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特許7564827ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを有するコポリマー粉末
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを有するコポリマー粉末
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20241002BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20241002BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20241002BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20241002BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20241002BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20241002BHJP
【FI】
C08L77/00
B29C64/153
B33Y40/00
B33Y70/00
B33Y80/00
C08K3/01
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021568100
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 FR2020050808
(87)【国際公開番号】W WO2020229782
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】1905131
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】モルフィン, アレクシ
(72)【発明者】
【氏名】ブリュレ, ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】パレ, アポリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】デクラメル, ナディーヌ
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-225664(JP,A)
【文献】特表2002-512645(JP,A)
【文献】特表2013-517344(JP,A)
【文献】国際公開第2019/069032(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0264047(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77/00
B29C 64/153
B33Y 40/00
B33Y 70/00
B33Y 80/00
C08K 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマーの粉末を含む組成物であって、コポリマーが0%~10重量%の含有量の粉末充填剤を有する粒子の形態であり、コポリマーが、0.7以下のポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比を有し、ポリアミドブロックが、1000g/mol以下の数平均モル質量を有し;組成物が流動剤を0.3重量%以上の含有量で含む、組成物。
【請求項2】
ポリアミドブロックが、900g/mol以下の数平均モル質量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比が0.65以下である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
流動剤が、2重量%以下の含有量で存在する、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
流動剤が、シリカ、アルミナ、ガラス状リン酸塩、ガラス状ホウ酸塩、ガラス状酸化物、二酸化チタン、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、アタパルジャイト、及びそれらの混合物から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
粉末の粒子が、30μm以上のサイズDv10を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
粉末の粒子が、250μm以下のサイズDv90を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
粉末の粒子が、80~150μmのサイズDv50を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
コポリマーが、20~75ショアDの瞬間硬度を示す、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
コポリマーのポリアミドブロックが、ポリアミド11、若しくはポリアミド12、若しくはポリアミド6、若しくはポリアミド1010、若しくはポリアミド1012、若しくはポリアミド610のブロックであり;かつ/又は、コポリマーのポリエーテルブロックが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、若しくはポリテトラヒドロフランのブロックである、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
コポリマーのポリアミドブロックが、ポリアミド11、若しくはポリアミド12、若しくはポリアミド1010、若しくはポリアミド1012のブロックであり;かつ/又はコポリマーのポリエーテルブロックが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、若しくはポリテトラヒドロフランのブロックである、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
ポリエーテルブロックが、400~3000g/molの数平均モル質量を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物の調製方法であって:
ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマーを準備して、これを粉砕すること、及び、
コポリマーを流動剤と接触させること、
を含む方法。
【請求項14】
コポリマーを、粉砕の前に流動剤と接触させる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
粉砕が-10℃以下の温度まで冷却された混合物に対して行われる、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
コポリマーが顆粒の形態で準備される、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
粉砕から生じる粒子がふるいにかけられ、ふるいのオーバーサイズが粉砕にリサイクルされる、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物の、電磁放射線によってもたらされる組成物の焼結による三次元物品のレイヤバイレイヤ造形のための使用。
【請求項19】
請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物から、電磁放射線によってもたらされる焼結によるレイヤバイレイヤ造形によって製造された三次元物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマーの粉末組成物に関し、またその調製方法に関する。本発明はまた、この粉末の使用に関し、当該粉末から製造される物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマー、又は「ポリエーテルブロックアミド」(PEBA)は、エンジニアリングポリマーのファミリーに属する可塑剤フリーの熱可塑性エラストマーである。それらは、プロファイル又はフィルムの射出成形及び押出成形によって容易に加工することができる。それらはまた、織布及び不織布のためのフィラメント、糸及び繊維の形態で使用することができる。それらは、スポーツの分野において、特に、スポーツ用履物ソール若しくはゴルフボールの構成要素として、医療分野において、特に、カテーテル、血管形成バルーン、蠕動ベルトに、又は自動車において、特に、合成皮革、皮革、ダッシュボード、エアバッグの構成要素として使用される。
【0003】
ArkemaからPebax(登録商標)の名称で販売されているPEBAは、熱又はUVエージングに対する非常に良好な耐性に加えて低密度を有する比類のない機械的特性を1つの同じポリマーに組み合わせることを可能にする。したがって、それらは、軽量で柔軟な部品の製造を可能にする。特に、同等の硬度では、それらは他の材料よりも少ないエネルギーしか散逸せず、それは曲げ又は引張動的応力に対する非常に良好な耐性をそれらに付与し、それらは非常に優れた弾性回復特性を示す。
【0004】
これらのポリマーは、焼結による三次元物品の造形の分野でも使用することができる。このプロセスによれば、ポリマー粉末の層は、チャンバ内で電磁放射線(例えば、レーザビーム、赤外線放射、UV放射)によって選択的にかつ短時間照射され、その結果、放射線の影響を受けた粉末粒子が溶融する。溶融した粒子は急速に融合して固化し、固体塊を形成する。このプロセスでは、新たに塗布された一連の粉末層を繰り返し照射することによって、簡単かつ迅速に三次元物品を製造することができる。この技術は、一般に、例えば、自動車、船舶、航空又は航空宇宙分野、医療分野(プロテーゼ、聴覚システム、細胞組織)、織物、衣類、及びファッション、装飾、電子機器、電話、ホームオートメーション、コンピュータ、照明用のハウジングにおいて、部品のプロトタイプ、モデルを製造するために(「ラピッドプロトタイピング」)、又は完成部品を小量シリーズで製造するために(「ラピッドマニュファクチャリング」)使用される。
【0005】
層ごとの焼結プロセスでは、事前にPEBAを粉末形態に変換することが必要となる。これらの粉末は、焼結装置での使用に適し、かつ、満足のゆく機械的特性を有する可撓性部品の製造を可能にするものでなければならない。
【0006】
製造された部品の品質及びまたそれらの機械的特性は、PEBA粉末の特性に依存する。例えば、粉末の凝集は、低精細度の三次元物品の製造をもたらすので、回避されなければならない。さらに、粉末は、凝集又は堆積又は亀裂を形成することなく、搬送されて均一な床を形成しなければならない。そうでないと、正しく変換することができない。流動剤などの添加剤の添加は、流動特性をある程度改善することができる。しかしながら、多量の流動剤を使用する場合、粉末の融着に大量のエネルギーを必要とし、それによって良好な精細度及び良好な機械的特性の両方を有する部品を得ることができなくなる。特に、それらは材料の破断伸びを減少させる可能性がある。
【0007】
仏国特許第2955330号明細書は、100μm未満のD50を有する熱可塑性粉末組成物であって、180℃未満の融点を有する少なくとも1つのブロックコポリマーと、6未満のモース硬度を有し、20μm未満のD50を有する15重量%~50重量%の少なくとも1つの粉末充填剤と、20μm未満のD50を有する、0.1重量%~5重量%の粉末流動剤とを含む、熱可塑性粉末組成物に関する。この文献は、特に、可撓性三次元物体を製造するための前記組成物の使用に関する。粉末充填剤の使用は、粉砕を容易にし、ひいては所望の粒径を得ることを可能にする。しかしながら、製造された部品における高含有量の充填剤の存在は、それらの機械的特性に悪影響を及ぼす。
【0008】
欧州特許出願公開第0968080号は、粉末流動剤と、50℃を超えないガラス転移温度を有する粉末ブロックコポリマー熱可塑性樹脂との混合物を含む熱可塑性粉末に関する。この粉末は、可撓性三次元物体の製造に使用することができる。
【0009】
欧州特許出願公開第1845129号明細書は、粉末のレイヤバイレイヤ焼結によるポリマー粉末からの成形物品の製造方法に関する。当該粉末は、オリゴアミド-ジカルボン酸及びポリエーテルジアミンから調製された少なくとも1つのポリエーテルアミドブロックを含む。
【0010】
それにもかかわらず、効率的な方法で焼結することによって三次元物品の造形を可能にし、特に、より広い作業窓及び比較的低い造形温度で作業することを可能にして前記物品が良好な可撓性などの良好な機械的特性を特徴とする、PEBA粉末組成物を提供することが依然としてまさに必要とされている。良好なリサイクル性を有するPEBA粉末組成物を提供することもまた必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、第一に、ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマーの粉末を含む組成物に関し、コポリマーは、0重量%~10重量%の含有量の粉末充填剤を有する粒子の形態であり、コポリマーのポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比が0.7以下であり、ポリアミドブロックの数平均モル質量は、1000g/mol以下であり、本組成物は、流動剤を0.3重量%以上の含有量で含む。
【0012】
ある特定の実施形態によれば、ポリアミドブロックは、900g/mol以下の数平均モル質量を有する。
【0013】
ある特定の実施形態によれば、ポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比は、0.65以下である。
【0014】
特定の実施形態によれば、流動剤は、重量で2重量%以下の含有量で存在する。
【0015】
特定の実施形態によれば、流動剤は、シリカ、特に、水和シリカ、焼成シリカ、ガラス質シリカ、又はヒュームド・シリカ;アルミナ、特に、非晶質アルミナ;ガラス状リン酸塩、ガラス状ホウ酸塩、ガラス状酸化物、二酸化チタン、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、アタパルジャイト、及びそれらの混合物から選択される。
【0016】
特定の実施形態によれば、粉末の粒子は、30μm以上、好ましくは35μm以上のサイズDv10を有する。
【0017】
特定の実施形態によれば、粉末の粒子は、250μm以下、好ましくは200μm以下のサイズDv90を有する。
【0018】
特定の実施形態によれば、粉末の粒子は、80~150μm、好ましくは90~120μmのサイズDv50を有する。
【0019】
サイズDv10、Dv50及びDv90は、例えば、乾式経路によるMalvern回折計によるレーザ回折によって、及びISO9276に準拠した粒子の分布のモデル化によって、ISO13320:2009に準拠して測定される。
【0020】
特定の実施形態によれば、コポリマーは、ISO868:2003に準拠して測定して、20~75ショアD、好ましくは25~45ショアDの瞬間硬度を示す。
【0021】
特定の実施形態によれば、コポリマーのポリアミドブロックは、ポリアミド11のブロック、若しくはポリアミド12のブロック、若しくはポリアミド6のブロック、若しくはポリアミド10.10のブロック、若しくはポリアミド10.12のブロック、若しくはポリアミド6.10のブロックであり、かつ/又は、コポリマーのポリエーテルブロックは、ポリエチレングリコールのブロック、ポリプロピレングリコールのブロック、若しくはポリテトラヒドロフランのブロックである。
【0022】
特定の実施形態によれば、コポリマーのポリアミドブロックは、ポリアミド11のブロック、若しくはポリアミド12のブロック、若しくはポリアミド1010のブロック、若しくはポリアミド1012のブロックであり、かつ/又は、コポリマーのポリエーテルブロックは、ポリエチレングリコールのブロック、ポリプロピレングリコールのブロック、若しくはポリテトラヒドロフランのブロックである。
【0023】
特定の実施形態によれば、ポリエーテルブロックは、400~3000g/mol、好ましくは800~2200g/molの数平均モル質量を有する。
【0024】
本発明はまた、上記組成物の調製方法であって、
ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマーを用意して、これを粉砕すること、及び、
コポリマーを流動剤と接触させること、
を含む調整方法に関する。
【0025】
特定の実施形態によれば、コポリマーは、粉砕前に流動剤と接触させられる。
【0026】
特定の実施形態によれば、粉砕は、極低温粉砕である。
【0027】
ある特定の実施形態によれば、コポリマーは、顆粒の形態で提供される。
【0028】
特定の実施形態によれば、粉砕から生じる粒子はふるいにかけられ、ふるいのオーバーサイズは粉砕にリサイクルされる。
【0029】
本発明はまた、電磁放射線によってもたらされる焼結による三次元物品のレイヤバイレイヤ造形のための上記組成物の使用に関する。
【0030】
本発明はまた、上記の組成物から、好ましくは電磁放射線によってもたらされる焼結によるレイヤバイレイヤ造形によって製造された三次元物品に関する。
【0031】
本発明は、上記の必要性を満たすことを可能にする。本発明は、より詳細には、効率的な方法で焼結することによって三次元物品の造形を可能にし、特に、より広い作業窓及び比較的低い造形温度で作業することを可能にして前記物品が良好な可撓性などの良好な機械的特性を特徴とする、PEBA粉末組成物を提供する。本発明による組成物はさらに、良好なリサイクル性を示す。
【0032】
PEBA粒子中の0%~10重量%の含有量の粉末充填剤の含有量により、良好な機械的特性、特に高い破断伸びを有する三次元物品を得ることができる。さらに、粉末充填剤の含有量が重量で10重量%以下であることにより、良好な衝撃強度を有する三次元物品を得ることが可能になる。これは、PEBA粒子中に粉末充填剤が10重量%を超える含有量で存在すると、脆い三次元物品をもたらし、その結果、衝撃強度が低下する可能性があるためである。
【0033】
加えて、ポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比が0.7以下であることによっても、所望の柔軟性を有する三次元物品を得ることが可能になる。したがって、本発明による組成物から製造された三次元物品は、比較的低い弾性係数を示す。
【0034】
流動剤が0.3重量%以上の量で存在することにより、三次元物品の良好な機械的特性を維持しながら、粉末の流動能力及びそのリサイクル性をさらに改善することが可能になる。
【0035】
最後に、ポリアミドブロックが1000g/mol以下の数平均モル質量を有するという事実によって、比較的低い作業温度で造形プロセスを実施することが可能になり、広い作業窓を有することが可能になる。換言すれば、ポリアミドブロックが1000g/mol以下の数平均モル質量を有するという事実により、PEBAコポリマーが結晶化温度から十分に離れた比較的低い融点を有する粉末組成物を得ることが可能になり、その後、広範囲の造形温度値での作業が可能になる。
【0036】
さらに、好ましくはPEBAコポリマーを粉砕工程の前に流動剤と接触させるという事実によって、粉末調製プロセスの効率を高めるように、粉砕の効率(又は収率)だけでなく、ポリマー/流動剤混合物のリサイクルを改善することも可能になる。より具体的には、この混合物のより良好な流動性により、最も粗い粒子をミルに再循環させるようにふるい分けを行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
ここで、本発明を、以下の説明において非限定的に、より詳細に説明する。
【0038】
コポリマー
本発明は、ポリアミド(PA)ブロックを含み、ポリエーテル(PE)ブロックを含むコポリマー、又は「PEBA」コポリマーを使用する。
【0039】
PEBAは、反応性末端基を含むポリアミドブロックと反応性末端基を含むポリエーテルブロックとの重縮合、とりわけ、
1)ジアミン鎖末端を含むポリアミドブロックと、ジカルボキシル鎖末端を含むポリオキシアルキレンブロックとの重縮合、
2)ジカルボキシル鎖末端を含むポリアミドブロックと、例えば、ポリエーテルジオールとして知られる脂肪族α,ω-ジヒドロキシル化ポリオキシアルキレンブロックのシアノエチル化及び水素化によって得られるジアミン鎖末端を含むポリオキシアルキレンブロックとの重縮合、
3)ジカルボキシル鎖末端を含むポリアミドブロックと、ポリエーテルジオールとの重縮合から生じ、得られる生成物は、この特定の場合には、ポリエーテルエステルアミドである。
【0040】
好ましくは、本発明によるPEBAは、重縮合2)又は3)によって、好ましくは重縮合3)によって得られる。
【0041】
ジカルボキシル鎖末端を含むポリアミドブロックは、例えば、鎖制限剤であるジカルボン酸の存在下でのポリアミドの前駆体の縮合に由来する。ジアミン鎖末端を含むポリアミドブロックは、例えば、鎖制限剤であるジアミンの存在下でのポリアミドの前駆体の縮合に由来する。
【0042】
3種類のポリアミドブロックを有利に使用することができる。
【0043】
第1のタイプによれば、ポリアミドブロックは、ジカルボン酸、特に、4~20個の炭素原子を有するもの、好ましくは6~18個の炭素原子を有するものの縮合に由来し、また、脂肪族又は芳香族ジアミン、特に、2~20個の炭素原子を有するもの、好ましくは6~14個の炭素原子を有するものの縮合に由来する。
【0044】
ジカルボン酸の例として、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ブタン二酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、及びオクタデカンジカルボン酸、並びにテレフタル酸及びイソフタル酸が挙げることができ、二量化脂肪酸を挙げることもできる。
【0045】
ジアミンの例としては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,10デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)、及び2,2-ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)、パラアミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、イソホロンジアミン(IPDA)、2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)、並びにピペラジン(Pip)の異性体が挙げることができる。
【0046】
有利には、ポリアミドブロックPA412、PA414、PA418、PA610、PA612、PA614、PA618、PA912、PA1010、PA1012、PA1014及びPA1018が使用される。PA XYタイプのポリアミドの表記において、Xは、従来の方法で、ジアミン残基から生じる炭素原子の数を表し、Yは、二酸残基から生じる炭素原子の数を表す。
【0047】
第2のタイプによれば、ポリアミドブロックは、4~12個の炭素原子を有するジカルボン酸又はジアミンの存在下で、1つ以上のα,ω-アミノカルボン酸及び/又は6~12個の炭素原子を有する1つ以上のラクタムの縮合から生じる。ラクタムの例として、カプロラクタム、オエナントラクタム、及びラウリルラクタムを挙げることができる。α,ω-アミノカルボン酸の例として、アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸、及び12-アミノドデカン酸を挙げることができる。
【0048】
有利には、第2のタイプのポリアミドブロックは、PA11(ポリウンデカンアミド)、PA12(ポリドデカンアミド)、又はPA6(ポリカプロラクタム)ブロックである。PA Xタイプのポリアミドの表記において、Xは、アミノ酸(又はラクタム)残基から生じる炭素原子の数を表す。
【0049】
第3のタイプによれば、ポリアミドブロックは、少なくとも1つのα,ω-アミノカルボン酸(又は1つのラクタム)、少なくとも1つのジアミン、及び少なくとも1つのジカルボン酸の縮合から生じる。
【0050】
この場合、ポリアミドPAブロックは、
-X個の炭素原子を有する直鎖脂肪族又は芳香族ジアミンの重縮合、
-Y個の炭素原子を有するジカルボン酸の重縮合、及び
-ラクタム及びZ個の炭素原子を有するα,ω-アミノカルボン酸、並びにX1個の炭素原子を有する少なくとも1つのジアミン及びY1個の炭素原子を有する少なくとも1つのジカルボン酸の等モル混合物から選択され、(X1、Y1)が(X、Y)とは異なる、コモノマー{Z}の重縮合によって調製され、
-前記コモノマー{Z}は、組み合わせたポリアミド前駆体モノマーに対して、有利には50%まで、好ましくは20%まで、より有利にはさらに10%までの範囲の重量割合で、
-ジカルボン酸から選択される鎖制限剤の存在下、導入される。
【0051】
有利には、鎖制限剤として、Y個の炭素原子を有するジカルボン酸が使用され、これはジアミンの化学量論に対して過剰に導入される。
【0052】
この第3のタイプの代替形態によれば、ポリアミドブロックは、任意選択の鎖制限剤の存在下、少なくとも2つのα,ω-アミノカルボン酸との縮合、又は6~12個の炭素原子を有する少なくとも2つのラクタム若しくは1つのラクタムとの縮合、及び、同じ数の炭素原子を有さないアミノカルボン酸との縮合から生じる。脂肪族α,ω-アミノカルボン酸の例として、アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸、及び12-アミノドデカン酸を挙げることができる。ラクタムの例として、カプロラクタム、オエナントラクタム、及びラウリルラクタムを挙げることができる。脂肪族ジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、及びトリメチルヘキサメチレンジアミンを挙げることができる。脂環式二酸の例として、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を挙げることができる。脂肪族二酸の例として、ブタン二酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、及びドデカンジカルボン酸、二量化脂肪酸を挙げることができる。これらの二量体化脂肪酸は、好ましくは少なくとも98%の二量体含有量を有し、好ましくは、それらは水素化されており、例えば、CrodaによってPripolブランドで、又はBASFによってEmpolブランドで、又はOleonによってRadiacidブランドで販売されている製品、及びポリオキシアルキレン-α,ω-二酸である。芳香族二酸としては、テレフタル酸(T)、イソフタル酸(I)を挙げることができる。脂環式ジアミンの例としては、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)及び2,2-ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)、並びにパラアミノジシクロヘキシルメタン(PACM)の異性体を挙げることができる。一般的に使用される他のジアミンは、イソホロンジアミン(IPDA)、2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)、及びピペラジンであり得る。
【0053】
第3のタイプのポリアミドブロックの例として、以下を挙げることができる。
-PA66/6(式中、66はアジピン酸と縮合したヘキサメチレンジアミン単位を表し、6はカプロラクタムの縮合から生じる単位を表す);
-PA66/610/11/12(式中、66はアジピン酸と縮合したヘキサメチレンジアミンを表し、610はセバシン酸と縮合したヘキサメチレンジアミンを表し、11はアミノウンデカン酸の縮合から生じる単位を表し、12はラウリルラクタムの縮合から生じる単位を表す)。
【0054】
PA X/Y、PA X/Y/Zなどの表記は、X、Y、Zなどが上記のホモポリアミド単位を表すコポリアミドに関する。
【0055】
有利には、本発明で使用されるコポリマーのポリアミドブロックは、ポリアミドPA6、PA11、PA12、PA54、PA59、PA510、PA512、PA513、PA514、PA516、PA518、PA536、PA64、PA69、PA610、PA612、PA613、PA614、PA616、PA618、PA636、PA104、PA109、PA1010、PA1012、PA1013、PA1014、PA1016、PA1018、PA1036、PA10T、PA124、PA129、PA1210、PA1212、PA1213、PA1214、PA1216、PA1218、PA1236、PA12T、又はこれらの混合物若しくはコポリマーのブロックを含み、好ましくは、ポリアミドPA6、PA11、PA12、PA610、PA1010、PA1012、又はこれらの混合物若しくはコポリマーのブロックを含む。
【0056】
ポリエーテルブロックは、アルキレンオキシド単位からなる。
【0057】
ポリエーテルブロックは、特に、PEG(ポリエチレングリコール)ブロック、すなわち、エチレンオキシド単位からなるもの、及び/又はPPG(プロピレングリコール)ブロック、すなわち、プロピレンオキシド単位からなるもの、及び/又はPO3G(ポリトリメチレングリコール)ブロック、すなわち、ポリトリメチレングリコールエーテル単位からなるもの、及び/又はPTMGブロック、すなわち、テトラメチレングリコール(ポリテトラヒドロフランとも呼ばれる)単位からなるものであり得る。PEBAコポリマーは、それらの鎖中にいくつかのタイプのポリエーテルを含むことができ、コポリエーテルはブロック又はランダムであることが可能である。
【0058】
例えば、ビスフェノールAなどのビスフェノール類のオキシエチル化によって得られたブロックも使用することができる。後者の生成物は、特に欧州特許第613919号明細書に記載されている。
【0059】
ポリエーテルブロックは、エトキシル化第一級アミンからなることもある。エトキシル化第一級アミンの例として、式:
の生成物を挙げることができ、式中、m及びnは1~20の整数であり、xは8~18の整数である。これらの製品は、例えば、CECAのNoramox(登録商標)ブランド及びClariantのGenamin(登録商標)ブランドで市販されている。
【0060】
ポリエーテルブロックは、NH鎖末端を含むポリオキシアルキレンブロックを含むことができ、このようなブロックは、ポリエーテルジオールとして知られる脂肪族α,ω-ジヒドロキシル化ポリオキシアルキレンブロックのシアノアセチル化によって得ることが可能である。より具体的には、Jeffamine又はElastamineの市販品(例えば、特開第2004346274号公報、特開第2004352794号公報、及び欧州特許第1482011号明細書にも記載されている、Huntsmanからの市販品であるJeffamine(登録商標)D400、D2000、ED2003、又はXTJ542)を使用することができる。
【0061】
ポリエーテルジオールブロックは、そのまま使用し、カルボキシル末端基を有するポリアミドブロックと共縮合するか、又はポリエーテルジアミンに変換し、カルボキシル末端基を有するポリアミドブロックと縮合するためにアミノ化する。
【0062】
PAブロックとPEブロックとの間にエステル結合を有するPEBAコポリマーの二段階調製のための一般的な方法は公知であり、例えば、仏国特許第2846332号明細書に記載されている。PAブロックとPEブロックとの間にアミド結合を有するPEBAコポリマーを調製するための一般的な方法は公知であり、例えば、欧州特許第1482011明細書に記載されている。ポリエーテルブロックは、ランダムに分布した単位を有するポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを含むポリマーを調製するために、ポリアミド前駆体及び鎖制限剤である二酸と混合することもできる(一段階プロセス)。
【0063】
無論、本発明の本明細書におけるPEBAという名称は、Arkemaによって販売されているPEBAX(登録商標)製品、Evonik(登録商標)によって販売されているVestamid(登録商標)製品、EMSによって販売されているGrilamid(登録商標)製品、Sanyoによって販売されているPEBA型Pelestat(登録商標)製品、又は他の供給業者からの任意の他のPEBAにも同様に関連する。
【0064】
上記のブロックコポリマーは、一般に、少なくとも1つのポリアミドブロック及び少なくとも1つのポリエーテルブロックを含むが、本発明はまた、本明細書に記載のものから選択される2、3、4つ(実際にはさらに多く)の異なるブロックを含むすべてのコポリマーを包含し、ただし、これらのブロックは、少なくともポリアミド及びポリエーテルブロックを含むものとする。
【0065】
例えば、本発明によるコポリマーは、3つの異なるタイプのブロックを含むセグメント化ブロックコポリマー(又は「トリブロック」コポリマー)を含むことができ、これは上記のブロックのいくつかの縮合から生じる。前記トリブロックは、好ましくはコポリエーテルエステルアミド及びコポリエーテルアミドウレタンから選択される。
【0066】
本発明の文脈において特に好ましいPEBAコポリマーは、
-PA11及びPEGブロック、
-PA11及びPTMGブロック、
-PA12及びPEGブロック、
-PA12及びPTMGブロック、
-PA610及びPEGブロック、
-PA610及びPTMGブロック、
-PA1010及びPEGブロック、
-PA1010及びPTMGブロック、
-PA1012及びPEGブロック、
-PA1012及びPTMGブロック、
-PA6及びPEGブロック、
-PA6及びPTMGブロック
を含むコポリマーである。
【0067】
PEBAコポリマー中のポリアミドブロックの数平均モル質量は、1000g/mol以下、好ましくは900g/mol以下である。
【0068】
したがって、PEBAコポリマー中のポリアミドブロックは、100~200g/mol、又は200~300g/mol、又は300~400g/mol、又は400~500g/mol、又は500~600g/mol、600~700g/mol、又は700~800g/mol、又は800~900g/mol、又は900~1000g/molの数平均モル質量を有することができる。
【0069】
特定の実施形態では、PEBAコポリマー中のポリエーテルブロックの数平均モル質量は、250~2000g/mol、好ましくは400~2000g/mol、例えば、より好ましくは800~1500g/molの値を有する。
【0070】
したがって、PEBAコポリマー中のポリエーテルブロックは、250~300g/mol、又は300~400g/mol、又は400~500g/mol、又は500~600g/mol、又は600~700g/mol、又は700~800g/mol、又は800~900g/mol、又は900~1000g/mol、又は1000~1500g/mol、又は1500~2000g/molの数平均モル質量を有することができる。
【0071】
数平均モル質量は、鎖制限剤の含有量によって設定される。これは、以下の関係に従って計算することができる。
=nモノマー×MW反復単位/n鎖制限剤+MW鎖制限剤
【0072】
この式において、nモノマーはモノマーのモル数、n鎖制限剤は過剰な鎖制限剤(例えば、二酸)のモル数、MW反復単位は反復単位のモル質量、MW鎖制限剤は過剰な鎖制限剤(例えば、二酸)のモル質量である。
【0073】
ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックの数平均モル質量は、ブロックの共重合前にゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0074】
PEBAコポリマーのポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比は、0.7以下、好ましくは0.65以下である。この重量比は、ポリアミドブロックの数平均モル質量をポリエーテルブロックの数平均モル質量で割ることによって計算することができる。
【0075】
したがって、PEBAコポリマーのポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比は、0.1~0.2、又は0.2~0.3、又は0.3~0.4、又は0.4~0.5、又は0.5~0.6、又は0.6~0.7であり得る。
【0076】
好ましくは、本発明で使用されるコポリマーは、20ショアD~75ショアD、好ましくは25ショアD~45ショアDの瞬間硬度を示す。硬度測定は、ISO規格868:2003に従って行うことができる。
【0077】
本発明の実施は、このようなコポリマーの凝集傾向が増大している限りにおいて、比較的可撓性のPEBAコポリマーの粒子で特に有利である。
【0078】
PEBAコポリマーは、0℃以下、好ましくは-20℃以下、より好ましくは-40℃以下、より好ましくは-50℃以下のガラス転移温度を示し得る。この温度は、ISO規格6721-11:2012に準拠した動的機械分析(DMA)によって測定される。
【0079】
コポリマー粉末の製造方法
まず、本発明による方法は、上記のPEBAコポリマーを用意すること含む。ある特定の実施形態によれば、上記のような2つ以上のPEBAコポリマーの混合物を使用することが可能である。しかしながら、上述のように単一のPEBAコポリマーを使用することが好ましい。PEBAコポリマーは、例えば、顆粒の形態であり得る。あるいは、PEBAコポリマーは、例えば、250μmを超えるサイズDv50を有するフレーク又は粗粉末の形態であり得る。
【0080】
その後、PEBAコポリマーは、混合物を形成するために、好ましくは粉砕工程の前に流動剤と接触させられる。
【0081】
「流動剤」という用語は、焼結プロセス中のコポリマー粉末の流動性並びにレベリングを改善することを可能にする作用物質を意味すると理解される。流動剤は、ポリマー粉末の焼結の分野で一般的に使用されるものから選択することができる。好ましくは、この流動剤は実質的に球形である。これは、例えば、シリカ、特に、水和シリカ、焼成シリカ、ガラス質シリカ、又はヒュームド・シリカ;アルミナ、特に、非晶質アルミナ;ガラス状リン酸塩、ガラス状ホウ酸塩、ガラス状酸化物、二酸化チタン、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、アタパルジャイト、及びそれらの混合物から選択される。
【0082】
流動剤は、10μm以下、より好ましくは1μm以下の平均サイズ(Dv50)を有する粒子の形態である。例えば、流動剤の粒子のサイズDv50は、10nm~100nm、100nm~1μm、1μm~10μmであり得る。
【0083】
本特許出願の文脈において、
-Dv10は、粒子の10%(体積基準)が閾値未満のサイズを有し、粒子の90%(体積基準)が閾値より大きいサイズを有する粒径の閾値に相当し、
-Dv50は、粒子の50%(体積基準)が閾値未満のサイズを有し、粒子の50%(体積基準)が閾値より大きいサイズを有する粒径の閾値に相当し、
-Dv90は、粒子の90%(体積基準)が閾値未満のサイズを有し、粒子の10%(体積基準)が閾値より大きいサイズを有する粒径の閾値に相当する。
【0084】
Dv10、Dv50及びDv90は、ISO13320:2009に従って、例えば、乾式経路によるMalvern回折計を用いたレーザ回折によって測定され、粒子の分布は、ISO規格9276-パート1~6の「粒径分析の結果の表示」に従ってモデル化される。
【0085】
流動剤は、最終組成物の総重量に対して、0.3重量%以上の割合でPEBAコポリマーに添加される。
【0086】
コポリマーに添加される流動剤は、最終組成物の総重量に対して、3重量%以下、好ましくは2重量%以下の含有量を有することができる。すなわち、流動剤は、0.3%~0.4%、又は0.4%~0.5%、又は0.5%~0.6%、又は0.6%~0.7%、又は0.7%~0.8%、又は0.8%~0.9%、又は0.9%~1%、又は1%~1.1%、又は1.1%~1.2%、又は1.2%~1.3%、又は1.3%~1.4%、又は1.4%~1.5%、又は1.5%~1.6%、又は1.6%~1.7%、又は1.7%~1.8%、又は1.8%~1.9%、又は1.9%~2%、又は2%~2.5%、又は2.5%~3.0%の割合で添加することができる。
【0087】
PEBAコポリマーは、好ましくは流動剤と予め混合され、その後、所望の粒径を有する粉末を得るために粉砕工程を経る。
【0088】
好ましくは、粉砕は極低温粉砕である。したがって、まず、コポリマーと流動剤との混合物を、コポリマーのガラス転移温度より低い温度まで冷却する。この温度は、コポリマーのガラス転移温度より10~50℃低くすることができる。すなわち、混合物を、-10℃以下、好ましくは-50℃以下、より好ましくは-80℃以下の温度まで冷却することができる。この温度は、-10~-20℃、又は-20~-30℃、又は-30~-40℃、又は-40~-50℃、又は-50~-60℃、又は-60~-70℃、又は-70~-80℃、又は-80~-90℃、又は-90~-100℃であり得る。
【0089】
コポリマーと流動剤の混合物の冷却は、例えば、液体窒素を用いて、又は液体二酸化炭素を用いて、又はドライアイスを用いて、又は液体ヘリウムを用いて行うことができる。
【0090】
好ましくは、粉砕工程は、逆回転ピンを備えたミル(ピンミル)で行われる。すなわち、このミルは、一方向に回転する第1の一連のブラシと、その反対方向に回転する第2の一連のブラシとを備える。これにより、衝撃の速度、ひいてはエネルギーを増加させることが可能になる。好ましくは、これらのピンは溝を付けることができ、これによって粉砕される粒子により大きな影響を与えることができる。
【0091】
別法として、粉砕工程は、ハンマーミル又はワールミルで行うことができる。
【0092】
使用されるミルは、粉砕粒子がその上に導かれるふるいを備えることができる。ふるいは、一方では、ふるいの細孔よりも大きいサイズを有する粒子の保持を可能にし、他方では、ふるいの細孔よりも小さいサイズを有する粒子の通過を可能にする、細孔(ふるいの開口部)を示す。細孔が円形の開口部を有さない場合、細孔の「直径」という用語は、開口部に平行な平面内に生じる2点間の最大距離を意味すると理解される。例えば、長方形又は正方形の開口部を有する細孔の場合、直径は各開口部の対角線を示す。ふるいは、例えば、300μm以下、又は250μm以下、好ましくは200μm以下の直径の細孔を有することができる。細孔の直径は、例えば、100~120μm、120~150μm、又は150~200μm、又は200~250μm、又は250~300μmであり得る。
【0093】
したがって、粉末の調製に望ましいサイズよりも大きいサイズの粒子をふるい上に保持することができ、一方で、適切な粒径の粒子はふるいを通過することができる。
【0094】
ふるい上に保持された粒子は、その後、リサイクルされ、さらなる粉砕を受けるようにミルに導くことができる。
【0095】
好ましくは、粒子のリサイクルは、粉砕工程において連続的である。
【0096】
好ましくは、単一の粉砕工程が実行される。
【0097】
粉砕後、本発明において所望の粒径プロファイルを得るために、粉末の特定の粒径画分を選択することができる。したがって、粉末は選択ホイールによって分散され、分級空気によって搬送される。空気に同伴された粉末は、支持ホイールを通って搬送され、第1の出口から排出される。粗生成物は、分級ホイールによって排除され、第2の出口に搬送される。セレクタは、並列に動作するいくつかの連続するホイールを備えることができる。
【0098】
PEBA粉末組成物
本発明による組成物は、PEBAコポリマーの粒子及び流動剤の粒子を含む。
【0099】
本発明による組成物の粒子は、30μm以上、好ましくは35μm以上のサイズDv10を有することができる。例えば、本組成物の粒子のサイズDv10は、30~35μm、又は35~40μm、又は40~45μm、又は45~50μmであり得る。
【0100】
30μm以上のサイズDv10によって、粉末の密度及び流動能力に関連する問題を回避することが可能になる。したがって、有利には、30μm以上のサイズDv10を有する粒子の粉末を使用することによって、良質の粉末床を得ることが可能になり、その結果、エッジ及び輪郭について良好な精細度を有する物品を得ることが可能になる。
【0101】
30μmより大きいサイズDv10を有する粉末を使用することによって、三次元印刷機における粉末の凝集をより少なくすることが可能になり、ひいてはより良好なリサイクルが可能になる。
【0102】
本組成物中の流動剤の量は、粉末の粒径の関数として適合させることができる。一般に、粉末のDv10が低いほど、流動性及び製造された部品の機械的特性を維持するために、粉末中の流動剤の量を増やす必要がある。
【0103】
本発明による組成物の粒子はまた、250μm以下、好ましくは200μm以下のサイズDv90を有することができる。例えば、本組成物の粒子のサイズDv90は、150~160μm、又は160~170μm、又は170~180μm、又は180~190μm、又は190~200μm、又は200~210μm、又は210~220μm、又は220~230μm、又は230~240μm、又は240~250μmであり得る。
【0104】
250μm以下のサイズDv90はまた、エッジ及び輪郭の良好な精細度を有する物品を得ることを可能にする。これは、250μmを超えるサイズDv90を有する粒子は、焼結プロセス中に使用される層の厚さゆえに、低精細度を示す物品をもたらす可能性があるためである。
【0105】
さらに、本発明による組成物の粒子は、80~150μm、好ましくは100~150μmのサイズDv50を有することができる。例えば、本組成物の粒子のサイズDv50は、80~85μm、又は85~90μm、又は90~95μm、又は95~100μm、又は100~105μm、又は105~110μm、又は110~115μm、又は115~120μm、又は120~125μm、又は125~130μm、又は130~135μm、又は135~140μm、又は140~145μm、又は145~150μmであり得る。
【0106】
本発明による組成物は、好ましくは、80%以上、又は81%以上、又は82%以上、又は83%以上、又は84%以上、又は85%以上、又は86%以上、又は87%以上、又は88%以上、又は89%以上、又は90%以上、又は91%以上、又は92%以上、又は93%以上、又は94%以上、又は95%以上、又は96%以上、又は97%以上、又は98%以上、又は99%以上、又は99.1%以上、又は99.2%以上、又は99.3%以上、又は99.4%以上、又は99.5%以上、又は99.6%以上、又は99.7%以上、又は99.8%以上、又は99.9%以上、又は99.91%以上、又は99.92%以上、又は99.93%以上、又は99.94%以上、又は99.95%以上、又は99.96%以上、又は99.97%以上、又は99.98%以上、又は99.99%以上の重量割合でPEBAコポリマーを含むことができる。
【0107】
流動剤は、本組成物の重量基準で0.3重量%以上の含有量で組成物中に存在する。好ましくは、本組成物中に存在する流動剤は、本組成物の重量基準で2重量%以下の含有量を有することができる。すなわち、この含有量は、0.3%~0.4%、又は0.4%~0.5%、又は0.5%~0.6%、又は0.6%~0.7%、0.7%~0.8%、又は0.8%~0.9%、又は0.9%~1%、又は1%~1.1%、又は1.1%~1.2%、又は1.2%~1.3%、又は1.3%~1.4%、又は1.4%~1.5%、又は1.5%~1.6%、又は1.6%~1.7%、又は1.7%~1.8%、又は1.8%~1.9%、又は1.9%~2%であり得る。
【0108】
本組成物中のPEBA粉末は、2m/g未満の見かけ比表面積を有することができる。
【0109】
本組成物中のPEBA粒子は、本組成物の重量基準で0%~10重量%の含有量で粉末充填剤を含むことができる。それらが存在する場合、これらの粉末充填剤は、特に粉砕することが意図される顆粒の製造工程において、配合することによってPEBA粒子に組み込むことができる。
【0110】
したがって、本組成物は、本組成物の総重量に対して0%~10重量%の粉末充填剤をさらに含むことができる。
【0111】
「粉末充填剤」という用語は、10μm超、特に20μm超の平均サイズ(Dv50)を有する粉末形態の化合物を意味すると理解され、これによって、製造された三次元部品の機械的特性(例えば、弾性率、破断伸び、衝撃強度)を改良することが可能になる。
【0112】
粉末充填剤の例は、炭酸塩含有無機充填剤、特に、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト又はカルサイト、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ドロマイト、アルミナ水和物、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト又はパーライト、有機充填剤、例えば、レイヤバイレイヤ造形プロセス中に本組成物が耐える最高温度より高い融点を有するポリマー粉末、特に、1000MPaを超える弾性率を有するそのようなポリマー粉末である。
【0113】
ある好ましい実施形態によれば、本発明の組成物のPEBA粒子は、粉末充填剤を含まない。
【0114】
特定の好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、粉末充填剤を含まない。
【0115】
別法として、粉末充填剤がPEBA粒子中に存在する場合、粉末充填剤は、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下の重量含有率で存在する。例えば、粉末充填剤は、0.05~1重量%、又は1~2重量%、又は2~3重量%、又は3~4重量%、又は4~5重量%、又は5~6重量%、又は6~7重量%、又は7~8重量%、又は8~9重量%、又は9~10重量%の重量含有率でPEBA粒子中に存在し得る。
【0116】
本組成物中の粉末充填剤(それが存在する場合)の総重量含有量(該当する場合は、PEBA粒子中に存在するものを含む)は、好ましくは10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下である。
【0117】
本発明による組成物は、既に言及した流動剤及び粉末充填剤に加えて、焼結に使用されるポリマー粉末に適した任意の種類の他の添加剤、特に、凝集技術で使用するための粉末の特性の改善に寄与する(粉末形態又は非粉末形態の)添加剤、及び/又は融合によって得られた物体の特性、例えば、審美的(色)特性を改善することを可能にする添加剤を含むことができる。本発明の組成物は、特に、染料、着色用顔料、TiO、赤外線吸収用顔料、カーボンブラック、防火添加剤、ガラス繊維、炭素繊維などを含むことができる。本発明の組成物は、安定剤、抗酸素剤、光安定剤、耐衝撃性改良剤、帯電防止剤、難燃剤、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含有することができる。これらの添加剤は、好ましくは20μm未満、特に10μm未満のDv50を有する粉末の形態である。有利には、粉末形態の添加剤は、100nmを超え、まさに特に1μmを超えるDvを有する。
【0118】
これらの添加剤は、0.05%~5重量%の重量含量で組成物中に存在することができる。
【0119】
好ましくは、添加剤は1つ以上の顔料を含む。
【0120】
添加剤は、上述の粉砕工程の前及び/又は後にPEBAコポリマーと混合することができる。
【0121】
特定の実施形態では、本粉末組成物は、40~160℃、好ましくは50~100℃のポリアミドブロックの結晶化温度を有し得る。本組成物は、特に、40~50℃、又は50~60℃、又は60~70℃、又は70~80℃、又は80~90℃、又は90~100℃、又は100~110℃、又は110~120℃、又は120~130℃、又は130~140℃、又は140~150℃、又は150~160℃のポリアミドブロックの結晶化温度を有し得る。結晶化温度は、ISO規格11357-3に準拠した示差走査熱量測定によって測定することができる。
【0122】
PEBAコポリマーは、150℃以下、好ましくは140℃以下の融点を有し得る。PEBAコポリマーは、特に、100~105℃、又は105~110℃、又は110~115℃、又は115~120℃、又は120~125℃、又は125~130℃、又は130~135℃、又は135~140℃、又は140~145℃、又は145~150℃の融点を有することができる。融点は、ISO規格11357-3に準拠した示差走査熱量測定によって測定することができる。
【0123】
融点が150℃以下であることによって、焼結による三次元物品のレイヤバイレイヤ造形のためのプロセス中の加熱時間及びエネルギー消費を減らすことが可能になり、このような物品の調製のためのプロセスの効率を改善することが可能になる。
【0124】
結晶化温度と融点との差は、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、又は50℃以上、又は60℃以上、又は70℃以上、又は80℃以上である。
【0125】
本発明による粉末組成物は、2~10秒の流出度を有することができる。流出度は、ISO規格6186:1998(E)の方法A(23℃で25mmの孔)に従って測定することができる。
【0126】
粉末を焼結するためのプロセス
PEBA粉末は、上述のように、電磁放射線によってもたらされる焼結による三次元物品のレイヤバイレイヤ造形のためのプロセスに使用される。
【0127】
電磁放射は、例えば、赤外線放射、紫外線放射、又は好ましくはレーザ放射であり得る。
【0128】
このプロセスによれば、造形温度と呼ばれる温度に加熱されたチャンバ内に維持された水平プレート上に粉末の薄層が堆積される。「造形温度」という用語は、造形中の三次元物体の構成層の粉末床が、粉末のレイヤバイレイヤ焼結のためのプロセス中に加熱される温度を示す。この温度は、PEBAコポリマーの融点よりも100℃未満、好ましくは40℃未満、より好ましくは約20℃低くすることができる。電磁放射線は、その後、物体に対応する幾何学的形状に従って(例えば、物体の形状をメモリに有し、断面の形式で後者を再現するコンピュータを使用して)粉末層の様々な位置で粉末粒子を焼結するのに必要なエネルギーを提供する。
【0129】
続いて、水平板を粉末層の厚さに相当する値だけ下げ、新たな層を堆積させる。電磁放射線は、物体のこの新しい断面に対応する幾何学的形状に従って粉末粒子を焼結するのに必要なエネルギーを提供する(以下同様)。この手順は、物体が製造されるまで繰り返される。
【0130】
好ましくは、(焼結前の)水平板上に堆積された粉末層は、20~200μm、好ましくは50~150μmの厚さを有し得る。凝集した材料の層は、焼結後、10~150μm、好ましくは30~100μmの厚さを有し得る。
【0131】
本粉末組成物は、上述のように、いくつかの連続的な積層においてリサイクル及び再利用することができる。これは、例えば、そのまま、又はリサイクルされている若しくはリサイクルされていない他の粉末との混合物として使用することができる。
【0132】
すなわち、本粉末組成物は、1回、又は2回、又は3回、又は4回、又は5回、又は6回以上リサイクルする(すなわち、2つ以上の積層で使用する)ことができる。
【0133】
製造された三次元物品は、200%以上、好ましくは400%以上、より好ましくは500%以上の破断伸びを示し得る。「破断伸び」という用語は、材料が引張応力下に置かれた場合の破断前に伸長する能力を意味すると理解される。破断伸びは、ISO規格527 1Aに従って測定することができる。
【0134】
製造された三次元物品は、有利には、100MPa以下、より好ましくは70MPa以下、又は50MPa以下の弾性率を示すことができ、弾性係数は、例えば、1~100MPa、好ましくは10~70MPaであり得る。弾性係数は、ISO規格527 1:2019に従って測定することができる。
【0135】
このように、本発明による粉末組成物によれば、良好な機械的特性並びに正確かつ明確な寸法及び輪郭を有する、良質の三次元物品を製造することが可能になる。
【実施例
【0136】
以下の実施例は、本発明を限定することなく説明する。別段指示がない限り、示されたパーセンテージは、完全な配合に対する重量パーセントを指す。
【0137】
実施例1
この実施例では、21μmのサイズDv10、48μmのサイズDv50、及び100μmのサイズDv90を有する(フィラーを含まない)PEBAコポリマー(600g/molのPA11ブロック、1000g/molのPTMGブロック、重量比PA11/PTMG=0.6、Tm=135℃、0.8重量%の安定化添加剤を用いて配合)の粉末を、高速ミキサー内で、異なる重量含有量の以下の流動剤と共に混合した。
剤1:平均サイズ0.1~0.3μm未満、比表面積50m/gの焼成シリカ、ジメチルジクロロシラン処理、Cabot Corporationによって販売されているTS610)
剤2:平均サイズ1μm未満、比表面積220m/gの焼成シリカ(Cabot Corporationによって販売されているCT1221)
剤3:平均サイズ7~40nm、比表面積50m/g超(BET)の焼成アルミナ(Evonikによって販売されているアルミナC)
【0138】
直径25mm及び15mmの孔を有するこれらの混合物の流出度、並びに見かけ密度及びタンピング密度も測定する(ISO規格6186:1998(E)の方法Aによる流出度、23℃、DIN ISO規格787のパート11:1981のタンピングボリュームメーター、タンピング密度用の目盛り付きメスシリンダーを2500回タップ)。
【0139】
流動剤の含有量が重量比で0.3重量%以上である混合物は、より良好な結果を与えることが観察される。より詳細には、良好な流出度は、特に、直径15mmの漏斗及び直径25mmの漏斗を通る流出度によってキャラクタライズすることができ、これにより、粉末の良好な供給を得ることが可能になる。これによって、また、焼結前及び焼結中に良質の粉末床を得るのに十分な拡散、並びにレーザ通過後に部品のキャビティを充填するのに十分な流れを得ることが可能になる。流動剤の含有量が重量比で0.3重量%以上である混合物によれば、また、PEBA粉末単独と比較して、見かけ密度及びタンピング密度を改善することが可能になる。
【0140】
実施例2
この実施例では、42μmのサイズDv10、106μmのサイズDv50、及び178μmのサイズDv90(フィラーなし)を有するPEBA粉末(実施例1と同じ特性)を、高速ミキサー内で、異なる重量含有量の流動剤(Cabot Corporationによって販売されているTS610)と共に混合する。
【0141】
この実施例のように、PEBAコポリマー粉末が、30μmを超えるサイズDv10、50~150μmのサイズDv50、及び250μm未満のサイズDv90を有する場合、PEBA粉末単独と比較して、流動能力、並びにまた見かけ密度及びタンピング密度も改善されることが観察される。
【0142】
実施例3
本実施例では、PEBA粉末(実施例1と同じ特性)と、0.3重量%の流動剤(Cabot Corporationによって販売されているTS610)とを混合する。流動剤は、粉末を得るために、粉砕前にPEBA顆粒に添加される。得られた粉末のDv10は24μm、Dv50は73μm、Dv90は217μmであった(組成物A)。続いて、CFS 5 HD-Sセレクタ(Netzsch)を用い、2kg/hの流入流量で、Dv10が38μm、Dv50が88μm、Dv90が231μmの粉末が得られるように回転速度を設定することによって、選択を行った(組成物B)。
【0143】
2つの組成物について以下の試験を実施し、結果を以下の表3に示す。2つの組成物を、直径5cm及び高さ3cmの2つの金属シリンダーに同様に注ぐ。続いて、組成物を含むシリンダーを、PEBAコポリマーの融点より20℃低い温度(115℃)のオーブンに4時間入れる。シリンダーをオーブンから取り出し、常温(23℃)まで4時間冷却する。
【0144】
続いて、500gのおもりでバラストされた直径1mmの針を粉末の表面の様々な場所に落下させる。針が沈む深さを測定することにより、PEBAコポリマーの融点より20℃低い温度での4時間及び常温に至るまでの4時間の冷却の後の粉末の凝集を評価することが可能である。針の沈み込みが少なく、粉末がオーブン内でそれ自体に付着しているほど、それを再利用することはより困難になる。
【0145】
針が30μmを超えるDv10を有する組成物Bにより深く沈むことが観察され、これは、この粉末がより粘着しにくく、したがってそれをリサイクルすることがより容易になることを意味する。
【0146】
実施例4
フィラーを含まないPEBA顆粒(850g/molのPA12ブロック、2000g/molのPTMGブロック、重量比PA12/PTMG=0.425、0.2重量%の安定化添加剤を用いて配合)を、Mikropul 2DHハンマーミルを用いて極低温条件下で粉砕する。粉砕後に得られるこの粉末組成物(C)は、サイズDv10が66μmであり、サイズDv50が157μmであり、サイズDv90が292μmである。
【0147】
同様に、1.0重量%の流動剤(Cabot Corporationによって販売されているTS610)と予備混合した同じPEBA顆粒を同じ条件下でミルに導入する。粉砕後に得られるこの粉末組成物(D)は、サイズDv10が60μm、サイズDv50が137μm、サイズDv90が247μmである。粉末組成物Dは、粉末組成物Cと比較して、低減されたDv90を有することが分かる。
【0148】
実施例5
以下の粉末を試験する。
-EC1(比較):PA12粉末(EOSによって販売されているPEBA 2301 Primepart ST)
-EC2(比較):PA12ブロックのサイズが1068g/mol、PPGブロックのサイズが2000g/mol、PA12/PPG比が約0.53のPA12/PPG PEBA粉末
-EC3(比較):PA12ブロックのサイズが1500g/mol、PEGブロックのサイズが1500g/mol、PA12/PEG比が1のPA12/PEG PEBA粉末
-EC4(比較):PA12ブロックのサイズが1000g/mol、PTMGブロックのサイズが1000g/mol、PA12/PTMG比が1のPA12/PTMG PEBA粉末
-EC5(比較):PA11ブロックのサイズが1000g/mol、PTMGブロックのサイズが1000g/mol、PA11/PTMG比が1のPA11/PTMG PEBA粉末
-E1(発明):PA12ブロックのサイズが850g/mol、PTMGブロックのサイズが2000g/mol、PA12/PTMG比が0.43のPA12/PTMG PEBA粉末
-E2(発明):PA11ブロックのサイズが600g/mol、PTMGブロックのサイズが1000g/mol、PA11/PTMG比が0.6のPA11/PTMG PEBA粉末
-E3(発明):PA12ブロックのサイズが600g/mol、PTMGブロックのサイズが2000g/mol、PA12/PTMG比が0.3のPA12/PTMG PEBA粉末
-E4(発明):PA11ブロックのサイズが600g/mol、PTMGブロックのサイズが2000g/mol、PA11/PTMG比が0.3のPA11/PTMG PEBA粉末
【0149】
PA12に基づくPEBAには、0.2重量%の安定化添加剤が配合され、PA11に基づくPEBAには、0.8重量%の安定化添加剤が配合される。これらの粉末はすべて充填剤を含まない。
【0150】
これらの粉末の20℃/分(標準条件)での示差走査熱量測定(DSC)分析、そしてまたこれらの粉末から出発して射出成形によって製造された部品の弾性係数の測定により、以下の結果が得られた。
【0151】
PEBA中のポリアミドブロックとポリエーテルブロックとの重量比が0.7以下である場合、及びポリアミドブロックが1000g/mol以下の数平均モル質量を有する場合(E1~E4)、PEBAコポリマーの融点は、(EC1~EC5に対して)より低く、結晶化温度から十分に離れていることが観察され、これにより、その後に、レイヤバイレイヤ造形プロセスにおいて広範囲の造形温度値で作業することが可能になる。
【0152】
また、得られる射出成形部品で測定された引張弾性率が50MPa未満であることも観察され、これは本発明の粉末が良好な機械的特性、特に良好な可撓性を付与することを意味する。
【0153】
弾性率は、ISO規格527-1/2に従って測定される。
【0154】
焼結部品の弾性率は、射出成形部品の弾性率に対して異なり得る。これは、射出成形よりもTmとTcとの間に長く留まる焼結三次元物体の結晶化がより進むことに起因する。しかしながら、射出成形で得られた弾性率の相対比較は、焼結で得られた弾性率の相対比較を表す。したがって、本発明によれば、70MPa以下(好ましくは50MPa以下)の弾性率を示す三次元物品を得ることが可能になる。
【0155】
実施例6
42μmのサイズDv10、106μmのサイズDv50、及び178μmのサイズDv90を有し、充填剤を含まず、流動剤(Cabot Corporationによって販売されているTS610)が添加されたPEBA粉末(PA11ブロックのサイズが600g/mol、PTMGブロックのサイズが1000g/mol、PA11/PTMGブロックの重量比が0.6)を、焼結プロセスを受ける前に、EOS Formiga P100マシンを通過させることによって160μmでふるい分けする。標本は、103.5℃の造形温度で、350mJ/mmのレーザエネルギーによって製造され、これにより、良好な精細度及び最適な機械的特性を得ることが可能になる。電磁放射線が触れていない床の粉末は、冷却後、再び160μmでふるいにかけられる。
【0156】
結果を以下に示す。
【0157】
0.2重量%の流動剤の添加では、粉末の良好なリサイクル性を得ることができないことが観察される。しかしながら、流動剤を0.3重量%以上の含有量で添加すると、粉体の凝集が少なくなり、その結果、粉体のリサイクル性が著しく向上する。流動剤の1重量%の添加によって、粉末の完全な最大のリサイクル性を達成することが可能になる
【0158】
実施例7
実施例6のPEBA粉末を用いて、EOS Formiga P100マシン(造形温度103.5℃、レーザエネルギー350mJ/mm)でレーザ焼結プロセスを実施する。引張試験を行うための1BA試験標本、及び常温及び-30℃でのシャルピー衝撃強度を測定するための試験標本(焼結後にノッチを付ける)を得る。
【0159】
結果を以下に示す。
【0160】
破断伸びは、ISO規格527-2 1BAに従って測定した。
【0161】
シャルピー衝撃強度の測定は、ISO規格179/1eA(23℃及び-30℃)に従って実施した。
【0162】
流動剤を0.3重量%~1.0重量%の量で存在させても、レーザ焼結によって得られる部品の機械的特性が損なわれないことが観察される。
【0163】
実施例8
PEBA顆粒(実施例1と同じ特性)を粉末充填剤である20重量%のドロマイトと混合し、次いで、Mikropul 2DHハンマーミルで粉砕し、続いて粉末を160μmでふるい分けする。粉末のサイズDv10は33μm、サイズDv50は62μm、サイズDv90は111μmである。
【0164】
同様の粉末を、充填剤を混合しないで製造する。
【0165】
続いて、0.3重量%の流動剤(TS610)を、得られた2つの粉末に添加する。
【0166】
焼結プロセスは、これらの粉末から出発して、Formiga P100マシン(EOSによって販売されている)を用い、最適化された条件下(造形温度105℃、レーザエネルギー350mJ/mm)で行った。
【0167】
結果を以下に示す。
【0168】
粉末充填剤がPEBA粒子中に有意な含有量で存在する場合、PEBA粒子中に粉末充填剤を含まない組成物から得られる三次元物品と比較して、機械的特性が損なわれた、特に破断伸びが低下した三次元物品が得られることが観察される。