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特許7564823ナノチタン酸バリウム微結晶及びその製造方法、チタン酸バリウム粉末及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ナノチタン酸バリウム微結晶及びその製造方法、チタン酸バリウム粉末及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/00 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
C01G23/00 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021564091
(86)(22)【出願日】2019-08-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 CN2019100606
(87)【国際公開番号】W WO2020215536
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】201910338387.4
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523248390
【氏名又は名称】▲恵▼州宝▲順▼美科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUIZHOU BAOSHUNMEI TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】E-4-1, New Materials Industrial Park, Huiyang District, Yonghu Town, Huiyang District, Huizhou, Guangdong 516200, China
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】瞿海▲鋒▼
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-074915(JP,A)
【文献】特開2014-024750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノチタン酸バリウム微結晶の製造方法であって、
より低い温度のナノ二酸化チタン水分散液をより高い温度の水酸化バリウム水溶液と急速に混合し、得られた混合系の温度を両者の急速な混合により、前記水酸化バリウム水溶液の温度に比べて2~20℃低くし、ここで、前記ナノ二酸化チタンの水分散液は、質量濃度が20%以上であり、温度が20℃以上50℃以下であり、前記水酸化バリウム水溶液は、質量濃度が20%以上であり、温度が70℃以上であることと、
不活性雰囲気では、前記混合系を90~110℃で常圧水熱合成反応させ、反応生成物を収集して洗浄と乾燥し、ナノチタン酸バリウム微結晶を得ることと、を含む、
ことを特徴とするナノチタン酸バリウム微結晶の製造方法。
【請求項2】
前記より低い温度のナノ二酸化チタン水分散液を前記より高い温度の水酸化バリウム水溶液に加えて急速に混合し、前記混合系を得る、
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ナノ二酸化チタン水分散液の温度は50℃以下であり、急速混合の間に、前記水酸化バリウム水溶液の温度は70℃以上であるように制御する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ナノ二酸化チタン水分散液において、ナノ二酸化チタンのメジアン粒径は体積計で30nm以下である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記混合系において、BaイオンとTi原子のモル比は1~4:1である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記水酸化バリウム水溶液の質量濃度は20%以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記常圧水熱合成反応の時間は30分間以上である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
【請求項8】
チタン酸バリウム粉末の製造方法であって、
請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法に従ってナノチタン酸バリウム微結晶を製造することと、
200~1300℃で、前記ナノチタン酸バリウム微結晶を▲か▼焼し、チタン酸バリウム粉末を得ることと、を含む
ことを特徴とするチタン酸バリウム粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ材料技術に関し、特にナノチタン酸バリウム微結晶及びその製造方法、チタン酸バリウム粉末及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン酸バリウム(BaTiO)は、良好な誘電性、強誘電性、圧電性を持つため、電子セラミック工業に広く応用され、多層セラミックコンデンサ(MLCC)、正温度係数サーミスタ(PTC)、ダイナミックランダムメモリ(DRAM)などの電子部品を製造する基礎材料である。
【0003】
現段階でナノチタン酸バリウム粉末を製造する主流プロセスは、固相焼結法と液相合成法に大きく分けられることができ、ここで、液相合成法はさらにゾル-ゲル法、共沈殿法、水熱法などに分けられることができる。固相焼結法は、チタン酸バリウムを構成する金属元素(TiとBa)の酸化物又は酸性塩を混合し、細かく磨いた後、1100℃前後の高温で▲か▼焼し、固相反応により必要な粉末を形成する。固相焼結法のプロセスは比較的簡単であるが、得られた粉末は、粒子が凝集しやすく、粒径が大きく、不純物の含有量が多く、材料の均一性が悪く、電子部品の高性能、小型化の需要を満たすことが困難である。ゾル-ゲル法と共沈殿法によって得られた粉末は、純度が高く、粒径が小さいが、複雑なプロセスで原料コストが高く、工業生産が難しい。
【0004】
水熱法はさらに高圧水熱法と常圧水熱法に分けられることができる。高圧水熱法とは、高圧反応釜などの密閉システムにおいて、分散したTiO細粒子を含むBa(OH)水溶液を水熱処理し、一定の温度と水の自生圧力で、チタン酸バリウム粉末を得ることである。高温、高圧水熱条件下では、常圧条件では得られない特殊な物理化学環境を提供できるため、前駆体を反応系で十分に溶解させ、一定の過飽和度に達し、これにより核形成と結晶化を行い、粉末又はナノ結晶を生成する。そのため、高圧水熱法によって得られたチタン酸バリウム粉末は、純度が高く、結晶度が高く、粒径が小さく、粒子分布が均一であるという利点があり、且つ原料が環境に優しいであることを確保する。しかし、水熱反応は、高温、高圧、且つ密閉の条件で行われるため、反応過程のエネルギー消費が大きくし、安全係数が低いだけでなく、バッチでのみ生産でき、大規模な連続生産ができない。また、反応は、アルカリ性条件、且つ高温高圧環境で行われるため、反応釜に対する要求は更に厳しくなり、機器投入や操作要求などのコストが高い。
【0005】
常圧水熱法は一般的にチタン酸テトラブチルなどのチタン金属有機化合物をチタン源とし、水酸化バリウムをバリウム源とし、N-ブタノールなどのアルコール類物質を溶媒として、反応体系の中でチタン源の転化とチタン酸バリウムの生成を同時に行う。常圧水熱法は、常圧及び50~110℃の低温で行われるため、機器に対する要求は簡単で安全で、工業化は比較的容易に実現でき、現在は既に成熟している。しかし、従来の研究では、常圧水熱法によって製造されたチタン酸バリウムは粒径が大きく、一般的に100nm以上であり、且つ粒度分布が集中しておらず、分散性が悪いため、チタン酸バリウムに対する電子セラミック工業の高品質需要を満たすことが困難である。
【0006】
従って、常圧水熱法に基づくナノチタン酸バリウム微結晶の生産プロセスを開発し、高品質のチタン酸バリウム粉末を得、より高い生産効率を持つことは、現在解決すべき問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既存の技術における上記の欠陥に対して、本発明は、ナノチタン酸バリウム微結晶の製造方法を提供し、常圧水熱合成プロセスに基づいて、製造したナノチタン酸バリウム微結晶は、粒径が小さく、粒径分布が均一で、純度が高いという特徴を持ち、非常に高い収率を持ち、高品質のチタン酸バリウム粉末の原料とすることができる。
【0008】
本発明はさらに、上記の製造方法を用いて製造されるナノチタン酸バリウム微結晶を提供し、当該ナノチタン酸バリウム微結晶は、粒径が小さく、粒径分布が均一で、純度が高いという特徴を持ち、高品質のチタン酸バリウム粉末を生産する原料とすることができる。
【0009】
本発明は、前述のナノチタン酸バリウム微結晶を原料とするチタン酸バリウム粉末の製造方法を提供し、純度が高く、結晶性と分散性が良く、粒径が小さいナノチタン酸バリウム粉末を製造することができ、非常に高い収量を持つ。
【0010】
本発明はさらに、上記の製造方法を用いて製造されるチタン酸バリウム粉末を提供し、当該チタン酸バリウム粉末は、粒径が小さく且つ制御可能で、純度が高く、結晶性と分散性が良いという特徴があり、非常に高い収量を持つ。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、ナノチタン酸バリウム微結晶の製造方法を提供し、前記方法は、
より低い温度のナノ二酸化チタン水分散液をより高い温度の水酸化バリウム水溶液と急速に混合し、得られた混合系の温度を両者の高速混合により水酸化バリウム水溶液の温度に比べて少なくとも2℃低くし、ここで、ナノ二酸化チタンの水分散液の質量濃度は20%以上であることと、
不活性雰囲気では、混合系を90~110℃で常圧水熱合成反応させ、反応生成物を収集して洗浄と乾燥し、ナノチタン酸バリウム微結晶を得ることと、を含む。
【0012】
現在、常圧水熱合成法を用いてナノチタン酸バリウム粉末を製造する場合、チタン源としてのTiOの濃度が高いと、ナノチタン酸バリウム粉末は粒径が大きく、粒度分布が集中しておらず、粒子間の凝集現象が非常に深刻になりやすいが、TiOの濃度が低すぎると、生産効率が低下するだけでなく、チタン酸バリウム粒子の粒径も大きい。この現状に対して、本発明は解決策を提供し、高濃度(質量濃度≧20%)のナノ二酸化チタン水分散液を原料として、まず、ナノ二酸化チタン水分散液を水酸化バリウム水溶液と急速に混合し、次に常圧水熱合成を実施することで、常圧水熱合成反応過程での溶媒量を低減し、生産効率を向上させ、大規模な連続生産を実現するだけでなく、得られたナノチタン酸バリウム微結晶粒子は、粒径が小さく、均一で、純度が高いという利点があり、当該ナノチタン酸バリウム微結晶を原料として、▲か▼焼又は他の手段により、結晶の成長がより良いチタン酸バリウム粉末を得ることができ、且つ当該チタン酸バリウム粉末も同様に粒径が小さく、粒径分布が均一で、純度が高く、分散性が良いという特徴を持つ。
【0013】
上記のナノ二酸化チタン水分散液と水酸化バリウム水溶液との間の急速な混合、或いはチタン源とバリウム源の急速な混合は、混合系の温度低下の程度によって具現され、即ち、両者の急速な混合によって直接引き起こされる明らかな温度低下によって具現され、混合過程における外部冷却などの手段による明らかな温度低下を含まない。一般工業生産では、両者の急速な混合は加熱機器の加熱によって行われても、低い温度の二酸化チタン水分散液の添加量が大きく、添加速度が速いため、加熱機器がシステムの急速な昇温を維持するのに十分ではないため、混合系の温度は混合前の水酸化バリウム水溶液の温度に比べて少なくとも2℃低い。本発明の具体的な実施過程では、混合過程において、混合系の温度が2℃以上低下することを監視することは、いわゆる「急速な混合」を実現したことを表す。例えば、ナノ二酸化チタン水分散液を急速に水酸化バリウム水溶液に加えることにより、水酸化バリウム水溶液混合系の温度が大幅に低下し、温度が2℃以上低下すると、両者の「急速な混合」が達成されると考えられる。
【0014】
もちろん、後続のチタン酸バリウム粒子の成長サイズの一致を確保するために、原料添加又は混合速度は、混合溶液全体の温度が早くバランス及び安定になることを確保すべきである。実際の工業生産において、一般的に高効率の混合機器と高速の液体添加機器を使用し、又はオンラインの連続混合機器を使用して、ナノ二酸化チタン水分散液を水酸化バリウム水溶液と急速、均一に混合させる。急速な混合過程では、一般的に、代表的な監視点をいくつか選んで混合過程中の温度変化をテストし、各監視点の温度が2℃以上低下し、低下範囲は基本的に同じであることが適切である。
【0015】
さらに、後続のチタン酸バリウム粒子の成長サイズの一貫性を確保するために、混合系の温度と水酸化バリウム水溶液との温度差も大きすぎるべきではなく、一般的に2~20℃に制御され、通常は2~10℃に制御される。このようにして、温度の突然低下によるバリウム源の析出をも効果的に回避することができる。
【0016】
上記混合系の調製は大気環境下で行うことができる。もちろん、副反応の発生をさらに回避するために、混合系の調製は不活性雰囲気で行うこともでき、例えば、窒素、アルゴンなどの不活性ガスの保護下で行われてもよい。
【0017】
具体的に、上記混合系の調製は、ナノ二酸化チタン水分散液を水酸化バリウム水溶液に加えて実現することができ、水酸化バリウム水溶液をナノ二酸化チタン水分散液に加えて実現することもでき、また、ナノ二酸化チタン水分散液を水酸化バリウム水溶液と並流形態で混合して実現することもできる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、より低い温度のナノ二酸化チタン水分散液をより高い温度の水酸化バリウム水溶液に加えて急速に混合させ、得られた混合系の温度を水酸化バリウム水溶液の温度に比べて少なくとも2℃、例えば2~20℃、さらに例えば2~10℃低くする。このような形態で混合系を調製することにより、高温の水酸化バリウム水溶液の投入、輸送に関係なく、プロセスと機器に対する要求が低く、より実現しやすい。
【0019】
理解できるものとして、原料としてのナノ二酸化チタンは、より小さい粒径のナノチタン酸バリウム微結晶及びチタン酸バリウム粉末を得るのに役立つよう、より小さい粒径を持った方がいい。一般に、使用されたナノ二酸化チタン水分散液において、ナノ二酸化チタンは体積計でメジアン粒径D50≦30nmである。対応して製造されたナノチタン酸バリウム微結晶の平均粒径は、一般に10~30nmであり、且つ粒径分布は比較的均一である。そして当該ナノチタン酸バリウム微結晶は立方晶相を主相とし、立方晶相含有量は100%にも達することができる。なお、当該ナノチタン酸バリウム微結晶は純度が高く、分散性が良いという特徴もある。
【0020】
本発明で使用されるナノ二酸化チタン水分散液は、ナノ二酸化チタン粉末を水に分散させて形成される。本発明は、ナノ二酸化チタン粉末又はナノ二酸化チタン水分散液のソースについては特に限定されず、市販又は自体で製造することができる。例えば特許出願201610879270.3又は201610879701.6に記載されたプロセスに従って、ナノ二酸化チタン粉末を製造して、それを比例的に脱イオン水に分散させ、ナノ二酸化チタン水分散液を得ることができる。
【0021】
ナノ二酸化チタン水分散液の濃度を合理的に制御することにより、合成過程中のナノチタン酸バリウム微結晶の凝集などの問題を回避するのに役立つので、一般的にナノ二酸化チタン水分散液の質量濃度を20~50%と制御する。このようにして、ナノチタン酸バリウム微結晶を分散性に優れているだけでなく、粒径が小さく、粒径が比較的均一で、純度が高いという利点がある。なお、ナノチタン酸バリウム微結晶は非常に高い収率を有し、特に工業化の連続生産に適していることを確保することができる。
【0022】
本発明は、ナノ二酸化チタン水分散液の温度については特に限定されず、常温(25℃)で調製して得ることができ、適切に加熱してナノ二酸化チタンの質量濃度を向上させることもできるが、温度は水酸化バリウム水溶液の温度より低い必要がある。本発明の具体的な実施過程において、ナノ二酸化チタン水分散液の温度は50℃を超えず、一般に20~50℃である。
【0023】
説明すべきものとして、ナノ二酸化チタン水分散液におけるナノ二酸化チタンは非常に高い濃度(≧20%)を持っているので、ナノチタン酸バリウム粉末の高収率を実現するために、水酸化バリウム水溶液にも高濃度のバリウムイオンを含む必要があり、バリウムイオンとチタン原子のモル比及びバリウム源とチタン源の間の急速な混合を確保し、通常、水酸化バリウム水溶液において、バリウム源の濃度は飽和溶解度に近いほうがいいであり、例えばバリウム源の質量濃度は20%以上で、さらに50%から70%以上に達することができ、よって、水酸化バリウム水溶液にバリウム源の析出がほとんどないことを確保するために、一般的に水酸化バリウム水溶液の温度が70℃以上で、一般的に70~110℃で、さらに90~110℃であるように制御することで、バリウム源とチタン源の比率を確保することができる。
【0024】
水酸化バリウム水溶液の調製は、不活性雰囲気で行われ、例えば窒素などの不活性ガスの保護下で行われる必要がある。
【0025】
理想的な状態では、BaとTiのモル比が1である場合、両者を十分に反応させてチタン酸バリウムを生成し、原料の残留を避けることができる。理解できるものとして、過剰なチタン源又はバリウム源は、チタン酸バリウムの合成に向ける方向に反応を進行することに有利であり、例えば過剰なBaは、反応生成物における二酸化チタン不純物の含有量を低減するのに役立つが、バリウムの大量の残量は、バリウム源原料の浪費をもたらすだけでなく、反応生成物を収集する時、空気に接触すると、炭酸バリウム不純物を導入する可能性もある。水熱反応効率及び経済的要因を総合的に考慮して、一般的にBaとTiのモル比を1~4:1、さらに1.5~2:1に制御することにより、二酸化チタンの十分な反応を確保し、最終的に得られたナノチタン酸バリウム微結晶はより高い純度を有している。
【0026】
混合系の調製が完了した後、混合系は常圧水熱合成反応を行うことができる。通常、まず混合系を撹拌し、その温度を90~110℃に達して、バリウム源とチタン源の効果的な混合を維持し、そしてこの温度でしばらく保温する。具体的に、常圧水熱合成反応の時間は30分間以上が好ましい。
【0027】
発明者の研究によると、保温時間が24時間を超えると、常圧水熱合成の反応時間を延長し続け、ナノチタン酸バリウム微結晶のサイズにはあまり影響がないので、実際の生産効率と製品品質を考慮して、通常、常圧水熱合成反応の時間が24時間を超えないように制御し、さらに、例えば3~24時間を超えない。
【0028】
常圧水熱合成反応が完了した後、温度を下げて反応生成物を収集し、洗浄や乾燥などの処理を経て、高品質のナノチタン酸バリウム微結晶を得ることができる。本発明の具体的な実施過程では、まず吸引濾過などの手段を用いて反応生成物を固液分離し、そして脱イオン水、又は脱イオン水及びエタノールを用いて反応生成物を洗浄し、最後に60~90℃の乾燥を経て、ナノチタン酸バリウム微結晶を取得する。
【0029】
本発明は、上記の製造方法を用いて製造されるナノチタン酸バリウム微結晶を提供する。本発明で提供されるナノチタン酸バリウム微結晶は、非常に小さい粒径を有し、その平均粒径は100nm以下であり、5~30nmにも達することができ、一般的に10~30nmである。当該ナノチタン酸バリウム微結晶の粒径は、基本的に正規分布であり、粒径分布は比較的狭く、当該ナノチタン酸バリウム微結晶の格子定数比(c/a)はいずれも約1.0000であり、XRD図では、2θ角が44°~46°の間の回折ピークは、明らかな分裂のない単一ピークとして現れ、ナノチタン酸バリウム微結晶が標準の立方晶相であり、成長が比較的完全で、結晶型が比較的良好であることを示す。バリウムとチタンの比率(Ba/Ti比)はいずれも約1であり、当該ナノチタン酸バリウム微結晶は非常に高い純度を持つと意味する。
【0030】
本発明はまた、チタン酸バリウム粉末の製造方法を提供し、以下のようなステップを含み、
まず、前述の製造方法に従ってナノチタン酸バリウム微結晶を製造し、
200~1300℃で、ナノチタン酸バリウム微結晶を▲か▼焼し、▲か▼焼時間は1~10時間であり、チタン酸バリウム粉末を得る。
【0031】
本発明では、ナノチタン酸バリウム微結晶を原料として、高温で▲か▼焼することにより、粒径が小さく且つ均一で、純度が高く、分散性が良く、結晶型の成長が非常に良好なチタン酸バリウム粉末を得る。
【0032】
具体的に、チタン酸バリウム粉末の粒子サイズは▲か▼焼温度と密接に関係している。発明者の研究によると、500℃以下の低温▲か▼焼による結晶粒成長は明らかではないが、500~1300℃の高温▲か▼焼によりチタン酸バリウムの結晶粒が徐々に成長し、▲か▼焼温度の上昇に伴い、結晶粒の増大がより顕著になるので、実際に製品の粒径需要に応じて適切な▲か▼焼温度を選ぶことができる。
【0033】
また、▲か▼焼温度が1100℃以下であると、▲か▼焼温度の上昇に伴い、チタン酸バリウム粉末の結晶化の程度はますます良くなるが、▲か▼焼温度が高すぎると、例えば1100℃以上であると、高温▲か▼焼は結晶型の成長に悪影響を与えるので、一般的に▲か▼焼温度が200~1100℃であり、さらに300~1300℃であるように制御する。
【0034】
本発明はさらに、上記の製造方法を用いて製造されるチタン酸バリウム粉末を提供する。具体的には、前述のナノチタン酸バリウム微結晶を原料として、高温で▲か▼焼して得る。
【0035】
当該チタン酸バリウム粉末はより小さい粒径を持ち、粒径分布が均一で、分散性が良好であり、さらに、当該チタン酸バリウム粉末はさらに結晶粒の成長が良く、純度が高いという特徴があり、よって、高品質のチタン酸バリウム製品に対する電子セラミック工業のニーズを満たすことができる。
【0036】
本発明で提供されるナノチタン酸バリウム微結晶の製造方法では、高濃度ナノ二酸化チタン水分散液をチタン源として、常圧水熱合成プロセスに基づいて、粒径が小さく、均一で、純度が高く、分散性が良いナノチタン酸バリウム微結晶を製造する。特に、反応原料の合理的な選択及び常圧水熱合成反応条件の制御により、平均粒径が50nmを超えず、さらに10~20nmであるナノチタン酸バリウム微結晶を得ることができ、且つ立方晶相又はほとんどが立方晶相である。当該製造方法を用いて得られたナノチタン酸バリウム微結晶を原料として、さらに▲か▼焼又は他の処理をすると、予想される粒径を持つチタン酸バリウム粉末を得、当該チタン酸バリウム粉末は非常に高い純度と結晶性、及び優れた分散性を持ち、チタン酸バリウムに対する電子セラミック工業の需要を満たすことができる。
【0037】
同時に、ナノチタン酸バリウム微結晶の合成は常圧で行われ、高温を必要としないため、生産の安全性を確保し、生産エネルギー消費と機器コストを削減するだけでなく、ナノチタン酸バリウム微結晶ひいてはチタン酸バリウム粉末の連続生産を実現することができ、生産効率の向上にも役立つ。また、使用したナノ二酸化チタンの水分散液の質量濃度は20%以上であるため、生産効率をさらに向上させる。
【0038】
本発明で提供されるナノチタン酸バリウム微結晶は、粒径が小さく、分布区間が狭く、純度が高く、分散性が良いという特徴があり、当該ナノチタン酸バリウム微結晶を原料として、予想される粒径を持つチタン酸バリウム粉末を得ることができ、当該チタン酸バリウム粉末は非常に高い純度と結晶性、及び優れた分散性を持ち、チタン酸バリウムに対する電子セラミック工業の需要を満たすことができる。
【0039】
本発明で提供されるチタン酸バリウム粉末の製造方法は、上記のナノチタン酸バリウム微結晶を原料として、簡単な高温▲か▼焼により、純度が高くて分散性がよいチタン酸バリウム粉末を得ることができ、且つチタン酸バリウム粉末は高温▲か▼焼過程中に結晶粒の良好な成長、及び粒径の効果的な制御を実現できるため、チタン酸バリウムに対する電子セラミック工業の需要を満たすことができる。
【0040】
また、当該チタン酸バリウム粉末の製造方法は、プロセスが簡単で信頼できる特徴があり、工業化量産に適している。
【発明の効果】
【0041】
本発明で提供されるチタン酸バリウム粉末は、高純度、高分散性、結晶粒の成長に優れた特徴があり、且つ粒径の大きさが制御できるので、チタン酸バリウムに対する電子セラミック工業の需要を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の実施例1~5で使用したナノ二酸化チタンを1%の質量濃度で脱イオン水に分散させて測定した粒径分布曲線である。
図2】本発明の実施例1~5で使用したナノ二酸化チタンを10%の質量濃度で脱イオン水に分散させて測定した粒径分布曲線である。
図3】本発明の実施例1~5で使用したナノ二酸化チタンを50%の質量濃度で脱イオン水に分散させて測定した粒径分布曲線である。
図4】本発明の実施例1において製造されたナノチタン酸バリウム微結晶のXRDパターンである。
図5】本発明の実施例3において製造されたナノチタン酸バリウム微結晶のXRDパターンである。
図6】本発明の実施例4において製造されたナノチタン酸バリウム微結晶のXRDパターンである。
図7】本発明の実施例5において製造されたナノチタン酸バリウム微結晶のXRDパターンである。
図8】本発明の実施例6において製造されたナノチタン酸バリウム微結晶のXRDパターンである。
図9】本発明の実施例7において製造されたナノチタン酸バリウム微結晶のXRDパターンである。
図10】本発明の実施例2において製造されたナノチタン酸バリウム微結晶のTEM写真である。
図11】本発明の実施例8において製造されたチタン酸バリウム粉末のTEM写真である。
図12】本発明の実施例9において製造されたチタン酸バリウム粉末のTEM写真である。
図13】本発明の実施例10において製造されたチタン酸バリウム粉末のSEM写真である。
図14】本発明の実施例11において製造されたチタン酸バリウム粉末のSEM写真である。
図15】本発明の実施例12において製造されたチタン酸バリウム粉末のSEM写真である。
図16】本発明の実施例2において製造されたナノチタン酸バリウム微結晶、実施例8~13において製造されたチタン酸バリウム粉末のXRDパターンである。
図17図16の部分拡大図である。
図18】本発明の比較例1において製造されたチタン酸バリウム微結晶のXRDパターンである。
図19】本発明の比較例2において製造されたチタン酸バリウム微結晶のXRDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の実施例の目的、技術的解決策及び利点をより明確にするために、以下では、本発明の実施例における図面を組み合わせて、本発明の実施例における技術的解決策を明確完全に説明する。明らかに、説明した実施例は、本発明の実施例の全てではなく、一部である。本発明の実施例に基づいて、当業者は創造的な労働がない前提で取得される他のすべての実施例は、本発明の保護の範囲に属する。
【0044】
本発明では、以下の検出技術又は手段を用いてナノチタン酸バリウム微結晶とチタン酸バリウム粉末の特性を示す。
(1)走査型電子顕微鏡と透過型電子顕微鏡を用いて試料の表面形態を観察し、約200個の粒子の粒径を統計し、チタン酸バリウムの一次粒子の平均粒径を得る。
(2)X線回折計(D8 Advance)を用いて、ステップ長が0.02°、積分時間が2sのパラメータで20-80°の範囲でX線回折パターンを収集し、TopasソフトウェアでRietveid法を用いて構造を精密化して格子定数比(c/a)を計算する。
(3)BET法を用いて材料の比表面積を解析する。
(4)ICP-MSを用いてチタン酸バリウム粉末のバリウムとチタンの比率を検出する。
【0045】
[実施例1]
室温で、ナノ二酸化チタン粉末を脱イオン水に均一に分散し、均一に混合されるまでゆっくりと攪拌し、質量濃度48%のナノ二酸化チタン水分散液100gを得て、予備とする。
常圧窒素雰囲気の保護で、355gの水酸化バリウム八水和物と150mLの脱イオン水を三口丸底フラスコに加え、水酸化バリウムが完全に溶解するまで100℃で加熱攪拌する。
ナノ二酸化チタン水分散液を急速に上記の三口丸底フラスコに加え、加える過程において三口丸底フラスコへの元の加熱電力を維持し、得られた混合系の温度を97±2℃と測定した後、撹拌を続け、温度を100℃に上げて、5hの還流反応を行う。反応が完了した後、反応生成物を取り出して、濾過、洗浄、乾燥して、ナノチタン酸バリウム微結晶を得る。
【0046】
本実施例で使用されるナノ二酸化チタン粉末は、体積計でD50≦10nmであり、当該ナノ二酸化チタン粉末を1%、10%及び50%の濃度で脱イオン水に分散させて測定された粒径分布曲線はそれぞれ図1図2及び図3に示される。
【0047】
[実施例2~3]
還流反応時間をそれぞれ10hと20hに変更する以外に、実施例2~3における他の操作ステップは実施例1と同じであり、ナノチタン酸バリウム微結晶を得る。
【0048】
[実施例4]
脱イオン水の体積を変えずに、二酸化チタンと水酸化バリウムの質量を元の半分に減らし、さらに51gの水酸化ナトリウムを加え、他の操作ステップは実施例2と同じであり、ナノチタン酸バリウム微結晶を得る。
【0049】
[実施例5]
ナノ二酸化チタン水分散液の質量濃度を48%に維持し、ナノ二酸化チタン水分散液の質量を元の半分、即ち50gに減らして、二酸化チタンと水酸化バリウムのモル比を変更し、他の操作ステップは実施例2と同じであり、ナノチタン酸バリウム微結晶を得る。
【0050】
[実施例6~7]
実施例6~7の製造プロセスは、実施例2とほぼ同じであり、相違点は、実施例6におけるナノ二酸化チタンのメジアン粒径D50は体積計で約17nmであり、実施例7におけるナノ二酸化チタンのメジアン粒径D50は体積計で約29nmであることのみである。
【0051】
上記実施例1~7の反応条件は具体的に表1を参照し、合成されたナノチタン酸バリウム微結晶の生成物形状は表2を参照する。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
図4は実施例1で得られたナノチタン酸バリウム微結晶のX線回折(XRD)パターンであり、図5図6図7図8及び図9はそれぞれ、実施例3~7で得られたナノチタン酸バリウム微結晶のXRDパターンであり、実施例2のXRDパターンは図4と類似である。上記のXRDパターンから分かるように、実施例1~7で得られたナノチタン酸バリウム微結晶2θ角が44°~46°の間の回折ピークは、明らかな分裂のない単一ピークとして現れ、格子の成長が良好であると意味する。
【0055】
表2における格子定数比(c/a)と組み合わせて分かるように、実施例1~7において製造されたナノチタン酸バリウム微結晶の格子定数比(c/a)はいずれも約1.0000であり、典型的な立方晶相である。
【0056】
表2におけるBa/Ti比のデータから分かるように、実施例1~7で得られたナノチタン酸バリウム微結晶は、Ba/Ti比がいずれも約1であり、ほとんどが0.990~1.001の間に集中しており、よって、当該ナノチタン酸バリウム微結晶は非常に高い純度を持つ。
【0057】
図10は実施例2で得られたナノチタン酸バリウム微結晶の透過型電子顕微鏡(TEM)写真であり、実施例1のナノチタン酸バリウム微結晶の形態はこれと類似している。図1を表2と組み合わせてから分かるように、実施例1~2で製造されたナノチタン酸バリウム微結晶の平均粒径はいずれも約15nmであり、分散性が良く、明確な凝集が見られず、粒径が比較的均一であり、実施例3~7のナノチタン酸バリウム微結晶の一次粒子の平均粒径はいずれも約50nm以下である。
【0058】
[実施例8~13]
実施例2で得られたナノチタン酸バリウム微結晶をマッフル炉で約3hを▲か▼焼して、チタン酸バリウム粉末を得、ここで、実施例8~13の▲か▼焼温度はそれぞれ300℃、500℃、700℃、900℃、1100℃、1300℃である。具体的な▲か▼焼プロセス及び生成物形状は具体的には、表3を参照してもよい。
【0059】
【表3】
【0060】
図11図12はそれぞれ実施例8~9で得られたチタン酸バリウム粉末のTEM写真である。図11~12及び表3の結果から分かるように、実施例8~9で得られたチタン酸バリウム粉末の粒子分散度が良く、明確な凝集が見られず、その一次粒子の平均粒径はいずれも約20nmであり、これにより、300℃~500℃で行われる低温▲か▼焼による結晶粒成長は明らかではないと推測できる。
【0061】
図13図14及び図15はそれぞれ実施例10~12におけるチタン酸バリウム粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。図13~15と表3を組み合わせて分かるように、▲か▼焼温度を500℃から1300℃に上げると、チタン酸バリウム結晶粒は徐々に成長し、粒径は約20nmから約200nmに増加し、500℃~1300℃での高温▲か▼焼は結晶粒の著しい増大をもたらすと意味する。
【0062】
図16は本発明の実施例2において製造されたナノチタン酸バリウム微結晶、実施例8~13において製造されたチタン酸バリウム粉末のXRDパターンであり、図17図16の2θ角が45°である回折ピークでの拡大図である。図16図17から分かるように、ナノチタン酸バリウム微結晶は▲か▼焼を経た後、晶体成長がより良くなり、且つ▲か▼焼温度の上昇に伴い、当該チタン酸バリウム粉末の結晶化程度はますます良くなり、特に▲か▼焼温度が300℃~1100℃(実施例8~12)である場合、45°付近の2θ角の回折ピークは、明らかな分裂がなく、単一ピークとして現れ、▲か▼焼温度が1300℃(実施例13)である場合、45°での回折ピークは分裂した。
【0063】
表4の試験結果から分かるように、300℃~500℃で行われる低温▲か▼焼による結晶粒成長は明らかではないが、▲か▼焼温度が500℃から1300℃に上げると、チタン酸バリウム結晶粒は徐々に成長し、粒径が20nmから約300nmに増加し、500℃~1300℃での高温▲か▼焼は結晶粒の著しい増大をもたらすと意味する。
【0064】
[比較例1]
比較例1の製造プロセスは実施例2とほぼ同じであり、相違点は、混合系を調製する場合、水酸化バリウム水溶液を入れた三口フラスコに二酸化チタン水分散液をゆっくりとと加えて、加えながら急速に攪拌して混合し、混合系全体の温度を100℃で一定に維持することのみである。
【0065】
当該ナノチタン酸バリウム微結晶の具体的な物理的試験結果は表4を参照し、そのXRDパターンは図18で示される。
【0066】
[比較例2]
比較例2の製造プロセスは実施例2とほぼ同じであり、相違点は、混合系を調製する場合、ナノ二酸化チタン粉末の質量が変わらないが、ナノ二酸化チタンの質量濃度が8%であることのみである。
【0067】
当該ナノチタン酸バリウム微結晶の具体的な物理的試験結果は表4を参照し、そのXRDパターンは図19で示される。
【0068】
図18図19から分かるように、比較例1~2において、ナノ二酸化チタン水分散液をゆっくりと加える又はナノ二酸化チタン水分散液の濃度を低下させる形態を用いて、同様に結晶粒成長が良好なナノチタン酸バリウム微結晶を得ることができる。
【0069】
しかし、比較例1~2と実施例2の試験結果の比較によれば、二酸化チタン水分散液をゆっくりと加えて混合系をほぼ一定に維持し、又は低濃度ナノ二酸化チタン水分散液を用いる場合、得られたナノチタン酸バリウム微結晶の平均粒径はいずれも大きくなる。また、ナノ二酸化チタン水分散液の濃度を低下させると、ナノチタン酸バリウム微結晶の生産効率が著しく低下する。
【0070】
【表4】
【0071】
最後に説明すべきものとして、上記の各実施例は、本発明の技術的手段を説明するためにのみ使用され、これに限定されるものではない。上記の各実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者は、依然として上記の各実施例に記載された技術的手段を修正し、又はその一部又は全部の技術的特徴を均等に置換することができ、これらの修正又は置換は、対応する技術的手段の本質を本発明の各実施例の技術的手段の範囲から逸脱させないことを理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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