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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20241002BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241002BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20241002BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20241002BHJP
   H01M 50/474 20210101ALI20241002BHJP
   H01M 50/477 20210101ALI20241002BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241002BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M10/052
H01M50/107
H01M50/119
H01M50/474
H01M50/477
H01M4/13
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021545536
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(86)【国際出願番号】 JP2020033864
(87)【国際公開番号】W WO2021049471
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2019165303
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 径
(72)【発明者】
【氏名】見澤 篤
(72)【発明者】
【氏名】中尾 隆希
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-184234(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0154789(US,A1)
【文献】特開2017-016806(JP,A)
【文献】特表2016-532752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 50/40-50/497
H01M 4/00- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の正極と帯状の負極とがセパレータを介して巻回された巻回型の電極体と、前記電極体を収容する金属製の外装体とを備える非水電解質二次電池であって、
前記電極体の最外周面において、前記正極又は前記負極が露出しており、且つ、基材層及び粘着層を有する固定テープが前記粘着層で前記正極又は前記負極に貼着しており、
前記基材層は、少なくとも端部から1mm幅の領域の表面粗度(Sa)が、40μm以上である、非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記外装体が円筒型である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記正極は、正極集電体、及び前記正極集電体の表面に形成される正極合剤層を有し、
前記負極は、負極集電体、及び前記負極集電体の表面に形成される負極合剤層を有し、
前記電極体の最外周面において、前記正極集電体又は前記負極集電体が露出している、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記電極体の最外周面の全面において、前記負極集電体が露出している、請求項3に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記基材層の全面の表面粗度(Sa)が、40μm以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、帯状の正極及び帯状の負極についてセパレータを介して巻回した巻回型の電極体を、その最外周面を固定テープで巻留めした上で、外装体に収容した非水電解質二次電池が広く利用されている。当該電池では、負極の巻始端部から突出した負極リードを外装体に接続することで外装体を負極端子とすることができる。特許文献1には、電池の出力特性を向上させるために、負極の巻始端部に設けた負極リードと外装体とを接続し、さらに、負極の巻終端部に外装体の内壁面と接触する集電体露出部を設けた非水電解質二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/147564号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の非水電解質二次電池では、電極体と外装体との間に一定以上の接触圧力が必要となるが、充放電を繰り返した電極体は膨張するので、当該接触圧力が大きくなる。電極体の最外周面には固定テープが貼着されているので、応力が集中しやすい固定テープの端部を起点に、電極体を構成する正極又は負極に屈曲等の変形が生じることがある。
【0005】
本開示の目的は、電極体が膨張した際に固定テープを起点とした正極及び負極の屈曲等の変形を抑制することができる非水電解質二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様である非水電解質二次電池は、帯状の正極と帯状の負極とがセパレータを介して巻回された巻回型の電極体と、電極体を収容する金属製の外装体とを備える非水電解質二次電池である。電極体の最外周面において、正極又は負極が露出しており、且つ、基材層及び粘着層を有する固定テープが粘着層で正極又は負極に貼着しており、基材層は、少なくとも端部から1mm幅の領域の表面粗度(Sa)が40μm以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る非水電解質二次電池によれば、電極体が膨張した際に固定テープを起点とした正極及び負極の屈曲等の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施形態の一例である円筒型の二次電池の軸方向断面図である。
図2図2図1に示した二次電池が備える電極体の斜視図である。
図3図3図2に示した電極体を構成する正極及び負極を展開状態で示した説明図である。
図4図4は実施形態の一例における固定テープの断面図である。
図5図5(a)は応力印加装置の平面図であり、図5(b)は図5(a)のA-A線において矢印方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、図面を参照しながら、本開示に係る円筒型の二次電池の実施形態の一例について詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、円筒型の二次電池の仕様に合わせて適宜変更することができる。また、外装体は円筒型に限定されず、例えば角型等であってもよい。また、以下の説明において、複数の実施形態、変形例が含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0010】
図1は、実施形態の一例である円筒型の二次電池10の軸方向断面図である。図1に示す二次電池10は、電極体14及び非水電解質(図示せず)が外装体15に収容されている。電極体14は、正極11及び負極12がセパレータ13を介して巻回されてなる巻回型の構造を有する。非水電解質の非水溶媒(有機溶媒)としては、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、ケトン類、エステル類等を用いることができ、これらの溶媒は2種以上を混合して用いることができる。2種以上の溶媒を混合して用いる場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートを含む混合溶媒を用いることが好ましい。例えば、環状カーボネートとしてエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)等を用いることができ、鎖状カーボネートとしてジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、及びジエチルカーボネート(DEC)等を用いることができる。非水電解質の電解質塩としては、LiPF、LiBF、LiCFSO等及びこれらの混合物を用いることができる。非水溶媒に対する電解質塩の溶解量は、例えば0.5~2.0mol/Lとすることができる。なお、以下では、説明の便宜上、封口体16側を「上」、外装体15の底部側を「下」として説明する。
【0011】
外装体15の開口端部が封口体16で塞がれることで、二次電池10の内部は、密閉される。電極体14の上下には、絶縁板17,18がそれぞれ設けられる。正極リード19は絶縁板17の貫通孔を通って上方に延び、封口体16の底板であるフィルタ22の下面に溶接される。二次電池10では、フィルタ22と電気的に接続された封口体16の天板であるキャップ26が正極端子となる。他方、負極リード20は絶縁板18の貫通孔を通って、外装体15の底部側に延び、外装体15の底部内面に溶接される。二次電池10では、外装体15が負極端子となる。
【0012】
外装体15は、有底の円筒型の金属製の外装缶である。これにより、電池が外部から応力を受けた際には硬くて変形しづらく、内部を保護することができる。一方、充放電の繰り返しにより電極体14が膨張した際には、金属製の外装体15は硬くて変形しづらいため、電極体14と外装体15との間に生じる接触圧力が大きくなる。
【0013】
上記の通り、外装体15は角型であってもよい。しかし、円筒型の外装体15は、水平方向断面が円形状であり電池内部の応力が均等に分散するので、膨張しやすい平坦部を有する角型の外装体に比べて膨張しづらく、電極体14と外装体15の間の接触圧力が大きくなりやすい。よって、外装体15が円筒型の場合には、固定テープを起点とした正極11及び負極12の屈曲等の変形が生じやすいため、本開示の効果が発揮されやすい。
【0014】
外装体15と封口体16の間にはガスケット27が設けられ、二次電池10の内部の密閉性が確保されている。外装体15は、例えば側面部を外側からプレスして形成された、封口体16を支持する溝入部21を有する。溝入部21は、外装体15の周方向に沿って環状に形成されることが好ましく、その上面でガスケット27を介して封口体16を支持する。
【0015】
封口体16は、電極体14側から順に積層された、フィルタ22、下弁体23、絶縁部材24、上弁体25、及びキャップ26を有する。封口体16を構成する各部材は、例えば円板形状又はリング形状を有し、絶縁部材24を除く各部材は互いに電気的に接続されている。下弁体23と上弁体25とは各々の中央部で互いに接続され、各々の周縁部の間には絶縁部材24が介在している。異常発熱で電池の内圧が上昇すると、例えば、下弁体23が破断し、これにより上弁体25がキャップ26側に膨れて下弁体23から離れることにより両者の電気的接続が遮断される。さらに内圧が上昇すると、上弁体25が破断し、キャップ26の開口部26aからガスが排出される。
【0016】
次に、図2を参照しながら、電極体14について説明する。図2は、電極体14の斜視図である。電極体14は、上述の通り、正極11と負極12とがセパレータ13を介して渦巻状に巻回されてなる巻回構造を有する。正極11、負極12、及びセパレータ13は、いずれも帯状に形成され、巻回軸に沿って配置される巻芯の周囲に渦巻状に巻回されることで電極体14の径方向に交互に積層された状態となる。径方向において、巻回軸側を内周側、その反対側を外周側という。電極体14において、正極11及び負極12の長手方向が巻き方向となり、正極11及び負極12の幅方向が軸方向となる。正極リード19は、電極体14の上端において、中心と最外周の間の半径方向の略中央から軸方向に延出している。また、負極リード20は、電極体14の下端において、巻回軸の近傍から軸方向に延出している。
【0017】
電極体14の最外周面において、負極12が露出しており、固定テープ50が軸方向の両端で負極12に貼着されている。固定テープ50は、電極体14を巻留めするための部材であり、負極12の巻終端部12aの少なくとも一部を覆うように貼着される。固定テープ50の幅は、特に限定されないが、例えば、3mm~30mmであり、5mm~15mmであってもよい。固定テープ50の位置及び枚数は、電極体14の最外周面に露出した巻終端部12aの一部を覆うように貼着していれば、特に限定されず、例えば軸方向に沿って貼着されてもよい。
【0018】
セパレータ13には、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布などが挙げられる。セパレータ13の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂が好ましい。セパレータ13の厚みは、例えば10μm~50μmである。セパレータ13は、電池の高容量化・高出力化に伴い薄膜化の傾向にある。セパレータ13は、例えば130℃~180℃程度の融点を有する。
【0019】
次に、図3を参照しながら、電極体14を構成する正極11及び負極12について説明する。図3は、正極11及び負極12を展開状態で示した説明図である。電極体14において、負極12でのリチウムの析出を防止するため、負極12は正極11よりも大きく形成されている。具体的には、負極12の幅方向(軸方向)の長さは、正極11の幅方向の長さよりも大きい。また、負極12の長手方向の長さは、正極11の長手方向の長さより大きい。これにより、電極体14として巻回された際に、少なくとも正極11の正極合剤層32が形成された部分の全体が、セパレータ13を介して負極12の負極合剤層42が形成された部分に対向配置される。
【0020】
正極11は、帯状の正極集電体30と、正極集電体30の内周側及び外周側の両面に形成された正極合剤層32とを有する。正極集電体30には、例えばアルミニウムなどの金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等が用いられる。好適な正極集電体30は、アルミニウム又はアルミニウム合金を主成分とする金属の箔である。正極集電体30の厚みは、例えば10μm~30μmである。
【0021】
正極合剤層32は、正極集電体30の両面において、後述する正極集電体露出部34を除く全域に形成されることが好適である。正極合剤層32は、正極活物質、導電剤、及び結着剤を含むことが好ましい。正極11は、正極活物質、導電剤、結着剤、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の溶剤を含む正極合剤スラリーを正極集電体30の両面に塗布した後、正極合剤層32を乾燥および圧縮することにより作製される。
【0022】
正極活物質としては、Co、Mn、Ni等の遷移金属元素を含有するリチウム含有遷移金属酸化物が例示できる。リチウム含有遷移金属酸化物は、特に限定されないが、一般式Li1+xMO(式中、-0.2<x≦0.2、MはNi、Co、Mn、Alの少なくとも1種を含む)で表される複合酸化物であることが好ましい。
【0023】
上記導電剤の例としては、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料などが挙げられる。上記結着剤の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、ポリエチレンオキシド(PEO)等が併用されてもよい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
図3に示す例では、正極11の長手方向の中央部に、幅方向の全長にわたって正極集電体露出部34が設けられている。正極集電体露出部34は、正極集電体30の表面が正極合剤層32に覆われていない部分である。正極集電体露出部34は、例えば正極集電体30の一部に正極合剤スラリーを塗布しない間欠塗布により設けられる。
【0025】
正極集電体露出部34には、正極リード19の一端が、超音波溶接等によって接続されている。正極集電体露出部34は、正極リード19の接続作業の作業性の観点から、正極11の厚み方向に重なるように正極11の両面に設けられることが好適である。正極リード19は、集電性の観点から、巻始端部及び巻終端部11aから略等距離の位置に設けられることが好ましい。正極リード19の他端は、電極体14として巻回された際には、電極体14の半径方向中間位置で幅方向の端面から上方に延出している。なお、正極リード19の配置位置は図3に示す例に特に限定されず、正極リード19の配置位置に合わせて正極集電体露出部34を設けることができる。
【0026】
負極12は、帯状の負極集電体40と、負極集電体40の両面に形成された負極合剤層42とを有する。負極集電体40には、例えば銅などの金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等が用いられる。負極集電体40の厚みは、例えば5μm~30μmである。
【0027】
負極合剤層42は、負極集電体40の両面において、後述する負極集電体露出部44を除く全域に形成されることが好適である。負極合剤層42は、負極活物質及び結着剤を含むことが好ましい。負極12は、例えば負極活物質、結着剤、及び水等を含む負極合剤スラリーを負極集電体40の両面に塗布した後、負極合剤層42を乾燥および圧縮することにより作製される。
【0028】
負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できるものであれば特に限定されず、例えば天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料、Si、Sn等のリチウムと合金化する金属、又はこれらを含む合金、酸化物などを用いることができる。負極合剤層42に含まれる結着剤には、例えば正極11の場合と同様の樹脂が用いられる。水系溶媒で負極合剤スラリーを調製する場合は、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、CMC又はその塩、ポリアクリル酸又はその塩、ポリビニルアルコール等を用いることができる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
図3に示す例では、負極12の長手方向の巻始端部及び巻終端部12aに、集電体の幅方向の全長にわたって負極集電体露出部44が設けられている。負極集電体露出部44は、負極集電体40の表面が負極合剤層42に覆われていない部分である。負極集電体露出部44は、例えば負極集電体40の一部に負極合剤スラリーを塗布しない間欠塗布により設けられる。
【0030】
巻始端部の負極集電体露出部44には、負極リード20の一端が、超音波溶接等によって接続されている。負極集電体露出部44は、負極リード20の接続作業の作業性の観点から、負極12の厚み方向に重なるように負極12の両面に設けられることが好適である。負極リード20の他端は、電極体14として巻回された際には、電極体14の巻軸中心近傍で幅方向の端面から下方に延出している。なお、負極リード20の配置位置は図3に示す例に特に限定されず、負極リード20の配置位置に合わせて負極集電体露出部44を設けることができる。
【0031】
巻終端部12aの負極集電体露出部44は、電極体14の最外周面に位置し、外装体15に接触している。これにより、負極リード20以外にも負極端子への電流経路が確保されるので、電池の出力特性が向上する。
【0032】
電極体14の最外周面において、負極12が露出することで巻終端部12aの負極端子への電流経路が確保されるが、実施形態の一例のように負極集電体40が露出していることが好ましい。電極体14の最外周面の全面において、負極集電体40が露出していることがより好ましい。これにより、負極集電体露出部44と外装体15との接触面積が増えるので、電池の出力特性が向上する。電極体14の最外周面の全面に負極集電体40を露出させる場合、負極集電体露出部44の長手方向の長さが、電極体14の最外周の長さよりも大きくてもよい。
【0033】
上記では、図3において、外装体15が負極端子の場合について説明したが、外装体15が正極端子の場合には、電極体14の最外周面において、正極11が露出していてもよい。これにより、正極11の巻終端部11aの正極端子への電流経路が確保される。固定テープ50は、電極体14の最外周面に露出した正極11の巻終端部11aの少なくとも一部を覆うように貼着される。負極12が電極体14の最外周面に露出する場合と同様に、正極11の巻終端部11aに正極集電体露出部34を設け、電極体14の最外周面において正極集電体30が露出していることが好ましい。
【0034】
次に、図4を参照しながら、電極体14を巻留めするための部材である固定テープ50について説明する。図4は、実施形態の一例における固定テープ50の断面図である。固定テープ50は、基材層52及び粘着層54を有し、粘着層54で、電極体14の最外周面に露出する正極11又は負極12に貼着する。
【0035】
基材層52は、図4に示すように、表面に凹凸形状を有する。基材層52の表面の凹凸形状の周期は、規則的であってもよいし、不規則的であってもよい。また、基材層52の表面において、特定の方向に凹凸が存在しても良いが、全方向に凹凸が存在するのが好ましい。
【0036】
基材層52は、少なくとも端部から1mm幅の領域で表面粗度(Sa)が、40μm以上である。電極体14と外装体15との接触圧力による応力が集中しやすい固定テープ50の端部近傍の表面粗度(Sa)を40μm以上とすることで、当該応力が緩和され、正極11及び負極12の屈曲等の変形を抑制できる。ここで、表面粗度(Sa)は、ISO25178で定義されており、KEYENCE社製VR-3200等の市販のマイクロスコープにて測定可能である。
【0037】
基材層52の全面の表面粗度(Sa)が、40μm以上であることが好ましい。これにより、基材層52の端部近傍だけでなく基材層52の全面で応力を緩和するので、正極11及び負極12の屈曲等の変形をより確実に抑制できる。
【0038】
また、電池特性維持の観点から、基材層52の表面粗度(Sa)は150μm以下が好ましい。基材層52の表面粗度(Sa)を大きくすると、固定テープ50の厚みが大きくなるため、外装体15内に電極体14及び電解質を収容するスペースが減少する。
【0039】
基材層52は、強度、電解液に対する耐性、加工性、コスト等の観点から適宜選択可能であり、例えばPP(ポリプロピレン)、PI(ポリイミド)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等を用いることができる。また、粘着層54は、室温で接着性を有する樹脂が好ましく、例えばアクリル系樹脂、ゴム系樹脂を用いることができる。
【0040】
図4において、tは、固定テープ50の厚みを示す。tは、基材層52の頂点から、粘着層54の表面までの厚みである。tの大きさは、例えば、20μm~200μmであり、好ましくは50μm~100μmである。
【0041】
基材層52の表面の凹凸形状の作製方法は、特に限定されないが、例えば、粘着層54に合紙を貼り付けた固定テープ50を、表面に凹凸形状を有したローラーに押し付けることで作製できる。基材層52の表面粗度(Sa)は、ローラーの表面粗度(Sa)とローラーの押し付け圧力の大きさで調整できる。例えば、表面粗度(Sa)が200μm~400μmのローラーを10kgf/cm~100kgf/cmの線圧で押し付けることで、表面粗度(Sa)が40μm以上の固定テープ50を作製することができる。
【実施例
【0042】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
<実施例1>
[試験片の作製]
95質量部の黒鉛と、5質量部のSiOと、1質量部のカルボキシメチルセルロース(CMC)と、1質量部のスチレンブタジエンゴム(SBR)とを混合し、水を適量加えて、負極合剤スラリーを調製した。次に、負極合剤スラリーを厚み8μmの銅箔からなる帯状の負極集電体の片面に塗布し、その後に塗膜を乾燥させた。ローラーを用いて乾燥した塗膜を圧縮した後、所定の極板サイズに切断し、負極集電体の片面に負極合剤層が形成された負極を作製した。
【0044】
厚み20μmのポリプロピレン(PP)の基材層の上にアクリル系粘着剤の粘着層を10μm塗布して平板テープを作製した。その後、粘着層側に、離型剤を塗布したポリプロピレン(PP)の合紙を貼り付け、面粗度が320μmである凹凸を有するローラーを基材層側から60kgf/cmの線圧で押し付けた後に、幅10mmに裁断して基材層側の表面の全面に凹凸形状を有する固定テープを作製した。
【0045】
合紙を剥がした固定テープを、負極の負極合剤層が形成されていない面に貼着して試験片を作製した。
【0046】
<実施例2>
平板テープをローラーで圧縮する線圧を40kgf/cmとしたこと以外は、実施例1と同様にして試験片を作製した。
【0047】
<実施例3>
平板テープをローラーで圧縮する線圧を20kgf/cmとしたこと以外は、実施例1と同様にして試験片を作製した。
【0048】
<比較例1>
平板テープをローラーで圧縮する線圧を5kgf/cmとしたこと以外は、実施例1と同様にして試験片を作製した。
【0049】
<比較例2>
平板テープをローラーで圧縮しなかったこと以外は、実施例1と同様にして試験片を作製した。
【0050】
[基材層の表面粗度(Sa)の測定]
実施例1~3及び比較例1~2で作製した固定テープの表面粗度(Sa)を、負極に貼着する前に、KEYENCE社製VR-3200を使用して拡大倍率25倍の条件で測定した。
【0051】
[応力印加試験]
実施例1~3及び比較例1~2の試験片について、図5に示す応力印加装置を用いて応力印加試験を行い、固定テープに起因する正極及び負極の屈曲等の変形の発生可能性を評価した。応力印加試験の詳細は以下の通りである。
【0052】
図5(a)は応力印加装置60の平面図であり、図5(b)は図5(a)のA-A線において矢印方向から見た断面図である。応力印加装置60は、試験台70、緩衝材としてのクロロプレンゴムシート72、及び圧子74を有している。図5(b)に示すように、試験片62を、負極合剤層42が下向き、固定テープ50が上向きになるように、クロロプレンゴムシート72上に配置した。図5(a)に示すように、試験片62は10mm幅の固定テープ50が負極集電体40の一部を覆っている。試験片62の配置後、負極集電体40と固定テープ50の境界線を含む範囲に、20mm角の圧子で4kNの応力を10秒間印加した。本試験においては、実際に電極体14の最外周面が外装体15から受ける応力よりも大きな応力が試験片62に印加されている。そのため、固定テープ50が正極及び負極の屈曲等の変形に与える影響が大きい場合は、負極集電体40と固定テープ50の境界線に対応する破断評価部位76において負極集電体40が破断する。一方、固定テープ50が正極及び負極の屈曲等の変形に与える影響が小さい場合は、破断評価部位76における負極集電体40の破断が抑制される。そこで本試験では、試験後の破断評価部位76における負極集電体40の破断の有無を観察することにより、固定テープ50に起因する正極及び負極の屈曲等の変形の発生可能性を評価した。
【0053】
実施例1~3及び比較例1~2に使用した各固定テープの表面粗度(Sa)、及び試験後の各試験片の破断の有無を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
固定テープの表面粗度(Sa)が小さい比較例1~2では、負極集電体が破断評価部位で破断しているのに対し、固定テープの表面粗度(Sa)が大きい実施例1~3では負極集電体が破断していなかった。つまり、実施例1~3では固定テープが正極及び負極の屈曲等の変形に与える影響が小さいため、固定テープに起因する正極及び負極の変形の発生可能性が低い。これにより、固定テープの表面粗度(Sa)を大きくすることで、電極体と外装体との間に接触圧力が発生した場合でも、負極及び正極の屈曲等の変形を抑制できることがわかる。
【符号の説明】
【0056】
10 二次電池、11 正極、12 負極、12a 巻終端部、13 セパレータ、14 電極体、15 外装体、16 封口体、17,18 絶縁板、19 正極リード、20 負極リード、21 溝入部、22 フィルタ、23 下弁体、24 絶縁部材、25 上弁体、26 キャップ、26a 開口部、27 ガスケット、30 正極集電体、32 正極合剤層、34 正極集電体露出部、40 負極集電体、42 負極合剤層、44 負極集電体露出部、50 固定テープ、52 基材層、54 粘着層、60 応力印加装置、62 試験片、70 試験台、72 クロロプレンゴムシート、74 圧子、76 破断評価部位
図1
図2
図3
図4
図5