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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】不均一繊維流体のリザーバー
(51)【国際特許分類】
   B43K 8/03 20060101AFI20241002BHJP
   B43K 5/02 20060101ALI20241002BHJP
   B43K 7/02 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B43K8/03
B43K5/02
B43K7/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021516464
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 US2019052216
(87)【国際公開番号】W WO2020061492
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】62/734,020
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519406821
【氏名又は名称】ポレックス テクノロジーズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ハリス、デイビッド ブラッドリー
(72)【発明者】
【氏名】スポーラー、ケビン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィエスビツキ、ヤニエ
(72)【発明者】
【氏名】ビラップス、ロナルド ユージーン
(72)【発明者】
【氏名】ロゴヴァ、エレナ
(72)【発明者】
【氏名】ハリス、トーマス イー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ、チャン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン、ティモシー アレン
(72)【発明者】
【氏名】リ、シングオ
(72)【発明者】
【氏名】マオ、グオチャン
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-095270(JP,A)
【文献】特開平10-226191(JP,A)
【文献】特開2004-042262(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0163152(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0041285(US,A1)
【文献】特開2018-122566(JP,A)
【文献】特開昭53-104318(JP,A)
【文献】特表平11-507994(JP,A)
【文献】特公昭46-003613(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 8/03
B43K 5/02
B43K 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが単一成分の繊維を有する、コア構成要素と周囲構成要素を有するロッドを有するリザーバーであって、
前記コア構成要素は、前記周囲構成要素の繊維直径よりも小さい繊維直径を有し、
前記周囲構成要素の繊維直径は、0.5μm~50μmの範囲であり、
前記ロッドは、断面直径を有し、前記ロッドの少なくとも1つの特性は、前記断面直径に沿って線形に変化するものであり、および、
前記少なくとも1つの特性は、毛細管力である、
リザーバー。
【請求項2】
請求項記載のリザーバーにおいて、前記単一成分の繊維の繊維材料は、ポリエステル、ナイロン、アクリル、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、リザーバー。
【請求項3】
請求項記載のリザーバーにおいて、前記単一成分の繊維の繊維表面張力は、30dyn/cm~70dyn/cmの範囲である、リザーバー。
【請求項4】
請求項記載のリザーバーにおいて、前記単一成分の繊維は、安定した繊維、連続繊維フィラメント、繊維トウ、糸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される形態を有する、リザーバー。
【請求項5】
請求項記載のリザーバーにおいて、前記単一成分の繊維は、円、三角形、楕円、ピーナッツ、ジグザグ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される断面形状を有する、リザーバー。
【請求項6】
請求項記載のリザーバーにおいて、前記ロッドが第1の開放端と第2の開放端を有し、前記ロッドのシャフトは、流体不透過性材料で包囲されている、リザーバー。
【請求項7】
請求項記載のリザーバーにおいて、前記ロッドは、毛細管現象によって流体を吸収および放出するように構成され、前記流体の吸収および放出は、前記ロッドの断面直径に沿って変化するように構成される、リザーバー。
【請求項8】
請求項記載のリザーバーにおいて、前記流体はインクである、リザーバー。
【請求項9】
請求項記載のリザーバーにおいて、前記リザーバーは筆記具内に収容されるように構成されている、リザーバー。
【請求項10】
少なくとも1つのリザーバーを有する筆記具であって、前記リザーバーは、
第1の単一成分の繊維を有するコア構成要素と、第2の単一成分の繊維を有する周囲構成要素とを有するロッドであって、
前記第1の単一成分の繊維は、前記第2の単一成分の繊維の繊維直径よりも小さい繊維直径を有し、
前記第2の単一成分の繊維の繊維直径は、0.5μm~50μmの範囲である、
ロッドと、および、
ペン先と
を有し、
前記コア構成要素は第1の毛細管力を有し、前記周囲構成要素は、前記第1の毛細管力よりも小さい第2の毛細管力を有し、
前記リザーバーは、インク液を保持し、前記ペン先に送達するように構成される、
筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2018年9月20日に出願された「Heterogeneous Fiber Fluid Reservoirs」と題する米国仮出願シリアル番号62/734,020の優先権および利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、毛細管現象を介して流体を保持および送達するための不均一繊維流体リザーバーに関するものである。
【背景技術】
【0003】
インクリザーバーのような繊維流体リザーバーは、油性マーカー、ハイライトマーカー、乾式消去マーカーなどの筆記具に広く使用されている。従来のインクリザーバーは均質な構造を採用しており、これは従来のリザーバー内の繊維が均一に分布していることを意味している。従来の均質インクリザーバーの長さまたは断面に沿って、繊維の嵩密度、繊維直径、または毛管力に顕著な違いはなく、この均質性により、リザーバーは全体的に均一な流体吸収および毛管特性を有することになる。米国特許第4,729,808号、米国特許第4,822,193号、米国特許第4,996,107号、米国特許第4,639,397号、および米国特許第4,590,032号には、それぞれ従来のインクリザーバーが記載されている。従来のインクリザーバーは、かなりの量のインクを使用するため、コストの増加や持続可能性の低下につながる。さらに、従来のインクリザーバーは、筆記具の耐用年数の終わりに向かって徐々に低下することを示しているため、消費者が筆記具を交換すべき時期を特定することが困難であった。そのため、改善された書き味、必要なインク量の減少、使用期限の表示をより明確にするための急峻なドロップオフを提供することができる、改良されたインクリザーバー構造が必要とされている。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許出願公開第2006/0163152号明細書
(特許文献2) 欧州特許第1433613号明細書
(特許文献3) 欧州特許出願公開第1093936号明細書
(特許文献4) 米国特許第5,620,641号明細書
(特許文献5) 米国特許第3,133,526号明細書
【発明の概要】
【0004】
本開示は、流体を保持および送達するための不均一繊維流体リザーバーに関するものである。一実施形態では、リザーバーは、コア構成要素および周囲構成要素を有するロッドを含み得る。コア構成要素および周囲構成要素の各々は、繊維を含み得る。いくつかの実施形態では、コア構成要素は、第1の特性を有していてもよく、周囲構成要素は、第1の特性とは異なる第2の特性を有していてもよい。他の実施形態では、コア構成要素および周囲構成要素はそれぞれ、同じ特性に対して異なる値または値の範囲を有していてもよい。例えば、コア構成要素は高い繊維嵩密度を有し、周囲構成要素はコア構成要素よりも低い繊維嵩密度を有していてもよい。
【0005】
一実施形態では、リザーバーは、繊維を含むロッドを含んでいてもよい。ロッドは、断面直径を有していてもよく、ロッドの少なくとも1つの特性は、ロッドの断面直径に沿って値が変化してもよい。いくつかの実施形態では、ロッドの少なくとも1つの特性は、繊維嵩密度、繊維直径、繊維材料、繊維形態、繊維表面張力、毛細管力、流体吸収能力、色、またはそれらの組み合わせから選択されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本開示に従った、14本のロッドの集合体の一実施形態の上面図を示し、各ロッドは、インク含有コア領域と周囲領域とを有する。
図2図2は、本開示に従った、コア構成要素と周囲構成要素とを有するロッドの一実施形態を示す概略図である。
図3図3は、本開示に従った繊維を有するロッドの一実施形態の概略図を示す。
図4図4は、本明細書に記載されている、少なくとも1つのリザーバーおよび/またはロッドを含む筆記具の一実施形態を示す概略図である。
図5図5は、(i)2.0グラムのインク充填量での従来の均質インクリザーバーと、(ii)1.9グラムのインク充填量での本明細書に記載されている不均一インクリザーバーのインク放出プロファイル(メートルの関数としてのmg/メートルでのレイダウンを伴う)を比較したグラフである。
図6図6は、(i)6.0グラムのインク充填量での従来の均質インクリザーバーと、(ii)5.7グラムのインク充填量での本明細書に記載されている不均一インクリザーバーのインク放出プロファイル(メートルの関数としてのmg/メートルでのレイダウンを伴う)を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、記載されている特定のシステム、デバイス、および方法に限定されない。これらは変化する可能性があるからである。説明で使用される用語は、特定のバージョンまたは実施形態を説明することのみを目的としており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0008】
以下の用語は、本願の目的のために、以下に示すそれぞれの意味を持つものとする。特に定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、当業者が一般的に理解しているものと同じ意味を有する。本開示のいかなる内容も、本開示に記載された実施形態が、先行発明のためにそのような開示に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。
【0009】
本明細書では、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかに他を指示しない限り、複数の参照を含む。したがって、例えば、「繊維」への言及は、当業者に知られている1つまたは複数の繊維およびその同等物への言及である。
【0010】
本明細書では、「流体」という用語は、固定された形状を持たず、外圧に屈する物質を含む。例えば、流体には気体と液体が含まれる。本明細書で使用する場合、「流体」および「液体」という用語は互換的に使用することができ、本開示の目的のためには、例えば、本明細書に記載されるような不均一繊維流体リザーバーを含む特定のリザーバーによって指示される流れを有する物質を含む。本明細書に記載の流体の例には、筆記具インク、インクジェットインク、化粧品組成物、ファンデーション、香水、日焼け止め、オイル、ゲル、液体治療剤、および他の同様の液体および流体を含むことができる。
【0011】
特定の実施態様において、本開示は、不均一繊維流体リザーバーに関する。本明細書で使用される場合、「不均一」繊維流体リザーバーは、製造中に単一のリザーバーに結合された異なる識別可能な領域を有し、識別可能な領域は異なる特性を有する。特定の実装形態では、特性は、リザーバーの1つまたは複数の寸法に沿って徐々に変化する可能性がある。他の実装形態では、特性は、リザーバーの1つまたは複数の寸法に沿って急激に変化し得る。いくつかの実装形態では、リザーバーの1つまたは複数の寸法に沿った1つまたは複数の特性の変化は、制御された変化である。
【0012】
不均一繊維流体リザーバー
ここで議論されているように、改善された書き味(重力に逆らった改善されたインク送達を含む)、必要なインク量の減少、および使用期限の表示をより明確にするための急峻なドロップオフを提供することができる、改良されたインクリザーバー構造の必要性が存在する。不均一繊維流体リザーバーは、そのような改善を提供することができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、リザーバーは、1つまたは複数のロッドを含み得る。一実施形態では、ロッドは、「ロッドリザーバー」と呼ばれることがある。特定の実施形態では、各ロッドは、シリンダーを含み得、実質的に円形の断面形状を有してもよい。いくつかの実施形態では、ロッドは、円形、楕円形、三葉形、正方形、長方形、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される断面形状を有し得る。一実施形態では、リザーバーは、筆記具内に収容されるように構成することができる。例えば、図1は、14個のリザーバーの集合体100の一実施形態を示しており、各リザーバーは、ロッド110を含む。一実施形態では、各ロッドは、1つまたは複数の繊維を含み得る。一実施形態では、各ロッドは、第1の開放端と、任意に第2の開放端とを有し得る。いくつかの実施形態では、ロッドのシャフト(すなわち、開放端(複数可)間の長さ)は、流体不透過性材料で包囲されてもよい。特定の実施形態では、流体不透過性材料は、液体不透過性ポリマーフィルムを有し得る。
【0014】
特定の実施形態では、ロッドは、コア構成要素と周囲構成要素とを有し得、コア構成要素と周囲構成要素とのそれぞれは、繊維を有し得る。図1は、複数のロッド110を有する集合体100の一実施形態を示しており、各ロッドは、コア構成要素120と周囲構成要素130とを含んでいる。各ロッド110のコア構成要素120は、各ロッドの周囲構成要素130よりも高い毛細管力を有する。図1のコア構成要素120は、一例としてインクで飽和しているが、周囲構成要素130はそうではなく、コア構成要素と周囲構成要素との間のウィッキング特性のばらつきや不均一性を示している。具体的には、図1は、ロッド110の集合体100の底部を黒インク溶液に浸した後に撮影した上面図である。図1は、各ロッド内で、黒インクの分布が不均一であることを示している。コア構成要素120は、より高い毛細管力を有しており、その結果、重力に逆らって、コア構成要素の底部からコア構成要素の上部へのインクの送達が、周囲構成要素130の底部から周囲構成要素の上部へのインクの送達よりも速くなることがわかる。同様に、図2は、コア構成要素120および周囲構成要素130を有するロッド110の一実施形態を示す概略図である。
【0015】
一実施形態では、ロッド110のコア構成要素120およびロッドの周囲構成要素130は、それぞれ1つまたは複数の特性を有してもよい。いくつかの実施形態では、ロッド110のコア構成要素120は、第1の特性を有してもよく、ロッドの周囲構成要素130は、第2の特性を有してもよい。いくつかの実施形態では、第1の特性は第2の特性と異なっていてもよく、他の実施形態では、第1の特性と第2の特性は同じ特性であっても、値が異なっていてもよい。他の実施形態では、コア構成要素120および周辺構成要素130はそれぞれ、同じ特性に対して異なる値または値の範囲を有していてもよい。例示すると、例えば、コア構成要素120は高い繊維嵩密度を有していてもよく、周囲構成要素130はコア構成要素よりも低い繊維嵩密度を有していてもよい。特定の実施形態では、1つ以上の特性、および/または第1の特性と第2の特性は、繊維嵩密度、繊維径、繊維材料、繊維形態、繊維表面張力、毛細管力、流体吸収能力、色、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0016】
実施形態では、1つまたは複数の特性のいずれかが、ロッド110内の値の範囲にわたって変化し得る。特定の実施形態では、特性は、リザーバーの1つまたは複数の寸法に沿って徐々に変化してもよいが、他の実施形態では、特性は、リザーバーの1つまたは複数の寸法に沿って急激に変化してもよい。いくつかの実施態様では、リザーバーの1つ以上の寸法に沿った1つ以上の特性の変化は、制御された変化である。
【0017】
いくつかの実施形態では、繊維嵩密度(すなわち、個々の繊維によって形成されるマトリックス密度)は、約0.01g/cm~約0.4g/cmの値の範囲であってもよい。ロッドの任意の構成要素における繊維嵩密度は、例えば、約0.01g/cm、約0.02g/cm、約0.03g/cm、約0.04g/cm、約0.05g/cm、約0.06g/cm、約0.07g/cm、約0.08g/cm、約0.09g/cm、約0.10g/cm、約0.11g/cm、約0.12g/cm、約0.13g/cm、約0.14g/cm、約0.15g/cm、約0.16g/cm、約0.17g/cm、約0.18g/cm、約0.19g/cm、約0.2g/cm、0.21g/cm、約0.22g/cm、約0.23g/cm、約0.24g/cm、約0.25g/cm、約0.26g/cm、約0.27g/cm、約0.28g/cm、約0.29g/cm、約0.3g/cm、0.31g/cm、約0.32g/cm、約0.33g/cm、約0.34g/cm、約0.35g/cm、約0.36g/cm、約0.37g/cm、約0.38g/cm、約0.39g/cm、約0.4g/cm、または、終点を含むこれらの値の任意の2つの間の任意の範囲である。
【0018】
いくつかの実施形態では、繊維径(すなわち、個々の繊維フィラメントの直径)は、約0.5μmから約50μmの値の範囲であってもよい。ロッドの任意の構成要素における繊維径は、例えば、約0.5μm、約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、約11μm、約12μm、約13μm、約14μm、約15μm、約16μm、約17μm、約18μm、約19μm、約20μm、約21μm、約22μm、約23μm、約24μm、約25μm、約26μm、約27μm、約28μm、約29μm、約30μm、約31μm、約32μm、約33μm、約34μm、約35μm、約36μm、約37μm、約38μm、約39μm、約40μm、約41μm、約42μm、約43μm、約44μm、約45μm、約46μm、約47μm、約48μm、約49μm、約50μm、または終点を含むこれらの値の任意の2つの間の任意の範囲である。
【0019】
特定の実施形態では、1つまたは複数の特性は、繊維材料を含み得る。ロッド110のいずれかの構成要素120、130における繊維材料は、例えば、ポリエステル、ナイロン、アクリル、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、またはそれらの任意の組み合わせもしくはコポリマーであり得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、繊維表面張力は、約30dyn/cmから約70dyn/cmの値の範囲であってもよい。ロッド110のいずれかの構成要素120、130における繊維表面張力は、例えば、約30dyn/cm、約35dyn/cm、約40dyn/cm、約45dyn/cm、約50dyn/cm、約55dyn/cm、約60dyn/cm、約65dyn/cm、約70dyn/cm、または、終点を含むこれらの値のうちの任意の2つの間の任意の範囲であってもよい。
【0021】
特定の実施形態では、コア構成要素120の第1の特性と、周囲構成要素130の第2の特性は、パーセンテージで変化または異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、特性は、約5%、約10%、約20%、約50%、約100%、もしくは100%超え、または、終点を含むこれらのパーセンテージのうちの任意の2つの間の任意の範囲で異なっていてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、コア構成要素120および周囲構成要素130の繊維は、それぞれ独立して、安定した繊維、連続繊維フィラメント、単一成分の繊維、二成分の繊維、多成分の繊維、繊維トウ、糸、またはそれらの組み合わせから選択される形態を有してもよい。他の実施形態では、コア構成要素120および周囲構成要素130の繊維は、それぞれ独立して、円、三角形、楕円、ピーナッツ、ジグザグ、およびこれらの組み合わせから選択される断面形状を有し得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のロッド110は、毛細管現象によって流体を吸収および放出するように構成されてもよい。一実施形態では、流体の吸収および放出は、ロッド110の断面直径に沿って変化するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、流体の吸収および放出の変動は、ロッド110の断面直径に沿った1つまたは複数の特性の変動に起因してもよい。特定の実施形態では、ロッド110は、リザーバー内の流体の不均一な、または不均質な分布を提供するように構成されてもよい。本明細書で論じたように、リザーバー内の流体の不均一な分布は、筆記具の場合、使用者の書き味を向上させ、その書き味を提供するために必要なインクの量を減少させ、インクの効率を向上させ、使用者のためのより良い使用期限の表示のために急峻なドロップオフを提供することができる。理論に拘束されることを望むものではないが、例えば、筆記具の1つ以上のロッドから流体が放出されると、典型的には、ロッドの中央の流体のみがペン先に移行する。従来の均質なロッドでは、ロッドの中心内に保持されていない流体は、ペン先への移行に利用できない可能性があり、つまり、その過剰な流体がロッドの中心の外側に位置しているために、そうでなければ有用な流体が筆記具の使用期限の終わりに内部に残される可能性がある。対照的に、本明細書に記載の不均一ロッド110は、ロッド110内(すなわち、周囲構成要素130とコア構成要素120との間)の毛細管現象によって、流体が周囲構成要素130からコア構成要素120に移動し得るように配置されている。したがって、本明細書に記載の不均一ロッド110は、従来の均質に分散された対応物よりも多くの流体を放出することができ、不均一ロッド110をより効率的かつ効果的にすることができる。
【0024】
特定の実施形態では、リザーバーは、本明細書に記載されているように、繊維からなるロッドを含み得る。いくつかの実施形態では、ロッドは、断面直径を有してもよく、本明細書で説明する少なくとも1つの特性は、ロッドの断面直径に沿って値が変化してもよい。図3は、例えば、繊維(図示せず)を有するロッド200の一実施形態の概略図であり、ロッド200は、断面直径210を有し、ロッド200の少なくとも1つの特性は、断面直径210に沿って値(ここでは色/陰影で表される)が変化する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの特性は、断面直径に沿って線形に変化してもよく、他の実施形態では、少なくとも1つの特性は、断面直径に沿って非線形に変化してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のロッド内の少なくとも1つの特性は、図1に示すように、コア構成要素と周囲構成要素との間で急激に変化してもよいが、他の実施形態では、ロッド内の少なくとも1つの特性は、図3に示すように、コア構成要素と周囲構成要素との間で徐々に変化してもよい。例えば、コア構成要素の繊維は、周囲構成要素の繊維の繊維嵩密度よりも150%から200%高い繊維嵩密度を有していてもよい。同様に、コア構成要素の繊維は、周囲構成要素の繊維よりも30%から50%小さい繊維径を有し得る。
【0025】
一実施形態では、筆記具は、本明細書に記載の少なくとも1つのリザーバーおよび/またはロッドと、ペン先とを含み得る。ペン先は、例えば、繊維チップペン、「フェルトチップ」マーカー、ローラーボールペン用のローラーボール芯などのような筆記具の尖った端部を含み得る。特定の実施形態では、筆記具のリザーバーおよび/またはロッドは、インク溶液を保持してペン先に送達するように構成されてもよい。一実施形態では、筆記具のリザーバーおよび/またはロッドは、本明細書に記載されているように構成され得、それによって、インク溶液をペン先に直接流すことができる毛細管ドローを提供し得る。このようにインク液をペン先に直接流すことで、筆記具のインク効率を向上させ、それによって使用者の書き心地を向上させることができる。図4は、例えば、本明細書に記載された少なくとも1つのリザーバーおよび/またはロッド310を含む筆記具300の実施形態の概略図であり、リザーバーおよび/またはロッド310からペン先320へのインク溶液の毛細管ドローを示す矢印が示されている。
【0026】
実施例
実施例1
本明細書に記載されているロッドを含むリザーバーを使用して、インクの書き出しテストにおけるインクウィッキング(すなわち、毛細管力)特性を試験した。平均インクレイダウン、筆記距離、および放出されたインクの合計割合を記録した。以下の表1は、本明細書に記載されている不均一繊維流体リザーバーが、従来の均質なインクリザーバーよりも高い初期インクレイダウンおよび高い総インク放出を提供することを示すデータをまとめたものである。
【表1】
【0027】
さらに、図5は、(i)2.0gのインク充填量の従来の均質インクリザーバー(破線で灰色に示されたプロファイル)と、(ii)1.9gのインク充填量の本明細書に記載の不均一インクリザーバー(すなわち、従来の均質インクリザーバーよりも約5%少ないインク)(実線で黒色に示されたプロファイル)のインク放出プロファイル(メートルの関数としてのmg/メートルでのレイダウンを伴う)を比較したグラフである。図5は、1.9gのインク充填を行った本明細書に記載の不均一リザーバーが、2.0gのインク充填を行った従来の均質インクリザーバーと同様に動作したことを示している。言い換えれば、本明細書に記載された不均一リザーバーは、上記の表1に示された改善された結果を提供するために、約5%少ないインクを必要とした。
【0028】
実施例2
インク放出プロファイルは、(i)6.0グラムのインク充填量の従来の均質インクリザーバー、および(ii)5.7グラムのインク充填量(すなわち、従来の均質インクリザーバーよりも約5%少ないインク量)の本明細書に記載されている不均一インクリザーバーについても決定された。以下の表2は、本明細書に記載されている不均一繊維流体リザーバー(「不均一」1、2、および3)が、従来の均質インクリザーバー(「均質(対照)」)よりも高い総インク放出量を提供することを示すデータをまとめたものである。
【表2】
【0029】
図6は、得られた結果の代表的なグラフであり、従来の均質インクリザーバーのインク充填量6.0グラムのインク放出プロファイル(「均質」、グレーの破線で示す)と、不均一インクリザーバーのインク充填量5.7グラムのインク放出プロファイル(「不均一(5%少ないインク)」、黒の実線で示す)を、メートルの関数として、レイダウンをmg/メートルで示している。図6が示すように、従来の均質インクリザーバーと比較して、不均一インクリザーバーは、インク量が約5%少ないにもかかわらず、同等の製品寿命と、使用期限の表示を改善するための急峻なドロップオフを示した。
【0030】
上記の詳細な説明では、本明細書の一部を形成する添付の図面が参照される。図面では、文脈上別段の指示がない限り、通常、同様の記号は、同様の構成要素を示す。詳細な説明、図面、および特許請求の範囲に記載された例示的な実施形態は、限定することを意味するものではない。本明細書に提示された主題の精神または範囲から逸脱することなく、他の実施形態を使用することができ、他の変更を行うことができる。本明細書に一般的に記載され、図に示されている本開示の様々な特徴は、多種多様な異なる構成で配置、置換、結合、分離、および設計することができ、これらのすべてが本明細書で明示的に企図されていることが容易に理解されるであろう。
【0031】
本開示は、様々な特徴の例示として意図されている、本願に記載された特定の実施形態に関して限定されるべきではない。当業者には明らかなように、その精神と範囲から逸脱することなく、多くの修正と変形が可能である。本明細書で列挙したものに加えて、本開示の範囲内で機能的に等価な方法および装置が、前述の説明から当業者に明らかであろう。そのような修正および変形は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図されている。本開示は、添付の特許請求の範囲と、そのような特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲によってのみ限定されるものである。本開示は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、または生物学的システムに限定されるものではなく、これらはもちろん変化し得るものであることを理解されたい。また、本明細書で使用されている用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解されたい。
【0032】
本明細書における実質的に任意の複数形および/または単数形の用語の使用に関しては、当業者であれば、文脈および/または用途に応じて、複数形から単数形へ、および/または単数形から複数形へと変換することができる。様々な単数/複数の順列は、明確にするために本明細書に明示的に記載することができる。
【0033】
一般に、本明細書、特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本文)で使用される用語は、一般に「オープン」な用語として意図されていることは、当業者には理解されるであろう(例えば、「含む(including)」という用語は、「含むが、これに限定されない」と解釈されるべきであり、「有する(having)」という用語は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む(includes)」という用語は、「含むが、これに限定されない」と解釈されるべきである、など)。様々な組成物、方法、および装置は、様々な構成要素または工程を「有する(comprising)」(「含むが、これに限定されない」を意味すると解釈される)という用語で記載されているが、組成物、方法、および装置は、様々な構成要素および工程「から本質的に成る」または「から成る」こともでき、このような用語は、本質的にクローズドメンバーグループを定義するものと解釈されるべきである。特定の数の導入された請求項の記載が意図されている場合、そのような意図は請求項に明示的に記載され、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しないことが当業者によってさらに理解されるであろう。
【0034】
例えば、理解を助けるために、以下の添付の特許請求の範囲には、請求項の記載を導入するために「少なくとも1つの」および「1つ以上の」という導入語句が使用されている。しかし、このような語句の使用は、不定冠詞「a」または「an」による請求項の導入が、そのような導入された請求項を含む特定の請求項を、そのような請求項を1つだけ含む実施形態に限定することを意味すると解釈すべきではない。同じ請求項が、導入語句「1つ以上」または「少なくとも1つ」および「a」または「an」などの不定冠詞を含む場合であっても(例えば、「a」および「an」は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味すると解釈すべきである)。また、請求項の記載に定冠詞を使用する場合も同様である。
【0035】
また、導入された請求項の記載の具体的な数が明示的に記載されている場合でも、当業者であれば、そのような記載は少なくとも記載された数を意味するように解釈すべきであると認識するでしょう(例えば、他の修飾語を伴わない「2回の再現」という素の記載は、少なくとも2回の再現、または2回以上の再現を意味する)。さらに、「A、BおよびCなどの少なくとも1つ」と類推される慣例が使用されている場合、一般に、そのような構造は、当業者が慣例を理解する意味で意図されている(例えば、「A、BおよびCの少なくとも1つを有するシステム」は、A単独、B単独、C単独、AとBが一緒、AとCが一緒、BとCが一緒、および/またはA、B、Cが一緒、などのシステムを含むが、これらに限定されない)。「A、BまたはCなどの少なくとも1つ」に類する慣例が使用される場合、一般に、そのような構造は、当業者が慣例を理解する意味で意図されている(例えば、「A、B、またはCの少なくとも1つを有するシステム」は、A単独、B単独、C単独、AとBが一緒、AとCが一緒、BとCが一緒、および/またはA、B、およびCが一緒、その他を有するシステムを含むが、これらに限定されないだろう)。当業者であれば、明細書、特許請求の範囲、図面のいずれにおいても、2つ以上の代替的な用語を提示する事実上すべての分離した単語および/または語句は、いずれかの用語、いずれかの用語、または両方の用語を含む可能性を想定していると理解されるであろう。例えば、「AまたはB」という語句は、「A」または「B」または「AおよびB」の可能性を含むと理解される。
【0036】
さらに、本開示の特徴がマーカッシュ群の観点から説明されている場合、当業者は、本開示がそれによってマーカッシュ群のメンバーの任意の個々のメンバーまたは下位群の観点からも説明されることを認識するであろう。
【0037】
当業者であれば理解できるであろうが、本明細書に記載されているすべての範囲は、書面による説明を提供するなど、あらゆる目的のために、あらゆる可能な下位範囲およびその下位範囲の組み合わせをも包含している。記載されている任意の範囲は、同じ範囲を少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分割して十分に記述し、可能にするものとして容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書で述べた各範囲は、下位3分の1、中間3分の1、上位3分の1などに容易に分解することができる。また、当業者であれば理解できるように、「~まで」、「少なくとも」などの言葉は、記載されている数を含み、その後、上述のように下位範囲に分解できる範囲を指す。最後に、当業者であれば理解できるであろうが、範囲には個々のメンバーが含まれる。したがって、例えば、1~3本の繊維を有するグループは、1、2、または3本の繊維を有するグループを指す。同様に、1~5本の繊維を有するグループは、1、2、3、4、または5本の繊維を有するグループを意味するなどである。
【0038】
「約」という言葉は、例えば、現実世界での測定や取り扱いの手順、これらの手順における不注意なエラー、組成物や試薬の製造、出所、純度の違いなどによって起こり得る数値の変動を意味する。一般的に、本明細書で使用されている「約」という用語は、記載されている値または値の範囲よりも1/10だけ大きいまたは小さいことを意味し、例えば、±10%を意味する。また、「約」という用語は、先行技術で実施されている既知の値を包含しない限り、当業者が同等であると認識するであろう変動を意味する。また、「約」という用語が前につく各値または値の範囲は、記載された絶対値または値の範囲の実施形態を包含することが意図されている。「約」という用語で修飾されているか否かにかかわらず、特許請求の範囲に記載されている定量的な値は、記載されている値の等価物、例えば、起こり得るが当業者には等価物と認識されるであろうそのような値の数値量の変動を含む。
【0039】
以上のような様々な特徴や機能、またはその代替品は、他の多くの異なるシステムや適用に組み合わせることができる。その中の様々な現在予想されていないまたは予期されていない代替品、変更、変形、または改良が、当業者によってその後作られる可能性があり、それらの各々はまた、開示された実施形態に包含されることを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6