移送可能なプランジャと、前記上型のうち前記プランジャと対向する位置、又は、前記プランジャの先端部に設けられ、圧力に関する値を検出する第1センサと、前記プランジャのうち、前記先端部とは異なる部分に設けられ、前記プランジャに加わる力に関する値を検出する第2センサと、前記第1センサの検出値と前記第2センサの検出値を比較することで、前記プランジャの摺動抵抗を検出する制御部と、を備えるものである。
【0007】
また、本発明に係る樹脂成形品の製造方法は、前記樹脂成形装置を用いて成形対象物を樹脂成形するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、樹脂圧力を詳細に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る樹脂成形装置の全体的な構成を示した平面模式図。
【
図2】樹脂成形品の製造方法の一例を示したフローチャート。
【
図4】トランスファ機構、圧力センサ及びロードセルの配置を示した模式図。
【
図6】ポット内に汚れが付着した状態を模式的に示した正面断面図。
【
図7】第2実施形態に係る成形型の構成を示した正面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、図中に示した矢印U、矢印D、矢印L、矢印R、矢印F及び矢印Bで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、左方向、右方向、前方向及び後方向と定義して説明を行う。
【0011】
<樹脂成形装置1の全体構成>
まず、
図1を用いて、本発明の第1実施形態に係る樹脂成形装置1の構成について説明する。樹脂成形装置1は、半導体チップなどの電子素子(以下、単に「チップ2a」と称する)を樹脂封止し、樹脂成形品を製造するものである。特に本実施形態では、トランスファーモールド法を利用して樹脂成形を行う樹脂成形装置1を例示している。
【0012】
樹脂成形装置1は、構成要素として、供給モジュール10、樹脂成形モジュール20及び搬出モジュール30を具備する。各構成要素は、他の構成要素に対して着脱可能かつ交換可能である。
【0013】
<供給モジュール10>
供給モジュール10は、チップ2aを装着した基板の一種であるリードフレーム(以下、単に「基板2」と称する)、及び樹脂タブレットTを樹脂成形モジュール20へと供給するものである。基板2は、本発明に係る成形対象物の実施の一形態である。なお、本実施形態では基板2としてリードフレームを例示しているが、リードフレーム以外にも、その他種々の基板(ガラスエポキシ製基板、セラミック製基板、樹脂製基板、金属製基板等)を用いることが可能である。供給モジュール10は、主としてフレーム送出部11、フレーム供給部12、樹脂送出部13、樹脂供給部14、ローダ15及び制御部16を具備する。
【0014】
フレーム送出部11は、インマガジンユニット(不図示)に収容された樹脂封止されていない基板2を、フレーム供給部12に送り出すものである。フレーム供給部12は、フレーム送出部11から基板2を受け取り、受け取った基板2を適宜整列させてローダ15に受け渡すものである。
【0015】
樹脂送出部13は、ストッカ(不図示)から樹脂タブレットTを受け取り、樹脂供給部14に樹脂タブレットTを送り出すものである。樹脂供給部14は、樹脂送出部13から樹脂タブレットTを受け取り、受け取った樹脂タブレットTを適宜整列させてローダ15に受け渡すものである。
【0016】
ローダ15は、フレーム供給部12及び樹脂供給部14から受け取った基板2及び樹脂タブレットTを、樹脂成形モジュール20に搬送するものである。
【0017】
制御部16は、樹脂成形装置1の各モジュールの動作を制御するものである。制御部16によって、供給モジュール10、樹脂成形モジュール20及び搬出モジュール30の動作が制御される。また、制御部16を用いて、各モジュールの動作を任意に変更(調整)することができる。
【0018】
なお本実施形態においては、制御部16を供給モジュール10に設けた例を示しているが、制御部16をその他のモジュールに設けることも可能である。また、制御部16を複数設けることも可能である。例えば、制御部16をモジュールごとや装置ごとに設け、各モジュール等の動作を互いに連動させながら個別に制御することも可能である。
【0019】
<樹脂成形モジュール20>
樹脂成形モジュール20は、基板2に装着されたチップ2aを樹脂封止するものである。本実施形態においては、樹脂成形モジュール20は2つ並べて配置される。2つの樹脂成形モジュール20によって基板2の樹脂封止を並行して行うことで、樹脂成形品の製造効率を向上させることができる。樹脂成形モジュール20は、主として成形型(下型110及び上型120)及び型締め機構21を具備する。
【0020】
成形型(下型110及び上型120)は、溶融した樹脂材料を用いて、基板2に装着されたチップ2aを樹脂封止するものである。成形型は、上下一対の型、すなわち、下型110及び上型120(
図3参照)を具備する。成形型には、ヒータ等の加熱部(不図示)が設けられる。
【0021】
型締め機構21は、下型110を上下に移動させることによって、成形型(下型110及び上型120)を型締め又は型開きするものである。
【0022】
<搬出モジュール30>
搬出モジュール30は、樹脂封止された基板2を樹脂成形モジュール20から受け取って搬出するものである。搬出モジュール30は、主としてアンローダ31及び基板収容部32を具備する。
【0023】
アンローダ31は、樹脂封止された基板2を保持して基板収容部32へと搬出するものである。基板収容部32は、樹脂封止された基板2を収容するものである。
【0024】
<樹脂成形装置1の動作の概要>
次に、
図1及び
図2を用いて、上述の如く構成された樹脂成形装置1の動作(樹脂成形装置1を用いた樹脂成形品の製造方法)の概要について説明する。
【0025】
本実施形態に係る樹脂成形品の製造方法は、主として搬入工程S10、樹脂成形工程S20及び搬出工程S30を含む。
【0026】
搬入工程S10は、基板2及び樹脂タブレットTを樹脂成形モジュール20に搬入する工程である。
【0027】
搬入工程S10において、フレーム送出部11は、インマガジンユニット(不図示)に収容された基板2を、フレーム供給部12に送り出す。フレーム供給部12は、受け取った基板2を適宜整列させて、ローダ15に受け渡す。
【0028】
また、樹脂送出部13は、ストッカ(不図示)から受け取った樹脂タブレットTを樹脂供給部14に送り出す。樹脂供給部14は、受け取った樹脂タブレットTのうち必要な個数をローダ15に受け渡す。
【0029】
ローダ15は、受け取った基板2と樹脂タブレットTを樹脂成形モジュール20の成形型に搬送する。基板2と樹脂タブレットTが成形型に搬送された後、搬入工程S10から樹脂成形工程S20に移行する。
【0030】
樹脂成形工程S20は、基板2に装着されたチップ2aを樹脂封止する工程である。
【0031】
樹脂成形工程S20において、型締め機構21は、下型110を上昇させて成形型を型締めする。そして、成形型の加熱部(不図示)によって樹脂タブレットTを加熱して溶融させ、生成された溶融樹脂を用いて基板2を樹脂封止する。樹脂材料が硬化するまでの所定時間(キュア時間)が経過した後、樹脂成形工程S20から搬出工程S30に移行する。具体的には、キュア時間とは、後述するトランスファ軸131の上昇を停止してから、少なくとも型開きした場合に樹脂成形品を適切に離型できる程度に樹脂材料が硬化するまでの時間のことをいう。
【0032】
搬出工程S30は、樹脂封止された基板2を樹脂成形モジュール20から受け取って搬出する工程である。
【0033】
搬出工程S30において、型締め機構21は、成形型を型開きする。そして、樹脂封止された基板2を離型させる。その後、アンローダ31は、基板2を成形型から搬出し、搬出モジュール30の基板収容部32に収容する。この際、樹脂成形された基板2の不要部分(カル、ランナー等)は適宜除去される。
【0034】
<樹脂成形モジュール20の詳細な構成>
次に、樹脂成形モジュール20の構成について、より詳細に説明する。
図3に示すように、樹脂成形モジュール20は、主として下型110、上型120、トランスファ機構130、圧力センサ140、ロードセル150及び型締め機構21を具備する。
【0035】
<下型110>
下型110は、成形型の下部を形成するものである。下型110は、主としてポットブロック111及び下型キャビティブロック112を具備する。
【0036】
ポットブロック111は、供給モジュール10から供給された樹脂タブレットTが収容される部分である。ポットブロック111には、樹脂タブレットTを収容するための貫通孔(ポット111a)が前後に並ぶように複数(本実施形態では、5つ)形成される(
図1参照)。
【0037】
下型キャビティブロック112は、キャビティCの底面を形成するものである。下型キャビティブロック112は、ポットブロック111の左右にそれぞれ配置される。下型キャビティブロック112の上面には、基板2に応じた形状の凹部が適宜形成される。下型キャビティブロック112の凹部には、基板2を配置することができる。
【0038】
<上型120>
上型120は、成形型の上部を形成するものである。上型120は、主としてカルブロック121及び上型キャビティブロック122を具備する。
【0039】
カルブロック121は、下型110のポットブロック111に対向する位置に配置されるものである。カルブロック121の下面には、樹脂材料をキャビティCへと案内するための溝状のカル部121a及びランナ部121bが形成される。カル部121aは、下型110の各ポット111aと上下に対向する位置に形成される。
【0040】
上型キャビティブロック122は、キャビティCの上面を形成するものである。上型キャビティブロック122は、カルブロック121の左右にそれぞれ配置される。上型キャビティブロック122は、下型キャビティブロック112に対向する位置に配置される。上型キャビティブロック122の底面には、樹脂成形品に応じた形状の凹部が適宜形成される。
【0041】
なお、本実施形態では上型120にランナ部121bやキャビティCの上面が形成された例を示しているが、本発明はこれに限るものではない。例えば、下型110の下型キャビティブロック112等に、ランナ部やキャビティCの下面が形成されてもよい。
【0042】
このように構成された上下一対の下型110及び上型120の間に、樹脂成形品に応じた形状のキャビティCが形成される。また、下型110は、型締め機構21によって上下に移動させることができる。
【0043】
<トランスファ機構130>
図3及び
図4に示すトランスファ機構130は、キャビティCへと樹脂材料を供給するものである。トランスファ機構130は、主としてトランスファ軸131、取付部132、プランジャ133及びロードセル134を具備する。
【0044】
トランスファ軸131は、上下に移動可能な部材である。トランスファ軸131は、例えばサーボモータやエアシリンダ等の駆動源(不図示)から伝達される動力によって、上下に任意に移動させることができる。トランスファ軸131は、1つの成形型(下型110)に対して、前後方向に並ぶように複数(本実施形態では、2つ)設けられる(
図4参照)。
【0045】
取付部132は、トランスファ軸131にプランジャ133を取り付けるためのものである。取付部132は、略直方体状に形成される。取付部132は、複数のトランスファ軸131の上部に亘って設けられる。
【0046】
プランジャ133は、ポットブロック111のポット111aに収容された樹脂タブレットT(樹脂材料)を射出してキャビティCへと移送するものである。プランジャ133は、ポット111a内に上下に移動(昇降)可能となるように配置される。プランジャ133の下部は、後述するロードセル150を介して、取付部132の上部に取り付けられる。プランジャ133は、前後方向に並ぶように複数(本実施形態では、5つ)設けられる(
図4参照)。
【0047】
ロードセル134は、トランスファ軸131に加わる荷重を検出するためのものである。ロードセル134は、トランスファ軸131の上部(トランスファ軸131と取付部132との間)に設けられる。本実施形態のロードセル134は、複数のトランスファ軸131のうち、1つのトランスファ軸131に設けられる。ロードセル134を用いてトランスファ軸131に加わる荷重を検出することで、トランスファ機構130による樹脂材料の注入力(トランスファ出力)を検出することができる。この検出値に基づいて、トランスファ出力や、プランジャ133の移動速度等を制御することができる。
【0048】
<圧力センサ140>
圧力センサ140は、キャビティCへと移送される樹脂材料の圧力を検出するためのものである。圧力センサ140は、本発明に係る圧力に関する値を検出する第1センサの実施の一形態である。圧力センサ140は、端面に設けられた弾性変形可能な検出面(ダイヤフラム)の変形量に基づいて、検出面に加わる圧力を検出することができる。圧力センサ140としては、例えば、日本キスラー株式会社製の熱硬化性樹脂用・型内圧センサ(型式:6167A)を用いることができる。
【0049】
圧力センサ140は、カルブロック121のカル部121aのうち、プランジャ133と対向する位置に設けられる。より詳細には、圧力センサ140は、プランジャ133の移動方向(本実施形態では上下方向)から見て、プランジャ133と重複する位置に設けられる。本実施形態においては、圧力センサ140は、プランジャ133と同軸上に設けられる。すなわち、圧力センサ140は、
図3に示す断面視において、プランジャ133の中心を通る上下方向の直線上に位置する。このとき、圧力センサ140は、プランジャ133の直上に位置することになる。圧力センサ140は、検出面を下方に向けた状態で、カルブロック121に埋め込まれるように設けられる。圧力センサ140の下端面(検出面)は、カル部121aの下面と概ね同一平面上に配置される。このように配置されることで、圧力センサ140の検出面は、キャビティCへと移送される樹脂材料に直接触れることができる。すなわち、圧力センサ140は、他の部材を介することなく、樹脂材料の圧力を直接検出することができる。
【0050】
図4に示すように、圧力センサ140は、複数のプランジャ133に対応するように複数設けられる。本実施形態では、5つのプランジャ133それぞれの上方に、圧力センサ140が1つずつ設けられる。このように、各プランジャ133に対応する圧力センサ140をカルブロック121に設けることで、プランジャ133ごとの樹脂圧力を個別に検出することができ、この検出結果を樹脂成形装置1の動作の制御や樹脂成形時の状態把握等に活用することができる。
【0051】
ロードセル150は、プランジャ133に加わる荷重を検出するためのものである。ロードセル150は、本発明に係る力に関する値を検出する第2センサの実施の一形態である。ロードセル150は、プランジャ133の下部(プランジャ133と取付部132との間)に設けられる。本実施形態のロードセル150は、複数のプランジャ133に対応するように複数設けられる。本実施形態では、5つのプランジャ133それぞれの下部に、ロードセル150が1つずつ設けられる。
【0052】
<キュア時間の決定方法>
次に、圧力センサ140の検出値に基づいて、キュア時間を決定する方法について説明する。
【0053】
図5には、樹脂成形工程S20(
図2参照)において、樹脂材料がキャビティCへと移送されて、基板2が樹脂封止される際の圧力センサ140の検出値の時間変化の一例を示している。
図5の横軸は、トランスファ機構130による樹脂材料の移送が開始した時点から経過した時間を示している。
図5の縦軸は、圧力センサ140の検出値(すなわち、樹脂材料の圧力)を示している。なお、以下では説明の便宜上、圧力センサ140により検出された樹脂材料の圧力を、「樹脂圧力」と称する。
【0054】
トランスファ機構130によるトランスファ軸131の上昇が開始されて、樹脂材料の移送が開始される。すると、プランジャ133によってポットブロック111から押し出された樹脂材料が、その直後にプランジャ133の真上に位置する圧力センサ140に接することになる(
図3参照)。したがって圧力センサ140は、
図5に示すように樹脂材料の移送の開始直後から、樹脂圧力を検出することができる。なお、
図5に示す3本の線は、5つ設けられた圧力センサ140のうち、3つの圧力センサ140による検出結果を一例として示したものである。
【0055】
トランスファ機構130による樹脂材料の移送が開始されると、樹脂材料はカル部121a及びランナ部121bを通過してキャビティCへと供給される。
図5に示すように、樹脂材料の移送開始から時間t1まで、樹脂材料がランナ部121b等を流動する際の流動抵抗に応じて、樹脂圧力は上下に変動しながらも徐々に上昇する。
【0056】
時間t1においてキャビティCへの樹脂材料の注入が完了すると、時間t1以降、キュア時間が経過するまで、トランスファ機構130は注入された樹脂材料に対して所定の圧力を加えた状態でトランスファ軸131の上昇を停止し、この状態を維持する。キュア時間が経過した後(
図5の例では、時間t2に達した後)、搬出工程S30(
図2参照)に移行し、樹脂封止された基板2が成形型から搬出される。
【0057】
ここで、キュア時間をどのような値に決定するかは、樹脂成形品の品質向上、及び、生産の効率化の観点から重要である。本実施形態では、圧力センサ140によって検出された樹脂圧力に基づいて、キュア時間を適切な値に決定することができる。
【0058】
図5に示したように、キャビティCへの樹脂材料の注入が完了した後(時間t1以降)、樹脂圧力は徐々に低下する。これは、樹脂材料が徐々に硬化して収縮し、圧力センサ140に加わる圧力が低下するためである。さらにある程度の時間が経過した後(時間t2以降)、樹脂圧力は概ね一定になる。これは、樹脂材料の硬化が概ね完了し、樹脂材料の収縮が終了するためである。
【0059】
したがって、樹脂圧力の低下が終了し、樹脂圧力が概ね一定となる時間t2をキュア時間に決定することで、樹脂材料の硬化の完了後、無駄に長時間待機することなく、搬出工程S30へと移行することができる。キュア時間は、実際の樹脂成形品の製造を開始するよりも前に、試験的に樹脂成形を行い、樹脂圧力の時間変化を検出することで、予め決定することができる。
【0060】
また、キュア時間の決定は、制御部16によって自動的に行うことも可能である。例えば制御部16は、
図5に示す圧力センサ140の検出結果に基づいて、キャビティCへの樹脂材料の注入が完了した時間t1から、樹脂圧力が概ね一定となった時間t2までをキュア時間として自動的に決定することができる。
【0061】
<ポット111aの汚れの検出方法>
次に、圧力センサ140及びロードセル150の検出値を比較して、ポット111a内の汚れの有無を検出する方法について説明する。
【0062】
図6には、ポット111a内(ポット111aの内側面)に汚れAが付着した状態を模式的に示している。樹脂成形を繰り返し行うことで、
図6に示すようにポット111a内には樹脂材料による汚れAが付着することが考えられる。ポット111a内に汚れAが付着すると、プランジャ133の摺動が阻害され、キャビティCへの樹脂材料の移送が正常に行われなくなる可能性がある。そこで、ポット111a内の汚れAの有無を検出し、適切なタイミングでクリーニングを行うことが望ましい。
【0063】
本実施形態では、圧力センサ140及びロードセル150の検出値を比較してポット111a内の汚れAの有無を検出することができる。具体的には、ポット111a内に汚れAが付着していない場合、プランジャ133を上昇させてキャビティCへの樹脂材料の注入を行う際(
図5における時間t1まで)の圧力センサ140の検出値と、この圧力センサ140に対応するロードセル150の検出値は、一定の関係を有する。
【0064】
これに対して、ポット111a内に汚れAが付着すると、プランジャ133の摺動抵抗が増加するため、圧力センサ140の検出値に対して、ロードセル150の検出値が増加することになる。このような圧力センサ140とロードセル150の検出値の関係の変化を検出することで、ポット111a内に汚れAが付着したことを検出することができる。また圧力センサ140の検出値に対するロードセル150の検出値の増加量を検出することで、汚れAの有無だけでなく、汚れAの量(汚れ具合)を検出することもできる。
【0065】
本実施形態では、樹脂成形品の製造時に、制御部16が圧力センサ140とロードセル150の検出値を比較し、プランジャ133の摺動抵抗の変化を検出することで、ポット111aの汚れAを速やかに検出し、適切なタイミングでポット111aのクリーニングを実施することができる。ここで、樹脂成形品の製造時とは、例えば、プランジャ133を上昇させてキャビティCへの樹脂材料の注入を行うときである。
【0066】
特に本実施形態では、圧力センサ140はプランジャ133の真上(プランジャ133の摺動方向の延長線上)に配置されているため、プランジャ133により押し出された樹脂材料の圧力は、ランナ部121b等を介することなく圧力センサ140によって検出される。このため、圧力センサ140の検出値が樹脂材料の流動抵抗の影響を受けにくく、圧力センサ140と、ロードセル150の検出値と、の関係を明確に把握することができる。したがって、汚れAを精度良く検出することができる。
【0067】
なお、各プランジャ133に設けられたロードセル150ではなく、トランスファ軸131に設けられたロードセル134(
図4参照)の検出値を用いてポット111a内の汚れAの有無を検出することも可能である。この場合、トランスファ機構130に設けられたロードセル134の検出値の合計と、このトランスファ機構130によって移送される樹脂の圧力を検出する圧力センサ140の検出値の合計と、を比較することで、ポット111aの汚れAを検出することができる。例えば本実施形態(
図4参照)では、トランスファ軸131に設けられた1つのロードセル134の検出値と、5つの圧力センサ140の検出値の合計値と、を比較することで、ポット111aの汚れAを検出することができる。
【0068】
<第2実施形態>
以下では、圧力センサ140の配置の変形例(第2実施形態)について説明する。
【0069】
上述の第1実施形態(
図3等参照)では、圧力センサ140をカルブロック121のカル部121aに設けた例を示したが、圧力センサ140の配置はこれに限るものではない。第2実施形態(
図7参照)では、圧力センサ140をプランジャ133の先端部に設けた例を示している。
【0070】
図7に示すように、第2実施形態に係る圧力センサ140は、プランジャ133の中心(プランジャ133の軸線上)に配置される。圧力センサ140は、検出面を上に向けた状態で、プランジャ133に埋め込まれるように設けられる。圧力センサ140の上端面(検出面)は、プランジャ133の上面と概ね同一平面上に配置される。このように配置されることで、圧力センサ140の検出面は、キャビティCへと移送される樹脂材料に直接触れることができる。
【0071】
第2実施形態に係る圧力センサ140を用いることで、第1実施形態と同様に、トランスファ機構130による樹脂材料の移送の開始直後から、樹脂圧力を検出することができる。また第1実施形態と同様に、圧力センサ140を用いて、キュア時間の決定、及び、ポット111a内の汚れAの検出を行うことができる。
【0072】
以上の如く、上記実施形態に係る樹脂成形装置1は、樹脂材料が収容されるポット111aが形成された下型110と、前記下型110に対向して設けられ、前記ポット111aに対向する部分にカル部121aが形成された上型120と、前記ポット111aに収容された前記樹脂材料を移送可能なプランジャ133と、前記上型120のうち前記プランジャ133と対向する位置(
図3参照)、又は、前記プランジャ133の先端部(
図7参照)に設けられ、圧力に関する値を検出する圧力センサ140(第1センサ)と、を備えるものである。
【0073】
このように構成することにより、樹脂圧力を詳細に把握することができる。具体的には、プランジャ133と対向する位置、又は、プランジャ133の先端部に設けられた圧力センサ140によって、プランジャ133による樹脂材料の移送直後から、樹脂圧力の検出が可能となる。このようにして検出された樹脂圧力に基づいて、キュア時間の決定やポット111aのクリーニング時期の決定等を行うことができる。
【0074】
また、仮に樹脂圧力を検出するためにキャビティCに直接圧力センサを設ける場合、樹脂成形後の製品表面に圧力センサの跡が成形される。樹脂封止された製品が個片化され、最終製品となった場合に、外観に圧力センサの跡があるものと無いものがあると、これらが同じ品質の製品と認められない可能性があり、好ましくない。これに対して、本実施形態(第1実施形態および第2実施形態)ではキャビティCに直接圧力センサ140を設ける構成ではないため、製品の品質に影響を与えることがない。
【0075】
また、樹脂圧力を把握するために、キャビティCに対向して設けられたエジェクタピンに圧力センサを設け、エジェクタピンに加わる圧力を検出することで樹脂圧力を検出する構成も想定される。しかし、エジェクタピンの摺動抵抗によって、実際の樹脂圧力と圧力センサの検出値には誤差が生じるため、正確な樹脂圧力を検出することは困難である。これに対して、本実施形態(第1実施形態および第2実施形態)では直接樹脂材料と接する部分(プランジャ133の先端部等)に圧力センサ140を設けるため、誤差が生じることがなく、樹脂圧力を精度良く検出することができる。
【0076】
また、一般的に、キャビティCに圧力センサやエジェクタピンが設けられない製品(樹脂成形装置1)もある。このような製品には、本実施形態(第1実施形態および第2実施形態)のようにプランジャ133の先端部等に圧力センサ140を設ける構成が有用である。
【0077】
また、前記圧力センサ140は、複数設けられた前記プランジャ133に対応して複数設けられるものである。
【0078】
このように構成することにより、各プランジャ133によって移送される樹脂の圧力を個別に検出することができ、樹脂圧力をより詳細に把握することができる。
【0079】
また、樹脂成形装置1は、前記圧力センサ140の検出値に基づいて、キュア時間を決定する制御部16をさらに具備するものである。
【0080】
このように構成することにより、キュア時間の決定を容易に行うことができる。特に上記実施形態のように、圧力センサ140によって詳細に検出された樹脂圧力を用いてキュア時間を決定できるため、適切なキュア時間を設定することができる。
【0081】
また、樹脂成形装置1は、前記プランジャ133のうち、前記先端部とは異なる部分に設けられ、前記プランジャ133に加わる力に関する値を検出するロードセル150(第2センサ)をさらに具備し、前記制御部16は、前記圧力センサ140の検出値と前記ロードセル150の検出値を比較するものである。
【0082】
このように構成することにより、プランジャ133に加わる荷重に対して樹脂圧力がどのような値をとっているか比較して把握することができる。また、この比較結果を、樹脂成形装置1の状態(例えば、樹脂圧力の異常の有無等)を把握する情報として利用することができる。
【0083】
また、前記制御部16は、前記圧力センサ140の検出値と前記ロードセル150の検出値を比較することで、前記プランジャ133の摺動抵抗を検出するものである。
【0084】
このように構成することにより、プランジャ133が設けられたポット111a内の汚れの有無を検出することができる。これによって、適切なタイミングでポット111aのクリーニングを行うことができる。
【0085】
また、前記ロードセル150は、複数設けられた前記プランジャ133に対応して複数設けられるものである。
【0086】
このように構成することにより、各プランジャ133に加わる荷重を個別に検出することができる。これによって、各ポット111aの汚れの有無を個別に検出することができる。
【0087】
また、本実施形態に係る樹脂成形品の製造方法は、樹脂成形装置1を用いて成形対象物を樹脂成形するものである。
【0088】
このように構成することにより、樹脂圧力を詳細に把握することができる。また、適切なキュア時間を決定したり、ポット111aの汚れの有無を検出することができるため、樹脂成形品の品質向上や生産効率の向上を図ることができる。
【0089】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想の範囲内で適宜の変更が可能である。
【0090】
例えば、上記実施形態の樹脂成形装置1に用いた構成要素(供給モジュール10等)は一例であり、適宜着脱や交換することが可能である。例えば、樹脂成形モジュール20の個数を変更することが可能である。また、本実施形態の樹脂成形装置1に用いた構成要素(供給モジュール10等)の構成や動作は一例であり、適宜変更することが可能である。
【0091】
また、上記実施形態においては、タブレット状の樹脂材料(樹脂タブレットT)を用いる例を示したが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、樹脂材料としては、タブレット状のものだけでなく、粉粒体状(顆粒状、粉末状を含む)、液状など任意の形態のものを用いることが可能である。
【0092】
また、上記実施形態において例示したトランスファ軸131、プランジャ133、ポット111a等の個数は限定するものではなく、任意に変更することが可能である。また、各種センサ(ロードセル134、圧力センサ140及びロードセル150)の個数も特に限定するものではなく、任意に変更することが可能である。
【0093】
また、上記実施形態においては、複数のプランジャ133に対応するように、複数の圧力センサ140を設けた例を示したが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、プランジャ133と同数の圧力センサ140を設ける必要はなく、圧力センサ140の個数を、プランジャ133の個数よりも少なくすることや、多くすることが可能である。例えば、いずれか1つのプランジャ133に対応するように1つだけ圧力センサ140を設けることも可能である。また、ロードセル150についても同様に、複数のプランジャ133と同数設ける必要はなく、個数を任意に設定することが可能である。
【0094】
また、上記第1実施形態においては、圧力センサ140をカルブロック121(カル部121a)に設けた例を示したが、本発明はこれに限るものではない。圧力センサ140は、プランジャ133と対向する位置、又は、プランジャ133の先端部に設けられ、樹脂の移送開始直後から樹脂圧力を検出できるものであればよく、取り付けられる部材を限定するものではない。
【0095】
また、上記実施形態においては、圧力センサ140をプランジャ133と対向する位置(カルブロック121)に設けた例(
図3参照)、及び、圧力センサ140をプランジャ133の先端部に設けた例(
図7参照)をそれぞれ示したが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、カルブロック121又はプランジャ133のいずれか一方のみに圧力センサ140を設けるのではなく、両方に設けることも可能である。
【0096】
また、上記実施形態においては、制御部16がキュア時間の決定やプランジャ133の摺動抵抗(汚れAの有無)を検出する例を示したが、本発明はこれに限るものではなく、キュア時間等は人の判断によって決定するものであってもよい。この場合、例えば制御部16は、圧力センサ140等の検出値や、圧力センサ140とロードセル150の検出値の比較結果等をディスプレイ等の出力装置に出力することで、キュア時間の決定等に必要な情報を人に報知する構成とすることも可能である。
【0097】
また、上記実施形態においては、圧力センサ140を用いたが、力を検出するセンサを用いて検出された値と面積とから圧力を算出することも可能である。
また、上記実施形態においては、荷重を検出するロードセル134を用いたが、これに代えて力を検出するセンサを用いることも可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 樹脂成形装置
16 制御部
110 下型
111a ポット
120 上型
121a カル部
133 プランジャ
140 圧力センサ
150 ロードセル